(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
片面に黒色層を有する第1赤外線反射層と、前記黒色層を挟んで前記第1赤外線反射層と距離を隔てて対向する位置に配置された第2赤外線反射層とを備え、前記黒色層と前記第2赤外線反射層との距離が6〜10mmの範囲にあり、前記黒色層と前記第2赤外線反射層との間に、両者間の距離を維持するスペーサを有しているとともに、前記スペーサが、赤外線透過性を有する材料で構成されており、前記黒色層、前記第1赤外線反射層及び前記第2赤外線反射層がいずれも柔軟性のある材料で構成され、全体として柔軟性を有する断熱シート。
前記黒色層が、前記第1赤外線反射層に貼着された不織布、織布、紙、又は合成樹脂シートで構成されているか、前記第1赤外線反射層に蒸着、塗布、又は印刷された物質で構成されている請求項1記載の断熱シート。
前記第2赤外線反射層の前記黒色層と対向する面とは反対側の面に第2黒色層を有し、前記第2黒色層を挟んで前記第2赤外線反射層と距離を隔てて対向する位置に配置された第3赤外線反射層を備える請求項1又は2記載の断熱シート。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物における断熱は、暖房費や冷房費の節約という観点からはもとより、地球的規模での省エネルギーの観点からも重要なテーマであり、従来から種々の提案が為されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属製表面材間に硬質ウレタンフォームが充填された高断熱性パネルが開示されている。この高断熱性パネルは優れた外観品質を有し、かつ、優れた断熱特性を有するとされている。しかしながら、この高断熱性パネルは、金属製表面材間に硬質ウレタンフォームを充填するために、発泡剤として1,1−ジクロロ−1−フロロエタンを使用するものである。この発泡剤は、いわゆる代替フロンと呼ばれるものであり、オゾン破壊係数は小さいとはされるものの、CO
2ガスの約700倍もの地球温暖化係数を持っているといわれているので、地球温暖化の防止、抑制という観点からはできるだけ使用を避けたい材料である。また、この高断熱性パネルは一定以上の厚みを有するパネルであり、これを建築物や構築物に採用すると、壁厚や床厚が長大となり、居住空間や利用可能空間が狭くなってしまうという欠点を有している。
【0004】
また、特許文献2には、シート基材に断熱塗料を塗布し、これを乾燥させることによって形成される断熱シートが開示されている。断熱塗料は、断熱したい場所に塗布するだけで良く、極めて施工性に優れるものであるが、その反面、単に塗布するだけであるので外界からの刺激に弱く、風、雨、埃、人、又は家具などとの接触による物理的な力によって塗膜が摩耗したり、塗膜表面に汚れが付着して、赤外線反射率が低下し、遮熱性又は断熱性が次第に失われていくという欠点を有している。また、断熱塗料は、セラミック球などの微少な断熱材を含んでいるので、一般的に塗布が困難で熟練を要するという問題点がある。
【0005】
さらに、特許文献3には、表面にアルミ層を有する樹脂製の気泡シートを複数積層してなる断熱シートが開示されている。この断熱シートは、積層される気泡シートの長さをそれぞれ異なるものとし、パイプ等の対象物に巻き付けた際、各気泡シートが同心状となるように構成されたものである。この断熱シートは、最外層のアルミ層で輻射熱を反射し、その内側に設けられた気泡シートが有する多数の密閉された空気層によって熱伝導を抑制する。更に、気泡シートの内側にも更にアルミ層が設けられ、最外層のアルミ層及びその内側の気泡シートを通過した熱を遮熱することができるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示されている断熱シートは、パイプ等の管状物に巻き付けて使用するものであり、用途が極めて限定される上に、対象物に巻き付けたときに層ごとに同心状となるために断熱シートの層ごとの長さを対象物の径に合わせて設定する必要があり、製造工程が煩雑になるという不都合を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来技術の上記の欠点を解消するために為されたもので、比較的小さな厚みで断熱効果に優れ、かつ、構造が簡単で、製造に際し、オゾン層破壊ガスや温室効果ガスを必要としない断熱構造体とそれを含む断熱シート及び建築用材並びに構築用材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明者は、熱伝導、熱伝達、熱放射の3種類があるとされている伝熱形態のうち、熱放射による伝熱に着目した。すなわち、本発明者は、熱放射による伝熱を抑制することによって断熱する場合には、熱伝導や熱伝達を抑制することによって断熱する場合よりも、断熱構造体の厚みを薄くすることができるのではないかとの予測の下に、種々試行錯誤を重ねた。その結果、本発明者は、外部から熱放射の形態で伝わってくる熱を反射する第1の赤外線反射層と第2の赤外線反射層とを、間に赤外線を吸収する黒色層を挟んで互いに対向するように二層に配置すると、意外にも、比較的厚みの小さな断熱構造体によって、グラスウールやスチレンフォームなどを用いる比較的厚みの大きな従来の断熱構造体と比較して遜色のない断熱効果が得られることを見出した。さらに、本発明者は、上記断熱構造体は、スチレンフォームやウレタンフォームなどの高分子発泡体を使用しないので、製造に際してオゾン破壊ガスや大きい地球温暖化係数をもった温室効果ガスを必要とせず、地球温暖化の防止に貢献するところが大であることを見出した。
