特許第5914269号(P5914269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914269
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】塗装用吐出ノズルの検査装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/00 20060101AFI20160422BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B05B15/00
   G01N27/22 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-195317(P2012-195317)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-50778(P2014-50778A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岡村 寛之
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−180308(JP,A)
【文献】 特開2009−016508(JP,A)
【文献】 特開2009−273991(JP,A)
【文献】 特開平07−236841(JP,A)
【文献】 特開2011−020100(JP,A)
【文献】 実開昭57−184768(JP,U)
【文献】 特開平10−296150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 3/00
B05B 7/00− 9/08
B05B 12/00−15/12
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧状に吐出する塗装用吐出ノズルの吐出状態を検査する検査装置であって、
水平な回転軸心周りに複数並設された塗布面を有し、該複数の塗布面のうち検査位置に対応位置する塗布面に上記吐出ノズルから吐出された塗料が付着される回転体と、
上記回転体を回転可能に支持する支持台と、
回転軸心を上記回転体と共有し、当該回転体と一体に回転する回転板と、
上記支持台の上方に昇降可能に設けられ、下降動作により上記回転体の上記検査位置に対応位置する塗布面に摺接するとともに、該回転体を回転軸心周りに回転させる昇降手段と、
上記検査位置に対応位置する塗布面に付着した塗料の幅が所定の検査幅に達しているか否かを判定する判定手段とを備え、
上記回転板には、回転方向に等間隔で、且つ、回転中心から放射状に延びる複数の延出部が設けられ、
上記昇降手段には、下降動作により、上記検査後の塗布面に摺接して当該塗布面に付着した塗料を剥ぎ取る摺接部と、上記塗布面から塗料を剥ぎ取った後、上記延出部の1つを回転方向に押圧することにより上記回転体を回転させ、検査前の塗布面を検査位置に移動させる押圧部とが設けられていることを特徴とする塗装用吐出ノズルの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装用吐出ノズルの検査装置において、
上記支持台には、有機溶剤を貯溜する貯溜凹部が形成され、
上記回転体の下半側が上記貯溜凹部の有機溶剤に浸されていることを特徴とする塗装用吐出ノズルの検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗装用吐出ノズルの検査装置において、
上記回転体は、多角筒状のケースを備え、該ケース内部には、静電容量式レベルセンサが配置され、
上記判定手段は、上記静電容量式レベルセンサで塗布面に付着した塗料の領域を知ることで上記塗布面に付着した塗料の幅が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されていることを特徴とする塗装用吐出ノズルの検査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の塗装用吐出ノズルの検査装置において、
上記回転体は、回転軸心方向の長さが上記所定の検査幅である多角柱状の絶縁体と、該絶縁体の回転軸心方向両端にそれぞれ設けられ、上記各塗布面に対応する複数の通電体を有する検査板とを備え、
上記判定手段は、上記両通電体間の通電の有無を検知することで上記塗布面に付着した塗料の幅が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されていることを特徴とする塗装用吐出ノズルの検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の塗装用吐出ノズルの検査装置において、
