(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の経路の各経路の経路選択確率を、プローブデータに対応する複数の軌跡のうちで前記各経路に含まれる軌跡の数と、前記複数の軌跡のうちで前記各経路の始終点と略一致する始終点を有する軌跡の数とに基づいて計算する経路選択確率計算手段と、
前記プローブデータに基づいて得られる前記各経路の経路移動距離および経路移動時間と、前記経路選択確率とに基づき、少なくとも前記経路移動距離および前記経路移動時間がそれぞれ前記経路選択確率に与える影響度を表す少なくとも2種類の重みパラメータを、複数組の始終点組合せの各組毎に取得する重みパラメータ取得手段と、
前記少なくとも2種類の重みパラメータに各々対応付けられた前記複数組の始終点組合せのうちの、出発地と目的地との組合せに関連づけられる1組の始終点組合せに対応する前記少なくとも2種類の重みパラメータを選択する重みパラメータ選択手段と、
前記出発地および前記目的地を含む領域の各道路リンクに対応付けられたリンク移動距離およびリンク移動時間を含む少なくとも2種類のリンクコストと、前記重みパラメータ選択手段によって選択された、
前記1組の始終点組合せに対応する前記少なくとも2種類の重みパラメータとに基づいて、推奨経路を計算する推奨経路計算手段とを備えることを特徴とする経路計算システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る経路探索システムの全体構成を示した図である。本例では、端末装置としてナビゲーション装置を想定し説明する。
図1において、本実施形態に係るセンタ装置1は、通信ネットワーク2に接続され携帯電話などの基地局3を介して、無線通信により車両4に搭載されているナビゲーション装置5に接続されている。車両4は、説明を簡便にするため、収集情報に基づきプローブデータを生成してセンタ装置1へ送信するプローブ車両としての機能と、プローブデータに応じて後述する処理により得られる重みパラメータに基づく推奨経路による経路誘導の対象車両としての機能とをともに有することとする。
【0013】
センタ装置1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、ハードディスク装置などを含んで構成されたいわゆるコンピュータ(情報処理装置)によって構成される。そして、そのサーバ装置1は、機能的には、
図1に示すように、通信インターフェース部11、プローブデータ取得部12、軌跡情報生成部13、軌跡データベース14、重みパラメータ生成部15、重みパラメータ記憶部16、地図データベース17、端末要求受付部18、情報提供部19などの機能ブロックを含んで構成される。
【0014】
なお、センタ装置1を構成するコンピュータは、少なくとも、不図示の演算装置と、半導体メモリやハードディスク装置などからなる記憶装置56とを有する。そして、センタ装置1を構成する各機能ブロックの機能は、CPUが不図示の記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0015】
通信インターフェース11は、通信ネットワーク2を介してナビゲーション装置5との間でデータの送受信を行う。
【0016】
プローブデータ取得部12は、ナビゲーション装置5から送信されたプローブデータを、通信インターフェース11を介して取得する。ここでプローブデータとは、プローブ車両の走行軌跡データであり、プローブ車両の複数の軌跡を表す位置情報(緯度経度などの座標)、およびそれら複数の軌跡をプローブ車両が移動する時刻に関する時刻情報等を含んだ点列データである。プローブデータは、プローブ車両の走行速度と、移動方向と、ブレーキ情報などの車両情報とを含んでもよい。
【0017】
軌跡情報生成部13は、プローブデータ取得部12が取得した点列のプローブデータを、地図データベース17から読み込んだ道路リンクにマッチングし、道路リンクに基づく軌跡情報を生成し、生成した軌跡情報を軌跡データベース14に蓄積する。
【0018】
同じ地点間を結ぶ複数種類の経路が存在する場合があるので、同じ地点間を結ぶ複数の軌跡を、それら複数種類の経路に分類することができる。重みパラメータ生成部15は、軌跡データベース14から同じ地点間を結ぶ複数の軌跡を読み込み、読み込んだ複数の軌跡を経路別に分類し、それぞれの経路が選択される確率、すなわち経路選択確率を計算する。さらに、各経路の距離、所要時間、道路属性、通行料金などの様々な経路属性を計算し、それらの様々な経路属性が上述した経路選択確率に与える影響度をそれぞれ表す重みパラメータを計算し、計算によって得た重みパラメータを重みパラメータ記憶部16に格納する。これらの重みパラメータは、後述する式(1)で表されるロジスティック回帰式で定義される。
