特許第5913749号(P5913749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5913749含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5913749
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20160414BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20160414BHJP
   C07C 31/38 20060101ALN20160414BHJP
【FI】
   C09K11/06
   C09K3/18 102
   !C07C31/38
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-539907(P2015-539907)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2015057025
(87)【国際公開番号】WO2015137346
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-47316(P2014-47316)
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】福島 剛史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−196482(JP,A)
【文献】 特開2012−188635(JP,A)
【文献】 特開2010−138156(JP,A)
【文献】 特開2009−073799(JP,A)
【文献】 特開2007−277516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/06
C09K 3/18
C07C 31/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
RF-A-OH 〔I〕
(ここで、RFは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有し、O、SまたはN原子を含有する直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、または
パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換され、炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有するポリフルオロアルキル基であり、該パーフルオロアルキレン基はO、SまたはN原子を含有してもよく、また該末端パーフルオロアルキル基の1つのフッ素原子は-(CH2)fOH(ここで、fは1〜3の整数である)で置換されていてもよく、
Aは炭素数1〜6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール、アリザリン、アリザリンレッドSまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンであるゲスト化合物およびホウ酸粒子の縮合体からなる含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子。
【請求項2】
一般式〔I〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
CnF2n+1(CH2)jOH 〔II〕
(ここで、nは1〜6、jは1〜6の整数である)で表されるポリフルオロアルキルアルコールが用いられた請求項1記載の含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子。
【請求項3】
含フッ素アルコール100重量部に対しホウ酸が0.01〜10重量部の割合で、ゲスト化合物がホウ酸に対して等モル量の割合で用いられた請求項1記載の含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子。
【請求項4】
含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子中のゲスト化合物量が0.1〜70重量%である請求項1記載の含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子。
【請求項5】
一般式
RF-A-OH 〔I〕
(ここで、RFは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有し、O、SまたはN原子を含有する直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、または
パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換され、炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有するポリフルオロアルキル基であり、該パーフルオロアルキレン基はO、SまたはN原子を含有してもよく、また該末端パーフルオロアルキル基の1つのフッ素原子は-(CH2)fOH(ここで、fは1〜3の整数である)で置換されていてもよく、
Aは炭素数1〜6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール、アリザリン、アリザリンレッドSまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンであるゲスト化合物およびホウ酸粒子を酸性条件下またはアルカリ性条件下で縮合反応させることを特徴とする含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子の製造法。
【請求項6】
請求項1記載の含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子を有効成分とする表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子に関する。さらに詳しくは、ゲスト化合物を包摂させた含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素原子Bは、空のp軌道を有することから、ホウ素化合物はLewis酸として作用し、様々な有機合成反応に応用されている。中でも、ホウ素原子にフッ素原子もしくはヘキサフルオロベンゼンが結合したホウ素化合物は、フッ素原子の作用により非常に強いLewis酸性を示すことが知られている。そのため、ホウ素化合物にLewis塩基たるアルコールやアミン化合物等を作用させることで、容易にボロン酸塩を形成させることができる。