上記絶縁体は、複数の絶縁板を回転軸心方向に積層した積層体であることを特徴とする塗装用吐出ノズルの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を噴霧状に吐出する塗装用吐出ノズルの吐出状態を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の製造ラインでは、各部品の塗装を塗装用ロボットを用いて自動で行うようになっていて、例えば、特許文献1に開示されている塗装用ロボットは、塗料を噴霧状に吐出する吐出ノズルを産業用多軸ロボットのアーム先端に取り付けたものであり、上記多軸ロボットを作動させることにより、上記吐出ノズルの吐出方向を自由に変えて塗装できるようになっている。
【0003】
ところで、上記吐出ノズルは、連続的に使用すると塗料の凝集や異物の混入等によって吐出範囲が狭くなるおそれがある。そこで、上記吐出ノズルの吐出状態を周期的に検査する必要があり、一般的に、所定の場所や検査用の被塗装物に吐出ノズルから塗料を吐出させて付着した塗料の状態(付着した幅)を目視やセンサで確認して良否を判定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−121105号公報(段落0018〜0023欄、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の方法では、検査の都度、次の検査に備えて塗料の付着した場所の清掃を手作業で行ったり、被塗装物を新しいものに取り替えるといった煩雑な段取り替えが必要であり、この段取り替えに時間がかかると、ラインタクトに影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検査の段取り替えが簡単で短時間で行うことができる塗装用吐出ノズルの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、検査後の塗布部分の清掃と次の検査で使用する塗布部分の検査位置までの移動とを連続で行うように工夫したことを特徴とする。
【0008】
具体的には、塗料を噴霧状に吐出する塗装用吐出ノズルの吐出状態を検査する検査装置において次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、水平な回転軸心周りに複数並設された塗布面を有し、該複数の塗布面のうち検査位置に対応位置する塗布面に上記吐出ノズルから吐出された塗料が付着される回転体と、上記回転体を回転可能に支持する支持台と、回転軸心を上記回転体と共有し、当該回転体と一体に回転する回転板と、上記支持台の上方に昇降可能に設けられ、下降動作により上記回転体の上記検査位置に対応位置する塗布面に摺接するとともに、該回転体を回転軸心周りに回転させる昇降手段と、上記検査位置に対応位置する塗布面に付着した塗料の幅が所定の検査幅に達しているか否かを判定する判定手段とを備え、上記回転板には、回転方向に等間隔で、且つ、回転中心から放射状に延びる複数の延出部が設けられ、上記昇降手段には、下降動作により、上記検査後の塗布面に摺接して当該塗布面に付着した塗料を剥ぎ取る摺接部と、上記塗布面から塗料を剥ぎ取った後、上記延出部の1つを回転方向に押圧することにより上記回転体を回転させ、検査前の塗布面を検査位置に移動させる押圧部とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記支持台には、有機溶剤を貯溜する貯溜凹部が形成され、上記回転体の下半側が上記貯溜凹部の有機溶剤に浸されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記回転体は、多角筒状のケースを備え、該ケース内部には、静電容量式レベルセンサが配置され、上記判定手段は、上記静電容量式レベルセンサで塗布面に付着した塗料の領域を知ることで上記塗布面に付着した塗料の幅が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1又は第2の発明において、上記回転体は、回転軸心方向の長さが上記所定の検査幅である多角柱状の絶縁体と、該絶縁体の回転軸心方向両端にそれぞれ設けられ、上記各塗布面に対応する複数の通電体を有する検査板とを備え、上記判定手段は、上記両通電体間の通電の有無を検知することで上記塗布面に付着した塗料の幅が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、上記絶縁体は、複数の絶縁板を回転軸心方向に積層した積層体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、昇降手段を下降させると、摺接部により検査後の塗布面に付着した塗料が剥ぎ取られ、その後、押圧部により回転体が回転するので、昇降手段の下降動作の際に検査後の塗布面に付着した塗料の清掃と検査前の塗布面の検査位置への移動とが連続で行われる。