特許第5913682号(P5913682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913682モノクロメータ及びこれを備えた荷電粒子ビーム装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913682
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】モノクロメータ及びこれを備えた荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/05 20060101AFI20160414BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H01J37/05
   H01J37/12
【請求項の数】28
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-87380(P2015-87380)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-9684(P2016-9684A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0075947
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515111060
【氏名又は名称】韓国標準科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】趙 福来
(72)【発明者】
【氏名】安 商丁
(72)【発明者】
【氏名】朴 寅用
(72)【発明者】
【氏名】韓 哲洙
【審査官】 桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−196929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/05
H01J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッターで放出された荷電粒子ビームが入射され、前記荷電粒子ビームの軌道を屈折させ、複数の電極からなる第1の静電レンズと、
中心軸が前記第1の静電レンズの中心軸と同軸に配置され、前記第1の静電レンズと特定の隔離距離を設けて離隔し、前記第1の静電レンズで出射する前記荷電粒子ビームが入射され、前記荷電粒子ビームの軌道を屈折させ、複数の電極からなる第2の静電レンズと、を含み、
前記荷電粒子ビームは、前記静電レンズの前記中心軸から特定オフセット分ずれた軸外軌道を通過するように構成され、前記荷電粒子ビームが通過すると、前記荷電粒子ビームのエネルギー幅は減少することを特徴とするモノクロメータ
【請求項2】
前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道は、前記中心軸と平行に前記第1の静電レンズに入射され、
前記第1の静電レンズは、入射された前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道を、入射される軌道で前記中心軸を中心とする反対側に屈折させて出射し、
前記第1の静電レンズから出射した前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道は、前記中心軸と平行に前記第2の静電レンズに入射され、
前記第2の静電レンズは、入射された前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道を、前記第2の静電レンズに入射される軌道で前記中心軸を中心とする反対側に屈折して出射するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ
【請求項3】
前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間に配置され、前記荷電粒子ビームから、特定のエネルギー範囲を有する成分を除去する第1のスリットと、
前記第1の静電レンズの前方で前記特定の隔離距離の1/2に相当する位置に配置され、前記荷電粒子ビームの入射角度を制限する第2のスリットと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ
【請求項4】
前記第1及び2の静電レンズはそれぞれ、3つの電極からなり、
前記3つの電極の中心電極には、高電圧が印加され、両側電極には、両側電極電圧が印加され、
それぞれの前記電極は、中心部に矩状の開口部が設けられ、
前記開口部の中心は、互いに一致し、
それぞれの前記電極の開口部の短辺方向は、互いに一致し、
前記開口部の中心は、前記第1及び第2の静電レンズの中心軸と同軸に形成されることを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ
【請求項5】
前記中心電極に印加される電圧、前記オフセット量、及び前記特定の隔離距離の1/2のうち、少なくとも1つの条件により、残りの条件が算出され、
算出した前記残りの条件が反映されることを特徴とする請求項4に記載のモノクロメータ
【請求項6】
前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間に配置され、前記荷電粒子ビームから特定のエネルギー範囲を有する成分を除去する第1のスリットと、
前記第1の静電レンズの前方で前記特定の隔離距離の1/2に相当する位置に配置され、前記荷電粒子ビームの入射角度を制限する第2のスリットと、を更に含み、
前記第1及び第2の静電レンズを構成するそれぞれの前記電極は、中心部に矩状の開口部が設けられ、
前記開口部の中心は、互いに一致し、
それぞれの前記電極の開口部の短辺方向は、互いに一致し、
前記開口部の中心は、前記第1及び第2の静電レンズの中心軸と同軸をなし、
前記開口部の短辺方向及び前記軸外軌道方向を含む第1の平面上を進行する荷電粒子ビームにおいて、
前記第2のスリットで前記軸外軌道と平行に入射される第1の荷電粒子ビームは、前記第1の静電レンズを通過した後、前記第1のスリットで前記軸外軌道にフォーカシングされ、
前記第2のスリットで前記軸外軌道と特定の角度をもって入射される第2の荷電粒子ビームは、前記第1の静電レンズを通過した後、前記第1のスリットで前記軸外軌道に平行に進行され、前記第2の静電レンズを通過した後、前記第2の静電レンズの後方の前記特定の隔離距離の1/2の位置で、前記軸外軌道にフォーカシングされることを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ
【請求項7】
後焦点位置が前記第2のスリットの位置と一致するように、前記モノクロメータの前方に配置される第1の軸対称レンズと、
前焦点位置が、前記第2の静電レンズの後方で前記特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置に前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズと、を更に含み、
前記エミッターは、前記第1の軸対称レンズの前焦点位置に配置されることを特徴とする請求項6に記載のモノクロメータ
【請求項8】
前記第1及び2の静電レンズの前記開口部の長辺は、前記第1及び2の静電レンズの前記開口部の短辺の10倍以上であり、
前記短辺方向では、前記荷電粒子ビームに対する収束作用があり、
前記長辺方向では、前記荷電粒子ビームに対する収束作用がなく、
前記エミッターから第2の静電レンズの後方の間でフォーカシングされないことを特徴とする請求項6に記載のモノクロメータ
【請求項9】
前記第2の静電レンズの後方で前記特定の隔離距離の1/2である距離の位置に設けられる第1の2段偏向装置と、
前記第2のスリットの位置を基に設けられる第2の2段偏向装置と、を更に含むことを特徴とする請求項6に記載のモノクロメータ
【請求項10】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、四重極子であることを特徴とする請求項9に記載のモノクロメータ
【請求項11】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、六重極子であることを特徴とする請求項9に記載のモノクロメータ
【請求項12】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、十二重極子であることを特徴とする請求項9に記載のモノクロメータ
【請求項13】
前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの2番目の焦点距離であるfcは、前記軸外軌道に平行に入射される前記荷電粒子ビームの軌道が、前記軸外軌道で2番目に収束される位置から、前記静電レンズの中心までの距離として定義され、
前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間の距離は、2fcであることを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ
【請求項14】
前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの2番目の焦点距離であるfcは、前記軸外軌道に平行に入射される前記荷電粒子ビームの軌道が、前記軸外軌道に2番目に収束される位置から、前記静電レンズの中心までの距離として定義され、
前記特定のオフセットは、Xdであり、
前記Xdと、前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの中心電極電圧と両側電極電圧の電圧比との関係は、下記のように設定されることを特徴とする請求項1に記載のモノクロメータ



ここで、Vcenterは、静電レンズの中心電極電圧、Vsideは、静電レンズの両側電極電圧、fcは、静電レンズの2番目の焦点距離、左方向矢印は、荷電粒子ビームの平行入射条件、右方向矢印は、荷電粒子ビームの平行出射条件である。
【請求項15】
荷電粒子ビームを放出するエミッターと、
前記荷電粒子ビームが通過され、前記荷電粒子ビームのエネルギー幅を減少する機能を有する請求項1乃至14のいずれか一項によるモノクロメータと、
前記荷電粒子ビームが照射される試料と、
前記試料を維持及び移動するステージと、
前記試料で前記荷電粒子ビームから生成された二次粒子ビームを検出する検出器と、
前記エミッター、光、前記ステージ、及び前記検出器の機能を駆動する電気システムと、
前記電気システムを制御する制御システムとを含むことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項16】
前記モノクロメータの後方に配置される少なくとも1つの軸対称レンズと、を更に含み、
前記試料に前記荷電粒子ビームを走査することにより、前記試料の表面を観察又は加工することを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項17】
前記エミッターは、電子ソースであることを特徴とする請求項16に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項18】
