特許第5913603号(P5913603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913603
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】自走式鉱山機械の稼働管理装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 3/08 20060101AFI20160414BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20160414BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20160414BHJP
   E21C 47/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G07C3/08
   H04Q9/00 311J
   E02F9/20 N
   E21C47/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-536498(P2014-536498)
(86)(22)【出願日】2012年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2012074209
(87)【国際公開番号】WO2014045397
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山形 庄平
(72)【発明者】
【氏名】田尻 力也
(72)【発明者】
【氏名】原 有希
(72)【発明者】
【氏名】笠井 嘉
(72)【発明者】
【氏名】大脇 従道
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕
(72)【発明者】
【氏名】内田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】上野 亮
(72)【発明者】
【氏名】廣渡 信芳
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/073771(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/073224(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/073226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 3/08
E02F 9/20
E21C 47/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山作業現場で稼働する自走式鉱山機械の稼働管理を行う自走式鉱山機械の稼働管理装置において、
前記自走式鉱山機械の構成機器の稼働状態を検出するセンサからの出力信号を含むデータを受信する通信手段と、
前記自走式鉱山機械から受信したデータに基づいて時系列的にグラフ表示される機器稼働状態検出データを作成する信号処理を行う信号処理手段と、
前記機器稼働状態検出データのグラフを画面に表示する画像表示手段と、を備え、
前記画面は、
時間軸を表示する時間軸表示領域と、
前記自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データ及びそれに関連する関連情報を表示する機器稼働状態検出データ表示領域と、
前記センサからの出力信号に対して設定された複数段階の警報レベルに対応する複数種類の発報マークを表示する発報表示領域と、を含み、
前記画像表示手段は、前記稼働管理装置に接続された情報記録手段から、前記鉱山作業現場で前記自走式鉱山機械と同一作業を行う他の自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データを読み出し、この読み出した他の自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データを前記自走式鉱山機械の前記関連情報として前記自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データと共に前記時間軸に沿って並列表示し、前記自走式鉱山機械に取り付けられたセンサの出力信号に応じた発報マークを前記発報表示領域内に前記時間軸に沿って一直線上に表示する、
自走式鉱山機械の稼働管理装置。
【請求項2】
前記画像表示手段は、複数種類の関連情報を表示できるものであり、また前記画像表示手段には、いずれかの関連情報を表示するための切替アイコン表示部を形成する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の自走式鉱山機械の稼働管理装置。
【請求項3】