【0003】
蛍光性の発色団を有する有機化合物(蛍光性化合物)は、蛍光性の無機化合物と比べると安価であるため、蛍光性のインクや顔料として、樹脂、繊維等の着色剤を始め、様々な用途に使用されている。すなわち、反応性置換基を有する蛍光性化合物は、蛍光タグとしてバイオイメージングに利用されている。また、有機電界発光素子の発光層にも蛍光性化合物を用いることができ、色変換型の有機電界発光素子ではカラーフィルターに蛍光性化合物を使用している(特許文献1)。さらに、発光ダイオードの色調や輝度の調整にも、蛍光性化合物が用いられている(特許文献2)。ここで、蛍光性とは、光照射により室温条件下で蛍光を発するということを意味する。
【0004】
ローダミン、フルオレセイン、シアニン等の代表的な蛍光性化合物だけではなく、クマリン、キノリンのような単純な構造の化合物の中にも強い蛍光を発する化合物があり、例えばクマリン誘導体は、繊維や紙の蛍光増白剤として用いられている(特許文献3)。
【0005】
無機材料表面を各種の化合物やポリマーでコーティングすることにより、様々な表面特性を発現させることが知られている。中でも、フッ素系化合物を表面処理に使用した場合には、フッ素原子の有する特性から、撥水性だけではなく撥油性の点でも表面改質できるので、様々な基材へのコーティングに利用されている。
【0006】
特に、C8のパーフルオロアルキル基を有する表面処理剤を基質に塗布するとことで、高い撥水撥油性を示すコーティングが可能であるが、近年C7以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物が、細胞株を用いた試験管内試験において、発がん因子と考えられている細胞間コミュニケーション阻害をひき起すこと、かつこの阻害は官能基ではなく、フッ素化された炭素鎖長に依存し、炭素鎖が長いもの程阻害力が高いことが報告されており、フッ素化された炭素数の長い化合物を使用したモノマーの製造が制限されるようになってきている。
【0007】
特許文献4〜5には、含フッ素アルコール、アルコキシシラン(および重合性官能基含有アルコール)を縮合反応させることが記載されているが、得られたアルコキシシラン誘導体は、光酸発生剤または光塩基発生剤を添加した硬化性組成物、あるいは無機導電塗料組成物の調製に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−213993号公報
【特許文献2】特開2008−98687号公報
【特許文献3】特開平6−294097号公報
【特許文献4】特開2004−285111号公報
【特許文献5】特開平5−186719号公報
【特許文献6】特許第4674604号公報
【特許文献7】WO 2007/080949 A1
【特許文献8】特開2008−38015号公報
【特許文献9】米国特許第3,574,770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、環境中に放出されてもパーフルオロオクタン酸等を生成させず、しかも短鎖の化合物に分解され易いユニットを有する含フッ素アルコールを用い、かつゲスト化合物として蛍光性化合物を用い、それをカプセル化することで、蛍光特性の発現と含フッ素アルコールに由来する特性を付与した含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、一般式
RF-A-OH 〔I〕
(ここで、RFは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有し、O、SまたはN原子を含有する直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、または
パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換され、炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有するポリフルオロアルキル基であり、該パーフルオロアルキレン基はO、SまたはN原子を含有してもよく、また該末端パーフルオロアルキル基の1つのフッ素原子は-(CH2)fOH(ここで、fは1〜3の整数である)で置換されていてもよく、
Aは炭素数1〜6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール、アリザリン、アリザリンレッドSまたは2,3-ジヒドロキシナフタレンであるゲスト化合物およびホウ酸粒子の縮合体からなる含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子が提供される。縮合反応は、酸性条件下またはアルカリ性条件下において行われる。炭素数としては、4〜6が好ましい。
【0011】
上記一般式〔I〕で表される含フッ素アルコールのパーフルオロアルキレン基は、O、SまたはN原子を含有する基であってもよく、かかる含フッ素アルコールは後記一般式〔IV〕によって示される。また、このポリフルオロアルキル基は該末端パーフルオロアルキル基の1つのフッ素原子は-(CH2)fOH(ここで、fは1〜3の整数である)で置換されていてもよく、かかる含フッ素アルコールは後記一般式〔V〕によって示される。
【発明の効果】
【0012】
本発明で用いられる含フッ素アルコールは、末端パーフルオロアルキル基やポリフルオロアルキル基中のパーフルオロアルキレン鎖の炭素数が6以下のものであり、炭素数6以下の短鎖の含フッ素化合物に分解され易いユニットを有しているため、環境汚染につながらない。また、得られた含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子は、ゲスト化合物として蛍光性化合物を用い、それをカプセル化することで、蛍光特性の発現と含フッ素アルコールの特性に由来する撥水撥油性などの表面特性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた反応生成物のFT-IRである。
図2】実施例1で得られた反応生成物のUVのスペクトル吸収曲線である。
