特許第5913655号(P5913655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5913655
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】注水式発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/34 20060101AFI20160414BHJP
   H01M 2/36 20060101ALI20160414BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H01M6/34 A
   H01M2/36 101N
   H01M4/06 Q
   H01M4/06 B
【請求項の数】23
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-19567(P2015-19567)
(22)【出願日】2015年2月3日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】515031399
【氏名又は名称】カオ、ソン ニエン
【氏名又は名称原語表記】KAO,Sung Nien
(73)【特許権者】
【識別番号】515031403
【氏名又は名称】リアウ、クオ ミン
【氏名又は名称原語表記】LIAW,Kuo Ming
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ソン ニエン
(72)【発明者】
【氏名】リアウ、クオ ミン
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−270001(JP,A)
【文献】 特開昭52−004027(JP,A)
【文献】 特許第5764772(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/34
H01M 2/36
H01M 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極板(22)と第2の電極板(31)とを備える第1のモジュール(100)であって、前記第1の電極板(22)と前記第2の電極板(31)とは第1の固定部品(42)を使用して固定され、前記第1の電極板(22)と前記第2の電極板(31)との間に第1の絶縁層(51)が配置された第1のモジュール(100)と、
第3の電極板(21)を保持するための第1の支持構造体(11)と、
第4の電極板(32)を保持するための第2の支持構造体(12)と、
前記第3の電極板(21)と前記第2の電極板(31)との間に配置される第1の貯水層(61)と、
前記第1の電極板(22)と前記第4の電極板(32)との間に配置される第2の貯水層(62)と
を備える、注水式発電装置(1)。
【請求項2】
前記第3の電極板(21)は、第2の固定部品(41)を使用して前記第1の支持構造体(11)上に固定され、前記第4の電極板(32)は、第3の固定部品(43)を使用して前記第2の支持構造体(12)上に固定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第4の電極板(32)と前記第2の支持構造体(12)との間に第2の絶縁層(52)が配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の電極板(22)は可撓性を有する形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第3の電極板(21)は可撓性を有する形状である、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の電極板(22)は、炭素(C)、ニッケル(Ni)、および導電性メッシュを含み、前記第2の電極板(31)は、マグネシウム(Mg)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第3の電極板(21)は、炭素(C)、ニッケル(Ni)、および導電性メッシュを含み、前記第4の電極板(32)は、マグネシウム(Mg)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の電極板(22)はさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超電導カーボンブラック、およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記第3の電極板(21)はさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超電導カーボンブラック、およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の貯水層(61)および前記第2の貯水層(62)は、ナトリウム(Na)イオンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の貯水層(61)および前記第2の貯水層(62)は、吸水紙製である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の貯水層(62)と前記第4の電極板(32)との間に配置される少なくとも1つの追加モジュール(200)であって、前記第1のモジュール(100)と同じ構造を有する少なくとも1つの追加モジュール(200)と、
