(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914201
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】電線用プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20160422BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20160422BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160422BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
H02G3/04
H02G3/32
B60R16/02 623T
F16L57/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-136585(P2012-136585)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-3779(P2014-3779A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森 貞男
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−013232(JP,A)
【文献】
特開2008−022680(JP,A)
【文献】
特開平11−150833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16L 57/00
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索される電線を保持する保持部材と、この保持部材の外周に組付けられ前記車両に固定される固定部材とを備えた電線用プロテクタであって、
前記保持部材と前記固定部材との間には、前記固定部材に対する所定の組付位置で前記保持部材を保持すると共に、前記保持部材の前記電線の長さ方向両側への移動により前記保持部材の前記固定部材に対する組付位置を変更可能な係止部が設けられ、
前記係止部は、前記保持部材と前記固定部材とのうちいずれか一方に設けられ前記電線の長さ方向に複数列配置された係止凹部と、前記保持部材と前記固定部材とのうち他方に設けられ前記係止凹部に対して近接及び離間方向に撓み可能なロックアームと、このロックアームに設けられ前記係止凹部に係合される係止凸部とを有することを特徴とする電線用プロテクタ。
【請求項2】
請求項1記載の電線用プロテクタであって、
前記保持部材は、筐体状に形成され、前記固定部材は、前記保持部材の一側面側に組付けられ前記車両に固定される固定部が設けられた本体部と、前記保持部材の他側面側に組付けられ前記保持部材の外周側で係合部を介して前記本体部に係合され前記係止部が設けられたカバー部とを有することを特徴とする電線用プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配索された電線を保持する電線用プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線用プロテクタとしては、車両に配索される電線を保持する保持部材としてのクランプ部材と、このクランプ部材の外周に組付けられ車両に固定される固定部材としての受け部材及び蓋部材を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電線用プロテクタでは、受け部材に設けられた一対の突条や側壁などからなる係合部にクランプ部材を嵌入させ、受け部材の開口を蓋部材によって閉塞してクランプ部材の外周に受け部材及び蓋部材を組付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−61219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような電線用プロテクタでは、電線用プロテクタから導出された電線の端部にコネクタが接続されている、或いは電線用プロテクタから導出された電線に他の電線用プロテクタが組付けられている。このコネクタや他の電線用プロテクタは、相手側コネクタや他の固定部材が固定される固定部などの他の車両側固定部に固定される。この車両側固定部や電線は、製造のバラツキが生じることがある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような電線用プロテクタでは、例えば、固定部材が固定される車両側固定部から他の車両側固定部までの距離が長い場合、無理矢理電線を引っ張って他の車両側固定部にコネクタや他の電線用プロテクタを固定していた。
【0007】
一方、例えば、固定部材が固定される車両側固定部から他の車両側固定部までの距離が短い場合、導出された電線が長いので、電線を弛ませて他の車両側固定部にコネクタや他の電線用プロテクタを固定していた。
【0008】
このように上記特許文献1のような電線用プロテクタでは、車両側固定部や電線に製造のバラツキが生じると、電線が引っ張られたり、弛んだりされるので、電線への負荷が増大してしまっていた。
【0009】
そこで、この発明は、車両側固定部や電線に製造のバラツキが生じても、電線への負荷を軽減することができる電線用プロテクタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、車両に配索される電線を保持する保持部材と、この保持部材の外周に組付けられ前記車両に固定される固定部材とを備えた電線用プロテクタであって、前記保持部材と前記固定部材との間には、前記固定部材に対する所定の組付位置で前記保持部材を保持すると共に、前記保持部材の前記電線の長さ方向
両側への移動により前記保持部材の前記固定部材に対する組付位置を変更可能な係止部が設けられ
、前記係止部は、前記保持部材と前記固定部材とのうちいずれか一方に設けられ前記電線の長さ方向に複数列配置された係止凹部と、前記保持部材と前記固定部材とのうち他方に設けられ前記係止凹部に対して近接及び離間方向に撓み可能なロックアームと、このロックアームに設けられ前記係止凹部に係合される係止凸部とを有することを特徴とする。
