(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)前記第1のポリマースラリー及び第2のポリマースラリーが、それぞれ前記第1及び第2の取り出し口から取り出されて、直接、即ちフラッシュされることなく第2のリアクターへと送られ、
及び/又は
(b)前記第1のポリマースラリー及び第2のポリマースラリーを合わせてから、第2のリアクターへと送る、請求項1に記載の方法。
第2のリアクターにおいて、前記ループリアクターにおいて生成されるポリマーとは異なるポリマーが生成され、前記ループリアクターと前記第2のリアクターの生成分配、即ち前記ループリアクターで生成されるポリマーと前記第2のリアクターで生成されるポリマーの重量比が、75:25から40:60である、請求項1又は2に記載の方法。
ループリアクター内のポリマースラリーの平均ポリマー濃度が、ループリアクター中のポリマースラリーの全重量に対して、15重量%から55重量%の間である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
制御が行われる場合は、前記第1の取り出し口を通じて、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して65重量%から95重量%の間の前記第1のポリマースラリーが取り出され、前記第2の取り出し口を通じて、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して、5重量%から35重量%の間の前記第2のポリマースラリーが取り出される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
前記第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと前記第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの比[PS−O1/PS−O2]が、少なくとも1.8であり、
式中、「PS−O1」は、前記第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]であり、
「PS−O2」は、前記第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
前記第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと前記第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの比[PS−O1/PS−O2]が、少なくとも2.5である、請求項8に記載の方法。
前記第1の取り出し口が、前記ループリアクターの外周に位置し、及び/又は前記第2の取り出し口が、前記ループリアクターの内周に位置する、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
前記第1の取り出し口の導管及び前記第2の取り出し口の導管が、前記第2のリアクターの上流の接続点で互いに接続され、さらなる導管が該接続点から前記第2のリアクターへと続く、請求項14又は15に記載の重合リアクターシステム。
ループリアクター及び/又は重合リアクターシステムのループリアクターにおいて形成されるオレフィンポリマーの平均滞留時間を制御する方法であって、前記ループリアクターが、動作可能に連通するよう接続された
(a)少なくとも1つの下部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの下部ベンド、
(b)少なくとも1つの上部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの上部ベンド、及び
(c)少なくとも2つの垂直セグメント、
を有し、
前記ループリアクターが、さらに
(d)ループリアクターから第1のポリマースラリーを連続的に取り出す第1の取り出し口であって、前記第1のポリマースラリーが、オレフィンポリマー及び流体相を有し、連続的に取り出される第1のポリマースラリーのポリマー濃度が、ループリアクター中の平均ポリマー濃度以上となるように配置された、上記第1の取り出し口、及び
(e)ループリアクターから第2のポリマースラリーを連続的に取り出す第2の取り出し口であって、前記第2のポリマースラリーが、オレフィンポリマー及び流体相を有し、連続的に取り出される第2のポリマースラリーのポリマー濃度が、ループリアクター中の平均ポリマー濃度未満となるように配置された、上記第2の取り出し口、
を有し、
(i)前記ループリアクターに、オレフィンモノマー、触媒系及び任意でオレフィンコモノマーを供給して、ループリアクターにおいてポリマースラリーを形成する工程、及び
(ii)
(ii1)前記ループリアクターから取り出される全ポリマー量、
及び/又は
(ii2)前記ループリアクターから取り出される全ポリマースラリー量、
及び/又は
(ii3)前記ループリアクターから取り出される全ポリマースラリーのポリマー濃度を、
前記第1の取り出し口を通じて連続的に取り出される第1のポリマースラリーと前記第2の取り出し口を通じて連続的に取り出される第2のポリマースラリーの比を調整することにより制御する工程、
を有する、上記方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上より、オレフィン重合方法の改良は、当業者にとって今もなお興味の対象である。特に望ましいのは、重合プロセスの始動段階及びそれに続く重合反応におけるポリマースラリーのポリマー含有量を容易かつ効果的に調整すること、そしてオレフィンポリマーのループリアクター内での滞留時間を効果的に制御することが可能になることであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ループリアクターは、第1及び第2の取り出し口である2つの取り出し口を必ず有し、さらに、前記第1の取り出し口は、ループリアクター内の平均ポリマー濃度以上のポリマー濃度のポリマースラリーが取り出されるように配置されなければならず、前記第2の取り出し口は、ループリアクター内の平均ポリマー濃度よりも低いポリマー濃度のポリマースラリーが取り出されるように配置されなければならないことが見いだされた。
【0006】
従って、本発明は、第1の側面として、少なくとも1つのループリアクターにおいてオレフィンポリマーを製造する方法であって、前記ループリアクターは、動作可能に連通するよう接続された、
(a)少なくとも1つの下部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの下部ベンド、
(b)少なくとも1つの上部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの上部ベンド、及び
(c)少なくとも2つの垂直セグメント、
を有し、
前記ループリアクターは、さらに、
(d)ループリアクターから第1のポリマースラリーを取り出す第1の取り出し口であって、前記第1のポリマースラリーが、オレフィンポリマー及び流体相を有し、取り出される前記第1のポリマースラリーのポリマー濃度が、ループリアクター内の平均ポリマー濃度以上となるように配置された、上記第1の取り出し口、及び、
(e)ループリアクターから第2のポリマースラリーを取り出す第2の取り出し口であって、前記第2のポリマースラリーが、オレフィンポリマー及び流体相を有し、取り出される前記第2のポリマースラリーのポリマー濃度が、ループリアクター内の平均ポリマー濃度よりも低くなるように配置された、上記第2の取り出し口、
を有し、
(i)前記ループリアクターに、オレフィンモノマー、触媒系及び任意でオレフィンコモノマーを供給して、ループリアクターにおいてポリマースラリーを形成する工程、
(ii)
(ii1)前記ループリアクターから取り出される全ポリマー量、
及び/又は
(ii2)前記ループリアクターから取り出される全ポリマースラリー量、
及び/又は
(ii3)前記ループリアクターから取り出される全ポリマースラリーのポリマー濃度を、
前記第1の取り出し口から取り出される第1のポリマースラリーと前記第2の取り出し口から取り出される第2のポリマースラリーの比を調整することにより制御する工程、及び
(iii)任意で、取り出された全ポリマースラリーを第2のリアクター、すなわちガス相リアクターへと送る工程、
を有する方法を対象としている。
【0007】
特に、本方法は、ループリアクターであって、動作可能に連通するよう接続された、
(a)少なくとも1つの下部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの下部ベンド、
(b)少なくとも1つの上部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの上部ベンド、及び
(c)少なくとも2つの垂直セグメントを有し、
前記ループリアクターは、さらにポリマースラリーの取り出しに適した第1及び第2の取り出し口を有し、
