【文献】
Qina Sun,Jianlong Wang,“Cementation of radioactive borate liquid waste produced in pressurized water reactors”,Nuclear Engineering and Design,2010年,Vol.240,PP.3660-3664
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添加剤は、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方。
1)各種の固化剤原料及び高濃度ホウ素含有廃樹脂を秤量又は計量して準備し、固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜260重量部と、石灰5〜20重量部と、水20〜60重量部と、固化補助剤としてポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部及びメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部と、添加剤2〜20重量部との原料を含む工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加える工程、
3)計量された高濃度ホウ素含有廃樹脂と水以外の他の固化補助剤原料とを仕込む工程、
4)攪拌しながらセメントを加え、攪拌過程において材料の状況に応じて水を加え、均一になるまで攪拌する工程、
5)均一に攪拌した後放置養生する工程、
を含むことを特徴とする、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法。
前記工程1)の固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜200重量部と、石灰10〜20重量部と、水20〜40重量部と、固化補助剤としてポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部及びメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部と、添加剤4〜15重量部との原料を含むことを特徴とする、請求項8に記載の原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法。
前記工程1)において、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂の秤量すべき重量と水の秤量すべき重量に換算し、前記各種の固化剤原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製することを特徴とする、請求項8から11のいずれか1項に記載の原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法。
前記工程3)において、自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期15〜25rpm、後期40〜60rpmの攪拌速度、合計100〜120minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、固化補助剤と添加剤を加えることを特徴とする、請求項8から12のいずれか1項に記載の原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法。
前記工程4)において、撹拌機を作動させて、攪拌速度15〜25rpmで、攪拌過程において、固化処方に必要な水の重量部数を満足するまで徐々に水を加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度800〜1200kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けることを特徴とする、請求項8から13のいずれか1項に記載の原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的問題の一つは、従来技術のセメント固化処方の固化閉じ込め量が小さく、固化体の中心部温度が高く、セメントスラリーの凝結が悪く、固化強度が低いという欠陥に対して、固化閉じ込め量が高く、固化体の中心部温度が低く、浸出率と固化強度が高く、各項の指標がいずれも中華人民共和国国家標準の要求を満足でき、安全性が高い、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする別の技術的問題は、操作が簡単で、固化効果が良い、上記セメント固化処方を採用する原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の固化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明がその一つの技術的問題を解決するために採用する技術方策は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜260重量部と、石灰5〜20重量部と、水20〜60重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤2〜20重量部との原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方である。
【0010】
上記セメント固化処方において、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜200重量部と、石灰10〜20重量部と、水20〜40重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤4〜15重量部との原料を含むことが好ましい。
【0011】
上記セメント固化処方において、上記セメント固化処方における添加剤は、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物であることが好ましい。
