特許第5914024号(P5914024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5914024放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法、該製造方法で得られた放射線硬化型粘着剤組成物、および、該粘着剤組成物を用いた粘着シート
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  • 特許5914024-放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法、該製造方法で得られた放射線硬化型粘着剤組成物、および、該粘着剤組成物を用いた粘着シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914024
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法、該製造方法で得られた放射線硬化型粘着剤組成物、および、該粘着剤組成物を用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/14 20060101AFI20160422BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 21/301 20060101ALN20160422BHJP
【FI】
   C09J175/14
   C09J7/02 Z
   !H01L21/78 M
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-31466(P2012-31466)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-166877(P2013-166877A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智一
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−213463(JP,A)
【文献】 特開平04−304280(JP,A)
【文献】 特開2003−082044(JP,A)
【文献】 特開2009−001766(JP,A)
【文献】 特開2003−040965(JP,A)
【文献】 特開2008−127475(JP,A)
【文献】 特開2011−140622(JP,A)
【文献】 特開2009−155464(JP,A)
【文献】 特表2007−523227(JP,A)
【文献】 特開2001−226442(JP,A)
【文献】 特開平10−017845(JP,A)
【文献】 特開2004−319810(JP,A)
【文献】 特開2007−182541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートおよびイソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーを含むモノマー成分を重合しベースポリマーを作製することを含む、硬化により粘着性が低下する放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法であって、
該ポリイソシアネートおよび該イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーの少なくとも一方が重合性二重結合含有基を含み、
該重合性二重結合含有基を有するモノマーの含有割合が、該ベースポリマーの重合に用いるモノマー成分の3重量%〜30重量%である、
放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法。
【請求項2】
前記イソシアネート基と反応し得る官能基が水酸基、アミノ基およびカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法。
【請求項3】
前記イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーが、重合性二重結合含有基を有するジオールである、請求項1または2に記載の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法。
【請求項4】
前記重合性二重結合含有基がアクリロイル基および/またはメタクリロイル基である、請求項1から3のいずれかに記載の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法、該製造方法で得られた放射線硬化型粘着剤組成物、および、該粘着剤組成物を用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハの大型化や、ICカード用途などのウエハの薄型化が進められている。これらのウエハを加工する際に使用する保護テープには、ウエハの破損防止や作業効率の向上の面から軽剥離化が望まれている。そのため、これらのウエハの加工において、放射線硬化型粘着剤を用いた放射線硬化型保護シートの使用が増えてきている。
【0003】
放射線硬化型粘着剤としては、縮合反応により側鎖に重合性炭素二重結合を付加したベースポリマー(主ポリマー)(以下、二重結合導入ポリマーともいう)を用いた放射線硬化型粘着剤が知られている(例えば、特許文献1)。この放射線硬化型粘着剤は、ベースポリマー全体が三次元網目構造に寄与することから、粘着剤の硬化および収縮による被着体へのダメージを抑えながらの軽剥離化が可能であるので多用されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0004】