前記第1の取り出し口は、ループリアクターの前記下部水平セグメント又は下部ベンドの外周に位置しており、
前記第2の取り出し口は、
(i)ループリアクターの前記下部水平セグメントの内周、又はループリアクターの前記下部ベンドの内周、
及び/又は
(ii)ループリアクターの前記上部水平セグメントの内周、又はループリアクターの前記上部ベンドの内周、
に位置する、ループリアクターにおいて実行可能である。
【0008】
従って、実施形態の1つによれば、本方法は少なくとも1つのループリアクターにおいて実行され、該ループリアクターは、動作可能に連通するよう接続された、
(a)1つの下部水平セグメント、
(b)2つの下部ベンド、
(c)1つの上部水平セグメント、
(d)2つの上部ベンド、及び
(e)2つの垂直セグメント、
を有し、
前記2つの下部ベンドが前記下部水平セグメントを前記2つの垂直セグメントに接合し、前記2つの上部ベンドが前記上部水平セグメントを前記2つの垂直セグメントに接合し、
前記ループリアクターは、さらにポリマースラリーの取り出しに適した第1及び第2の取り出し口を有し、
前記第1の取り出し口は、ループリアクターの前記下部水平セグメントの外周に位置するか、又は前記2つの下部ベンドのうち1つの外周に位置するが、好ましくは、前記第1の取り出し口は、前記下部水平セグメントの外周に位置し、
前記第2の取り出し口は、
(i)ループリアクターの前記下部水平セグメントの内周、又はループリアクターの前記2つの下部ベンドのうち1つの内周、好ましくはループリアクターの前記2つの下部ベンドのうち1つの内周、
及び/又は
(ii)ループリアクターの前記上部水平セグメントの内周、又はループリアクターの前記2つの上部ベンドのうち1つの内周、
に位置する。
特に、前記第2の取り出し口が、ループリアクターの前記2つの上部ベンドのうち1つの内周に位置することが好ましい。
【0009】
別の実施形態によれば、本方法は、少なくとも1つのループリアクターにおいて実行され、該ループリアクターは水平セグメントを有さない。従って、該ループリアクター、即ち水平セグメントを有さないループリアクターは、動作可能に連通するよう接続された、
(a)1つの下部ベンド、
(b)1つの上部ベンド、及び
(c)2つの垂直セグメント、
を有し、
前記下部ベンド及び上部ベンドが、前記2つの垂直セグメントを接合し、
前記ループリアクターは、さらに、ポリマースラリーの取り出しに適した第1及び第2の取り出し口を有し、
前記第1の取り出し口は、ループリアクターの前記下部ベンドの外周に位置し、
前記第2の取り出し口は、
(i)ループリアクターの前記下部ベンドの内周、
及び/又は
(ii)ループリアクターの前記上部ベンドの内周、
に位置する。
【0010】
特に、前記第2の取り出し口が、ループリアクターの前記下部ベンドの内周に位置することが好ましい。
【0011】
従って、本発明は、第2の側面によれば、オレフィンポリマーを製造するための複数の重合リアクター容器を有する重合リアクターシステムであって、該重合リアクターシステムは、カスケード中に、少なくとも1つのループリアクター及び好ましくはガス相リアクターである少なくとも1つのさらなるリアクターを有し、
前記ループリアクターは、動作可能に連通するよう接続された
(a)少なくとも1つの下部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの下部ベンド、
(b)少なくとも1つの上部水平セグメント及び/又は少なくとも1つの上部ベンド、及び
(c)少なくとも2つの垂直セグメント、
を有し、
前記ループリアクターは、さらに、ポリマースラリーの取り出しに適した第1及び第2の取り出し口を有し、
前記第1及び第2の取り出し口は、導管を介して前記第2のリアクターに接続され、
さらに、
前記第1の取り出し口は、ループリアクターの前記下部水平セグメントの外周に位置するか、又は前記下部ベンドの外周に位置し、
前記第2の取り出し口は、
(i)ループリアクターの前記下部水平セグメントの内周か、又はループリアクターの前記下部ベンドの内周の内周、
及び/または
(ii)ループリアクターの前記上部水平セグメントの内周か、又はループリアクターの前記上部ベンドの内周、
に位置する、重合リアクターシステムを対象としている。
【0012】
本重合リアクターシステムの好ましい実施形態によれば、ループリアクターは、上記において本方法を論じる際に定義されたように用いられ、また、以下においてさらに詳細に定義されるように用いられる。
【発明の効果】
【0013】
驚くべきことに、このような方法や重合リアクターシステムによって、当業者であれば、重合工程の始動段階や続く重合反応において、きわめて容易かつある程度短時間で、ポリマースラリーのポリマー濃度を調整できるようになり、また、ループリアクターでのオレフィンポリマーの滞留時間を制御できるようになることがわかった。よって、本方法、そして本重合リアクターシステムは、ループリアクターによる重合プロセスの全体的な生産性を上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明のループリアクターの好ましい実施形態または技術的な詳細について言及する場合、それら好ましい実施形態や技術的な詳細は、本願において定義される、本発明の重合リアクターシステム、ループリアクターにおいてオレフィンポリマーを製造する本発明の方法、そして、オレフィンポリマーの製造のためのループリアクターにおける第2の取り出し口の本発明の使用、及びループリアクターにおけるオレフィンポリマーの平均滞留時間を制御するためのループリアクターにおける第1及び第2の取り出し口の組み合わせの本発明の使用についても言及しているものと解され、その逆もまた同様である(適用できる限り)。例えば、本発明のループリアクター内におけるポリマーの平均濃度が15重量%から55重量%の間であるとされたならば、本発明の重合リアクターシステム、本発明の方法、本方法により得られるオレフィンポリマー、それに本発明の使用における平均ポリマー濃度もまた、15重量%から55重量%の間である。
【0015】
ここに、本発明をより詳細に説明する:
【0016】
用語「モノマー」は、用語「コモノマー」に対して、「モノマー」が最終的なポリマー鎖の構成単位であることを表す。通常、モノマーは、ポリマーの少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%を構成する一方、コモノマーは、ポリマーの残る部分を構成する。
【0017】
スラリーは、固相及び流体相を有する。本発明における流体相は、液体又は超臨界液体のいずれであってもよい。スラリーは、希釈剤と、反応物質、即ちモノマー、場合によりコモノマー及び水素を含有する。用語「ポリマースラリー」は、その固相の主要部分はポリマーであるが、触媒などの他の固体粒子も含みうることを示すものとする。
【0018】
用語「希釈剤」には、好ましくは重合に用いられるプロピレンなどの液体モノマー、又はプロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなどのC
3−C
10の液体炭化水素が含まれる。好ましい実施形態の1つによれば、希釈剤はプロパン及び/又はプロピレンであり、製造されるポリマーがポリプロピレンである場合は後者が特に好ましい。
【0019】
「第1のポリマースラリー」とは、第1の取り出し口から取り出されるポリマースラリーである。
【0020】
「第2のポリマースラリー」とは、第2の取り出し口から取り出されるポリマースラリーである。
【0021】
「全ポリマースラリー」又は「取り出される全ポリマースラリー」とは、ループリアクター中の(総)ポリマースラリーに対して、第1のスラリーと第2の取り出し口からの流体相、即ち希釈剤又は第2のポリマースラリーとを合わせて得られるスラリーである。
【0022】
本発明は、ループリアクター及び任意でそれに続くガス相リアクターなどの少なくとも1つのリアクターにおいて、希釈剤を用いて行われるあらゆるオレフィンホモ重合又は共重合、例えばオレフィンポリマー及び該希釈剤を有するポリマースラリーの製造などに適用することができる。例えば、本ループリアクターにおいて、プロピレンをホモ重合させるか、又は少なくとも1種のエチレン及び/又はC
4−C
20α−オレフィンと共重合させてもよく、あるいはエチレンをホモ重合させるか、又は少なくとも1種のC
3−C
20α−オレフィンと共重合させてもよい。重合は、好ましくは不活性炭化水素の希釈剤中で行われる。
【0023】