【0012】
上記セメント固化処方において、上記固化補助剤は、ポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部を含むことが好ましい。
【0013】
上記セメント固化処方において、上記ポリカルボン酸塩系減水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリブテン酸ナトリウム、ポリブテン酸カリウム、Basf glenium51(減水剤の商品商標)、Sika ViscoCrete(減水剤の商品商標)のうちの1種類であることが好ましい。
【0014】
上記セメント固化処方において、上記セメント固化処方における固化補助剤は、更にメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部を含むことが好ましい。
【0015】
上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント198重量部と、石灰11重量部と、水30重量部と、固化補助剤0.25重量部と、添加剤3.70重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、ポリアクリル酸ナトリウムであり、上記添加剤が、水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物であることが更に好ましい。
【0016】
上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント184重量部と、石灰10重量部と、水19重量部と、固化補助剤2重量部と、添加剤2重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、ポリブテン酸ナトリウムであり、上記添加剤が、水酸化ナトリウムとケイ酸ナトリウムの混合物であることが更に好ましい。
【0017】
上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170重量部と、石灰9重量部と、水29重量部と、固化補助剤1重量部と、添加剤2.3重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、SikaViscoCrete 20HEであり、上記添加剤が、炭酸リチウムとケイ酸ナトリウムの混合物であることが更に好ましい。
【0018】
本発明がその別の技術的問題を解決するために採用する技術方策は、
1)各種の固化剤原料及び高濃度ホウ素含有廃樹脂を秤量又は計量して準備し、固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜260重量部と、石灰5〜20重量部と、水20〜60重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤2〜20重量部との原料を含む工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加える工程、
3)攪拌しながら高濃度ホウ素含有廃樹脂と水以外の他の固化補助剤原料とを仕込む工程、
4)攪拌しながらセメントを加え、攪拌過程において水を加え、均一になるまで攪拌する工程、
5)均一に攪拌した後放置養生する工程、
を含む、原子力発電所所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法である。
【0019】
上記工程1)において、上記固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜200重量部と、石灰10〜20重量部と、水20〜40重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤4〜15重量部との原料を含むことが好ましい。
【0020】
上記工程1)において、上記固化処方の添加剤は、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物であることが好ましい。
【0021】
上記工程1)において、上記固化補助剤は、ポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部を含むことが好ましい。
【0022】
上記工程1)において、上記固化処方におけるポリカルボン酸塩系減水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリブテン酸ナトリウム、ポリブテン酸カリウム、Basf glenium51、Sika ViscoCreteの1種類であることが好ましい。
【0023】
上記工程1)において、上記固化補助剤は、更にメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部を含む。
【0024】
上記固化方法の工程1)において、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂の秤量すべき重量と水の秤量すべき重量に換算し、上記各種の固化剤原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製することが好ましい。
【0025】
上記固化方法の工程3)において、自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期15〜25rpm、後期40〜60rpmの攪拌速度、合計100〜120minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、固化補助剤と添加剤を加えることが好ましい。
【0026】
上記固化方法の工程4)において、撹拌機を作動させて、攪拌速度15〜25rpmで、攪拌過程において、固化剤に必要な水の重量部数を満足するまで水を徐々に加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度800〜1200kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けることが好ましい。
