(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るセンシング方法について、センシング装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1及び第2実施形態に共通するセンシング装置10の構成]
先ず、第1及び第2実施形態に共通するセンシング装置10の構成について、
図1の概略ブロック図を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、センシング装置10は、センサ部(センサ)12と、センサ制御回路14(センサ制御回路80)と、演算部16と、電源回路18と、ROM(Read Only Memory)20と、RAM(Random Access Memory)22と、クロック発生器24と、入力部26と、表示器28とを基本的に備える。
【0018】
センサ部12は、アナライトの濃度に相関する信号(以下、計測信号S)を取得する。センサ部12として、サンプリング間隔Tsを容易に変更可能な光学センサ(例えば、蛍光センサ)を適用することが好ましい。なお、センサ部12の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、血糖値をグルコースオキシダーゼ(GOD)等の酵素を用いた酵素電極法等による電気的(電気化学方式)に測定するセンサを適用してもよい。
【0019】
センサ制御回路14は、センサ部12を駆動制御することで、所望のタイミングで計測信号Sを取得可能である。センサ制御回路14は、計測信号Sとしての電流値(アナログ信号)を電圧値に変換すると共に、この電圧値を量子化してデジタル信号に変換する。センサ制御回路14は、このアナログ信号又はデジタル信号に対して所定のフィルタ処理を施すことで、計測信号Sに混入するノイズ成分を除去する。
【0020】
演算部16は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等で構成されており、ROM20に予め記憶されたプログラムを読み出し、後述する各種信号処理を実行する。演算部16は、センサ制御回路14から取得した信号値Sf(k)に基づいてアナライトの濃度を定量する濃度定量部29として機能する。
【0021】
電源回路18は、演算部16を含むセンシング装置10内の各構成要素に電力を供給する。RAM22は、センサ部12を介して入力された計測信号Sの他、本発明に係るセンシング方法を実施するために必要な各種データを読み出し又は書込み可能である。クロック発生器24は、所定周期でクロック信号を発生し、演算部16側に供給する。これにより、演算部16は、信号値Sf(k)の取得タイミングを制御可能である。
【0022】
入力部26は、演算部16での演算に供される各種情報(例えば、定量間隔Td)を入力可能に設けられている。例えば、押圧式ボタンであってもよいし、表示器28に組み込まれたタッチパネルであってもよい。表示器28は、演算部16により定量されたアナライトの濃度(以下、定量濃度ともいう)に関する各種情報を可視化して表示する。表示器28は、モノクロ又はカラー表示可能な表示モジュールであり、液晶パネル、有機EL(Electro-Luminescence)、無機ELパネル等で構成されてもよい。
【0023】
なお、センサ部12は、酵素センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、免疫センサ、又は微生物センサ等、多様な用途に適用可能である。また、センサ部12の構成は、本構成に限られることなく種々の構成を採り得る。例えば、物理的に分離されたセンサ制御回路14(80)及び演算部16の間を無線で通信可能に設けることで、センサ部12を被検体の体内に完全に埋め込んだ状態で間欠的又は連続的に定量可能である。なお、無線通信の際には、近距離通信用の規格(例えば、「IEEE 802.15.6」で規定するボディエリアネットワーク等)を適用してもよい。
【0024】
<第1実施形態>
続いて、第1実施形態に係るセンサ制御回路14の構成及び動作について、
図2〜
図7を参照しながら説明する。なお、本明細書では、アナライトとしてグルコースを用いた場合の定量動作を中心に説明する。