従って、本発明は、特にプロピレン又はエチレンのホモ重合又は共重合を対象とする。実施形態の1つによれば、本発明は、異相(heterophasic)プロピレンコポリマーの製造方法であって、該異相プロピレンコポリマーのマトリクスの少なくとも一部又は全部がループリアクターにおいて生成され、エラストマー相がループリアクターの下流のリアクターで生成される方法を対象とする。実施形態の1つによれば、本発明は、異相プロピレンコポリマーの製造方法であって、ループリアクターではポリプロピレンマトリックスが生成され、続くガス相リアクターなどの第2のリアクターでは、該マトリックスの存在下、エラストマー相が重合される方法を対象とする。別の好ましい実施形態の1つによれば、本発明は、異相プロピレンコポリマーの製造であって、ループリアクターではマトリックスの第1部分が生成され、好ましくはガス相リアクターである第2のリアクターでは該マトリックスの第2部分が重合される方法を対象とする。続いて、そのようにして得られたマトリックスを1つ又はそれ以上の(ガス相)リアクター、好ましくは直列に接続された2つのリアクターに移し、そこで異相系のエラストマー相が重合される。当然ながら、本方法には、ループリアクター及びループリアクターの下流に位置するそれに続く1つ又はそれ以上、好ましくは1つのガス相リアクターなどのリアクターで生成される、(半)結晶性プロピレンホモポリマー又はコポリマーの製造も含まれる。
【0024】
ループリアクター内の温度は、通常50℃から110℃、好ましくは60℃から100℃、最も好ましくは65℃から95℃である。エチレン又はプロピレンがループリアクターにおいてホモ重合される場合は、「超臨界」として知られる条件、つまり運転温度が反応混合物の臨界温度を超え、運転圧力が反応混合物の臨界圧力を超える条件で、ループリアクターを運転させることが好ましい場合もある。そのような条件では、運転温度は好ましくは90℃より高く、最も好ましくは93℃よりも高い。本明細書において、用語「超臨界流体」とは、その臨界温度及び圧力を超える温度及び圧力の流体又は流体混合物を指す。
【0025】
ループリアクター内の温度は、当業者に知られるいずれの方法によって制御及び調節されてもよい。
【0026】
重合プロセスの間、ループリアクター内のスラリーは、循環ポンプ又は当業者に周知な他の手段を用いることにより、ループリアクター内を連続的に循環される。当業者には周知であるが、その流速は、ポリマーがリアクター内に沈殿せずにスラリーが均一に保たれるような速度である。
【0027】
ループリアクターにおけるオレフィンの重合、例えばプロピレン及び/又はエチレンの重合は、好ましくはスラリー相で行われ、重合反応により形成されたポリマー粒子は、ポリマー粒子内に断片化及び分散した触媒と共に、希釈剤中に懸濁する。上記のように、スラリーはリアクター内を循環することによりさらに撹拌されるので、反応物質を希釈剤からポリマー粒子へ移すことができる。
【0028】
プロピレン重合の場合、スラリー重合は、好ましくはいわゆるバルク重合である。本発明での意味において、用語「バルク重合」は、重合反応が、本質的に他のいかなる不活性な希釈剤も含まない液体モノマー中で行われるプロセスを言う。しかしながら、当業者には知られていることだが、商業生産に用いられるモノマーが純粋であることは無く、常に不純物として脂肪族炭化水素を含んでいる。例えば、プロピレンモノマーは、不純物として、プロピレン全重量に対して最大5重量%のプロパンを含みうる。プロピレンが、反応で消費される他、反応廃液から重合反応へとリサイクルもされうる一方で、不活性な成分は蓄積される傾向があるので、反応媒、即ち希釈剤は、モノマー以外の他の化合物を、反応媒の全重量に対して最大40重量%有しうる。しかしながら、このような重合プロセスであっても、上記にて定義する「バルク重合」の意味に含まれると解される。
【0029】
運転圧力は、ループリアクターの内容物が液体状態又は超臨界状態のいずれかを保つように選択される必要がある。液体スラリーでの運転では、好適な運転圧力の範囲は、1barから150bar、好ましくは10barから100barである。超臨界スラリーでの運転では、好適な運転圧力の範囲は、50barから100bar、好ましくは55barから80barである。
【0030】
ループリアクター内の圧力は、当業者に知られるいずれの方法によって制御及び調節してもよい。
【0031】
さらに、製造されるポリマーの分子量の制御などのために、ループリアクター内に水素を導入してもよい。水素量は、主に、使用される触媒系及び所望の分子量、あるいは最終ポリマーのメルトフローレートMFR
2によって決まる。また、最終ポリマーの機械的特性、密度及び柔軟性を改善するため、及び/又はループリアクターにおける重合反応プロセスの安定した運転を容易にするために、1種又はそれ以上のコモノマーをリアクター内に導入してもよい。
【0032】
好ましくは、エチレン又はプロピレンなどのオレフィンモノマーが、水素及び任意でコモノマーの存在下、ループリアクターにおいて(共)重合されて、ポリマーが生成する。
【0033】
ループリアクター内でのポリマースラリーの平均ポリマー濃度は、ループレアクター内でのポリマースラリーの全重量に対して通常15重量%から55重量%である。本発明の好ましい実施形態の1つによれば、ループリアクター内でのポリマースラリーの平均ポリマー濃度は、ループリアクター内でのポリマースラリーの全重量に対して、20重量%から55重量%、より好ましくは、25重量%から52重量%である。
【0034】
ポリマースラリーのポリマー濃度は、当業者に知られるいかなる方法によって求められてもよい。例えば、ポリマー濃度は、放射性測定や超音波測定などの当業者に知られる好適な方法を用いてスラリーの密度を測定することによって求めることができる。そして、スラリーのポリマー濃度は、以下の等式を用いて算出することができる。
【数1】
式中、
w
pはスラリー中のポリマーの重量分率、
ρ
sはスラリーの密度、
ρ
fは流体相の密度、
ρ
pはポリマーの密度である。
【0035】
ループリアクター及びそれに続くすべてのリアクターにおいて用いられる触媒系は、公知のいかなる重合触媒系であってもよい。従って、触媒系は、例えばEP279890又はEP307907に開示されるようなクロム触媒であってよい。また、例えばEP688794、EP949274、WO99/58584又はWO01/55230に開示されるようなチーグラー・ナッタ触媒であってもよい。さらに、例えばWO97/28170、WO00/34341又はWO2004/029112に開示されるようなメタロセン触媒であってよい。
【0036】
プロピレンやエチレン等のオレフィンモノマーの重合反応は、スラリー重合に用いられる公知のいかなるループリアクターにおいて行われてもよい。このようなリアクターでは、循環ポンプを用いてスラリーを閉管内で高速に循環させる。ループリアクターは、一般に公知であり、例えばUS4,582,816A、US3,405,109A、US3,324,093A、EP479186A及びUS5,391,654Aに例示されている。
【0037】
本発明のループリアクターは、概して連続した管状構造である。
【0038】
実施形態の1つによれば、本発明のループリアクターは、少なくとも1つの下部水平セグメント、少なくとも1つの上部水平セグメント及び少なくとも2つの垂直セグメントを有し、これらが動作可能に連通するよう接続されている。例えば、本発明のループリアクターは、少なくとも1つの下部水平セグメント、少なくとも1つの上部水平セグメント及び少なくとも2つの垂直セグメントを有し、これらが動作可能に連通するよう接続されている。特に、水平及び垂直セグメントは、スムースベンドやL字継ぎ手などのベンドにより互いに動作可能に接続されており、これにより、例えば内部に障害物が実質的に無いループリアクター内での連続的な流動が可能となっている。従って、ループリアクターは、好ましくは、動作可能に連通するよう接続された
(a)1つの下部水平セグメント、
(b)2つの下部ベンド、
(c)1つの上部水平セグメント、
(d)2つの上部ベンド、及び
(e)2つの垂直セグメント、
を有し、
前記2つの下部ベンドが、前記下部水平セグメントを前記2つの垂直セグメントに接合し、前記2つの上部ベンドが、前記上部水平セグメントを前記2つの垂直セグメントに接合している。より詳細には、2つの下部ベンドの一方が、下部水平セグメントの一端を第1の垂直セグメントの下端に接合し、2つの下部ベンドの他方が、下部水平セグメントの他端を第2の垂直セグメントの下端に接合している一方で、2つの上部ベンドの一方が、上部水平セグメントの一端を第1の垂直セグメントの上端に接合し、2つの上部ベンドの他方が、上部水平セグメントの他端を第2の垂直セグメントの上端に接合している。
【0039】
しかしながら、ループリアクターは、連続する管状構造により閉管ループが構成される限り、広く様々な構成及び形状を取ることができることに注意すべきである。従って、水平セグメントは、2つの垂直セグメントを接続する連続するベンドの形状であってもよい。従って、ループリアクターは、動作可能に連通するよう接続された
(a)1つの下部ベンド、
(b)1つの上部ベンド、及び
(c)2つの垂直セグメント、
を有し、
前記下部ベンド及び上部ベンドが、前記2つの垂直セグメントを接合している。より詳細には、下部ベンドが、その一端で第1の垂直セグメントの下端に、またその他端で第2の垂直セグメントの下端に接合している一方で、上部ベンドが、その一端で第1の垂直セグメントの上端に、またその他端で第2の垂直セグメントの上端に接合している。