【0027】
上記固化方法の工程5)において、攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のセメント固化処方は、従来技術と比べて、以下のような有益な効果がある。
本発明のセメント固化処方は、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂向けのセメント固化処方であり、その固化基材成分がセメントと、石灰と、水と、固化補助剤と、添加剤であり、固化基材は、高濃度ホウ素含有廃樹脂と混合された後高硬度のセメントブロックを形成し、高濃度ホウ素含有廃樹脂がその中で分散して埋め込まれるようになる。本発明のセメント固化処方は、従来のセメント固化処方に対して、高濃度ホウ素含有廃樹脂がセメント固化体の中で均一に分散しており、即ち、高濃度ホウ素含有廃樹脂の粒子が分散して埋め込まれており、固化体が破壊されて割れてしまった場合、又は破砕されて多くの固化体の破片を形成した場合においても、高濃度ホウ素含有廃樹脂が埋め込まれたままであり、放射能漏れの危険が減少し、より高い安全性を持つという良好な利点がある。また、廃樹脂が分散して埋め込まれることができればこそ、本発明によれば、固化体が高い固化閉じ込め量、高い固化強度を有し、且つ浸出率を低下させ、閉じ込め量として、一般に40%(V/V)以上に達することができ、一番良い場合、59%(V/V)に達することができ、さらにセメント固化体の他の各項の性能指標がいずれも中華人民共和国国家標準GB14569.1―2011の要求を満足することも実現可能になる。このように、中華人民共和国国家標準の要求を満足した前提で、できる限り多くの廃樹脂を閉じ込め、固体放射性廃棄物の量を減少させて、放射性廃棄物の処分コストを低下させた。
【0029】
より重要なのは、本発明のセメント固化剤の処方によれば、従来のセメント固化においての高濃度ホウ素含有樹脂による凝結時間が長くなり、強度が低くなる問題を解決したということである。そして、ゼオライトを減水剤として使用しないことで、それを一定の量まで添加すると生じた固化性能の低下、水と接すると粉末化するという問題を防止した。
【0030】
上記添加剤として、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物を選定し、上記固化補助剤として、ポリカルボン酸塩系減水剤を選定し、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤である例えば商品商標Basf glenium51の減水剤、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤である例えば商品商標Sika ViscoCreteの減水剤等である。これらの添加剤と固化補助剤は、専門に高濃度ホウ素含有廃樹脂に対して組み合わせたものであり、添加剤と固化補助剤の相乗効果によって、セメントスラリーが凝結しなく、セメント固化体の強度の低下及び樹脂が浮いて層分離する等の問題を効果的に解決でき、かつ最も大切なのは、セメント固化体の閉じ込め率を増加したことである。
【0031】
本発明の固化方法は、従来技術と比べて、原料の添加終了後、攪拌過程において偽凝結の現象が発生し、攪拌によって混合物の中で均一に分散された高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂は、まずその位置が固定され、さらに後の放置固化の過程において、固化された固化体によって分散のまま埋め込まれ、高い閉じ込め率、高い強度、低い浸出率を実現した。本発明によれば、固化プロセスの条件の要求が低く、実現しやすく、操作が簡単で、固化効果が良く、現場で固化する要求を満足できる、という有益な効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して、具体的な実施形態を合わせて本発明をさらに説明する。
【0034】
高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜260重量部と、石灰5〜20重量部と、水20〜60重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤2〜20重量部との原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方である。
【0035】
上記セメント固化処方において、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、好ましくは、セメント170〜200重量部と、石灰10〜20重量部と、水20〜40重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤4〜15重量部との原料を含む。
【0036】
上記セメント固化処方において、添加剤として、好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物である。
【0037】
上記セメント固化処方において、上記固化補助剤は、ポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部を含む。
【0038】
上記セメント固化処方において、上記のポリカルボン酸塩系減水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリブテン酸ナトリウム、ポリブテン酸カリウム、Basf glenium51(減水剤の商品商標)、Sika ViscoCrete(減水剤の商品商標)のうちの1種類である。
【0039】
上記セメント固化処方において、固化補助剤は、更にメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部を含む。
【0040】
