特許第5914064号(P5914064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914064
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】プリント装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20160422BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20160422BHJP
   B29D 30/06 20060101ALN20160422BHJP
   B60C 13/00 20060101ALN20160422BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C13/02
   !B29D30/06
   !B60C13/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-54653(P2012-54653)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-188647(P2013-188647A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年8月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128371
【氏名又は名称】株式会社エルエーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100080698
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 治親
(72)【発明者】
【氏名】買場 佶
(72)【発明者】
【氏名】村井 秀世
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏至
【審査官】 中島 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−125440(JP,A)
【文献】 特開2008−016708(JP,A)
【文献】 特開2008−027534(JP,A)
【文献】 特開昭59−167773(JP,A)
【文献】 特開2000−339443(JP,A)
【文献】 特開2006−111242(JP,A)
【文献】 特開平09−320950(JP,A)
【文献】 特開平11−334046(JP,A)
【文献】 特開2007−257764(JP,A)
【文献】 特開2004−074666(JP,A)
【文献】 特開平05−238005(JP,A)
【文献】 特開2003−326694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00− 5/04
B05C 7/00−21/00
B29C 67/20−67/24
B29D 30/00−30/72
B60C 1/00−19/12
B05D 1/00− 7/26
B41J 2/01; 2/165−2/20;2/21− 2/215
G06T 1/00− 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーナッツ状の被プリント面を上方に向けて載置したプリント対象物を回転させる回転台と、
インクを吐出するノズルを複数備え、前記回転台に載置された前記プリント対象物の被プリント面の回転の外側から回転中心に向かって移動可能なプリントヘッドと、
前記プリントヘッドの移動速度、前記回転台の回転速度及び前記複数のノズルからのインクの吐出を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記回転台に載置した前記プリント対象物を回転させつつ、前記プリントヘッドを連続的に移動させながら前記複数のノズルからインクを吐出させると共に、回転中心に近づくにしたがって前記回転速度及び前記プリントヘッドの移動速度を速くすることにより前記被プリント面と前記プリントヘッドの相対速度が一定になるようにして前記被プリント面に螺旋状にプリントするように制御することを特徴とするプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント装置に係り、特に、タイヤの側面等のドーナッツ状の面に所望の絵柄や文字をプリントするプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤはゴムの補強剤としてカーボンブラックが配合されていることから黒いものが殆どであるが、黒だけでなくカラフルなカラータイヤの要望もあったことからカーボンブラックを使用しない補強剤も開発され、種々の色のタイヤを製造することができるようになった。しかし、コスト面や性能面でカーボンブラックを越える補強剤がないことからカラータイヤが普及しない要因となっている。
【0003】