【0025】
[センサ制御回路14のブロック図]
図2は、第1実施形態に係るセンサ制御回路14(
図1参照)のブロック図である。
【0026】
センサ制御回路14は、センサ部12からの計測信号Sを入力する信号入力部30と、アナログ信号である計測信号Sをデジタル信号である原信号値S(k)に変換するアナログ・デジタル変換部(以下、ADC32という)と、複数種類のフィルタの中から1種類のフィルタを択一的に切り替えるフィルタ切替部34と、原信号値S(k)に対して周波数領域でのフィルタ処理を施すフィルタ処理部36と、直近の原信号値S(k)を一時的に格納するバッファメモリ40と、フィルタ切替部34が備える複数種類のフィルタを切り替える変数(以下、切替変数Vs)を算出する切替変数算出部42と、を備える。
【0027】
フィルタ切替部34のスイッチ44は、第1端子46a又は第2端子46bのいずれか一方に接続された状態(オン状態)、或いは、第1端子46a及び第2端子46bのいずれにも接続されていない状態(オフ状態)を採り得る。
【0028】
フィルタ処理部36は、周波数領域でのフィルタリング処理を実行するための第1フィルタ48を備える。第1フィルタ48は、フィルタ切替部34の第1端子46a側に接続されている。一方、フィルタ切替部34の第2端子46b側には、フィルタが接続されていない。換言すれば、フィルタ処理部36は、原信号値S(k)に対して恒等変換を施す恒等変換フィルタ49を更に備えている。
【0029】
図3は、第1フィルタ48の回路構成図である。第1フィルタ48は、5つの乗算器51、52、53、54、55、4つの加算器56、57、58、59、並びに4つの遅延器60、61、62、63で構成される。すなわち、第1フィルタ48は、タップ数が5であるFIR(Finite Impulse Response)フィルタに相当する。以下、乗算器51〜55に設定された乗数(以下、フィルタ係数)をそれぞれ順番に、h0、h1、h2、h3、h4と表記する。なお、FIRフィルタは周知の電気回路であるため、各演算器の機能及び接続関係についての説明を省略する。
【0030】
図4Aは、
図2に示す第1フィルタ48のフィルタ係数を示す図である。具体的には、乗算器51(以下、
図3参照)のフィルタ係数をh0=0.159、乗算器52のフィルタ係数をh1=0.220、乗算器53のフィルタ係数をh2=0.243、乗算器54のフィルタ係数をh3=0.220、乗算器55のフィルタ係数をh4=0.159、にそれぞれ設定する。
【0031】
図4Bは、
図4Aのフィルタ係数に応じたフィルタ特性を示すグラフである。
【0032】
実線で示すグラフの横軸は周波数(単位:mHz)であり、縦軸は振幅比(単位:なし)である。ここで、振幅比とは、入力される周期信号(正弦波形信号)の振幅に対する出力信号の振幅の比である。理想的には、信号成分を通過させる周波数帯域で1であり、信号成分を遮断させる周波数帯域で0である。本図例のフィルタ特性は、0〜fc[mHz]の帯域では50%以上の信号成分を通過させると共に、fc[mHz]以上の帯域では50%以上の信号成分を遮断させる、いわゆるローパスフィルタ型の特徴を示している。以下、fc=0.44[mHz]のことを遮断周波数(カットオフ周波数)と称する。
【0033】
破線で示すグラフの横軸は周波数(単位:mHz)であり、縦軸は位相遅延量(単位:sec)である。ここで、位相遅延量とは、入力される周期信号(正弦波形信号)の位相に対する出力信号の位相の差であり、理想的には0である。本図例のフィルタ特性は、0〜0.9[mHz]の帯域では相対的に大きな位相の遅延が生じると共に、0.9[mHz]以上の帯域では位相遅延量が相対的に小さくなる特徴を示している。なお、遮断周波数fc以下の帯域R1での位相遅延量の平均値は、約600[sec]である。
【0034】
なお、第1フィルタ48(又は後述する第2フィルタ84)を決定する際、FIRフィルタ又はIIR(Infinite Impulse Response)フィルタに関する公知の設計手法を種々適用してもよい。例えば、信号の通過域に関して、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、帯域除去フィルタ、及び全域通過フィルタのうちのいずれかを適用してもよい。また、振幅特性の形状に関して、バターワース特性、チェビシェフ特性、逆チェビシェフ特性、及び連立チェビシェフ特性(楕円特性)のうちのいずれかを適用してもよい。