上記二重結合導入ポリマーは、側鎖に官能基aを有するポリマーを得た後、官能基aと反応し得る官能基bとラジカル重合性炭素二重結合とを一分子中に有するモノマーを添加して、官能基aおよびbを反応させることにより得られる。すなわち、二重結合導入ポリマーを得るためには、重合反応と付加反応の2段階の反応が必要であり、ポリマー作製には多大な手間を要する。また、上記二重結合導入ポリマーはラジカル重合性炭素二重結合がランダムに導入されるため、粘着剤が均一に硬化しないおそれがある。その結果、粘着剤(三次元網目構造に寄与しないポリマー、すなわち、上記二重結合を有しないポリマー)による被着体の汚染が起こり得る。さらに、二重結合導入ポリマーに好適な官能基aとbの組み合わせには限りがあるため、二重結合導入ポリマーの作製に使用される材料が限定され、安定供給の面からも、二重結合導入ポリマーの他の製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−187478号公報
【特許文献2】特開2000−355678号公報
【特許文献3】特開2010−106283号公報
【特許文献4】特開2010−232301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた軽剥離性および低汚染性を有する放射線硬化型粘着剤組成物を、簡便・安価に作製することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、ポリイソシアネートおよびイソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーを含むモノマー成分を重合しベースポリマーを製造することを含み、該ポリイソシアネートおよび該イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーの少なくとも一方が重合性二重結合含有基を含む。
好ましい実施形態においては、上記イソシアネート基と反応し得る官能基は水酸基、アミノ基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である。
好ましい実施形態においては、上記イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーは重合性二重結合含有基を有するジオールである。
好ましい実施形態においては、上記重合性二重結合含有基はアクリロイル基および/またはメタクリロイル基である。
本発明の別の局面においては、放射線硬化型粘着剤組成物が提供される。この放射線硬化型粘着剤組成物は、上記放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法で得られる。
本発明のさらに別の局面においては、粘着シートが提供される。この粘着シートには、上記放射線硬化型粘着剤組成物が用いられる。
好ましい実施形態においては、上記粘着シートは半導体ウエハ加工用である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、側鎖に重合性二重結合含有基を有するベースポリマーをモノマー成分の重合工程のみで作製することができるため、優れた軽剥離性および低汚染性を有する放射線硬化型粘着剤組成物を簡便・安価に作製することができる。さらに、重合性二重結合含有基を有するモノマーを含むモノマー成分を重合するため、反応の詳細な制御が不要である。また、側鎖に重合性二重結合含有基を均一に含むベースポリマーが得られ、側鎖に重合性二重結合含有基を有しないベースポリマーは生成されない。そのため、本発明の製造方法で得られた放射線硬化型粘着剤組成物は、優れた軽剥離性および低汚染性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<A.放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、ポリイソシアネートおよびイソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう)を含むモノマー成分を重合し、ベースポリマーを作製することを含む。上記製造方法において、上記ポリイソシアネートおよび上記官能基含有モノマーの少なくとも一方が重合性二重結合含有基を含む。本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、任意の適切な添加剤をさらに添加することが好ましい。
【0011】
<A−1.ベースポリマーの作製>
本発明の製造方法は、ポリイソシアネートおよび官能基含有モノマーを含むモノマー成分を重合し、ベースポリマーを作製することを含む。本発明の製造方法では、ポリイソシアネートおよび官能基含有モノマーの少なくとも一方が重合性二重結合含有基を有している。そのため、モノマー成分の重合のみで側鎖に重合性二重結合含有基を有するベースポリマーを作製することができる。また、モノマー成分が重合性二重合結合含有基を有しているため、反応を詳細に制御することなく、均一にベースポリマーに重合性二重結合含有基を導入することができる。本発明の製造方法では、重合性二重結合含有基がベースポリマーの側鎖に均一に導入され得る。その結果、得られた放射線硬化型粘着剤組成物は、放射線照射時にベースポリマー全体が三次元網目構造を形成するので、優れた軽剥離性を発揮し、粘着剤層の硬化による被着体へのダメージを抑え得る。さらに、側鎖に重合性二重結合含有基を有しないベースポリマーが生成されないので、剥離時の粘着剤組成物による被着体の汚染も防止し得る。本発明の製造方法では、上記ポリイソシアネートおよび上記官能基含有モノマーのうち、少なくとも一方が重合性二重結合含有基を有していればよい。すなわち、ポリイソシアネートのみが重合性二重結合含有基を有していてもよく、官能基含有モノマーのみが重合性二重結合含有基を有していてもよく、両方が重合性二重結合含有基を有していてもよい。
【0012】