前記関連情報は、前記自走式鉱山機械に対するメインテナンス履歴を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の自走式鉱山機械の稼働管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧または電動式ショベルやダンプトラック等の自走式鉱山機械の運用を管理する稼働管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉱山における主な作業は、採鉱及び選鉱がある。採鉱は鉱山から有用鉱物を含む鉱石を採掘するものであり、また選鉱は採鉱した鉱物から有用鉱物を選択して取り出すものである。
【0003】
採鉱は鉱山のうちの鉱脈が存在する場所を掘削するものであり、選鉱は掘削現場で行うのではなく、独立した選鉱ヤードが設置されており、この選鉱ヤードには選鉱に必要な各種の設備等が設置されている。また、鉱脈を覆っている土砂には有用鉱物が存在していないために、不用土砂の廃棄場も設置される。
【0004】
採掘にはローダ式若しくはバックホー式のショベル等からなる掘削機械が用いられ、その動力源としては、電動式または油圧式であり、作業効率を勘案して、超大型の掘削機械が用いられるのが一般的である。一方、採掘現場から選鉱ヤードへの鉱物の搬送のために、また不用土砂や岩石等の廃棄場への搬送を行うためにも、搬送機械としてダンプトラックが用いられる。1台の掘削機械に対しては、複数のダンプトラックが組み合わされる。採掘現場か選鉱ヤード等までの距離にもよるが、1台の掘削機械に対して3〜5台のダンプトラックが割り当てられるのが通常であり、これら掘削機械とダンプトラックとは鉱山機械の代表的なものである。
【0005】
鉱山現場での作業は、通常、1日24時間、365日休みなく行われるものであり、掘削機械やダンプトラックといった鉱山機械は、できるだけ故障しないように、しかもできるだけ効率的に稼働させる必要がある。このために、各鉱山機械には、様々な箇所にセンサを設けて、このセンサにより機械の稼働各部の稼働状態を検出するように構成している。そして、これらセンサにより過大な負荷があったことが検出され、過酷な稼働状態であることが検出されたときには、故障に至るおそれがあることから、オペレータに警報を発することになる。
【0006】
前述したように、鉱山機械にあっては、稼働時間が過密である等といったことから、保守・点検等といったメインテナンス作業を頻繁に行うことはできず、またメインテナンス作業を行うに当っては、作業を短時間で効率的に行わなければならない。このために、鉱山における所定の位置に管理センタを設置して、この管理センタに前述した各センサから取得されるデータを送信して、鉱山機械の統括管理を行うようにすることが、例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−149510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献においては、鉱山機械から、稼働各部に設けたセンサで検出した検出データを管理センタに送信するが、管理センタではこの送信データに基づいて不具合が発生したか否か、またどの箇所に故障が発生したかの判断をすることになる。
【0009】
ところで、いずれかのセンサデータで異常が感知されたときに、この異常が機械・器具の不具合に起因するものであれば、点検・修理といったメインテナンスを行う必要がある。しかしながら、センサデータの異常は必ずしも機械・器具の不具合に基づくものではない。例えば、鉱山機械の運転や操作はオペレータが行うことになるが、オペレータの技量や資質等によっては鉱山機械の稼働に大きな影響を与えるものである。さらに、センサデータの異常はオペレータの無理な操作に起因するものもある。また、天候や周囲状況によっては、センサによる異常感知が行われることもある。さらにまた、機械・器具の異常ではなく、センサそのものの不具合という場合もある。
【0010】
要するに、鉱山機械に設置したセンサで異常検出がなされたとしても、必ずしもこの鉱山機械を構成する機械・器具に不具合が生じたものと判定できないことがあり、場合によっては、異常が感知されたとしても、オペレータの技量等に起因するものがある等、鉱山機械の点検・修理を必要としないこともある。また、点検・修理を行うにしても、直ちにそれを行わなければならないのか、時間を融通してメインテナンス時間を設定することで良いのかの判断も必要となる。さらに、どのようなメインテナンス作業を行わなければならないのかを含めたメインテナンス作業のメニュー等を設定することが必要となる。
【0011】
しかしながら、これらは鉱山機械からは離隔した管理センタでの判断によることから、単に鉱山機械の各所に設けたセンサからの検出データのみによっては正確な判断ができないことがある。つまり、稼働中の鉱山機械の情報のみによっては、この鉱山機械のメインテナンス作業を行うべきか否か、いつメインテナンス作業を行うべきか、さらにはメインテナンス時にはどのような作業が必要なのかについては、各センサからの検出データだけでは、必ずしも的確な判断をすることができないという問題点がある。
【0012】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、作業現場で稼働している自走式鉱山機械の状態を、この鉱山機械から離れた位置でより正確に把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明は、鉱山作業現場で稼働する自走式鉱山機械の稼働管理を行う自走式鉱山機械の稼働管理装置において、
