特許第5913727号(P5913727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913727自己展開アンカーを用いた椎体間脊椎補綴整形固定デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913727
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】自己展開アンカーを用いた椎体間脊椎補綴整形固定デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   A61F2/44
【請求項の数】25
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-501678(P2015-501678)
(86)(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公表番号】特表2015-510817(P2015-510817A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】US2013026689
(87)【国際公開番号】WO2013141990
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/756,707
(32)【優先日】2013年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/612,423
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514237840
【氏名又は名称】アミカス デザイン グループ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】リー、ランドール、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ、ダニエル、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ローク、アラン、ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤー、リチャード、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジグラー、ジャック、イー.
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0185289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて配置された第1および第2主要面と、主要面の間に延びる少なくとも一つの側壁と、を有する本体であって、前記第1主要面は脊椎の第1椎骨の端板と係合し、前記第2主要面は脊椎の隣接する第2椎骨の端板と係合し、前記第1および第2主要面は該主要面とほぼ垂直に延びる縦軸を画成する、第1および第2主要面と、
前記本体内から延び各開口部が前記第1および第2主要面のうちの一方で開口する少なくとも三つの開口部と、
各開口部内に配置され、近位端および遠位端を有するシャフトをそれぞれ備える固定要素と、
各固定要素の近位端と係合し、固定要素の主軸周りに前記固定要素を回転させることなく、該固定要素を前記開口部をそれぞれ通して前記第1椎骨または前記第2椎骨内に押し込むように動作する駆動機構と、
を備え、
前記駆動機構は、
駆動機構から延びる単一のねじ付きシャフトの近位端にありその縦軸を規定するヘッドと、
(i)駆動シャフトのねじ付きシャフトとねじ係合するねじ付き穴と、(ii)前記少なくとも一つの固定要素の近位端と係合し関節接合を許容する少なくとも一つの結合要素と、を有する平行移動要素と、
を有し、
前記関節接合は、二つ以上の回転軸での前記固定要素の近位端の移動を許容し、
前記駆動シャフトは前記本体内に縦軸方向で固定されているが回転可能であり、前記駆動シャフトの回転力によって、前記平行移動要素が(i)前記駆動シャフトの縦軸に沿って移動し、(ii)前記駆動シャフトの縦軸と平行に、前記固定要素の近位端をそれぞれ平行移動し、(iii)固定要素の主軸周りにいずれの固定要素をも回転させることなく、各固定要素が前記第1椎骨および第2椎骨の一方を突き刺すように、それぞれの開口部を通してそれぞれの固定要素を押し付ける
ことを特徴とする椎間補綴具。
【請求項2】
前記少なくとも一つの固定要素は、前記少なくとも一つの開口部を通して前記本体の縦軸を横切る方向で前記第1椎骨内に展開するように、少なくとも一つの開口部と少なくとも一つの固定要素が配向されていることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項3】
前記本体の縦軸を横切る方向は、(i)脊椎の前方方向と、(ii)脊椎の後方方向と、のうち一つに第1の実質的な方向成分を有することを特徴とする請求項2に記載の椎間補綴具。
【請求項4】
前記本体の縦軸を横切る方向は、脊椎の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分を有することを特徴とする請求項3に記載の椎間補綴具。
【請求項5】
少なくとも一つの固定要素はその遠位端に尖った先端を有することを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項6】
少なくとも一つの固定要素のシャフトが円孤状であることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項7】
前記少なくとも一つの固定要素の円弧状のシャフトは、(i)3mmから30mmの間、(ii)10mmから15mmの間、(iii)12mmのうち一つの曲率半径を有することを特徴とする請求項6に記載の椎間補綴具。
【請求項8】
少なくとも一つの固定要素のシャフトは、円滑、部分的または完全な同心環状、うねり付き、とげ付き、多辺の断面、四辺の断面、三辺の断面、曲線の断面、円形の断面のうちの一つであることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項9】
前記平行移動要素の前記少なくとも一つの結合要素がソケットを備え、
前記少なくとも一つの固定要素の近位端がボールを備え、
前記駆動シャフトの縦軸に沿った移動中に、前記平行移動要素が前記少なくとも一つの固定要素の近位端と係合して関節接合を許容するように、前記ボールが前記ソケット内に捕らわれることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項10】
(i)前記駆動シャフトのねじ付きシャフトとねじ係合するねじ付き穴と、(ii)少なくとも一つの固定要素の近位端と係合し関節接合を許容する少なくとも一つの結合要素と、を有する別の平行移動要素をさらに備える請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項11】