更に好ましくは、上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント198重量部と、石灰11重量部と、水30重量部と、固化補助剤0.25重量部と、添加剤3.70重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、ポリアクリル酸ナトリウムであり、上記添加剤が、水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物である。
【0041】
更に好ましくは、上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント184重量部と、石灰10重量部と、水19重量部と、固化補助剤2重量部と、添加剤2重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、ポリブテン酸ナトリウムであり、上記添加剤が、水酸化ナトリウムとケイ酸ナトリウムの混合物である。
【0042】
更に好ましくは、上記セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170重量部と、石灰9重量部と、水29重量部と、固化補助剤1重量部と、添加剤2.3重量部との原料を含み、上記固化補助剤が、Sika ViscoCrete 20HEであり、上記添加剤が、炭酸リチウムとケイ酸ナトリウムの混合物である。
【0043】
本発明がその別の技術的問題を解決するために採用する技術方策は、
1)各種の固化剤原料及び高濃度ホウ素含有廃樹脂を秤量又は計量して準備し、セメント固化処方は、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜260重量部と、石灰5〜20重量部と、水20〜60重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤2〜20重量部との原料を含む工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加える工程、
3)攪拌しながら高濃度ホウ素含有廃樹脂と水以外の他の固化剤原料とを仕込む工程、
4)攪拌しながらセメントを加え、攪拌過程において水を加え、均一になるまで攪拌する工程、
5)均一に攪拌した後放置養生する工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法である。
【0044】
上記工程1)において、好ましくは、上記セメント固化処方において、高濃度ホウ素含有廃樹脂100重量部の固化で、セメント170〜200重量部と、石灰10〜20重量部と、水20〜40重量部と、固化補助剤0.25〜10重量部と、添加剤4〜15重量部との原料を含む。
【0045】
上記工程1)において、好ましくは、上記セメント固化処方における添加剤は、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム及びケイ酸ナトリウムのうちの少なくとも2種類の混合物である。
【0046】
上記工程1)において、好ましくは、上記固化補助剤は、ポリカルボン酸塩系減水剤0.25〜5重量部を含む。
【0047】
上記工程1)において、好ましくは、上記固化処方におけるポリカルボン酸塩系減水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリブテン酸ナトリウム、ポリブテン酸カリウム、Basf glenium51、Sika ViscoCreteの1種類である。
【0048】
上記工程1)において、好ましくは、上記固化補助剤は、更にメタアルミン酸ナトリウム1〜5重量部を含む。
【0049】
上記固化方法の工程1)において、好ましくは、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂の添加すべき量に換算し、上記各種の固化補助剤と添加剤に水を加え溶解して溶液を調製する。
【0050】
上記固化方法の工程3)において、好ましくは、自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期15〜25rpm、後期40〜60rpmの攪拌速度、合計100〜120minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、固化補助剤と添加剤を加える。
【0051】
上記固化方法の工程4)において、好ましくは、撹拌機を作動させて、攪拌速度15〜25rpmで、攪拌過程において、固化剤に必要な水の重量部数を満足するまで水を徐々に加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度800〜1200kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続ける。
【0052】
上記固化方法の工程5)において、好ましくは、攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生する。
【0053】
以下に、複数の実施例によって、上記技術方策について説明する。
【0054】
1.先ず、セメント固化処方について詳細に説明する。
【0055】
実施例1
高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの固化で、品番42.5の普通ケイ酸塩セメント198kgと、石灰11kgと、水30kgと、ポリアクリル酸ナトリウム0.25kgと、添加剤(水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物)3.70kgとの原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方であった。本実施例では、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の閉じ込め率は46%であった。
【0056】
実施例2
高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの固化で、品番42.5の普通ケイ酸塩セメント184kgと、石灰10kgと、水19kgと、ポリブテン酸ナトリウム2kgと、添加剤(水酸化ナトリウムとケイ酸ナトリウムの混合物)2kgとの原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方であった。本実施例では、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の閉じ込め率は50%であった。