前記少なくとも1つの追加モジュール(200)と前記第4の電極板(32)との間に配置される少なくとも1つの追加貯水層(63)と
をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の固定部品および前記第2の固定部品は、導電性であり、防錆処理済みである、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
第1のモジュール(100)を形成するステップを含む注水式発電装置(1)の製造方法であって、前記第1のモジュール(100)を形成するステップは、
第1の電極板(22)および第2の電極板(31)を配設するステップと、
前記第1の電極板(22)の一表面もしくは前記第2の電極板(31)の一表面に第1の絶縁層(51)を配置するステップと、
第1の固定部品(42)を使用して、前記第1の電極板(22)と前記第2の電極板(31)との間に前記第1の絶縁層(51)が配置された状態で、前記第1の電極板(22)と前記第2の電極板(31)とを固定するステップと
を含む製造方法。
【請求項15】
第3の電極板(21)を保持するための第1の支持構造体(11)および第4の電極板(32)を保持するための第2の支持構造体(12)を配設するステップと、
前記第4の電極板(32)と前記第2の支持構造体(12)との間に第2の絶縁層(52)を配設するステップと、
第2の固定部品(41)を使用して、前記第1の支持構造体(11)上に前記第3の電極板(21)を固定するステップと、
第3の固定部品(43)を使用して、前記第2の支持構造体(12)と前記第4の電極板(32)との間に前記第2の絶縁層(52)が配置された状態で、前記第2の支持構造体(12)上に前記第4の電極板(32)を固定するステップと
をさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第2の電極板(31)と前記第3の電極板(21)との間に第1の貯水層(61)を配設するステップと、
前記第1の電極板(22)と前記第4の電極板(32)との間に第2の貯水層(62)を配設するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1の電極板(22)は、炭素(C)、ニッケル(Ni)、および導電性メッシュを含み、前記第2の電極板(31)は、マグネシウム(Mg)を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第3の電極板(21)は、炭素(C)、ニッケル(Ni)、および導電性メッシュを含み、前記第4の電極板(32)は、マグネシウム(Mg)を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
前記第1の電極板(22)はさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超電導カーボンブラック、およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記第3の電極板(21)はさらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超電導カーボンブラック、およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
前記第1の貯水層(61)および前記第2の貯水層(62)は、ナトリウム(Na)イオンを含む、請求項16に記載の製造方法。
【請求項22】
前記第1の貯水層(61)および前記第2の貯水層(62)は、吸水紙製である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項23】
前記第2の貯水層(62)と前記第4の電極板(32)との間に、前記第1のモジュール(100)と同じ構造を有する少なくとも1つの追加モジュール(200)を配設するステップと、
前記少なくとも1つの追加モジュール(200)と前記第4の電極板(32)との間に少なくとも1つの追加貯水層(63)を配設するステップと
をさらに含む、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、発電装置に関する。特に、本発明は、注水式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタン電池もしくは亜鉛炭素電池のような市販の民生用電池は、一般に、一次電池と呼ばれる。これらの電池は、使い終わったら廃棄されるように設計されている。一次電池は使用されるときに、電池内の化学反応が化学物質を消費することにより発電する。化学物質が消費されてしまうと、電池は発電しなくなる。一次電池は、一般に、製造コストがより安く、小売価格がより安くなる傾向がある。しかし、一次電池に含まれる重金属および電解質は環境にとって有害であり、廃棄されたときに環境汚染を引き起こす。例えば、一次電池に含まれる電解質が漏出すれば、水と化学反応を起こして、毒性物質を発生させる恐れがある。
【0003】