重合性二重結合含有基を有するモノマー成分(重合性二重結合含有基を有するポリイソシアネートおよび/または重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマー)の含有割合は、好ましくはベースポリマーの重合に用いるモノマー成分の1重量%以上であり、より好ましくは3重量%〜30重量%である。重合性二重結合含有基を有する成分の含有割合が、1重量%未満の場合には、放射線照射後に粘着剤組成物が十分に硬化しないおそれがある。
【0013】
上記重合性二重結合含有基は、放射線照射により結合し、放射線照射後のベースポリマーが三次元網目構造を形成し得るものであればよく、任意の適切なラジカル重合性二重結合含有基である。例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。ラジカル重合の安定性が高いという点から、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。
【0014】
<A−1−1.ポリイソシアネート>
上記ポリイソシアネートとしては、任意の適切なポリイソシアネートを用いることができる。例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ならびに、これらのジイソシアネートの二量体および三量体等が挙げられる。具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等、ならびに、これらの二量体および三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。また、上記三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。上記ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
反応性の制御および得られるポリマーの性状の観点からは、ポリイソシアネートとして1分子中に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートを用いることが好ましい。ベースポリマーの作製に用いるポリイソシアネート中のジイソシアネートの含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは75重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%である。
【0016】
重合性二重結合含有基を有するポリイソシアネートとしては、任意の適切なポリイソシアネートを用いることができる。例えば、上記ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性二重結合含有基を有するポリイソシアネートが挙げられる。重合性二重結合基を有するポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートに重合性二重結合含有基を有する化合物を付加反応させることにより得られ得る。重合性二重結合含有基を有するポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合性二重結合含有基を有するポリイソシアネートと重合性二重結合含有基を有しないポリイソシアネートとを併用してもよい。
【0017】
上記重合性二重結合含有基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
上記ポリイソシアネートとしては、市販品を用いてもよい。市販品のポリイソシアネートとしては、三井化学社製の商品名「タケネート600」、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネートHK」、「コロネートHX」、「コロネート2096」等が挙げられる。
【0019】
<A−1−2.イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマー>
イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマー(官能基含有モノマー)としては、任意の適切なモノマーを用いることができる。上記イソシアネート基と反応し得る官能基はイソシアネート基と付加反応し、ポリイソシアネートと官能基含有モノマーとがポリマーを形成可能なものであればよい。上記イソシアネート基と反応し得る官能基は、好ましくは水酸基、アミノ基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。官能基含有モノマーが有する官能基は、全て同一の官能基であってもよく、それぞれ異なる官能基であってもよい。上記イソシアネート基と反応し得る官能基は、反応制御が容易である点から、水酸基が好ましい。したがって、イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーとしては、ポリオールが好ましい。イソシアネート基と反応し得る官能基を少なくとも2個有するモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリオールとしては、任意の適切なポリオールを用いることができる。低分子量のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価のアルコールが挙げられる。高分子量のポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール;上記2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーの共重合体、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等のアクリルポリオール;カーボネートポリオール;アミン変性エポキシ樹脂等のエポキシポリオール;カプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリオールとしては、2価のアルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。安定したベースポリマー溶液が得られるという点から、ジオールがより好ましい。