【0035】
[フィルタ処理と定量結果との関係]
図5A及び
図5Bは、血中グルコースの濃度変化及びその定量結果を表すグラフである。各グラフの横軸は時間(単位:min)であり、縦軸はグルコースの濃度、いわゆる血糖値(単位:mg/dl)である。実線のグラフでそれぞれ示す血糖値の変化は、被検体の食事前後における体内の血糖値の時間変化を模擬している。
【0036】
図5Aにおける破線のグラフは、計測信号Sに対してフィルタ処理を施すことなく得られた定量結果を示す。本グラフから理解されるように、計測信号Sに高周波数のノイズ成分が混入することで、実際値と定量値との間に不規則な誤差が生じている。特に、信号のレベルが相対的に低いB領域において、ノイズ成分に起因する定量精度への影響が顕著に現われている。
【0037】
図5Bにおける破線のグラフは、計測信号Sに対して第1フィルタ48によるフィルタ処理を施して得られた定量結果を示す。本グラフから理解されるように、ノイズ成分に起因する不規則な誤差が少ない定量値が得られる。しかし、第1フィルタ48による位相遅延が起こることで、実際値と定量値との間に乖離が生じている。特に、信号の時間変化量が大きいA領域において、追従性の低下に起因する定量精度への影響が顕著に現われている。
【0038】
[センサ制御回路14を含むセンシング装置10の動作]
上記した定量誤差の発生を抑制するため、第1実施形態に係るセンシング方法ではフィルタの有無を適時に切り替える。以下、センサ制御回路14(
図2)を含むセンシング装置10の動作について、
図6のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。初期状態では、フィルタ切替部34のスイッチ44はオフ状態であったとする。
【0039】
ステップS1において、信号入力部30は、所定のサンプリング間隔Tsに従って、センサ部12から計測信号Sを入力する。その後、ADC32は、信号入力部30から取得したアナログ信号をデジタル信号{以下、原信号値S(k)という}に変換する。
【0040】
ステップS2において、ステップS1で入力・取得された原信号値S(k)をバッファメモリ40に一時的に格納する。
【0041】
ステップS3において、センサ制御回路14は、アナライトの濃度を定量する指示があったか否かを判別する。具体的には、センサ制御回路14は、濃度の定量を指示する信号(以下、定量指示信号)を演算部16から受信したか否かを判別する。
【0042】
演算部16は、ステップS1及びS2の実行と並列して、クロック発生器24から入力されたクロック信号のパルス数をカウントする。そして、カウント上限値(定量間隔Tdに相当する値)に到達した場合、演算部16は、センサ制御回路14側に定量指示信号を送出し、次のステップ(S4)に進む。
【0043】
一方、上記したカウント上限値に到達していない場合、演算部16は、定量指示信号を送出することなく、パルス数のカウントを継続する。すなわち、ステップS1に戻り、以下ステップS1及びS2を順次繰り返す。
【0044】
ところで、サンプリング間隔Tsは、センサ制御回路14側に計測信号Sを入力する時間の間隔であると共に、定量間隔Tdは、演算部16側でアナライトの濃度を定量する時間間隔である。すなわち、定量間隔Tdは、サンプリング間隔Tsと異なるパラメータであることから、サンプリング間隔Tsと同一の又は異なる値を取ってもよい。また、定量間隔Tdがサンプリング間隔Tsに等しい場合、センサ制御回路14は、定量指示信号を受け付けた後に原信号値S(k)を取得・格納してもよい。
【0045】
ステップS4において、切替変数算出部42は、ステップS2で順次格納された原信号値S(k)の時系列に基づいて、計測信号Sの時間変化量を表すパラメータである切替変数Vsを算出する。ここで、時間変化量とは、直近の複数の標本点から推定される計測信号Sの変動傾向(トレンド)を意味する。
【0046】