前記エミッターは、イオンソースであることを特徴とする請求項16に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項19】
前記試料の表面から放出された前記二次粒子ビームのエネルギーを分光する電子線損失分光機能を有する電子線損失分光スペクトロスコピーと、を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記モノクロメータの後方、前記試料の前方、及び前記試料の後方の少なくとも1つに配置される少なくとも1つの軸対称レンズと、
前記荷電粒子ビームが投影されるスクリーンと
記荷電粒子ビームを検出する検出器と、を更に含み、
前記試料を透過して検出された荷電粒子を用いて、試料を観察することを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記エミッターは、電子ソースであることを特徴とする請求項20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
前記試料の表面から放出された二次粒子ビームのエネルギーを分光する電子線損失分光機能を有する電子線損失分光スペクトロスコピーと、を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項23】
前記モノクロメータの後方に設けられ、前焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で、前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズと、
前記第2の軸対称レンズの後方に配置される複数の第3の軸対称レンズと、を更に含み、
前記第2の軸対称レンズの後焦点位置に結像された前記エミッターの像は、前記第3の軸対称レンズにより、前記試料に縮小結像されることを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項24】
更に、前記モノクロメータの後方に設けられ、前焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で、前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズを含み、
前記第2の軸対称レンズは、前記試料上に、前記荷電粒子ビームをフォーカシングすることを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項25】
前記モノクロメータは、電子銃の高電圧部上に配置され、
前記モノクロメータの電気システムは、前記電子銃の加速電圧上に重畳することを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項26】
前記モノクロメータは、接地部上に配置され、
前記電気システムは、接地基準に構成されることを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項27】
前焦点位置が前記エミッターの位置と一致するように配置され、後焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2のスリットの位置と一致するように配置され、前記モノクロメータの前方に相互直列に設けられるX方向フォーカシングの四重極子レンズ及びY方向フォーカシングの四重極子レンズと、
前焦点位置が、前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置され、前記モノクロメータの後方で相互直列に設けられるX方向フォーカシングの四重極子レンズ及びY方向フォーカシングの四重極子レンズと、を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項28】
前焦点位置が前記エミッターの位置と一致するように配置され、後焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2のスリットの位置と一致するように配置され、前記モノクロメータの前方に相互直列に設けられるX方向フォーカシングの円筒状レンズ及びY方向フォーカシングの円筒状レンズと、
前焦点位置が、前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置され、前記モノクロメータの後方で相互直列に設けられるX方向フォーカシングの円筒状レンズ及びY方向フォーカシングの円筒状レンズと、を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロメータ及びこれを備えた荷電粒子ビーム装置に関し、より詳しくは、低コストで光軸を一致させるモノクロメータ(monochromator、MC)及びこれを備えた荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクロメータは、狭い波長範囲の光を供給するために用いる装置であって、レンズとスリットなどの組合せで、白色光を分光して所望する単色光を抽出するための光学系、単色分光系である。このようなモノクロメータは、荷電粒子ビーム装置内で光学系として用いられるか、エネルギー分析機(Energy Analyzer)として用いられる。以下では、従来のモノクロメータの例について説明する。
【0003】
Mollenstedtエネルギー分析機(Mollenstedt Energy Analyzer、MA)について、図1は、Mollenstedtエネルギー分析機(MA)を示す側断面及び平面図である。図1に示しているように、Mollenstedtエネルギー分析機(MA)は、円筒状レンズ(CylL)の軸外色収差を用いた荷電粒子エネルギー分析機である。円筒状レンズは、中心に矩状の開口部を有する3つの電極11からなり、中心電極に高電圧が印加され、前後両側の2つの電極は、接地電圧とする荷電粒子レンズである。このような3つの電極11の間には、絶縁材12が設けられる。中心電極の付近で、電子のエネルギーがほぼ0まで減速し、レンズの光軸外部を通過する成分が選択され、レンズ軸の色収差によって生じるエネルギー分散を用いて、荷電粒子のエネルギーを分析するエネルギー分析機を、発明者の名をつけて、Mollenstedtエネルギー分析機(MA)と称している(非特許文献0006)。
【0004】
FEI社の静電レンズを用いたモノクロメータについて、図2は、FEI社のモノクロメータを示す模式図である。図2に示しているように、FEI社のモノクロメータは、電子ソースの軸外成分をアパーチャ(aperture)によって選択し、静電レンズの軸外を通過させてエネルギーを分光し、単色化(エネルギーを拡大・縮小)するモノクロメータ(MC)であって、走査電子顕微鏡(SEM)のような荷電粒子ビーム装置に用いられる。このようなモノクロメータは、色収差の影響を減少して、イメージの分解能を向上させる(特許文献0001、非特許文献0007)。
【0005】
Delft工科大学、JEOL社、Tubingen大学のモノクロメータについて、図3乃至図5は、Delft工科大学、JEOL社、Tubingen大学のモノクロメータを示す模式図である。図3乃至図5に示しているように、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過電子顕微鏡(STEM)には、電子銃にWienフィルター型のモノクロメータ(MC)を装着することで、エネルギーを分光し、単色化(エネルギー分布を小さく)することができる(特許文献0002〜0004、非特許文献0008〜0010)。
【0006】
CEOS社のモノクロメータについて、図6は、CEOS社のモノクロメータを示す模式図である。図6に示しているように、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過電子顕微鏡(STEM)には、電子銃に4段の静電偏向装置を装着することで、エネルギーを分光し、単色化(エネルギー分布を小さく)することができる(特許文献0005、非特許文献0011)。CEOS社のモノクロメータによると、色収差の影響が減少して、通常使用する200keVよりも低い60keV以下のエネルギー領域で、イメージ解像度が向上するという効果が生じる。また、下段に設けられる電子エネルギー損失分光法(EELS)におけるエネルギー分解能の向上が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Henstra, Chaged Particle source with integrated energy filter, US8461525B2
【特許文献2】Hindrik Willem Mook, Wien filter, US6,452,169 B1
【特許文献3】Masaki Mukai, Method of adjusting transmission electron microscope, US2013/0CylL28699 A1
【特許文献4】Erich Piles, Monochromator for charged particles, EP1CylL10292B1
【特許文献5】Uhlemann, Monochromator and radiation source with monochromator, US2008/0290273A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mollenstedt, Die elektrostatische Linse als hochauflosender Geschwindigkeitsanalysator, Optik 5,499-517(1949).
【非特許文献2】Henstra,J.Chmelik,T.Dingle,A.Manguns,G.van Veen, Versatile monochrometer module for XHR SEM, Microscopy and Microanalysis,Volume 15, Issue SUPPL. 2, July 2009, Pages 168-169.
【非特許文献3】Mook,H.M.Kruit,P, Construction and Characterization of the fringe field monochrometer for a field emission gun, Ultramicroscopy 81(2000) 129-139.
【非特許文献4】Mukai, M, Inami, W, Omoto, K.a, Kaneyama, T, Tomita, T, Tsuno, K, Terauchi, M, Tsuda, K, Naruse, M, Honda, T, Tanaka, M. Monochromator for a 200 kV analytical electron microscope, Microscopy and Microanalysis Volume 12, Issue SUPPL. 2, August 2006, Pages 1206-1207.
【非特許文献5】Plies,E. Marianowski,K. Ohnweiler,N. The wien filter : History, fundamentals and modern application Nucl.instrum.metho.phys.res.A 645(2011)7-11.