【0021】
官能基含有モノマーとして、上記ポリオールのみを用いてもよく、水酸基以外の官能基を有するモノマーを併用してもよい。水酸基以外の官能基を有するモノマーとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジクロロジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、β−アミノエチルアルコール等のアミノ基を有するモノマー;アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0022】
重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーとしては、任意の適切なモノマーを用いることができる。例えば、上記ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーが挙げられる。材料入手の容易性、多様性、および、重合反応の安定性という点から、重合性二重結合含有基を有するジオールが好ましい。具体的には、グリセリンモノメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、2個以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基に(メタ)アクリル酸、または、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートが付加した化合物等の水酸基を有するモノマーも重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーとして用いることができる。上記2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーと、重合性二重結合含有基を有しない官能基含有モノマーとを併用してもよい。
【0025】
重合性二重結合含有基を有する官能基含有モノマーとしては、市販品を用いてもよい。例えば、日油社製の商品名「ブレンマーGLM」、共栄社化学社製の商品名「エポキシエステル40EM」、「エポキシエステル70PA」等の「エポキシエステル」シリーズ等が挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートと官能基含有モノマーとの配合比は特に制限はなく、任意の適切な値とすればよい。NCO当量/官能基当量の比(以下、NCO/官能基比)は、好ましくは0.5〜2.0である。NCO/官能基比を1に近い値とすることにより、分子量の高いベースポリマーを得ることができ、得られるベースポリマーの凝集性が向上し得る。NCO/官能基比が上記の範囲内であれば、得られるベースポリマーの凝集性を適度に確保することができる。NCO/官能基比が0.5未満または2.0を超える場合、得られるベースポリマーの分子量が低くなり、凝集力が低くなるおそれがある。得られるベースポリマーの凝集力が低い場合、別途架橋剤を添加することにより、適切な凝集力を確保し得る。NCO/官能基比が1よりも大きく、ベースポリマー末端にイソシアネート基が残存している場合、粘着剤組成物の保管中のイソシアネート基と水との反応による変性を防止する観点から、重合終了直前に官能基含有モノマーを添加し、末端を修飾することが好ましい。重合終了直前に添加するモノマーは、ベースポリマーの重合に用いた官能基含有モノマーと同一のモノマーであってもよく、異なるモノマーであってもよい。
【0027】
上記モノマー成分の重合反応は、バルクで行ってもよく、溶媒に希釈して行ってもよい。上記溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、トルエン、酢酸n−ブチル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。得られるベースポリマー溶液の粘度を適度に調整できる点から、トルエンまたは酢酸エチルが好ましい。また、ポリイソシアネートの水分による失活を防止できるという点から、トルエン等の吸水率が低い溶媒がさらに好ましい。上記溶媒は、得られるベースポリマー溶液の粘度調整のため、重合反応中に適宜添加してもよい。
【0028】
上記ベースポリマーの作製工程において、使用するポリイソシアネート、および、官能基含有モノマーの反応性に応じて、材料を一括で添加し反応させてもよく、一部材料を反応途中で添加し、反応を制御してもよい。
【0029】
上記ベースポリマーの作製工程において、重合反応を促進させるため加熱することが好ましい。加熱温度は、重合性二重結合含有基に含まれる二重結合の開裂が防止される温度であればよく、使用する溶媒の沸点に応じて、任意の適切な値に設定することができる。上記加熱温度は好ましくは40℃〜100℃である。
【0030】
ベースポリマーの側鎖の重合性二重結合含有基を保護するため、ベースポリマーを重合禁止性能を有する酸素または酸素を含む空気雰囲気下で作製することが好ましい。上記反応工程において、空気中の湿気を極力排除することが、イソシアネートの失活防止の観点から好ましい。また、必要に応じて、任意の適切な重合禁止剤を添加してもよい。
【0031】
上記ベースポリマーの作製工程において、反応をさらに促進させるため、任意の適切な反応触媒をさらに添加してもよい。上記反応触媒としては、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズIV、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、塩化第2スズ、テトラ−n−ブチルスズ、トリメチルスズヒドロキシド、オクトエ酸スズ、ジエチル2塩化スズ等の金属系触媒;ニッケル、亜鉛、鉛、銅、チタン、ジルコニウム、鉄、カルシウム、コバルト等の金属のキレート物;テトラメチルブタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデンセン−7、トリエチレンジアミン等の第三級アミン系触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、反応に用いるポリイソシアネートおよび/または官能基含有モノマーの仕込み量に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