近年では、従来型の一次電池に代わる代替電池の研究が著しい進歩を遂げている。一般に水電池として周知である注水式発電装置は、この代替電池の一例である。水電池は、電解質を全く含まない電池であるので、水に浸される、もしくは水で満たされるまで電圧を発生させない。したがって、従来型の一次電池と比べて、水電池は、水が水電池と接触しなければ化学反応が生じないので、保管しやすい。水電池は、水電池内の化学物質を消費せずに倉庫または棚に何年間も保管することが可能である。さらに、水電池を製造するのに使用される材料は環境に優しい。つまり、水電池が廃棄されるときに、水電池の部品は容易に再利用可能であり、毒性物質を発生させることがない。
【0004】
しかし、既存の水電池には幾つかの制限がある。例えば、従来型水電池では大きな出力電圧を発生させることが難しい。従来型水電池は、水を入れる容器を有する場合が多く、電池を満たすのに使用される水および水中の不純物は共に導電性を有するので、従来型水電池は、別の注入式発電装置と直列もしくは並列に接続される前に、絶縁体を有する別個のモジュールとして慎重に製造されなければならない。
【0005】
従来型水電池の陽極としてマグネシウム(Mg)を使用する理由の1つとして、従来型水電池の寿命は比較的短いということが挙げられる。マグネシウム(Mg)は、水電池が発電するときに消費される。Mgは高い反応性を有するため、Mgを固定する固定部品が腐食してしまう。Mgと固定部品との化学反応は熱を発生させ、その後、熱が固定部品を変形させてしまう。また、従来型水電池内のMgの腐食は、従来型水電池の機能を損ない、寿命を縮めてしまうという短絡問題を発生させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述の問題を克服する水注入式発電装置を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の装置は、それぞれ複数の態様を有し、これらの態様のみが望ましい特性を有するとは限らない。本発明の範囲を制限せずに、本発明のより重要な特徴について簡潔に説明する。本明細書を考察した後、特に、「発明を実施するための形態」の節を読んだ後に、本発明の特徴が他の水電池に勝る利点を有する理由が明らかになるであろう。
【0008】
本開示の実施形態は、注水式発電装置を提供する。注水式発電装置は、第1のモジュールを備える。第1のモジュールは、第1の電極板と第2の電極板とを備え、第1の電極板と第2の電極板とは第1の固定部品を使用して固定され、第1の電極板と第2の電極板との間に第1の絶縁層が配置される。注水式発電装置はさらに、第3の電極板を保持するための第1の支持構造体と、第4の電極板を保持するための第2の支持構造体とを備える。注水式発電装置はさらに、第1の貯水層と第2の貯水層とを備え、第1の貯水層は第3の電極板と第2の電極板との間に配置され、第2の貯水層は第1の電極板と第4の電極板との間に配置される。
【0009】
一実施形態では、第3の電極板は、第2の固定部品を使用して第1の支持構造体上に固定され、第4の電極板は、第3の固定部品を使用して第2の支持構造体上に固定される。
【0010】
一実施形態では、第4の電極板と第2の支持構造体との間に第2の絶縁層が配置される。
【0011】
一実施形態では、注水式発電装置はさらに、第2の貯水層と第4の電極板との間に、第1のモジュールと同じ構造を有する少なくとも1つの追加モジュールを備える。一実施形態では、注水式発電装置はさらに、少なくとも1つの追加モジュールと第4の電極板との間に少なくとも1つの追加貯水層を備える。
【0012】
本開示の実施形態は、注水式発電装置の製造方法を提供する。本開示の方法は、第1のモジュールを形成するステップを含み、第1のモジュールを形成するステップは、第1の電極板および第2の電極板を配設するステップと、第1の電極板の一表面もしくは第2の電極板の一表面に第1の絶縁層を配置するステップと、第1の固定部品を使用して、第1の電極板と第2の電極板との間に第1の絶縁層が配置された状態で、第1の電極板と第2の電極板とを固定するステップとを含む。
【0013】
一実施形態では、注水式発電装置の製造方法はさらに、第3の電極板を保持するための第1の支持構造体および第4の電極板を保持するための第2の支持構造体を配設するステップと、第4の電極板と第2の支持構造体との間に第2の絶縁層を配設するステップと、第2の固定部品を使用して第1の支持構造体上に第3の電極板を固定するステップと、第3の固定部品を使用して、第2の支持構造体と第4の電極板との間に第2の絶縁層が配置された状態で、第2の支持構造体上に第4の電極板を固定するステップとを含む。
【0014】
一実施形態では、注水式発電装置の製造方法はさらに、第2の電極板と第3の電極板との間に第1の貯水層を配設するステップと、第1の電極板と第4の電極板との間に第2の貯水層を配設するステップとを含む。
【0015】
一実施形態では、注水式発電装置の製造方法はさらに、第2の貯水層と第4の電極板との間に、第1のモジュールと同じ構造を有する少なくとも1つの追加モジュールを配設するステップと、少なくとも1つの追加モジュールと第4の電極板との間に、少なくとも1つの追加貯水層を配設するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A-B】図1Aは、本発明の一実施形態の注水式発電装置の第1のモジュール100の概略図である。図1Bは、本発明の一実施形態の注水式発電装置の基本構造体120の概略図である。
図2】本発明の一実施形態の注水式発電装置1の概略図である。
図3】本発明の一実施形態の注水式発電装置内の電位経路70の概略図である。