【0019】
ここで、プローブデータ取得部12は、既に道路リンクに変換された経路と、その距離や所要時間、速度に変換された軌跡を、通信インターフェース部11を介して取得することもある。この場合、上述した道路リンクに基づく軌跡情報は、ナビゲーション装置5あるいは通信ネットワーク2を介して接続された外部の情報センタ(図示せず)で生成された後、センタ装置1に送信される。プローブデータ取得部12は、通信ネットワーク2以外に記録メディアを介してプローブデータを取得することもある。
【0020】
端末要求受付部18は、通信インターフェース部11を介してナビゲーション装置5から送信される要求情報を受信する。要求情報は、ナビゲーション装置5がセンタ装置1に対して情報提供を要求するもので、本実施形態では、後述するように経路情報の要求情報と重みパラメータの要求情報とを含む。
【0021】
情報提供部19は、端末要求受付部18が受信した要求情報に応じて情報を提供するように機能し、要求情報に重みパラメータ要求が含まれる場合は、要求情報に基づき、そのときの最新の重みパラメータを重みパラメータ記憶部16から読み込み、通信インターフェース11を介してナビゲーション装置5に最新の重みパラメータを取得し、提供する。重みパラメータ要求に伴ってエリアや日時、車種、運転者の属性等の分類種別の指定が要求情報に含まれている場合は、指定されたエリアや車種、日時、運転者の属性等の分類種別毎に重みパラメータを取得し、提供する。さらに特定ユーザという分類種別が指定された場合は、指定されたその特定ユーザが運転した際に得られたプローブデータを用いて、この分類種別に対応する重みパラメータを取得し、提供する。
【0022】
一方、車両4に搭載されるナビゲーション装置5は、本体部51、表示部52、携帯電話機53、GPS(Global Positioning System)受信機54などを含んで構成される。
【0023】
本体部51は、演算処理部(図示せず)、記憶装置56、可搬記憶メディア接続アダプタ55などを含んで構成されたコンピュータである。ここで記憶装置56は、半導体メモリやハードディスク装置などによって構成される。可搬記憶メディア接続アダプタ55は、DVD(Digital Versatile Disk)などのドライブ装置やフラッシュメモリを内蔵したUSB(Universal Serial Bus)メモリのリーダ・ライタなどによって構成される。本体部51は、この他にも入力装置として、種々のスイッチやボタン、タッチパネル、リモコン装置、音声マイクなどを含んでもよいし、出力装置として音声スピーカなどを含んでもよい。こうした入力装置および出力装置の入出力機能は、
図1では、後述する入出力インターフェース部515として表されている。
【0024】
表示部52は、LCD(Liquid Crystal Display)などによって構成される。本体部51は、携帯電話機53を介して基地局3との無線通信を行い、基地局3および通信ネットワーク2を介してセンタ装置1との間でデータ通信を行うことが可能である。また、GPS受信機54は、図示しないGPS衛星からの電波を受信して、車両4の現在位置を検出する。
【0025】
また、本体部51は、通信インターフェース部511、情報受信部512、重みパラメータ記憶部516、位置情報取得部517、位置情報記憶部520、経路計算部513、地図データベース518、重みパラメータ選択部519、入出力処理部514、入出力インターフェース部515などの機能ブロックを含んで構成される。これら本体部51の機能ブロックは、図示しないCPUが、記憶装置56に格納されている所定のプログラムを実行することによって実現される。記憶装置56は、後述するように、後述する重みパラメータを記憶する重みパラメータ記憶部516と、上述した軌跡情報を記憶する位置情報記憶部520と、地図の地図データを記憶する地図データベース518とをも含む。
【0026】
