【文献】
上田 雅巳 他,ブリッジタップがADSL伝送性能へ及ぼす影響の検討,電子情報通信学会1997年通信ソサイエティ大会講演論文集2,社団法人電子情報通信学会,1997年 8月13日,p.259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブリッジタップのタイプが、単一線ブリッジタップ(53)および対線ブリッジタップ(45)を含み、かつ/またはブリッジタップのタイプ(T)を識別するステップ(99)が、検出されたブリッジタップが単一線ブリッジタップ(53)であるか、または対線ブリッジタップ(99)であるかの判断を下すステップを含む、請求項1に記載の方法(65)。
シミュレーションするステップが、ブリッジタップが対線ブリッジタップ(45)であると仮定する、電気通信回線(13)の第1のシミュレーションされた伝達関数(57b)を特徴付ける第1のシミュレーションされた伝達関数(SHlog1)データを計算するステップ(97)を含み、前記計算するステップ(97)が、識別されたブリッジタップ(45、53)の少なくとも1つの特徴に、好ましくは、識別されたブリッジタップ(45、53)の長さ(Lt)に依存し、ブリッジタップのタイプを前記識別するステップ(99)が、第1の伝達関数データ(Hlog)および第1のシミュレーションされた伝達関数データ(SHLog1)に依存する、請求項3に記載の方法(65)。
方法(65)が、単一線ブリッジタップ(53)と仮定する、電気通信回線(13)の第2のシミュレーションされた伝達関数(57c)を特徴付ける第2のシミュレーションされた伝達関数データ(SHlog2)を計算するステップ(97)を含み、前記計算するステップ(97)が、識別されたブリッジタップ(45、53)の少なくとも1つの特徴に、好ましくは、識別されたブリッジタップ(45、53)の長さ(Lt)に依存し、ブリッジタップのタイプを前記識別するステップ(99)が、第2のシミュレーションされた伝達関数データ(SHlog2)に依存する、請求項3または4に記載の方法(65)。
方法(65)が、第1の伝達関数データ(Hlog)に応じて第2の伝達関数データ(E)を決定するステップ(75)を含み、第2の伝達関数データ(E)が、いずれのブリッジタップ(45、53)もない電気通信回線(13)の第2の伝達関数(79、81)を特徴付け、ブリッジタップ(45、53)を検出するステップ(69)が、第1の伝達関数データ(Hlog)および第2の伝達関数データ(E)に依存する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(65)。
第2の伝達関数データ(E)を決定するステップ(75)が、実際の伝達関数(57)における極大点(77)を識別するステップと、第2の伝達関数データ(E)を計算することを補助する点としてこれらの極大点(77)使用するステップとを含む、請求項6に記載の方法(65)。
第2の伝達関数データ(E)を決定するステップ(75)が、第2の伝達関数データ(E)によって特徴付けられる関数を平滑化するステップを含む、請求項7に記載の方法(65)。
第2の伝達関数データ(E)を決定するステップが、第1の伝達関数データ(Hlog)または第1の伝達関数データ(Hlog)から導出されるデータを、いずれのブリッジタップ(45、57)もない電気通信回線(13)の伝達関数を表す曲線(79)にフィッティングするステップを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法(65)。
曲線(79)が指数関数的減衰曲線部を有し、曲線(79)のフィッティングパラメータが、減衰率(k)および/または長さの値(L)を含み、長さの値(L)が電気通信回線(13)の長さに依存する、請求項9に記載の方法(65)。
ブリッジタップ(45、53)を検出するステップ(69)が、好ましくは第2の伝達関数データ(E)を第1の伝達関数データ(Hlog)から引くこと、または第1の伝達関数データ(Hlog)を第2の伝達関数データ(E)から引くことにより、2つの伝達関数(57;79、81)の差を計算するステップ(83)を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法(65)。
第1の伝達関数(57)および/または第2の伝達関数(79、81)に応じて、好ましくは2つの伝達関数データ(E、Hlog)の差に応じて、ブリッジタップ(45、53)の長さ(Lt)を計算するステップを含む、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法(65)。
電気通信回線(13)をシミュレーションするステップ(97)が、曲線の少なくとも1つのフィッティングパラメータ(L、k)および/またはブリッジタップ(45、53)の計算された長さ(Lt)に依存する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法(65)。
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法(65)を実行するように構成され、好ましくはプログラム化されている、請求項14に記載の装置(17、19、39)。
【背景技術】
【0002】
デジタル加入者回線(DSL:digital subscriber line)においてシングルエンド回線テスト(SELT:single ended line testing)を実施することが知られている。SELTは、少なくとも場合によっては、加入者回線内のブリッジタップの位置を求められるようにする反射光測定の手順を含む。
【0003】
ブリッジタップは電気通信回線における枝分かれ部であり、ブリッジタップの第1の端部が電気通信回線内の分岐点に対応する。ブリッジタップの第2の端部は開放されていてもよいし、デジタル加入者回線に属していない装置に接続されていてもよい。たとえばブリッジタップは、たとえば遠隔地のキャビネット内の誤った配線の結果であることがある。ブリッジタップは、企業内の配線において生じることもある。たとえば、ブリッジタップは、DSLデータ伝送に使用される周波数帯と電話通信に使用される周波数帯を互いに適切に分離するためにDSLスプリッタを使用せずに、DSLモデムに接続された電気通信回線の部分にアナログまたはISDNの電話機器を接続することによって作り出されることがある。