【0010】
本発明は上記の知見に基づくものであり、片面に黒色層を有する第1赤外線反射層と、前記黒色層を挟んで前記第1赤外線反射層と距離を隔てて対向する位置に配置された第2赤外線反射層とを備える断熱構造体を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0011】
本発明の断熱構造体は、片面に黒色層を有する第1赤外線反射層と、第2赤外線反射層とを、間に黒色層を挟んで対向配置するだけの簡単な構成であるので製造が容易であるという利点を有している。また、ウレタンフォームやスチレンフォームなどの高分子発泡体を使用しないので、製造に際してオゾン破壊性ガスや大きな地球温暖化係数をもった温室効果ガスを必要とせず、環境負荷が小さく、地球温暖化に悪影響を及ぼす恐れがないという利点を有している。
【0012】
第1赤外線反射層と第2赤外線反射層との間の距離は、断熱効果が得られる限り何ら限定されるものではないが、断熱効果をより高めるという観点からは、前記黒色層と前記第2赤外線反射層との距離が3〜12mmの範囲にあるのが好ましく、6〜10mmの範囲にあるのがさらに好ましい。前記距離が3mm未満若しくは12mm超であっても断熱効果が得られないという訳ではないが、3〜12mmの範囲内である場合に比べて、断熱効果が低下する傾向がある。なお、前記距離は、断熱構造体の全面にわたって均一であるのが望ましい。前記距離が断熱構造体の全面にわたって均一である場合、黒色層と第2赤外線反射層とは平行に配置されることになり、黒色層の厚さが断熱構造体の全面にわたって均一である場合、第1赤外線反射層と第2赤外線反射層とは平行に配置されることになる。
【0013】
本発明の断熱構造体においては、第1赤外線反射層と第2赤外線反射層との距離が最大でも12mm程度あれば比較的良い断熱効果が得られるので、グラスウールやスチレンフォームなどを用いる従来の断熱構造体に比べて、断熱構造体の厚みを小さく、薄くすることができるという利点が得られる。
【0014】
本発明の断熱構造体は、その好適な一態様において、前記黒色層と前記第2赤外線反射層との間に、両者間の距離を維持するスペーサを有している。本発明の断熱構造体がスペーサを有している場合には、スペーサの形状、構造、材質等を適宜変更することによって、本発明の断熱構造体の耐圧強度や重量を予定されている設置場所に応じて適宜調節することができるという利点が得られる。例えば、本発明の断熱構造体を建築用の床材に使用する場合には、スペーサを比較的大きな剛性を有する材料を用いて構成したり、太くして断面積を大きくしたり、配置間隔を狭めるなどして、床材に必要とされる耐圧強度をもたせれば良く、天井材に使用する場合には、スペーサを比較的比重の小さな材料で構成したり、細くして断面積を小さくしたり、配置間隔をあけるなどして、天井材に必要とされる耐圧強度をクリアしつつ、全体としての重さを軽くすることが可能である。
【0015】
前記スペーサは、基本的には、前記黒色層と前記第2赤外線反射層との間に所定の距離を維持することができる限り、どのような材質の材料から構成されていても良いが、第2赤外線反射層で反射された赤外線が前記黒色層に到達するのを妨げないという観点からは、赤外線透過性を有する材料から構成されているのが望ましい。なお、本明細書でいう赤外線透過性とは、JIS R 3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準じて計測された赤外線の波長域(0.7〜1000μm)での分光透過率が50%以上の場合をいい、好ましくは70%以上の場合をいう。また、スペーサ部分を介しての熱の伝導を抑えるため、スペーサを構成する材料としては熱伝導率が小さいものを選択するのが好ましい。
【0016】
前記黒色層は第1赤外線反射層の第2赤外線反射層と対向する側の片面に存在すれば良く、その形成方法には特段の制限はない。第1赤外線反射層に黒色の不織布、織布、紙、又は合成樹脂シートを貼着することによって黒色層を形成しても良い。貼着する材料が表裏で色彩が異なる場合には、黒色側の面を第2赤外線反射層と対向する側に向けて貼着すれば良い。また、第1赤外線反射層に蒸着、塗布、又は印刷によって黒色を呈する物質を付着させることによって黒色層を形成しても良い。なお、黒色とは、黒色又は黒色にみえる色を意味し、例えば、国際照明委員会(Commission International de l’Eclairage)が定めるL*a*b*表示系で、L*<35、−20<a*<20、−20<b*<20の範囲にある色彩がこれに該当する。
【0017】