通信インターフェース部511は、携帯電話53に対する通信制御を行うとともに、基地局3および通信ネットワーク2を介してセンタ装置1との間でデータの送受信を行う。入出力インターフェース部515は、図示しないスイッチやボタン、音声、タッチパネルなどからの入力情報を入力するとともに、経路計算部513が地図データベース518を参照して取得した地図や経路計算部513が算出した経路情報などの表示情報を、後述する入出力処理部514を介して受け取り、受け取った表示情報を表示部52へ出力する。
【0027】
入出力処理部514は、入出力インターフェース部515を介して不図示のスイッチやボタンなどから入力される入力情報が目的地情報やセンタ装置1への要求情報であることを解析し、解析結果に基づいて種々の情報を設定する。
【0028】
位置情報取得部517は、GPS受信機54が検出した緯度経度や高度、時刻情報などのGPS情報を取得し、位置情報記憶部520に記憶させる。このとき、図示しない車両4の車両ネットワークを介して、車両4のブレーキ情報や、ウィンカー、パーキング、ハンドル操作情報などの走行情報を、位置情報取得部517は位置情報とともに取得し、走行軌跡情報として位置情報記憶部520に記憶させることとしてもよい。
【0029】
要求情報送信部521は、ナビゲーション装置5の電源投入時(ドライブ開始時)、入出力インターフェース部515により経路要求が入力された時、あるいは予め設定された時刻になった時、経路計算に用いる重みパラメータをセンタ装置1に要求する。
【0030】
情報受信部512は、通信インターフェース部511を介してセンタ装置1により送信される重みパラメータを含む様々な情報を受信する。受信した重みパラメータを重みパラメータ記憶部516に記憶させる。
【0031】
経路計算部513は、入出力インターフェース部515を介して入出力処理部514により設定された経路探索要求に応じて、地図データベース518から道路ネットワーク情報を読み込み、車両4の出発地から目的地までの推奨経路を計算する。通常、推奨経路の計算に際しては、ダイクストラ法などの数学的な手法を用いて道路リンク単位の旅行時間または速度、および距離などに基づいた最小コスト経路が計算される。経路計算に用いられる道路リンクのコストを旅行時間や距離などの複数の道路属性を用いて決定する際、各道路属性の各値を重みパラメータ選択部519により選択された重みパラメータで調整し、道路リンクのコストを決定する。なお、経路計算部513は、推奨経路を計算する際、例えば、位置情報記憶部520により記憶されている位置情報に基づいて車両4の出発地情報を取得するとともに、入出力処理部514により設定された経路要求に含まれる目的地情報を取得する。経路計算部513は、取得した出発地情報および目的地情報に基づき、経路探索エリアを選定する。
【0032】
重みパラメータ選択部519は、経路計算部513が取得した出発地および目的地、あるいは出発地および目的地に基づき経路計算部513が選定した経路探索エリアを読み込み、出発地および目的地、あるいは経路探索エリアに対応する重みパラメータを、重みパラメータ記憶部516に記憶された重みパラメータから選択する。
図4を参照して後述するように、重みパラメータ記憶部516に記憶された重みパラメータには、経路の始終点の組合せが対応付けられている。同一または略同一の始終点組合せに対して1セットの重みパラメータが対応付けられる。重みパラメータ選択部519が重みパラメータ記憶部516に記憶された重みパラメータの中から1セットの重みパラメータを選択する際は、各セットの重みパラメータに対応づけられた始終点組合せを参照し、いずれか1つの始終点組合せを選択することにより、その始終点組合せに対応する重みパラメータを選択する。このいずれか1つの始終点組合せを選択する際、重みパラメータ選択部519は、例えば次のようにして始終点を選択する。重みパラメータ選択部519は、例えば、経路計算部513が取得した出発地および目的地の距離(直線距離)と重みパラメータに対応付けられている重みパラメータ設定区間の距離(始終点間直線距離)とが略等しいときのその重みパラメータに対応付けられた始終点を選択する。重みパラメータ選択部519は、例えば、出発地および目的地、あるいはその一方が存在するエリア(メッシュや都道府県など)と同一または近傍のエリアに位置する始終点を選択する。重みパラメータ選択部519は、例えば、経路要求に応じて経路計算部513が取得した出発地および目的地を含む所定領域の道路の粗密度(ノード密度、道路数あるいはリンク数)と略等しい粗密度を有する周辺領域に位置する始終点選択する。このようにして重みパラメータ選択部519によって選択された重みパラメータを、経路計算部513が加味して算出した出発地から目的地までの推奨経路は、経路計算部513が入出力処理部514を介して入出力インターフェース部515に出力することにより、表示部52に表示される。