<A−2.添加剤>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、任意の適切な添加剤を添加することをさらに含むことが好ましい。上記添加剤としては、例えば、光重合開始剤、架橋剤、粘着性付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。上記添加剤としては、光重合開始剤および/または架橋剤を用いることが好ましい。上記添加剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の添加剤を用いる場合、1種ずつ添加してもよく、2種以上の添加剤を同時に添加してもよい。上記添加剤の配合量は、任意の適切な量に設定され得る。
【0033】
<A−2−1.光重合開始剤>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、好ましくは光重合開始剤を添加することをさらに含む。放射線硬化型粘着剤組成物に光重合開始剤を添加することにより、放射線として紫外線を用いる際に、粘着剤層をより速やかに硬化させることが可能となり、軽剥離性がさらに向上した粘着剤組成物が得られ得る。
【0034】
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のべンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン類の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0035】
上記光重合開始剤として、市販品を用いてもよい。例えば、BASF製の商品名「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア369」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2959」等が挙げられる。
【0036】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、0.01重量部〜20重量部であり、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0037】
<A−2−2.架橋剤>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物の製造方法は、好ましくは架橋剤を添加することをさらに含む。上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を用いることができる。例えば、ポリイソシアネート、金属キレート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができ、好ましくはポリイソシアネートである。
【0038】
ポリイソシアネートとしては、任意の適切なポリイソシアネートを用いることができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、上記A−1−1項で例示したポリイソシアネートが挙げられる。架橋剤として用いるポリイソシアネートは、ベースポリマーの作製に用いるポリイソシアネートと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
上記架橋剤として市販のポリイソシアネートを用いてもよい。具体的には、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0040】
架橋剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、0.1重量部〜20重量部、好ましくは1重量部〜10重量部である。
【0041】
<B.放射線硬化型粘着剤組成物>
本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は、上記の製造方法により得られる。上記製造方法で粘着剤組成物のベースポリマーを作製することにより、ベースポリマー中に重合性二重結合含有基がほぼ均一に含まれる。そのため、本発明の放射線硬化型粘着剤組成物は優れた軽剥離性を有し、かつ、剥離する際に粘着剤により被着体が汚染されるのを防止し得る。
【0042】
<C.放射線硬化型粘着剤組成物を用いた粘着シート>
本発明の粘着シートは、上記放射線硬化型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する。図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。本発明の粘着シート100は、基材層10および粘着剤層20を備える。本発明の粘着シートは、任意の他の層をさらに備えていてもよい。上記任意の層としては、帯電防止層、背面軽剥離化処理層、摩擦低減層、易接着処理層等が挙げられる。基材層10と粘着剤層20との間には、中間層またはプライマー層等が備えられていてもよい。
【0043】
粘着シート100の厚みは任意の適切な値に設定することができる。上記粘着シートの厚みは好ましくは15μm〜2000μmであり、より好ましくは30μm〜1000μmであり、さらに好ましくは50μm〜500μmである。
【0044】
上記基材層10の厚みは任意の適切な値に設定することができる。例えば、上記基材層10の厚みは10μm〜500μmであり、好ましくは30μm〜200μmである。
