特許第5914169号(P5914169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5914169フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914169
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20160422BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160422BHJP
   C08L 75/00 20060101ALI20160422BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20160422BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20160422BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20160422BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160422BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 127/12 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 175/00 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160422BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160422BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08L63/00 C
   C08L75/00
   C08K5/29
   C08K5/49
   C08K5/3477
   C08K3/22
   H05K1/03 610G
   H05K1/03 610L
   C09J127/12
   C09J175/00
   C09J163/00
   C09J11/04
   C09J11/08
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
   B32B15/082 B
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-121259(P2012-121259)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-245320(P2013-245320A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年1月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和男
(72)【発明者】
【氏名】田井 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩野 暢行
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057124(WO,A1)
【文献】 特開2009−277764(JP,A)
【文献】 特開2008−012418(JP,A)
【文献】 FEVE,2006年,p.72,77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/12
C08L 63/00
C08L 75/00
C08K 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と、イソシアネート化合物と、エポキシ樹脂と、有機フィラー及び/又は無機フィラーと、を含む、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物であって、
前記フッ素樹脂中のフッ素含有量が1〜50質量%であり、前記フッ素樹脂の水酸基当量が300〜5500g/当量であり、
前記フッ素樹脂のカルボキシル基1個に対して、前記エポキシ樹脂のエポキシ基を0.2〜7個含む、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂のカルボキシル基当量が1400g/当量以上である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂の重量平均分子量が5000〜150000である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネートを含むブロック型イソシアネートからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フッ素樹脂の水酸基1個に対して、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基を0.05〜2.5個含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機フィラーは、有機リン化合物、ホスファゼン化合物、メラミンからなる群から選択される1種以上であり、前記無機フィラーは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機フィラー及び/又は無機フィラーの含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対して〜100質量部である、請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、が積層されたカバーレイフィルム。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、