【0057】
実施例3
高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの固化で、品番42.5の普通ケイ酸塩セメント170kgと、石灰9kgと、水29kgと、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤Sika ViscoCrete20HE(商品商標)1kgと、添加剤(ケイ酸ナトリウムと炭酸リチウムの混合物)2.3kgとの原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方であって、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の閉じ込め率は59%であった。
【0058】
実施例4
高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの固化で、普通ケイ酸塩セメント260kgと、石灰15kgと、水40kgと、ポリブテン酸カリウム5kgと、メタアルミン酸ナトリウム5kgと、添加剤(水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物)6kgとの原料を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方であった。本実施例では、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の閉じ込め率は41%であった。
【0059】
実施例5
高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの固化で、普通ケイ酸塩セメント200kg、石灰15kg、水40kg、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤Basf glenium51(商品商標)10kg、添加剤(水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物)8kgとを含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられるセメント固化処方であった。本実施例では、高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂の閉じ込め率は49%であった。
【0060】
2.以下に、原子力発電所で発生した高濃度ホウ素含有廃樹脂を選択し、本発明の実施例1〜5の固化処方をそれぞれ採用して、本発明に係る固化方法によって固化を行った。
【0061】
実施例6
1)上記実施例1の固化剤の配合割合に従って、各種の固化剤原料を秤量し、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂の秤量すべき重量と水の秤量すべき重量に換算して秤量または計量し、先ず固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製した工程、
2)固化剤原料のうちの石灰を固化容器に加えた工程、
3)自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期15(revolutions per minute、回/分)、後期60rpmの攪拌速度、合計100minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、水以外の固化補助剤と添加剤との溶液を加えた工程、
4)撹拌機を作動させて、攪拌速度25rpmで、攪拌過程において、固化剤に必要な水の重量部数を満足するまで水を徐々に加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度800kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けた工程、
5)攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生してセメント固化体サンプル1−1が得られ、同じ原料と方法を採用し繰り返して調製することにより、さらに番号1−2〜1−6の5個のサンプルを得た工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法であった。
【0062】
実施例7
1)上記実施例2のセメント固化処方の配合割合に従って、各種の固化剤原料を秤量して準備し、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂の添加すべき量と水の添加すべき量に換算し、上記固化処方における各種の原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製した工程、
2)まず、原料のうちの石灰を固化容器に加えた工程、
3)自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期25rpm(revolutions per minute、回/分)、後期40rpmの攪拌速度、合計110minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、水以外の固化補助剤と添加剤との溶液を加えた工程、
4)撹拌機を作動させて、攪拌速度15rpmで、攪拌過程において、固化処方に必要な水の重量部数を満足するまで徐々に水を加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度1200kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けた工程、