【0045】
上記粘着剤層20の厚みは任意の適切な値に設定することができる。上記粘着剤層20の厚みは好ましくは1μm〜500μmであり、より好ましくは3μm〜200μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。粘着剤層20の厚みが1μmよりも薄い場合、粘着体表面の凹凸に追従しにくいため、粘着性が発現しにくくなるおそれがある。本発明の粘着シートをダイシング用粘着シートとして用いる場合、粘着剤層の厚みを50μm以下、より好ましくは20μm以下にすることにより、チッピングがさらに低減され、かつ、ダイシングの際の被加工物の固定を確実にし、ダイシング不良の発生をさらに抑制することができる。また、粘着剤層の厚みが500μmよりも厚い場合には、粘着シート側面のタック性が顕著となり、取り扱いに工夫をする必要が生じ得る。本発明の粘着シートをバックグラインド時の表面保護等の表面保護シートとして使用する場合、被着体表面の凹凸を良好に埋めることができるよう、被着体表面の凹凸の高さ(例えば、200μm以下)よりも粘着剤層の厚みを厚く設定してもよい。
【0046】
本発明の粘着シートは、セパレータにより保護されて提供され得る。セパレータは、実用に供するまで粘着シートを保護する保護材、粘着シートのラベル加工、粘着剤層表面の平滑化の機能を有する。セパレータとしては、例えば、シリコン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、不織布または紙などが挙げられる。上記セパレータは、粘着剤層20が環境紫外線により硬化するのを防止するため、紫外線防止処理が施されていてもよい。上記セパレータの厚みは任意の適切な値に設定することができる。上記セパレータの厚みは、通常10μm〜200μmであり、好ましくは25μm〜100μmである。
【0047】
本発明の粘着シートは、例えば、セパレータにより保護されていない場合、粘着剤層とは反対側の最外層に、背面処理を行っていてもよい。背面処理は、例えば、シリコン系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤を用いて行うことができる。本発明の粘着シートは、背面処理を行うことにより、ロール状に巻き取ることができる。
【0048】
<C−1.基材層>
基材層としては任意の適切なものを用いることができ、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの構成材料として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、セルロース系樹脂、および、これらの架橋体が挙げられる。
【0049】
上記基材層の表面は、隣接する層との密着性、および、保持性等を向上させるため、任意の表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、コーティング処理が挙げられる。また、上記基材層は、帯電防止性能を付与するため、基材層上に金属、合金、または、これらの酸化物等からなる厚みが30Å〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けてもよい。
【0050】
基材層の製造方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、例えば、カレンダー法、キャスティング法、インフレーション法、Tダイ押出し法が好適に用いられる。また、市販のプラスチックフィルムを基材層として用いてもよい。
【0051】
<C−2.粘着剤層>
粘着剤層20は、上記放射線硬化型粘着剤組成物により形成される。基材層10の上に粘着剤層20を形成する方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、基材層10に上記粘着剤組成物を直接塗布する方法や、離型剤が塗布されたシート上に上記粘着剤組成物を塗布・乾燥して粘着剤層20を形成した後、基材層10の上に転写する方法等が挙げられる。粘着剤組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が用いられる。
【0052】
<D.半導体加工用粘着シート>
上記粘着シートは、半導体加工用として好適に用いられる。以下、ダイシング用テープとしての使用方法を説明する。本発明の粘着シート100は、半導体部品等の半導体ウエハに貼り合わせた後(マウント工程)、主にダイシング工程およびピックアップ工程で使用される。マウント工程は、粘着シート100を半導体ウエハと粘着剤層20とが対向するよう貼り合せ、圧着ロール等の押圧手段により、押圧することにより行う。また、加圧可能な容器(例えば、オートクレーブ等)または真空チャンバー中で、粘着シート100を半導体ウエハと粘着剤層20とが対向するよう貼り合せ、容器内を加圧することにより貼り付けてもよい。また、加圧により貼り付けた後、押圧手段により押圧しながらさらに貼り付けてもよい。貼り付け温度は任意の適切な温度に設定することができ、好ましくは20℃〜80℃である。
【0053】
ダイシング工程は、半導体ウエハを個片化して半導体チップを製造する為に行う。ダイシング工程は、例えば、ブレードを高速回転させ、半導体ウエハを所定のサイズに切断することにより行われる。また、粘着シート100まで切込みを行なう切断方式(フルカット)等を採用してもよい。切断手段としては、高速回転するブレード、紫外、赤外、可視領域のレーザー、表面にダイヤモンドカッターなどで切り欠きを施し外力により分割する手法、被切断体の厚み方向の内部に欠陥層を形成し外力で分割する手法等の任意の適切な手段を用いることができる。半導体ウエハは、粘着シート100により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハの破損も抑制できる。
【0054】