前記接着層の第1の面に前記基材フィルムが積層され、第2の面に前記銅箔が積層された、片面銅張り積層板。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、
前記基材フィルムの両面に前記接着層が積層され、前記接着層の前記基材フィルムが積層された面とは反対側の面に前記銅箔が積層された、両面銅張り積層板。
【請求項12】
前記基材フィルムは、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、フッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、請求項9〜11のいずれか1項記載のカバーレイフィルム又は積層板。
【請求項13】
前記フッ素系樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ジフルオロエチレン−トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドからなる群から選択される1種以上である、請求項12記載のカバーレイフィルム又は積層板。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、銅箔と、が積層された樹脂付き銅箔。
【請求項15】
請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むボンディングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物、並びにそれを含む、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板における伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、プリント配線板には、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。このような要求に対して、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」とも言う。)に用いられる基材フィルムとして、従来のポリイミド、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、低誘電特性を有する液晶ポリマー(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィドなどの基材フィルムが提案されている。
しかしながら、低誘電特性を有する基材フィルムは、低極性のため、従来のエポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を用いた場合、接着力が弱く、カバーレイフィルム、積層板等FPC用部材の作製が困難であった。
上記課題を解決する一つの手段として、特開2004−352817号公報には、LCPとの接着性が改善された樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−352817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物は、吸湿時の耐熱性が不十分であり、さらにSPS(シンジオタクチックポリスチレン)やPPS(ポリフェニレンスルフィド)との接着性が得られ難い。
一方で、低誘電特性を有する基材フィルムとの接着性が高い接着剤として、シリコーン系樹脂が挙げられる。しかしながら、シリコーン系樹脂は、加工工程において回路を汚染し易く、これにより接続信頼性が低下するという問題がある。
また、LCP基材を用いる場合は、接着剤を用いずにLCPを溶融させ、銅箔と貼り合せて2層基板を作製する方法がある。しかしながらこの方法は、貼り合せ時に高温で処理する必要があるため、加工時にシワが入りやすく、歩留まりが低下するという問題がある。
上記事情に鑑み、本発明は、低誘電特性を有する基材フィルムを用いた場合でも、高い接着性、耐はんだリフロー性を得ることができ、且つ、電気特性にも優れたフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フッ素樹脂と、イソシアネート化合物と、を含み、前記フッ素樹脂中のフッ素含有量と水酸基当量とが特定の範囲に調整された樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
フッ素樹脂と、イソシアネート化合物と、エポキシ樹脂と、有機フィラー及び/又は無機フィラーと、を含む、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物であって、
前記フッ素樹脂中のフッ素含有量が1〜50質量%であり、前記フッ素樹脂の水酸基当量が300〜5500g/当量であり、
前記フッ素樹脂のカルボキシル基1個に対して、前記エポキシ樹脂のエポキシ基を0.2〜7個含む、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物。
〔2〕