そのため、タイヤのゴム自体をカラーにするのではなく、黒いタイヤにプリントによってカラフルな色を付する方法や装置が提案されている。例えば、特許文献1はタイヤの側面にフルカラーの印刷を施すための装置及び方法を開示している。その装置としては、具体的には、搬入部、反転部、印刷部、搬出部及びこれらを制御する制御部及び印刷部の印刷動作を制御する印刷制御部からなり、印刷部ではタイヤの印刷面を清浄及びプライマー塗布を行い、次いでIJP(インクジェット)印刷装置で印刷を行い、次いで、各印刷の度毎にUVランプUの照射によりインクの硬化・定着を行うものであり、印刷時には識別カメラによって予め付されたタイヤの印刷原点マークを認識し、リングエンコーダが発生する回転パルスの所定のパルス数目を印刷開始位置とし、各IJPヘッドに印刷開始信号を送信して各IJPヘッドからインキを噴射することにより、タイヤの所定の印刷位置に所定の印刷パターンを印刷するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−125440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のインクジェット印刷装置は、印刷の制御に識別カメラを用いて印刷原点マークの認識や原点信号の発生等を行っていることからカメラのレンズに汚れやごみ等が付着した場合に正しい印刷ができなくなる恐れがあり、また、部品点数も多く制御が複雑になるという問題があった。
また、搬入部、反転部、印刷部、搬出部を備え、各部は搬送チェーンコンベアで連結されて構成されており、装置が大型化するという問題があった。
さらに、印刷時には上抑えロールによってタイヤの側面を強制的に抑え込んで平坦性を確保した上で印刷を行うような構成とされているがタイヤの側面を抑え付けて印刷した印刷面が上抑えロールによる負荷が解放されて元の状態に復元した後では印刷に歪みが生じることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明の目的は、かかる従来の装置の欠点を改良し、簡単な構成でありながらタイヤの側面等のドーナッツ状の面に正確かつ美しい絵柄や文字をフルカラーでプリントすることが可能なプリント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、ドーナッツ状の被プリント面を上方に向けて載置したプリント対象物を回転させる回転台と、インクを吐出するノズルを複数備え、回転台に載置されたプリント対象物の被プリント面の回転の外側から回転中心に向かって移動可能なプリントヘッドと、プリントヘッドの移動速度、回転台の回転速度及び複数のノズルからのインクの吐出を制御するコントローラとを備え、コントローラは、回転台に載置したプリント対象物を回転させつつ、プリントヘッドを連続的に移動させながら複数のノズルからインクを吐出させると共に、回転中心に近づくにしたがって回転速度及びプリントヘッドの移動速度を速くすることにより被プリント面とプリントヘッドの相対速度が一定になるようにして被プリント面に螺旋状にプリントするように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタイヤ用プリント装置によれば、プリントヘッドの移動を停止させることなく連続してインクを吐出しながらプリントすることができるので短時間にプリントを行うことができるという効果がある。
また、簡単な構成でありながらタイヤの側面等のドーナッツ状の面に所望の絵柄や文字をフルカラーでプリントすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明に係るプリント装置の概要を示す側面図、(b)はその平面図である。
図2図1に示すプリント装置の構成図である。
図3】コントローラ構成を示すブロック図である。
図4】ノズルによる吐出機構の構成を示す構成図である。
図5】(a)及び(b)は回転するプリント対象物へのプリントを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るプリント装置について好ましい一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)は本発明に係るプリント装置の概要を示す側面図、(b)はその平面図である。
【0012】
[プリント装置の構成]
図示されたプリント装置1は、概略として、プリント対象物の被プリント面にフルカラーのプリントを行うプリント部10と、プリント部10の後述するインクタンク21a〜21fに加圧エアを送るエアコンプレッサ40と、プリント対象物へのプリントを制御するプリントのコントローラ50を備えて構成されている。
【0013】
プリント部10は、プリントを行うための各種の機器によって形成れたプリント本体20と、プリント対象物を回転可能に載置するテーブル部30を備えて構成されており、プリント本体20及びテーブル部30は架台11に配置されている。
【0014】
プリント本体20は、各色別のインク(塗料)をそれぞれ収容する6つのインクタンク21a〜21fと、各色のインクタンク21a〜21fのそれぞれから送られたインクをプリント対象物の被プリント面に吐出するためのノズル23a〜23fを所定の配列で配置したプリントヘッド23と、プリントヘッド23をテーブル部30に載置されたプリント対象物の被プリント面の近傍へ位置させると共にプリント時には被プリント面の回転の外側から回転中心に向かって移動させる案内装置24を備えている。また、プリント本体20は、エアコンプレッサ40から送られてくる加圧エアの圧力を調整してインクタンク21a〜21fのそれぞれに送るエアレギュレータ26と、案内装置24に移動可能に取り付けられたプリントヘッド23のプリント対象物の被プリント面との高さ位置を調整するノズル上下移動機構29を備えている。
【0015】