ダイシング後の半導体ウエハのピックアップは、粘着シート100に接着固定された半導体チップを粘着シート100から剥離する為に行う。ピックアップの方法としては任意の適切な方法を採用することができる。例えば、個々の半導体チップを粘着シート100側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップをピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0055】
ピックアップされた半導体チップと粘着シート100の積層体は、粘着剤層20に放射線照射処理が施される。これにより粘着剤層が硬化し、粘着性を低下させ、ピックアップの容易化を図る。本発明の粘着シートは、上記の製造方法で得られた側鎖に重合性二重結合含有基を均一に有するベースポリマーを含む粘着剤層を有する。その結果、放射線照射処理により、粘着剤組成物が均一に硬化し、優れた軽剥離性を発揮し得る。さらに、粘着剤層が均一に硬化することにより、粘着剤による被着体の汚染が防止され得る。放射線照射の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜設定すればよい。放射線としては任意の適切な放射線を用いることができる。取り扱いの容易性などの観点から、放射線として、紫外線を用いることが好ましい。照射手段としては、任意の適切な手段を用いることができる。上記放射手段としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ブラックライト等が挙げられる。
【0056】
なお、本発明の粘着シートの用途は、半導体ウエハ加工用のみに限定されるものではなく、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等のダイシング用としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0058】
[実施例1]
1L丸底セパラブルフラスコ、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、乾燥空気導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽を備えた重合用実験装置に、ジオール(三菱化学社製、商品名:PTMG650)を68.07部、重合性二重結合含有基を有するジオール化合物(日油社製、商品名:ブレンマーGLM)を4.19部、反応触媒(和光純薬工業社製、ジラウリン酸ジブチルスズIV)を0.01部、トルエン(出光石油化学社製)を42.4部入れ、攪拌しながら、常温で乾燥空気置換を2時間行った。次いで、ポリイソシアネートとしてジイソシアネート(三井化学社製、商品名:タケネート600)を26.69部添加し、乾燥空気を流入下、攪拌しながら、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が70℃±2℃となるように制御しつつ、5時間保持した。保持後、FT−IRにてイソシアネートの特性吸収(2270cm−1)の減少が止まったことを確認し、末端イソシアネート基を修飾するためのモノマーとしてブレンマーGLMを1.05部追添加し、乾燥空気を流入下、攪拌しながら、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が70℃±2℃となるように制御しつつ、1時間保持し、ポリウレタンベースポリマー溶液を得た。なお、重合途中に、重合中の粘度上昇を防止するため、トルエンを適宜滴下した。得られたポリウレタンベースポリマー溶液は、固形分濃度が40重量%であった。
次いで、得られたポリウレタンベースポリマー溶液100部(固形分40部)に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製、商品名:コロネートHL)を0.8部、光重合開始剤(BASF製、商品名:イルガキュア651)を2部、希釈溶剤としてトルエンを20部添加し、均一化のために10分間撹拌し粘着剤組成物を得た。
【0059】
[実施例2]
1L丸底セパラブルフラスコ、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、乾燥空気導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽を備えた重合用実験装置に、ジオール(三菱化学社製、商品名:PTMG650)を43.64部、重合性二重結合含有基を有するジオール化合物(日油社製、商品名:ブレンマーGLM)を4.19部、反応触媒(和光純薬工業社製、ジラウリン酸ジブチルスズIV)を0.01部、トルエン(出光石油化学社製)を42.42部入れ、攪拌しながら、常温で乾燥空気置換を2時間行った。次いで、ポリイソシアネートとして、ジイソシアネート(三井化学社製、商品名:タケネート600)を26.69部添加し、乾燥空気を流入下、攪拌しながら、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が70℃±2℃となるように制御しつつ、2時間保持した。その後、PTMG650(三菱化学社製)を24.44部を追添加し、3時間保持した。FT−IRにてイソシアネートの特性吸収(2270cm−1)の減少が止まったことを確認し、末端イソシアネート基を修飾するためのモノマーとしてブレンマーGLMを1.05部追添加し、乾燥空気を流入下、攪拌しながら、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が70℃±2℃となるように制御しつつ、1時間保持し、ポリウレタンベースポリマー溶液を得た。なお、重合中の粘度上昇を防止するため、重合途中にトルエンを適宜滴下した。得られたポリウレタンベースポリマー溶液は、固形分濃度が40重量%であった。