本発明の断熱構造体は、その好ましい一態様において、前記第2赤外線反射層の前記黒色層と対向する面とは反対側の面に第2黒色層を有し、前記第2黒色層を挟んで前記第2赤外線反射層と距離を隔てて対向する位置に配置された第3赤外線反射層を備えている。本発明の断熱構造体が、前記第2黒色層と前記第3赤外線反射層を備えている場合には、より断熱効果の高い断熱を実現することができる。第1赤外線反射層の片面に形成される黒色層と第2赤外線反射層との距離、両者の間に配置されるスペーサ、及び当該黒色層を形成する材料について述べたと同様のことが、第2黒色層と第3赤外線反射層との距離、両者間に配置されるスペーサ、及び第2黒色層を形成する材料についても当てはまる。
【0018】
本発明は、また、上述した断熱構造体を含む断熱シートを提供することによって上記の課題を解決するものである。本発明の断熱構造体は、上述したとおり、厚みを比較的薄くすることができるので、これを含むシート状の形態、すなわち断熱シートとすることが容易である。因みに、本発明の断熱構造体を含む断熱シートとは、本発明の断熱構造体そのものがシート状である場合や、本発明の断熱構造体に、例えば、補強層、支持層、保護層、装飾層などが付加されている場合の双方を包含する。
【0019】
本発明の断熱構造体を含む断熱シートを、断熱構造体の部分も含めて全て柔軟性のある素材で構成するか、例えばスペーサなどの部分に剛性を有する素材を使用する場合であっても、その剛性を有する部分が断熱シート全体としての柔軟性を損なわないようにすることによって、本発明の断熱シートに柔軟性を持たせることができる。本発明の断熱シートが柔軟性を備えている場合には、適宜曲折させて曲面や角部などの断熱にも何らの不都合なく使用できるばかりでなく、巻き取ってロール状にして保存、運搬ができるという利点が得られる。
【0020】
また、本発明の断熱構造体を含む断熱シートを、断熱構造体の部分も含めて比較的に切断が容易な素材で構成するか、例えばスペーサなどの部分に切断が容易でない素材を使用する場合であっても、その部分が他の部分での切断を妨げないようにすることによって、本発明の断熱シートを切断可能なものとすることができる。本発明の断熱シートが切断可能であるときには、施工現場等において必要な大きさに適宜切断して使用することができるという利点が得られる。
【0021】
さらに、本発明は、上述した本発明の断熱構造体、又は上述した本発明の断熱シートを含む建築用床材、建築用壁材、建築用天井材などの建築用材、又は、船舶、航空機、自動車、又はその他構造物の隔壁用材、側壁用材、床用材、天井用材、又は屋根用材などの構築用材を提供することによって上記の課題を解決するものである。なお、上記建築用材又は構築用材が本発明の断熱構造体又は本発明の断熱シートを含むとは、本発明の断熱構造体又は断熱シートそのものが上述した建築用材や構築用材である場合や、本発明の断熱構造体又は断熱シートに、例えば、補強部材、支持部材、保護部材、建築用材又は構築用材として必要とされる他の部材、装飾部材などが付加されている場合の双方を包含する。
【0022】
本発明の断熱構造体又は断熱シートを含む建築床材を用いて建築物の床を構築する場合には、例えば冬季においては、暖かい室内から床下への熱の散逸が防止され、いわゆる内断熱と呼ばれる断熱が実現される。また、本発明の断熱構造体又は断熱シートを含む建築用材を用いて建築物の壁又は天井を構築する場合にも同様であり、第1赤外線反射層の側を室内に向けて本発明の断熱構造体又は断熱シートを含む建築壁材又は天井材を配置する場合には、壁材や天井材を介しての室内から室外への熱の散逸が防止され、逆に、第1赤外線反射層の側を室外に向けて本発明の断熱構造体又は断熱シートを含む建築壁材又は天井材を配置する場合には、例えば夏季において、日射などによる外部からの熱が室内へ浸入するのを防止し、いわゆる外断熱と呼ばれる断熱が実現される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の断熱構造体は、黒色層を有する第1赤外線反射層と、第2赤外線反射層とを、所定の距離を隔てて対向させるという極めて簡単な構造であるので、製造が比較的容易である上に、所期の断熱効果を得るにあたり、断熱構造体の厚みを小さく、すなわち薄くすることができるという利点を有している。また、断熱に高分子発泡体を使用しないので、その製造に際しては、オゾン層破壊ガスや温室効果ガスを必要とせず、地球環境の保護や地球温暖化の防止に貢献することができるという利点を有している。
【0024】
さらに、本発明の断熱構造体において、黒色層と第2赤外線反射層との間に両者の距離を維持するスペーサを介在させる場合には、スペーサの材質、形状、構造を変化させることによって、予想される使用場所に応じて、断熱構造体の耐圧強度、重量などを適宜調整することができるという利点が得られる。
【0025】
また、本発明の断熱構造体を含む断熱シートが、全体として柔軟性を有し、適宜の箇所で切断可能である場合には、適宜の大きさ、形状に切断して使用できるので施工場所を選ばず、曲面や角部などの断熱にも有効であり、かつ、巻き取ってロール状にして保管、運搬が可能であるので、取り扱いが極めて容易であるという利点を有している。また、本発明の断熱構造体又は断熱シートを含む各種の建築用材及び構築用材によれば、断熱に要する厚みが小さいので、居住空間や使用空間をむやみに狭くすることなく、所期の断熱性能を備えた建築物又は構築物を実現することができるという利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことはいうまでもない。