前記フッ素樹脂のカルボキシル基当量が1400g/当量以上である、〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記フッ素樹脂の重量平均分子量が5000〜150000である、〔1〕又は〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネートを含むブロック型イソシアネートからなる群から選択される1種以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記フッ素樹脂の水酸基1個に対して、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基を0.05〜2.5個含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記有機フィラーは、有機リン化合物、ホスファゼン化合物、メラミンからなる群から選択される1種以上であり、前記無機フィラーは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカからなる群から選択される1種以上である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記有機フィラー及び/又は無機フィラーの含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対して1〜100質量部である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の樹脂組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、が積層されたカバーレイフィルム。
〔10〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、
前記接着層の第1の面に前記基材フィルムが積層され、第2の面に前記銅箔が積層された、片面銅張り積層板。
〔11〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、
前記基材フィルムの両面に前記接着層が積層され、前記接着層の前記基材フィルムが積層された面とは反対側の面に前記銅箔が積層された、両面銅張り積層板。
〔12〕
前記基材フィルムは、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、フッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含む、〔9〕〜〔11〕のいずれか1項記載のカバーレイフィルム又は積層板。
〔13〕
前記フッ素系樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ジフルオロエチレン−トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドからなる群から選択される1種以上である、〔12〕記載のカバーレイフィルム又は積層板。
〔14〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる接着層と、銅箔と、が積層された樹脂付き銅箔。
〔15〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むボンディングシート。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、低誘電特性を有する基材フィルムを用いた場合でも、高い接着性、耐はんだリフロー性を得ることができ、且つ、電気特性にも優れたフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物(以下、「FPC用樹脂組成物」とも言う。)は、フッ素樹脂と、イソシアネート化合物と、を含む、フレキシブルプリント配線板用樹脂組成物であって、前記フッ素樹脂中のフッ素含有量が1〜50質量%であり、前記フッ素樹脂の水酸基当量が300〜5500g/当量である。
本実施形態において「フレキシブルプリント配線板用」とは、フレキシブルプリント配線板の部材用であることを示し、具体的には、例えば、カバーレイフィルム、積層板(基板)、樹脂付き銅箔、ボンディングシート等に用いられることを示す。
【0010】
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、低誘電特性の液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等への接着性、耐はんだリフロー性が優れている。従って、従来のポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等だけでなく、それらの低誘電特性の樹脂を基材としたカバーレイフィルム、積層板(基板)等を作製することが可能となる。
【0011】
[フッ素樹脂]
本実施形態におけるフッ素樹脂とは、分子構造中にフッ素を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(4)の樹脂が挙げられる。
(1)フッ化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルモノマーを含む共重合体(更にエチレンを含んでいてもよい)
(2)三フッ化エチレン、ビニルエーテル、ビニルモノマーを含む共重合体(更にエチレンを含んでもよい)
(3)四フッ化エチレン単位、ビニルエーテル、ビニルモノマーを含む共重合体(更にエチレンを含んでもよい)
(4)六フッ化プロピレン単位、ビニルエーテル、ビニルモノマーを含む共重合体(更にエチレンを含んでもよい)
また、上記(1)〜(4)には、骨格中にハロゲン分子が含まれていてもよい。
【0012】
上記の中でも、結合の安定性からの観点から、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレンを含む共重合体が好ましい。上記フッ素樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記(2)の共重合体の具体例としては、例えば、大日本インキ社製フルオネートシリーズ(K−700、K−702、K―704、K−705、WQZ―660等)、旭硝子社製ルミフロンシリーズ(LF200、LF400、LF600、LF600X、LF800、LF906N、LF910LM、LF916N、LF936、LF9010等)等が挙げられる。
上記(3)の共重合体の具体例としては、例えば、ダイキン工業社製ゼッフルシリーズ(GK−500、GK−510、GK−550、GK−570等)等が挙げられる。