前記ねじ付きシャフトは、(i)第1方向にねじが切られた第1ねじ付き部と、(ii)第1方向と逆向きの第2方向にねじが切られた第2ねじ付き部と、を備え、
前記平行移動要素の前記ねじ付き穴は、前記駆動シャフトのねじ付きシャフトの第1部分とねじ係合し、
前記平行移動要素の前記ねじ付き穴は、前記駆動シャフトのねじ付きシャフトの第2部分と係合し、
前記駆動シャフト上の回転力が、(i)前記駆動シャフトの縦軸に沿って前記平行移動要素を第1方向に移動させ、同時に、(ii)前記駆動シャフトの縦軸に沿って前記別の平行移動要素を前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させ、固定要素の主軸周りに前記固定要素を回転させることなく、前記少なくとも一つの固定要素と前記少なくとも一つの別の固定要素を各開口部を通して押し込む
ことを特徴とする請求項10に記載の椎間補綴具。
【請求項12】
前記駆動シャフトは前記本体内で前後方向を向いており、デバイスのオペレータによって前記ヘッドに回転力を与えられるように、前記本体の外部で少なくとも前記ヘッドにアクセス可能であることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項13】
前記駆動シャフトは前記本体内で側方を向いており、デバイスのオペレータによって前記ヘッドに回転力を与えられるように、前記本体の外部で少なくとも前記ヘッドにアクセス可能であることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項14】
(i)前後方向、(ii)第1および第2側方方向のうちの一つで縦軸に沿って移動が生じるように前記平行移動要素が移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項15】
前記固定要素のそれぞれが前記開口部のうちの一つとそれぞれスライドして協働し、
前記固定要素は前記駆動機構とその近位端で係合し、固定要素の各主軸周りに前記固定要素のいずれも回転させることなく、前記固定要素を前記開口部を通して前記第1および第2椎骨内に押すように機能することを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項16】
前記駆動機構は、(i)本体の縦軸、(ii)脊椎、(iii)互いを横切る方向のいずれかで、前記本体から前記第1および第2椎骨の一方または他方へと前記固定要素のいずれかを展開するように動作することを特徴とする請求項15に記載の椎間補綴具。
【請求項17】
前記固定要素のうち第1固定要素の第1展開方向は、(i)前記本体の前後方向のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、を有し、
前記固定要素のうち第2固定要素の第2展開方向は、(i)前記本体の前後方向のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行かつ前記第1固定要素の第1展開方向の第2の実質的な方向成分とは逆向きである第2の実質的な方向成分と、を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の椎間補綴具。
【請求項18】
前記第1固定要素の第1展開方向は、(iii)前記本体の前後方向に対する側方方向における第3の実質的な方向成分を有し、
前記第2固定要素の第2展開方向は、(iii)前記本体の前後方向に対する側方方向であり前記第1固定要素の第1展開方向の第3の実質的な方向成分と平行である第3の実質的な方向成分と、を有する
ことを特徴とする請求項17に記載の椎間補綴具。
【請求項19】
前記固定要素のうち第3固定要素の第3展開方向は、(i)前記本体の前後方向のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、(iii)前記本体の前後方向に対する側方方向における第3の実質的な方向成分と、を有し、
前記第3展開方向の第1、第2、第3の実質的な方向成分のうち少なくとも二つは、前記第1および第2展開方向のうち少なくとも一つの第1、第2、第3の実質的な方向成分とほぼ逆向きである
ことを特徴とする請求項18に記載の椎間補綴具。
【請求項20】
前記固定要素のうち第4固定要素の第4展開方向は、(i)前記本体の前後方向のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、(iii)前記本体の前後方向に対する側方方向における第3の実質的な方向成分と、を有し、
前記第4展開方向の第1、第2、第3の実質的な方向成分のうち少なくとも二つは、前記第1、第2および第3展開方向のうち少なくとも一つの第1、第2、第3の実質的な方向成分とほぼ逆向きである
ことを特徴とする請求項19に記載の椎間補綴具。
【請求項21】
前記固定要素のうち第1固定要素の第1展開方向は、(i)前記本体の第1側方方向と、前記本体の第2の逆向きの側方方向と、のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、を有し、
前記固定要素のうち第2固定要素の第2展開方向は、(i)前記本体の第1側方方向と、前記本体の第2の逆向きの側方方向と、のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行かつ前記第1固定要素の第1展開方向の第2の実質的な方向成分とは逆向きである第2の実質的な方向成分と、を有する
ことを特徴とする請求項15に記載の椎間補綴具。
【請求項22】
前記固定要素のうち第3固定要素の第3展開方向は、(i)前記本体の第1側方方向と、前記本体の第2の逆向きの側方方向と、のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、を有し、
前記第3展開方向の第1および第2の実質的な方向成分のうち少なくとも一つは、前記第1および第2展開方向のうち少なくとも一つの第1および第2の実質的な方向成分のそれぞれとほぼ逆向きである
ことを特徴とする請求項21に記載の椎間補綴具。
【請求項23】
前記固定要素のうち第4固定要素の第4展開方向は、(i)前記本体の第1側方方向と、前記本体の第2の逆向きの側方方向と、のうちの一方における第1の実質的な方向成分と、(ii)前記本体の縦軸に平行な第2の実質的な方向成分と、を有し、
前記第4展開方向の第1および第2の実質的な方向成分のうち少なくとも一つは、前記第1、第2、第3展開方向のうち少なくとも二つの第1および第2の実質的な方向成分のそれぞれとほぼ逆向きである
ことを特徴とする請求項22に記載の椎間補綴具。
【請求項24】
前記本体の前記第1および第2主要面のうち少なくとも一つに配置される骨係合構造をさらに備え、
前記骨係合構造は、鋸歯状、突起、谷状、スパイク、ナーリング、キールのうち少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【請求項25】