【0040】
さらに、水平及び/又は垂直セグメントは、それぞれ連続セグメントの形状でも複数セグメントの形状でもよい。例えば、本発明のループリアクターは、垂直ループリアクターであっても水平ループリアクターであってもよいが、好ましくは垂直ループである。
【0041】
重合反応中に発生した熱は、通常、好ましくは水である冷却媒を用いた間接式交換手段、例えばループリアクターの少なくとも一部を囲むジャケットを用いて除去される。ループリアクターの体積は、広い範囲をとりうるが、通常10dm
3から200m
3の範囲である。
【0042】
通常運転による重合プロセス中、ポリマースラリーは、ループリアクターから1つの取り出し口、好ましくは第1の取り出し口を通じて連続的に取り出される。「通常運転」とは、ループリアクター内の条件が、該ループリアクターにおいて所望のポリマーが生成されるように調整され、ポリマースラリーのポリマー濃度が、所望のレベルに達していることを意味する。例えば触媒活性の低下により運転条件が不安定となった場合や、通常運転中にポリマーをあるグレードから他のグレードへと変更する場合は、第1の取り出し口からの取り出しを減少させたり増加させてよい。しかしながら、このような1つの取り出し口のみによる調整は、どちらかといえば遅く、重合条件を十分に制御するには不適当であることも多い。
【0043】
従って、本発明の具体的な要件の1つは、ループリアクターが第1の取り出し口に加えて第2の取り出し口を有することである。第1及び第2の取り出し口は、ガス相リアクターなどの第2のリアクターに接続されていることが好ましい。従って、第1及び第2の取り出し口を通じて、それぞれ第1のポリマースラリーと第2のポリマースラリーがループリアクターから取り出され、第2のリアクター、即ちガス相リアクターへと送られる。好ましくは、第1の取り出し口の第1のポリマースラリーと第2の取り出し口の第2のポリマースラリーを第2のリアクターの上流で合わせてから、第2のリアクターへと送る。
【0044】
第1及び第2の取り出し口は、ループリアクターの適当な箇所であればどこに配置されていてもよい。しかしながら、第1及び第2の取り出し口は、ループリアクターの異なる箇所に設置されていなければならないことに留意しなければならない。そのような場合に限り、双方の取り出し口から、確実に異なるポリマースラリーを取り出すことができる。
【0045】
従って、第1の取り出し口は、第1のポリマースラリーが、必ずループリアクター中の平均ポリマー濃度以上のポリマー濃度でループリアクターから取り出されるように配置されるとよい。
【0046】
また、第2の取り出し口は、第2のポリマースラリーが、ループリアクター中の平均ポリマー濃度よりも低いポリマー濃度で取り出されるように、ループリアクターに配置されなければならない。
【0047】
上記で示したように、ループリアクター内のポリマースラリーの平均ポリマー濃度は、ループリアクター内のポリマースラリーの全重量に対して、通常15重量%から55重量%、好ましくは20重量%から55重量%、より好ましくは25重量%から52重量%である。
【0048】
従って、第1の取り出し口は、その箇所において第1のポリマースラリーのポリマー濃度がループリアクター内の平均ポリマー濃度以上となるように、ループリアクターに配置されるとよい。例えば、ループリアクター内のポリマースラリーの平均ポリマー濃度が、ループリアクター内のポリマースラリーの全重量に対して約25重量%である場合、第1の取り出し口は、その箇所における第1のポリマースラリーのポリマー濃度が、第1のポリマースラリーのポリマースラリー全重量に対して約25重量%以上となるように、ループリアクターに配置される。
【0049】
これに対して、第2の取り出し口は、その箇所における第2のポリマースラリーのポリマー濃度が、ループリアクター内の平均ポリマー濃度よりも低くなるように、ループリアクターに配置されるとよい。例えば、ループリアクター内のポリマースラリーの平均ポリマー濃度が、ループリアクター内のポリマースラリーの全重量に対して約25重量%である場合、第2の取り出し口は、その箇所における第2のポリマースラリーのポリマー濃度が、第2のポリマースラリーの全重量に対して24重量%より低くなるように、ループリアクターに配置される。
【0050】
従って、第1の取り出し口は、適宜ループリアクターの外周に位置する。本発明での意味において、用語「外周」とは、ループリアクターの閉ループの開放側となる側を言い、即ち第1の取り出し口は、管状のループリアクターの外側表面に位置している。第1の取り出し口は、ループリアクターの水平セグメントのうち1つの外周、またはループリアクターのベンドのうち1つの外周に位置してよい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態の1つによれば、第1の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの外周又は(2つの)ベンドのうち1つの外周に位置し、好ましくはループリアクターの下部水平セグメントの外周に位置する。
【0052】
それに加えて又はあるいは、第2の取り出し口は、ループリアクターの水平セグメント(下部若しくは上部水平セグメント)又はベンド(下部若しくは上部ベンド)の内周に位置する。本発明での意味において、用語「内周」とは、ループリアクターの閉ループの閉塞側となる側を言い、即ち第2の取り出し口は、管状のループリアクターの内側表面、つまり水平セグメント(下部又は上部水平セグメント)の内側表面又はベンド(下部又は上部ベンド)の内側表面に位置する。従って、第2の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの内周又は(2つの)下部ベンドの内周に位置するのが好ましい。具体的な実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有する実施形態によれば、第2の取り出し口は、2つの下部ベンド、即ち垂直セグメントを下部水平セグメントに接合するベンドのうちの1つの内周に位置する。別の好ましい実施形態、即ちループリアクターが水平セグメントを有さない実施形態によれば、第2の取り出し口は、下部ベンド、即ち2つの垂直セグメントを接合するベンドの内周に位置する。
【0053】
従って、本発明の具体的な実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有する実施形態とは、好ましくは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有するループリアクターであって、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの上部若しくは下部水平セグメントの外周又は上部若しくは下部ベンドの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの下部若しくは上部水平セグメントの内周又は下部又は上部ベンドの外周に位置するループリアクターを意味する。
【0054】
本発明の別の好ましい実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有さない実施形態によれば、ループリアクターは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有し、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの下部又は上部ベンドの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの下部又は上部ベンドの内周に位置する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有する実施形態によれば、ループリアクターは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有し、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの外周又は2つの下部ベンドのうち1つの外周、好ましくは下部水平セグメントの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの上部水平セグメントの内周または2つの上部ベンドのうち1つの内周、好ましくはループリアクターの2つの上部ベンドのうち1つの内周に位置する。
【0056】
本発明の他の好ましい実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有さない実施形態によれば、ループリアクターは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有し、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの下部ベンドの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの上部ベンドの内周に位置する。