インクタンク21は、上述のように、6つのインクタンク21a〜21fを備えて構成されており、インクタンク21aには白(W1)のインクが収容され、インクタンク21bにも白(W2)のインクが収容され、インクタンク21cには黒(K)のインクが収容され、インクタンク21dにはシアン(C)のインクが収容され、インクタンク21eにはマゼンタ(M)のインクが収容され、インクタンク21fにはイエロー(Y)のインクが収容されている。尚、インクタンク21a,21bにはそれぞれ白(W1及びW2)のインクが充填されているが白(W)はインクタンク21aのみとし、インクタンク21b〜21eはそれぞれ黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)とし、インクタンク21fは予備とすることもできる。また、インクタンク21a〜21fの数はこれに限定されるものではなく、適宜の数を配置してもよい。また、各色のインクは環境に優しい水性インクが利用される。
【0016】
そして、各インクタンク21a〜21fのそれぞれはインク供給チューブを介して各スプレーガンのノズル23a〜23fと接続されている。すなわち、インクタンク21a(W1)にはノズル23aが接続され、インクタンク21b(W2)にはノズル23bが接続され、インクタンク21c(K)にはノズル23cが接続され、インクタンク21d(C)にはノズル23dが接続され、インクタンク21e(M)にはノズル23eが接続され、インクタンク21fにはノズル23f(Y)が接続されている。尚、図示された各色のノズル23a〜23fは各インクタンク21a〜21fに対して1つとされているが、これに限らず各色のインクタンク21a〜21fに対してノズル23a〜23fを複数、例えば5個ずつ設けることも可能である。
【0017】
ノズル上下移動機構29は、プリントヘッド23の高さ位置の調整を行うための機構である。ノズル上下移動機構29は、図2に示すように、ネジ溝を備えたネジ部29bに、このネジ部29bの回転によって上下移動するナット部29cが配置されており、ネジ部29bの上端にはハンドル29aを有して構成されている。そして、ナット部29には案内装置24が取り付けられている。これにより、ハンドル29aを回すことによって案内装置24の高さ位置を調整することによって案内装置24に取り付けられたプリントヘッド23の高さを調整することが可能となる。尚、ネジ部29bは架台11上に立設された支持台28に回転可能に支持されて立設されている。
【0018】
案内装置24は、直線状のレールの上を往復走行する図示しない走行ブロックを備えた直動装置によって構成されており、この走行ブロックにプリントヘッド23が取り付けられて構成されている。また、走行ブロックは水平軸移動モータ25によってレール上を走行するように構成されている。そして、水平軸移動モータ25は、後述するコントローラ50からの制御信号を受けて図示しない走行ブロックを移動させることによりテーブル部30に載置されたプリント対象物の被プリント面への所定位置へプリントヘッド23を案内してプリントを行うようになっている。また、案内装置24は、後述するテーブル部30にプリント対象物を載置するための作業を阻害することがないよう、ナット部29を回転させる等して適宜の場所に待避させることができるようになっている。
【0019】
テーブル部30は、プリント対象物を回転可能に載置する載置台であり、概略として、プリント対象物を載置して回転するターンテーブル33と、プリント対象物の回転中心を位置決めする位置決めガイド31と、位置決めガイド31を中心にしてターンテーブル33を回転させる回転軸モータ35(図2参照)とを備えて構成されている。そして、ターンテーブル33の表面には回転時にプリント対象物がターンテーブル33と共に回転するよう滑り止め部材36、例えば、板状のゴム等が配設されている。本実施形態ではプリント対象物として自動車のタイヤTを示している。すなわち、タイヤTはホイルを取り付けた状態でホイルの中心に設けられている開口部を位置決めガイド31へ挿入し、ホイルの裏面側がターンテーブル33に回転可能に保持されるようにしてタイヤTのプリントを施すべき面側を上にして載置する。このように、単に位置決めガイド31にタイヤTのホイルの開口部を挿入するようにして配置することでタイヤTの中心をターンテーブル33の回転中心に簡単に位置合わせすることができるようになっている。また、ターンテーブル33にゴム等の滑り止め部材36を配設したことでターンテーブル33にタイヤTを載置するだけで安定して回転させることができるのでタイヤTの取り付け取り外しの作業性が向上する。そして、回転軸モータ35は後述するコントローラ50からの制御信号を受けてターンテーブル33上に載置されたタイヤTを回転させる。
【0020】
エアコンプレッサ40は、図4に示すように、各色のインクが充填されたインクタンク21a〜21fのそれぞれに加圧エアの供給を行う加圧エアの供給装置である。このエアコンプレッサ40から供給された加圧エアは、エアレギュレータ26によって所定の圧力に調整された後、各インクタンク21a〜21fへ供給され、各ノズル23a〜23fからインクを加圧状態で吐出してプリントを行う。具体的には、図4に示すように、ノズル23aの内部には電磁アクチュエータ231aと、電磁アクチュエータ231aによって開閉動作を行うニードル弁232が配置されおり、電磁アクチュエータ231aはコントローラ50内に設けられた後述するノズル駆動コントローラ53aによってその動作が制御されるようになっている。これにより、ノズル23aからのインク(W)の吐出の制御が行われ、タイヤTの被プリント面へのプリントが行われる。ノズル23aからのインク(W)の吐出は、その吐出量の多少による色の濃淡についても後述するコントローラ50によって制御が行われるようになっている。尚、図4ではノズル23aについて示しているが他のノズル23b〜23fも同様の構造となっている。