したがって、検査後に次の検査に備えて塗布面を手作業で清掃したり、検査後の被塗装物を新しいものに取り替えるといった煩雑な作業を行う必要はなく、検査の段取り替えが簡単で短時間で行うことができる。
【0015】
第2の発明では、検査後の塗布面に付着する塗料が貯溜凹部の有機溶剤で洗い流されるので、摺接部による検査後の塗布面の清掃が不十分であっても、検査前の塗布面に塗料が付着していない状態に確実にできる。
【0016】
第3の発明では、塗布面において塗料が付着している領域か否かを静電容量の差で定量的に知ることができるので、目視の如き検査方法に比べて検査時の測定のバラツキを防ぐことができる。また、回転体によってセンサが囲われているので、センサに塗料やゴミが付着し難く、これら塗料やゴミ等によるセンサの故障や誤検知を防ぐことができる。
【0017】
第4の発明では、塗布面に通電させるだけで付着した塗料の領域を定量的に知ることができるので、目視の如き検査時の測定のバラツキを防ぐとともに、コストを抑えた設備にできる。また、第3の発明の如き回転体の内部にセンサを配置する構造でないので、装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0018】
第5の発明では、絶縁板の積層枚数を変えることで絶縁体の回転軸心方向の長さが変わるので、検査板間の距離を変えることで検査幅を簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る検査装置の斜視図である。
図2】実施形態1に係る検査装置の回転体周りの分解斜視図である。
図3図1のA−A線における断面図である。
図4】検査位置にある塗布面に塗料を塗布した直後の状態を示す概略側面図である。
図5図4の状態から昇降手段を下降させて摺接部で塗布面に付着した塗料を剥ぎ取っている途中の状態を示す概略側面図である。
図6図5の状態からさらに昇降手段を下降させて回転体を回転させている途中の状態を示す概略側面図である。
図7図6の状態からさらに昇降手段を下降させて検査前の塗布面を検査位置に移動させた直後の状態を示す概略側面図である。
図8図7の状態の後、昇降手段が上昇する途中の状態を示す概略側面図である。
図9】実施形態2に係る検査装置の回転体周りの斜視図である。
図10】実施形態2の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る検査装置1を示す。該検査装置1は、自動車の製造ラインに配置され、塗料を噴霧状に吹き出して自動車下部の部品に耐チッピング用の塗装を施す吐出ノズル10(図3参照)の吐出状態を検査する装置である。尚、上記吐出ノズル10は、産業用の多軸ロボット(図示せず)のアーム先端に取り付けられている。
【0021】
上記検査装置1は、所定の間隔をあけて設けられた一対のL字フレーム2と、金属製の回転体3と、該回転体3を回転可能に支持する支持台4とを備えている。
【0022】
上記回転体3は、図2及び図3に示すように、両端が開放する五角筒状のケース31と、該ケース31の両端を塞ぐ正五角形状の閉塞板32とを備え、該各閉塞板32の中央には、貫通孔32aが形成されている。
【0023】
上記ケース31の内部には、円柱部材30が収容され、該円柱部材30には、中心軸に沿って貫通孔30aが形成されている。
【0024】
該貫通孔30aには、回転軸33が嵌挿され、上記回転軸33は、その両端部分が上記円柱部材30の両端部分から突出した状態で上記円柱部材30に固定されている。
【0025】
そして、上記回転軸33の両端部分は上記支持台4に固定されていて、上記ケース31及び各閉塞板32は、上記回転軸33周りに回転するようになっている。
【0026】
また、上記ケース31には、上記吐出ノズル10から吐出された塗料を付着させる塗布面31aが回転軸心周りに5つ並設され、該5つの塗布面31aの1つが斜め上方を向いた位置を検査位置T1(図3図7参照)としている。
【0027】