【0004】
ブリッジタップを含む電気通信回線を運用しているとき、特にブリッジタップがその第2の端部において正しく終端処理されていないと、ブリッジタップの第1の端部および/または第2の端部において望ましくない反射が生じることがある。これらの反射はDSLデータ伝送を妨害するおそれがあるため、ブリッジタップを検出し、外す必要がある。
【0005】
電気通信回線におけるブリッジタップを検出するための知られている手法では、ブリッジタップのタイプを判定することができない。ブリッジタップは第1のタイプであることがあり、このタイプでは、ブリッジタップは電気通信回線の導体対のうちの両方の導体に接続された2つの電気導体を有する。以下、このタイプのブリッジタップは「対線ブリッジタップ」と呼ばれる。第2のタイプのブリッジタップは、電気通信回線の2つの電気導体のうちの一方に接続された1つだけの導体または線を有する。この第2のタイプのブリッジタップは、これ以降「単一線ブリッジタップ」と呼ばれる。
【0006】
ブリッジタップを検出するための知られている手法を使用するとき、対線ブリッジタップは、通常はある程度確実に検出される。しかし、単一線ブリッジタップが検出される確度ははるかに劣る。これは、単一線ブリッジタップによる電気通信回線の伝達関数への影響が、対線ブリッジタップよりも小さいためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、異なるタイプのブリッジタップ、特に対線ブリッジタップおよび単一線ブリッジタップを確実に検出できるようにする方法および装置を提供し、かつ/または検出された各ブリッジタップのタイプを判定することである。この課題は、請求項1に記載の方法、請求項14に記載のブリッジタップを検出する装置および請求項16に記載のコンピュータプログラム製品によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、電気通信回線におけるブリッジタップの検出のための方法が提供され、この方法は、電気通信回線の実際の伝達関数を特徴付ける第1の伝達関数データを決定するステップと、第1の伝達関数データに応じてブリッジタップを検出するステップと、前記検出するステップの結果に基づいて電気通信回線をシミュレーションするステップと、前記シミュレーションするステップの結果を第1の伝達関数データと比較することによって、ブリッジタップのタイプを識別するステップとを含む。前記シミュレーションするステップの結果は、電気通信回線のシミュレーションされた伝達関数を特徴付けるシミュレーションされた伝達関数データを含み得る。
【0009】
単一線ブリッジタップおよび対線ブリッジタップの伝達関数への影響は極めて類似しているが、ブリッジタップの検出の結果に基づいて電気通信回線をシミュレーションし、シミュレーションの結果を第1の伝達関数データと比較することによって、単一線ブリッジタップと対線ブリッジタップは確実に互いに区別され得る。
【0010】
好ましい実施形態において、ブリッジタップのタイプは、単一線ブリッジタップおよび対線ブリッジタップを含み、かつ/またはブリッジタップのタイプを識別するステップは、検出されたブリッジタップが単一線ブリッジタップであるか、または対線ブリッジタップであるかの判断を下すステップを含む。
【0011】
一実施形態において、ブリッジタップを検出するステップは、検出されたブリッジタップの少なくとも1つの特徴、好ましくはブリッジタップの長さを判定するステップを含む。この特徴は、電気通信回線をシミュレーションするためのパラメータとして使用され得る。したがって、少なくとも1つの特徴を判定するステップは、シミュレーションの精度を向上させることを可能にする。ブリッジタップは通常、伝達関数における極小値、いわゆるディップを生じさせる。検出されたブリッジタップの特徴、特にブリッジタップの長さは、伝達関数の周波数軸方向へのこれらのディップの位置を分析することによって判定され得る。
【0012】
シミュレーションする時点では、ブリッジタップのタイプは分かっていない。したがって、電気通信回線をシミュレーションするステップは、ブリッジタップがある種のタイプを有すると仮定するステップを含んでいてもよい。たとえば、ブリッジタップが単一線ブリッジタップであると仮定され得るか、またはブリッジタップが対線ブリッジタップであると仮定され得る。電気通信回線のシミュレーションの結果を第1の伝達関数データ、すなわち測定された伝達関数と比較することによって、ブリッジタップのタイプに関する仮定が確認され得る。シミュレーションの結果と第1の伝達関数データによって表される第1の伝達関数が極めて類似している場合、仮定は正しいと考えることができ、ブリッジタップの仮定されたタイプは、ブリッジタップの実際のタイプに一致する。しかし、シミュレーションの結果と第1の伝達関数データが互いに異なる場合、ブリッジタップのタイプに関する仮定は正しくないと考えることができ、方法は、電気通信回線に存在するブリッジタップのタイプが、仮定されたタイプとは異なると結論付けることができる。
【0013】
一実施形態において、ブリッジタップのタイプについての可能性のある仮定ごとにシミュレーションが実施され、可能性のある各仮定に関するシミュレーションの結果が第1の伝達関数データと比較される。この複数の比較の結果は、ブリッジタップのタイプを識別するために使用される。
【0014】
一実施形態において、シミュレーションするステップは、ブリッジタップが対線ブリッジタップであると仮定する、電気通信回線の第1のシミュレーションされた伝達関数を特徴付ける第1のシミュレーションされた伝達関数データを計算するステップを含み、前記計算するステップは、識別されたブリッジタップの少なくとも1つの特徴に、好ましくは、識別されたブリッジタップの長さに依存し、前記識別するステップが、第1の伝達関数データおよび第1のシミュレーションされた伝達関数データに依存する。特に、第1の伝達関数データと、第1のシミュレーションされた伝達関数データとが、ブリッジタップのタイプを識別するために互いに比較され得る。
