特許第5913634号(P5913634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913634
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】トルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/08 20060101AFI20160414BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F16D13/08 Z
   F16D41/20 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-551864(P2014-551864)
(86)(22)【出願日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】JP2014061123
(87)【国際公開番号】WO2015162658
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2015年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】根岸 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】田原 岳大
(72)【発明者】
【氏名】磯部 太郎
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−259877(JP,A)
【文献】 特開平08−100825(JP,A)
【文献】 特開平09−158958(JP,A)
【文献】 特開2006−027793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/08
F16D 41/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊樹脂素材で形成された内輪部材本体と、
前記内輪部材本体に巻装されたコイルばねと、
一般樹脂素材で形成され、前記内輪部材本体と一体に回転するように前記内輪部材本体の先端に嵌め合わされた内輪部材延長部と、
前記コイルばねが巻装された内輪部材本体及び前記内輪部材延長部を包囲するように設けられた外輪部材とを備え、
前記外輪部材は、その一方端部には前記コイルばねの両端部が係止されるとともに、他方端部には前記内輪部材延長部を係止する抜け防止部が形成され、
前記内輪部材延長部は、前記内輪部材本体の先端から前記外輪部材の抜け防止部まで延びる軸状部分を有しており、
前記内輪部材本体または前記外輪部材の負荷トルクがトルク制限値以下のときはトルクを伝達し前記負荷トルクがトルク制限値を超えたときは、前記内輪部材本体と前記コイルばねとの間で空転が生じてトルクの伝達を遮断することを特徴とするトルクリミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷トルクがトルク制限値以下のときはトルクを伝達し、負荷トルクがトルク制限値を超えたときはトルク伝達を遮断するトルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクリミッタは、負荷トルクがトルク制限値以下のときはトルクを伝達し、負荷トルクがトルク制限値を超えたときはトルク伝達を遮断するものであり、双方向トルクリミッタと一方向性トルクリミッタとがある。
【0003】
双方向トルクリミッタは、いずれの回転方向の負荷トルクに対しても、それぞれトルク制限値以下のときはトルクを伝達し、トルク制限値を超えた負荷トルクが加わるとトルクの伝達を阻止するものである。双方向トルクリミッタとして、いずれの回転方向に対しても同じトルク制限値を有したもの、あるいは回転方向によって異なるトルク制限値を有したものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、一方向性トルクリミッタは、一方向は負荷トルクがトルク制限値以下のときはトルクを伝達し、トルク制限値を超えた負荷トルクのときはトルク伝達を遮断し、逆方向はトルクの伝達を遮断するものである。一方向性トルクリミッタとして、ワンウェイクラッチにコイルバネを巻いて構成されたものがある(特許文献2参照)。
【0005】
このようなトルクリミッタは、複写機、プリンタ、あるいはファクシミリ装置などの電子情報機器の給紙装置に用いられ、例えば、双方向トルクリミッタは、紙の二重送りを防ぐと共に、紙詰まりの場合にも紙送り機構を逆転させて、容易に詰まった紙を除去できる機構になっている。
【0006】
通常、トルクリミッタは、図2に示すように、特殊樹脂材で形成された内輪部材11と、その内輪部材11に巻装されたコイルばね12と、コイルばね12の両端部を係止し内輪部材11の外側に設けられた外輪部材13とから構成される。内輪部材として特殊樹脂材を用いるのは、内輪部材とコイルばねとの摩擦によりトルクを発生させるようにしているので、内輪部材の耐性を高めるためである。特殊樹脂材は炭素繊維を多く含有した樹脂、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)が用いられる。
【0007】
トルクリミッタを給紙装置に用いる際には、トルクリミッタの外輪部材13にゴムローラが取り付けられる。給紙装置にて給紙する紙の大きさが大きい場合には、複数のゴムローラや長いゴムローラが必要となる場合があり、その場合にはシャフトに複数のトルクリミッタを取り付けることで対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−166153号公報
【特許文献2】特開2001−208108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、複数のトルクリミッタを用いると給紙装置としてコスト高となる。そこで、トルクリミッタ自体を長いものとし、一つのトルクリミッタに複数のゴムローラや長いゴムローラを取り付けることが考えられる。トルクリミッタ自体を長いものとした場合、前述したように、内輪部材は炭素繊維を多く含有した特殊樹脂材が用いられるので高価となる。特殊樹脂部材は、金属と比較すれば安価なものの、材料コストは比較的高価であり、内輪容積(体積)が大きい場合にはローコスト化を実現できない。
【0010】