5)攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生してセメント固化体サンプル2−1が得られ、同じ原料と方法を採用し繰り返して調製することにより、さらに番号2−2〜2−20の19個のサンプルを得た工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法であった。
【0063】
実施例8
1)上記実施例3の固化処方の配合割合に従って、各種の固化剤原料を秤量しまたは計量して準備し、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂と水の添加すべき量に換算し、上記の固化処方における各種の原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製した工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加えた工程、
3)自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期20rpm(revolutions per minute、回/分)、後期50rpmの攪拌速度、合計110minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、水以外の固化補助剤と添加剤との溶液を加えた工程、
4)撹拌機を作動させて、攪拌速度20rpmで、攪拌過程において、固化剤に必要な水の重量部数を満足するまで水を徐々に加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度1100kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けた工程、
5)攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生してセメント固化体サンプル3−1が得られ、同じ原料と方法を採用し繰り返して調製することにより、さらに番号3−2〜3−6の5個のサンプルを得た工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法であった。
【0064】
実施例9
1)上記実施例4の固化処方の配合割合に従って、各種の固化剤原料を秤量しまたは計量して準備し、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂と水の添加すべき量に換算し、上記の固化処方における各種の原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製した工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加えた工程、
3)自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期22rpm(revolutions per minute、回/分)、後期55rpmの攪拌速度、合計100minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、水以外の固化補助剤と添加剤との溶液を加えた工程、
4)撹拌機を作動させて、攪拌速度16rpmで、攪拌過程において、固化剤に必要な水の重量部数を満足するまで水を徐々に加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度900kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けた工程、
5)攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生してセメント固化体サンプル4−1が得られ、同じ原料と方法を採用し繰り返して調製することにより、さらに番号4−2〜4−6の5個のサンプルを得た工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法であった。
【0065】
実施例10
1)上記実施例5の固化処方の配合割合に従って、各種の固化剤原料を秤量しまたは計量して準備し、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水の重量比を検出して、高濃度ホウ素含有廃樹脂と水の添加すべき量に換算し、上記の固化剤の各種の原料を秤量し、固化補助剤と添加剤に水を加えて溶解して溶液を調製した工程、
2)原料のうちの石灰を固化容器に加えた工程、
3)自由水付きの高濃度ホウ素含有廃樹脂を計量タンクによって固化容器へ仕込み、撹拌パドルを作動させて、初期18rpm(revolutions per minute、回/分)、後期45rpmの攪拌速度、合計110minの攪拌時間で、縦軸型攪拌方式を採用して攪拌した後、水以外の固化補助剤と添加剤との溶液を加えた工程、
4)撹拌機を作動させて、攪拌速度19rpmで、攪拌過程において、固化処方に必要な水の重量部数を満足するまで徐々に水を加えるように攪拌しながら、容器内へセメントホッパによって添加速度1150kg/hでセメントをゆっくりと加え、パドルを昇降させて上下に攪拌するように、均一になるまで0.5h攪拌し続けた工程、
5)攪拌を停止した後、固化容器を養生室に送り、表面を遮蔽物で覆って28日間放置養生してセメント固化体サンプル5−1が得られ、同じ原料と方法を採用し繰り返して調製することにより、さらに番号5−2〜5−6の5個のサンプルを得た工程、
を含む、原子力発電所の高濃度ホウ素含有放射性廃樹脂に用いられる固化方法であった。
【0066】
実施例11 原子力発電所の現場でホウ素含有廃樹脂セメント固化の工学規模での熱テスト実験を行った。
1)高濃度ホウ素含有廃樹脂(含水):430Kg、セメント:737.7Kg、石灰40.57kg、固化補助剤と添加剤:55.3Kg、廃樹脂内の含水量を除いた追加必要な水:80Lという重量に従って、高濃度ホウ素含有廃樹脂と、セメント固化剤を加え、なお、高濃度ホウ素含有廃樹脂と水の添加すべき量は、高濃度ホウ素含有廃樹脂に含まれた自由水を検出して算出した。固化補助剤と添加剤を溶解させて溶液を調製した。
2)石灰を1立方メートルの固化バレル(体積1m
3)の中に仕込んだ。