【0021】
ここで、プリントヘッド23のノズル23a〜23fは、最初に白(W1及びW2)のインクからペイントが開始されるようにして配置されている。具体的には、図1(b)及び図2に示すように、最も位置決めガイド31に近い側に白(W)のインクをプリントするためのノズル23aが配置されている。これにより、初めにノズル23a,23bによって白(W1及びW2)のインクをプリントした後、プリントヘッド23の前進によって次に配置された黒(K)のインクをプリントするノズル23cが白(W)のインクがプリントされた部分に位置することとなる。白(W1及びW2)を最初にプリントするのは各色のインクの色を正しく発色させるためである。従って、白(W1及びW2)が最初であれば、その他の色の順番は特に限定されることはない。
【0022】
次に、コントローラ50は、図示しない中央制御装置(CPU)及びメモリ等の記憶装置からなる演算装置51を備えて構成されており、演算装置51の記憶装置に記録されたプログラムをCPUによって処理することにより各種の動作を行ういわゆるコンピュータの機能を有している。コントローラ50には、図3に示すように、ノズル23a〜23fからの各インクの吐出の制御を行うノズル駆動コントローラ53aと、水平軸移動モータ25の回転を制御することによってプリントヘッド23の水平方向への移動の制御を行う水平移動軸モータコントローラ53bと、回転軸モータ35を制御してターンテーブル33上に載置されたプリント対象物(タイヤT)の回転数を制御する回転軸モータコントローラ53cが設けられており、図示しない記憶装置に記録されたプログラムによって実行されることでそれらの機能が発揮されるようになっている。尚、CPUやメモリ等の記憶装置等の機器類やその具体的な構造等については公知であり、その詳しい説明は省略する。
【0023】
また、コントローラ50は、プリント部10及びテーブル部30の動作の設定を入力するための入力部61を備えており、それらはキーボードの他、タッチパネル62によって提供されている。また、プリント装置1の動作状況を示すための表示部63を備えている。尚、タイヤTの被プリント面にプリントする絵柄や文字等のデータは入力部61のインターフェイスを介してコントローラ50に読み込まれ、タッチパネル62からの入力指示に基づいてコントローラ50のノズル駆動コントローラ53a、水平移動軸モータコントローラ53b、回転軸モータコントローラ53cの動作が制御されてプリントが行われる。
【0024】
次に、コントローラ50によるプリント制御について説明する。図5(a)に示すように、本発明に係るプリント装置1は、プリント対象物であるタイヤTを回転させると同時に、プリントヘッド23を外周側から回転中心である位置決めガイド31方向に連続移動させることにより、タイヤTの被プリント面に螺旋状にプリントを行うものである。そして、この螺旋状のプリントは、ターンテーブル33の回転速度とプリントヘッド23の移動速度さらにはノズル23a〜23fからのインクの吐出位置や吐出量等を水平移動軸モータコントローラ53bと回転軸モータコントローラ53cさらにはノズル駆動コントローラ53aを互いにリンクさせながら制御を行なうことによって行われる。
【0025】
具体的には、回転するタイヤTの円心を座標(0,0)の原点と定義する。そして、プリントする画像データの中心位置は、タイヤTの中心と定義する。プリントが行われている際は、タイヤTがターンテーブル33上に固定され、プリントヘッド23が回転していると解釈してノズル23a〜23fの位置を回転中心からの座標値で表現する。ノズル23a〜23fからインクを吐出すべき位置をドット位置と称し、その位置を一定回転角毎または一定距離毎に決定する。次いで、このドット位置に対応する画像データの画素値を、そのドット位置の表現するデータ値とする。各ノズル23a〜23fのドット位置に対応する画像データ上の座標は、タイヤTの回転角とノズル23a〜23fの移動量から、回転行列式にて直交座標から極座標に変換して求める。
【0026】
【数1】
【0027】
次いで、回転行列式による変換によって求めた画像データの座標位置における画素データをコントローラ50によってサンプリングする。この時に座標値が整数にならない場合は、コントローラ50は画像処理の補間を行ない、あるいは、サンプリングした画素データの濃度値からノズル23a〜23fから吐出すべきインクの量を算出する際に1ドットで表現出来なかった誤差分については周辺ドットに拡散する誤差拡散方式を使用する等して画像データを適宜に修正してプリントを行う。このようなプリントにおける一連の動作はコントローラ50の演算装置51に設けられた記憶装置に記録保存されたプログラムに基づくノズル駆動コントローラ53a、水平移動軸モータコントローラ53b及び回転軸モータコントローラ53cによって実行される。このようにしてタイヤTの被プリント面にプリントを行う。
【0028】
プリント時におけるコントローラ50による各部の制御は、水平移動軸モータコントローラ53bと回転軸モータコントローラ53cさらにはノズル駆動コントローラ53aを互いにリンクさせることにより、例えば、ターンテーブル33の回転速度とプリントヘッド23が回転中心に近づくほど速くすることにより螺旋軌道上のプリントヘッド23とタイヤTの相対移動速度が均一になるようにしてプリントしたり、ターンテーブル33の回転数は一定に保持しながらプリントヘッドの移動速度を速めたり、あるいは、ノズル23a〜23fからの各インクの吐出量及び吐出速度を適宜に調整することによって行われる。