前記自走式鉱山機械の構成機器の稼働状態を検出するセンサからの出力信号を含むデータを受信する通信手段と、
前記自走式鉱山機械から受信したデータに基づいて時系列的にグラフ表示される機器稼働状態検出データを作成する信号処理を行う信号処理手段と、
前記機器稼働状態検出データのグラフを画面に表示する画像表示手段と、を備え、
前記画面は、
時間軸を表示する時間軸表示領域と、
前記自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データ及びそれに関連する関連情報を表示する機器稼働状態検出データ表示領域と、
前記センサからの出力信号に対して設定された複数段階の警報レベルに対応する複数種類の発報マークを表示する発報表示領域と、を含み、
前記画像表示手段は、前記稼働管理装置に接続された情報記録手段から、前記鉱山作業現場で前記自走式鉱山機械と同一作業を行う他の自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データを読み出し、この読み出した他の自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データを前記自走式鉱山機械の前記関連情報として前記自走式鉱山機械の機器稼働状態検出データと共に前記時間軸に沿って並列表示し、前記自走式鉱山機械に取り付けられたセンサの出力信号に応じた発報マークを前記発報表示領域内に前記時間軸に沿って一直線上に表示する、ことをその特徴とするものである。
【0014】
ここで、自走式鉱山機械が稼働する作業現場鉱山である。鉱山を作業現場とする場合において設けられる自走式鉱山機械としては、土砂等の掘削手段を有する掘削機械と、運搬手段を構成するダンプトラックとから構成される。掘削機械は、掘削作業の間、ほぼ一定の位置に配置されるのが一般的である。一方、ダンプトラックは鉱山における採鉱現場とこの採鉱現場から離れた位置にある選鉱現場である選鉱ヤード等との間を往復することになる。
【0015】
自走式鉱山機械に装着されるセンサとしては、ダンプトラックの場合にあっては、例えば走行速度等を測定する速度センサ、エンジンの回転数等を検出する回転数センサ、各部の温度を検出する温度センサ、積荷等の重量を検出する荷重センサ、圧力センサ、流速センサ、電圧計、電流計等がある。これらのセンサは鉱山機械を構成する各構成機器類の稼働状態を検出するものであり、検出結果に基づいて、必要な場合には、警報を発して鉱山機械を操作するオペレータに認識させることになる。そして、オペレータはこの警報に基づいて、構成機器類の負荷を軽減する等必要な措置を取ることになる。
【0016】
ここで、鉱山機械のオペレータに対して複数種類の警報を与えるように構成することもできるが、例えばブザー等によるオペレータが認識可能な警報は1種類のものとし、後述する稼働管理上における発報表示では、前述した2段階乃至それ以上の段階の警報レベルを設けることができる。つまり、鉱山機械側での警報と、管理センタ側での発報とでは、同じものであっても良いが、管理センタ側での発報は独自のものとして、複数段階とすることもできる。
【0017】
前述した各種のセンサからの検出データは所定の処理を行ったうえで管理センタに送信される。この検出データに基づいて、自走式鉱山機械の稼働状態を管理することになる。稼働管理は、各種のセンサからの出力信号を処理して、画像表示手段に時系列的なグラフとして表示される。これが機器稼働状態検出データである。また、この機器稼働状態検出データと共に、若しくはこの機器稼働状態検出データとは独立して、発報データが作成されることになる。発報データはセンサによる検出レベルに対して基準値を設けて、この基準値の範囲外になると、発報するものであって、時系列的な発報表示が行われる。この発報データは単一種類のものだけではなく、例えば「警戒レベル」と、「危険レベル」というように、複数段階の発報とすることができる。
【0018】
発報のレベルや発報発生頻度によって、構成機器類に何らかの不具合が生じていることが検出される。また、構成機器そのものの不具合や故障だけでなく、センサの不具合が生じた場合もあり、さらにオペレータによる操作に問題があることも考えられる。つまり、センサからの信号に基づいて作成した機器稼働状態表示データまたは発報データだけでは、警報の詳細については、特に発報は構成機器に問題があるのか、センサに問題があるのか、オペレータの資質・能力に問題があるのかを判定できない。また、構成機器に問題がある場合として、メインテナンスを行うべきか、何時行うべきか、どの箇所について行うべきか、さらに部品交換が必要であるか否かについても明らかでない。
【0019】
以上のことから、画像表示手段における時系列的に配置した発報表示と共に関連情報を表示する。この関連情報は管理センタに設置されている情報記録手段、具体的にはデータベースに記録されており、この情報記録手段から関連情報を読み出して、この関連情報を発報表示と共に画像表示手段に表示させる。
【0020】
画像表示手段に表示可能な関連情報に関する画像は、1種類だけでなく、複数種類の関連情報に関する画像を選択的に表示できるようにすることができる。この選択を行うために、画像表示手段には、いずれの関連情報を表示するための切り替えアイコン表示部を形成することができ、この切り替えアイコン表示部のアイコンをクリックすることにより必要な情報を選択できるようになる。