上記円柱部材30表面の上記検査位置T1に対応する箇所には、静電容量式レベルセンサ5が貼り付けられ、当該静電容量式レベルセンサ5の測定により、上記検査位置T1の塗布面31aに付着した塗料の領域を知ることができるようになっている。
【0028】
上記支持台4は、略直方体形状をなし、その長手方向一方側が上記両L字フレーム2の上下に延びる部分の間に位置している。
【0029】
上記支持台4の長手方向一方側には、有機溶剤を貯溜する貯溜凹部4aが形成され、該貯溜凹部4aの有機溶剤には、上記回転体3の下半側が浸されている。
【0030】
また、上記支持台4の長手方向一端には、端部に行くにつれて次第に下傾する傾斜面4bが形成され、該傾斜面4bは、上記検査位置T1に位置する塗布面31aと面一となっている。
【0031】
さらに、上記支持台4は、上記両L字フレーム2に対して水平方向にスライド移動可能となっていて、上記各L字フレーム2の水平に延びる部分と上記支持台4との間には、上記両L字フレーム2に対して上記支持台4を長手方向一方側に付勢するコイルバネSp1が設けられている。
【0032】
上記回転体3の回転軸心方向両端には、回転軸心を上記回転体3と共有し、当該回転体3と一体に回転する回転板6が一対設けられている。
【0033】
該回転板6は、略星型状をなし、回転方向に等間隔で、且つ、回転中心から放射状に延びる5つの先鋭な延出部6aを有していて、各延出部6aの先端は、上記回転体3の各角にそれぞれ対応した位置となっている。
【0034】
上記両L字フレーム2の上下に延びる部分の間で、且つ、上記支持台4の上方には、図1に示すように、上記両L字フレーム2に対して昇降する昇降フレーム7(昇降手段)が設けられている。
【0035】
該昇降フレーム7は、略門型状をなし、上記両L字フレーム2の上下に延びる部分の間に位置している。
【0036】
上記昇降フレーム7は、所定の間隔をあけて上下に延びる一対の第1フレーム71と、該両第1フレーム71の上端間を連結する第2フレーム72とを備え、上記各第1フレーム71は、上記各L字フレーム2の上下に延びる部分にそれぞれ対応している。
【0037】
上記昇降フレーム7の略上半部分における支持台4の長手方向他方側には、上記両第1フレーム71及び上記第2フレーム72で囲われる部分を覆う矩形プレート73(摺接部)が上記両第1フレーム71及び第2フレーム72に一体に設けられている。
【0038】
上記各第1フレーム71の下端縁71aは支持台4の長手方向一方側に行くほど下傾していて、上記傾斜面4b及び検査位置T1の塗布面31aに対応している。
【0039】
また、上記各第1フレーム71上端には、側面視で略L字状をなす鈎状フレーム74(押圧部)が設けられている。
【0040】
該鈎状フレーム74は、上記支持台4の長手方向他方側に向かって略水平に延びる第1延出フレーム74aと、該第1延出フレーム74aの延出端から下方に略垂直に延びる第2延出フレーム74bとを備え、該第2延出フレーム74bの上端が上記第1延出フレーム74aの延出端に水平支軸Sh1により上記支持台4の長手方向一方側に回動可能に軸支されている。
【0041】
そして、上記第2延出フレーム74bは、図示しない捻りバネにより支持台4の長手方向他方側に回動付勢されている。
【0042】
さらに、上記第1フレーム71と上記L字フレーム2との間には、上記L字フレーム2に対して上記第1フレーム71を上方に付勢するコイルバネSp2が一対設けられている。
【0043】
上記静電容量式レベルセンサ5には、図1及び図2に示すように、制御装置8(判定手段)が接続され、該制御装置8は、上記静電容量式レベルセンサ5で塗布面31aに付着した塗料の領域を知ることで上記塗布面31aに付着した塗料の幅(回転体3の長手方向の幅)が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されている。
【0044】
そして、吐出ノズル10を検査した後、図示しない多軸ロボットのアーム部分で上記昇降フレーム7を上方から押圧し、当該昇降フレーム7をコイルバネSp2の付勢力に抗して下降させると、図4及び図5に示すように、両第1フレーム71の下端縁71aが支持台4の傾斜面4bを下方に押しながら摺接することにより、上記支持台4をコイルバネSp1の付勢力に抗して長手方向他方側にスライド移動させ、且つ、上記矩形プレート73の下端縁が検査位置T1の塗布面31aに摺接しながら当該塗布面31aに付着した塗料を剥ぎ取るようになっている。
【0045】
また、矩形プレート73が塗布面31aの塗料を剥ぎ取った後、さらに昇降フレーム7をコイルバネSp2の付勢力に抗して下降させると、図6及び図7に示すように、上記鈎状フレーム74の第2延出フレーム74b先端が上記回転板6の延出部6aの1つを回転方向Xに押圧することにより上記回転体3を回転させ検査前の塗布面31aを検査位置T1に移動させるようになっている。