前記本体の前記第1および第2主要面のうち少なくとも一つの間にこれらを通って延びる少なくとも一つの開口部であって、当該補綴具の前記本体と一つ以上の椎骨との間の骨の成長を許容する開口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の椎間補綴具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、損傷したまたは病気にかかった椎間板を除去した後、椎間空間(または空洞)に配置される椎間補綴具を使用して、脊椎障害を治療する装置および方法に関する。しかしながら、本明細書で使用されるこの装置および方法の様々な整形外科的実施形態は、人間の骨格の至る所に移植される固定ケージの発明の基本概念を構成している。
【背景技術】
【0002】
大人のヒトの脊柱の骨および結合組織は、三関節複合体(tri-joint complex)によって互いに連続的に結合された33個を超える別々の骨で構成される。各三関節複合体は、前方の円板と二つの後方の椎間関節とを含む。隣接する骨の間の前方空間には、椎間板と呼ばれる軟骨スペーサによって緩衝されている。これらの骨の脊柱の名称は、4つの分類のうちの一つの部位、すなわち、頸椎、胸椎、腰椎または仙椎として解剖学上分類されている。脊椎の頸部は、脊椎の最上部であり、頭蓋骨の基部から最初の7個の椎骨を含む。中間の12個の骨が胸椎であり、5個の椎骨からなる腰椎に接続する。脊椎の基部は仙骨(尾骨を含む)である。頸椎の構成骨は、胸椎の構成骨よりも一般に小さく、胸椎の構成骨は腰椎の構成骨よりも小さい。腰椎領域は骨盤に接続する。
【0003】
脊柱は、これらの骨の全てと互いに結合された粘弾性構造とを有し、無数の末梢神経と循環系本体とを近接して有する神経系の重要要素を収容し保護するという点で、極めて複雑である。これらの条件に関わらず、脊椎は、ほぼ全ての方向への高度な屈曲および回旋が可能な高度に柔軟な構造体である。
【0004】
遺伝的または発達上の異常、外傷、慢性ストレス、腫瘍および退行性の摩耗は、外科的侵襲が必要となる脊椎の病変が生じる可能性があるいくつかの要因である。脊柱内にまたは脊柱上に人工アセンブリを移植することによって、隣接する骨の固定および/または融合を達成する様々なシステムが本分野で開示されている。固定する必要がある背中の領域と解剖的な個体変異が、適切な手術的プロトコルおよび移植アセンブリを決定する。脊椎手術コミュニティは、最新技術の一部として椎間デバイス(椎体間スペーサおよび同種移植として一般に知られている)を受け入れており、潰れた椎間板空間の再構築にこのようなデバイスを日常的に使用している。
【0005】
外科医はこれらの椎間デバイスを挿入し、隣接する椎骨間におよび椎骨内での骨の融合を補助的に促進する。この融合は新たな固体骨質量を作成する。これは、適切な生体力学的に回復した高さで脊椎部分を保持するとともに、患者が痛みを感じている脊椎の部分の動きを止める働きをする。これらの椎体間領域内に外科的に配置されるアイテムは、椎間骨の増殖を刺激し、手術された前方脊椎部分が治癒して隣接する骨質量になる。言い換えると、融合が生じる。さらに、外科医のコミュニティは、このような人工インプラントまたは生物学的な選択肢を使用して、隣接する椎体間に体重を負担する支持を与え、これによって様々な機械的に関連する臨床上の問題を矯正しまたは緩和する。この点において、外科医は、変性椎間板疾患(DDD)、椎間板由来の背下部の痛み、脊椎すべり症、腫瘍または感染症手術の後の再建、および外科的侵襲を必要とする他の脊椎関連の病気を外科的に治療するために、椎間脊椎インプラント/トランスプラントを使用する。
【0006】
多くのインプラント設計では、金属、セラミック、プラスチック、または炭素繊維強化ポリマーなどの選択された生体適合性のある材料から、比較的固いまたは頑丈なインプラント構造が形成される。このインプラント構造は、部分的に開口するか多孔構造を有していることが多く、また、患者から供給される骨移植片、組織バンクによって供給される人間のドナーの同種移植骨トランスプラント材料、遺伝的に培養された骨成長タンパク質代用物質、および/または他の生物学的/生化学的骨延長器などの、選択された骨増殖強化物質でコーティングされるか部分的に充填されている。このようなデバイスは、椎間空間内に移植されると、血液供給の増殖を促進し、活性化し、隣接する椎骨から骨を作り、インプラントと相互に接合する。これによって、最終的には隣接する椎骨を固定または融合する。このようなインプラントは通常、リブ付きまたは鋸歯状の表面などのパターン付きの外面またはねじ溝形状を有しており、骨の成長/融合過程の間の隣接する椎骨との機械的な係合を強化している。
【0007】
椎間板の障害に対して、脊椎の前面に移植可能であるため、椎体間融合ケージがかなりの関心を集めてきた。円筒形の椎体板状ケージは、一般に、雄ねじを表面に有するチューブ状の金属本体を備える。これらは、隣接する椎体の接合部に予め形成された円筒穴内に、脊椎の軸を横切るように挿入される。ケージは、隣接する骨がそこを通って成長する穴を有している。例えば自家骨移植材料である追加の材料をケージの中空の内部に挿入し、ケージ内の骨の成長を刺激または加速してもよい。
【0008】
従来の椎間板ケージは、一般に、プラスチック、炭素繊維、金属またはヒト組織で作成され、十分に準備された平坦な椎体端板構造と結合するように設計された上面および下面を有する、椎間板形状を模倣した形状のデバイスを備えている。これらのケージは、完全に殻が除かれた椎間板空間内の脊椎の軸と横方向に結合するように設計されている。ケージの形状は、中空の椎間板空間を正確に反映している。ケージは、上端板および下端板が骨柱を形成し固定する脊椎軸と整列する少なくとも一つの大きな移植穴を有している。典型的に、これらの穴には、様々な移植片、移植強化材、骨生成材、または骨代替材が詰め込まれている。
【0009】
加えて、脊椎手術コミュニティは、スタンドアロン支持(すなわち、前板およびねじ、または後部に配置された経椎弓根(transpedicular)ねじおよびロッド、または小関節を通して配置されるねじなどの追加構造からの補助的な支持がない)椎体間固定デバイスとして機能する、統合されたねじを持ついくつかの市販のケージを作成した。これらのデバイスは、Stalif(商標)、SynFix(商標)、およびVerteBridge(商標)を含む。Stalif(商標)は、腰椎固定用のデバイスである。椎体に入り込むデバイスの予めドリルで空けられた穴を通過する収束ねじを用いてインプラントが挿入され固定される。デバイスの穴の中にねじが手動で配置され、外科的なねじ回しなどの適切な工具を用いてねじが駆動される。Stalif(商標)は、Centinel Spine社(www.centinelspine.com)から市販されている。SynFix(商標)は、椎体内へとデバイスを通過する分岐ねじを用いて椎間空間内に配置されるデバイスである。デバイスの穴の中にねじが手動で配置され、外科的なねじ回しを用いてねじが駆動される。SynFix(商標)はSynthes社(1302 Wrights Lane East, West Chester, PA 19380 (www.synthes.com))から市販されている。VerteBridge(商標)は、デバイス内の穴を通して各椎体内に(特殊な工具を用いて)固定ブレードが押圧駆動されデバイスが適所に固定される、脊椎を固定するためのデバイスである。VerteBridge(商標)は、LDR Spine社(www.ldrholding.com)から市販されている。