上記(4)の共重合体の組成は、六フッ化プロピレンが5〜60mol%、ビニルエーテルが19.5〜55mol%、ビニルが26〜55mol%であることが好ましい。
【0014】
フッ素樹脂中のフッ素含有量は、1〜50質量%であり、好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%である。フッ素含有量が1質量%未満であると、難燃性に劣り、50質量%を超えると、フッ素の比率が多すぎるため、離型性が生じて十分な接着力が得られなくなる。
【0015】
フッ素樹脂の水酸基当量は300〜5500g/当量であり、好ましくは450〜3500g/当量であり、更に好ましくは550〜3000g/当量である。水酸基当量が5500g/当量を超えると、架橋密度が乏しいためはんだ耐熱性が著しく低下する。水酸基当量が300g/当量未満であると、水酸基が過剰に余るため、吸湿及び吸水性が上昇し、はんだ耐熱性に劣る。また、架橋点が多いため、常温でも反応が進行しやすく、保存安定性に劣る。
【0016】
フッ素樹脂のカルボキシル基当量は、好ましくは1400以上g/当量であり、より好ましくは2800以上g/当量であり、更に好ましくは3700以上g/当量である。カルボキシル基当量が上記範囲にある場合、イソシアネート化合物との反応が適切に行われ、一層優れた接着力、はんだ耐熱性等の特性が得られる傾向にある。なお、カルボキシル基当量が1400g/当量未満の場合は、架橋点が多いため、常温でも反応が進行しやすく、保存安定性に劣ることがある。
【0017】
フッ素樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000〜150000、より好ましくは10000〜120000、更に好ましくは15000〜100000である。重量平均分子量が5000以上であると、塗工、乾燥時においてハジキが生じにくく、安定生産性に優れる傾向にある。一方、重量平均分子量が150000以下であると、流動性が良好となるため、耐回路埋まり性に優れ、信頼性が向上する傾向にある。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算されたものである。
【0018】
[イソシアネート化合物]
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、イソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物とフッ素樹脂に含まれる水酸基との反応により、架橋密度が増し、十分な接着力及びはんだ耐熱性等の特性が得られる。
【0019】
イソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ポリイソシアネート、及びこれらのイソシアネートを含むブロック型イソシアネートからなる群から選択される1種以上が挙げられる。上記の中でも、柔軟性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。上記イソシアネート化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
イソシアネート化合物の含有量としては、フッ素樹脂の水酸基1個に対して、イソシアネート化合物のイソシアネート基を0.05〜2.5個含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0個、更に好ましくは0.15〜1.5個含む。フッ素樹脂の水酸基1個に対してイソシアネート化合物のイソシアネート基が0.05個以上であると、反応性が良好となるため、一層優れた接着力と、はんだ耐熱性が得られる傾向にあり、2.5個以下であると、水酸基と過剰に反応することがなく、保存安定性に優れ、また、塗工前の接着剤ワニスがゲル化するリスクが低減する傾向にある。
【0021】
[エポキシ樹脂]
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、更に、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。フッ素樹脂にカルボキシル基が含まれる場合、カルボキシル基とエポキシ樹脂との反応により、架橋密度が増し、より一層優れた接着力、はんだ耐熱性等の特性が得られる傾向にある。
【0022】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上が挙げられる。上記の中でも、誘電特性の観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。上記エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
エポキシ樹脂の含有量としては、フッ素樹脂のカルボキシル基1個に対して、エポキシ樹脂のエポキシ基を、好ましくは0.1〜10個含むことが好ましく、より好ましくは0.2〜7個、更に好ましくは0.3〜4個含む。フッ素樹脂のカルボキシル基1個に対してエポキシ樹脂のエポキシ基が0.1個以上であると、反応性が良好となるため、一層優れた接着力と、はんだ耐熱性が得られる傾向にあり、10個以下であると、エポキシ樹脂が過剰に余ることがなく、絶縁信頼性に優れる傾向にある。
【0024】
[有機フィラー/無機フィラー]
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、難燃性向上の観点から、有機フィラー及び/又は無機フィラーを更に含んでいてもよい。
【0025】
有機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、有機リン化合物、ホスファゼン化合物、メラミンからなる群から選択される1種以上が挙げられ、中でも、難燃性の観点から、有機リン化合物が好ましい。無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカからなる群から選択される1種以上が挙げられ、中でも、難燃性の観点から、水酸化アルミニウムが好ましい。