図4】本発明の一実施形態の注水式発電装置2の概略図である。
図5A-C】それぞれ、本発明の一実施形態の注水式発電装置の正面図、側面図及び上面図である。
図5D】本発明の一実施形態の注水式発電装置の3次元図である。
図6A】本発明の一実施形態の注水式発電装置の製造方法のフローチャートである。
図6B】本発明の一実施形態の注水式発電装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、多数の異なる方法で実現可能である。以下の説明では、全体を通して対応する部品に番号が付与された図面を参照するものとする。
【0018】
図1Aは、本発明の一実施形態の注水式発電装置を構成する第1のモジュール100の概略図である。図1Aに示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。図1Aに示されているように、第1のモジュール100は、第1の電極板22と第2の電極板31とを備える。第1の電極板(22)は、炭素(C)電極板22としてもよいが、これに限定されない。第2の電極板31は、マグネシウム(Mg)電極板31としてもよいが、これに限定されない。第1の電極板22と第2の電極板31との間に、第1の絶縁層51が配置される。第1の固定部品42は、第1の電極板22、第1の絶縁層51、および第2の電極板31を貫通して、3つの部品を締結固定する。
【0019】
一実施形態では、第1の電極板22は、炭素(C)、ニッケル(Ni)、および導電性メッシュ(図示せず)を備える。一実施形態では、第1の電極板22は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超電導カーボンブラック、グラファイト、および導電性メッシュのうちの少なくとも1つを備えてもよい。上述の材料を備えることにより、第1の電極板22はより完全に化学反応を生じることができるので、注水式発電装置の寿命を延ばすことができる。一実施形態では、第1の電極板22は、耐酸性かつ耐アルカリ性であり、優れた導電性を有する。一実施形態では、第1の電極板22の形状は、第1の電極板22内に導電性メッシュを備えるので、可撓性を有する形状である。第1の電極板22が可撓性を有することにより、注水式発電装置をさまざまな形状にすることができる。
【0020】
一実施形態では、第1の固定部品42は、導電性金属製であり、注水式発電装置の電流伝導経路の一部である。一実施形態では、第1の固定部品42がリベットであり、防錆処理されている。一実施形態では、第1の固定部品42がねじであり、防錆処理されている。一実施形態では、第1の固定部品42は省略されてもよい。すなわち、第1の電極板22は、第2の電極板31に「スナップ式」に取り付けられる。この実施形態では、第1の電極板22は、突出部を有し、第2の電極板31は凹部を有するようにしてもよい、もしくはその逆の形にしてもよい。第1の電極板22の突出部は、第2の電極板31の凹部と直接係合する。第1の電極板22の突出部は、第1の電極板22と第2の電極板31とが互いに締結固定されるように、第2の電極板31の凹部と合致する。
【0021】
一実施形態では、第1の絶縁層51は、第1の電極板22の表面もしくは第2の電極板31の表面に配置される絶縁被覆である。一実施形態では、第1の絶縁層51は、第1の電極板22の表面全体もしくは第2の電極板31の表面全体を覆うとは限らない。一実施形態では、第1の絶縁層51は、第1の電極板22と第2の電極板31との間に配置される少なくとも1つのスペーサに置き換えられてもよい。少なくとも1つのスペーサは、プラスチックのような非導電性材料製であり、第1の電極板22が第2の電極板31と接触しないように第1の電極板22を第2の電極板31から分離することができる。
【0022】
図1Bは、本発明の一実施形態の注水式発電装置の基本構造体120の概略図である。図1Bに示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。基本構造体120は、第1の支持構造体11と第2の支持構造体12、第3の電極板21と第4の電極板32を備える。第3の電極板21は、炭素(C)電極板21としてもよいが、これに限定されない。第4の電極板32は、マグネシウム(Mg)電極板32としてもよいが、これに限定されない。第3の電極板21は、第2の固定部品41を使用して第1の支持構造体11上に固定される。第4の電極板32は、第3の固定部品43を使用して第2の支持構造体12上に固定される。基本構造体120はさらに、第3の電極板21と第4の電極板32との間に配置される第2の貯水層62を備える。第4の電極板32と第2の支持構造体12との間に、第2の絶縁層52が配置される。一実施形態では、第2の固定部品41と第3の固定部品43がリベットであり、防錆処理されている。
【0023】
第2の絶縁層52と第3の固定部品43とを組み合わせることにより、第4の電極板32と第2の支持構造体12との化学反応を防ぐことができるので、水電池の寿命を延ばすことができる。従来型水電池では、通常、Mg電極と周囲の金属構造体との化学反応が熱とガスを発生させる。発生した熱がMg電極の周囲の金属構造体を変形させ、ひいては従来型水電池の寿命を縮めてしまう。さらに、従来型水電池内のMg電極の固定部品は、通常、Mg電極によって腐食され、その後、短絡問題を引き起こす。短絡問題は、最終的に従来型水電池の機能を損なうことになる。