【非特許文献6】Uhlemann,S. Haider,M, Experimental Set-Up of a Purely Electrostatic Monochrometer for High Resolution and Analytical Purposes of a 200kV TEM, Microsc.Microanal.8,suppl.2 (2002) 584CD-585CD.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のモノクロメータは、構造が複雑で、高価であり、製作において高精細を要求し、電源の数が非常に多く必要であるという問題があった。
【0010】
特に、図4に示しているようなFEI社のモノクロメータ(MC)は、最も単なる構造であるが、荷電粒子ビームをレンズの軸外に通過させるため、コマ、非点数差などの軸外収差が残ることにより、後段で荷電粒子ビームのプロファイルに悪影響を及ぼすという問題がある。また、電子ソースの軸の成分を用いるため、元の電子線のエネルギー拡散が大きくなり、放出電流が不安定となる問題がある。試料と、試料表面に吸着ガス分子のフォノン分光には、10meVよりも高いエネルギー分解能(狭いエネルギー拡散)が必要となる。
【0011】
それで、本発明は、前記の問題点を改善するために、創案されたものである。
【0012】
本発明の目的は、2段の円筒状レンズ(CylL)を光軸からオフセットして配置し、レンズ間にスリットを配置し、第1段の円筒状レンズ(CylL)で荷電粒子ビームを偏向させ、エネルギーを分散して、スリットでエネルギーを選択し、第2段の円筒状レンズ(CylL)で荷電粒子ビームを反対方向に偏向して、元の光軸と一致させるモノクロメータ、及びこれを用いた荷電粒子ビーム装置を提供することにある。このようなモノクロメータは、第1段の円筒状レンズで生じた二次収差及び一次エネルギー分散を無くす構造であって、モノクロメータを通過した後にも、良い荷電粒子ビームプロファイルを得ることができる。換言すると、エミッター中心部分の荷電粒子ビームが使用可能であるという効果が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明の目的を達成するための具体的手段について、説明する。
【0014】
本発明の目的は、エミッターで放出された荷電粒子ビームが入射され、前記荷電粒子ビームの軌道を屈折させ、複数の電極からなる第1の静電レンズと、中心軸が前記第1の静電レンズの中心軸と同軸に配置され、前記第1の静電レンズと特定の隔離距離を設けて離隔し、前記第1の静電レンズで出射する前記荷電粒子ビームが入射され、前記荷電粒子ビームの軌道を屈折させ、複数の電極からなる第2の静電レンズと、を含み、前記荷電粒子ビームは、前記静電レンズの前記中心軸から特定オフセット分ずれた軸外軌道を通過するように構成され、前記荷電粒子ビームのエネルギー幅は減少するモノクロメータを提供して達成される。
【0015】
前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道は、前記中心軸と平行に前記第1の静電レンズに入射され、前記第1の静電レンズは、入射された前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道を、入射される軌道で前記中心軸を中心とする反対側に屈折させて出射し、前記第1の静電レンズから出射した前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道は、前記中心軸と平行に前記第2の静電レンズに入射され、前記第2の静電レンズは、入射された前記荷電粒子ビームの前記軸外軌道を、前記第2の静電レンズに入射される軌道で前記中心軸を中心とする反対側に屈折して出射するように構成される。
【0016】
また、前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間に配置され、前記荷電粒子ビームから、特定のエネルギー範囲を有する成分を除去する第1のスリットと、前記第1の静電レンズの前方で前記特定の隔離距離の1/2に相当する位置に配置され、前記荷電粒子ビームの入射角度を制限する第2のスリットと、を更に含む。
【0017】
前記第1及び2の静電レンズはそれぞれ、3つの電極からなり、前記3つの電極の中心電極には、高電圧が印加され、両側電極には、両側電極電圧が印加され、それぞれの前記電極は、中心部に矩状の開口部が設けられ、前記開口部の中心は、互いに一致し、それぞれの前記電極の開口部の短辺方向は、互いに一致し、前記開口部の中心は、前記第1及び第2の静電レンズの中心軸と同軸に形成される。
【0018】
前記中心電極に印加される電圧、前記オフセット量、及び前記特定の隔離距離の1/2のうち、少なくとも1つの条件により、残りの条件が算出され、算出した前記残りの条件が反映される。
【0019】
また、前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間に配置され、前記荷電粒子ビームから特定のエネルギー範囲を有する成分を除去する第1のスリットと、前記第1の静電レンズの前方で前記特定の隔離距離の1/2に相当する位置に配置され、前記荷電粒子ビームの入射角度を制限する第2のスリットと、を更に含み、前記第1及び第2の静電レンズを構成するそれぞれの前記電極は、中心部に矩状の開口部が設けられ、前記開口部の中心は、互いに一致し、それぞれの前記電極の開口部の短辺方向は、互いに一致し、前記開口部の中心は、前記第1及び第2の静電レンズの中心軸と同軸をなし、前記開口部の短辺方向及び前記軸外軌道方向を含む第1の平面上を進行する荷電粒子ビームにおいて、前記第2のスリットで前記軸外軌道と平行に入射される第1の荷電粒子ビームは、前記第1の静電レンズを通過した後、前記第1のスリットで前記軸外軌道にフォーカシングされ、記第2のスリットで前記軸外軌道と特定の角度をもって入射される第2の荷電粒子ビームは、前記第1の静電レンズを通過した後、前記第1のスリットで前記軸外軌道に平行に進行され、前記第2の静電レンズを通過した後、前記第2の静電レンズの後方の前記特定の隔離距離の1/2の位置で、前記軸外軌道にフォーカシングされることを特徴とする。
【0020】
また、後焦点位置が前記第2のスリットの位置と一致するように、前記モノクロメータの前方に配置される第1の軸対称レンズと、前焦点位置が、前記第2の静電レンズの後方で前記特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置に前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズと、を更に含み、前記エミッターは、前記第1の軸対称レンズの前焦点位置に配置される。
【0021】
前記第1及び2の静電レンズの前記開口部の長辺は、前記第1及び2の静電レンズの前記開口部の短辺の10倍以上であり、前記短辺方向では、前記荷電粒子ビームに対する収束作用があり、前記長辺方向では、前記荷電粒子ビームに対する収束作用がなく、前記エミッターから第2の静電レンズの後方の間でフォーカシングされない。
【0022】
前記第2の静電レンズの後方で前記特定の隔離距離の1/2である距離の位置に設けられる第1の2段偏向装置と、前記第2のスリットの位置を基に設けられる第2の2段偏向装置と、を更に含む。
【0023】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、四重極子である。
【0024】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、六重極子である。
【0025】
前記第1及び第2の2段偏向装置は、十二重極子である。
【0026】
また、前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの2番目の焦点距離であるfcは、前記軸外軌道に平行に入射される前記荷電粒子ビームの軌道が、前記軸外軌道で2番目に収束される位置から、前記静電レンズの中心までの距離として定義され、前記第1の静電レンズと前記第2の静電レンズとの間の距離は、2fcである。
【0027】
前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの2番目の焦点距離であるfcは、前記軸外軌道に平行に入射される前記荷電粒子ビームの軌道が、前記軸外軌道に2番目に収束される位置から、前記静電レンズの中心までの距離として定義され、前記特定のオフセットは、Xdであり、前記Xdと、前記第1の静電レンズ及び前記第2の静電レンズの中心電極電圧と両側電極電圧の電圧比との関係は、下記のように設定される。

ここで、Vcenterは、静電レンズの中心電極電圧、Vsideは、静電レンズの両側電極電圧、fcは、静電レンズの2番目の焦点距離、左方向矢印は、荷電粒子ビームの平行入射条件、右方向矢印は、荷電粒子ビームの平行出射条件である。
【0028】
本発明の目的は、荷電粒子ビームを放出するエミッターと、前記荷電粒子ビームが通過され、前記荷電粒子ビームのエネルギー幅を減少する機能を有する請求項1乃至14のいずれか一項によるモノクロメータと、前記荷電粒子ビームが照射される試料と、前記試料を維持及び移動するステージと、前記試料で前記荷電粒子ビームから生成された二次粒子ビームを検出する検出器と、前記エミッター、光、前記ステージ、及び前記検出器の機能を駆動する電気システムと、前記電気システムを制御する制御システムとを含む荷電粒子ビーム装置を提供して達成される。
【0029】
また、前記モノクロメータの後方に配置される少なくとも1つの軸対称レンズと、を更に含み、前記試料に前記荷電粒子ビームを走査することにより、前記試料の表面を観察又は加工する。
【0030】
前記エミッターは、電子ソースであることを特徴とする請求項16に記載の荷電粒子ビーム装置。
【0031】
前記エミッターは、イオンソースであることを特徴とする請求項16に記載の荷電粒子ビーム装置。
【0032】
前記試料の表面から放出された前記二次粒子ビームのエネルギーを分光する電子線損失分光機能を有する電子線損失分光スペクトロスコピーと、を更に含む。
【0033】
前記モノクロメータの後方、前記試料の前方、及び前記試料の後方の少なくとも1つに配置される少なくとも1つの軸対称レンズと、前記荷電粒子ビームが投影されるスクリーンと、前記荷電粒子ビームを検出する検出器と、を更に含み、前記試料を透過して検出された荷電粒子を用いて、試料を観察する。
【0034】
前記エミッターは、電子ソースである。
【0035】
前記試料の表面から放出された二次粒子ビームのエネルギーを分光する電子線損失分光機能を有する電子線損失分光スペクトロスコピーと、を更に含む。
【0036】
更に、前焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で、前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズが、前記モノクロメータの後方に設けられ、前記第2の軸対称レンズの後方に配置される複数の第3の軸対称レンズと、を更に含み、前記第2の軸対称レンズの後焦点位置に結像された前記エミッターの像は、前記第3の軸対称レンズにより、前記試料に縮小結像される。