【0046】
そして、検査前の塗布面31aを検査位置T1に移動させた後、図示しない多軸ロボットによる上記昇降フレーム7の下降動作を停止させて多軸ロボットのアーム部分を上記昇降フレーム7から離間させると、当該昇降フレーム7は上記コイルバネSp2の付勢力により上記両L字フレーム2に対して上昇し、上記支持台4は上記コイルバネSp1の付勢力により上記両L字フレーム2に対して長手方向一方側にスライド移動するようになっている。
【0047】
また、上記昇降フレーム7が上昇する際、上記第2延出フレーム74bは、図8に示すように、上記回転体3を回転させた延出部6aの先端に摺接しながら図示しない捻りバネの付勢力に抗して支持台4の長手方向一方側に回動するようになっている。
【0048】
さらに、上記第2延出フレーム74bの先端が上記回転体3を回転させた延出部6aの先端を通過すると、上記第2延出フレーム74bは、図示しない捻りバネの付勢力により支持台4の長手方向他方側に回動して元の姿勢(略垂直に延びる姿勢)に戻るようになっている。
【0049】
次に、上記吐出ノズル10の吐出状態の検査について説明する。
【0050】
まず、上記吐出ノズル10を用いて自動車下部の複数の部品に耐チッピング用の塗装を施した後、図示しない多軸ロボットを駆動させて上記吐出ノズル10を上記検査装置1近傍まで移動させる。
【0051】
次に、図3に示すように、検査位置T1に位置する回転体3の塗布面31aに塗料を吐出して付着させる。
【0052】
その後、制御装置8から静電容量式レベルセンサ5に作動信号を出力して、塗布面31aに付着した塗料の幅を測定させ、しかる後、測定した結果から検査位置T1に位置する塗布面31aに付着した塗料の幅が所定の検査幅に達しているか否かを判定する。
【0053】
次いで、図示しない多軸ロボットを駆動させ、図4の状態から当該多軸ロボットのアーム部分で上記昇降フレーム7を上方から押圧する。すると、図5に示すように、昇降フレーム7が下降し、両第1フレーム71の下端縁71aが支持台4の傾斜面4bを下方に押しながら摺接して上記支持台4を長手方向他方側にスライド移動させ、且つ、矩形プレート73の下端縁が検査後の塗布面31aに摺接して塗布面31aから塗料が剥ぎ取られる。
【0054】
さらに、上記矩形プレート73が検査後の塗布面31aから塗料を剥ぎ取った後、昇降フレーム7をさらに下降させると、図6及び図7に示すように、鈎状フレーム74の先端が上記回転板6の5つの延出部6aのうちの1つを回転方向に押圧し、検査前の塗布面31aを検査位置T1まで移動させる。
【0055】
また、矩形プレート73によって塗料が剥ぎ取られた塗布面31aは貯溜凹部4aの有機溶剤に浸され、有機溶剤により付着する塗料が溶ける。
【0056】
しかる後、多軸ロボットによる昇降フレーム7の押圧を停止させて多軸ロボットのアーム部分を昇降フレーム7から離間させると、コイルバネSp2の付勢力により上記昇降フレーム7が上昇するとともに、コイルバネSp1の付勢力により上記支持台4が長手方向一方側にスライド移動する。
【0057】
また、上記昇降フレーム7が上昇する際、図8に示すように、上記第2延出フレーム74bは、上記回転体3を回転させた延出部6aの先端に摺接しながら図示しない捻りバネの付勢力に抗して支持台4の長手方向一方側に回動する。
【0058】
そして、上記第2延出フレーム74bは、その先端が上記回転体3を回転させた延出部6aの先端を通過すると、図示しない捻りバネの付勢力により支持台4の長手方向他方側に回動し、元の姿勢(略垂直に延びる姿勢)にまで戻る。
【0059】
その後、上記昇降フレーム7が上昇端に達し、検査装置1が次の検査に備えた状態に戻る(図4参照)。
【0060】
以上より、本発明の実施形態1によると、昇降フレーム7を下降させると、矩形プレート73の下端縁により検査後の塗布面31aに付着した塗料が剥ぎ取られ、その後、鈎状フレーム74により回転体3が回転するので、昇降フレーム7の下降動作の際に検査後の塗布面31aに付着した塗料の清掃と検査前の塗布面31aの検査位置T1への移動とが連続で行われる。したがって、検査後に次の検査に備えて塗布面31aを手作業で清掃したり、検査後の被塗装物を新しいものに取り替えるといった煩雑な作業を行う必要はなく、検査の段取り替えが簡単で短時間で行うことができる。
【0061】
また、検査後の塗布面31aに付着する塗料が貯溜凹部4aの有機溶剤で洗い流されるので、矩形プレート73による検査後の塗布面31aの清掃が不十分であっても、検査前の塗布面31aに塗料が付着していない状態に確実にできる。