【0010】
上述したデバイスは全て、最初のデバイスに加えて二次的であるアンカーを有している。Stalif(商標)デバイスおよびSynFix(商標)デバイスはねじを採用するのに対し、VerteBridge(商標)はブレードアンカーを利用する。Stalif(商標)デバイスおよびSynFix(商標)デバイスは両方とも、(特に、L4−L5−S1の椎間板空間において)所与の普通のヒトの解剖学的構造を実現するには困難である軌道で挿入されるねじを必要とする。加えて、ねじの近位端が前方に突出しているので、大血管および小血管に潜在的な刺激および浸食を与え、ねじが盲目的に接近されてそのホーム/掛止位置に固定されると、悪意のない障害を通して尿管や周囲組織に刺激および浸食を与える可能性がある。
【0011】
VerteBridge(商標)は、最初のデバイスが適所に置かれた後に挿入される一組のブレードを有する。ブレードは、デバイス内で曲線となるよう十分に屈曲し、かつ骨を切り開くのに十分な強度を備えている。これらのブレードは、屈曲性があるものの、通常の生理学的条件下で、またある程度の超生理的な条件下で、動きの全平面において椎体を適所に保持する能力がある必要がある。実際には、これらの特徴が常に実現されるわけではない。
【0012】
デバイスを椎間空間内に配置した後に展開される内蔵型(self-contained)の固定要素を採用する多数のデバイスが開発されてきた。例えば、米国特許出願公報第2006/0241621号(全体が本明細書に援用される)は、自己ドリル式ねじ装置を用いて椎間部材を接合するデバイスを開示している。ねじ装置は、外殻と、テーパー状端部を有し外殻内に配置されるねじ付き本体を有する第1および第2ねじ部材と、を備える。駆動機構は、正確に同軸で反対向きにシェルから第1および第2ねじ部材を回転駆動する。これによりねじ部材が自身を椎体内に埋め込む。米国特許第5,800,550号(全体が本明細書に援用される)は、自己展開する一組のポストを使用して椎間部材を互いに接合するデバイスを開示する。この装置は、本体と、本体内に配置された第1および第2ポスト部材と、を備える。駆動機構は、正確に同軸で反対向きに(脊椎と縦方向に整列して)本体から第1および第2ポストを押圧駆動する。これによりポストが自身を椎体内に埋め込む。これらのデバイスに伴う問題点は、ねじ/ポストの同軸で反対向きの展開は、椎間デバイスを固定する理想的な構成であるとは言えないことである。事実、このような展開をすると、患者の解剖学的な脊椎構造体からデバイスに係る自然な応力のために、展開中または展開後のデバイスのすべりを許容してしまう。
【0013】
別の手法が米国特許出願公報第2010/0161057号に開示されている。この開示の全体が本明細書に援用される。この後方は、縦軸に対して横方向に延びる一つまたは複数の開口部を有する本体を備える椎間補綴具を開示する。開口部内に配置された各固定要素はねじ付きであり、歯車上の駆動回転力に応答して展開する。固定要素のねじ付きシャフトに隣接して歯車が配置されねじ付きシャフトと噛合しており、歯車が回転すると固定要素に回転トルクが生じるようになっている。歯車上の駆動回転力によって固定要素が回転し、本体から展開し、患者の脊椎の椎骨内にねじ込まれる
【0014】
当分野における進歩にも関わらず、回転、引き、押しの駆動力に応答して展開する内臓型固定部材を備える新規な椎間デバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の実施形態は、前方腰椎椎体間固定術(ALIF)デバイス、経椎間孔腰椎椎体固定術(TLIF)デバイス、後方腰椎椎体間固定術(PLIF)デバイス、または遠前方側部椎間固定術(FALIF)デバイスの一般スタイルで設計することができる、スタンドアロン型の椎体間デバイスである。加えて、本明細書で開示される基本実施形態の大きさおよび/または形状を、脊椎の様々なレベル、すなわち頸椎、胸椎および腰椎で使用するように当業者によって適合させることができる。このように、本明細書の様々な実施形態は、腰椎に対する例示として説明されているが、このような開示は、脊椎の他のレベルに対しても等しく適用される。
【0016】
上記デバイスは、PEKK、PEKEK、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む多数の生体適合性のある移植可能なポリマーや、好ましくはチタン、セラミックなどを含むがこれらに限定されない任意の様々な構造生体適合材で作成される本体を備える。本体外面は、鋸歯状の上面および/または下面を含む様々な表面テクスチャ、表面コーティングおよび表面形状を有し、移動に対する初期抵抗を与えてもよい。加えて、自家移植片、骨形成タンパク質(BMP)、骨髄穿刺液/コンクリートなどの移植材料のファミリーを含む目的で、上面から下面に延びる少なくとも一つの開口部が存在してもよい。
【0017】
本体は、少なくとも一つのアンカーを中に含む。アンカーは、関連する開口部を通して駆動機構によってデバイスの本体から展開されてもよい。少なくとも一つのアンカーが、デバイスに隣接する椎骨を突き刺し、デバイスを適所に固定する。
【0018】
一つまたは複数の実施形態にしたがって、補綴具は、脊椎の第1椎骨の端板と係合する第1主要面と、脊椎の隣接する第2椎骨の端板と係合する第2主要面と、を有する本体と、本体内から延び第1主要面で開口する少なくとも一つの開口部と、開口部内に配置され、近位端および遠位端を有するシャフトを備える少なくとも一つの固定要素と、少なくとも一つの固定要素の近位端と係合し、固定要素自体の全長を規定する軸(すなわち、固定要素の主軸)周りに少なくとも一つの固定要素を回転させることなく、少なくとも一つの開口部を通して少なくとも一つの固定要素を第1椎骨内に押し込むように動作する駆動機構と、を備える。
【0019】
本発明の実施形態の利点の一つは、デバイスを容易に使用できることである。デバイスを椎間空間内に挿入するのと同一のツールを使用して、少なくとも一つ(好ましくは全て)のアンカーをデバイスの本体から展開することができるので、従来のデバイスと比較してステップ数が少なくなる。さらに、アンカーは内蔵型なので、従前のデバイスのようにねじを配置し締めるために必要となる困難な軌道が存在しない。
【0020】
当業者であれば、本発明の好適な実施形態の説明を添付の図面とともに捉えることで、他の態様、特徴、利点等が明らかになるだろう。
【0021】
本発明の様々な態様を図解する目的で、好適である形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図示の正確な構成および手段に限定されないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の一つまたは複数の実施形態にしたがった椎間補綴デバイスの斜視図である。
図1B図1Aの椎間デバイスの側面(側部)図である。
図1C図1Aの椎間デバイスの前部立面図である。
