(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913632
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】デジタルフィルター、パーシャルリスポンス等化器、および、コヒーレント受信機および方法
(51)【国際特許分類】
H04B 3/06 20060101AFI20160414BHJP
H04B 10/2507 20130101ALI20160414BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20160414BHJP
H04L 25/497 20060101ALI20160414BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
H04B3/06 A
H04B9/00 251
H04B9/00 610
H04L25/497
H04L25/03 C
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-550345(P2014-550345)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-507411(P2015-507411A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2012070533
(87)【国際公開番号】WO2013101583
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/581,946
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510279365
【氏名又は名称】ゼットティーイー (ユーエスエー) インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジァンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジャンチャン
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−043606(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0243561(US,A1)
【文献】
特開平03−166839(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0051821(US,A1)
【文献】
特開平07−038614(JP,A)
【文献】
特開平04−183042(JP,A)
【文献】
Jianqiang Li, et al.,Spectrally Efficient Quadrature Duobinary Coherent Systems With Symbol-Rate Digital Signal Processing,Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE,2011年 1月13日,Vol.29, Issue.8,pages.1098-1104
【文献】
Jianqiang Li, et al.,Enhanced digital coherent receiver for high spectral-efficiency dual-polarization quadrature duobinary systems,2010 36th European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC),米国,IEEE,2010年 9月19日,pages.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/06
H04B 10/2507
H04B 10/61
H04L 25/03
H04L 25/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予想される周波数応答形状を持つ通信チャネルからの受信信号を等化するためのフルリスポンス線形等化器と、
前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターと、を含み、
前記パーシャルリスポンスポストフィルターは、前記通信チャネルを介して受信したパーシャルリスポンスデータの搬送信号を前記フルリスポンス線形等化器が処理した後に、当該フルリスポンス線形等化器から得られる等化信号をポストフィルタリングする、パーシャルリスポンス等化器。
【請求項2】
前記フルリスポンス線形等化器により処理されて得られる等化信号の搬送波再生を実行するためのフルリスポンス搬送波再生機器をさらに含む、請求項1に記載のパーシャルリスポンス等化器。
【請求項3】
フルリスポンス搬送波再生機器は、前記フルリスポンス線形等化器と前記パーシャルリスポンスポストフィルターの間で動作可能に結合されている、請求項2に記載のパーシャルリスポンス等化器。
【請求項4】
予想される周波数応答形状を持つ通信チャネルから受信したパーシャルリスポンス光信号をパーシャルリスポンスデジタル信号へと変換するフロントエンド受信機と、
前記パーシャルリスポンスデジタル信号を等化するためのフルリスポンス線形等化器と、
前記フルリスポンス線形等化器により処理されて得られる等化信号を搬送波再生するためのフルリスポンス搬送波再生機器と、
前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターと、を含み、