【0062】
さらに、塗布面31aにおいて塗料が付着している領域か否かを静電容量の差で定量的に知ることができるので、目視の如き検査方法に比べて検査時の測定のバラツキを防ぐことができる。また、回転体3によって静電容量式レベルセンサ5が囲われているので、静電容量式レベルセンサ5に塗料やゴミが付着し難く、これら塗料やゴミ等による静電容量式レベルセンサ5の故障や誤検知を防ぐことができる。
【0063】
尚、本発明の実施形態1では、塗布面31aに付着した塗料の領域を静電容量式レベルセンサ5で知る構造となっているが、塗布面31aに付着した塗料の領域を知ることができるのであれば他のセンサを用いてもよい。
《発明の実施形態2》
図9及び図10は、本発明の実施形態2に係る検査装置1である。この実施形態2では、上記回転体3の構造が実施形態1と異なるだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0064】
実施形態2の回転体3は、図9に示すように、回転軸心方向の長さが上記所定の検査幅である五角柱状の絶縁体36を備え、該絶縁体36は、複数の絶縁板34を回転軸心方向に積層した積層体である。
【0065】
上記絶縁体36の回転軸心方向両端には、円盤状の検査板35が設けられ、該検査板35の外周縁には、上記各塗布面31aにそれぞれ対応する5つの通電体35aが回転方向に等間隔に埋設されている。
【0066】
そして、上記制御装置8は、検査位置T1に位置する塗布面31aに対応する両通電体35a間に電流を流し、両通電体35a間の通電の有無を検知することで上記塗布面31aに付着した塗料の幅(回転体3の長手方向の幅)が上記所定の検査幅に達しているか否かを判定するように構成されている。
【0067】
また、実施形態2の支持台4の長手方向略中央上面には、図10に示すように、樹脂製ブラシ9が配置されている。
【0068】
該ブラシ9は、上記検査板35の周縁に接触していて、上記検査板35の回転時に当該検査板35の周縁に摺接して通電体35aに付着した塗料を剥ぎ取るようになっている。
【0069】
尚、実施形態2の吐出ノズル10の吐出状態の検査は、実施形態1のときと同じであるので詳細な説明は省略する。
【0070】
以上より、本発明の実施形態2によると、塗布面31aに通電させるだけで付着した塗料の領域を定量的に知ることができるので、目視の如き検査時の測定のバラツキを防ぐとともに、コストを抑えた装置にできる。また、実施形態1の如き回転体3の内部に静電容量式レベルセンサ5を配置する構造でないので、装置のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0071】
また、絶縁板34の積層枚数を変えることで絶縁体36の回転軸心方向の長さが変わるので、両検査板35間の距離を変えることで検査幅を簡単に調整することができる。
【0072】
尚、本発明の実施形態1,2では、回転体3のケース31に5つの塗布面31aが設けられているが、これに限らず、複数の塗布面31aが設けられていればよい。
【0073】
また、本発明の実施形態1,2では、昇降フレーム7の昇降と、支持台4のスライド移動にコイルバネSp1,Sp2を用いているが、アブソーバ等を用いて昇降やスライド移動をさせてもよい。
【0074】
さらに、本発明の実施形態1,2では、支持台4をスライド移動させる構造になっているが、スライド移動させない構造であってもよい。
【0075】
それに加えて、本発明の実施形態1,2の検査装置1は、静電容量式レベルセンサ5で測定する際や通電体35aに電流を流す際以外は電気を使用しない構造であり、防爆仕様に対応させやすい。
【0076】
また、実施形態2のブラシ9は、樹脂製であるが、これに限らず、金属製であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、塗料を噴霧状に吐出する塗装用吐出ノズルの吐出状態を検査する検査装置に適している。
【符号の説明】
【0078】
1 検査装置
3 回転体
4 支持台
4a 貯溜凹部
5 静電容量式レベルセンサ
6 回転板
6a 延出部
7 昇降フレーム(昇降手段)
8 制御装置(判定手段)
10 吐出ノズル
31 ケース
31a 塗布面
34 絶縁板
35 検査板
35a 通電体
36 絶縁体
73 矩形プレート(摺接部)
74 鈎状フレーム(押圧部)
T1 検査位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10