【0037】
更に、前焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で、前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置される第2の軸対称レンズが、 前記モノクロメータの後方に設けられ、前記第2の軸対称レンズは、前記試料上に、前記荷電粒子ビームをフォーカシングする。
【0038】
前記モノクロメータは、電子銃の高電圧部上に配置され、前記モノクロメータの電気システムは、前記電子銃の加速電圧上に重畳する。
【0039】
前記モノクロメータは、接地部上に配置され、前記電気システムは、接地基準に構成される。
【0040】
また、前焦点位置が前記エミッターの位置と一致するように配置され、後焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2のスリットの位置と一致するように配置され、前記モノクロメータの前方に相互直列に設けられるX方向フォーカシングの四重極子レンズ及びY方向フォーカシングの四重極子レンズと、
前焦点位置が、前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置され、相互直列に設けられるX方向フォーカシングの四重極子レンズ及びY方向フォーカシングの四重極子レンズとが、前記モノクロメータの後方に備えられる。
【0041】
更に、前焦点位置が前記エミッターの位置と一致するように配置され、後焦点位置が前記モノクロメータの一構成である第2のスリットの位置と一致するように配置され、前記モノクロメータの前方に相互直列に設けられるX方向フォーカシングの円筒状レンズ及びY方向フォーカシングの円筒状レンズと、前焦点位置が、前記モノクロメータの一構成である第2の静電レンズの後方で前記モノクロメータの特定の隔離距離の1/2である距離の位置と一致し、後焦点位置で前記エミッターの像が結像するように配置され、相互直列に設けられるX方向フォーカシングの円筒状レンズ及びY方向フォーカシングの円筒状レンズとが、前記モノクロメータの後方に備えられる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、以下のような効果が得られる。
【0043】
第1に、本発明の1実施例によると、モノクロメータを通過した後にも、良い荷電粒子ビームのプロファイルを得ることができる。即ち、エミッター中心部分の荷電粒子ビームが使用可能であるという効果が生じる。
【0044】
第2に、本発明の1実施例によると、モノクロメータを通過した後に、より小さいエネルギー拡散(10meV)を実現することができる。
【0045】
第3に、本発明の1実施例によると、エミッター中心部分の荷電粒子ビームの使用が可能であるので、荷電粒子ビームの電流が更に安定となる。
【0046】
第4に、本発明の1実施例によると、直線構造の光学系に対する列(column)の円筒状を維持することができ、高い機械的強度と同軸精度を得ることができる。大電流を用いる方式などで、モノクロメータ(MC)を使用する必要がない場合は、円筒状レンズ(CyL)の電圧をオフ(OFF)にして、一般の光学系で使用可能であるという効果がある。
【0047】
第5に、本発明の1実施例によると、全体が静電方式であるので、イオンビームの使用も可能である。本発明の1実施例によると、コイルから放出されるガスがないので、真空度の向上にも容易であり、超高真空及び極高真空が必要な電子銃の付近での使用が可能となる。また、ヒステリシス(hysteresis)がないため、応答性に優れており、モノクロメータ(MC)のオン・オフの早い切換えが可能となる効果がある。
【0048】
第6に、本発明の1実施例によると、多極子をレンズとして用いないため、機械的な構造、電気・制御系の構成が単純となる。また、従来の他のモノクロメータ(MC)よりも安いコストで、優れた効率を得られる。
【0049】
第7に、本発明の1実施例によると、モノクロメータ(MC)において、非点収差(Astigmatic)結像(X方向に3回、Y方向に0回)が、電子-電子の相互作用によるエネルギー拡散の増加、及び荷電粒子ビームの直径の増加を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本明細書に添付の図面は、本発明の望ましい実施例を例示することであり、発明の詳細な説明と共に、本発明の技術思想を更に理解させる役目をするので、本発明は、そのような図面に記載された事項に限定して、解してはいけない。
図1図1は、円筒状レンズ(CylL)を示す側断面図及び平面図である。
図2図2は、FEI社のモノクロメータを示す模式図である。
図3図3は、Delft工科大学、JEOL社、Tubingen大学のモノクロメータを示す模式図である。
図4図4は、Delft工科大学、JEOL社、Tubingen大学のモノクロメータを示す模式図である。
図5図5は、Delft工科大学、JEOL社、Tubingen大学のモノクロメータを示す模式図である。
図6図6は、CEOS社のモノクロメータを示す模式図である。
図7図7は、本発明の1実施例による荷電粒子ビームの軌道に関するZ-X軸変位グラフである。
図8図8は、本発明の1実施例において、電極に与えられる電圧比によるオフセット条件のグラフである。
図9図9は、本発明の1実施例によるモノクロメータを示す模式図である。
図10図10は、本発明の1実施例によるモノクロメータを示す模式図である。
図11図11は、本発明の1実施例により、伝送レンズに用いられる磁場型軸対称レンズを示す模式図である。
図12図12は、本発明の1実施例により、伝送レンズに用いられる静電型軸対称レンズを示す模式図である。
図13図13は、本発明の他の実施例によるモノクロメータを示す模式図である。
図14図14は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。
図15図15は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。
図16図16は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。
図17図17は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図18図18は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図19図19は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図20図20は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図21図21は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図22図22は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図23図23は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
図24図24は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付の図面を参照して、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本発明を容易に実施する実施例について詳述する。但し、本発明の望ましい実施例に対する動作原理を詳述することに当たり、関連する公知機能又は構成についての具体的な説明が、本発明の要旨を不要に濁していると判断される場合は、該当説明を省略することにする。
【0052】
また、図面において、類似した機能・作用をする部分については、同一の符号を付する。明細書の全般において、特定の部分が他の部分に連結されているとすると、これは、直接的に連結されていることだけでなく、その中間に他の素子を挟んで、間接的に連結されている場合も含む。また、特定の構成要素を含むということは、特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。
【0053】
モノクロメータ
本発明の1実施例によるモノクロメータについて、以下では、本発明の1実施例によるモノクロメータの構成と機能について説明する。
【0054】
本発明の1実施例によるモノクロメータに用いられる円筒状レンズについて、図1は、円筒状レンズ(CylL)を示す側断面図及び平面図である。図1に示しているように、荷電粒子ビームの進行方向をZ方向と定義し、X方向を円筒状レンズの矩状開口部の短辺側と定義し、Y方向を長辺側と定義する。円筒状レンズは、X方向でレンズ作用が強く、Y方向でレンズ作用が弱い。
【0055】
本発明の1実施例によるモノクロメータには、2段の円筒状レンズ(CylL)を用い、2段の円筒状レンズ(CylL)の中心軸を、荷電粒子ビーム装置の光学装備(例えば、エミッター(電子ソース)、伝送レンズ(transfer lens、TL)、後段の対物レンズ(OL))などの光軸からX方向に特定の距離分オフセットして配置する。このオフセットの大きさを、Xdと称する。
【0056】
図7は、本発明の1実施例による荷電粒子ビームの軌道に関するZ-X軸変位グラフである。図7に示しているように、荷電粒子ビームは、エミッターから円筒状レンズ(CylL 1&2)の中心からXdのオフセットを有する光軸で出射することになり、円筒状レンズ(CylL)を通しながら、X軸を中心に対称となるように、中心軌道(axial ray)が移動することになる。
【0057】
円筒状レンズは、一般のレンズよりも屈折率の高いレンズが用いられ、荷電粒子ビームの像が結ぶ面が1又は2(2nd focus)の条件をもって、用いられる。この領域におけるレンズ条件は、円筒状レンズの中心軸から前記オフセット分離隔して、平行に入射される荷電粒子ビームの軸外軌道が中心軸に収束した後(焦点が結ぶ)、中心軸に平行に出射される。中心軸と出射軌道との距離は、入射時のオフセットと同一の条件で構成される。
【0058】
前記平行入射及び平行出射する軸外軌道を、中心軌道と定義すると、前記中心軌道に対して小さい角度をもって放出される軌道を、近軸軌道(para-axial ray)と定義することができる。このような近軸軌道は、円筒状レンズの中心と、円筒状レンズの中心の外でそれぞれ一回ずつ、中心軌道に収束されることが、図7の荷電粒子ビーム軌道計算を通じて、確認することができる。
【0059】
図7において、円筒状レンズの2番目の焦点距離(2nd focal plane)であるfcは、中心軌道に平行に入射する近軸軌道が、中心軌道に2番目に収束する位置から円筒状レンズの中心までの距離として定義することができる。本発明の1実施例によるモノクロメータにおいて、このような円筒状レンズを、モノクロメータ(CylL 1&2)の中心軸に左右対称に製作すると、中心軌道に対して特定の角度でエミッターから放出された近軸軌道は、2段の円筒状レンズを通して、中心軌道と平行となる前の焦点と、2段の円筒状レンズの中心との距離も、2番目の焦点距離(fc)と同一である。
【0060】