【0011】
この電線用プロテクタでは、保持部材と固定部材との間に保持部材の電線の長さ方向への移動により保持部材の固定部材に対する組付位置を変更可能な係止部が設けられているので、固定部材が車両側固定部に固定された状態で、電線を保持した保持部材を電線の長さ方向に移動させることができる。
【0012】
このため、他の車両側固定部までの距離にバラツキが生じても、保持部材を電線の長さ方向に移動させることにより、電線への負荷を軽減して他の車両側固定部に固定することができる。
【0013】
従って、このような電線用プロテクタでは、保持部材と固定部材との間に設けられた係止部によって、車両側固定部や電線に製造のバラツキが生じても、電線への負荷を軽減することができる。
【0015】
この電線用プロテクタでは、係止部が電線の長さ方向に複数列配置された係止凹部と、電線の長さ方向と交差する方向に撓み可能なロックアームと、このロックアームに設けられ係止凹部に係合される係止凸部とを有するので、車両側固定部に固定部材が固定された状態で、保持部材を電線の長さ方向へ移動させることができる。加えて、固定部材に対する所定の組付位置で保持部材を保持することができる。
【0016】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の電線用プロテクタであって、前記保持部材は、筐体状に形成され、前記固定部材は、前記保持部材の一側面側に組付けられ前記車両に固定される固定部が設けられた本体部と、前記保持部材の他側面側に組付けられ前記保持部材の外周側で係合部を介して前記本体部に係合され前記係止部が設けられたカバー部とを有することを特徴とする。
【0017】
この電線用プロテクタでは、固定部材が保持部材の一側面側に組付けられる本体部と、保持部材の他側面側に組付けられるカバー部とを有するので、保持部材が電線を保持した状態で、保持部材の両側面側からそれぞれ本体部とカバー部とを組付けることができ、組付性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両側固定部や電線に製造のバラツキが生じても、電線への負荷を軽減することができる電線用プロテクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの斜視図である。
【
図3】(a)は本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの固定部材の本体部の斜視図である。(b)は
図3(a)のY−Y断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの保持部材の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図5を用いて本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタについて説明する。
【0021】
本実施の形態に係る電線用プロテクタ1は、車両に配索される電線3を保持する保持部材5と、この保持部材5の外周に組付けられ車両に固定される固定部材7とを備えている。
【0022】
そして、保持部材5と固定部材7との間には、固定部材7に対する所定の組付位置で保持部材5を保持すると共に、保持部材5の電線3の長さ方向への移動により保持部材5の固定部材7に対する組付位置を変更可能な係止部9が設けられている。
【0023】
また、係止部9は、保持部材5に設けられ電線3の長さ方向に複数列配置された係止凹部11と、固定部材7に設けられ電線3の長さ方向と交差する方向に撓み可能なロックアーム13と、このロックアーム13に設けられ係止凹部11に係合される係止凸部15とを有する。
【0024】
さらに、保持部材5は、筐体状に形成され、固定部材7は、保持部材5の一側面側に組付けられ車両に固定される固定部17が設けられた本体部19と、保持部材5の他側面側に組付けられ保持部材5の外周側で係合部21を介して本体部19に係合され係止部9が設けられたカバー部23とを有する。
【0025】
図1〜
図5に示すように、電線3は、車両に配索されて電源と機器との間、或いは機器間の電気的接続に適用され、端部に電源や機器などに接続された相手側コネクタ25に接続されるコネクタ27が設けられている。
【0026】
なお、電線用プロテクタ1から導出される電線3は、コネクタ27が接続される端部に限らず、他の車両側固定部に固定される他の電線用プロテクタが設けられる中間部分の場合もある。この場合には、他の電線用プロテクタが固定される車両側固定部が他の車両側固定部となるが、ここでは、相手側コネクタ25を他の車両側固定部とする。
【0027】
この電線3は、複数本(ここでは2本)が保持部材5に保持されている。なお、保持部材5が位置する電線3の長さ方向の両側外周には、蛇腹形状のコルゲートチューブ29がそれぞれ配置されている。
【0028】
保持部材5は、防水部材としてのグロメット31と、インナプロテクタ33とからなる。グロメットは、ゴムなどの弾性材料からなり、直方体形状に形成され、内部に電線3が密着して挿通されている。なお、グロメット31の片側側面にスリットを設けることにより、例えば、電線3の両端にコネクタ27などが接続されている場合であっても、電線3にグロメット31を装着することができる。
【0029】
インナプロテクタ33は、直方体形状に形成され、2分割の分割部材からなり、内部にグロメット31が収容される。なお、インナプロテクタ33の分割としては、グロメット31を主に収容する本体と、この本体にヒンジなどを介して開閉可能な蓋体とすることが、部品点数の削減として好ましい。このインナプロテクタ33は、グロメット31を収容した状態で、グロメット31の外周面を押圧して圧縮し、電線3とグロメット31との密着性を向上させる。このような保持部材5のインナプロテクタ33の外周には、固定部材7が組付けられる。
【0030】