3)撹拌パドルによって絶えずに攪拌して、1立方メートルの固化バレルへ計量タンクによって廃樹脂を仕込み、固化補助剤としてポリカルボン酸塩系高性能減水剤Basf glenium51(商品商標)55.3Kg、及び添加剤として水酸化ナトリウムと炭酸リチウムの混合物を加えた。
4)廃樹脂の供給終了後、水を加えて計量タンクを洗い流し、かつその水をバレル内に注入し、セメントを加えて攪拌し続けた後、セメントの添加を停止したが、セメントのドライ粉体が表面に堆積して、攪拌し続けにくくなった。さらに水30L(追加する水が合計80Lである)を仕込んで、攪拌とセメントの添加を続け、セメントの供給終了後、1立方メートルの固化バレルを取り出して、クレーンによって吊り下げて、表層において既に偽初凝結が発生した。温度プローブを差し込んで、温度状況を観察したところ、19℃から32℃までゆっくりと昇温した。
【0067】
セメントスラリーの水和作用による温度上昇の検出については、RS285−661タイプのPTEプレート温度パッチを採用して、RS363−0238タイプの温度伝送器を外部から接続し、1〜5Vの信号をデュアルチャネル横河記録計に入力して連続計測する方法で行った。二つのPTEプレート温度パッチは、それぞれ固化バレルの真ん中と中心部からコンクリートバレル壁までの半分になる位置に置かれ、差し込み深度は、セメントスラリーの高さの半分の位置であった。計測結果から、セメントスラリーが1日間の後から初めて水和放熱反応を行うようになったことが明らかになった。セメント固化体中心部の最高温度が80℃よりも低く、中国国内外の専門家から提案された、セメント固化体の中心部温度が80℃より低いべきである要求を満足した。
【0068】
その結果、セメント固化体サンプル7−1が得られ、同じ原料と方法を採用して試験を繰り返して行い、番号7−2〜7−6の5個のサンプルを得た。
【0069】
上記実施例に加えて、以下にまたより多くの実施例を挙げる。高濃度ホウ素含有廃樹脂100kgの処理に対するものである。
【0071】
実施例12〜15では、実施例6の固化方法を採用してセメント固化体サンプル12−1〜15−1を製造し、実施例16〜18では、実施例7の固化方法を採用してセメント固化体サンプル16−1〜18−1を製造し、実施例19〜20では、実施例8の固化方法を採用してセメント固化体サンプル19−1〜20−1を製造し、実施例21〜22では、実施例9の固化方法を採用してセメント固化体サンプル21−1〜22−1を製造し、実施例23〜24では、実施例10の固化方法を採用してセメント固化体サンプル23−1〜24−1を製造した。
【0072】
セメント固化体の性能テストの結果
本発明の実施例6〜24で製造されたセメント固化体サンプルの各項の性能テスト結果は、それぞれ以下の通りである。
【0073】
1.圧縮強度
GB 14569.1−1993に規定の方法に基づいて、本発明の実施例6〜24に従って調製された放射性ホウ素含有廃樹脂セメント固化体サンプルの圧縮強度の測定を行った。測定方法は、GB14569.1−2011を参照して実行したが、放射性廃樹脂セメント固化体サンプルの圧縮強度の検出試験結果は、それぞれ表1〜表7に示されている。
【0074】
表1 実施例6の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表1】
【0075】
表2 実施例7の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表2】
【0076】
表3 実施例8の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表3】
【0077】
表4 実施例9の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表4】
【0078】
表5 実施例10の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表5】
【0079】
表6 実施例11の放射性ホウ素含有廃樹脂のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表6】
【0080】
表7 実施例12〜24のセメント固化サンプルの圧縮強度の計測結果
【表7】
【0081】
GB 14569.1−1993には、「セメント固化体サンプルの圧縮強度が7MPaより小さくなるべきではない」と規定しており、表1〜7から、すべての廃樹脂セメント固化体サンプルの圧縮強度も7MPaを超え、その要求を満足することが分かる。
【0082】
実施例1〜24から、増えつつある閉じ込め量に基づいて、廃樹脂セメント固化体サンプルの強度は若干低下したが、いずれもGB 14569.1−1993の要求を満足でき、またGB14569.1−2011の要求をも満足することが分かる。これらの実施例では、廃樹脂の閉じ込め量は40〜59%であったが、従来技術よりも15%以上向上した。
【0083】
2.耐衝撃試験
GB 14569.1−1993「低、中レベル放射性廃棄物固化体の性能要求―セメント固化体」に規定の方法に従って、本発明で製造された廃樹脂セメント固化体サンプルの耐衝撃性能の測定を行った。サンプルの基本パラメータと耐衝撃性能テスト結果は、表8に示されている。
【0084】
表8 耐衝撃試験におけるセメント固化体の基本パラメータと試験結果
【表8】
【0085】
GB14569.1−2011には、「高さ9mの箇所から鉛直方向にコンクリート地面に自由落下したセメント固化体サンプルが顕著に破砕を生じるべきではない」との規定もあり、本発明で製造されたサンプルは、縁部と角部からの小破片とクラックしかなかったものであり、上記の表から、実施例6〜11における12個のサンプルでは、落下試験の後2つに割れたのは一つだけであったことが分かり、本発明に従って製造された廃樹脂セメント固化体の耐衝撃性がよく、GB14569.1−2011の要求を満足することが明らかになる。
【0086】
3.耐水性試験
3.1 耐浸出性
表9には、固化されたサンプル内における放射性核種の総放射能量A
0値が列記されている。
【0087】
表9 セメント固化体における各放射性核種単独でのA
0値
【表9】
【0088】