本発明の目的は、安価で複数のゴムローラや長いゴムローラを取り付けることができるトルクリミッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトルクリミッタは、「特殊樹脂素材で形成された内輪部材本体と、前記内輪部材本体に巻装されたコイルばねと、一般樹脂素材で形成され、前記内輪部材本体と一体に回転するように前記内輪部材本体の先端に嵌め合わされた内輪部材延長部と、前記コイルばねが巻装された内輪部材本体及び前記内輪部材延長部を包囲するように設けられた外輪部材とを備え、
前記外輪部材は、その一方端部には前記コイルばねの両端部が係止されるとともに、他方端部には前記内輪部材延長部を係止する抜け防止部が形成され、
前記内輪部材延長部は、前記内輪部材本体の先端から前記外輪部材の抜け防止部まで延びる軸状部分を有しており、
前記内輪部材本体または前記外輪部材の負荷トルクがトルク制限値以下のときはトルクを伝達し前記負荷トルクがトルク制限値を超えたときは、前記内輪部材本体と前記コイルばねとの間で空転が生じてトルクの伝達を遮断する」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内輪部材を内輪部材本体と内輪部材延長部とで形成し、コイルばねとの摩擦部分である内輪部材本体は特殊樹脂材で形成し、コイルばねとの摩擦部分以外である内輪部材延長部は一般樹脂材で形成するので、
安価にできる。また、外輪部材を内輪部材本体及び内輪部材延長部を包囲するように設け、外輪部材の端部に内輪部材延長部の抜け防止部を形成しているので、複数のゴムローラや長いゴムローラを外輪部材に容易に取り付けることができる。さらに、内輪部材延長部が、内輪部材本体の先端から外輪部材の端部の抜け防止部まで延びる軸状部分を有し、シャフトの役目を果たすので、シャフトを別に用意する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの断面図。
図2】従来のトルクリミッタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係るトルクリミッタの断面図である。内輪部材は、内輪部材本体11aと内輪部材延長部11bとで形成される。内輪部材延長部11bを設け、内輪部材延長部11bに対応して外輪部材13を長くすることでトルクリミッタ自体を長いものに形成している。
【0015】
内輪部材本体11aにはコイルばね12が巻装され、内輪部材本体11aの外面とコイルばね12との摩擦によりトルクを発生する。コイルばね12としては、例えば金属バネを用いる。また、内輪部材本体11aは、炭素繊維を多く含有した特殊樹脂材、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)で形成される。これは、内輪部材本体11aは金属であるコイルばね12との摩擦によりトルクを発生させるようにしているので、コイルばね12との摩擦部分である内輪部材本体11aの耐性を高めるためである。
【0016】
一方、内輪部材延長部11bは一般樹脂材で形成される。これは、内輪部材延長部11bはコイルばね12との摩擦によりトルクを発生させないので、コイルばね12との摩擦部分がなく耐性を高める必要がないからである。
また、内輪部材延長部11bは内輪部材本体11aに機械的に連結される。
例えば、内輪部材延長部11bの一方端部をDカットに形成し、内輪部材本体11aに形成されたD穴に内輪部材延長部11bの一方端部を挿入して、内輪部材延長部11bは、内輪部材本体11aと一体に回転するように内輪部材本体11aの先端に嵌め合わせて連結される。
【0017】
外輪部材13は筒状に形成され、コイルばね12が巻装された内輪部材本体11a及び内輪部材延長部11bを内部に収納し、これらを包囲するように形成される。そして、コイルばね12は外輪部材13の一方端部の内側で係止される。外輪部材13の内面側にはコイルばね12の両端部を係止する係止溝が設けられ、この係止溝にコイルばね12の両端部が係合することによって、コイルばね12は外輪部材13に係止される。また、内輪部材延長部11b及び外輪部材14の他方端部には、内輪部材延長部11bが外輪部材13から抜け出さないようにするための抜け防止部14が形成され、内輪部材延長部11bは、内輪部材本体11aの先端から抜け防止部14まで延びる軸状部分を備えている。
【0018】
トルクリミッタは、筒状の外輪部材13に内輪部材延長部11bを挿入し、内輪部材延長部11bの端部が外輪部材13から突出するように、抜け防止部14により係止される。そして、コイルばね12が巻装された内輪部材本体11aを外輪部材13に挿入し、内輪部材延長部11bのDカットを内輪部材本体11aのD穴に挿入して内輪部材延長部11bと内輪部材本体11aとを機械的に連結する。コイルばね12は外輪部材の係止溝で係止される。
【0019】
このように構成されたトルクリミッタにおいて、外輪部材13は内輪部材延長部11bに対応して長く形成されているので、外輪部材13に複数のローラを取り付けることが可能となる。また、内輪部材延長部11bが内輪部材本体11aの先端から抜け防止部14まで延びる軸状部分を有しており、シャフトの役目を果たすので、シャフトを別に用意する必要がない。
【0020】
いま、内輪部材本体11aに負荷トルクが加えられたとする。負荷トルクがトルク制限値以下のときは、コイルばね12と内輪部材本体11aの外面との摩擦力により内輪部材本体11aと外輪部材13とが一体となって回転し、外輪部材13にトルクを伝達する。一方、負荷トルクがトルク制限値を超えたときは内輪部材本体11aが空転して外輪部材13に伝達するトルクを遮断する。逆に、外輪部材13に負荷トルクが加えられた場合も同様に、負荷トルクがトルク制限値以下のときは内輪部材本体11aにトルクを伝達し、負荷トルクがトルク制限値を超えたときは内輪部材本体11aに伝達するトルクを遮断する。
【0021】
このように、内輪部材を2分割し、コイルばね12と摩擦する部分を特殊樹脂材を適用した内輪部材本体11aとし、それ以外の部分を安価な一般樹脂材を適用した内輪部材延長部11bとするので、ローコスト化を図ることができる。また、2分割した内輪部材本体11aと内輪部材延長部11bとを機械的に連結するとともに内輪部材延長部11bが抜け出さないように抜け防止部14を設けるので、一つの内輪部材として保持できる。
【0022】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0023】
11…内輪部材、11a…内輪部材本体、11b…内輪部材延長部、12…コイルばね、13…外輪部材、14…抜け防止部
図1
図2