【0057】
本発明のさらに好ましい実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有する実施形態によれば、ループリアクターは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有し、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの外周又は2つの下部ベンドのうち1つの外周、好ましくは下部水平セグメントの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの内周又は2つ下部ベンドのうち1つの内周、好ましくはループリアクターの2つの下部ベンドのうち1つの内周に位置する。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態の1つ、即ちループリアクターが水平セグメントを有さない実施形態によれば、ループリアクターは、ポリマースラリーを取り出す第1及び第2の取り出し口を有し、前記第1の取り出し口は、ループリアクターの下部ベンドの外周に位置し、前記第2の取り出し口は、ループリアクターの下部ベンドの内周に位置する。
【0059】
本発明によれば、第2の取り出し口は、第1の取り出し口の前及び/又は同時及び/又は後に動作する。本発明において、取り出し口についての用語「動作する」とは、ポリマースラリーがループリアクターから取り出されることを意味する。よって、それぞれ第1及び第2の取り出し口からのポリマースラリーの取り出し量は、ループリアクター内のスラリーについて所望のポリマー濃度が得られるように、相互に最適となるよう調整されるとよい。周知ではあるが、第1及び第2の取り出し口を通じたループリアクターからのポリマースラリーの全流出量は、例えばループリアクター内の圧力を一定に維持する圧力コントローラーによって決めることができる。
【0060】
上述のように、取り出された希釈剤又はポリマースラリーは、好ましくはガス相リアクターなどの第2のリアクターへと送られる。従って、第1及び第2の取り出し口は、導管を介してガス相リアクターなどの第2のリアクターに接続されていることが好ましい。また、第1の取り出し口の導管と第2の取り出し口の導管が、第2のリアクターの上流の接続点で互いに接続されており、さらなる導管が該接続点から第2のリアクターへと続いていることがより好ましい。
【0061】
第1及び第2の取り出し口の特定の組み合わせを有する本発明のループリアクターを用いることにより、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量を、特定の所要の量に調整することができる。この調節により、ループリアクター中のポリマー量を非常に容易かつ素早く調節することができ、またこの調節は重合プロセスの開始時又はループリアクターの通常運転時に行うことができる。また、第2のリアクターへのポリマー供給量や、第2リアクターへ送られる全ポリマースラリーのポリマー濃度もまた、非常に便利に第2のリアクターにおいて求められる所望の値に調整することができる。
【0062】
ループリアクターの始動時には、第1の取り出し口は閉じられていることが好ましく、第2の取り出し口は開かれている。より好ましくは、取り出された流体相又は第2のポリマースラリーが、第2のリアクターへと送られる。この特定の切り替え(第1の取り出し口:閉、第2の取り出し口:開)により、ループリアクターを通過する一定の流量を保ち、ポリマー濃度とループリアクターにおける滞留時間を所望のレベル/時間にまで増加させることができる。同時に、必要であれば、第2のリアクターには、あらかじめ第2の取り出し口から排出された一定量のポリマースラリーが供給されていてもよい。
【0063】
通常、始動段階では、取り出されるスラリー全量に対して50から100重量%である第2のポリマースラリーが、第2の取り出し口から取り出され、任意でガス相リアクターなどの第2のリアクターへと送られる。好ましくは、第2のポリマースラリーのポリマー濃度は、0%を超え10重量%以下である。従って、取り出される第2のポリマースラリーは、0.1から5.0重量%、例えば0.1から2.0重量%のポリマーを含むことが好ましい。
【0064】
ループリアクター及び/又はループリアクターを有する重合リアクターシステムの通常運転では、通常、第1の取り出し口は(完全に)開かれており、第2の取り出し口は閉じられているか、わずかに開かれているのみである。この状態では、ループリアクターから取り出されるポリマースラリーの全量が、主として第1の取り出し口から取り出され、即ち少なくとも90重量%、例えば90から100重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、例えば95から100重量%が第1の取り出し口から取り出される一方、残る部分が第2の取り出し口を通じて取り出される。しかしながら、ループリアクター内の条件が意図せず変化した場合(例えば、触媒活性の低下)や、通常運転中にあるグレードのポリマーから他のグレードのポリマーの重合へと切り替える場合は、第2の取り出し口を開いて、即ち完全にまたは部分的に開いて、ループリアクター内の条件を所望の条件に適合させる調整を介入させることができる。この場合も、第2の取り出し口を通じてループリアクターから取り出された第2のポリマースラリーは、第2のリアクターへと送られるのが好ましい。
【0065】
このような状況において、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して65重量%から95重量%の間であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態の1つによれば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して70重量%から90重量%の間である。例えば、第1の取り出し口通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して75重量%から85重量%の間である。
【0066】
従って、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して5重量%から35重量%の間である。本発明の好ましい実施形態の1つによれば、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して10重量%から30重量%の間である。例えば、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して15重量%から25重量%の間である。
【0067】
よって、好ましい実施形態の1つによれば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して65重量%から95重量%の間であり、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して5重量%から35重量%の間である。また、別の好ましい実施形態の1つによれば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して70重量%から90重量%の間であり、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して10重量%から30重量%の間である。例えば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して75重量%から85重量%の間であり、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量は、取り出される全ポリマースラリーの重量に対して15重量%から25重量%の間である。
【0068】
以下に、第1及び第2の取り出し口を通じたループリアクターからの取り出しを調節して、ループリアクター及び任意で第2のリアクターの運転条件を調整するための代表的な条件を示す。
【0069】
第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの比[PS−O1/PS−O2]は、少なくとも1.8、好ましくは少なくとも2.5であることが好ましい。
ここで、「PS−O1」は、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]であり、
「PS−O2」は、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]である。
【0070】
好ましくは、第1の取り出し口と第2の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの比[PS−O1/PS−O2]は、1.8から19の範囲、より好ましくは2から15の範囲、さらに好ましくは2から10の範囲、最も好ましくは2から7.5の範囲である。