上記有機フィラー及び/又は無機フィラーは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
有機フィラー及び/又は無機フィラーの含有量は、フッ素樹脂100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、1〜70質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることが更に好ましい。有機フィラー及び/又は無機フィラーの含有量が上記範囲にあると、樹脂組成物の凝集力を落とさずに、難燃性向上の効果を十分に発揮する傾向にある。
【0027】
フッ素樹脂の水酸基と反応させる化合物として、上記のイソシアネート化合物に加えて、酸無水物、レゾール型フェノール樹脂、メチロール基等のヒドロキシアルキル基を含有するメラミン樹脂が含まれていてもよい。
【0028】
酸無水物としては、無水トリメリット酸(TMA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、無水メチルナジック酸(MNA)、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)、無水フタル酸、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0029】
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物には、上述した各成分以外のその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;トリアリルホスフェート、リン酸エステル等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤;可塑剤;滑剤等の各種公知の添加剤を用いることができる。添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じて適宜調整することができる。
【0030】
本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、FPCの各種部材の接着剤として用いることができる。以下、各部材について説明する。
【0031】
[カバーレイフィルム]
本実施形態におけるカバーレイフィルムは、FPC用樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、が積層された構造を有する。
【0032】
基材フィルムは、カバーレイフィルムをFPCの部材として用いた場合、配線板上に形成された回路等を保護するための役割を有する。基材フィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、及びフッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が挙げられる。特に、本実施形態におけるFPC用樹脂組成物は、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン等の低極性の樹脂に対しても優れた接着性を発揮するという利点を有する。
【0033】
基材フィルムとしてのフッ素系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ジフルオロエチレン−トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0034】
[片面銅張り積層板]
本実施形態における片面銅張り積層板は、FPC用樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、前記接着層の第1の面に前記基材フィルムが積層され、第2の面に前記銅箔が積層された構造を有する。
【0035】
[両面銅張り積層板]
本実施形態における両面銅張り積層板は、FPC用樹脂組成物からなる接着層と、基材フィルムと、銅箔と、が積層された積層板であって、前記基材フィルムの両面に前記接着層が積層され、前記接着層の前記基材フィルムが積層された面とは反対側の面に前記銅箔が積層された構造を有する。
両面銅張り積層板は、片面銅張り積層板の基材フィルムの、接着層及び銅箔が積層された面とは反対側の面に、接着層と銅箔が更に設けられた構造を有する。以下、片面銅張り積層板と両面銅張り積層板をまとめて「積層板」とも言う。
【0036】
積層板は、接着層の硬化状態がカバーレイフィルムとは異なる。具体的には、カバーレイフィルムに含まれる接着層の硬化状態はBステージであるのに対して、積層板に含まれる接着層の硬化状態はCステージである。カバーレイフィルムは、後述するように、回路を形成した積層板に貼り合わせた後、接着層をCステージまで更に硬化させる。
【0037】
積層板に含まれる接着層の厚さは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜25μmである。接着層の厚さが5μm以上であると、基材フィルムと被着体との間の接着性が良好となる傾向にあり、50μm以下であると、折り曲げ性が良好となる傾向にある。
【0038】
[樹脂付き銅箔(RCC)]
本実施形態における樹脂付き銅箔は、FPC用樹脂組成物からなる接着層と、銅箔と、が積層された構造を有する。
【0039】
[ボンディングシート]
本実施形態におけるボンディングシートは、FPC用樹脂組成物を含むものであり、FPC用樹脂組成物をシート状に成形することにより得ることができる。
上述した樹脂付き銅箔やボンディングシートを用いることにより、FPCを多層化することが可能となる。
【0040】
上述した各種部材は、接着層が露出した面に、セパレートフィルムが更に積層されていてもよい。