このような近軸軌道は、一般のレンズ系と同様に、2番目の焦点距離(fc)によって説明される。図8は、本発明の1実施例において、中心電極及び両側電極に与えられる電圧比(Vcenter/Vside)によるオフセット(Xd)条件を示すグラフである。図8には、光学系のシミュレーションにより、円筒状レンズの中心電極に印加した電圧(Vcenter)に対して、オフセット(Xd)と2番目の焦点距離(fc)とが示されている。図8においてX軸は、円筒状レンズの中心電極に印加した電圧(Vcenter)を、両側電極の電圧(Vside)で除して導出した電極に加えられる電圧比数値である。Vcenter及びVsideはいずれも、エミッター(電子ソース)の電位は、0を基準としたときの数値である。Vcenterは、抽出電圧(extraction voltage)と同一であり、本発明の1実施例においては、4kVに設定される。Vcenterが負数であることは、エミッターの電位よりも低い電圧が、中心電極の電圧に印加される場合をいう。
【0061】
オフセット(Xd)と、電極11に与えられる電圧比数値(Vcenter/Vside)との関係について、前記関係は、円筒状レンズの形状により決定され、より詳しくは、図1に示している各電極11の厚さ(t1、t2、t3)、各電極11の間隔(g1、g2)、開口部のX、Y方向の幅(wx1、wx2、wx3、wy1、wy2、wy3)によって決定される。本発明の1実施例では、t1=t2=t3=10mm、g1=g2=10mm、wx1=wx2=wx3=10mm、wy1= wy2=wy3=100mmと計算して、図8に示している。
【0062】
図9は、本発明の1実施例によるモノクロメータを示す模式図である。図9に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)は、2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)をZ方向に、図7に示されているfcの2倍の距離(2fc)で相互離隔するように配置することを特徴とする。本発明は、予め計算されたオフセット(Xd)と、電極11に与えられる電圧比数値(Vcenter/Vside)との関係データ(図8)を、制御部(control PC)に格納し、該当関係データを基に、2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中心(Center of CylL 1&2)を、エミッターから荷電粒子ビーム(X)が出射される光学光軸である光軸(optical axis)からXd分ずれて配置し、それぞれの円筒状レンズの中心電極電圧(Vcenter1、Vcenter2)に、ほぼVcenterと同じ値を用いることを特徴とする。理論的には、2段の円筒状レンズの2つの中心電極電圧であるVcenter1、Vcenter2は、Vcenterに一致しなければならないが、実際には、機械組立の程度によって、微細な調整が必要であるため、それぞれの円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の電極が、2つの独立した電源を揃えるのが望ましい。また、2段の円筒状レンズの全体に対するX方向の微調整器具(position adjustmet)が、真空チャンバの外に設けられることもある。
【0063】
図9に示しているオフセット(Xd)と、電極11に与えられる電圧比数値(Vcenter/Vside)との関係条件の下で、光軸上の荷電粒子ビーム(X)は、1段目の円筒状レンズである第1の円筒状レンズ(CylL1)からオフセット(Xd)と逆方向に偏向して、光軸と平行に同一のオフセット量をもって出射され、同一の電圧が印加された2段目の円筒状レンズである第2の円筒状レンズ(CylL2)によって復帰し、再度、光軸と一致する位置の軌道を描くことになる。即ち、図9に示している太い実線は、荷電粒子ビームの中心軌道を意味し、一点鎖線はそれぞれ、光軸と円筒状レンズの中心(Center of CylL 1&2)を意味する。図9に示しているように、2段の円筒状レンズによって荷電粒子ビーム(X)の中心軌道は、円筒状レンズの中心(Center of CylL 1&2)を中心とする反対側に屈折してから、再度、光軸に復帰することになる。
【0064】
図10は、本発明の1実施例によるモノクロメータを示す模式図である。図10に示しているZ-X平面とZ-Y平面のグラフにおいては、2段の円筒状レンズによって屈折して進行する中心軌道を直線と表して、近軸軌道と中心軌道の関係について、視覚的に向上した接近性を有するように示している。
【0065】
図10のZ-X平面(Z-X Plane)において、Xα(実線)は、αの角度ほど中心軌道とずらして入射される近軸軌道(para-axial ray)を意味する。Z-X平面(Z-X Plane)において、Xγ(点線)は、中心軌道と平行に入射される近軸軌道(para-axial ray)を意味する。エミッター1から放出される荷電粒子ビームの近軸軌道(Xγ)は、第1の伝送レンズ(TL1)を通過しながら、中心軌道とX軸方向に角度γ分ずらすことになる。近軸軌道(Xγ)は、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)を通過しながら、中心軌道(axial ray)とX軸方向に、角度-γ分ずらすことになる。近軸軌道(Xγ)は、第2の伝送レンズ(TL2)を通過しながら入射された方向そのまま、中心軌道と平行に出射される。
【0066】
図10の下段のZ-X平面(Z-X plane)において、エミッター1から放出される荷電粒子ビームの近軸軌道(Xα)は、X軸方向に中心軌道(axial ray)とαの角度をなし、第1の伝送レンズ(TL1)に入射される。近軸軌道(Xα)は、第1の伝送レンズ(TL1)を通過しながら、中心軌道と平行に進行する。近軸軌道(Xα)は、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)を通過しながら、中心軌道を基に、X軸に対称されて、中心軌道と平行に進行することになる。近軸軌道(Xα)は、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)を通過した後に、第2の伝送レンズ(TL2)を通過しながら入射した方向そのまま、出射することになる。
【0067】
図10の下段のZ-Y平面(Z-Y Plane)において、Yβ(実線)は、Y軸方向にβの角度分、中心軌道(axial ray)とずれして入射される近軸軌道(para-axial ray)を意味する。Z-Y平面(Z-Y Plane)において、Yδ(点線)は、中心軌道(axial ray)と平行に入射される近軸軌道(para-axial ray)を意味する。図10においては、近軸軌道(Yδ)と近軸軌道(Yβ)とが、Y軸方向に軌道変化が大きくなく、フォーカシングされないことが確認できる。
【0068】
図10に示しているように、エミッター1と第1の伝送レンズ(TL1)、及び第1の伝送レンズ(TL1)と導入部アパーチャ(Entrance Aperture)との間の距離は、第1の伝送レンズの焦点距離であるf1と定義し、第1の偏向装置(Deflector1)が設置された導入部アパーチャ(Entrance Aperture)と第1の円筒状レンズ(CylL1)、第1の円筒状レンズ(CylL1)とエネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)、エネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)と第2の円筒状レンズ(CylL2)、及び第2の円筒状レンズ(CylL2)と第2偏向装置(Deflector2)との間の距離は、図7から確認可能な円筒状レンズの2番目の焦点距離であるfcと定義することができる。また、第2の偏向装置(Deflector2)と第2の伝送レンズ(TL2)、及び第2の伝送レンズ(TL2)とZiとの間の距離は、第2の伝送レンズの焦点距離であるf2と定義することができる。
【0069】
図10に示しているように、第1の円筒状レンズ(CylL1)の前方に、円筒状レンズの中心からの距離がfcであるZe1位置において、中心軌道(axial ray)と平行に円筒状レンズに入射される近軸軌道(Xα)は、第1の円筒状レンズ(CylL1)の中心付近で、中心軌道(axial ray)にフォーカスされ、第1の円筒状レンズ(CylL1)から出射された後、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中間で、各円筒状レンズの中心からの距離がfcであるZm位置において、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる。 第2の円筒状レンズ(CylL2)では、非対称軌道を取り、第2の円筒状レンズ(CylL2)内で中心軌道(axial ray)にフォーカスされた後、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方へ円筒状レンズ中心からの距離がfcであるZe2位置において、中心軌道(axial ray)に平行に出射される。本発明の1実施例によると、荷電粒子ビームの軌道(X)は、X方向に3回、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる軌道となる。
【0070】
一方、第1の円筒状レンズ(CylL1)の前方へ円筒状レンズの中心からの距離がfcであるZe1位置において、中心軌道(axial ray)からの角度(γ)で進行される近軸軌道(Xγ)は、第1の円筒状レンズ(CylL1)内で中心軌道(axial ray)にフォーカスされ、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中間位置であるZmにおいて、中心軌道(axial ray)と平行な軌道に進行される。その後、第2の円筒状レンズ(CylL2)においては、対称軌道を取り、第2の円筒状レンズ(CylL2)内で中心軌道(axial ray)にフォーカスされた後、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方へ円筒状レンズの中心からの距離がfcであるZe2位置において、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる。
【0071】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、焦点距離fcの4倍であるので、4f光学系と定義することができ、X方向において、Ze1位置でと同一の像が、Ze2位置に等倍に結像される。本発明の1実施例では、予め計算された図9に示しているオフセット(Xd)と、電極11に与えられる電圧比数値(Vcenter/Vside)との関係条件によって、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の配置、オフセット量、および中心電圧(Vcenter1、Vcenter2)を設定して、前記の光学系を構成することができる。