ここで、
「PS−O1」は、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]であり、
「PS−O2」は、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの量[重量パーセントによる]である。
【0071】
例えば、第1の取り出し口と第2の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの比[PS−O1/PS−O2]は、3から6の範囲、例えば3から5の範囲である。
【0072】
既に上記で示したように、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーは、第1の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの全重量に対して、少なくとも15重量%、より好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%の量のポリマーを有していてよい。いずれの場合も、第1のポリマースラリーは、少なくともループリアクター内の平均ポリマー濃度と同量のポリマーを有する。
【0073】
あるいは、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーは、第1の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの全重量に対して、最大60重量%、より好ましくは最大58重量%、最も好ましくは最大55重量%の量のポリマーを有していてよい。
【0074】
従って、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーは、第1の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの全重量に対して、15重量%から60重量%の間、より好ましくは20重量%から58重量%の間、最も好ましくは25重量%から55重量%の間の量のポリマーを有することが好ましい。
【0075】
これに対して、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーは、ポリマー濃度が、リアクター内のポリマースラリーの平均ポリマー濃度よりも実質的に低い。
【0076】
特に、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーは、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの全重量に対して、0.1重量%を超える量の、より好ましくは少なくとも0.5重量%の量のポリマーを有する。
【0077】
それに加えて又はあるいは、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーは、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの全重量に対して、最大10重量%、より好ましくは最大5重量%の量のポリマーを有する。
【0078】
従って、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーは、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの全重量に対して、0.1重量%から10重量%の間、より好ましくは0.5重量%から5重量%の間、最も好ましくは1重量%から5重量%の間の量のポリマーを有することが好ましい。例えば、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーは、第2の取り出し口を通じて取り出されるポリマースラリーの全重量に対して、2重量%から4重量%の間、例えば2.5重量%から3.5重量%の間の量のポリマーを有している。
【0079】
本発明の好ましい実施形態の1つによれば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーに含まれるポリマーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーに含まれるポリマーの比[P−O1/P−O2]は、少なくとも3、より好ましくは少なくとも5である。
ここで、
「P−O1」は、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーに含まれるポリマーの量[重量パーセントによる]であり、
「P−O2」は、第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーに含まれるポリマーの量[重量パーセントによる]である。
【0080】
例えば、第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーに含まれるポリマーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーに含まれるポリマーの比[P−O1/P−O2]は、3から25の範囲、より好ましくは5から20の範囲、最も好ましくは5から15の範囲である。
【0081】
上述のように、ポリマースラリーは、所望の必要に応じて、第1の取り出し口及び/又は第2の取り出し口を通じてループリアクターから取り出してよい。従って、本発明の好ましい実施形態の1つによれば、ポリマースラリーは、第1の取り出し口及び第2の取り出し口を通じて連続的に取り出される。本発明の別の好ましい実施形態の1つによれば、ポリマースラリーは、第1の取り出し口及び第2の取り出し口を通じて断続的に取り出される。本発明の別の好ましい実施形態の1つによれば、ポリマースラリーは、第1の取り出し口を通じて連続的に取り出され、第2の取り出し口を通じて断続的に取り出される。本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、ポリマースラリーは、第1の取り出し口を通じて断続的に取り出され、第2の取り出し口を通じて連続的に取り出される。
【0082】
断続的な取り出しは、例えば周期的に開くバルブ、回転バルブ、沈降脚(settling legs)等を用いて行うことができる。連続的な取り出しは、通常、バタフライバルブなどの連続作動する制御バルブを用いて行われ、その状態は、例えばリアクター内の圧力に基づいて調整される。こうした構成は当業者に公知であり、本発明の実施に必要な条件となるよう適合させることができる。
【0083】
上記で示したように、ループリアクターは、上記で定義されるオレフィンホモポリマーやコポリマーなどのオレフィンポリマーを製造するための、複数の重合リアクター容器を有する重合リアクターシステムの一部であることが好ましい。該重合リアクター容器は、直列に接続される。従って、該重合リアクターシステムは、カスケード中に、ループリアクター及びさらに少なくとも1つのリアクターを有する。ループリアクターに続くリアクターは、いずれも、オレフィンを重合するいかなる重合リアクター容器であってもよく、例えば再度のループリアクター又はガス相リアクターなどであるが、後者が好ましい。
【0084】
「ガス相リアクター」とは、あらゆる機械混合式または流動床式の反応器を意味する。好ましくは、ガス相リアクターは、ガス速度が少なくとも0.1m/secの流動床リアクターを有する。
【0085】
重合リアクターシステムの第3の重合リアクター容器又はそれに続く重合リアクター容器は、いかなるタイプのリアクターであってもよい。しかしながら、重合リアクターシステムの第3の又はそれに続く重合リアクター容器は、別のガス相リアクターであることが好ましい。
【0086】
本発明の特定の実施形態の1つによれば、本重合リアクターシステムは、2つの重合リアクター容器からなり、一方の重合リアクター容器は本明細書で定義されるループリアクターであり、他方の重合リアクター容器はガス相リアクターである。本発明の別の好ましい実施形態によれば、本重合リアクターシステムは、少なくとも3つの重合リアクター容器を有する。即ち、本明細書で定義されるループリアクター及びガス相リアクターの後に、少なくとも第3の重合リアクター容器が続く。好ましくは、第3の重合リアクター容器は、ガス相リアクターである。用語「重合リアクター容器」は、主たる重合が行われることを示す。よって、重合リアクターシステムが2つの重合リアクター容器のみからなる場合でも、それは、全重合リアクターシステムに、例えばプレ重合リアクターにおけるプレ重合工程が含まれる可能性を除外するものではない。用語「のみからなる」は、主たる重合リアクター容器について限定する表現にすぎない。
【0087】