【0015】
好ましくは、方法は、ブリッジタップが単一線ブリッジタップであると仮定する、電気通信回線の第2のシミュレーションされた伝達関数を特徴付ける第2のシミュレーションされた伝達関数データを計算するステップを含むことができ、前記計算するステップは、識別されたブリッジタップの少なくとも1つの特徴に、好ましくは、識別されたブリッジタップの長さに依存し、前記識別するステップは、第2のシミュレーションされた伝達関数データに依存する。言い換えれば、ブリッジタップのタイプは、第1のシミュレーションされた伝達関数データ、第2のシミュレーションされた伝達関数データおよび第1の伝達関数データに応じて識別される。一実施形態において、第1のシミュレーションされた伝達関数データは第1の伝達関数データと比較され、第2のシミュレーションされた伝達関数データは第1の伝達関数データと比較される。これらの2つの比較に基づいて、ブリッジタップのタイプが識別され得る。たとえば、方法は、シミュレーションされた伝達関数のいずれが、第1の伝達関数データによって表される電気通信回線の実際の伝達関数により類似しているかについて判断を下すことができる。第1の伝達関数データによって表される実際の伝達関数が、第2のシミュレーションされた伝達関数よりも第1のシミュレーションされた伝達関数に類似している場合、方法は対線ブリッジタップと識別することができる。第1の伝達関数データによって表される実際の伝達関数が、第1のシミュレーションされた伝達関数よりも第2のシミュレーションされた伝達関数に類似している場合、方法は、ブリッジタップが単一線ブリッジタップであると判断を下すことができる。
【0016】
一実施形態において、方法は、第1の伝達関数データに応じて第2の伝達関数データを決定するステップを含み、第2の伝達関数データは、いずれのブリッジタップもない電気通信回線の伝達関数を特徴付け、ブリッジタップの検出は、第1の伝達関数データおよび第2の伝達関数データに依存する。第2の伝達関数データを決定することによって、実際の伝達関数は、ブリッジタップが存在しない場合を表す第2の伝達関数データに関連付けられ得る。結果的に、ブリッジタップの伝達関数への影響が導出され得る。
【0017】
一実施形態において、第2の伝達関数データを決定するステップは、実際の伝達関数における極大点を識別するステップと、たとえば識別された極大点同士をつなぐことによって第2の伝達関数データを計算することを補助する点として、これらの極大点を使用するステップとを含む。ブリッジタップは極小値(ディップ)をもたらすので、第2の伝達関数を計算することを補助する点として、通常は極小値間に位置する極大点を使用するステップは、ブリッジタップを有しない電気通信回線の伝達関数のかなり良好な近似値をもたらす。
【0018】
近似値をさらに良好にするために、第2の伝達関数データを決定するステップは、第2の伝達関数データによって特徴付けられる関数を平滑化するステップを含むことができる。この目的のために、第2の伝達関数データは、たとえばローパスフィルタによってフィルタリングされ得る。
【0019】
別の実施形態において、第2の伝達関数データを決定するステップは、第1の伝達関数データまたは第1の伝達関数データから導出されるデータを、いずれの障害もない、特にいずれのブリッジタップもない電気通信回線の伝達関数を表す曲線にフィッティングするステップを含む。伝達関数を表す曲線は、伝達関数の数学的モデルに対応し得る。たとえば、第1の伝達関数データを曲線にフィッティングするステップは、曲線が、第1の伝達関数データによって表される伝達関数の最適な近似値を表すように、数学的モデルのフィッティングパラメータを適合させるステップを含むことができる。これらの最適フィッティングパラメータを見いだすために、知られている回帰方法、特に非線形回帰方法が適用され得る。第1の伝達関数データから導出される前記データは、実際の伝達関数データの識別された極大点を補助する点として使用することによって、たとえば、識別された極大点同士をつなぐことによって決定され得る。
【0020】
好ましい実施形態において、曲線は指数関数的減衰曲線部を有し、曲線のフィッティングパラメータは減衰率および/または長さの値を含み、長さの値は電気通信回線の長さに依存する。これらのフィッティングパラメータは、電気通信回線をシミュレーションするための入力パラメータとして使用され得る電気通信回線の物理的特徴を示す。
【0021】
一実施形態において、ブリッジタップを検出するするステップは、好ましくは第2の伝達関数データを第1の伝達関数データから引くことによって、または第1の伝達関数データを第2の伝達関数データから引くことによって、2つの伝達関数の差を計算するステップを含む。こうして引くことが、伝達関数の全体的な減衰曲線部が消失した、ブリッジタップの伝達関数への影響を含む差分伝達関数をもたらす。差分伝達関数は、ブリッジタップを検出するためにかなり容易に分析され得る。
【0022】
好ましい実施形態において、方法は、第1の伝達関数に応じて、または好ましくは差分伝達関数に応じてブリッジタップの長さを計算するステップを含む。差分伝達関数は、第1の伝達関数と第2の伝達関数の差であってもよく、この差は、第1の伝達関数データを第2の伝達関数データから引くことによって、またはその逆に引くことによって計算され得る。ブリッジタップの長さは、一実施形態において、電気通信回線をシミュレーションするためのさらなる入力パラメータとして使用され得る、電気通信回線のさらなる物理的特徴である。
【0023】