図2】使用時の図1の椎間デバイスを示す図である。
図3A】椎間補綴デバイスの内部構造の一例を示す、図1Aの椎間補綴デバイスの部分投資側面斜視図である。
図3B】展開されたアンカーおよび展開方向の模式図を示す、図3Aの椎間補綴デバイスの側方立面図である。
図3C図3Aの椎間補綴デバイスの固定要素の方向成分の模式的な3次元直交座標図である。
図4】代替的な展開方向と展開された代替的な固定要素とを持つ椎間補綴デバイスの後部斜視図である。
図5A】椎間補綴デバイスの本体外側に示される固定要素と協働する駆動機構部品の斜視図である。
図5B図5Aの駆動機構の変換要素の斜視図である。
図5C図5Aの駆動機構に係合しない状態の固定要素の斜視図である。
図6】デバイスから固定要素を展開するための代替駆動機構を示す図である。
図7】(固定要素が展開された)代替的な特徴を持つ椎間補綴デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一つまたは複数の実施形態にしたがった椎間補綴デバイス100を示す図1A、1B、1Cを参照する。図1Aは、椎間デバイス100の斜視図を示す。図1Bは、図の左側が正面(前部)方向であり図の右側が背面(後部)方向である側面(側部)図である。図1Cは椎間デバイス100の前部立面図である。
【0024】
デバイスの本体は、PEKK、PEKEK、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む多数の生体適合性のある移植可能なポリマーや、好ましくはチタン、セラミックなどである任意の生体適合性材料で作成することができる。
【0025】
使用時のデバイス100を示す図2をさらに参照して、デバイス100は、一般に、人の脊椎の隣接する椎骨10、20間の椎間空間に適合する大きさおよび形状にされた本体(またはハウジング)を備えている。デバイス100の大きさおよび形状は、頸椎、胸椎、腰椎などのあらゆるレベルの脊椎における椎間空間に適合するように構成されてもよい。本実施例で図解する椎間デバイス100は、スタンドアロンデバイス(例えば、別個の固定デバイスを必要としない)であるように設計されており、前方向から椎間空間に挿入される。本実施形態は、ALIFデバイスの一般形であるが、本明細書の記載から明らかとなるように、脊椎の任意のレベルで使用される、TLIFデバイス、遠前方側部椎体間(far anterior lateral interbody)デバイス、PLIFデバイスとして動作するように、このデバイスを適合することができる。後者の場合、前方以外の方向から椎間空間にデバイスを導入することができる。
【0026】
本体は、第1および第2の間隔を空けた主要面102、104と、これらの間に延びる少なくとも一つの側壁106、108と、を備える。ALIFの実施形態では、側壁106、108は、それぞれ前方および後方を向いていてもよい。デバイス100の本体の所与の一般的な形状では、側壁はさらに側壁を備えるか、または側方(内側)方向を通常は向く部分を備える。第1主要面102は、脊椎の第1椎骨10の端板と係合し、第2主要面104は、脊椎の隣接する椎骨20の端板と係合する。図1Bおよび2に最も良く現れているように、第1および第2主要面102、104は、前記面にほぼ垂直に延びるか、脊椎の長手方向と同軸またはほぼ平行に延びる縦軸Loを画成する。図1B、1Cを参照して、縦軸Loは第1および第2主要面102、104と正確には垂直ではないことが理解される。なぜなら、側壁106から側壁108まで、本体にわずかに狭くなる高さ(テーパー)が存在するからである。このテーパーは、隣接する椎骨10、20の間の自然な解剖学的関係に適応し、脊椎の通常の前弯性の湾曲を維持する。
【0027】
デバイス100を移植する外科医は、椎間空間から椎間板材料を除去し、椎間板空間の周囲の収縮した柔らかい組織を解放し、椎間板空間の高さを機械的に回復するために隣接する椎骨10、20をある程度引き離し、脊椎の解剖軸を再調整し、特定のレベルで脊椎の後側から出る神経根を間接的に除圧する。外科医が椎間板材料を除去した後、デバイス100をその中に配置するきれいな開口(空間)が実現される。外科医は、デバイス100の本体を同時に掴み、椎間空間の口にデバイスを配置し、デバイス100が最終的に配置されるように力を加えるツールを使用してもよい。
【0028】
椎骨10、20の端板とデバイス100の間の望ましい機械的インタフェースを容易にするために、本体の第1および第2主要面102、104の一方または両方が、鋸歯状、突起、谷状、スパイク、ナーリング(knurling)、キールなど(図示せず)のうち少なくとも一つの骨係合構造を備えている。代替的にまたは追加して、椎間補綴具100は、補綴具100と一つまたは複数の椎骨10、20の間の高密度の骨の成長を許容するように機能する、本体の第1および第2主要面102、104のうち少なくとも一つの間におよびこれらを通して延びる一つまたは複数の開口110を備えてもよい。
【0029】
図2に示すように、椎間空間内の適切な向きへと外科医がデバイス100を操作すると、本体の内部から一つまたは複数の固定要素120A、120Bが展開されて、椎骨10、20のうち一つまたは複数と係合する。特に、より詳細に後述するように、固定要素自体の全長によって画成される主軸周りに固定要素が回転することなく、一つまたは複数の固定要素120A、120Bが本体から第1椎骨内に押し出される。例えば、一つまたは複数の固定要素120A、120Bの展開は、椎骨10、20内への固定要素の通り抜けによって達成されるわけではない。本明細書でより詳細に説明するように、固定要素120A、120Bは、本体および脊椎の縦軸Loを横切る方向で本体から椎骨10、20内へと展開する。
【0030】
続いて図1A、1B、1C、3Aを参照する。図3Aは、椎間補綴デバイスの内部構造の一例を示す、図1Aの椎間補綴デバイスの部分透視側面斜視図である。デバイスの本体は、縦軸Loに対して横切る方向に本体内から延び第1主要面102で開口する少なくとも一つの第1開口部122Aを備えている。好ましくは4つのこのような開口部122A、122B、122C、122Dである、複数の開口部が存在することが好ましい。
【0031】
第1固定要素120Aを展開すると、本体および脊椎の縦軸Loを横切る方向で本体から出て所与の椎骨内に入る軌道になるように、第1固定要素120Aが第1開口部122A内に配置される。好ましくは、各固定要素120を展開すると、本体および脊椎の縦軸Loを横切る方向で本体から出る軌道になるように、各固定要素120A、120B、120C、120Dが開口部122A、122B、122C、122D内にそれぞれ配置される。
【0032】
好ましくは、各固定要素120A、120B、120C、120Dは、近位端および遠位端124Aを有するシャフトの形態である。各固定要素120は、遠位端124Aに、近位端での押す力に反応して椎骨本体への進入を容易にするための鋭い先端を備えていてもよい。
【0033】