本明細書で定義される重合リアクターシステム及び/又はループリアクター全体が、プレ重合リアクターにおけるプレ重合工程を有する場合、該プレ重合は、連続撹拌槽リアクター又はループリアクター、好ましくはループリアクターにて行うことができる。プレ重合にループリアクターが用いられる場合、該ループリアクターは、本明細書に定義されるループリアクターの特徴を1つ又はそれ以上持っていてもよいし、持っていなくてもよい。
【0088】
プレ重合反応は、通常、0℃から60℃、好ましくは10℃から50℃、より好ましくは10℃から45℃の温度で行われる。
【0089】
プレ重合リアクター内の圧力は、重要ではないが、反応混合物を液相に維持するのに十分な圧力でなければならない。従って、圧力は20barから100bar、例えば30barから70barであってよい。
【0090】
プレポリマーへの変換は、一般に、プレポリマーが1グラムあたり0.002ミリモルから10ミリモルの間の遷移金属を含むようになる量の触媒系を、エチレン及び/又はプロピレンなどの1又は2種以上のオレフィン及び任意でコモノマーに接触させることで行う。
【0091】
あるいは又はそれに加えて、触媒上のプレポリマー量は、好ましくは固体触媒系成分1gあたり10から1000g、より好ましくは固体触媒系成分1gあたり50から500gである。
【0092】
連続撹拌プレ重合リアクターから回収した触媒系の粒子は、すべてが同量のプレポリマーを含んでいるわけではないことが当業者に知られている。むしろ、各粒子は、粒子のプレ重合リアクターでの滞留時間に応じた特有の量を有する。リアクター中に比較的長時間留まる粒子もあれば、比較的短時間留まる粒子もあるので、粒子によってそのプレポリマー量も様々であり、個々の粒子の中には、上限を超えた量のプレポリマーを含むものもありうる。しかしながら、触媒系上のプレポリマーの平均量は、上記で特定した限度内であることが好ましい。プレ重合リアクターにおいて調製されるプレポリマー量は公知であり、特にGB1580635により知られている。
【0093】
プレポリマー粒子のサイズは、ふるい分け、液体サイクロン、エルトリエーションによる微粒子または大粒子の分離などの当業者に周知な方法により制御してもよい。
【0094】
触媒系の成分は、すべてプレ重合工程で導入されることが好ましい。しかしながら、固体触媒成分と共触媒を別々に供給できる場合は、共触媒の一部のみをプレ重合段階に導入し、次いで残り部分を本明細書で定義されるループリアクターなどの重合段階に導入することも可能である。このような場合でも、プレ重合段階には、十分な重合反応が得られる量の共触媒を導入する必要がある。
【0095】
さらに、プレ重合段階にさらなる成分を導入することが可能である。従って、当業者に知られていることだが、プレ重合段階に水素も加えて、プレポリマーの分子量を制御してもよい。また、耐電防止剤を導入して、粒子が互いに接着したりリアクターの壁に接着したりするのを防止してもよい。
【0096】
プレポリマーは、取り出し口を通じてプレ重合リアクターから連続的又は断続的に取り出され、本明細書で定義するループリアクターに好ましくは直接供給される。
【0097】
ループリアクターにおける重合段階の後にガス相重合段階が続く場合、ループリアクターのポリマースラリーを、これらの段階の間にフラッシュ工程を挟まずに直接ガス相重合ゾーンへと導くことが好ましい。この種の直接供給は、EP887379A、EP887380A、EP887381A及びEP991684Aに記載されている。「直接供給」とは、オレフィンポリマー及び希釈剤を有するポリマースラリーであるループリアクターの内容物を、次の段階のガス相リアクターに直接導くプロセスを意味する。従って、第1の取り出し口からの第1のポリマースラリー及び/又は第2の取り出し口からの第2のポリマースラリーは、直接第2のリアクター、即ちガス相リアクターへと供給される。実施形態の1つによれば、第1の取り出し口からの第1のポリマースラリー及び第2の取り出し口からの第2のポリマースラリーは、別々に直接第2のリアクターへと供給される。これは、例えばそれぞれ第1及び第2の取り出し口に接続された導管を、第2のリアクターであるガス相リアクターに直接導くことにより実現することができる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、第1の取り出し口からの第1のポリマースラリー及び第2の取り出し口からの第2のポリマースラリーは、第2のリアクター、即ちガス相リアクターの上流で混合され、それから第2のリアクターへと送られる。このような場合、第1の取り出し口の導管及び第2の取り出し口の導管は、第2のリアクターの上流の接続点で互いに接続され、さらなる導管が、該接続点から第2のリアクター、即ちガス相リアクターへと続いている。
【0098】
あるいは、ポリマースラリーは、ガス相重合段階へ供給される前に、フラッシュ工程へ導かれるか、又はさらなる濃縮工程を経てもよい。従って、この「間接供給」とは、ループリアクターの内容物、即ちポリマースラリーが、反応媒分離部を経由し、反応媒が分離部からガスとして除去されて、ガス相リアクターへと供給されるプロセスを言う。ポリマースラリーがガス相に進入する前に、いくつかの成分、例えば水素は、分離部などの種々の技術的手段により、完全にまたは部分的にポリマースラリーから除去することができる。「分離部」とは、フラッシュ、膜、蒸留、ストリッピング、ベントコンデンサーなどの種々の技術的手段により、いくつかの軽い成分、例えば水素または任意で窒素を、完全又は部分的にモノマーから分離することができる単位操作を意味する。
【0099】
重合リアクターシステムの一部であるガス相リアクターは、流動床リアクター、高速流動床リアクター若しくは固定床リアクター(Settled bed reactor)又はこれら任意の組み合わせであることが好ましい。複数のガス相リアクターの組み合わせを用いる場合、ポリマーはある重合リアクターから他の重合リアクターへと送られる。さらに、重合段階からのポリマーの一部又は全部を、前の重合段階、例えば本明細書で定義される前のループリアクター及び/又は前のガス相リアクターへと戻してもよい。
【0100】
重合リアクターシステムの一部であるガス相リアクターは、50℃から100℃、好ましくは65℃から95℃の温度で運転されることが好ましい。運転圧力は、10barから40bar、好ましくは15barから30barであることが好ましい。
【0101】
ガス相リアクターでは、オレフィンポリマーが製造される。例えば、プロピレンモノマーが、エチレン及び/又はC
4−C
20α−オレフィンコモノマーの少なくとも1種と共重合するか、又はプロピレンなどのオレフィンモノマーが、ホモ重合する。
【0102】
本発明の好ましい実施形態の1つによれば、エチレンやプロピレンといったオレフィンモノマーが、ガス相リアクターにおいて少量の水素と共にホモ重合して、ポリエチレンホモポリマー又はポリプロピレンホモポリマーが生成される。例えば、反応混合物は、60mol%から99mol%のプロピレン及び0.001mol%から3mol%の水素を含む。残りは、窒素やプロパンなどの不活性な成分からなる。
【0103】
本発明の別の好ましい実施形態の1つによれば、エチレン及び/又はプロピレンオレフィンモノマーは、ガス相リアクターにおいて少量の水素と共に共重合して、ポリエチレンコポリマーまたはポリプロピレンコポリマーを生成する。例えば、反応混合物は、60mol%から96mol%のプロピレンと、0.1mol%から10mol%のエチレン及び/又はC
4−C
20α−オレフィンのコモノマーと、0.01mol%から3mol%の水素を含む。残りは、窒素やプロパンなどの不活性な成分からなる。
【0104】
以上を要約すると、本発明の特に好ましい一側面は、さらに、本明細書で定義されるループリアクター及び/又は本明細書で定義される重合リアクターシステムにおいてオレフィンポリマーを製造する方法であって、該方法は、
ループリアクターにオレフィンモノマー及び触媒系を供給して、ループリアクターにおいてポリマースラリーを形成する工程、及び
(1)ループリアクターから取り出される全ポリマー量、及び/又は
(2)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリー量、及び/又は
(3)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリーのポリマー濃度を、
第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のスラリーの比を調整することにより制御する工程、
を有する方法に関する。
【0105】
方法中の工程についての好ましい実施形態に関しては、上記の詳細な記述が参照される。
【0106】
オレフィンポリマーの製造方法が、重合リアクターシステムの一部であるループリアクターで行われる場合、第1の取り出し口及び第2の取り出し口から取り出されるポリマースラリーは、さらにガス相リアクターへ導かれることが好ましい。
【0107】