【0072】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)では、第1の円筒状レンズ(CylL1)の前方へレンズの中心から距離がfcであるZe1位置において、荷電粒子ビームが入射される角度を制限する導入部アパーチャ(Entrance Aperture)が配置されることを特徴とする。図10に示しているように、Ze1において、近軸軌道(Xγ)は、中心軌道(axial ray)にフォーカスされているので、影響を受けることなく、近軸軌道(Xα)の入射角度を決定することができるというメリットがある。また、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)は、導入部アパーチャ(Entrance Aperture)の位置を、真空外部で調節する機能を有する微細調節部(adjustment)を備えることができる。
【0073】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)では、第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中央部であるZmに、入射される荷電粒子ビームのエネルギーを選択するエネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)が配置されることを特徴とする。図10に示しているように、Zmでは、荷電粒子ビームのエネルギー中で、他の中心軌道が互いに異なる位置を通過するエネルギー分散が発生するので、効率よくエネルギーを選択することができるという効果を奏する。図10においては、このような荷電粒子ビームの他の中心軌道をXkと示している。エネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)で制限しない軌道は、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方であるZe2において、中心軌道(axial ray)と平行に出射される。また、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)は、エネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)の位置を真空外部で調節する機能を有する微細調節部(adjustment)を備えることができる。
【0074】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)では、導入部アパーチャ(Entrance Aperture)の位置であるZe1において、更に前方にf1距離の位置であるZt1に第1の伝送レンズ(TL1)を、TL1から前方にf1距離の位置Zoにエミッター1を配置することを特徴とする。エミッター1の抽出電圧(extraction voltage)のエネルギーを考えて、第1の伝送レンズ(TL1)の条件を適切に設定する方式で、エミッター1から特定の角度をもって出射される荷電粒子ビームの軌道を中心軌道(axial ray)と平行に進行することができ、エミッター1から平行に出射された荷電粒子ビームの軌道を、Ze1で中心軌道(axial ray)にフォーカスさせることができる。このような条件は、第1の伝送レンズ(TL1)の焦点距離f1と一致する。このような条件は、Ze1位置の導入部アパーチャ(Entrance Aperture)の直径によって入射される荷電粒子ビームの電流の量を決めることができる。エミッター1から中心軌道(axial ray)に平行に出射される近軸軌道(Xγ)は、Ze1で中心軌道(axial ray)にフォーカスされるので、エミッター1の荷電粒子ビームの放出位置によって電流が制限されないので、より均一な荷電粒子ビームプロファイル(profile)を得ることができる。また、エミッター1のサイズや状態によって変わる抽出電圧(extraction voltage)の変動を、第1の伝送レンズ(TL1)を変化させることで、抽出電圧の変動を打ち消して、一定の焦点距離f1を維持することができるという効果がある。
【0075】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)では、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方で、レンズの中心から距離がfcであるZe2位置よりも後方に、f2の距離を有するZt2位置で、第2の伝送レンズ(TL2)を配置することを特徴とする。荷電粒子ビームに印加されるエネルギーによって、第2の伝送レンズ(TL2)の条件を適切に設定し、第2の伝送レンズ(TL2)の焦点距離をf2と定義する。第1の円筒状レンズ(CylL1)に平行に入射される近軸軌道(Xα)は、Zt2に位置した第2の伝送レンズ(TL2)の後方であるZi位置で、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる。Ze1位置で、中心軌道(axial ray)と特定の角度(γ)をもって出射されて、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方であるZe2位置で、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる近軸軌道(Xγ)は、第2の伝送レンズ(TL2)の位置であるZt2で中心軌道(axial ray)と平行になる。
【0076】
本発明の1実施例による光学系の構成により、第2の伝送レンズ(TL2)から後方への距離がf2であるZi位置で、エミッター1の像が結像される。X方向で2段の円筒状レンズである第1、2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)は、Ze1とZe2位置で等倍に結像されるので、ZoとZiの間の全ての倍率は、2つの伝送レンズ(TL1、TL2)の焦点距離の比であるf2/f1によって決められる。第1の伝送レンズ(TL1)及び第2の伝送レンズ(TL2)の焦点距離を一致させた場合、倍率は1となり、エミッター1の等倍像がZi位置に結像される。また、エネルギー選択アパーチャ(Energy Selection Aperture)で制限されないエネルギーの異なる近軸軌道(Xk)は、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方であるZe2位置で、中心軌道(axial ray)とほぼ平行に出射され、第2の伝送レンズ(TL2)によって、同位置であるZiで中心軌道(axial ray)にフォーカスされる。それで、このようなZi位置では、エネルギーが一致する收色性(Achromatic)の光源像を得られることになる。
【0077】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)において、2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)は、Y方向のフォーカシング作用をほとんど有さないことを特徴とする。図1に示しているような円筒状レンズの入口の矩状アパーチャ(Aperture)のY方向開口を、X方向開口の10倍以上に構成して、X方向にフォーカシング作用をし、Y方向にフォーカシング作用をしないように構成することができる。Y方向開口をX方向開口よりも大きく製作するほど、より効果的であり、上限は、製作可能な限度までである。
【0078】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)において、本発明は、2つの伝送レンズ(TL1、TL2)を軸対称レンズ(Axial symmetric lens)とすることを特徴とする。ここで、軸対称レンズは、X方向とY方向に同一の収束作用があり得る。
【0079】
伝送レンズの構成について、図11は、本発明の1実施例により、伝送レンズに用いられる磁場型軸対称レンズを示す模式図、図12は、本発明の1実施例により、伝送レンズに用いられる静電型軸対称レンズを示す模式図である。図11及び図12に示しているように、磁場(magnetic)型軸対称レンズ(axial symmetric lens)は、コイル32と、磁性材料であるヨーク31と、ポールピース34とからなり、ギャップ33から漏れた磁束によって、光軸に軸対称の磁場分布を作って、荷電粒子ビームをフォーカスする荷電粒子光学レンズである。また、静電型軸対称レンズは、3つの電極11間の絶縁材12からなり、光軸に軸対称の電場分布を作って、フォーカシング作用を得る荷電粒子光学レンズである。
【0080】
Y方向において、エミッターから特定の角度(β)をもって放出された荷電粒子ビームの軌道(近軸軌道、Yβ)は、第1の伝送レンズ(TL1)によって、中心軌道(axial ray)と平行に進行することになる。Y方向の荷電粒子ビーム軌道(近軸軌道、Yβ)は、2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)にほぼ影響されることなく、直進して後段の第2の伝送レンズ(TL2)で中心軌道(axial ray)と平行に入射され、第2の伝送レンズ(TL2)の軸対称レンズ作用によって、第2の伝送レンズ(TL2)の後方の焦点位置であるZi位置で、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる。
【0081】
本発明の1実施例による光学系の構成によると、荷電粒子ビームのX方向とY方向が、同一位置に収束される無数次(Stigmatic)の結像を得ることができる。エミッターの位置であるZoと最後方の像位置であるZiとの間で、荷電粒子ビームのY方向の近軸軌道は、中心軌道(axial ray)にフォーカスされることなく(0回フォーカシング)、前述したX方向の3回フォーカスされる近軸軌道と異なる軌道を有することになる。2段の円筒状レンズである第1、2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)で構成されたモノクロメータ(MC)内では、X方向だけ、中心軌道(axial ray)にフォーカスされる非点収差の結像となる。それで、本発明の1実施例によると、荷電粒子が1点にフォーカスされることができないため、電子-電子相互作用(Boersh効果、空間電荷効果)を緩和することに効果がある。また、本発明の1実施例によると、Y方向のレンズ作用が少ないため、Y方向に収差の影響が小さいというメリットがある。
【0082】
図10に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)において、本発明は、第2の円筒状レンズ(CylL2)の後方に位置する焦点位置であるZe2の前後に、2段の偏向装置(Deflector2)を設けることを特徴とする。円筒状レンズを介して出た近軸軌道(Xγ)を、平行移動(Shift)、角度補正(Tilt)して、近軸軌道(Xγ)を、後段の第2の伝送レンズ(TL2)と、その後段の光学系の中心軌道(axial ray)とに正確に一致させることができる。
【0083】
モノクロメータ(MC)の他の実施例
<実施例1>