図7に示すように、現在の標本点75から時間的に近い順に、標本点74、73、72、71が既に得られていたとする。この場合、過去の標本点71〜74のみならず標本点75も併せ用いて、破線で図示する回帰直線76を求めることができる。そして、切替変数算出部42は、この回帰直線76の勾配(時間の1次微分)の絶対値を切替変数Vsとして算出する。
【0047】
なお、上記勾配を算出する手法は、加重平均、最小二乗法を含む種々の最適化手法を用いることができる。また、トレンドの推定に供される標本点の個数は5つに限られず、演算量、処理時間等を総合的に考慮して適宜決定してもよい。更に、切替変数算出部42は、回帰直線76の勾配に限られず、例えば、隣接する標本点を結ぶ直線勾配の統計値(例えば、平均値)、近似曲線における曲率(時間の2次微分)等を用いて、切替変数Vsを算出してもよい。
【0048】
ステップS5において、フィルタ切替部34は、ステップS4で算出された切替変数Vsに応じて、フィルタ切替部34のスイッチ44を切り替える。具体的には、フィルタ切替部34は、予め設定された閾値Vs
*との大小関係によってスイッチ44の切替状態を決定する。
【0049】
Vs≦Vs
*を満たす場合、フィルタ切替部34は、スイッチ44を一定時間だけ第1端子46a側に切り替える(ステップS6)。そうすると、原信号値S(k)は、スイッチ44、第1端子46a及び第1フィルタ48を介して、センサ制御回路14の外部に出力される。
【0050】
Vs>Vs
*を満たす場合、フィルタ切替部34は、スイッチ44を一定時間だけ第2端子46b側に切り替える(ステップS7)。そうすると、原信号値S(k)は、スイッチ44及び第2端子46bを介して、センサ制御回路14の外部に出力される。以下、用語の区別を明確にするため、フィルタ処理部36を通過し、センサ制御回路14から出力された原信号値S(k)を「信号値Sf(k)」と称する。
【0051】
なお、フィルタ切替部34は、閾値Vs
*による判別処理の際にデッドバンド(不感帯)を設けてもよい。これにより、時系列的な判別結果のゆらぎを抑制可能であり、フィルタの切替制御を安定的に実行できる。
【0052】
ステップS8において、濃度定量部29は、RAM22から読み出した定量係数等を用いて、センサ制御回路14から出力された信号値Sf(k)に基づく濃度の定量を行う。ここで、濃度の定量方法は、センサ部12における検出方式、材質、感度特性、個体差等に適した種々の手法を採ることができる。
【0053】
ステップS9において、表示器28は、ステップS8における定量結果を表示する。表示処理に先立ち、演算部16は、得られた定量結果のうち、表示器28に表示させる可視情報(以下、定量可視情報という。)を決定した後、その定量可視情報に応じた制御信号を表示器28側に供給する。なお、定量可視情報として、定量値のみならず、例えば、トレンド、定量の成否、定量時刻、診断結果等が挙げられる。
【0054】
ステップS10において、演算部16は、この一連の定量動作の終了指示があったか否かを判別する。終了指示がなかったと判別された場合、ステップS1に戻り、以下ステップS1〜S9の動作を同様に繰り返す。一方、終了指示があった場合、センシング装置10は、アナライトの定量動作を終了する。このようにして、演算部16は、所定の定量間隔Tdに従って、各定量時点における濃度の時系列データを得る。
【0055】
[第1実施形態に係るセンシング方法により得られる作用効果]
以下、第1実施形態に係るセンシング方法により得られる作用効果について、
図8を参照しながら説明する。より詳細には、
図5A及び
図5Bに示す血中グルコースの濃度変化(実線のグラフ)の下、異なる形態のフィルタ処理を用いてそれぞれ定量した結果を比較する。いずれの場合も、サンプリング間隔Ts=5[min]、定量間隔Td=5[min]として計測・定量した。また、回帰直線76(
図7)の勾配の絶対値に関する閾値を、Vs
*=0.3[1/min]に設定した。
【0056】
図8は、3通りのフィルタ処理を施して定量した場合における、グルコースの定量誤差率の累積ヒストグラムである。ヒストグラムの横軸は定量値の誤差率(単位:%)であり、縦軸は累積頻度(単位:%)である。
【0057】
なお、本図中における「フィルタなし」は、スイッチ44が第2端子46bに常時接続された場合での定量結果(