【0028】
1.断熱構造体−その1−
図1は、本発明に係る断熱構造体の一例を示す断面図である。
図1において、1は断熱構造体、2は第1赤外線反射層、3は第1赤外線反射層2の片面に設けられた黒色層、4は第2赤外線反射層、5はスペーサ、Sは空間、Tは熱源、dは黒色層3と第2赤外線反射層4との間の距離であり、
図1中、空間Sの上下方向の長さに相当する。
図2は、
図1に示す断熱構造体1から第1赤外線反射層2と黒色層3とを取り除いた状態の平面図である。以下、各構成材料について説明する。
【0029】
1−1.第1赤外線反射層
第1赤外線反射層2は、少なくとも熱源Tが存在する側に赤外線を反射する赤外線反射面を有していれば良く、第1赤外線反射層2の全体が同じ材料で構成されていても良いし、熱源Tが存在する側の表面だけが赤外線を反射する材料で構成されていても良い。第1赤外線反射層2を構成する材料としては、例えばアルミニウム、ニッケル、銅等の金属やその薄膜、合成樹脂シート等のシート状部材にこれらの金属を蒸着等の手段で付着させたシート、これらの金属粒子を含有する塗料を塗布したシート等を用いることができる。高反射率、軽量性、価格、及び入手容易性の観点からは、アルミニウムシート又はアルミニウム箔を用いるのが好ましく、合成樹脂シート又は紙などで裏打ちしたアルミニウム箔を用いても良い。
【0030】
また、第1赤外線反射層2の厚さにも特段の制限はないが、断熱構造体1の厚さを薄くするという観点からは薄い方が好ましく、通常は2mm以下、好ましくは1mm以下である。また、第1赤外線反射層2は、全体的に均一な厚さであるのが好ましく、可視光を透過させないか、殆ど若しくは実質的に透過させない厚さを有しているのが好ましい。なお、第1赤外線反射層2の赤外線反射面には、必要に応じて、PET等の透明な合成樹脂からなる保護膜を設けても良い。
【0031】
1−2.黒色層
黒色層3は、第1赤外線反射層2の熱源Tとは反対側の片面に設けられる。黒色層3は、後述する第2赤外線反射層4によって反射される赤外線を吸収するために、少なくとも第2赤外線反射層4と対向する面が黒色であれば良く、黒色層3の厚み方向全体にわたって黒色であっても良い。なお、本明細書において黒色とは、黒色又は黒色にみえる色を意味し、例えば、国際照明委員会(Commission International de l’Eclairage)が定めるL*a*b*表示系で、L*<35、−20<a*<20、−20<b*<20の範囲にある色彩がこれに該当する。
【0032】
黒色層3は、少なくとも第2赤外線反射層4に対向する面が黒色である限り、原則としてどのような材料を用いて形成されたものであっても良い。例えば合成繊維又は天然繊維からなる黒色の不織布又は織布、黒色の紙などが挙げられ、黒色のビニール等の合成樹脂製のシートなども用いることができる。或いは、織布、不織布、紙、合成樹脂製のシートの片面に、黒色を呈する物質を、蒸着、塗布、又は印刷などの手法によって付着させたものであっても良い。これらの織布、不織布、紙、合成樹脂製のシートは、適宜の手段で第1赤外線反射層2の片面に貼着される。なお、これら織布、不織布、紙、合成樹脂製のシートの片面だけが黒色である場合には、その黒色の面が第1赤外線反射層2とは反対側を向くように貼着することはいうまでもない。また、貼着にあたっては、それら織布、不織布、紙、合成樹脂製のシートの全面を第1赤外線反射層2に貼着する必要はなく、要所だけを貼着するようにしても良い。
【0033】
また、黒色層3は、黒色を呈する物質を、蒸着、塗布、又は印刷などの手法によって第1赤外線反射層2の片面に付着させて形成したものであっても良い。この場合には、極めて薄い黒色層3を簡便に形成することができるという利点が得られる。
【0034】
黒色層3の厚みには特段の制限はないが、断熱構造体1の厚さを薄くするという観点からは薄い方が好ましく、黒色層3を形成する材料にも依るが、通常は2mm以下、好ましくは1mm以下である。
【0035】
1−3.第2赤外線反射層
第2赤外線反射層4は、少なくとも第1赤外線反射層2が存在する側に赤外線を反射する赤外線反射面を有しておれば良く、その点を除けば、基本的に第1赤外線反射層2と変わるものではない。第2赤外線反射層4を構成する材料としては、第1赤外線反射層2を構成する材料と同様に、例えばアルミニウム、ニッケル、銅等の金属やその薄膜、合成樹脂シート等のシート状部材にこれらの金属を蒸着等の手段で付着させたシート、これらの金属粒子を含有する塗料を塗布したシート等を用いることができる。ただし、高反射率、軽量性、価格、及び入手容易性の観点からは、アルミニウムシート又はアルミニウム箔を用いるのが好ましく、合成樹脂シート又は紙などで裏打ちしたアルミニウム箔を用いても良い。
【0036】