【0024】
Mg電極と周囲の金属構造体もしくは固定部品との化学反応もMg電極を消費することになる。Mg電極が消費されてしまうと注水式発電装置内で化学反応が生じなくなるので、この意図しないMg電極の消費が従来型水電池の寿命を縮めてしまう。
【0025】
第1の支持構造体11および第2の支持構造体12は、導電性金属製である。一実施形態では、第1の支持構造体11と第2の支持構造体12が鋼鉄製である。第2の貯水層62は、吸水性材料製であり、導電性イオンを含むように処理される。第2の貯水層62は、注水式発電装置が発電するのに必要な水を保持するように設計されている。さらに、第3の電極板21と第4の電極板32との間に配置される第2の貯水層62は、第3の電極板21と第4の電極板32とが直接接触するのを防ぐ。
【0026】
一実施形態では、第2の貯水層62が吸水紙製である。吸水紙が吸収できる水の量は、普通紙の場合の2.5倍である。吸水紙は薄くて貯水能力が高いので、注水式発電装置は従来型水電池よりも薄い構造にできる。一実施形態では、第2の貯水層62は、ナトリウム(Na)イオンを含むように処理される。第2の貯水層62に含まれるNaイオンは、注水式発電装置内の化学反応を発生しやすくできる。さらに、使用者は、注水式発電装置が発電する前に、注水式発電装置に水を加えるだけでよく、追加の電解質が必要でなくなる。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態の注水式発電装置1の概略図である。図2に示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。注水式発電装置1は、図1Aに示されている第1のモジュール100、図1Bに示されている基本構造体120、および追加の第1の貯水層61を備える。図2に示されているように、第1のモジュール100は、第1の貯水層61と第2の貯水層62との間に配置され、第1の貯水層61および第2の貯水層62は、第2の支持構造体12上に固定された第4の電極板32と第1の支持構造体11上に固定された第3の電極板21との間に配置される。図2では、注水式発電装置1が発電するときに、第3の電極板21が陰極としての機能を果たし、第4の電極板32が陽極としての機能を果たす。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態の注水式発電装置内の電位経路70を破線で示した概略図である。図3に示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。注水式発電装置が水中に入れられた後、もしくは注水式発電装置が水で満たされた後、第1の貯水層61および第2の貯水層62は、水を吸収して内部に水を保持し始める。第1の貯水層61および第2の貯水層62内の水は、C電極板とMg電極板とが化学反応を起こすための適切な媒質としての機能を果たす。C電極板の表面およびMg電極板の表面が水に触れると、Mg電極板はアニオン(負に帯電したイオン)を放出し、C電極板はカチオン(正に帯電したイオン)を放出する。アニオンとカチオンとの相互作用が電位差を発生させる。
【0029】
発電工程では、正電荷は、第2の固定部品41を通って、第1の支持構造体11から出力され、負電荷は、第3の固定部品43を通って、第2の支持構造体12から出力される。電位経路70は、注水式発電装置内の電流伝導経路全体のことである。一実施形態では、第3の電極板21と第2の電極板31との組み合わせが1.5ボルトの電位差を生み出し、第1の電極板22と第4の電極板32との組み合わせが1.5ボルトの電位差を生み出す。したがって、図3に示されている注水式発電装置は、全体として3ボルトの電位差を有する。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態の注水式発電装置2の概略図である。図4に示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。図4に示されている注水式発電装置2は、第1のモジュール100、第2のモジュール200、および第3のモジュール300を備え、第2のモジュール200と第3のモジュール300は、図1Aに示されている第1のモジュール100と同じ構造を有する。図4に示されている注水式発電装置2はさらに、第3の貯水層63および第4の貯水層64を備える。第3の貯水層63および第4の貯水層64と、第1の貯水層61および第2の貯水層62は、同じ材料で作られる。図4に示されている実施形態では、4組のC電極板とMg電極板との組がある。4組のC電極板とMg電極板との組それぞれは、1.5ボルトの電位差を生み出す。したがって、図4に示されている注水式発電装置は、全体として6ボルトの電位差を有する。
【0031】
本発明の注水式発電装置は、図3および図4に示されている実施形態に限定されないことに留意されたい。設計者もしくは製造業者は、図3および図4に示されている構造を基本として、異なる出力電圧を有する注水式発電装置を構成することができる。つまり、設計者もしくは製造業者は、追加モジュールおよび追加貯水層を追加するだけでよい。すなわち、注水式発電装置の出力電圧をカスタマイズすることが可能である。モジュールによる注水式発電装置の構成の概念は、一般に、大きな出力電圧を発生させるためには複数の従来型水電池が直列に接続されなければならないが、同様の出力電圧を発生させるために本発明の注水式発電装置は1つのみを必要とするという利点を有する。したがって、本発明の注水式発電装置は、電卓、電子時計、もしくは懐中電灯のような小型の電子機器での使用に限定されなくなる。本発明の注水式発電装置は、電気自動車にも使用可能になる。