図5Aに示す破線のグラフ)に対応する。「フィルタ固定」は、スイッチ44が第1端子46aに常時接続された場合での定量結果(
図5Bに示す破線のグラフ)に対応する。「フィルタ切替」は、
図6のフローチャートに従ってスイッチ44を適時切り替えた場合での定量結果に対応する。
【0058】
本図から理解されるように、誤差率が10%以下の頻度は、「フィルタ切替」>「フィルタなし」>「フィルタ固定」の順番で高くなっている。そして、誤差率が20%以下の頻度は、「フィルタ切替」>「フィルタ固定」>「フィルタなし」の順番で高くなっている。このように、「フィルタ切替」は、「フィルタなし」及び「フィルタ固定」と比べて、濃度の定量誤差が有意に少ないと結論付けられる。
【0059】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態に係るセンサ制御回路80の構成及び動作について、
図9〜
図12を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の参照符号を付すると共にその説明を省略する。
【0060】
[センサ制御回路80のブロック図]
図9は、第2実施形態に係るセンサ制御回路80(
図1参照)のブロック図である。センサ制御回路80は、センサ制御回路14(
図2)と略同様の構成を採るが、フィルタ処理部36に代わって別の構成のフィルタ処理部82を備える。
【0061】
フィルタ処理部82は、第1フィルタ48と、該第1フィルタ48と同じ回路構成(
図3参照)である第2フィルタ84とを備える。第2フィルタ84は、フィルタ切替部34の第2端子46b側に接続されている。
【0062】
図10Aは、
図9に示す第2フィルタ84のフィルタ係数を示す図である。具体的には、乗算器51(以下、
図3参照)のフィルタ係数をh0=0.301、乗算器52のフィルタ係数をh1=0.398、乗算器53のフィルタ係数をh2=0.301、乗算器54のフィルタ係数をh3=0.000、乗算器55のフィルタ係数をh4=0.000、にそれぞれ設定する。このように、h3=h4=0.000であることから、第2フィルタ84は、実質的にタップ数が3であるFIRフィルタとして機能する。
【0063】
図10Bは、
図10Aのフィルタ係数に応じたフィルタ特性を示すグラフである。実線で示すグラフの横軸は周波数(単位:mHz)であり、縦軸は振幅比(単位:なし)である。本図例のフィルタ特性は、
図4Bと同様に、ローパスフィルタ型の特徴を示しており、遮断周波数fcは、fc=0.74[mHz]である。つまり、第2フィルタ84の遮断周波数fcは、第1フィルタ48の遮断周波数fc(=0.44)よりも高い。
【0064】
破線で示すグラフの横軸は周波数(単位:mHz)であり、縦軸は位相遅延量(単位:sec)である。本図例では、0〜1.7[mHz]の帯域で位相遅延は略一定(=300[sec])である。この場合、遮断周波数fc以下の帯域R2での位相遅延量の平均値は約300[sec]であり、第1フィルタ48での位相遅延量の平均値(
図4B参照;約600[sec])よりも小さい。
【0065】
[センサ制御回路80を含むセンシング装置10の動作]
上記した欠点を相互に補完するため、第2実施形態に係るセンシング方法では複数種類のフィルタを適時に切り替える。以下、センサ制御回路80(
図9)を含むセンシング装置10の動作について、
図11のフローチャートを参照しながら説明する。ステップS1〜S4、ステップS8〜S10に関して、
図6のフローチャート(第1実施形態)と同様であるため、その説明を割愛する。
【0066】
ステップS5において、フィルタ切替部34は、算出された切替変数Vsに応じてスイッチ44を切り替える。Vs≦Vs
*を満たす場合、フィルタ切替部34は、スイッチ44を一定時間だけ第1端子46a側に切り替える(ステップS6)。
【0067】
一方、Vs>Vs
*を満たす場合、フィルタ切替部34は、スイッチ44を一定時間だけ第2端子46b側に切り替える(ステップS7A)。そうすると、原信号値S(k)は、スイッチ44、第2端子46b及び第2フィルタ84を介して、センサ制御回路80の外部に出力される。
【0068】
このようにして、演算部16は、所定の定量間隔Tdに従って、各定量時点における濃度の時系列データを得る。