また、第2赤外線反射層4の厚さにも特段の制限はないが、断熱構造体1の厚さを薄くするという観点からは薄い方が好ましく、通常は2mm以下、好ましくは1mm以下である。また、第2赤外線反射層4は、全体的に均一な厚さであるのが好ましく、可視光を透過させないか、殆ど若しくは実質的に透過させない厚さを有しているのが好ましい。なお、第2赤外線反射層4の赤外線反射面には、必要に応じて、PET等の透明な合成樹脂からなる保護膜を設けても良い。
【0037】
1−4.スペーサ
図1及び
図2に示すとおり、スペーサ5は、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に空間Sを維持するように、換言すれば、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に所定の距離dが維持されるように、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に配置される。なお、例えば、黒色層3を含めた第1赤外線反射層2及び/又は第2赤外線反射層4の周辺部を保持することによって、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に所定の距離dが維持される場合には、スペーサ5は特段配置しなくても良い。なお、図示の例では、複数のスペーサ5は個々に独立しており、互いに別個に配置されているが、複数のスペーサ5は互いに連結されていても良い。
【0038】
図3は、
図1及び
図2の断熱構造体1に使用されているスペーサ5だけを取り出して示す斜視図である。
図3に示すとおり、スペーサ5は二枚の板状部材5aと5bを、それぞれの中央で縦に交差させて十字形に組み合わせた形状をしている。板状部材5aの長さaと板状部材5bの長さbとは同じ長さであっても良いが、後述するように、断熱構造体1をシート状に巻き取ることを想定する場合には、巻き取り方向に沿った方向となる板状部材5bの長さbを、巻き取り方向とは直交する方向となる板状部材5aの長さaよりも短くするのが好ましい。長さa、bの具体的な大きさには特段の制限はないが、長さaは10〜35mmの範囲が好ましく、15〜25mmの範囲がより好ましい。また、板状部材5bの長さbは3〜20mmの範囲が好ましく、5〜15mmの範囲がより好ましい。なお、
図3において、cはスペーサ5の高さであり、黒色層3と第2赤外線反射層4との距離dに相当する。
【0039】
なお、スペーサ5の形状、構造は
図3に示すものに限られない。
図4(a)に示すように、スペーサ5は例えば円柱状であっても良いし、
図4(b)に示すように、上下に円盤状部分を有する円柱状であっても良く、
図4(c)に示すように円筒状であっても良い。また、図示はしないけれども、三角柱、四角柱等の多角柱であっても良いし、上下方向の中央部がくびれた鼓状であっても良いし、角柱筒状であっても良い。ただし、第2赤外線反射層4で反射された赤外線が黒色層3に到達するのを妨げず、かつ、スペーサ5を介した熱伝導を小さくするという観点からは、スペーサ5は、第2赤外線反射層4と平行な面で切断したときの断面積がなるべく小さい形状、構造であるのが好ましい。なお、後述するとおり、気泡緩衝材もスペーサ5として好適に用いることができる。
【0040】
スペーサ5は、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に所定の距離dを維持することができるものであれば、どのような材料で構成されるものであってもよいが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニール、アクリル樹脂、フッ化カルシウム等が好ましく挙げられる。また、第2赤外線反射層4で反射された赤外線が黒色層3に到達するのを妨げないという観点からは、スペーサ5は赤外線を透過する材料で構成されるのが望ましい。因みに、スペーサ5を構成する材料の赤外線の透過率は、JIS R 3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準じて計測された赤外線の波長域(0.7〜1000μm)での分光透過率が50%以上のものが好ましく、70%以上のものが特に好ましい。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、アクリル樹脂、フッ化カルシウム等が挙げられる。このうち、ポリエチレンは高い赤外線透過率を有するとともに成形性がよく自由な形状に加工できるので特に好ましい。
【0041】
また、断熱という観点からはスペーサ5を介しての熱伝導は小さい方が好ましく、スペーサ5は熱伝導率が小さな材料、好ましくは熱伝導率が1.0(W/m・K)以下、より好ましくは0.5(W/m・K)以下の材料で構成されるのが良い。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0042】