したがって、一実施形態において、電気通信回線をシミュレーションするステップは、曲線の少なくとも1つのフィッティングパラメータおよび/またはブリッジタップの計算された長さに依存する。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、電気通信回線におけるブリッジタップの検出のための装置が提供され、この装置は、電気通信回線の実際の伝達関数を特徴付ける第1の伝達関数データを決定し、第1の伝達関数データに応じてブリッジタップを検出し、前記検出するステップの結果に基づいて電気通信回線をシミュレーションし、前記シミュレーションするステップの結果を第1の伝達関数データと比較することによって、ブリッジタップのタイプを識別するように動作可能である。
【0025】
たとえば、装置は、固定アクセスネットワーク用のアクセスノード、たとえばDSLアクセス多重化装置(DSLAM:DSL Access Multiplexer)、顧客の構内のネットワークノード、たとえば固定アクセスネットワークのDSLモデム、または固定アクセスネットワークに接続されるように構成されたモニタリングステーションであってもよい。
【0026】
一実施形態において、装置は、本発明による方法を実行するように構成、好ましくはプログラムされており、方法の実施形態は本明細書に記載されている。
【0027】
さらに別の好ましい実施形態によれば、好ましくは記憶媒体であるコンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータによって実行されたときに本発明による方法を実行するようにプログラム化されたコンピュータプログラムを含み、方法の実施形態は本明細書に記載されている。記憶媒体はいずれの種類であってもよい。特に記憶媒体は、ROMもしくはフラッシュメモリなどの半導体メモリ、CDROMもしくはDVDなどの光学媒体、またはハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクもしくは磁気テープなどの磁気媒体を含み得る。さらに、コンピュータプログラム製品は、通信ネットワーク、たとえばインターネットを介したダウンロードのためにサーバに格納されていてもよい。コンピュータプログラム製品は、本発明による方法を実行するようにプログラムされたコントローラのストレージ要素を含み得る。
【0028】
本発明の例示的な実施形態およびさらなる利点が図面に示され、以下で詳細に説明されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
説明および図面は本発明の原理を示しているにすぎない。したがって、本明細書において明示的に説明も図示もされていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲に含まれるさまざまな構成を当業者が考案できるようになることが認識されよう。さらに、本明細書において挙げられるすべての例は、主として、本発明の原理および本発明者が当技術分野の発展に寄与した概念についての読者の理解を助ける教示目的のものにすぎないことが明確に意図されており、そのような具体的に挙げられる例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体的な例を挙げる、本明細書におけるあらゆる記述は、その均等物を包含することが意図されている。
【0031】
図1は、電気通信回線13を含む通信ネットワーク11を示す。電気通信回線13は電気導体15a、15bの対15を含み、対15の第1の端部16はネットワーク11のネットワーク側終端ノードに接続されており、このノードはこれ以降アクセスノード17と呼ばれ、また、対15の第2の端部18はネットワーク11の端末側終端ノード19に接続されている。端末側終端ノード19は、ネットワーク11の顧客構内機器(CPE21)の一部であり得る。
【0032】
図示された実施形態では、電気通信回線13はADSLやVDSLなどのデジタル加入者回線(DSL)である。結果的に、アクセスノード17は、DSLアクセス多重化装置(DSLAM)または別のタイプのDSLアクセスノードであり得る。端末側終端ノード19は、DSLモデムであってもよく、またはDSLモデムを含んでいてもよい。ただし、本発明はDSLには限定されない。別の実施形態において、ネットワーク11は異なるタイプの電気通信回線13を含む。
【0033】
アクセスノード17は、対15の第1の端部16が接続された第1のモデム回路23を有する。さらに、アクセスノード17は、アクセスノード17の動作を制御するように構成された第1のコントローラ25を有する。一実施形態において、第1のコントローラ25は、プロセッサ27、たとえばマイクロプロセッサと、ストレージ要素29、たとえば半導体メモリとを含むプログラム可能なコンピュータである。
【0034】
端末側終端ノード19は、対15の第2の端部18が接続された第2のモデム回路33を含む。さらに、端末側終端ノード19は第2のコントローラ31を含む。第2のコントローラ31は、第1のコントローラ25と同じ基本構成を有していてもよく、すなわち、第2のコントローラ31は、プログラム可能なコンピュータであってもよく、プロセッサ27および/またはストレージ要素29を含んでいてもよい。
【0035】
図示された実施形態では、対15の少なくとも一部は、バインダ35の一部であり、少なくとも1つのさらなる電気通信回線36に並行して延在している。それぞれのさらなる回線36は、さらに別の導体対37を含む。バインダ35は、導電性、好ましくは金属性の、
図1に描かれているように接地されていてもよい遮蔽38を含み得る。
【0036】
さらに、ネットワーク11はオプションのモニタリングステーション39を含んでいてもよく、このステーション39は、たとえば相互接続ネットワーク41を介してノード17、19の少なくとも一方に接続されて、ノード17、19の少なくとも一方、好ましくはアクセスノード17と通信できるようになっている。ステーション39は第3のコントローラ43を含む。第3のコントローラ43は、第1のコントローラ25と同じ基本構成を有していてもよく、すなわち、第3のコントローラ43は、プログラム可能なコンピュータであってもよく、プロセッサ27および/またはストレージ要素29を含んでいてもよい。例示的な一実施形態では、ステーション39は、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、PDAまたは携帯電話などのハンドヘルドコンピュータなどであってもよい。一実施形態において、測定データの収集および処理は、携帯電話やラップトップでは行われず、プラットフォームサーバによって行われ得る。本実施形態において、電話は、収集および処理の結果をサーバから読み出すことができるクライアントである。