図3】実施例2で得られた反応生成物のFT-IRである。
図4】実施例3で得られた反応生成物のFT-IRである。
図5】実施例3で得られた反応生成物のUVのスペクトル吸収曲線である。
図6】実施例5で得られた反応生成物のFT-IRである。
図7】実施例6で得られた反応生成物のFT-IRである。
図8】実施例7で得られた反応生成物のFT-IRである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
含フッ素アルコール〔I〕としては、RF基が炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する含フッ素アルコール、例えば一般式
CnF2n+1(CH2)jOH 〔II〕
n:1〜6、好ましくは4〜6
j:1〜6、好ましくは1〜3、さらに好ましくは2
で表されるポリフルオロアルキルアルコール等が用いられる。
【0015】
アルキレン基Aとしては、-CH2-基、-CH2CH2-基等が挙げられ、かかるアルキレン基を有するパーフルオロアルキルアルキルアルコールとしては、2,2,2-トリフルオロエタノール(CF3CH20H)、3,3,3-トリフルオロプロパノール(CF3CH2CH2OH)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパノール(CF3CF2CH20H)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタノール(CF3CF2CH2CH2OH)、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタノール(CF3CF2CF2CF2CH20H)、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサノール(CF3CF2CF2CF2CH2CH2OH)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタノール(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2OH)等が例示される。
【0016】
また、ポリフルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基の末端-CF3基が例えば-CF2H基などに置き換った基あるいは中間-CF2-基が-CFH-基または-CH2-基に置き換った基を指しており、かかる置換基を有する含フッ素アルコール〔I〕としては、例えば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(HCF2CF2CH2OH)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタノール(CF3CHFCF2CH2OH)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンタノール(HCF2CF2CF2CF2CH2OH)等が挙げられる。
【0017】
一般式〔II〕で表されるポリフルオロアルキルアルコールは、例えば特許文献6に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
まず、一般式
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cI
で表されるポリフルオロアルキルアイオダイド、例えば
CF3(CH2CH2)I
CF3(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CH2)I
C2F5(CH2CH2)2I
C3F7(CH2CH2)I
C3F7(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CH2)I
C4F9(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)2I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)2I
をN-メチルホルムアミド HCONH(CH3)と反応させ、ポリフルオロアルキルアルコールとそのギ酸エステルとの混合物とした後、酸触媒の存在下でそれに加水分解反応させ、ポリフルオロアルキルアルコール
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH
を形成させる。ただし、n+2bの値は6以下である。
【0018】
含フッ素アルコール〔I〕としてはまた、RF基がパーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換され、炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を有するポリフルオロアルキル基であり、具体的には炭素数3〜20、好ましくは6〜10のポリフルオロアルキル基であり、Aが炭素数2〜6、好ましくは2のアルキレン基である含フッ素アルコール、例えば一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔III〕
n:1〜6、好ましくは2〜4
a:1〜4、好ましくは1
b:0〜2、好ましくは1〜2
c:1〜3、好ましくは1
で表されるポリフルオロアルキルアルコール等が用いられる。
【0019】
一般式〔III〕で表されるポリフルオロアルキルアルコールは、特許文献6に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
まず、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI
で表されるポリフルオロアルキルアイオダイド、例えば
CF3(CH2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C3F7(CH2CF2)(CH2CH2)I
C3F7(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)2I
をN-メチルホルムアミド HCONH(CH3)と反応させ、ポリフルオロアルキルアルコールとそのギ酸エステルとの混合物とした後、酸触媒の存在下でそれに加水分解反応させ、ポリフルオロアルキルアルコール
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH
を形成させる。
【0020】
含フッ素アルコール〔I〕としては、RF基がO、SまたはN原子を含有する直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、具体的には炭素数3〜305、好ましくは8〜35のO、SまたはN原子含有パーフルオロアルキル基であり、Aが炭素数1〜3、好ましくは1のアルキレン基である含フッ素アルコール、例えば一般式
CmF2m+1O〔CF(CF3)CF2O〕dCF(CF3)(CH2)eOH 〔IV〕
m:1〜3、好ましくは3
d:0〜100、好ましくは1〜10
e:1〜3、好ましくは1
で表されるヘキサフルオロプロペンオキシドオリゴマーアルコール等が用いられる。
【0021】
また、含フッ素アルコール〔I〕のRF基は、末端アルコール基を含有することもでき、かかる2価の含フッ素アルコールとしては、RF基がO、SまたはN原子を含有する直鎖状または分岐状のポリフルオロアルキレン基であり、具体的には炭素数5〜160のO、SまたはN原子および末端アルコール基含有ポリフルオロアルキレン基であり、Aが炭素数1〜3、好ましくは1のアルキレン基である2価の含フッ素アルコール、例えば一般式
HO(CH2)fCF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕gO(CF2)hO〔CF(CF3)CF2O〕iCF(CF3)(CH2)fOH
〔V〕
f:1〜3、好ましくは1
g+i:0〜50、好ましくは2〜50
h:1〜6、好ましくは2
で表されるパーフルオロアルキレンエーテルジオール等が用いられる。
【0022】
一般式〔IV〕で表されるヘキサフルオロプロペンオキシドオリゴマーアルコールにおいて、m=1、e=1の化合物は特許文献7に記載されており、次のような工程を経て合成される。
一般式 CF3O〔CF(CF3)CF2O〕nCF(CF3)COOR (R:アルキル基、n:0〜12の整数)で表される含フッ素エーテルカルボン酸アルキルエステルを、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いて還元反応させる。
【0023】
さらに、一般式〔V〕で表されるパーフルオロアルキレンエーテルジオールにおいて、f=1は特許文献8〜9に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
FOCRfCOF → H3COOCRfCOOCH3 → HOCH2RfCH2OH
Rf:-CF(CF3)〔OCF2C(CF3)〕aO(CF2)cO〔CF(CF3)CF2O〕bCF(CF3)-
【0024】
ゲスト化合物としては、蛍光性化合物であるアリザリン、アリザリンレッドS、2,3-ジヒドロキシナフタレンが用いられる。
【0025】
これらの各成分は、含フッ素アルコール100重量部に対し、ホウ酸が約0.01〜10重量部、好ましくは約0.1〜5重量部の割合で、またゲスト化合物が一般にホウ酸に対して等モル量の割合で用いられる。ホウ酸の使用割合がこれよりも少ないと撥水撥油性が低くなり、一方これよりも多い割合で使用されると溶媒への分散性が悪くなる。また、ゲスト化合物の使用割合がこれよりも少ないと溶媒への分散性が悪くなり、一方これよりも多い割合で使用されると撥水撥油性が低くなる。
【0026】
これら各成分間の反応は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる。本実施例ではホウ酸に含フッ素アルコールを加えることにより、反応溶液中のpHは酸性に傾く。塩基性条件下で反応させる場合、KOH、NaOH等のアルカリ金属水酸化物、NH3、NH4OH、トリエチルアミン、コリン酸等の含N化合物が用いられる。
【0027】
得られた含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子中のゲスト化合物量は、約0.1〜70重量%、好ましくは約1〜50重量%であり、コンポジットカプセル粒子径(動的光散乱法により測定)は約10〜600nm、好ましくは約15〜350nmである。
【0028】
反応生成物である含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子は、FT-IRおよびUVの吸収スペクトルには、ゲスト化合物と同じピークがみられるので、ゲスト分子が包摂または吸着されてカプセル化されているものと考えられる。なお、含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子は、含フッ素アルコールとゲスト化合物との両者およびホウ酸粒子の反応生成物として形成されるが、この発明の目的を阻害しない限り他の成分の混在も許容される。
【実施例】
【0029】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0030】
実施例1
容量20mlの反応容器に、CF3(CF2)5(CH2)2OH〔FA-6〕1100mg(3.02ミリモル)、ホウ酸50mg(0.81ミリモル)、アリザリン200mg(0.81ミリモル)およびテトラヒドロフラン2.0mlを仕込み、室温条件下で1日撹拌した。その後、遠心分離による沈殿物の除去、溶媒留去、乾燥を行い、目的とする含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子188mg(収率14%)を得た。得られた含フッ素ホウ酸コンポジットカプセル粒子について、ゲスト化合物と含量(重量%)、FT-IRおよびUVの測定を行った。FT-IRおよびUVの吸収スペクトル中には、ゲスト化合物と同じピークがみられるので、ゲスト分子が包摂または吸着されてカプセル化されているものと考えられる。
【0031】
実施例2〜10
実施例1において、アリザリンの代りに種々のゲスト化合物が用いられた。
【0032】
以上の実施例において得られた結果は、次の表に示されている。
【0033】
以上の実施例1〜7の反応生成物について、FT-IRおよびUV-visを測定した。
FT-IR:日本分光社製FT/IR-480Plus を用い、乾燥した粉末をKBr法で
測定(図1図3〜4、図6〜8)
UV-vis:日本分光社製V-570を用い、コンポジット粒子を1,2-ジクロロ
エタン溶液で0.02g/Lの濃度に調整した分散液を可視光領域
で測定(図2図5)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8