表10には、任意に選定された3枚の樹脂−セメント固化体サンプルの42日目の浸出率の結果が列記されており、
図1は、上記セメント固化体サンプルの先の42日間の浸出試験の結果を示したものである。
図2は、セメント固化体サンプルの1年間の浸出試験の結果を示したものである。
【0089】
表10 セメント固化体サンプルにおける各放射性核種の42日目の浸出率
【表10】
【0090】
表10でのデータから、放射性ホウ素含有廃樹脂セメント固化体サンプルにおいて、
90Sr、
60Coと
137Csの3種類の放射性核種の42日目の浸出率(Rn)は、いずれも中華人民共和国国家標準GB 14569.1−2011に規定の限界値よりも低く、その要求を満足できたことが分かる。
【0091】
Pu−239は、原子力発電所の廃棄物源の項に含まれていないので、試験においてこの核種について解析しないことにした。
【0092】
廃樹脂固化体は、1年間にわたる長期間の浸出試験を経た後、見かけ品質に変化があって、3つのサンプルの中の2つ(1−6と3−6)の表面にクラックが発生した。表11は、長期間の浸出試験を行った後のサンプルの圧縮強度を測定したものであり、その結果から、長期間の浸出を行った後も、固化サンプルの圧縮強度は、依然として中華人民共和国国家標準の7MPaの限界値の要求を満足し、且つ浸出試験の前より大幅に大きくなったことが判明した。実際には、骨材を添加していない普通の純セメント固化体さえ長期間になると小さいクラックが現れることが一般であるから、いずれも水で1年間ほど浸漬された3つのサンプルなら言うまでもない。解析データから、放射性浸出率が増加しなかったが、圧縮強度が著しく向上し、テスト結果が18.4MPa〜27.2MPaで、いずれも元の平均値15.6MPaよりも大きく向上し、このような微細クラックによって固化体の性能指標が影響されることはないことが示された。
【0093】
表11 廃樹脂セメント固化体の1年間浸出後の圧縮強度
【表11】
【0094】
3.2 耐浸漬性
耐浸漬性試験用の廃樹脂セメント固化体サンプルとして、実施例1〜5における固化剤を採用して実施例6〜11の固化方法によって調製されたものであり、セメント固化体サンプルの基本パラメータは、表12に示されている。耐浸漬性試験の結果は、表13に示されている。
【0095】
表から、5個の廃樹脂セメント固化体サンプルは、いずれも耐浸漬性試験の後の圧縮強度が依然として7MPaよりも大きく、耐浸漬性試験の前の圧縮強度と比べて、浸漬後の圧縮強度ロスが10.2%で、GB 14569.1−2011に規定の要求を満足できたことが分かる。
【0096】
表12 廃樹脂セメント固化体サンプルの耐浸漬性試験における基本パラメータ
【表12】
【0097】
表13 廃樹脂セメント固化体サンプルの耐浸漬性試験の結果
【表13】
【0098】
4.耐凍結融解性
調製された樹脂−セメント固化体サンプルについて耐凍結融解試験を行ったところ、6個のサンプルはいずれも耐凍結融解性試験の後の圧縮強度が7MPaよりも大きいという耐凍結融解テスト結果となり、耐凍結融解性試験の前の圧縮強度と比べて、凍結融解試験後の平均圧縮強度ロスが6.2%だけであり、GB 14569.1−2011に規定の要求を満足した。テスト結果は、表14に示されている。
【0099】
表14 廃樹脂セメント固化体サンプルの耐凍結融解試験の結果
【表14】
【0100】
5.耐γ線照射性
コバルト線源照射室では、本物の放射性樹脂のセメント固化体サンプルを照射できないので、非放射性の模擬廃樹脂のセメント固化体を使用して照射するしかできなかった。GB14569.1−1993では、「非放射性の模擬廃棄物を使用して所定の処方に従ってセメントスラリーを調製し、セメントスラリーを直接試験用金型に注入する」ことによってサンプルを調製すると規定している。
【0101】
照射試験は、
60Co線源室で行い、照射サンプルは合計6枚であった。試験サンプルの照射線量率が1.565×10
3Gy/hであり、総照射時間が652hであり、積算放射線量が1×10
6Gyであった。照射完了後、サンプルの圧縮強度テストを行い、テスト結果の詳細は表15に示されている。
【0102】
GB14569.1−2011では、「γ線照射試験後のセメント固化体サンプルの圧縮強度ロスが25%を超えない」との規定もある。
【0103】
表15から、耐γ線照射前後の固化体の圧縮強度は、いずれも7MPaよりも大きく、照射後、固化体の圧縮強度にロスがなく、GB 14569.1−2011の要求を満足したことが分かる。
【0104】
表15 廃樹脂セメント固化体の耐γ線照射試験の結果
【表15】
【0105】
6.放射線防護の最適化解析
表16に示すように、本発明と従来技術について、廃樹脂固化によるオペレータの被ばく線量の比較解析を行った。
【0106】
表16 本発明と従来技術についてのオペレータの被ばく線量の比較解析
【表16】
【0107】
表16から、本発明は、従来技術と比べ、作業者に対する影響の差が大きくなさそうであることが分かる。しかし、同じ量の廃樹脂を処理して発生されたセメント固化体廃棄物バレルの数が少なくなて、操作時間が短くなり、作業者の受けた放射性線量がその分少なくなる。廃棄物バレル内で固化する廃樹脂量の増大による廃棄物バレル外面の放射線量の向上については、高い線量レベルの廃樹脂と低いものを組み合わせること、計量タンクに監視装置を付加すること、計量タンク線量とバレル表面線量との間の変動関係を作成すること等の効果的な抑制措置によって、本発明のセメント固化処方で廃樹脂を処理する際の放射線防護安全を確保することができる。廃樹脂に付着した放射性核種は、ほとんど寿命が短く、例えばバレル表面の線量率が2mS
V/hよりやや大きいので、一時貯蔵によって、運搬基準よりも小さくまで減衰させた後運搬することができる。
【0108】
7.結論
試生産での実際操作と固化体性能のテスト結果から、本発明のセメント固化処方及びその固化方法は、生産プロセスが実行可能であり、放射性廃樹脂セメント固化体の各項の性能指標のいずれもGB 14569.1−2011の要求を満足でき、かつ放射性高濃度ホウ素含有廃樹脂の閉じ込め率が従来技術よりも大きく向上したという結論が得られる。