【0032】
上述した注水式発電装置の電圧のカスタマイズの他に、注水式発電装置の出力電流もカスタマイズ可能である。設計者もしくは製造業者は、Mg電極板およびC電極板の容積を変更することによって、異なる出力電流を有する注水式発電装置を構成できる。
【0033】
注水式発電装置の電圧および出力電流のカスタマイズの他に、注水式発電装置の容量もカスタマイズ可能である。バッテリ容量は、定格電圧で供給できる電荷量で定義される。バッテリに含まれる電極材料が多いほど、容量も大きくなる。したがって、任意の所望容量の注水式発電装置は、注水式発電装置に追加モジュールおよび追加貯水層を追加することで容易に構成可能である。
【0034】
図5A〜5Dはそれぞれ、本発明の一実施形態の注水式発電装置の正面図、側面図、上面図、3次元図である。図5A〜5Dに示されている部品は正確な縮尺で描かれておらず、単に例示目的で示されていることに留意されたい。さらに、C電極板、Mg電極板、支持構造体、および貯水層の形状は、図5A〜5Dに示されている実施形態に限定されないことに留意すべきである。これらの部品の形状は、異なる設計要件を満たすようにカスタマイズ可能である。
【0035】
図6Aおよび図6Bは、本発明の一実施形態の注水式発電装置の製造方法のフローチャートである。図6Aに示されるように、ステップ601において、第1の電極板(22)および第2の電極板(31)が配設される。ステップ602において、第1の電極板(22)の一表面もしくは第2の電極板(31)の一表面に、第1の絶縁層(51)が配置される。ステップ603において、第1の固定部品(42)を使用して、第1の電極板(22)と第2の電極板(31)との間に第1の絶縁層(51)が配置された状態で、第1の電極板(22)と第2の電極板(31)とが締結固定される。ステップ601〜603完了後、第1のモジュール(100)が形成される。この第1のモジュール(100)は、後のステップ609で使用される。ステップ604において、第3の電極板(21)を保持するための第1の支持構造体(11)および第4の電極板(32)を保持するための第2の支持構造体(12)が配設される。
【0036】
図6Bに示されるように、ステップ605において、第4の電極板(32)と第2の支持構造体(12)との間に第2の絶縁層(52)が配置される。ステップ606において、第2の固定部品(41)を使用して第3の電極板(21)が第1の支持構造体(11)上に締結固定され、第3の固定部品(43)を使用して第4の電極板(32)が第2の支持構造体(12)上に締結固定される。ステップ607において、第2の電極板(31)と第3の電極板(21)との間に第1の貯水層(61)が配設される。ステップ608において、第1の電極板(22)と第4の電極板(32)との間に第2の貯水層(62)が配設される。ステップ609において、第2の貯水層(62)と第4の電極板(32)との間に少なくとも1つの追加モジュール(200)が配設され、少なくとも1つの追加モジュール(200)と第4の電極板(32)との間に少なくとも1つの追加貯水層(63)が配設される。少なくとも1つの追加モジュール(200)は、第1のモジュール(100)と同じ構造を有する。ステップ609は任意のステップであることに留意されたい。すなわち、設計者もしくは製造業者は、ステップ609を無視してもよいし、注水式発電装置の所望の容量もしくは出力電圧に達するまでステップ609を複数回実行してもよい。
【0037】
本明細書では本発明の特定の実施形態が開示されているが、本発明が開示されている実施形態に限定されるということではない。当業者は、本発明の精神から逸脱せずに、上述の実施形態に修正および変更を加えてもよいことは理解するであろう。本発明は、添付の請求項の範囲内の変更および変形形態を全て含むものとする。
【符号の説明】
【0038】
1 注水式発電装置
2 注水式発電装置
11 第1の支持構造体
12 第2の支持構造体
21 第3の電極板
22 第1の電極板
31 第2の電極板
32 第4の電極板
41 第2の固定部品
42 第1の固定部品
43 第3の固定部品
51 第1の絶縁層
52 第2の絶縁層
61 第1の貯水層
62 第2の貯水層
63 第3の貯水層
64 第4の貯水層
70 電位経路
100 第1のモジュール
120 基本構造体
200 第2のモジュール
300 第3のモジュール
【要約】      (修正有)
【課題】長寿命の注水式発電装置の提供
【解決手段】第1の電極板22と第2の電極板31とを有し、第1のモジュール100を備え、さらに、第1の支持構造体11、第2の支持構造体12、および2つの貯水層61、62を備える、第1の電極板22と第2の電極板31とは、第1の固定部品42を使用して固定され、第1の電極板(22)と第2の電極板31との間に第1の絶縁層51が配置され、さらに第3の電極板21と第4の電極板32とを備え、第3の電極板21は第2の固定部品41を使用して第1の支持構造体11上に固定され、第4の電極板32は第3の固定部品43を使用して第2の支持構造体12上に固定される、注水式発電装置。
【選択図】図3
図1A-B】
図2
図3
図4
図5A-C】
図5D
図6A
図6B