【0037】
コントローラ25、31または43のうちの少なくとも1つは、電気通信回線13における、特に導体15a、15bの対15におけるブリッジタップを検出する本明細書に記載の方法を実行するように構成されている。この目的のために、コントローラ25、31、43のうちの少なくとも1つが、コンピュータプログラムを動作させたときに方法を実行するようにプログラム化されたコンピュータプログラムが提供されてもよい。言い換えれば、方法は、アクセスノード17、ステーション39、または端末側終端ノード19で実行され得る。コンピュータプログラムは、少なくとも1つのストレージ要素29に格納されていてもよい。さらに、コンピュータプログラムは、磁気ディスクもしくは光学ディスクまたは半導体電荷媒体(semiconductors charge media)などの任意のタイプのデータ記憶媒体に記憶されていてもよい。さらに、プログラムは、ネットワーク、好ましくはインターネットを介した伝送でサーバによって提供されてもよい。
【0038】
図2は、対線タイプのブリッジタップの場合の電気通信回線13を示す。この対線ブリッジタップ45は、電気通信回線13の導体対15の分岐点47と、対線ブリッジタップ45の遠位端49との間に延在している。対線ブリッジタップ45は、通常は対線のさらなる導体対51を含み、このさらなる導体対51の導体または線がそれぞれ、電気導体15a、15bの一方に接続されている。
【0039】
電気通信回線13の導体対15は長さLを有する。アクセスノード17と分岐点47の間の導体対15の第1の部分は長さL1を有する。分岐点47と端末側終端ノード19の間の導体対15の第2の部分は長さL2を有する。全長はこれらの部分の長さの和、すなわちL=L1+L2である。さらなる伝導(conduction)対51の長さは、これ以降ブリッジタップの長さと呼ばれ、Ltが付されている。
【0040】
図3は、単一線タイプのブリッジタップの場合の電気通信回線13を示す。この単一線ブリッジタップ53は、導体対15の電気導体15a、15bの一方に分岐点47において接続されている単一のさらなる導体55を有する。単一線ブリッジタップ53と他の電気導体15b、15aとの間に電気接続は存在しない。図示の例では、単一のさらなる導体55は、導体対15の第1の電気導体15aに接続されている。
図3では、導体対15の2つの部分の長さL1、L2および単一の有線ブリッジタップ53の長さLtが描かれている。
【0041】
図4は、3つの異なるシナリオについての通信回線13の測定された伝達関数を示す。特に、第1の測定された伝達関数57aは、いずれのブリッジタップもない伝送路13に対応する。第2の測定された伝達関数57bは、対線ブリッジタップのある電気通信回線13に対応する。最後に、第3の測定された伝達関数57cは、単一線ブリッジタップのある電気通信回線13に対応する。測定された伝達関数57が共通の図に描かれており、この図のX軸は周波数をMHzで示し、Y軸は周波数の関数として電気通信回線13に沿った減衰をdBで示す。
図4に示された例示的な伝達関数57は、電気通信回線13の全長L=500mとブリッジタップ45、53の長さLt=20mを表す。
【0042】
図4から分かるように、伝達関数57は、電気通信回線13に少なくとも1つのブリッジタップ45、53が存在する場合に限り、極小値59(いわゆる「ディップ」59)が規則的な間隔で生じている。したがって、ブリッジタップ45、53は、測定された伝達関数57を分析すること、特に、伝達関数57が極小値59をもつかどうかを確認することによって検出され得る。伝達関数57を表す測定データHlogはDELTによって読み出され得る。
【0043】
対線ブリッジタップ45の場合、電気通信回線13は、2つの伝搬経路、すなわちアクセスノード17から端末側終端ノード19へ直接的に進む直接的経路(矢印61)を有する。さらには、アクセスノード17から始まる間接的経路(矢印63)が、分岐点47を通って遠位端49に進み、分岐点47に戻り、最終的に端末側終端ノード19で終わっている(
図2参照)。
【0044】
2つの伝搬経路に沿ったある周波数fを有する信号の信号伝搬は、以下のフェーザによって表され得る:
直接的経路:
【0047】
変数γ=γ(f)は電気通信回線13の伝搬定数である。フェーザr
1は直接的経路61に沿った伝送を表し、フェーザr
2は間接的経路63に沿った信号伝搬を表す。電気通信回線13の伝搬挙動は、これらのフェーザの和によって表される:
【0049】
極小値59は、直接的経路61と間接的経路63に沿った信号の相殺的干渉の結果である。極小値の周波数f
nは、以下のように計算され得る:
【0051】
したがって、測定された伝達関数57b、57cは、c/4L
tの奇数倍数に対応する周波数において深いディップ59を示し、式中、cは位相速度を意味する。
【0052】
ブリッジタップ45、53を検出する方法の一実施形態では、測定された伝達関数57における極小値が検出され、方法は、検出された極小値の周波数が少なくとも本質的に前の式(4)に従っているかどうかを確認する。
【0053】
図3に示されるような単一線ブリッジタップ53の場合、単一のさらなる導体55は、表面波の形でエネルギーを伝搬させることが可能である。さらに、単一のさらなる導体55は、その付近にある他の導体と伝送路を形成することができる(たとえば、接続先の主要伝送路の線、回線13の付近にある他の線、地面など)。したがって、主要線15に沿って伝搬するエネルギーの一部はさらなる単一の導体55に沿っても伝搬し、まさに対線ブリッジタップ45の場合と同様に、その遠位端49において反射され得る。しかしながら、導体対15と単一線ブリッジタップ55の間の比較的大きいインピーダンス不整合により、また比較的大きい減衰により、上記の相殺的干渉の影響ははるかに小さくなる。結果として、測定された伝達関数57cにおける極小値は、