前記パーシャルリスポンスポストフィルターは、前記通信チャネルを介して受信したパーシャルリスポンスデータの搬送信号を前記フルリスポンス線形等化器が処理した後に、当該フルリスポンス線形等化器から得られる等化信号をポストフィルタリングする、コヒーレント受信機。
【請求項5】
ポストフィルタリングされた信号を検出するための、パーシャルリスポンスデータ検出機器をさらに含む請求項4に記載のコヒーレント受信機。
【請求項6】
前記パーシャルリスポンスデータ検出機器はシンボル・バイ・シンボル検出器である請求項5に記載のコヒーレント受信機。
【請求項7】
前記パーシャルリスポンスデータ検出機器は、最尤推定シーケンス検出器である請求項5に記載のコヒーレント受信機。
【請求項8】
(a)予想される周波数応答形状を持つ通信チャネルからの受信信号をフルリスポンス線形等化器によって等化して、等化信号を生成するステップと、
(b)予想される周波数応答形状を有する前記受信信号を搬送しているデータを処理するステップと、
(c)前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターを用いて、前記等化信号をポストフィルタリングするステップと、
を含む方法。
【請求項9】
(b’)ステップ(a)において生成された前記等化信号を搬送波再生するステップ、
をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光通信システムにおいてパーシャルリスポンスデータの光搬送信号を受信するための信号受信方法であって、
(a)予想される周波数応答形状を有する通信チャネルを介して受信したパーシャルリスポンスデータの光搬送信号を、パーシャルリスポンスデジタル信号へと変換するステップと、
(b)前記パーシャルリスポンスデータの光搬送信号を受信する前に、前記光通信システムの一部であったフルリスポンス線形等化器を用いて、事前にフィルタリングされたフルリスポンスデジタル信号を等化するステップと、
(c)前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターを用いて、前記等化されたフルリスポンスデジタル信号をポストフィルタリングするステップと、
を含む信号受信方法。
【請求項11】
(d)ポストフィルタリングされた信号を検出するステップ、をさらに含む請求項10に記載の信号受信方法。
【請求項12】
前記ステップ(d)での検出は、シンボル・バイ・シンボル検出である請求項11に記載の信号受信方法。
【請求項13】
前記ステップ(d)での検出は、最尤推定シーケンス検出である請求項11に記載の信号受信方法。
【請求項14】
コンピューターに、
(a)パーシャルリスポンスデータの搬送信号を受信する前に通信システムの一部であったフルリスポンス線形等化器を用いて、予想される周波数応答形状を有する通信チャネルを介して受信したパーシャルリスポンスデータの搬送信号を等化するための指令を行う手順と、
(b)前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターを用いて、前記手順(a)において得られる等化信号をポストフィルタリングするための指令を行う手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項15】
前記コンピューターに、
(a’)前記手順(a)において得られる等化信号を搬送波再生することを実行するための指令を行う手順を、さらに実行させるための請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
パーシャルリスポンスデータの搬送信号を受信するフルリスポンス通信システムのコンピューターに、
(a)予想される周波数応答形状を有する通信チャネルを介して受信したパーシャルリスポンスデータの光搬送信号を、パーシャルリスポンスデジタル信号へと変換するための指令を行う手順と、
(b)前記フルリスポンス通信システムの一部であったフルリスポンス線形等化器を用いて、事前にフィルタリングされたフルリスポンスデジタル信号を等化するための指令を行う手順と、
(c)前記フルリスポンス線形等化器から得られる等化信号を搬送波再生することを実行させるための指令を行う手順と、
(d)前記通信チャネルの予想される周波数応答形状と類似する周波数応答形状を持つパーシャルリスポンスポストフィルターを用いて、前記手順(c)において搬送波再生された信号をポストフィルタリングするための指令を行う手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記コンピューターに、
(e)ポストフィルタリングされた信号を検出するための指令を行う手順を、さらに実行させる請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記手順(e)での検出は、シンボル・バイ・シンボル検出である請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記手順(e)での検出は、最尤推定シーケンス検出である請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに属し、特に、デジタルフィルター、パーシャルリスポンス等化器、およびコヒーレント受信の機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯域幅に対する需要が増大するに連れて、通信システムは、より高い容量を保持する必要に駆られている。それゆえ、全体の容量を増大させるためにスペクトル効率を増強する強い動機が存在する。スペクトル多重化の観点からは、特定の変調フォーマットにおいて、スペクトル効率を向上させるいくつかのアプローチが存在する。そのうちの一つの直接的なアプローチは、狭帯域フィルタリングすることによって個々の多重化されたチャンネルにおける帯域幅を拘束することを実現することである。