図9及び図10に示しているように、本発明の他の実施例によるモノクロメータ(MC)では、第1の円筒状レンズ(CylL1)の前方焦点位置であるZe1の前後に、2段の偏向装置(Deflector1)を設けることを特徴とする。エミッターから第1の伝送レンズ(TL1)を介して出射された近軸軌道(Xγ)を、平行移動(Shift)、角度補正(Tilt)して、第1の伝送レンズ(TL1)の後方に位置した第1の円筒状レンズ(CylL1)の入射位置に、荷電粒子ビームの軌道を一致させることができる。例えば、時間経過による抽出電圧(extraction voltage)の上昇のようなエミッターの位置変化、使用条件の変化による軸ずれの微調整を可能とし、円筒状レンズのオフセットが変更する頻度を減少することができるという効果がある。
【0084】
<実施例2>
本発明の他の実施例によるモノクロメータ(MC)について、図13は、本発明の他の実施例によるモノクロメータを示す模式図である。図13に示しているように、本発明の他の実施例では、第1のマルチポール(Multipole 1)、第2のマルチポール(Multipole 2)の各位置に、対称に分割された電極又は磁極で構成されるマルチポールを直列に2つ配置することができる。このような第1のマルチポール(Multipole 1)と、第2のマルチポール(Multipole 2)とは、各極に対称に電磁場を加えて、幾何学的収差、色収差、及び機構的な誤差による寄生収差(parasitic aberration)を補正することを特徴とする。各マルチポール(Multipole)は、対称平面Zmに対称に電磁場が進行する荷電粒子ビームに加えて、最終の荷電粒子ビームへの影響を減らすことができる。このようなマルチポールは、前述した偏向装置と同様に利用可能である。
【0085】
<実施例3>
図13は、本発明の他の実施例によるモノクロメータを示す模式図であり、図14は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。図13及び図14に示しているように、本発明の他の実施例では、第1のマルチポール(Multipole 1)、第2のマルチポール(Multipole 2)の各位置に、対称的に4分割された電極(a)又は磁極(b)を直列に2つ使用可能である。本発明の他の実施例によるマルチポールは、各電極又は磁極が2回転対称(180度回転すると、同一形態となる)になるように、電磁場をかけて、従来の顕微鏡に用いられる四重極子(QuadruPole、 スティグマトール)を構成して、円筒状レンズで生じる非点収差、2次のミックス収差、又は機械精度による寄生収差を補正することを特徴とする。各四重極子は、対称平面Zmに対称に電磁場が進行する荷電粒子ビームに加えて、最終の荷電粒子ビームへの影響を減らすことができる。
【0086】
<実施例4>
図15は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。図13及び図15に示すように、本発明の他の実施例では、第1のマルチポール(Multipole 1)、第2のマルチポール(Multipole 2)の各位置に、対称に6分割電極、又は磁極を直列に2つ配置する。本発明の他の実施例によるマルチポールは、各極が3回転対称(120度回転すると、同一の形態となる)するように、電場又は磁場をかけて、六重極子(HexaPole)を構成し、エネルギー選択位置であるZmで、円筒状レンズを通過して生じる副次的なアパーチャ収差(α2)、1次の色収差(αk)を補正することになる。これより、本発明の他の実施例によると、電流をより大きく得る条件で、荷電粒子ビームの径を同一に維持して、同一のエネルギー分解能で、より大きい電流を得られる光学系が実現される。または、同じ電流条件で、荷電粒子ビーム径を縮小して、同一の電流量でエネルギー分解能を向上することができることになる。また、機械精度による寄生収差を補正することを特徴とする。各六重極子は、対称平面Zmに対して対称する電磁場を、進行する荷電粒子ビームに加えて、最終の荷電粒子ビームへの影響を減らすことができる。
【0087】
<実施例5>
図16は、本発明の他の実施例によるマルチポールを示す模式図である。図13及び図16に示すように、本発明の他の実施例では、第1のマルチポール(Multipole 1)及び第2のマルチポール(Multipole 2)の各位置に、対称に8分割した電極又は磁極を用いることができる。本発明の他の実施例によるマルチポールは、各極が4回転対称(90度回転すると、同一の形態となる)するように、電場又は磁場をかけて磁極して、八重極子(OctaPole)を構成し、エネルギー選択位置であるZmで、円筒状レンズを通過して生じられる3次アパーチャ収差(α3)を補正する。本発明の他の実施例によると、より大電流の条件で、同一の荷電粒子ビーム径を維持して、同一のエネルギー分解能で更に大きい電流を得られる光学系が実現される。又は、同一の電流条件で荷電粒子ビーム径を縮小して、同一の電流量でエネルギー分解能を向上することができることになる。各八重極子は、対称平面Zmに対して対称される電磁場を、進行する荷電粒子ビームに加えて、最終の荷電粒子ビームへの影響を減らすことができる。
【0088】
<実施例6>
本発明の他の実施例では、第1のマルチポール(Multipole 1)及び第2のマルチポール(Multipole 2)の各位置に、対称に12分割する電極又は磁極で構成される十二重極子を直列に2つ配置することができる。十二重極子は、前記の四重極子、六重極子、八重極子と同様に構成することができる。本発明の他の実施例によると、十二重極子において、エネルギー選択位置Zmで、円筒状レンズで生じる各収差を補正することができる。本発明の他の実施例によると、電流をより大きく得る条件で、荷電粒子ビーム径を同一に維持して、同一のエネルギー分解能で更に大電流を得られる光学系が実現される。または、同一の電流条件でビーム径を縮小して、同一の電流量でエネルギー分解能を向上することができるようになる。各十二重極子は、対称平面Zmに対して対称される電磁場を、進行する荷電粒子ビームに加えて、最終の荷電粒子ビームへの影響を減らすことができる。
【0089】
モノクロメータ(MC)を含む荷電粒子ビーム装置の構成例
図17は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図17に示しているように、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置は、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の下に、複数のコンデンサレンズ(CL)、対物レンズ(OL)のような光学系4を配置して、試料表面を観察するか、加工する。本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置には、エミッターとして電子ソースを用い、静電レンズ(electro-static)又は磁気レンズ(magnetic)を用いる走査電子顕微鏡(SEM)、また、エミッターとして、イオンソース(Ga、In、Au、Biなど)を用い、静電レンズを用いる収束イオンビーム装置(FIB)、エミッターとして、イオンソース(He、Ne、H2、Ar、O2など)を用い、静電レンズを用いるヘリウムイオン顕微鏡(HIM)などが含まれる。
【0090】
図18は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図18に示しているように、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置は、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の下に、照明光学系40、対物レンズOL、投影光学系42、スクリーン9、又は検出器5が配置され、透過された電子を用いて、試料を観察するか、加工する荷電粒子ビーム装置を含む。このような本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置は、エミッターとして、電子ソースを用い、磁気レンズを用いる透過電子顕微鏡(TEM)又は、エミッターとして、電子ソースを用い、磁気レンズを用いる走査透過電子顕微鏡(STEM)などが含まれる。
【0091】
図19は、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図19に示しているように、本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置は、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の最後方であるZiに結ぶ焦点を、下段のコンデンサレンズ(CL)によって、対物レンズ(OL)の物面に結像し、対物レンズ(OL)によって、試料6上に荷電粒子ビームを収束する荷電粒子ビーム装置を含むことができる。コンデンサレンズ(CL)は、複数のレンズからなる。本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置によると、荷電粒子ビームのエネルギー、光学系の収差によって決められる最適の開き角を、コンデンサレンズ(CL)、対物レンズ(OL)によって調整することができる。
【0092】
本発明の1実施例による荷電粒子ビームにおいて、他の光学系の構成は、従来のSEM、FIB、HIM、TEM、STEMの光学系構成と同様である。本発明の1実施例による荷電粒子ビームは、荷電粒子ビームを走査するスキャン(Scan)、荷電粒子ビームの非点を補正するスティグマトール(Stigmater)、荷電粒子ビームの光軸及び試料の位置を補正するアライメント(Alignment)、荷電粒子ビームを遮断するブランカー(Blanker)、レンズの二次電子/反射電子感知器、試料室内の二次電子検出器などの各種の検出器(Detector)などの光学要素が配置されうる。図18に示しているようなTEM、STEMでは、試料に電子ビームを照射する電流量、照射角度、照明領域を決定する照明光学系(Illumination Optics、40)、試料の像を拡大し、スクリーン9に投影する投影光学系(Projection Optics、42)が配置される。投影光学系(Projection Optics、42)により、倍率、視野、試料イメージ/回折イメージの切換え、散乱角度などの調整が可能となる。
【0093】
更に、試料の荷電粒子ビームに対する位置(X、Y、Z)、角度(Rotation、Tilt)を変更するためのステージ(Stage、60)、及び試料の移送システムも含まれる。また、荷電粒子は、真空環境が必要であるため、荷電粒子ビームは、金属真空チャンバ(vacuum chamber、7)により取り囲まれている。真空チャンバ7には、少なくとも1以上の真空ポンプ8が設けられる。通常、試料室内のターボポンプ、電子銃チャンバ、中間チャンバに、良い真空を得るため、複数のイオンポンプが配置される。また、電子銃チャンバ及び試料室を分けるゲートバルブと、試料入替用のロードロック室なども設けることができる。
【0094】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成を採択した荷電粒子光学装置は、エミッターのエネルギー拡散が狭いため、色収差の寄与が減少し、解像度が向上するという効果が得られる。