スペーサ5は、その下端面を第2赤外線反射層4に接着、融着、溶着などの適宜の手段で固着することによって取り付けても良いし、その上端面を黒色層3に接着、融着、溶着などの適宜の手段で固着することによって取り付けても良いし、その両方であっても良い。また、スペーサ5は、第2赤外線反射層4及び/又は黒色層3に直接取り付けても良いが、例えばメッシュ状のシート部材にスペーサ5を適宜の間隔で取り付け、そのメッシュ状のシート部材を介して第2赤外線反射層4及び/又は黒色層3に取り付けるようにしても良い。メッシュ状のシート部材は、空間部分が多く、赤外線が第2赤外線反射層4によって反射されるのを妨げることが少ないので、均一な厚みを有するシート状部材よりも好適に用いることができる。
【0043】
スペーサ5がメッシュ状のシート部材を介して取り付けられる場合、スペーサ5について述べたと同様の理由により、メッシュ状のシート部材も、赤外線を透過する材料で構成されるのが好ましい。メッシュ状のシート部材を、スペーサ5を構成する材料と同じか、同系統の材料で構成する場合には、メッシュ状のシート部材とスペーサ5とを接着、融着、溶着などの手段で比較的容易に固着することができるので好ましい。
【0044】
スペーサ5の配置間隔は、第1赤外線反射層2や黒色層3、及び第2赤外線反射層4を構成する素材の剛性や、断熱構造体1に求められる耐圧強度や重量などを勘案しながら、黒色層3と第2赤外線反射層4との間に所定の距離dが維持されるように適宜決めれば良い。因みに、本発明の断熱構造体1においては、スペーサ5の形状、構造、材質や、断面形状、配置間隔などを変更することによって、断熱構造体1の耐圧強度及び/又は重量を適宜調節することが可能である。例えば、一般的に建築用の床材には200kg/m
2の荷重に耐える強度を有することが必要とされ、壁材には20kg/m
2の荷重に耐える強度を有することが必要とされているが、それら求められる耐圧強度に応じて、スペーサ5の材料、形状、構造、配置間隔を適宜調節することができる。また、天井材などのように軽量化が求められる場合には、スペーサ5を比較的軽い材料で構成し、かつ、その配置間隔を大きくするなどして、求められる耐圧強度を維持しつつ断熱構造体1の軽量化を図ることができる。
【0045】
1−5.黒色層3と第2赤外線反射層4の距離d
第1赤外線反射層2の片面に設けられた黒色層3と第2赤外線反射層4との間の距離dは、断熱効果が得られる限り何ら限定されるものではないが、断熱効果をより高めるという観点からは、3〜12mmの範囲にあるのが好ましく、6〜10mmの範囲にあるのがさらに好ましい。距離dが上記の範囲から外れても断熱効果が得られないという訳ではないが、上記範囲内である場合に比べて、断熱効果が低下する傾向がある。なお、距離dは、断熱構造体1の全面にわたって均一であるのが望ましく、換言すれば、黒色層3と第2赤外線反射層4、及び第1赤外線反射層2と第2赤外線反射層4とは平行に配置されるのが望ましい。ただし、距離dが異なる2種又は複数種の断熱構造体1を組み合わせて使用しても良い。
【0046】
スペーサ5の高さcが距離dに相当し、スペーサ5をメッシュ状のシート部材に取り付けて第2赤外線反射層4と黒色層3との間に配置する場合には、スペーサ5の厚みにメッシュ状のシート部材の厚みを加えたものが、距離dに相当することになる。
【0047】
2.断熱構造体−その2−
図5は本発明の断熱構造体1の他の例を示す断面図であり、
図6は
図5に示す断熱構造体1から第1赤外線反射層2と黒色層3とを取り除いた状態の平面図である。
図5及び
図6において、
図1、
図2におけると同じ部材には同じ符号を付してある。
図5及び
図6に示す例においては、スペーサ5として気泡緩衝材6が用いられている点が、
図1及び
図2に示した例とは異なっている。7は気泡緩衝材6を構成する気泡セルである。気泡緩衝材6は、上述したスペーサ5と同様に、赤外線透過性の材料で構成されるのが好ましく、さらには熱伝導率の小さな材料で構成されるのが好ましい。
【0048】
図7は、本発明の断熱構造体1のさらに他の例を示す断面図であり、スペーサ5として気泡緩衝材6が2層に重ねて用いられている点が
図5及び
図6に示した例とは異なっている。このように、スペーサ5として用いられる気泡緩衝材6は、その厚さにも依るが、2層に重ねて用いることができ、必要に応じてさらに多層に重ねることも可能である。
【0049】
図8は、本発明の断熱構造体1のさらに他の例を示す断面図である。
図8において、8は第2赤外線反射層4の黒色層3と対向する面とは反対側の面に設けられた第2黒色層、9は第2黒色層8を挟んで第2赤外線反射層4と距離を隔てて対向する位置に配置された第3赤外線反射層である。本例の断熱構造体1においては、片面に黒色層3を有する第1赤外線反射層2と第2赤外線反射層4とによって第1の断熱構造体が構成され、片面に第2黒色層8を有する第2赤外線反射層4と第3赤外線反射層9とによって第2の断熱構造体が構成されている。このように、本例の断熱構造体1は、2組の断熱構造体を重ね合わせた構造となっており、第2赤外線反射層4は、第2の断熱構造体においては、第1の断熱構造体における第1赤外線反射層の役割を果たしている。第1の断熱構造体と第2の断熱構造体とで第2赤外線反射層4を共通して使用する代わりに、第2赤外線反射層4の下に、片面に第2黒色層8を備える第3の赤外線反射層を配置し、第3赤外線反射層9を第4の赤外線反射層としても良いことは勿論である。