セパレートフィルムを形成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が挙げられ、中でも、製造コストを低減する観点から、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂が好ましい。
セパレートフィルムを有する各種部材を使用する際には、このセパレートフィルムを剥離した後、接着層面を被着体に貼付する。
【0041】
[フレキシブルプリント配線板]
フレキシブルプリント配線板は、上述したカバーレイフィルムと、積層板を含み、積層板に含まれる銅箔に回路を形成した後、カバーレイフィルムの接着層を、積層板の回路形成面に貼着させることにより得られる。
【0042】
[製造方法]
本実施形態における各種部材の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本実施形態におけるカバーレイフィルムは、例えば以下の(a)工程を含む方法により製造することができる。
(a)基材フィルムの片面に、接着層を形成するFPC用樹脂組成物のワニスを塗布し、Bステージまで乾燥させる工程。
【0043】
本実施形態における片面銅張り積層板の製造方法としては、例えば、上記(a)工程に加えて、以下の(b)工程を更に行う。
(b)上記(a)工程で得られたカバーレイフィルムの接着層が設けられた面に、銅箔を熱プレスし、接着層をCステージまで乾燥させる工程。
本実施形態における両面銅張り積層板の製造方法としては、上記の片面銅張り積層板の基材フィルムのもう一方の面に、接着層と銅箔とを上記と同様の方法により積層することにより製造することができる。
【0044】
本実施形態における樹脂付き銅箔は、例えば、以下の(c)工程を含む方法により製造することができる。
(c)銅箔の片面に、接着層を形成するFPC用樹脂組成物のワニスを塗布し、Bステージまで乾燥させる工程。
【0045】
各種部材がセパレートフィルムを含む場合は、例えば、以下の(d)工程を更に含む。
(d)各種部材の接着層が露出した面に、セパレートフィルムを対向させて貼り合わせる工程。
【0046】
上記ワニスに用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0047】
ワニスを塗布する方法としては、塗布厚さに応じて、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーターなどを適宜採用することができる。
【0048】
ワニスの乾燥は、インラインドライヤー等により実施することができ、その際の乾燥条件は、樹脂や添加剤の種類及び量等により適宜調整することができる。
【0049】
本明細書中の各物性の測定及び評価は、特に明記しない限り、以下の実施例に記載された方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例において、各物性の測定及び評価は以下の方法により行った。
【0051】
[水酸基当量]
JIS K 1557−1に準拠して測定した。具体的には、以下のとおりに測定した。
試料3gに無水酢酸溶液(酢酸エチル400mL、過塩素酸4g、無水酢酸50mLにて調製)を10mL加え、15分撹拌した。水2mL、ピリジン水溶液(ピリジン300mL、水100mLにて調製)10mL加え、5分撹拌した。その後、更にピリジン水溶液を10mL加えた。
0.5mol/L水酸化カリウムのエタノール溶液にて滴定し、以下の計算式により、水酸基当量を算出した。
水酸基当量(g/当量)=(56100×3(g/試料採取量))/((56.1542(mL/ブランク値)−(滴定量mL))×28.05(濃度換算係数))
【0052】
[カルボキシル基当量]
JIS K 1557−5に準拠して測定した。具体的には、以下のとおりに測定した。
2−プロパノール200mL、水100mL及びブロモチモールブルーのメタノール溶液を7滴加え、0.02mol/L水酸化カリウムのメタノール溶液で緑色になるまで滴定し、これに試料を50g溶解させた。
0.02mol/L水酸化カリウムのメタノール溶液にて滴定し、以下の計算式により、カルボキシル基当量を算出した。
カルボキシル基当量(g/当量)=(56100×3(g/試料採取量)/((1.122×(滴定量mL)×0.02(滴定液濃度))
【0053】
[フッ素含有量]
ISO/IEC17025認定試験機関JAB Testing RTL03170に準拠した石英管燃焼イオンクロマトグラフ法により測定した。
分解:石英管燃焼法
石英管:三菱化学アナリテック社製「AQF−100」
炉内温度:IN側900±5℃、OUT側1000±5℃
吸収液:溶離液原液1mL、酒石酸ナトリウム5mL、30%過酸化水素水50μL、超純水500mL
定量:イオンクロマトグラフ法(JIS K0127)
装置:日本ダイオネクス社製「DX−120」
カラム:同社製「AS12A」
サプレッサー:同社製「ASRS−300」
【0054】
[引き剥がし強さ]
(1)サンプルの作製手順
各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、乾燥後の厚さが25μmとなるように150℃、5分の条件で半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させた。
次に前記樹脂組成物の塗布面と圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、品名BHY−22B―T、厚さ35μm)の粗面とを貼り合せ、160℃、2時間で熱プレスを行い、片面銅張り積層板を得た。
(2)測定方法
島津製作所社製オートグラフAGS−500を用いて、90°方向における引き剥がし強度を測定し、以下のとおりに評価した。基材フィルム引きで、テストスピードは50mm/minで行った。
◎:引き剥がし強度が8N/cm以上
○:引き剥がし強度が5N/cm以上〜8N/cm未満
×:引き剥がし強度が5N/cm未満
【0055】