図4にみられるように、対線ブリッジタップをもつ電気通信回線13に関する測定された伝達関数57bの極小値よりも小さい。
【0054】
図5は、電気通信回線13におけるブリッジタップ45、53を検出する例示的な方法65のフローチャートである。方法65は、測定および分析ブロック67、ブリッジタップ検出ブロック69および検出されたブリッジタップのタイプを識別するためのタイプ識別ブロック71を含む。したがって、方法65はブリッジタップ45、53を検出するだけでなく、ブリッジタップのタイプを識別する、すなわち、ブリッジタップが対線ブリッジタップ45であるか、または単一線ブリッジタップ53であるかの判断を下す。
【0055】
測定および分析ブロック67は、電気通信回線13の測定された伝達関数を特徴付ける第1の伝達関数データHlogを決定するステップ73を含む。言い換えれば、第1の伝達関数データHlogは、電気通信回線13の実際の伝達関数57を表す。たとえば、第1の伝達関数データHlogを決定するステップは、デュアルエンド回線テスト(DELT:Dual End Line Testing)を実施することを含み得る。伝達関数57を特徴付ける測定データHlogは、ノード17および19の少なくとも一方に格納され得る。第1の伝達関数データHlogは、SNMPなどの通信プロトコルによってノード17および/または19から読み出されてもよい。第1の伝達関数データHlogは、伝達関数57の振幅の複数の値を含んでいることがあり、各振幅値は異なる周波数に対応している。好ましくは、伝達関数57の振幅の値は対数目盛で表される。第1の伝達関数データはDELTを使用して生成され得る。一実施形態において、第1の伝達関数データHlogは、アクセスノード17および端末側終端ノード19の動作中におけるある段階で生成される。たとえば、第1の伝達関数データHlogは、第1のモデム回路23と第2のモデム回路33が互いに同期する段階で生成され、ステップ73がそれらを読み出せるように、アクセスノード17および/または端末側終端ノード19に格納され得る。
【0056】
測定および分析ブロック67のステップ75は、第1の伝達関数データHlogに応じて第2の伝達関数データEを決定する。第2の伝達関数データEは、いずれのブリッジタップ45、53もない電気通信回線13の伝達関数を特徴付ける。言い換えれば、ステップ75は、ブリッジタップ45、53の影響を第1の伝達関数データHlogから少なくとも本質的に取り除く。第2の伝達関数データEによって表される関数は、ブリッジタップのない電気通信回線13の伝達関数に少なくとも類似しており、そのため、測定された伝達関数57の包絡線のように見える。
【0057】
第1の測定データHlogおよび第2の伝達関数データEによって特徴付けられる関数は、例示的なシナリオとして
図6に示されている。このシナリオによれば、L=500mのDSL線13が検討されている。位相速度はc=2・10
8m/sであり、減衰率はk=1.45・10
−6m
−1に達し、ブリッジタップ45、53の長さはLt=20mである。対応する測定された伝達関数57は、2.5MHzの奇数倍数に対応する規則的な間隔の極小値59を有する。式(4)を使用すると、ブリッジタップの長さLtは
【0059】
図6における一点鎖線曲線79および破線曲線81は、ステップ75についての2つの異なる例示的な変更形態を用いて計算された第2の伝達関数データEによって表される伝達関数を示す。
【0060】
第1の変更形態によれば、ステップ75は、測定された伝達関数57の極大点77を識別することによって第2の伝達関数データを計算する。本実施形態において、極大点77は、第2の伝達関数データEを計算することを補助する点として使用される。
図6にみられるように、極大点77は2つの隣り合う極小値59の間に位置する極大値である。極大点77は、第1の伝達関数データHlogを分析することによって識別され得る。すなわち、第2の伝達関数データによって表される関数は、近傍の極大点77を互いにつなぐことによって得られる曲線79に対応する。一実施形態において、極大点77を補助する点として使用し、かつ/または近傍の極大点を互いにつなぐことによって得られる関数は、ローパスフィルタ処理などの適した数値的方法によって平滑化され得る。たとえば、関数を平滑化するために、指数関数的重み付け移動平均などの移動平均アルゴリズムが使用され得る。
図6における曲線79は、この実施形態に従って第2の伝達関数データを計算したときに得られる。
【0061】
第2の変更形態によれば、ステップ75は、第1の伝達関数データHlogまたは第1の伝達関数データから導出されたデータ(導出データ)を、いずれのブリッジタップ45、53もない電気通信回線13の伝達関数57aを表す曲線81にフィッティングすることによって第2の伝達関数データEを決定する。導出データは、極大点77を補助する点として利用することによって計算されるデータであってもよく、たとえば、前記導出データは、近傍の極大点77を互いにつなぐことによって取得される曲線79に対応し得る。言い換えれば、導出データを使用する第2の変更形態による実施形態は、平滑化がフィッティングで置き換えられた上記の第1の変更形態に少なくとも本質的に対応する。すなわち、第2の伝達関数データEは、極大点77を互いにつなぎ、次いで、得られた導出データを、いずれのブリッジタップ45、53もない電気通信回線13の伝達関数57aを表す曲線81にフィッティングすることによって取得され得る。
【0062】
この曲線81は、任意の数学的モデル、好ましくは、指数関数的減衰曲線部をもつ関数を使用してモデル化され得る。一実施形態において、数学的モデルは、減衰率kおよび/またはモデル化されることになる電気通信回線13の長さに依存する長さの値Lなどのフィッティングパラメータを含む。一実施形態において、長さの値Lは電気通信回線13の長さである。例示的な一実施形態において、曲線57aは以下の通りモデル化され得る。