【0033】
なお、
図1では、ナビゲーション装置5の経路計算部513において目的地までの推奨経路を計算するが、センタ装置1に同様の経路計算部を設けて、そのセンタ装置1側の経路計算部が重みパラメータを加味した推奨経路を計算し、その推奨経路を、センタ装置1側の経路計算部が通信インターフェース部11を介してナビゲーション装置5に提供するようにしてもよい。
【0034】
また、ナビゲーション装置5において、情報受信部512が通信インターフェース部511を介してセンタ装置1から重みパラメータを取得するようにしたが、可搬記憶メディア接続アダプタ55に設定された可搬記憶メディアから重みパラメータを取得するようにしてもよい。さらに、ナビゲーション装置5における重みパラメータを加味した推奨経路の経路計算および表示を、携帯電話53や可搬型のコンピュータのアプリケーションとして機能させる方法もある。
【0035】
<センタ装置1の処理フロー>
図2は、本実施形態に関わるセンタ装置1において、収集したプローブデータを用いて重みパラメータを生成する処理フローの例を示している。
図3は、
図2の処理フローを説明するための補足説明図である。
【0036】
センタ装置1の軌跡情報生成部13は、プローブデータ取得部12がプローブデータを取得したタイミングまたは周期処理により重みパラメータ生成処理を開始する。処理が開始されると、軌跡情報生成部13は、プローブデータ取得部12が取得したプローブデータを読み込み(ステップS20)、プローブデータの位置情報(緯度経度)から、該当するエリアの地図データを地図データベース17から読み込む(ステップS21)。軌跡情報生成部13は、プローブデータ取得部12が読み込んだプローブデータを、読み込んだ地図データの道路リンクにマッチングし、プローブデータに基づき道路リンク列からなる移動経路(軌跡、プローブ経路)を生成し、軌跡データベース14に蓄積する(ステップS22)。重みパラメータ生成部15は、軌跡情報生成部13がプローブデータ取得部12により取得された全てのプローブデータから軌跡を生成し終えたら、同じ地点間(
図3の始点Oから終点Dまで)を移動する軌跡を軌跡データベースから抽出する(ステップS23)。
【0037】
重みパラメータ生成部15は、同じ経路を通る軌跡をその経路に含まれる軌跡として、同じ地点間の複数の軌跡を経路毎に分類し、軌跡を分類した各経路の利用数を集計し、各経路の経路選択確率を計算する(ステップS24)。例えば
図3に示すように、始点Oから終点Dに移動する際の軌跡が3つの経路31、32、および33に分類された場合、経路31、32および33のそれぞれの経路選択確率P
31、P
32、P
33が計算される。例えば、始点Oから終点Dに移動する際の軌跡が10本で、そのうちの5本の軌跡が経路31に含まれ、3本の軌跡が経路32に含まれ、2本の軌跡が経路33に含まれる場合、経路選択確率P
31は、経路31に含まれる軌跡の数、すなわち“5”と、始点Oから終点Dに移動する際の軌跡の数、すなわち“10”との比として求められるので、その値は“5/10”である。経路選択確率P
32は、経路32に含まれる軌跡の数、すなわち“3”と、始点Oから終点Dに移動する際の軌跡の数、すなわち“10”との比として求められるので、その値は“3/10”である。経路選択確率P
33は、経路33に含まれる軌跡の数、すなわち“2”と、始点Oから終点Dに移動する際の軌跡の数、すなわち“10”との比として求められるので、その値は“2/10”である。式(1)に示されるロジスティック回帰式に、経路L(L=1,2,3,...)の選択確率P
Lと、距離(経路Lを構成するリンク長の合計)x
1、所要時間x
2、道路種別x
3...その他の経路属性x
kなどのプローブデータに含まれる経路属性とを代入し、連立方程式を解くことによって、始点Oと終点Dとの始終点組合せに対応する経路の経路選択確率に与える影響度を表す経路属性の重みパラメータα
0、α
1、α
2、α
3、〜α
kが得られる(ステップS25)。重みパラメータα
0は経路属性には作用しない調整係数である。重みパラメータ生成部15は、重みパラメータα
0、α
1、α
2、α
3、〜α
kを重みパラメータ記憶部16に格納する(ステップS27)。
【数1】
【0038】
<重みパラメータの一例>