[耐はんだリフロー性]
(1)サンプルの作製手順
(i)各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、乾燥後の厚さが25μmとなるように150℃、5分の条件で半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させた。
(ii)前記樹脂組成物の塗布面と圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、品名BHY−22B―T、厚さ35μm)の粗面と貼り合せ、160℃、2時間で熱プレスを行い、片面銅張り積層板を得た。
(iii)上記(i)で作製したものと同一の構成をもう一つ準備し、その樹脂組成物が塗布された面と上記(ii)の手順で作製した片面銅張り積層板の銅箔光沢面とを貼り
合せて、160℃、1時間で熱プレスを行い、耐はんだリフロー性評価用サンプルを作製した。なお、評価に際して、サンプルは50mm×50mmの大きさにカットしたものを用いた。
(2)評価に使用したサンプル
未処理のサンプル、及び40℃、90%RHの条件で96時間保管した処理済みサンプルを用いた。
(3)測定方法
ピーク温度が260℃になるように設定したはんだリフロー炉に未処理サンプル及び処理済みサンプルを300mm/minの搬送スピード、ピーク温度の暴露時間が10秒となるように調整し、炉内に流した。評価は、リフロー炉を通過した後のサンプルに膨れや剥がれがあるかを目視により確認することにより行った。
○:膨れ、剥がれは認められなかった。
×:膨れ、剥がれが認められた。
【0056】
[ワニスライフ性]
(1)ワニスについて
各実施例及び比較例のFPC用樹脂組成物を十分に撹拌したものをワニスとした。
(2)ワニスライフの評価
25℃、50%RHの条件で3日間保管した後のワニスの状態を目視で確認し、以下のとおりに評価した。
○:ワニスのゲル化は確認できなかった。
×:ワニスの一部がゲル化していた。
【0057】
[製品ライフ性]
(1)サンプルの作製
各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、乾燥後の厚さが25μmとなるように150℃、5分の条件で半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させた。次いで、樹脂組成物塗布面と、片面に離型処理が施されたPET層基板(離型フィルム)の離型処理面とをラミネートすることによりサンプルを得た。
(2)被着体の作製
被着体は圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、厚さ35μm)の粗面に厚さ25μmのポリイミド層が構成された2層基板の銅箔光沢面にL/S=100/100の回路パターンが形成されたものを用いた。
(3)評価方法
評価は、作製直後のサンプル及び5℃×3ヶ月間の条件で保管したサンプルについてそれぞれ評価を行った。評価方法は、離型フィルムを剥がした後のサンプルの樹脂組成物の塗面と、上述の被着体の回路形成面とを貼り合わせてプレスし、そのプレス後のサンプルにボイド、浮きがあるかを目視と光学顕微鏡による表面、断面観察から、以下のとおりに評価した。プレス条件は、160℃、1時間、3MPaで行った。
○:両方のサンプルについてボイド、浮きは確認されなかった。
×:少なくともどちらか一方のサンプルにボイド、浮きが確認された。
【0058】
[絶縁信頼性]
(1)サンプルの作製
製品ライフ性で作製したサンプルと同様のものを用いた。使用時は離型フィルムを剥がして測定を行った。
(2)被着体の作製
被着体は電解銅箔(JX日鉱日石金属社製、厚さ18μm)の粗面に厚さ25μmのポリイミド層が構成された2層基板の銅箔光沢面にL/S=50/50の回路パターンが形成されたものを用いた。
(3)評価方法
評価方法は、サンプルから離型フィルムを剥がし、樹脂組成物の塗布面と上述の被着体の回路形成面とをプレスにより貼り合わせて、そのプレス後のサンプルの絶縁信頼性を評価した。85℃、85%RH、DC50Vの条件で1000時間後の短絡有無を確認することにより行った。プレス条件は、160℃、1時間、3MPaで行った。
○:1000時間後も短絡がなかった。
×:1000時間に到達する前に短絡していた。
【0059】
[難燃性]
(1)サンプルの作製手順
各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、乾燥後の厚さが25μmとなるように150℃、5分の条件で半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させた。
前記樹脂組成物塗布面に、同一の各種基材フィルムを160℃、1時間の条件で熱プレスを行うことによりサンプルを得た。
(2)難燃性評価方法
UL94に準拠して測定を行い、以下のとおりに評価した。
○:VTM−0試験をクリアーした。
×:VTM−0試験をクリアーできなかった。
【0060】
[誘電率及び誘電正接]
(1)サンプルの作製
製品ライフ性で作製したサンプルと同様のものを用いた。使用時は離型フィルムを剥がして測定を行った。
(2)測定方法
Agilent Technologies社製 Network Analyzer N5230A SPDR(共振器法)を用いて、23℃の雰囲気下、周波数5GHzの条件で測定を行い、以下のとおりに評価した。
誘電率
◎:3.0未満
○:3.0以上〜3.2未満
×:3.2以上
誘電正接
◎:0.015未満
○:0.015以上〜0.02未満
×:0.02以上
【0061】
[吸水率]
(1)サンプルの作製
製品ライフ性で作製したサンプルと同様のものを用いた。使用時は離型フィルムを剥がして測定を行った。
(2)測定方法
サンプルを105℃、0.5時間の条件で乾燥させ、室温まで冷却した後のサンプル質量を初期値(m0)とした。このサンプルを23℃の純水に24時間、浸漬させ、その後の質量(md)を測定し、初期値と浸漬後の質量の変化から下記式を用いて吸水率を測定した。