【0095】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を含み、試料表面を観察する荷電粒子ビーム装置は、試料表面から放出した二次電子のエネルギーを分析する電子線損失分光(EELS、20)の機能が含まれる。本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置によると、試料の局所的な組成、化学結合状態、電子状態、誘電関数、フォノン状態を分析することができる。
【0096】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を含み、透過した電子を用いて、試料を観察する荷電粒子ビーム装置は、透過された電子線のエネルギーを分光する電子線損失分光(EELS、20)機能が含まれてもよい。本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置によると、試料の局所的な組成、化学結合状態、電子状態、誘電関数、フォノン状態を分析することができる。
【0097】
前述した本発明の1実施例による荷電粒子ビーム装置がいずれも、電子線損失分光(EELS、20)を含む場合、一次荷電粒子ビームのエネルギー拡散が小さいため、エネルギー分解能の向上が期待される。
【0098】
<他の実施例1>
図20は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図20に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の第1の伝送レンズ(TL1)、第2の伝送レンズ(TL2)を、コンデンサレンズ、対物レンズなどとして用いる光学系は、特に、低い加速電圧で用いるSEM及びFIBに効果的である。本発明の他の実施例1によると、コラムでフォーカス地点を有さない光学系が実現可能であるため、空間電荷効果の影響を減らすことができる。また、本発明の他の実施例1によると、全体の光学要素を減らし、装備長さを小さくして、剛性を高め、耐振動性を向上することができる。この場合、第1の伝送レンズ(TL1)と第2の伝送レンズ(TL2)との焦点距離の割合が、f2/f1=0.05〜0.3となるように、エミッターを縮小して使用する。
【0099】
<他の実施例2>
図21は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図21に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を電子銃の高圧部分に統合すると、特に、荷電粒子ビームエネルギーが高い透過電子顕微鏡(TEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)のような荷電粒子ビーム装置に効果的である。Zi位置の後段に加速管50を配置して、60〜300KeVのTEM又はSTEMとして使用することができる。この場合、モノクロメータ(MC)の荷電粒子のエネルギーは、エミッターの抽出電圧(extraction voltage)で決められる3−5keV程度であり、後段の加速管50により印加される加速電圧は、100〜300keVに加速される。モノクロメータ(MC)のエネルギーが略一定であるため、モノクロメータ(MC)におけるエネルギー分解能も、一定となる。第1及び第2の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中心電極電圧と共に、偏向装置(Deflector2)の偏向電圧、アパーチャ微調整用ピエゾ(piezo)電源を加速電圧に重なって提供する必要がある。
【0100】
<他の実施例3>
図22は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図22に示しているように、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を接地基準で使用する荷電粒子ビーム装置が提供される。2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の電極間隔を10mmとした場合、中心電極には、60kV程度が印加され、加速電圧を60keVまで使用することができる。しかし、モノクロメータ(MC)におけるエネルギー分解能は、加速電圧に反比例するため、低い加速でモノクロメータ(MC)の性能が向上し、エネルギー幅の狭い荷電粒子ビームを得られる構造となる。偏向装置(Deflector2)の偏向電圧、アパーチャの微調整用ピエゾ電源は、接地基準となるので、電気系統の製作が容易となるメリットがある。一方、2段の円筒状レンズ(CylL1、CylL2)の中心電極電圧の出力を高電圧にする必要があるため、電源の高い安定性、低ノイズ化が求められる。
【0101】
<他の実施例4>
図23は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図23に示しているように、本発明の他の実施例では、第1の伝送レンズ(TL1)及び第2の伝送レンズ(TL2)にそれぞれ、2段の四重極子を用いることができる。四重極子は、図14に示しているような4分割された構造であり、荷電粒子ビームに対して、一方向は収束、他方向は、発散する作用を有する。Z方向に、このような四重極子を2段配置すると、X、Y方向に収束可能であり、X、Yの焦点距離を独立して設定することができる(f1x、f1y、f2x、f2y)。このため、円筒状レンズのY方向の細かいフォーカシング作用によるX、Y焦点距離の差を補正することができるとう効果が生じる。また、設定の自由度を高めるために、第1の伝送レンズ(TL1)及び第2の伝送レンズ(TL2)に、3段の四重極子を用いることもできる。
【0102】
<他の実施例5>
図23は、本発明の他の実施例による荷電粒子ビーム装置を示す模式図である。図23に示しているように、本発明の他の実施例においては、第1の伝送レンズ(TL1)及び第2の伝送レンズ(TL2)に、2段の円筒状レンズ(Cylindrical lens)を用いることができる。円筒状レンズは、図1に示しているように、一方向に収束作用を有する構造であり、2段に配置することで、X、Yの2方向に収束作用を有することが可能となり、X、Y焦点距離を独立して設定することができるようになる(f1x、f1y、f2x、f2y)。それで、円筒状レンズのY方向の細かいフォーカシング作用によるX、Y焦点距離の差を補正することができるという効果が生じる。
【0103】
<適用例>
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、走査電子顕微鏡(SEM)に効果的である。特に、半導体工程管理で用いられるCD-SEM、DR-SEMは、低い加速に主として用いられ、色収差の影響が大きいため、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を用いて、大きい性能向上が予想される。また、従来のSEMは、ほぼ一定の使用条件(加速電圧、電流)で用いられるため、光軸調整に時間がかかるという不都合があったが、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を適用すると、このような不都合が緩和される。
【0104】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、収束イオンビーム装置(FIB)に効果的である。イオンソースは、エネルギー幅が5eV以上に大きいため、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を搭載することで、色収差の寄与が減少することになる。それで、中間電流領域、低いエネルギー領域で性能向上が予想される。また、Wienフィルターとは異なり、本発明はいずれも、電場を用いる静電型であるため、イオンの同位元素による分離がなく、より効果的である。同様な理由で、エミッターにガスイオンを用いるヘリウムイオン顕微鏡(HIM)にも効果的である。
【0105】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、低い加速領域で用いられる透過型電子顕微鏡(TEM)、及び走査透過電子顕微鏡(STEM)に効果的である。TEMとSTEMの場合は、色収差の影響が大きいため、本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)を用いて、相当な性能向上が予想される。
【0106】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、SEMに電子線エネルギー損失スペクトロスコピー(EELS)の機能を設けた荷電粒子ビーム装置においても、一次電子ビームのエネルギー拡散が小さいため、エネルギー分解能の向上が予想される。また、試料表面に吸着ガス分子のフォノンなどの分光可能なSEM-EELS装置にも応用することができる。
【0107】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)の構成は、TEM、STEMに、電子線エネルギー損失スペクトロスコピー(EELS)機能を設けた荷電粒子ビーム装置においても、一次電子ビームのエネルギー拡散が小さいため、エネルギー分解能の向上が予想される。また、試料表面に吸着ガス分子のフォノン分光可能な(S)TEM-EELS装置にも応用することができる。
【0108】
本発明の1実施例によるモノクロメータ(MC)は、Wienフィルター型の静電偏向装置と比較して、減速のための低いエネルギー領域で電子-電子相互作用が増大する問題点が発生し得るが、電子と電子の相互作用は、モノクロメータ(MC)に荷電粒子ビームが入射される前に、アパーチャで使用電流を制限して、モノクロメータ(MC)での電流を減少することで、減縮することができる。
【0109】
以上で説明したように、本発明が属する技術の分野における通常の技術者は、本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施可能であることは理解されるだろう。それで、上述した実施例は、全ての面で例示に過ぎず、限定的なものではない。本発明の範囲は、詳細な説明よりも、後述する請求の範囲によって示され、請求の範囲の意味及び範囲、そして等価概念から導出される全ての変更・変形した形態が、本発明の範囲に含まれることと解されるべきである。
【符号の説明】
【0110】
1: エミッター
4: 光学系
5: 検出器
6: 試料
7: 真空チャンバ
8: 真空ポンプ
9: スクリーン
11: 電極
12: 絶縁材
20: 電子線損失分光(EELS)
31: ヨーク
32: コイル
33: ギャップ
34: ポールピース
40: 照明光学系
42: 投映光学系
50: 加速器
60: ステージ
X: 荷電粒子ビーム
Xd: オフセット
Xk: 他の中心軌道
Xα、Xγ: 近軸軌道
Yβ、Yδ: 近軸軌道
MC: モノクロメータ
TL1: 第1の伝送レンズ
TL2: 第2の伝送レンズ
CylL1: 第1の円筒状レンズ
CylL2: 第2の円筒状レンズ
OL: 対物レンズ
CL: コンデンサレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24