図4は重みパラメータ記憶部16に格納される重みパラメータの一実施例である。重みパラメータは、収集された全てのプローブデータに基づいて生成されるが、プローブデータの収集量が増えるに従い、平日および休日などの日種や時間帯で分けて複数種類の重みパラメータセットが生成されることとしてもよい。ドライバの好みを反映させたい場合は、ドライバ毎のプローブデータに基づいて重みパラメータが生成される。式(1)に基づいて計算された重みパラメータα
0、α
1、α
2、α
3〜α
kは、登録ID、重みパラメータ生成区間の始点Oおよび終点D、始終点区間の距離(例えば始終点OD間の直線距離)、この始終点区間近傍に存在する道路ノードのノード間平均距離(または単位面積あたりの道路ノード数や道路リンク数等)等の情報とともに重みパラメータ記憶部16に記憶されている。始点Oおよび終点Dとして、例えばノード固有のIDあるいは始点Oおよび終点Dが存在するエリアIDが用いられる。
【0039】
<ナビゲーション装置5の処理フロー>
図5は、本実施形態におけるナビゲーション装置5において、プローブデータから生成された重みパラメータを用いて誘導経路を探索する処理フローの例を示している。
図6は、
図5の処理フローを説明するための補足説明図である。
【0040】
ナビゲーション装置5において、利用者が入出力インターフェース部515を介して出発地点と目的地点とを入力し経路探索を要求すると、要求情報が経路計算部513に渡され、経路計算部513は経路計算処理を開始する。位置情報取得部54が取得した現在位置が出発地点として用いられることもある処理が開始されると、まず情報受信部512は、重みパラメータ記憶部516に記憶されている重みパラメータの更新日時を確認し、更新日時から所定時間を経過していたら通信インターフェース部511を介してセンタ装置1に重みパラメータを要求する。情報受信部512は、通信インターフェース部511を介してセンタ装置1から最新の重みパラメータを受信し、受信した最新の重みパラメータを重みパラメータ記憶部516に格納する(ステップS50)。情報受信部512は、重みパラメータ記憶部516に記憶されている重みパラメータの中から、要求情報の出発地点Oおよび目的地点D(以下、要求ODという)の近傍に位置する始終点区間に対応づけられた重みパラメータを検索する。重みパラメータの候補が存在し(ステップS52がYES)、その候補数が唯一であれば(ステップS57がNO)、情報受信部512は、候補となった唯一の重みパラメータを、入出力処理部514を介して経路計算部513へ引き渡す。経路計算部513は、取得したその唯一の重みパラメータを用いて要求OD区間の経路を計算する(ステップS56)。候補数が複数存在する場合は(ステップS57がYES)、重みパラメータ選択部519が、要求ODに近い場所に位置し、かつその始終点間距離が要求ODの区間距離に最も近い重みパラメータを選択し(ステップS58)、経路計算部513は、重みパラメータ選択部519によって選択された重みパラメータを用いて要求区間ODの経路を計算する(ステップS55)。重みパラメータが存在しなかった場合(ステップS52がNO)、重みパラメータ選択部519は、要求ODを含む所定領域の外側の周辺領域に存在する道路ノード間の平均距離を計算する(ステップS53)。重みパラメータ選択部519は、重みパラメータ記憶部516に記憶されている重みパラメータの中から、ステップS53で計算した道路ノード間の平均距離のうち、要求OD間を含む所定領域のノード間平均距離に最も近いノード間平均距離が対応付けられた重みパラメータを選択する。このとき、複数の重みパラメータが選択される可能性がある。重みパラメータ選択部519は、複数の重みパラメータに対応付けられた複数組の始終点の組合せのうちから、始終点間距離が要求ODの区間距離に最も近くなる始終点組合せを選択し、この始終点組合せが対応付けられた重みパラメータを選択する(ステップS54)。経路計算部513は、地図データベース518から要求ODを含む領域の地図を読み出し、その地図に含まれる各道路リンクのリンク長、リンク旅行時間、リンク道路幅といったリンクコストを読み込み、これらのリンクコストに対して選択した重みパラメータによる重み付けを行って要求OD区間の経路を計算する(ステップS55)。経路計算部513は、こうした経路計算により探索した経路を、当該要求区間の推奨経路として入出力処理部514を介して入出力インターフェース部515に出力し(ステップS56)、表示部52に推奨経路が表示される。
【0041】