【0021】
ここで、関連情報としてはメインテナンス情報がある。画像表示手段に表示されている機器のメインテナンス履歴を表示すると、メインテナンスを行う時期が到来しているか、前回行ったメインテナンスに不備や過誤等があったかを判定することができ、またメインテナンスを行う必要があると判断される場合において、どのようなメインテナンスを行うかのメニューを作成することができる。その結果、迅速で確実なメインテナンス対応を行うことができる。
【0022】
鉱山での採鉱を行う際には1台の掘削機械に対して複数台のダンプトラックが組み合わされる。従って、ダンプトラックは同じ作業を行うのであり、実質的に同じルートで走行するものである。他のダンプトラックの作業時の機器稼働状態検出データと比較すれば、発報があったときに他のダンプトラックでは、同じセンサがどのようなレベル変化を示しているかを知ることができ、相互のデータの相違点によりダンプトラックのオペレータの資質や技量の差が認識できるようになる。その結果、オペレータの技量の違いによって、機器稼働状態検出データに明確な違いが存在すると、関連機器には問題がなく、たとえ発報があったとしても、メインテナンス作業を実行せず、他の方策で対処することができることになる。さらに、センサの感度等に問題がある場合にも、他のダンプトラックの機器稼働状態検出データと比較することで検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
作業現場で稼働している自走式鉱山機械の状態を、この鉱山機械から離れた位置でより正確に把握でき、迅速な対応が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】鉱山機械による作業の一例として、鉱山での採鉱作業を模式的に示す説明図である。
図2】鉱山機械の一例としてのダンプトラックの側面図である。
図3】ダンプトラックの稼働管理の一例を示すブロック図である。
図4】ダンプトラックにおけるセンサとしての排気温度の変化の検出データを示す説明図である。
図5】鉱山に設置した管理センタの信号処理手段の構成を示すブロック図である。
図6】ディスプレイにおける機械稼働状況表示画面を示す説明図である。
図7】ディスプレイにおけるメインテナンス履歴表示画面を示す説明図である。
図8】ディスプレイにおける比較データ表示画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に自走式鉱山機械としての掘削機械1とダンプトラック2とが稼働する鉱山全体の概略構成を示す。図中において、3は採鉱場、4は不用土砂の廃棄場、5は有用鉱石の選鉱ヤードである。図示したものにあっては、採鉱場3には、鉱脈が2箇所存在しており、各々の採鉱場3には掘削機械1として油圧式または電動式のショベルが稼働しており、採掘した鉱石はダンプトラック2で採鉱場3から搬出される。不用土砂は、廃棄場4に廃棄され、有用鉱石は選鉱ヤード5に搬送されて、選鉱が行われる。選鉱は、採鉱物を有用鉱物と不用鉱物とに分ける作業を行うことであり、選鉱ヤード5には、選鉱に必要な設備、例えばクラッシャ等が設置されている。
【0026】
1台の掘削機械1には、複数台のダンプトラック2が割り当てられて、単位作業ユニットを構成する。図示の構成にあっては、1台の掘削機械1に対して4台のダンプトラック2が割り当てられている。ダンプトラック2は、図2に示した構成となっている。即ち、車輪10を装着した車体フレーム11には、運転室12が装着されると共にベッセル13が設けられている。ベッセル13は、掘削機械1による掘削物が積載されて、採鉱場3と選鉱ヤード5との間または採鉱場3と廃棄場4との間を往復走行するものである。
【0027】
ダンプトラック2は採鉱場3に配置されて、掘削機械1による掘削物がベッセル13に投入される。掘削物を積載したダンプトラック2は、所定のルートを通って選鉱ヤード5(掘削物が不用土砂である場合には、廃棄場4)に搬入されて、ベッセル13を後方に向けて傾けることにより積載物を排出する、所謂ダンプ動作が行われる。その後、ベッセル13を水平状態に戻して車両を走行させて、採鉱現場Aに帰還させる。以上の動作を繰り返すことによって、採鉱現場Aから有用鉱物が取り出されて、選鉱ヤード5に送り込まれる。そこで、以下の説明においては、ダンプトラック2の稼働管理を行うものとして説明するが、稼働管理装置としては、掘削機械等他の自走式鉱山機械にも適用可能である。
【0028】
前述したダンプ動作はダンプ用シリンダ14を駆動することにより行われるものである。また、ダンプトラック2には、車体フレーム11と走行手段の車軸との間の前後及び左右の4箇所にサスペンションシリンダ15が介装されている。そして、このサスペンションシリンダ15によりダンプトラック2への積載量が検出される。
【0029】
ダンプトラック2には、その構成機器類が適正に作動しているか否かを検出する各種のセンサ20a,20b,20c,・・・(センサを総称する場合には符号20を用いる)が設けられており、これらセンサ20によって、構成機器類の稼働状況をモニタリングしている。図3に示したように、センサ20による検出信号はセンサデータ処理部21に伝送されて、所要の信号処理がなされる。センサデータ処理部21では、センサ20の検出信号の信号レベルを時系列的に配列してグラフ表示可能な機器稼働状態検出データが作成される。