固定部材7は、本体部19と、カバー部23とからなる。本体部19は、断面コ字状に形成され、側面に車両側に固定されるL字状の鉄板ブラケットなどが一体に固定される固定部17が設けられている。この固定部17に固定された鉄板ブラケットは、本体部19の側面から露出する部分が車両側に設けられた差込溝などからなる車両側固定部(不図示)に差し込まれ、本体部19を介して保持部材5が車両に固定される。この本体部19は、保持部材5の一側面側からインナプロテクタ33の外周に組付けられ、その組付位置がカバー部23によって保持される。
【0031】
カバー部23は、本体部19と逆向きの断面コ字状に形成され、本体部19と反対側の側面である他側面側からインナプロテクタ33に組付けられ、インナプロテクタ33の外周で係合部21を介して本体部19を係止する。
【0032】
係合部21は、本体部19の上下面に設けられた係合凸部と、カバー部23の上下面に設けられ係合凸部が係止される係合凹部とからなる。この係合部21を介して本体部19にカバー部23を係止することにより、本体部19のインナプロテクタ33からの脱落が防止される。このカバー部23とインナプロテクタ33との間には、固定部材7に対する所定の組付位置で保持部材5を保持する係止部9が設けられている。
【0033】
係止部9は、係止凹部11と、ロックアーム13と、係止凸部15とを備えている。係止凹部11は、インナプロテクタ33のカバー部23側の側面に設けられ、電線3の長さ方向と直交する方向に複数列突設された複数の突条間に設けられた係合溝となっている。この複数列配置された係止凹部11と対向するカバー部23には、ロックアーム13が設けられている。
【0034】
ロックアーム13は、基端がカバー部23と連続する一部材で形成され、自由端側が電線3と交差する方向、詳細には係止凹部11に対して近接及び離間方向に撓み可能に設けられている。このロックアーム13の自由端側には、係止凸部15が設けられている。
【0035】
係止凸部15は、ロックアーム13と連続する一部材で形成され、係止凹部11側に向けて突設されている。この係止凸部15は、カバー部23がインナプロテクタ33に組付けられることにより、係止凹部11と係合して固定部材7に対する所定の組付位置で保持部材5を保持する。
【0036】
この係止部9は、係止凹部11と係止凸部15とが係合した状態で、保持部材5を電線3の長さ方向に移動させることにより、
図5の矢印で示すようにロックアーム13を可動させ、係止凹部11と係止凸部15との係合を解除可能とさせ、保持部材5が所定の位置に配置されたときに係止凹部11と係止凸部15との係合を可能とさせている。
【0037】
このため、例えば、相手側コネクタ25とコネクタ27との距離が長い場合には、保持部材5を相手側コネクタ25側に移動させることにより、電線3を無理矢理引っ張らずにコネクタ27を相手側コネクタ25に接続させることができる。一方、相手側コネクタ25とコネクタ27との距離が短い場合には、保持部材5を相手側コネクタ25から遠ざかる方向に移動させることにより、電線3を弛ませずにコネクタ27を相手側コネクタ25に接続させることができる。
【0038】
このように係止部9によって保持部材5を固定部材7に対して移動可能に設けることにより、相手側コネクタ25などの車両側固定部や電線3に製造のバラツキが生じても、組付時における電線3への負荷を軽減することができる。
【0039】
なお、インナプロテクタ33とカバー部23との間には、インナプロテクタ33の側面から突設された突起部35と、カバー部23に形成され突起部35が挿入され突起部35の電線3の長さ方向への移動を可能とする挿入凹部37とからなる案内部39が設けられている。この案内部39は、固定部材7に対する保持部材5の電線3の長さ方向への移動を案内する。
【0040】
このような電線用プロテクタ1では、保持部材5と固定部材7との間に保持部材5の電線3の長さ方向への移動により保持部材5の固定部材7に対する組付位置を変更可能な係止部9が設けられているので、固定部材7が車両側固定部に固定された状態で、電線3を保持した保持部材5を電線3の長さ方向に移動させることができる。
【0041】
このため、他の車両側固定部までの距離にバラツキが生じても、保持部材5を電線3の長さ方向に移動させることにより、電線3への負荷を軽減して他の車両側固定部に固定することができる。
【0042】
従って、このような電線用プロテクタ1では、保持部材5と固定部材7との間に設けられた係止部9によって、車両側固定部や電線3に製造のバラツキが生じても、電線3への負荷を軽減することができる。
【0043】
また、係止部9は、電線3の長さ方向に複数列配置された係止凹部11と、電線3の長さ方向と交差する方向に撓み可能なロックアーム13と、このロックアーム13に設けられ係止凹部11に係合される係止凸部15とを有するので、車両側固定部に固定部材7が固定された状態で、保持部材5を電線3の長さ方向へ移動させることができる。加えて、固定部材7に対する所定の組付位置で保持部材5を保持することができる。
【0044】
さらに、固定部材7は、保持部材5の一側面側に組付けられる本体部19と、保持部材5の他側面側に組付けられるカバー部23とを有するので、保持部材5が電線3を保持した状態で、保持部材5の両側面側からそれぞれ本体部19とカバー部23とを組付けることができ、組付性を向上することができる。
【0045】
なお、本発明の実施の形態に係る電線用プロテクタでは、係止凹部が保持部材に設けられ、ロックアームが固定部材に設けられているが、これに限らず、係止凹部を固定部材に設け、ロックアームを保持部材に設けてもよい。
【0046】
また、固定部材は、本体部とカバー部とに分割されているが、必ずしも分割させる必要はなく、例えば、本体部とカバー部との係合部の反対側をヒンジなどを介して連結させてもよい。
【0047】
さらに、本体部に車両に固定される固定部が設けられ、カバー部と保持部材との間に係止部が設けられているが、本体部と保持部材との間に係止部を設け、カバー部に車両に固定される固定部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…電線用プロテクタ
3…電線
5…保持部材
7…固定部材
9…係止部
11…係止凹部
13…ロックアーム
15…係止凸部
17…固定部
19…本体部
21…係合部
23…カバー部