ステップS53のノード間平均距離は、領域内において、リンクで互いに接続されている全ての2ノード間の距離を平均して得られる。ノード間平均距離は道路の粗密度の指標であるため、道路の粗密が比較可能であれば、ノード間平均距離の代わりに単位面積あたりの道路ノード数や道路リンク数がステップS53で用いられても構わない。
【0042】
また、ステップS58で実行される要求ODと重みパラメータに対応付けられた始終点区間との位置関係に基づく重みパラメータの選択においては、要求ODと始終点区間との出発地点同士の距離差および目的地点同士の距離差を比較し、いずれかの距離差が最も小さい始終点区間を、要求ODに最も近い場所に存在する始終点区間に対応付けられた重みパラメータが選択される。この選択処理においては、双方の距離差を用いてもよいし、要求OD区間を結ぶ直線付近に存在する任意の点と始終点区間とを結ぶ直線付近に存在する任意の点同士の距離差を用いてもよい。
【0043】
さらに、ステップS55の経路計算において、重みパラメータは、式(2)に示すように、複数のコスト要因から道路リンクiのコストC
iを決定するために用いられる。ここで用いる複数のコスト要因には、重みパラメータの生成において、経路選択に影響するとして採用した複数の経路属性(距離、所要時間、道路属性等)と同じ属性が用いられる。α
0、α
1、α
2、α
3、〜α
kは、ステップS54またはステップS58で選択された重みパラメータである。x
1(i)、x
2(i)、x
3(i)〜x
k(i)は、道路リンクiのコスト要因であり、距離、旅行時間、道路属性などの属性データである。経路探索対象となる道路リンクのコストを式(2)に従って設定し、目的地点Oまでの最小コスト経路を計算する。最小コスト経路の計算アルゴリズムとして、一般的にダイクストラ法が用いられるが、最小コスト経路を求めるアルゴリズムであれば、ダイクストラ法以外の方法を用いても構わない。
【数2】
【0044】
ステップS51〜S56の処理を、
図6を用いて補足説明する。
図6において、出発地点O
iから目的地点D
iまでの経路が要求されたとする。ステップS51において、要求地点のO
iおよびD
iの同一あるいはその近傍エリアに存在する経路61の始終点区間O
1D
1の重みパラメータと経路62の始終点区間O
2D
2の重みパラメータとが候補パラメータとして選ばれる。複数の重みパラメータが候補として存在するので、ステップS58において、要求地点のO
iおよびD
iに近い場所に位置し、その直線距離が要求地点間(O
iからD
iまで)の直線距離に近い区間の重みパラメータが選択される。
図6の例では、要求出発地点O
iに最も近い始点O
1を有し、その始終点区間距離(O
1からD
1までの直線距離)がO
iからD
iへの直線距離に近い値を有する始終点区間O
1D
1の重みパラメータが選択される。ステップS55において、選択された始終点区間O
1D
1の重みパラメータを用い、出発地点O
iから目的地点D
iまでの経路60が計算される。重みパラメータ記憶部516に、始終点区間O
1D
1と始終点区間O
2D
2とが存在しなかった場合は、ステップS53において、要求地点のO
iおよびD
iの周辺エリア63の道路ノード間平均距離が計算される。ステップS54において、重みパラメータ記憶部516に記憶されている重みパラメータの中から、上記周辺エリア63のノード間平均距離と等しいかまたは所定範囲内のノード間平均距離を有する重みパラメータを検索し、経路64の始終点区間O
4D
4の重みパラメータと、経路66の始終点区間O
6D
6の重みパラメータとが候補パラメータとして選ばれる。ここで、始終点区間O
4D
4のノード間平均距離は、始終点区間O
4D
4の周辺エリア65に存在する道路ノード間の平均距離である。また、始終点区間O
6D
6のノード間平均距離は、始終点区間O
6D
6の周辺エリア67に存在する道路ノード間の平均距離で、センタ装置1の重みパラメータ生成部15において重みパラメータを生成する際に計算され、重みパラメータと共に重みパラメータ記憶部16に格納される。複数の重みパラメータが候補となった場合は、候補区間、即ち、始終点区間O
4D
4と始終点区間O
6D
6の各区間距離と、要求ODの区間距離との差を比較し、距離差が最も小さい始終点区間O
4D
4の重みパラメータを選択する。ステップS55において、選択された始終点区間O
4D
4の重みパラメータを用い、出発地点O
iから目的地点D
iまでの経路60が計算される。計算された経路60は、当該要求区間の推奨経路として出力される。