図3Aには正方形の断面で示されているが、各固定要素120は、以下のうちの一つなどの、任意の適切な形状を有してもよい。すなわち、円滑、部分的または完全な同心環状、うねり付き、とげ付き、多辺の断面、四辺の断面、三辺の断面、曲線の断面、円形の断面。関連する開口部122は、展開中に固定要素120がそこを通ってスライドし移動することを可能にする滑らかな壁によって特徴付けられる。開口部122の断面は、そのようなスライドを許容する任意の適切な形状であってよいが、固定要素120の断面の相補的な形状であることが望ましい。同心環形状は、その実質的な保持力およびバックアウト強度のため、好ましい実施形態である。
【0034】
特に、各固定要素120のシャフトは、その全長に沿った円弧状である。円弧は、展開中の椎骨内への固定要素120の移動および進入をより容易にする。適用の緊急性に応じて、固定要素120の一部または全てが円弧状または直線状のシャフトを有していてもよい。円弧状の場合、その曲率半径は好適には約3mmから約30mmの間であり、約10−15mmが好ましく、腰椎で使用する場合は約12mmが最も好ましい。曲率半径の測定は、アンカー120の支点から最も遠い(外側の)縁までである。
【0035】
上述のように、一つまたは複数の開口部122A、122B、122C、122Dは、縦軸Loに対して横方向に本体内に延び、それぞれ第1および第2主要面102、104の一方または他方で開口する。この意味で、開口部は、アンカー120をそれらの目的地に案内し、各アンカー120の適切な展開方向を確保するために、本体を通って延びる管路とみなすこともできる。所与のアンカー120が直線状であるとき、関連する開口部/管路122も好ましくは直線状である。所与のアンカー120が円弧状であるとき、関連する開口部/管路122も好ましくは円弧状である。円弧状の場合、開口部/管路122の曲率半径は、スライドおよび案内機能を許容する任意の適切な大きさであってよい。しかしながら、関連する固定要素120の曲率半径と比較して、相補的な曲率半径(正確に同じである必要はない)が望ましい。
【0036】
図3Bを参照して、固定要素120の各軌道Ltは、椎間空間内のデバイス100の所望の固定を実現し、後の使用中の移動を避けるために重要である。この点において、第1開口部122Aの大きさ、形状および向き、ひいては第1開口部からの第1固定要素120Aの展開方向Lt1は、本体の縦軸Loを横切る。一般に、固定要素120iが直線状であるとき、展開方向は、アンカーシャフトの直線縦軸に沿っているみなすことができる。固定要素120iが円弧状であるとき、展開方向を規定するいくつかの選択肢が存在する。
【0037】
第1に、簡単のために、固定要素120iが円弧状であり円弧を通って展開するとしても、それにもかかわらず、2次元または3次元座標系内の直線成分ベクトルの観点で展開方向Ltiが規定される。第2に、展開方向Ltiは、対応する円弧状の固定要素120iと関連する成分ベクトルの直線合成ベクトルとして規定される。このような関連付けを規定する一つの選択肢は、円弧状の固定要素120iに沿った一つの点で直線合成ベクトルが開始し、固定要素120iに沿った少なくとも一つの他の点で直線合成ベクトルが通過すると仮定することである。例えば、合成ベクトルが固定要素120iの近位端で開始し、固定要素120iの先端などの別の点を通過してもよい。代替的に、合成ベクトルは、固定要素120iに沿った中間のどこかで開始し、固定要素120iの先端を通過してもよい。別の例は、固定要素120iの近位極または遠位極のいずれでもない2点を使用することである。さらなる代替例では、規定される関連付けは、直線合成ベクトルが固定要素120iに沿った2以上の点を通過せず、円弧状の固定要素120iに沿った単一の点の接線であると規定することである。
【0038】
実施例を図解するため、第1展開方向Lt1を表す直線合成ベクトルが第1固定要素120Aの近位端またはその近傍で開始し、中間点を通過すると仮定する。第1展開方向Lt1は、本体の(側壁106に向かう)前方方向に第1の実質的な方向成分Laを有している。展開方向Lt1は、脊椎の縦軸Loに平行な第2の実質的な方向成分Lpを有している。これらの前方および縦方向における軌道成分Lt=La+Lpは、展開が脊椎の縦方向で完全に行われる特定の従来技術に対して顕著に異なる。特定の従来技術とのさらなる相違点は、固定要素(単数または複数)120をその軸周りに回転させることなく、固定要素(単数または複数)120が本体から椎骨内へと押し出されることである。例えば、固定要素(単数または複数)120の展開が、椎骨10、20内に固定要素(単数または複数)をねじ込むことによって達成されるわけではない。さらに、固定要素(単数または複数)の展開が、ヒンジ端周りの単なる回転によって達成されるわけでもない。事実、本明細書でさらに後述するように、展開中に椎間補綴具100内に留まる固定要素(単数または複数)120の端部は、展開中に実際には平行移動する。
【0039】
第2開口部122Bの大きさ、形状および向き、ひいては第2開口部からの第2固定要素120Bの展開方向Lt2も、本体の縦軸Loを横切る。より詳細には、展開方向Lt2は、前方方向の第1の実質的な方向成分Laと、本体の縦軸Loと平行でありかつ第1固定要素120Aの展開方向Lt1の第2の実質的な方向成分Lpとは逆向きである第2の実質的な方向成分−Lpと、を含む。
【0040】
図3Bに詳細には示していないが、第3および第4固定要素120C、120Dの展開方向Lt3、Lt4に対して同様の特性および比較をなすことができる。
【0041】
次に図3Cを参照する。図3Cは、図3Aの椎間補綴デバイスの第3および第4固定要素120C、120Dの展開方向Lt3、Lt4の方向成分の模式的な3次元図である。第3固定要素120Cの第3展開方向Lt3は、(i)本体の前方および後方方向のうち一つの第1の実質的な方向成分(この例ではLa)、(ii)本体の縦軸Loと平行な第2の実質的な方向成分Lp、および(iii)本体の前後方向に対する横方向における第3の実質的な方向成分Llを含む。
【0042】
同様に、第4固定要素120Dの第4展開方向Lt4は、(i)本体の前方および後方方向のうち一つの第1の実質的な方向成分(この例ではLa)、(ii)本体の縦軸と平行な第2の実質的な方向成分Lp(しかし、第3展開方向Lt3のLpとは逆向き)、および(iii)本体の前後方向に対する横方向における第3の実質的な方向成分Ll(第3展開方向Lt3の第3の実質的な方向成分Llと平行)を含む。
【0043】
図1C、3A、3Bを参照して、一つまたは複数の実施形態では、展開方向Lt1、Lt2は横方向成分Llを含む。特に、展開方向Lt1、Lt2のそれぞれの横方向成分Ll(上記の実施例で第3の実質的な方向成分として参照された)は、同一方向であるが、展開方向Lt3、Lt4の横方向成分Llとは逆向きである。より一般的には、第3または第4展開方向Lt3、Lt4のいずれかの第1、第2、第3の実質的な方向成分のうち少なくとも二つは、第1および第2展開方向Lt1、Lt2のうちの少なくとも一つの第1、第2、第3の実質的な方向成分とはほぼ逆向きとなり、その逆も成り立つ。
【0044】