この方法により、スペクトルは絞られて、高いスペクトル効率が実現される。しかしながら、符号間干渉(ISI)を伴わない状況を保つことできない。なぜならば、狭帯域フィルタリングの存在下では、等価チャンネルは、長いメモリーを有するISIを有するからである。さらに、ISIパターン(すなわち、チャンネルインパルス応答)は、共通に認識されておらず、複雑なチャンネル推測を必要とする、不整合なものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パーシャルリスポンス等化器は,この種のシステムに対して、よい解決法を提供する。パーシャルリスポンス等化器は、未知のチャンネルインパルス応答を、部分的に、既知の応答クラス(例えば、デュオバイナリー)へと変形させることができる。チャンネル応答が、目標のパーシャルリスポンスと類似している場合において、パフォーマンスが少し減少する場合がある(D. D. Falconer and F. R. Magee, Jr., “Adaptive channel memory truncation for maximum−likelihood sequence estimation”、 Bell System Tech. J., vol. 52, no. 9, pp. 1541−1562, Nov. 1973.)。幅広く研究されている、フルリスポンス等化器と異なり、報告されているパーシャルリスポンス等化器は、ほとんど決定誘導または、決定フィードバックモードである。特に、光通信システムをコヒーレントさせるために、フィードフォワードパーシャルリスポンス等化器の機器が望ましい。本願発明の分野は、光通信システムに限定されるものではない。
【0004】
P.J. Winzerが、2010年、文献「Beyond 100G Ethernet, IEEE Commun. Mag., vol. 48, no. 7, pp. 26−30」において、S. J. Savoryが、2010年9月および10月に、文献「“Digital Coherent Optical Receivers: Algorithms and Subsystems”, IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron., vol. 16, no. 5, pp. 1164−1179」において示しているように、近年、デジタル信号処理(DSP)に伴ったコヒーレント検波が100Gおよび光通信システムの分野を超えて、きわめて重大な技術であると認知されるようになっている。デジタル光コヒーレント受信機においては、線形通信減損のほとんどがデジタル線形等化器によって補完されている。線形等化器は便利であまり複雑でない、非多重化している分極化を実行し、何度にもわたる減損を適応可能な方法で補完する。今まで報告されてきた様々な線形等化器はほとんど、小さいISIチャンネルに適したフルリスポンスのものである。線形等化器は、よい振る舞いをするスペクトル的特徴(すなわち、小さなISI)で、よいパフォーマンスをする。一方で、J. G. Proakisが2010年、文献「Digital Communications, Fourth Edition, New York: McGraw−Hill」で説明しているように、線形等化器は、ノイズが強力に作用するためにおこる、厳しいISIが発生している状況では、望ましくない。加えて、多くの他のフルリスポンスDSPが光通信の分野において発展している。これらのフルリスポンス等化器および他の対応するDPSを、修正を加えないで保護することが強く求められている。本願発明は、以上の問題を解決することができる。
【0005】
他の懸念は、実際の操作の複雑さである。様々なパーシャルリスポンスの段階では、デュオバイナリが魅力的である。なぜならば、それは理論的段階においては、スペクトルを、一つの符号記憶を用いてナイキストバンドへと仕立てるからである。デュオバイナリ応答は、理解を容易にするために、例として、ここおよび他のパートにおいて説明される。調査されるシステムに対する応答他のパーシャルリスポンスのクラスも使用されうる。例えば、クラス2、クラス3、修正されたデュオバイナリ、拡張されたクラス4、およびクラス5などである。目的のデュオバイナリ応答のメモリーが短いため、MLSDの複雑さは劇的に減少することが以下の文献により明らかになっている。「Transmission of 96 x 100−Gb/s bandwidth−constrained PDM−RZ−QPSK channels with 300% spectral efficiency over 10610km and 400% spectral efficiency over 4370 km, J. Lightw. Technol., vol. 29, no. 4, pp. 491−498, Feb. 2011 by J.-X. Cai, C. R. Davidson, D.G. Foursa, A.J. Lucero, 0. V. Sinkin, W. W. Patterson, A. N. Pilipetskii, G. Mohs, and N.S. Bergano, 20 Tbit/s capacity transmission over 6,860 km, in Proc. OFC2011, Mar. 2011, Paper PDPB4 by J.-X. Cai, Y. Cai, C. R. Davidson, A. Lucero, H. Zhang, D.G. Foursa, 0. V. Sinkin, W. W. Patterson, A. Pilipetskii, G. Mohs, and N.S. Bergano, and Spectrum−narrowing tolerant 171−Gbit/s PDM¬16QAM transmission over 1,200 km using maximum likelihood sequence estimation, in Proc. ECOC 2011, Sep. 2011, Paper We. 10. P1.73」。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の側面によれば、本願発明は、通信システムにおいて、信号を受信するための機器および方法を含む。一つの側面によれば、パーシャルリスポンス等化器は、受信した信号を等化するためのフルリスポンス線形等化器、および、等化された信号をポストフィルタリングするためのパーシャルリスポンスポストフィルターを含む。