【0030】
センサ20による検出の一例として、図4にエンジンの排気温度の時系列的な推移を示す。排気温度は環境汚染,機器類の保護、燃費効率等の点で重要な管理項目であり、排気温度は一定の範囲内でなければならない。このために、図4において、適正温度範囲PU−PLと限界温度範囲BU−BLとが設定されている。ここで、ダンプトラック2が走行している間において、エンジン排気温度が適正温度範囲PU−PL内で推移しておれば、良好な作動状態でダンプトラック2が走行していることになる。この適正温度PU以上、若しくは適正温度PL以下であっても、限界温度範囲BU−BLを越えない限りは、走行に支障を来すものではない。そして、限界温度BUより高い温度となったり、限界温度BLより低い温度となったりすると、エンジンやそれに関連する機器に不具合乃至故障が発生するおそれがあるものとする。
【0031】
センサデータ処理部21にアラーム判定部22が接続されており、このアラーム判定部22により警報を発生させるか否かの決定がなされる。ここで、エンジンの排気温度については、適正温度範囲PU―PLと限界温度範囲BU―BLとが定められており、これらを合わせて2段階の警報を発生させることもできる。但し、ダンプトラック2のオペレータに警告するためには、限界温度範囲BU―BLが選択され、アラーム判定部22によりこの限界温度範囲BU―BLの範囲外になると、警報部23によりブザー等の警報が生じることになる。なお、警報としては、例えば、適正温度範囲PU―PLの範囲外になった時は「警報レベル」としてランプを点灯させることによって、オペレータに注意を促すようになし、限界温度範囲BU―BLを超えたときには、「危険レベル」として、ランプとブザーとを併用することによって、より正確にオペレータに報知させるように設定することもできる。
【0032】
鉱山における適宜の位置に管理センタ30が設置されており、この管理センタ30は鉱山全体における各種の作業の管理が行われる。そして、ダンプトラック2には無線送信部24が設置されており、この無線送信部24により機器稼働状態検出データは無線通信で管理センタ30に送信される。
【0033】
管理センタ30側は無線受信部31を備えており、この無線受信部31によりダンプトラック2の無線送信部24から送信される各種のデータが受信される。そして、この無線受信部31には信号処理手段32が接続されており、この信号処理手段32において、ディスプレイ33にダンプトラック2の管理画像を生成するために必要なデータが作成されることになる。ここで、管理画像は、管理の対象となる稼働状態の変化と、発報表示とを含むものである。
【0034】
管理画像を作成するための信号処理手段32の構成を図5に示す。同図に示したように、無線受信部31により受信されたダンプトラック2等を構成する各稼働機器類に装着したセンサ20で得られた機器稼働状態検出データが受信される。そこで、以下においては、センサ20の一例としては、ダンプトラック2のエンジンの排気温度を検出するものであって、機器稼働状態検出データに基づいてこのエンジンの排気温度の管理が行われるものについて説明する。
【0035】
ダンプトラック2からダンプトラック2のエンジン排気温度のデータが他のデータと共に送信されて、管理センタ30の無線受信部31により受信されると、このデータがグラフ作成部34において、ダンプトラック2のエンジンの排気温度の時系列的な推移を示すグラフからなる機器稼働状態検出データとして作成される。また、この機器稼働状態検出データに基づいて、「警戒レベル」,「危険レベル」といった複数段階での発報表示に関するデータが作成される。このために、信号処理手段32は、警報レベル判定部36を有するものであり、この警報レベル判定部36により何時、どのレベルの発報があるかが検出される。時系列的に配列した機器稼働状態検出データと発報表示データとからなる管理画像はディスプレイ33に表示される。このディスプレイ33における管理画像の表示の一例を図6に示す。この図6の管理画像はダンプトラック2のエンジンの排気温度の時系列的なグラフ表示を含むである。
【0036】
ここで、ディスプレイ33の画面には、表示領域が区分されて、複数の表示領域が形成されている。図6に示した画面では、時間軸表示領域40と、発報表示領域41及び機器稼働状態検出データ表示領域42とが含まれている。また、表示画像の切り替えを行うためのアイコンが表示されている切り替えアイコン表示部43が画面の上部位置に設けられている。
【0037】
ここで、機器稼働状態検出データ表示領域42には、図4に示したエンジン排気温度の時間的な推移が表示される。発報表示領域41には、時間軸上での発報表示が示されている。図中において、三角印の発報マークは、適正温度範囲PU−PLの範囲外になった警戒レベルの警報が発生したことを示し、ギア型の発報マークは限界温度範囲BU−BLの範囲外になったことを示すものであって、エンジンその他の機器が損傷に至るような危険レベルの警報が発生したことを示している。このように、発報は2段階のレベルを有するものであるから、無線受信部31からの信号に基づいて警報レベル判定部36によりどのレベルの発報があったのかが判定される。そして、グラフ作成部34で作成した機器稼働状態検出データと警報表示作成部36で作成した発報表示データが画面作成部37に入力されて、エンジンの排気温度の推移及び発報表示からなる管理画像がディスプレイ33に表示される。