次いで、得られたポリウレタンベースポリマー溶液100部(固形分40部)に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートHL)を0.8部、光重合開始剤(BASF製、商品名:イルガキュア651)を2部、希釈溶剤としてトルエンを20部添加し均一化のために10分間撹拌し、粘着剤組成物を得た。
【0060】
(比較例1)
1L丸底セパラブルフラスコ、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽を備えた重合用実験装置に、エチルアクリレートを59.00部、ブチルアクリレートを75.60部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基を有するモノマー)を30.20部、トルエン(出光石油化学社製)を164.80部、熱重合開始剤(日油社製、商品名:ナイパーBW)を0.44部入れ、攪拌しながら、常温で窒素置換を2時間行った。窒素を流入下、攪拌しながら、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が62℃±2℃となるように制御しつつ、8時間保持した後、残存モノマーの重合促進のため80℃に昇温して2時間保持させて、プレポリマーを得た。次いで、常温まで溶液を冷却しながら、2時間乾燥空気置換を行った。次いで、メタクリル基およびイソシアネート基を有するモノマー(昭和電工社製、カレンズMOI(登録商標))を32.60部、反応触媒(和光純薬工業社製、ジラウリン酸ジブチルスズIV)0.166部を添加し、乾燥空気を流入下、ウォーターバスにて実験装置内の溶液温度が62℃±2℃となるように制御しつつ、10時間保持し、数平均分子量300000の二重結合導入アクリルポリマー溶液を得た。なお、重合中の粘度上昇を防止するため、重合途中にトルエンを適宜滴下した。得られた二重結合導入アクリルポリマー溶液は、固形分濃度が40重量%であった。
次いで、得られた二重結合導入アクリルポリマー溶液100部(固形分40部)に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートHL)を0.8部、光重合開始剤(BASF製、商品名:イルガキュア651)を2部、希釈溶剤としてトルエンを67.6部添加し、均一化のために10分間撹拌し、粘着剤組成物を得た。
【0061】
[評価]
実施例1〜2および比較例1で得られた粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるよう、それぞれ厚み50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名:ルミラーS105)のコロナ処理面に塗布し、120℃の乾燥機で5分間乾燥させ、粘着シートを得た。得られた粘着シートを用いて以下の評価を行った。
(1)紫外線照射前の粘着力の評価
粘着シートを25mm幅×150mm長さに切断し、それぞれ23℃(室温)で鏡面処理したミラーシリコンウエハ(信越半導体(株)製、商品名:CZN<100>2.5−3.5(4インチ))に2kgのローラーで貼り合わせ、1時間放置した。その後、剥離速度300mm/分、剥離角度90度にて剥離し、粘着力を測定した。
(2)紫外線照射後の粘着力の評価
粘着シートを25mm幅×150mm長さに切断し、それぞれ23℃(室温)で鏡面処理したミラーシリコンウエハ(信越半導体(株)製、商品名:CZN<100>2.5−3.5(4インチ))に2kgのローラーで貼り合わせ、1時間放置した。次いで、テープ背面側より紫外線を下記条件にて照射し、剥離速度300mm/分、剥離角度90度にて剥離し、粘着力を測定した。
<紫外線照射条件>
装置:日東精機社製、UM−810
照度:60mJ/cm
照射時間:5秒
光量:300mW/cm
(3)パーティクル数測定
得られた粘着シートを150mm幅×200mm長さに切断し、それぞれ23℃(室温)で鏡面処理したミラーシリコンウエハ(信越半導体(株)製、商品名:CZN<100>2.5−3.5(4インチ))に5kgのローラーで貼り合わせ、1時間放置した。次いで、テープ背面側より紫外線を下記条件にて照射し、剥離速度300mm/分、剥離角度90度にて剥離し、ウエハ上の0.28μm以上の転写パーティクル数をサーフスキャン6200(テンコール社製)を用いて測定した。パーティクル数が100個以下であれば、ウエハの汚染が十分に防止できている。
<紫外線照射条件>
装置:日東精機社製、UM−810
照度:60mJ/cm
照射時間:5秒
光量:300mW/cm
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1および2の製造方法は、重合性二重結合含有基を有するモノマーを用いるため、短時間でベースポリマー溶液を作製することができた。得られた放射線硬化型粘着剤組成物は、好適に用いることができるものであった。また、粘着シート剥離後の被着体への粘着剤組成物による汚染も抑えることができた。
【0064】
比較例1の製造方法では、ベースポリマー溶液の作製に長い時間を要した。また、比較例1の製造方法で得られた粘着剤組成物は優れた軽剥離性を有していたが、粘着シート剥離後の被着体への粘着剤組成物の残留量が多かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法によれば、より短時間で、優れた軽剥離性を有する放射線硬化型粘着剤組成物が得られる。本発明の粘着シートは、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等のダイシング用に好適に用いることができる。例えば、各種半導体の製造工程のうち、半導体ウエハの裏面を研削する研削工程においてウエハの表面を保護するために用いる保護シートや、半導体ウエハを素子小片に切断・分割し、該素子小片をピックアップ方式で自動回収するダイシング工程においてウエハの裏面に貼付するダイシング用粘着テープとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 粘着剤層
20 基材層
100 粘着シート
図1