【0045】
本例では、収集したプローブデータから得た重みパラメータを用いて、道路リンクのコストを設定し、目的地点までの最小コスト経路を計算する方法を説明した。経路ごとに重みパラメータを用いたコストを計算し、最小コストとなる経路を選択するようにしても同様の効果が得られる。この場合、距離や所要時間など、経路計算に用いるコスト要因を変更して、要求区間ODを移動する複数の経路を計算し、得られた複数の経路の距離、旅行時間などの経路属性データに対してステップS54またはステップS58で選択された重みパラメータを加味した経路コストを計算し、得られた経路コストが最小の経路を推奨経路として選択する。
【0046】
<全体処理フロー>
センタ装置1およびナビゲーション装置5を有する経路探索システムの全体処理フローを
図7に示す。
【0047】
ナビゲーション装置5において、位置情報取得部517によって出発地としての現在地が取得され、入出力インターフェース部515を介して入出力処理部514に目的地や経路探索条件等が入力されると(ステップS701)、センタ接続が可能あれば(ステップS702がYES)、要求情報送信部521は、位置情報取得部517および入出力処理部514から取得した入力情報に従って要求された出発地点から目的地までの誘導経路提供に必要な情報をセンタ装置1に要求する。ここで、センタ装置1への要求内容として、本実施形態のナビゲーション装置5では、経路情報を要求する機能と、経路計算に必要な重みパラメータを要求する機能との二つの機能を有するものとする。要求情報送信部521が取得した入力情報が、センタ装置1の経路情報を要求するものであれば(ステップS703がYES)、要求情報送信部521は、通信インターフェース部511を介してセンタ装置1に経路情報を要求する(ステップS705)。この場合、図示していないが、センタ装置1は経路計算部513と同様の経路計算部を有するものとする。
【0048】
センタ装置1では、端末要求受付部18が、通信インターフェース部11を介してナビゲーション装置5からの要求情報を受け付け(ステップS720)、受け付けた要求情報に含まれる要求を解釈し、その要求をセンタ装置1内のそれぞれの処理部に振り分ける。要求が経路情報の場合(ステップS724がYES)、センタ装置1が有する不図示の経路計算部が、ステップS50〜S58の経路計算処理を行って重みパラメータを用い、要求された出発地点から目的地点までの経路を計算する。不図示の経路計算部により得られた経路情報を、情報提供部19が通信インターフェース部11を介してナビゲーション装置5に送信する(ステップS725)。
【0049】
ナビゲーション装置5は、情報受信部512が通信インターフェース511を介してセンタ装置1から経路情報を受信すると(ステップS706)、入出力処理部514は、情報受信部512が受信した経路情報に基づき、入出力インターフェース部515を介して、誘導案内を開始する(ステップS709)。誘導案内中、誘導経路を逸脱したか否かを検出し(ステップS710)、誘導経路を逸脱した場合はその区間を記録する(ステップS711)。車両4が目的地ないしその付近に到達したら(ステップS712がYES)、車両4が逸脱した結果として走行した経路を含む走行経路を保存するとともに、逸脱区間が存在すれば逸脱区間をも保存し(ステップS713)、その後、誘導案内が終了し、本処理は終了する。
【0050】
ナビゲーション装置5において、要求情報送信部521が取得した入力情報が、センタ装置1に重みパラメータを要求するものであれば(ステップS704がYES)、要求情報送信部521は、通信インターフェース部511を介してセンタ装置1に重みパラメータを要求する。
【0051】
センタ装置1では、端末要求受付部18が、ナビゲーション装置5からの要求情報を受け付ける(ステップS720)。要求情報に含まれる要求が重みパラメータの場合(ステップS721がYES)、情報提供部19は、要求されたエリアの重みパラメータを、重みパラメータ記憶部16から読み込む(ステップS722)情報提供部19は、通信インターフェース部11を介して、その重みパラメータをナビゲーション装置5に送信する(ステップS723)。
【0052】