e(f,L)=20・log
10(┃e
−γ(f)・L)┃) (5)
式中、伝搬定数γは周波数fに依存し、以下の通り近似され得る:
【0063】
【数6】
式中、cは位相速度(典型的にはc=2e8m/s)である。
【0064】
第1の伝達関数データHlogまたは第1の伝達関数データHlogから導出されたデータを、いずれのブリッジタップ45、53もない電気通信回線13の伝達関数を表す曲線e(f,L)にフィッティングするために、伝達関数データHlogまたは第1の伝達関数データHlogから導出されるデータによって表される測定された伝達関数57の包絡線が、モデル化された曲線に類似するように、フィッティングパラメータk、Lは最適化される。この目的のために、任意の適切な数値的手法が適用され得る。たとえば、非線形回帰などの回帰技術が、フィッティングパラメータk、Lの推定値に使用され得る。このフィッティングの手法を使用して生成される得られた破線曲線81が
図6に示されている。
【0065】
ブリッジタップ検出ブロック69は、電気通信回線13にブリッジタップ45、53が存在するかどうかを判定するために、測定および分析ブロック67の結果Hlog、Eを使用する。検出ブロック69のステップ83は、たとえば各伝達関数データHlogとEの差を計算することによって、第2の伝達関数データEを第1の伝達関数Hlogから引く。得られる差分伝達関数Dは
図7および
図8に示されている。
【0066】
検出ブロック69の分岐85は、差分伝達関数Dが規則的な間隔の極小値59を有するかどうかを確認する。有する場合(Y)、検出されたブリッジタップのタイプを判定するために、識別ブロック71のステップが実行される。有しない場合(N)、方法65は、電気通信回線13にはブリッジタップがないと結論付ける(ステップ87)。
【0067】
本発明は図示された例示的な検出ブロック69には限定されないことに留意されたい。検出ブロック69は異なる形で実施されることがある。たとえば、分岐85は、規則的な間隔の極小値59の有無を判定するために、差分伝達関数データEではなく第1の伝達関数データHlogを直接分析することができる。
【0068】
一実施形態において、識別ブロック71のステップ91は、極小値59の少なくとも1つの特徴、たとえば極小値59の深さHや極小値59の幅Wを計算する。一実施形態において、深さHは、極小値59における差分伝達関数Dの振幅を、差分伝達関数Dの最大値の振幅から引くことによって計算される。図示された実施形態では、差分伝達関数Dの最大値の振幅は0dBである。したがって、
図7に示された第1の極小値59の深さはH=22dBである。
【0069】
少なくとも1つの極小値59の幅Wは、差分伝達関数Dの下り勾配における第1の点と上り勾配の第2の点との間の距離を求めることによって計算でき、その両勾配の間には極小値59が存在する。第1と第2の点は、差分伝達関数Dが第1と第2の点においてあらかじめ定義されたレベルをもつように選択されてもよい。図示された実施形態では、このレベルは−3dBである。
図7に示された第1の極小値59のこのいわゆる3dBの幅は、W=1,6MHzである。
【0070】
単一線ブリッジタップ53の場合の例示的な差分伝達関数Dが
図8に示されている。幅W=350kHzおよび深さH=6dBは、
図7に示された対線ブリッジタップ45によって生じた極小値59の深さHおよび幅Wよりもはるかに小さい。
【0071】
極小値59の特徴は、事前に定義された閾値と比較されてもよく、この比較の結果に応じて、方法65は、ブリッジタップが対線ブリッジタップ45であるか、または単一線ブリッジタップ53であるかの判断を下すことができる。たとえば、極小値59の深さと幅に対する閾値ThH、ThWが定義され、計算された深さHおよび計算された幅Wと比較されてもよい。これらの値が各閾値を上回っている場合、すなわちH>ThHおよびW>ThWの場合、タイプ識別ブロック71は、ブリッジタップが対線ブリッジタップ45であると仮定する。上回っていない場合、単一線ブリッジタップ53が識別ブロック71によって仮定される。
【0072】
別の実施形態によれば、識別ブロック71は、ブロック69において検出されたブリッジタップに関する情報に基づいて電気通信回線13をシミュレーションするステップを含む。たとえば、フィッティングパラメータL、kおよび/または式(4)を用いて推定されたタップの長さLtが、電気通信回線13をシミュレーションするために使用され得る。このシミュレーションに基づく実施形態では、特徴H、Wを計算し、それらを各閾値ThH、ThWと比較する上記のステップ91は省略されてもよい。
【0073】
識別ブロック71は、ブリッジタップ45、53の長さLtを推定するステップ93および伝送路13をシミュレーションするためのシミュレーションパラメータを決定するステップ95を含み得る。図示された実施形態では、シミュレーションパラメータは長さの値Lおよび減衰率kに対応する。これらの値L、kは、上記のフィッティング手順の中で決定され得る。言い換えれば、シミュレーションパラメータのうちの少なくとも1つが、フィッティングパラメータL、kの少なくとも一方に対応する。
【0074】
さらに、識別ブロック71は、伝送路13をシミュレーションするためのシミュレーションステップ97を含む。一実施形態において、シミュレーションステップ97は、対線ブリッジタップ45を有する電気通信回線13の第1のシミュレーションされた伝達関数(曲線57bに類似)を特徴付ける第1のシミュレーションされた伝達関数データSHlog1を計算する。さらに、ステップ97は、単一線ブリッジタップを有する電気通信回線13の第2のシミュレーションされた伝達関数(曲線57cに類似)を特徴付ける第2のシミュレーションされた伝達関数データSHlog2を計算するステップを含むことができる。図示の実施形態では、シミュレーションされた伝達関数データSHlog1、SHlog2の両方が、ブリッジタップ45、53の長さLt、回線長の値Lおよび/または減衰率kに基づいて計算される。一実施形態において、2つのシミュレーションされた伝達関数データSHlog1、SHlog2は、2つの連続するシミュレーション実行によって計算され得る。