【0029】
[プリンタ装置の動作]
次に、プリント装置1の動作について説明する。
初めに、プリント対象物の被プリント面にプリントすべき絵柄や文字等の画像データを入力部61を介してコントローラ50の演算装置51に記録保存する。そして、プリントを行うべきプリント対象物(タイヤT)の被プリント面を上にしてテーブル部30のターンテーブル33に載置する。このとき位置決めガイド31によってタイヤTはその中心がターンテーブル33の回転中心に位置されると共に、ターンテーブル33の表面に設けられた滑り止め部材36によってしっかりと保持される。そして、ハンドル29aを操作してプリントヘッド23を所定の高さ位置に合わせる。次いで、コントローラ50のタッチパネル62の図示しない操作ボタンを押してプリントを開始する。タッチパネル62上のプリント開始ボタンが押されると水平移動軸モータコントローラ53bと回転軸モータコントローラ53cによってそれぞれ水平軸移動モータ25及び回転軸モータ35が作動を開始してプリントを開始する。尚、ターンテーブル33の回転速度はおおよそ1〜2回転/秒であるが、プリントする絵柄や文字に応じて適宜の速度で回転させることができる。
【0030】
プリントヘッド23が被プリント面へのプリント開始位置に位置すると最初にノズル23aから白(W1)のインクが吐出されてプリントが開始される。プリントヘッド23は回転中心方向に移動しつつターンテーブル33が回転しているので被プリント面に対するノズル23aからの白(W1)のインクによるプリントは螺旋状に行われることになる。そして、プリントヘッド23のターンテーブル33の回転によってノズル23bがノズル23aのプリント開始位置に位置するとノズル23bからのプリントが開始されて白(W2)のインクがプリントされる。そして、ノズル23aは新たな被プリント面へ白(W1)のインクでプリントを行う。さらにプリントヘッド23が回転中心方向に移動しつつターンテーブル33が回転してノズル23cがノズル23a及びノズル23bのプリント開始位置に位置すると今度はノズル23cからのプリントが開始されて白(W1)及び白(W2)がプリントされた場所に黒(K)のインクがプリントされる。この動作を順次繰り返しながらプリントヘッド23はタイヤTの被プリント面へ螺旋状にプリントが行われる。
【0031】
このプリントヘッド23によるプリントは、コントローラ50のノズル駆動コントローラ53aによって画像データに基づき各ノズル23a〜23fからインクを吐出すべきドット位置を一定回転角毎または一定距離毎に決定し、このドット位置に対応する画像データの画素値をそのドット位置の表現するデータ値とし、回転行列式(数1)にて変換した座標位置に基づいて行われる。そして、コントローラ50の水平移動軸モータコントローラ53b及び回転軸モータコントローラ53cはプリントヘッド23とターンテーブル33の回転速度とを制御して演算装置51に記憶された画像データに基づく絵柄や文字等を被プリント面に描く。
【0032】
また、回転行列式(数1)による変換の際に座標値が整数にならない場合やサンプリングした画素データの濃度値からノズル23a〜23fから吐出すべきインクの量を算出する際に1ドットで表現出来なかった誤差分等については、ノズル駆動コントローラ53aによって各ノズル23a〜23fから吐出するインクの量を制御することで適宜の画像処理が行われる。
【0033】
以上の動作によりプリント装置1はプリント対象物であるタイヤTの側面である被プリント面に所定の絵柄や文字のプリントを行う。
【0034】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態によるプリント装置によれば、プリントヘッドの移動を停止させることなく連続してインクを吐出しながらプリントすることができるので短時間にプリントを行うことができるという効果がある。また、従来に比べて簡単な構成でありながらタイヤの側面等のドーナッツ状の面に所望の絵柄や文字をフルカラーでプリントすることができるという効果がある。
【0035】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は詳述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。プリント対象物としてタイヤTを例にして説明したが、これに限定されるものではなく、リング状、円盤状のものや適宜の形状を備えたプリント対象物にプリントを行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 プリント装置
10 プリント部
11 架台
20 プリント本体
21a〜21f インクタンク
23 プリントヘッド
23a〜23f ノズル
24 案内装置
25 水平軸移動モータ
26 エアレギュレータ
28 支持台
29 ノズル上下移動機構
29a ハンドル
29b ネジ部
29c ナット部
30 テーブル部
31 位置決めガイド
33 ターンテーブル33
35 回転軸モータ
36 滑り止め部材
40 エアコンプレッサ
50 コントローラ
51 演算装置
53a ノズル駆動コントローラ
53b 水平移動軸モータコントローラ
53c 回転軸モータコントローラ
61 入力部
62 タッチパネル
63 表示部
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5