【0050】
d
1は黒色層3と第2赤外線反射層4との距離、d
2は第2黒色層8と第3赤外線反射層9との距離であり、距離d
1と距離d
2は同じであっても異なっていても良い。なお、距離d
1と距離d
2は、距離dと同じく、それぞれ3〜12mmの範囲にあるのが好ましく、6〜10mmの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0051】
なお、
図7及び
図8に示した断熱構造体1はスペーサ5として気泡緩衝材6を用いているが、気泡緩衝材6ではなく、先に「1−4.スペーサ」で説明した形状、構造、材質の各種スペーサ5を用いる場合であっても、
図7又は
図8に示した断熱構造体1と同様に、スペーサ層を2層に重ねたり、2組の断熱構造体を重ね合わせた構造とすることができる。
【0052】
3.断熱シート
図9は本発明の断熱構造体1を含む断熱シートの一例を示す図である。
図9において、10は断熱シートである。断熱シート10は、一端がロール状に巻かれ、他端は、第1赤外線反射層2とその片面に設けられた黒色層3が一部剥がされた状態が示されている。本例の場合、断熱シート10は
図1及び
図2に示した断熱構造体1そのもので構成されているが、断熱構造体1の第1赤外線反射層2の上面、又は第2赤外線反射層4の下面に、適宜の保護層、支持層、補強層、装飾層などを付加して断熱シート10としても良いことは勿論である。
【0053】
本例においては、断熱構造体1を構成する第1赤外線反射層2、黒色層3、及び第2赤外線反射層4の全てが柔軟性のある材料で構成されており、このため、断熱構造体1を含む断熱シート10は、全体として柔軟性を有し、図示のとおりロール状に巻き取ることが可能である。なお、スペーサ5が仮に剛性を有する材料で構成されている場合であっても、図に示すとおり、長さの短い板状部材5bの方向が図中矢印で示す巻き取り方向と同じになるように複数のスペーサ5を互いに間隔をあけて整列配置する場合には、スペーサ5の存在は断熱シート10全体の柔軟性を妨げず、断熱シート10をロール状に巻き取ることに支障はない。本発明の断熱シート10がロール状に巻き取り可能である場合には、断熱シート10を小容積のロール状にして保管及び輸送することが可能となるので便利である。
【0054】
また、本例においては、断熱構造体1を構成する第1赤外線反射層2、黒色層3、及び第2赤外線反射層4の全てが、ハサミ、カッター等で比較的容易に切断可能な材料で構成されており、このため、断熱構造体1を含む断熱シート10は、スペーサ5を避けた部分において、どこでも切断可能である。このため、本例の断熱シート10は、使用時に使用場所に合わせて適宜の大きさに切断して使用することができるという利点を有している。さらに、スペーサ5が間隔をあけて配置されているので、スペーサ5が仮に剛性を有する材料で構成されている場合であっても、断熱シート10はスペーサ5以外の部分で自在に折り曲げることが可能であり、スペーサ5の大きさにも依るが、曲面や角部を有する複雑な三次元形状を有する構造物や建築物の断熱にも支障なく適用することができる。
【0055】
4.使用例
図10は本発明の断熱構造体1の一使用例を示す断面図である。
図10において、Aは対象物であり、Tは熱源、Hは熱、IRは赤外線を表している。
図10に示すように、本発明の断熱構造体1は、熱源T側に第1赤外線反射層2が向くように対象物Aに対して取り付けられる。
【0056】
図10に示す状態で、熱源Tからの熱が赤外線IRとなって輻射熱として断熱構造体1に照射されると、第1赤外線反射層2によって赤外線IRの大部分は反射されるが、一部は第1赤外線反射層2に吸収され、熱Hとして第1赤外線反射層2及び黒色層3を熱伝導によって通過する。黒色層3の表面では、熱Hが再び赤外線IRとして放射される。放射された赤外線IRは、空間Sを通過して、第2赤外線反射層4に到達するが、その大部分は第2赤外線反射層4によって反射され、第2赤外線反射層4に吸収される熱Hは極めて少ない。
【0057】
一方、第2赤外線反射層4によって反射された赤外線IRは黒色層3に到達するが、その殆どが黒色層3に吸収され、再び第2赤外線反射層4側へ向かうものはほとんどない。そのため、黒色層3を有する本発明の断熱構造体1を使用する場合には、黒色層3が存在しない場合に比べて、対象物Aに到達する熱量が減少し、対象物の温度上昇を低く抑えることが可能になるのではないかと推測される。
【0058】
5.実験
以下、実験を用いて、本発明の断熱構造体についてさらに詳細に説明する。
【0059】
5−1.実験1
(1)実験方法
本発明の断熱構造体の断熱性能を確認する実験を下記のようにして行った。すなわち、熱源として100Wの白熱ランプを用い、各試験体を、その第1赤外線反射層2の面が前記白熱ランプと対向するように、白熱ランプの上方15cmの高さに保持した。白熱ランプの点灯開始から60分後に、白熱ランプ直上の白熱ランプとは反対側の試験体表面温度を測定し、断熱性能を評価した。なお、温度測定は放射温度計を用いて行った。
【0060】
(2)試験体
下記材料を用い、第1赤外線反射層、黒色層、スペーサ、第2赤外線反射層、支持層の順に積層された構造の試験体No.1〜No.5を作成した。試験体No.1〜No.5の構造は、基本的に