【0075】
一実施形態において、識別ブロック71は比較ステップ99を含む。この比較ステップ99は、第1の伝達関数データHlogによって表される測定された伝達関数の極小値59の少なくとも1つの特徴と、2つのシミュレーションされた伝達関数SHlog1とSHlog2の同じ特徴とを求める。少なくとも1つの特徴は極小値59の深さHおよび/または幅Wを含み得る。さらに、ステップ99は、第1の伝達関数データHlogによって特徴付けられる測定された伝達関数の少なくとも1つの特徴H、Wを、2つのシミュレーションされた伝達関数SHlog1、SHlog2の特徴H、Wと比較することによって、ブリッジタップのタイプを判定する。図示された実施形態では、比較ステップ99は、2つの異なるタイプのブリッジタップ、すなわち対線ブリッジタップ45と単一線ブリッジタップ53を区別する。言い換えれば、ステップ99は、各伝達関数データHlog、SHlog1、SHlog2によって特徴付けられる伝達関数の特徴H、Wに応じて、伝達関数データHlogによって表される測定された伝達関数により類似しているのは第1のシミュレーションされた伝達関数であるか、または第2のシミュレーションされた伝達関数であるかの判断を下す。しかしながら、他の実施形態では、関数同士を比較し、かつ/またはそれらの類似度を決定するための異なる手法が使用され得る。たとえば、数学的類似性尺度が定義され、考慮されるべき対(Hlog、SHlog1)、(Hlog、SHlog2)ごとに計算され得る。
【0076】
図示された実施形態では、ステップ99の比較は、たとえば以下の通り実施され得る。測定された極小値の3dBの幅および深さを、それぞれW
MおよびH
Mとする。対線ブリッジタップ45の場合の極小値59のシミュレーションされた深さおよび幅は、それぞれW
BTおよびH
BTである。単一線ブリッジタップ53の場合の極小値59のシミュレーションされた深さおよび幅は、それぞれW
SWおよびH
SWである。極小値59の測定されたサイズを表す点と、シミュレーションされたサイズを表す2つの点との間の(W、H)空間における距離dが測定され得る。距離dは、特徴WおよびHの異なるダイナミックレンジを補償するために重み付けされてもよく、以下の通り定義され得る。
【0078】
記号αおよびβは使用されることになる重みであり、
α=f
max−f
min (8)
すなわち、伝達関数57が測定された周波数範囲と、
β=Hlog
max−Hlog
min (9)
すなわち、測定された伝達関数57のダイナミックレンジとして選択され得る。したがって、単一線ブリッジタップ53は、
d[(W
M,H
M);(W
SW,H
SW)]<d[(W
M,H
M);(W
BT,H
BT)] (10)
である場合に限り、ステップ99において仮定され得る。
【0079】
上記の説明は、伝達関数および個々の伝達関数を特徴付ける伝達関数データの両方に当てはまる。用語「特徴付ける」は、この文脈においては、伝達関数が各伝達関数データによって表されるか、または示されることを指摘するために使用される。伝達関数データは、複数の離散的な周波数における伝達関数の複数のサンプルなどの、コンピュータに格納され得るデータであり得る。伝達関数サンプルの振幅は、対数目盛で表現および/または格納されてもよい。結果として、第1の伝達関数データHlogおよび第2の伝達関数データEは測定された伝達関数に依存し、シミュレーションされた伝達関数は、ステップ97によって生成されたシミュレーションされた伝達関数データSHlog1、SHlog2に依存する。
【0080】
まとめると、本明細書に記載の方法65および装置は、電気通信回線13におけるブリッジタップの存在を確実に検出できるようにするだけでなく、ブリッジタップのタイプの判定を可能にする。あるブリッジタップが単一線ブリッジタップ53であるかどうかの判断を下すことは、顧客の企業内の配線にネットワークオペレータによって配設されるネットワーク終端回路が単一線ブリッジタップ53の電気的特徴を有する場合に特に有用である。したがって方法65は、ネットワーク終端回路と不要なブリッジタップを区別することを可能にする。結果として、現場の技術者に出される間違いの警告および誤りの修復アドバイスが回避され得る。間違いの警告および誤りの修復アドバイスを回避することが、ネットワークオペレータに対する運用費の削減をもたらす。
【0081】
図9は、壁ソケット103に設置された第1の伝送路終端装置101を示す。壁ソケット103は、典型的には顧客の構内21に取り付けられている。壁ソケット103は、内部ケーブル105によって2次ソケット107に接続され得る。
図9にみられるように、伝送路終端装置101は、2つの電気導体15a、15bを互いに接続するRC回路の形態の伝送路終端回路を有する。ただし、第1の電気導体15aと、壁ソケット103のピンとの間にさらに別の直接的電気接続が存在する。結果として、2つのソケット103、107を互いに接続する内部ケーブル105の線109は、単一線ブリッジタップ53を形成する。
図9に示された伝送路終端装置101は、フランスで非常によく使用されている。しかし、異なる国では、または異なるネットワークオペレータによって、異なるタイプの伝送路終端装置が適用されることがある。
【0082】
図10は、導体対15の2つの電気導体15aと15bの間に接続されたさらなる伝送路終端装置111の例を示す。
図9に示された伝送路終端装置101と同様に、さらなる伝送路終端装置111は、電気導体15aと15bの間に接続されたRC回路を有する。ただし、電話呼び出し部配線がRC回路の抵抗器RとコンデンサCの間に接続されている。DSL帯に属する周波数などの高周波では、コンデンサは短絡として振る舞う。結果として、呼び出し部配線113は、顧客の企業内の配線における単一線ブリッジタップ53を形成する。