ナビゲーション装置5では、入出力処理部514が、入出力インターフェース部515を介してセンタ装置1から重みパラメータを受信すると(ステップS708)、ステップS50〜S58の経路計算処理に従い、経路計算部513が、入出力処理部514から取得した重みパラメータを用いて、指定された出発地点から目的地までの経路を計算する。得られた経路を推奨経路として目的地まで誘導するステップS709からS713までの処理は、前述した通りである。ステップS702において、ナビゲーション装置5がセンタ装置1に接続できなかったとき、経路計算部513は、重みパラメータ記憶部516に記憶されている既存の重みパラメータを読み込み、ステップS50〜S58の経路計算処理を行い、読み込んだ重みパラメータを用いて目的地までの経路を計算する。
【0053】
上述した重みパラメータ生成部15は、ナビゲーション装置5により車両4をはじめとする多数のプローブ車両が走行することによって生成されたプローブデータを収集し、収集したプローブデータに基づいて重みパラメータを生成する。例えば、ステップS713で収集した逸脱区間を含めたプローブデータを収集し、そのプローブデータに基づいて重みパラメータを生成し経路計算に利用することで、よりドライバの経路選択意志を反映した経路が計算できるようになる。経路逸脱区間を含むプローブデータの代わりに、経路誘導を実行していないときのプローブデータを用いても、そのプローブデータにはドライバが故意に選択した経路が多く含まれるので、同様の効果が期待できる。
【0054】
<表示例>
図8は、ナビゲーション装置5において、誘導経路を得るまでに表示部52に表示される表示画面の一例である。
【0055】
80は、車両の現在位置85とユーザが設定した目的地86を地図上に表示した表示画面である。目的地86が設定されると、表示画面82に遷移し、「あなた好みのルート」「人気ルート」、「タクシードライバ(玄人)ルート」といったルートメニューを表示する。いずれのルートも収集したプローブデータに基づいて重みパラメータ生成部15にて生成された重みパラメータを用いて計算される。「あなた好みのルート」は、ドライバ自身が走行したプローブデータに基づいて計算された重みパラメータを用い、「人気ルート」は、不特定多数のプローブデータに基づいて計算された重みパラメータを用いる。「タクシー(玄人)ルート」は、タクシー車両のプローブデータを使用する。その他、トラックドライバ、電気自動車、ドライバの年齢など、車種やドライバの属性でプローブデータを振り分けて重みパラメータを生成すれば、多くの種類の経路を提供することができるようになる。
【0056】
表示画面82で「あなた好み」が選択されると、表示画面81に遷移し、ドライバ自身のプローブデータ87から生成した重みパラメータを用いた経路計算を開始する。経路計算が終了すると、表示画面83に遷移し、得られた経路88を表示し、目的地までの経路誘導が開始される。プローブデータ87から生成した重みパラメータを用いるので、ドライバが過去に走行していないエリアでも、プローブデータ87の経路選択ノウハウを活かした経路88が提供できる。初期設定時に表示画面82が表示されるようにすることにより、表示画面82に表示されたルートメニューの中から優先したいルートを事前にドライバに設定させることとしてもよい。その場合、表示画面80で目的地86が入力された後、表示画面82および81を介さずに表示画面83に遷移して推奨経路88が表示される。これにより、誘導開始までの操作手順が簡略化され、短時間での入力操作が可能となるため、走行中の安全性が向上するとともに、操作ストレスが軽減される。
【0057】
以上、本実施形態によれば、センタ装置1は、収集したプローブデータから得た経路選択確率に基づいて重みパラメータを計算してナビゲーション装置5に提供し、ナビゲーション装置5は、重みパラメータを用いて指定された区間の経路を計算する。したがって、利用者が走行したことのないエリアでも、過去に走行したドライバの経路選択ノウハウを加味した実用的な経路を利用することができるようになる。また、その経路選択ノウハウは重みパラメータとしてナビゲーション装置5に提供され、その重みパラメータは、上記利用者に限らず、過去の走行実績が存在しないエリアにも適用できる。したがって、プローブデータの収集量や収集エリアが限られていても、より広いエリアにおいて、利用者が期待する経路に近い経路が提供できる。また、利用者が走行する可能性の高い経路を提供するので、利用者は、誘導経路の気に入らない区間の経路を変更するために、経路の探索条件を変更して経路計算システムに経路を再計算させたり、経由地点を設定して経路計算システムに経路を修正させたりする必要がなくなる。その結果、利用者に操作性の負担を感じさせることなく、容易に誘導経路が得られる。