【0007】
本発明の他の側面によれば、受信機フロントエンドは、受信したパーシャルリスポンス光信号を、パーシャルリスポンスデジタル信号へと変換する。等化器は、事前にフィルタリングされたフルリスポンスデジタル信号を等化する。フルリスポンス搬送波再生機器は、等化器によって等化された信号を、搬送波再生する。ポストフィルターは、フルリスポンス搬送波再生機器によって、搬送波再生された信号をフィルタリングする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、パーシャルリスポンス等化器を概略的に示した図である。
【
図2】
図2は、実行のために使用されたフィルターモデルの例を示したものである。
【
図3】
図3は、搬送波再生機器を伴ったパーシャルリスポンス等化器を概略的に示した図である。
【
図4】
図4は、光通信システムのために、完全に受信する方法を概略的に示した図である。
【
図5】
図5は、スペクトル的に急峻化されたQAMシステムのモデルを示したものである。
【
図6】
図6(a)および(b)は、M−ary PAM の、 M=2 および4に対応するときの格子を示したものである。
【
図7】デュオバイナリチャンネルの単純化したモデルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
本願発明は、デジタルフィルター、パーシャルリスポンス等化器、デジタルコヒーレント受信機器およびデジタルコヒーレント受信方法に関する。これらは、分極多重化システム、モード多重化システム、空間多重化システムなどのための、コヒーレント受信方法を保護する。これらの側面は、同じ、もしくはよりよいレベルのパフォーマンスを提供する技術が存在することに起因する複雑性を減少させる。別の側面では、元々は、フルリスポンス信号のために発展された慣習的なDSPアルゴリズムの使用を許容する。また、本願発明の側面は、単純ながらも、帯域に拘束された信号のための、高い感受性をもつコヒーレント受信方法を提供する。さらに、本願発明の側面は、スペクトル効率のいいWDM光通信システムにおいて強力である。
【0011】
本願発明の側面は、様々な場面において実行可能である。そのうちの3つとして、
(1)フルリスポンス線形等化器が、強いノイズまたは線形クロストークの増強を引きおこす一般的な同期通信システム。
(2)位相ノイズが考慮に入れられる通信システム、そして
(3)いくつかの慣習的なDSP機器を含む光通信システムのためのコヒーレント受信方法がある。
【0012】
図1は、パーシャルリスポンス等化器10を概略的に示した図である。ポストフィルター13はデジタルであって、フルリスポンス線形等化器11の後にフィードフォワード形式で配置され、これら2つの機器の結合により、パーシャルリスポンス等化器の機能が発揮される。フルリスポンス線形等化器11は、ISIを伴った受信信号を、ISIのない信号へと等化する任意の種類でありうる。パーシャルリスポンスポストフィルターの周波数応答は、その形状に関して、チャンネル応答と類似していることが予想される。さらに、パーシャルリスポンスポストフィルターのインパルス応答は、既知の応答であり、その長さNは有限であると予想される。
図2は、実行に際し用いられるフィルターモデルの例を示したものである。
図2の構造は目的とするパーシャルリスポンスの種類を決定づける。タップ係数は恣意的であってよく、一方、タップ数も恣意的であってよい。
図2におけるデュオバイナリは、2つのタップが存在する特殊な例である。対応するタップ係数は両方とも1つである。
【0013】
図3は、搬送波再生装置33を伴ったパーシャルリスポンス等化器の2つめのケースを概略的に示した図である。この等化器のフィードフォワード構造により、フルリスポンス搬送波再生方法が容易に使用できるようになっている。搬送波再生装置はフルリスポンス線形等化器35とポストフィルター37との間に設置されてもよい。
【0014】
図4は、フロントエンド欠陥補修41、フルリスポンス線形等化器43、フルリスポンス搬送波再生機器45、パーシャルリスポンスポストフィルター47およびパーシャルリスポンスデータ検出機器49を含んだコヒーレントデジタル受信機40を概略的に示した3つめのケースの図である。信号は、パーシャルリスポンスを伴った信号へと等化されるので、データ検出機器49はパーシャルリスポンス信号のための任意の既知の検出器でありうる。非限定的な例だけとして、この技術で知られているように、検出器はシンボル・バイ・シンボル検出器または最尤推定シーケンス検出器でありうる。
【0015】
Jianjun Yu、Jianqiang Li共著の文献「Approaching Nyquist Limit in Wavelength−Division Multiplexing Systems by Low−Complexity Duobinary Shaping and Detection」で説明されているように、一つの特性の実現は、複雑さ少ないデュオバイナリ形状化および検出を使用して波長分解多重化システムにおけるスペクトル効率を向上させることと関連する。