図1C、3Aを参照すると、各展開方向Lt1、Lt2、Lt3、Lt4のベクトル成分の上述した関係が、展開の集合の興味深い特性を明らかにすることに注意する。具体的には、一部の実施形態では、展開の集合は、(i)(円弧状または直線状に関わらず)展開の実際の経路の全てが交差する原点、および(ii)原点からの径方向の広がりによって特徴付けられる。径方向の広がりの特徴は、それぞれの経路の全てが同一平面内に存在するわけではないことを含む。
【0045】
一般に、第1および第2固定要素120A、120Bは、約40°よりも大きい円弧角で互いに異なる方向に展開する。同様に、第3および第4固定要素120C、120Dは、約40°よりも大きい円弧角で互いに異なる方向に展開する。
【0046】
椎間空間内のデバイス100の固定特性は、任意の数の個々の固定要素120の追加または削除によって調節することができる。実際、上述したように、頸椎、胸椎および/または腰椎で使用するために、基本デバイス100の大きさおよび/または形状を適合させることができ、個々の固定要素120の数も同じように調節することができる。例えば、胸椎および/または腰椎の場合よりも、頸椎では、より少数の固定要素120が望ましいこともある。加えて、脊椎の様々なレベルで見られる特定の物理的な骨形状に最も適合するように、個々の固定要素120の特定の展開方向を調節することができる。
【0047】
図1A−3Bのデバイス100などの一つまたは複数の実施形態では、固定要素120A、120Bの第1の組を本体の一つの側面に配置し、(同様の構造を持つ)固定要素120C、120Dの第2の組を、本体のもう一方の反対側の側面に配置してもよい。この実施形態では、固定要素120はそれぞれ、(後方方向とは逆向きの)前方方向Laに実質的な成分を有する展開軌道を持つ。
【0048】
上記の実施例は、Lt1、Lt2、Lt3、Lt4の方向成分の第3横方向成分Llが全て外側を向いているデバイスを開示している。しかしながら、関連する開口部の適切な向け直しによって、横方向成分Llのうちの一つまたは全てが内側を向いてもよいことに注意する。
【0049】
次に図4を参照する。図4は、椎間補綴デバイス100と比較して代替的な展開構造を持つ椎間補綴デバイス100Aの後方斜視図である。椎間補綴デバイス100Aのこの図では、固定要素が展開状態となっている。デバイス100Aの固定構造は、本体の両側面に配置された、固定要素120A、120Bの第1組と固定要素120C、120Dの第2組とを含む。デバイス100との顕著な違いは、椎間補綴デバイス100Aの固定要素120はそれぞれ、後方方向(すなわち、−La方向)に実質的な成分を有する展開軌道を持つことである。これは、デバイス100内の固定要素120の展開とは本質的に逆向きである。
【0050】
次に、椎間補綴デバイス100(または100A)の追加細部を示す図5A、5B、5Cを参照する。図5Aは、4つの固定要素120と協働する、駆動機構200の主部品の斜視図である。図5Aに示す斜視図は、図3Aに示した駆動機構200の可視の部品と比較して、反対側の視点からのものである。
【0051】
中心では、駆動機構200は、固定要素120の一つまたは複数(好ましくは全て)の近位端と係合し、それぞれの開口部122を通して椎骨内に固定要素120を押すように動作する。これは、固定要素の縦軸に沿って固定要素120のいずれも回転することなく達成される。特に、複数の固定要素120が採用される場合、駆動機構200は、全ての固定要素120を同時に、同一速度で実質的に同一の平行移動力で展開することが好ましい。
【0052】
駆動機構200は、近位端のヘッド204と、そこから延びるねじ付きシャフト206と、を有する駆動シャフト202を備える。駆動シャフト202の縦方向の広がりが、その縦軸を規定する。駆動機構200は、一つまたは複数の固定要素120の近位端のそれぞれと係合する平行移動要素210も備えている。図5Bで最も良く分かるように、平行移動要素210は、駆動シャフト202のねじ付きシャフト206とねじ係合するねじ付き穴212を備えている。平行移動要素210は、少なくとも一つ、好ましくは固定要素120と同数の結合要素214を備える。各結合要素214は、固定要素120のうちそれぞれ一つの近位端に係合されているが、近位端の関節接合を許容する。図5B、5Cを参照して、結合要素214はそれぞれソケット216を有し、各固定要素120の近位端はボール126を有している。ボール126は、比較的短いシャフト128を用いて、固定要素120の末端からオフセットされていてもよい。駆動シャフト202の縦軸に沿った移動中に、固定要素120の近位端に平行移動要素210が係合しかつその関節接合を許容するように、ソケット216内にボール126が捕らわれる。このような関節接合は、任意の数の可動度を含んでよいが、少なくとも一つの実施形態にしたがって、(単一回転軸周りの移動を許容する)ヒンジ構造と比較するときにボール−ソケット構造から予期されるような、二つ以上(好ましくは多くの)回転軸での固定要素120の近位端(および遠位端)の移動を関節接合が許容することに注意する。
【0053】
駆動シャフト202は、デバイス100(または100A)の本体内で前後方向を向く。少なくともヘッド204が本体の外側にアクセス可能とされ、デバイスのオペレータによって回転力をヘッド204に与えることができるようになっている。図3Aの実施形態では、デバイス100の本体内で駆動シャフト202が前後方向を向いており、デバイス100の前方側でヘッド204にアクセス可能となっている。図4の実施形態では、デバイス100Aの本体内で駆動シャフト202が前後方向を向いており、デバイス100の前方側でヘッド204にアクセス可能となっている。デバイス100および100A内での駆動要素の向きの主な違いは、前者の固定要素120は、本体内で平行移動要素210の一側面と係合しここから延びるのに対し、後者の固定要素120は、本体内で平行移動要素210の反対側と係合しここから延びる点である。
【0054】
いずれのデバイスの向きが採用されているかに関わらず、駆動シャフト202はその縦軸方向に固定されるが、ヘッド204に加えられる回転力に応じて本体内で回転可能にされる。本体内での駆動シャフト202の向きを安定させるために、ヘッド204の反対側のシャフト206の遠位端に、ベアリング220を設けてもよい。駆動シャフト202を回転させると、平行移動デバイス210のねじ付き穴212の中でねじ付きシャフト206が対応して回転する。この回転により、駆動シャフト202の縦軸に沿って平行移動デバイス210が平行方向に移動し、各開口部(単数または複数)122を通して固定要素(単数または複数)120を椎骨内へと押し込む。駆動シャフト202と平行移動要素210との協働により、多大な量の平行移動(押し込み)力が発生する。これは、固定要素120の骨内へのねじ込み(回転)を必要とせずに各開口部(単数または複数)122を通して固定要素(単数または複数)120を椎骨内へと駆動するのに十分な大きさである。特に、平行移動デバイス210により、駆動シャフト202の縦軸と平行に、固定要素(単数または複数)120の近位端を並行移動させる。この意味で、静止近位端周りの固定要素(単数または複数)120の単なる回転によって展開が行われるわけではなく、むしろ固定要素(単数または複数)120の近位端の押し込み、平行移動によって展開が行われる。