本明細書で定義される重合リアクターシステムの実施による、本明細書で定義されるループリアクターと第2のリアクター、即ちガス相リアクターとの生成分配(production split)は、通常75:25から40:60、より好ましくは65:35から50:50、最も好ましくは60:40から50:50となる。例えば、ループリアクターとガス相リアクターとの生成分配は、約55:45となる。
【0108】
それに加え又はあるいは、重合リアクターシステムが実施される場合、本明細書で定義されるループリアクターにおけるオレフィンポリマーの生成は、ガス相リアクターにおける生成以上である。好ましくは、本明細書で定義されるループリアクターにおける生成が、製造されるオレフィンポリマー全重量の40重量%を超える。よって、好ましい実施形態によれば、製造されるオレフィンポリマー全重量の50重量%から75重量%、好ましくは50重量%から65重量%、最も好ましくは50重量%から60重量%のオレフィンポリマーが、本明細書で定義されるループリアクターにおいて製造される。従って、ガス相リアクターにおける生成は、製造されるオレフィンポリマー全重量の60重量%未満である。よって、好ましい実施形態によれば、製造されるオレフィンポリマー全重量の25重量%から50重量%、好ましくは35重量%から50重量%、最も好ましくは40重量%から50重量%のオレフィンポリマーが、本明細書で定義されるループリアクターにおいて製造される。
【0109】
特に本発明は、本明細書で定義されるループリアクター及び/又は本明細書で定義される重合リアクターシステムのループリアクターにおいて形成されるオレフィンポリマーの平均滞留時間を制御する方法も提供することが好ましい。特に、本方法は、
(a)本発明のループリアクター及び/又は本明細書で定義される重合リアクターシステムの一部であるループリアクターに、オレフィンモノマー、希釈剤及び触媒系を供給してポリマースラリーを形成する工程、及び
(b)
(1)ループリアクターから取り出される全ポリマー量、及び/又は
(2)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリー量、及び/又は
(3)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリーのポリマー濃度を、
第1の取り出し口を通じて取り出される第1のポリマースラリーと第2の取り出し口を通じて取り出される第2のポリマースラリーの比を調整することにより制御する工程、
を有する。
【0110】
方法中の工程についての好ましい実施形態に関しては、上記の詳細な記述が参照される。
【0111】
以上より、本発明は、さらなる側面によれば、本明細書で定義されるループリアクターに位置する第2の取り出し口の使用であって、
(1)ループリアクターから取り出される全ポリマー量、及び/又は
(2)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリー量、及び/又は
(3)ループリアクターから取り出される全ポリマースラリーのポリマー濃度を、
第2の取り出し口を通じた流体相の取り出しを調整することより制御するための使用に関する。
【0112】
本発明の好ましい実施形態の1つによれば、ループリアクターでのオレフィンポリマーの平均滞留時間を制御するための、本明細書で定義されるループリアクターに位置する第1及び第2の取り出し口の組み合わせの使用が提供される。
【0113】
以下に記載する実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0114】
A.触媒の調製
固体触媒成分は、アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウムに代えてジエチルアルミニウムクロリドを用いた以外は、WO2004/029112の実施例8に従って製造した。
【0115】
B.重合
a)実施例1(IE1):
上記の触媒は、プレ重合リアクターに1.6g/hの速度で連続的に導入した。プレ重合リアクターは、容量45dm
3の撹拌槽リアクターであり、液体を満たした状態にて温度30℃及び圧力54barで運転された。導入前に、供給する触媒を、トリエチルアルミニウム(TEA)及びジシクロペンチルジメトキシシラン(DPDMS)を含む供給原料と、TEA/Tiのモル比が262、DPDMS/TEAのモル比が10となるように混合した。水素供給は約36g/hであり、プロピレン供給は平均滞留時間が0.3時間となるようにした。
【0116】
プレ重合リアクターからのスラリーを、温度80℃及び圧力52barで運転される容量150dm
3のループリアクターに導いた。ループリアクターには、プロピレンを205kg/hの速度で供給した。新たな水素は加えず、水素はすべてプレ重合リアクターを経由したものであった。プロピレンホモポリマーの生成速度は29kg/hであり、そのメルトフローレートMFR
2は14g/10分であった。
ループリアクターからのポリマースラリーを、温度90℃及び圧力24barで運転されるガス相リアクターへと直接導いた。スラリーは、2つの取り出し口を経由して取り出された。第1の取り出し口を介して、ポリマー濃度がリアクター内と同じとなる位置から、取り出されるスラリーの全重量の80重量%のスラリーを取り出した。即ち、第1の取り出し口は、ループリアクターの下部水平セグメントの外周に位置する。ループリアクターの下部水平セグメントの内周に位置する第2の取り出し口を介して、取り出されるスラリーの全重量の20重量%のスラリーを取り出した。第2の取り出し口を通じて取り出されたスラリーのポリマー濃度は、第2の取り出し口を通じて取り出されたスラリーの全重量に対して約3重量%であった。
【0117】
ガス相リアクターには、ループリアクターから取り出されたポリマースラリーに加えて、プロピレン及び水素、そして不活性ガスとして窒素を、プロピレン含有量がモル比で86%、プロピレンに対する水素の比が3.8mol/kmolとなるように供給した。リアクターにおける生成速度は23kg/hであり、リアクターから取り出されたポリマーのメルトフローレートMFR
2は、16g/10分であった。よって、ループリアクターとガス相リアクターの分配は、55/45であった。
【0118】
表1に、ループにおける生成速度、第1及び第2の取り出し口から取り出された全スラリーの固体含有量、それにループ段階とガス段階の分配のデータを要約する。
【0119】
b)実施例2(IE2):
得られるプロピレンホモポリマーのMFR
2が、それぞれループリアクター後に11g/10分、ガス相リアクター後に14g/10分となるように水素供給を変更した以外は、実施例1に記載するようにして重合を行なった。
【0120】
表1に、ループにおける生成速度、第1及び第2の取り出し口から取り出された全スラリーの固体含有量、それにループ段階とガス段階の分配のデータを要約する。
【0121】
c)実施例3(IE3):
得られるプロピレンホモポリマーのMFR
2が、それぞれループリアクター後に10g/10分、ガス相リアクター後に12g/10分となるように水素供給を変更した以外は、実施例1に記載するようにして重合を行なった。さらに、プロピレンコポリマーのエチレン含有量が、プロピレンコポリマー全重量に対して、ループリアクター後に1.8重量%、ガス相リアクター後に2.5重量%となるように、リアクターにエチレンを供給した。
【0122】
表1に、ループにおける生成速度、第1及び第2の取り出し口から取り出された全スラリーの固体含有量、それにループ段階とガス段階の分配のデータを要約する。
【0123】
d)比較例1(CE1):
第2の取り出し口を使用しない以外は、実施例1に記載するようにして重合を行なった。
【0124】
表1に、ループにおける生成速度、第1の取り出し口から取り出された全スラリーの固体含有量、それにループ段階とガス段階の分配のデータを要約する。
【0125】
e)比較例2(CE2):
第2の取り出し口を使用しない以外は、実施例3に記載するようにして重合を行なった。さらに、プロピレンコポリマーのエチレン含有量が、プロピレンコポリマー全重量に対して、ループリアクター後に2重量%、ガス相リアクター後に3.4重量%となるように、リアクターにエチレンを供給した。
【0126】
表1に、ループにおける生成速度、第1の取り出し口から取り出された全スラリーの固体含有量、それにループ段階とガス段階の分配のデータを要約する。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示すように、ループリアクターを単一の取り出し口で運転した場合、重合リアクターのカスケードにおいてオレフィンモノマーを重合させると、ループリアクターとガス相リアクターの生成分配は46/54となった。これに対し、ループリアクターを異なる箇所に位置する2つの取り出し口、即ち第1及び第2の取り出し口の組み合わせで運転した場合、オレフィンモノマーを重合させると、ループリアクターとガス相リアクターの生成分配は55/45となった。従って、本出願に係る第1及び第2の取り出し口を備えたループリアクターによって、ループリアクターとガス相リアクターの生成分配をループリアクターの側へシフトさせることができる。