図1及び
図2に示す断熱構造体1と同じであるが、実験を行う上での便宜上、厚さ4mmのベニヤ板を、第2赤外線反射層の黒色層と対向する面とは反対側の面に支持層として取り付け、試験体が不用意に撓むのを防止した。また、試験体No.1〜No.5は、スペーサの高さだけが0mm、3mm、6mm、9mm、12mmと異なり、距離dが異なるだけで、構造的には同じものである。なお、スペーサの高さ0mmとはスペーサを使用しないことを意味している。また、対照として、厚さ50mmの硬質ウレタンフォームのみからなる試験体No.6を用意し、同様に実験した。
【0061】
<材料>
・第1赤外線反射層:アルミ箔(厚さ12μm)
・黒色層:黒色不織布(厚さ2mm)(ハイリーン株式会社製 品番:クラフト35 ポリエステル30% レーヨン70%)
・スペーサ:ポリプロピレン製(厚さ0mm、3mm、6mm、9mm、12mm)
・第2赤外線反射層:アルミ箔(厚さ12μm)
・支持層:ベニヤ板(厚さ4mm)
【0064】
表1に示されるとおり、黒色層と第2赤外線反射層との距離dが大きくなるにつれて、白熱ランプ点灯60分後の試験体表面温度は徐々に低下し、距離dが9mmのときに最も低い26.9℃を記録した。その後、距離dが12mmにまで増加すると、逆に試験体表面温度は上昇する傾向が見られた。この結果から、本発明の断熱構造体においては、黒色層と第2赤外線反射層との距離dは3〜12mmの範囲にあるのが好ましいことが分かった。また、距離dが9mmのときに試験体の表面温度が最も低く、その後、距離dが12mmまで増加すると逆に上昇することからみて、試験体の表面温度の上昇が距離dが6mmのときと同程度に止まるのは、距離dが試験体No.4の9mmと試験体No.5の12mmとの間にある10mm程度のときであると合理的に推測される。したがって、距離dの範囲は6〜10mmのときがさらに好ましいと結論された。
【0065】
一方、従来から断熱材として用いられている厚さ50mmの硬質ウレタンフォームのみからなる試験体No.6の白熱ランプ点灯60分後の表面温度は27.4℃であり、距離dが6mm又は12mmである試験体No.3又はNo.5よりは低いものの、距離dが9mmである試験体No.4よりは高い温度であった。試験体No.4の厚さは、9mmのスペーサ、2mmの黒色層、4mmのベニヤ板、及び第1、第2赤外線反射層全てを合計しても15mm程度であるから、上記実験結果は、本発明の断熱構造体によれば、厚さ50mmの硬質ウレタンフォーム板とほぼ同等、若しくはそれ以上の断熱性能を、その約1/3以下の厚さで実現することができることを物語っている。同じ断熱性能を得るのに厚さが約1/3以下で済むということは、本発明の断熱構造体を用いて建築物又は構築物の断熱を実現する場合には、建築物の居住可能空間又は構造物の利用可能空間が大幅に広くなることを意味している。
【0066】
5−2.実験2
(1)実験方法
実験1で最も優れた断熱効果を示した試験体No.4(距離d=9mm)と同じ材料を用い、黒色層の代わりに下記材料からなる白色層を配置した点でのみ試験体No.4とは異なる試験体No.7を作成した。実験1と同様に白熱ランプを熱源として、実験1で作成した試験体No.4とともに、試験体No.7の白熱ランプとは反対側の表面温度を測定し、その断熱性能を評価した。ただし、表面温度の測定は白熱ランプ点灯後0分、5分、15分、30分、45分、及び60分に行った。
【0067】
<材料>
・白色層:白色不織布(株式会社トーア紡コーポレーション製。品番:USV108。ポリエステル15%、ポリプロピレン85%)
【0070】
表2に示されるとおり、第1赤外線反射層の片面に黒色層を設けた試験体No.4は、試験開始後15分までは表面温度が急激に上昇するが、その後、ほぼ一定となり、60分経過後も26.9℃に止まった。これに対し、第1赤外線反射層の片面に白色層を設けた試験体No.7は、試験開始後15分までは表面温度が急激に上昇する点では試験体No.4と同じであるが、その後、45分を経過しても表面温度は徐々に上昇を続け、60分経過後の表面温度は29.1℃まで上昇した。
【0071】
第1赤外線反射層の第2赤外線反射層と対向する側の面に黒色層を設ける場合と白色層を設ける場合とで、同様の熱源に対峙させたとき、熱源とは反対側の表面温度において約2℃もの違いが生じるという上記結果は、第1赤外線反射層と第2赤外線反射層とを距離を隔てて対向させるに際し、第1赤外線反射層の第2赤外線反射層と対向する側の面に白色層と設けるよりも黒色層を設ける方が、より高い断熱効果が得られることを示している。
【課題】 比較的小さな厚みで断熱効果に優れ、かつ、構造が簡単で、製造に際し、オゾン層破壊ガスや温室効果ガスを必要としない断熱構造体、断熱シート及び建築用材並びに構築用材を提供することを課題とする。
【解決手段】 片面に黒色層を有する第1赤外線反射層と、前記黒色層を挟んで前記第1赤外線反射層と距離を隔てて対向する位置に配置された第2赤外線反射層とを備える断熱構造体、これを含む断熱シート及び建築用材並びに構築材を提供することによって上記の課題を解決する。