【0016】
図5は、スペクトルが急峻なQAMシステムのモデルを示したものである。スペクトルの急峻化は、2つの信号直行化に基づく狭帯域ローパスフィルター(LPSs)または、周波数帯域のバンドパスフィルター(BPF)のいずれかによって実行される。光通信システムの文脈においては、上記2つのアプローチは、2つの実行領域:(デジタルまたはアナログの方法のいずれかによる)光変調に優先した電子領域および光変調のあとの光領域と一致する。
【0017】
J. G. Proakisによる「Digital Communications, Fourth Edition」で説明されているように、制御されたISIまたは既知のメモリーに伴う情報信号を検出するいくつかの技術が存在する。1つは、比較的実行しやすいシンボル・バイ・シンボル最適状態に及ばない検出器である。この方法は、固有のメモリーを無視した方法なので、低いSNR感受性に苦しむことになる。他の方法は、J.G. Proakisが「Digital Communications, Fourth Edition」において、H. Kobayashiが、「Correlative level coding and maximum likelihood decoding, IEEE Trans. Info. Theory, vol. IT−17, no. 5, pp. 586−94, Sep. 1971」において、G.D. Forney, Jr.が、「Maximum likelihood sequence estimation of digital sequences in the presence of intersymbol interference, IEEE Trans. Info. Theory, vol. IT−18, no. 3, pp. 363−378, May 1972」において説明しているように、複数の連続する時間間隔にわたるシンボルシークエンスの観察に基づく決定を元にするMLSDという方法である。MLSDは既知のメモリーを使用し、エラーの可能性を最小化する。MLSDの複雑さは、これに伴うメモリーの長さと関連付けられる。例えば、もしチャンネル応答が、一つのシンボルメモリーを含むデュオバイナリパターンに対して敏感であれば、MLSDを使用すると、あまり計算労力を強いることはない。しかしながら、もしチャンネル応答が、例えば、2つのシンボルメモリーを含むパターンと異なっていれば、MLSDを使用すれば、計算労力を強いることになる。
【0018】
MLSDは、信号がMーaryのパルス振幅変調(PAM)形式を有しているQAM信号と同相で、これに直行する経路において実行される。メモリーを伴ったチャンネルの種類の一つとして、デュオバイナリに急峻化されたチャンネルは、遷移状態図(すなわち、格子)で表現され得る有限状態マシンとしてモデル化され得る。
図6(a)および(b)は、M=2および4に対応するM−aryのPAMについての格子を示したものである。ここで表されている格子は、デュオバイナリの場合についてであるが、パーシャルリスポンスの任意のクラスが使用され得る。M状態を含んでいるデュオバイナリチャンネルの格子は、初期状態s0から始まる。skは、k番目のタイムスロットにおける状態を示している。メモリー長さはデュオバイナリのためのひとつの記号であるため、状態skはもとの入力xkから直接与えられ、xkは、値Xmをとり、MのうちアルファベットXからのPAMレベル(m=1、2、・・・、M)である。xkとskとは交換可能なので、xkは以下同様に、均一な状態を表現するのに使用され得る。デュオバイナリに形作られたレベル、yk=xk+xk
iは、格子のそれぞれの枝に取り付けられる。一般的に、それぞれの状態はM個の通過可能な遷移経路を有し、時間k=2であるので、M個の流入経路を許容する。
【0019】
図7は
図6(a)および
図6(b)の格子に対応するデュオバイナリチャンネルの単純化したモデルを示したものである。ここで、zkはk番目のタイムスロットにおける受信信号サンプルである。
【0020】
本願発明の方法及び機器は、単純なものから複雑なコンピュータを含む機械および装置を用いて実行され得ることを理解しなければならない。さらに、上記で説明した構造および方法は部分的にまたは全部、機械が読み取り可能な媒体の形式で記録され得る。例えば、本願発明の命令は、磁気ディスクまたは光学ディスクといった、ディスクドライブ(またはコンピュータが読み取り可能な記憶媒体)といった、機械に読み取り可能な媒体に記録される。その代わりに、上記で議論した命令を実行するための論理は、追加的なコンピュータおよび/または、大規模集積回路(LSI)、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用記憶(EEPROM)などの離散ハードウェア要素といった機械読み取り可能な媒体によって実行される。ある種の実施形態の実行には、さらにwebによる実行、コンピュータソフトウェアを含む機械による実行の形態を取り入れる場合がある。
【0021】
本願発明の側面が示され、説明されてきたが、この技術の分野で熟練した者にとっては、ここの発明概念から離れることなく、その他の修正が可能であることは明らかである。したがって、この発明は以下の特許請求の範囲の精神を除き、制限されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
10 パーシャルリスポンス等化器、
11 フルリスポンス線形等化器、
13 パーシャルリスポンスポストフィルター、
30 搬送波再生器を伴ったパーシャルリスポンス等化器、
35 フルリスポンス線形等化器、
33 フルリスポンス搬送波再生器、
37 パーシャルリスポンスポストフィルター。