【0069】
[第2実施形態に係るセンシング方法での定量結果]
以下、第2実施形態に係るセンシング方法により得られる作用効果について、
図12を参照しながら説明する。より詳細には、
図5A及び
図5Bに示す血中グルコースの濃度変化(実線のグラフ)の下、異なる形態のフィルタ処理を用いてそれぞれ定量した結果を比較する。いずれの場合も、サンプリング間隔Ts=5[min]、定量間隔Td=5[min]として計測・定量した。また、閾値Vs
*=0.3[1/min]に設定した。
【0070】
図12は、4通りのフィルタ処理を施して定量した場合における、グルコースの定量誤差率の累積ヒストグラムである。ヒストグラムの横軸は定量値の誤差率(単位:%)であり、縦軸は累積頻度(単位:%)である。
【0071】
なお、本図中における「フィルタなし」及び「第1フィルタ固定」は、
図8の「フィルタなし」及び「フィルタ固定」にそれぞれ対応する。「第2フィルタ固定」は、スイッチ44が第2端子46bに常時接続された場合での定量結果に対応する。「フィルタ切替」は、
図11のフローチャートに従ってスイッチ44を適時切り替えた場合での定量結果に対応する。
【0072】
本図から理解されるように、誤差率が10%以下の頻度は、「フィルタ切替」>「第2フィルタ固定」>「フィルタなし」>「第1フィルタ固定」の順番で高くなっている。そして、誤差率が20%以下の頻度は、「フィルタ切替」>「第2フィルタ固定」>「第1フィルタ固定」>「フィルタなし」の順番で高くなっている。このように、「フィルタ切替」は、「フィルタなし」、「第1フィルタ固定」及び「第2フィルタ固定」と比べて、濃度の定量誤差が相対的に少ないと結論付けられる。
【0073】
[本発明の効果]
以上のように、このセンシング装置10は、アナライトの濃度に相関する計測信号Sを逐次取得するセンサ部12と、複数種類のフィルタ(48、49、84)のうち1種類のフィルタを介すことで、計測信号Sの時系列に対して周波数領域でのフィルタ処理を施すフィルタ処理部36、82を備える。
【0074】
そして、周波数領域でのフィルタ処理に使用される1種類のフィルタを計測信号Sの時間変化量(例えば、切替変数Vs)に応じて切り替えるフィルタ切替部34を設けたので、計測信号の時間変化、及びフィルタ処理に起因する位相遅延特性を併せて考慮した第1フィルタ48等を適時に選択可能である。これにより、比較的に簡便な構成である周波数領域でのフィルタ(第1フィルタ48等)を用いて、計測信号Sからノイズ成分を効果的に除去しつつも、アナライトの濃度の時間変化に対する追従性を維持できる。
【0075】
また、フィルタ処理部36は、計測信号Sの時系列に対して恒等変換を施す恒等変換フィルタ49を少なくとも備えており、フィルタ切替部34は、切替変数Vsが閾値Vs
*よりも大きい場合に恒等変換フィルタ49に切り替えてもよい。
【0076】
更に、フィルタ処理部82は、遮断周波数fc以下の帯域での位相遅延量の平均値が異なる2種類のフィルタ(48、84)を少なくとも備えており、フィルタ切替部34は、切替変数Vsが大きい場合に位相遅延量の平均値が小さい第2フィルタ84に切り替えると共に、切替変数Vsが小さい場合に位相遅延量の平均値が大きい第1フィルタ48に切り替えてもよい。
【0077】
切替変数Vsが大きい場合にフィルタ処理による位相遅延を発生させないようにしたので、アナライトの濃度の時間変化に対する追従性を確保できる。また、切替変数Vsが小さい場合には、上記した追従性がそれほど要求されないので、計測信号Sからノイズ成分を一層効果的に除去できる。
【0078】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0079】
例えば、第1及び第2実施形態では、フィルタ処理部36、82をデジタルフィルタ回路で構成する例を示したが、アナログフィルタ回路で構成してもよい。また、デジタルフィルタを適用する場合、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実現してもよい。更に、このフィルタ処理をソフトウェアで実現する場合、センサ制御回路14、80に代わって演算部16に実行させてもよい。