【0038】
図6に示した管理画像は機械稼働状況表示画面である。ディスプレイ33には機械稼働状況表示画面に代えて、他の画面が表示される。この切り替えを行うために設けられているのが、切り替えアイコン表示部43である。従って、切り替えアイコン表示部43におけるいずれかのアイコン43a〜43eを選択すると、ディスプレイ33の画面は、所定の画像が表示されるように切り替わることになる。
【0039】
アイコン43aが選択されると、図6の機械稼働状況表示画面が表示される。これによって、エンジンの排気温度がディスプレイ33に表示され、これと共に、発報表示領域41にエンジン排気温度に基づいて2種類の発報マークが表示される。
【0040】
切り替えアイコン表示部43の操作によって、異なる表示態様が可能になる。即ち、アイコン43bはメインテナンス記録表示画面を選択するためのものであり、このディスプレイ33に表示されるメインテナンス記録表示画面は、図7に示したように、日付表示領域50と、メインテナンス要求(リコール)表示領域51及びメインテナンス実行表示領域52、発報記録表示領域53が形成される。また、ディスプレイ33には、詳細リスト表示領域54も形成されている。詳細リスト表示領域54には、メインテナンス要求表示の内容BUが、また実行したメインテナンスの項目TIが、さらにメインテナンスを行うきっかけとなった警報の項目ALが、それぞれ最新のものから順にリストアップされることになる。
【0041】
従って、メインテナンスを行うに当っては、アイコン43cを選択して、メインテナンス記録表示画面を表示し、メインテナンス要求表示領域51にメインテナンス履歴が表示されることになり、実際にメインテナンスが必要であるのか、また何時、どのようなメインテナンスを行うかの判断のための参考とすることができる。
【0042】
このために、画面作成部37には、関連情報選択部38が接続されており、メインテナンス関連情報は、予め情報記録手段であるデータベース39に記録されており、このデータベース39からメインテナンスに関連する情報が読み出されて、図7に示したようなデータが、ディスプレイ33の詳細リスト表示領域54に表示されることになる。
【0043】
そして、切り替えアイコン表示部43を操作して、アイコン43dを選択すれば、警報に関連した不具合の解消のための解決方法に関する情報が得られ、またアイコン43eを操作すれば、メインテナンスのためにどのような作業が必要か、修理や点検に必要な装置や部品のリストがディスプレイ33に表示される。さらに、適切な時期にメインテナンス作業が行われたか否か、さらに実施されたメインテナンス作業が適正であったかの確認も可能となる。
【0044】
ところで、少なくとも発報表示領域41における表示を維持した状態で、機器稼働状態検出データ表示領域40に関連情報を表示することができる。即ち、切り替えアイコン表示部43は複数のアイコンを備えている。これらのうち、アイコン43aが選択されると、機器稼働状態検出データ表示領域42には、図6の当該ダンプトラック2の稼働状態が表示される。
【0045】
さらに、アイコン43cが選択されると、図8に示した比較データ表示画面に切り替わることになる。複数台のダンプトラック2が採鉱場3と選鉱ヤード5との間を往復するものであるが、各ダンプトラック2について、走行ルートはほぼ同じである。従って、機器稼働状態検出データとして表示されるエンジンの排気温度の時系列的な変化は実質的に同じである。従って、1台のダンプトラック2のデータREALと、他のダンプトラックのデータCOMPとをディスプレイ33に並べて表示することによって、発報があったときに、関連機器の不具合が発生したものか、またはオペレータによる操作に問題があったのか等の判定が可能となる。
【0046】
さらに、ダンプトラックにはエンジンの排気経路に複数の排気温度センサが設けられているが、これら各部のセンサから得られたグラフを同一時間軸上に重ね合わせて表示した複合グラフデータ表示CGDをディスプレイ33に表示できるようにすることもできる。そして、これらのグラフのうちの一部を抽出しての表示LGDを同一画面上に表示することができる。これによって、エンジンの排気経路での温度変化が把握できるようになり、ダンプトラック2の走行管理を行う上での有益な情報が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 掘削機械, 2 ダンプトラック, 3 採鉱場, 4 廃棄場, 5 選鉱ヤード, 20 センサ,21 センサデータ処理部, 22 異常判定部, 23 警報部,
24 無線通信部, 30 管理センタ, 31 無線受信部, 32 信号処理部,
33 ディスプレイ, 34 グラフ作成部, 35 警報レベル判定部, 36 警報表示作成部, 37 画面作成部, 38 関連情報選択部, 39 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8