【0055】
次に図6を参照する。図6は、各開口部122を通して固定要素120を押し、引き、またはねじるための異なる駆動機構を有する代替デバイス100Bを示す。この実施形態では、駆動機構は、デバイス100Bの本体内に配置されるいくつかの部品と、一つまたは複数の外部要素と、を備える。具体的には、デバイス100Bは、平行移動要素210Aを備え、平行移動要素210は、一つまたは複数の固定要素120の近位端のそれぞれと係合する。平行移動要素210Aは、上述した平行移動要素210とほぼ同様であり、ねじ付きでなくてよい貫通穴を備えている。しかしながら、駆動機構は駆動シャフト202を備えていない。代わりに、本体の開口部112に入り、平行移動要素210Aの穴と係合する、外部シャフト要素250が採用されている。
【0056】
具体的には、シャフト要素250は、オペレータによって操作されるエクステンション(またはロッド)252と、係合構造を有する遠位端254と、を備えている。係合構造は、平行移動要素210A(穴など)に取り外し可能に接続し、各開口部122を通してオペレータが固定要素120を押し、引き、またはねじることができるようにしている。図示の実施形態では、シャフト252はその全長に沿って中空であり、縦溝付きの遠位端254(選択的なテーパー状のアンダーカットを有してもよい)を備える。縦溝によって、遠位端254が屈曲し、平行移動要素210Aの穴内に穴を通して遠位端を押し込むことが可能になる。一旦遠位端254が適所に位置すると、シャフト252の近位端(図示せず)にロッド256が挿入され、縦溝の近くの遠位端254までずっとスライドされる。ロッド256の存在により、縦溝の再屈曲が防止され、またテーパー状のアンダーカットが平行移動要素210Aの穴を通して引き戻されることが防止される。この地点で、オペレータは、平行移動要素210Aを押し、引きおよび/またはねじることで固定要素120の所望の移動を実現することができる。
【0057】
図6に示したデバイス100BがALIFである実施例では、前後方向の縦軸に沿った平行移動要素210Aの移動が、少なくとも一つの固定要素をその主軸周りに回転させることなく、少なくとも一つの開口部を通して第1椎骨内に少なくとも一つの固定要素を押し引きするように、平行移動要素210Aが移動可能となっている。遠前方側部(far anterior lateral)から挿入するようにデバイスが適合されている代替的な実施例では、第1方向および第2反対方向の縦軸に沿った平行移動要素210Aの移動が、少なくとも一つの固定要素をその主軸周りに回転させることなく、少なくとも一つの開口部を通して第1椎骨内に少なくとも一つの固定要素を押し引きするように、平行移動要素210Aが移動可能となっている。
【0058】
オペレータが固定要素120の展開を完了すると、オペレータは、少なくとも縦溝の屈曲を可能にするのに必要な距離だけロッド256を引き下げ、続いて、平行移動要素210Aの穴からシャフト要素250の遠位端25を引き下げてもよい。当業者であれば、シャフト要素250と平行移動要素210Aの間の取り外し可能な接続を実現するために、多くの他の方法があることを理解するだろう。例えば、平行移動要素210Aの穴がねじ付きであり、シャフト要素250の遠位端254が、所望の接続性を実現するようにねじ付きとなっていてもよい。
【0059】
次に図7を参照する。図7は、各開口部122を通して固定要素120を押す代替駆動機構を有する代替デバイス100Cを示す。一例として、図7の実施形態は、他のデバイス100、100A、100Bと比較するとより長方形状であるために、遠前方側部(far anterior lateral)椎間固定術に特に適していてもよい。このため、図2を参照して、第1側方または第2の反対側の側方(ページに向かう方向、またはページから出る方向)からデバイス100Cを移植することができる。
【0060】
この実施形態では、駆動機構は、デバイス100、100Aまたは100B(図5Aも参照)の本体内に配置された、いくつかの変更を加えた実質的に同一の部品を備えている。具体的には、デバイス100Cは、少なくとも二つの平行移動要素210A、210Bを備える。これらはそれぞれ、駆動シャフト202のねじ付きシャフト206とねじ係合する上述のねじ付き穴を有している。平行移動要素210A、210Bはそれぞれ、少なくとも一つの固定要素120(一例として、全部で4つの固定要素)と結合される。ねじ付きシャフト206は第1部分と第2部分を備える。第1部分は第1方向にねじが切られており、第2部分は、第1方向とは反対向きの第2方向にねじが切られている。第1平行移動要素210Aは、ねじ付きシャフト206の第1部分とねじ係合する一方、第2平行移動要素210Bは、ねじ付きシャフト206の第2部分とねじ係合する。
【0061】
少なくとも一つの固定要素120の各セットの展開は、上述した一つまたは複数の手法と同様にして実現される。例えば、シャフト202に回転力を与えると、ねじ付きシャフト206の第1および第2ねじ付き部分がそれぞれ(回転力の方向に)回転する。仮に、ねじ付きシャフト206の第1および第2ねじ付き部分に反対向きにねじが切られている場合、シャフト202が回転すると、各平行移動要素210A、210Bは、シャフト202の縦方向に沿って反対向きに移動する。図示の実施形態では、各平行移動要素210A、210Bが互いに離れる方向に移動すると、固定要素120の同時展開が行われる。代替的な実施形態では、各平行移動要素210の反対側に各固定要素120が配置されてもよい(各開口部122の向きに対応する変化が生じる)。この結果、各平行移動要素210A、210Bが互いに向けて移動すると、固定要素129の展開が行われる。
【0062】
上述したデバイス100、100A、100B、100Cのいずれも、当業者には直ちに明らかになるそのような特徴の機能を実現するために、(矛盾が生じない限り)各デバイスの特定の構造のうち一つまたは複数を備えることができる。事実、例えば、デバイス100Cは、同一の一般平面(すなわち、デバイスの本体の形状に対して横方向に延びる平面)内の全てに固定要素120を示している。しかしながら、他の実施形態から特定の構造および機能を取り入れることによって、固定要素120の展開軌道におけるさらなる変動を実現するための修正を行うことができ、その反対も成り立つ。代替的にまたは追加して、シャフト202が採用されていないと仮定して、図6の装置250を使用して、各固定要素120の展開を実現することができる。
【0063】
特定の実施形態を参照して本発明について説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の実例に過ぎないことを理解すべきである。したがって、添付の請求項によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、図示の実施形態に対して多数の変更をなすことができ、また他の構成も考案可能であることを理解すべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7