(md―m0)×100/m0=吸水率(%)
◎:吸水率が1未満であった。
○:吸水率が1以上〜1.5未満であった。
×:吸水率が1.5以上であった。
【0062】
[フッ素樹脂の製造]
(製造例1)
1000mLのステンレス製オートクレーブに、酢酸ブチル340質量部、ピバリン酸ビニル132質量部、ヒドロキシブチルビニルエーテル62質量部、エチルビニルエーテル36質量部、クロトン酸2質量部及びジイソプロピルパーオキシジカーボネート7質量部を仕込み、0℃に冷却した後、減圧下に脱気した。得られた混合物に、ヘキサフルオロプロピレン30質量部を仕込み、攪拌下で40℃に加熱し、24時間反応させ、反応器内圧が5kg/cm2から2kg/cm2に下がった時点で反応を停止し、フッ素樹脂A1を得た。
得られたフッ素樹脂A1を、19F−NMR、1H−NMR及び燃焼法で分析したところ、ヘキサフルオロプロピレン単位11.1モル%、エチルビニルエーテル単位21.9モル%、ピバリン酸ビニル単位44.0モル%、ヒドロキシブチルビニルエーテル単位22.0モル%、クロトン酸単位1.0モル%からなる共重合体であり、そのフッ素含有量は10質量%、水酸基当量は570g/当量、カルボキシル基当量は14,025g/当量であった。
【0063】
(製造例2〜6、比較製造例1〜5)
単量体の仕込み量を変えたこと以外は実施例1と同様の方法により、フッ素樹脂A2〜A6及びB1〜B5を得た。
得られたフッ素樹脂の組成、フッ素含有量、水酸基当量、カルボキシル基当量を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(FPC用樹脂組成物の製造)
実施例及び比較例においては、以下の基材フィルムを用いた。
液晶ポリマーフィルム(LCP)(クラレ社製、ヴェクスター、厚さ25μm)
シンジオタクチックポリスチレン(SPS)(出光興産社製、ザレック、厚さ25μm)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)(東レ社製、トレリナ、厚さ25μm)
【0066】
(実施例1)
製造例1で得られたフッ素樹脂A1 100質量部に対し、市販のHDI系イソシアネート樹脂(コロネート2770、日本ポリウレタン社製)を11質量部(フッ素樹脂の水酸基1個に対しイソシアネート基0.3個)加えた後、市販のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP7200、DIC社製)を6質量部(フッ素樹脂のカルボキシル基1個に対しエポキシ基3個)加えた。更に、市販の難燃フィラー(OP930、Clariant社製)30質量部及び分散溶剤としてメチルエチルケトンを70質量部加えて攪拌し、FPC用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて各種評価を行い、結果を表2に示した。
【0067】
(実施例2〜8、参考例9、比較例1〜4及び参考例1〜5)
樹脂組成物に含まれるフッ素樹脂の種類、及び各成分の含有量を表2に記載されたとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法によりFPC樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて各種評価を行い、結果を表2及び3に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表2及び3に示された結果から、本実施形態におけるFPC用樹脂組成物(実施例1〜9)は、低誘電特性を有する基材フィルムを用いた場合でも、高い接着性、耐はんだリフロー性を得ることができ、且つ、電気特性にも優れていることが分かる。
【0071】
(カバーレイフィルムの製造)
各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、乾燥後の厚さが25μmとなるように150℃、5分の条件で半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させることによりカバーレイフィルムを得た。
【0072】
(片面銅張り積層板の製造)
各種基材フィルムにFPC用樹脂組成物を塗布し、一定の硬化・乾燥条件(温度150℃、5分)により半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させ、次いで、樹脂組成物塗布面を銅箔(圧延、電解)粗面と貼り合せ、160℃、2時間で熱プレスを行い、片面銅張り積層板を得た。
【0073】
(両面銅張り積層板の製造)
各種基材フィルムの両面にFPC用樹脂組成物を塗布し、一定の硬化・乾燥条件(温度150℃、5分)により半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させ、次いで、樹脂組成物を塗布した両面に銅箔(圧延、電解)粗面と貼り合せ、160℃、2時間で熱プレスを行い、両面銅張り積層板を得た。
【0074】
(樹脂付き銅箔の製造)
銅箔にFPC用樹脂組成物を塗布し、一定の硬化・乾燥条件(温度150℃、5分)により半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させることにより樹脂付き銅箔を得た。
【0075】
(ボンディングシートの製造)
離型処理PETフィルムの離型処理面にFPC用樹脂組成物を塗布し、一定の硬化・乾燥条件(温度150℃、時間5分)により半硬化状態(Bステージ)になるまで硬化・乾燥させることによりボンディングシートを得た。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により、低誘電特性を有する基材フィルムを用いた場合でも、高い接着性を得ることができ、且つ、電気特性にも優れたフレキシブルプリント配線板用樹脂組成物を提供することができる。