(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような洗濯機の脱水構造では、ドラム自体が回転することにより、洗濯後の衣類の脱水を行うものであった。このことから、ドラムを回転させる駆動手段を別に設ける必要があり、さらに、ドラムの抜き孔から排水された脱水後の洗浄水を回収する層を、ドラムの外周全周に設ける必要があった。したがって、比較的重量の嵩むドラムの回転で消費される電力が増大する。また、ドラムを回転させるものであることから、洗濯機の底部に重心を置いてドラムを制振させ、洗濯機を安定設置させる必要があり、洗濯機の重量が嵩む問題点もあった。さらに、脱水後の洗浄水を回収する層を設けることによって洗濯機を大型化せざるを得ない不都合があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、軽量で且つ設置スペースをコンパクトにでき、しかも、省電力化を図れる洗濯機の脱水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明
は、
携帯可能な洗濯機に具備される衣類の脱水構造であって、排水路と、ファンとを備えており、排水路は、洗濯槽の下部に設けてあり、洗濯槽と連通するとともに外部に開放し、
洗濯槽側排水路と、外部側排水路と、ファン格納室とを各々が一続きに連通する状態で有しており、洗濯槽側排水路と外部側排水路の間と、洗濯槽側排水路とファン格納室の間と、ファン格納室と外部側排水路の間には、開閉を制御できる排水弁を各々設けてあり、各排水弁は、制御部で開閉を制御されることで洗濯槽の排水工程と、脱水工程と、ファン格納室からの排水工程を切り替え自在であり、ファンは、
ファン格納室内に軸回転自在に配置してあり、ファンの回転により洗濯槽を減圧することで洗濯槽に収容された衣類を脱水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明
によれば、
携帯可能な洗濯槽の下部にファンを設けることにより、ファンの回転で洗濯槽を真空にして衣類の水分を絞り取ることができる。このようにすると、洗濯槽を有するドラムを無回転で脱水工程が行えることから、ドラムの周囲に排水層を設ける必要がない。したがって、洗濯機のサイズを小さく形成することができ、省スペース化を図ることができ、しかも、重量が嵩張らず、携帯性が向上して清掃時の移動がしやすくなる。
また、排水路を洗濯槽側排水路、外部側排水路及びファン格納室とから構成している。さらに、洗濯槽側排水路と外部側排水路の間と、洗濯槽側排水路とファン格納室の間、ファン格納室と外部側排水路の間に排水弁をそれぞれ設け、各々を開閉制御することにより、洗濯槽からの排水と衣類の脱水工程、あるいは、ファン格納室からの排水を任意に切り替えて確実に行える。したがって、衣類の効率的な脱水を行えるとともに、従来の脱水構造に比べてコンパクト且つ簡易な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態の洗濯機の脱水構造を示すものであり、(a)は、脱水構造を示す縦断面図であり、(b)は、本実施による洗濯機の全体を示す縦断面図である。
【
図2】(a)〜(c)は、第一実施形態の洗濯機の脱水構造の作動状態を示す縦断面図である。
【
図3】本実施の脱水構造を具備する洗濯機を示すものであり、(a)は、洗濯槽の構造を示す縦断面図であり、(b)は、本実施の脱水構造を具備した洗濯機を示す正面図である。
【
図4】本実施による洗濯機における(a)は、洗濯槽の縦断面図であり(b)は、(a)中Bの拡大図である。
【
図5】(a)(b)は、本実施による洗濯槽の蓋の開閉状態を示す縦断面図である。
【
図6】本実施の脱水構造の他の実施形態を示すものであり、(a)は、使用状態を示す斜視図であり、(b)は、持ち運び時の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面に基づいて本実施による洗濯機の脱水構造について説明する。
本実施による脱水構造は、
図1(b)のような洗濯機に備えられており、洗濯槽9の下部に設けてある。さらに、脱水構造は、
図1(a)のように、洗濯槽9と連通する洗濯槽側排水路1と、ファン12と、ファン格納室2と、洗濯機の外部と連通する外部側排水路3とから構成している。
【0011】
洗濯槽側排水路1は、洗濯槽9の底部に設けてある排水口10と通じている。また、洗濯槽側排水路1は、ファン格納室2と、外部側排水路3のそれぞれに通じており、各々の接続箇所には第1〜第3排水弁5〜7が設けてある。また、第1〜第3排水弁5〜7は、
図3(b)に示す制御部35で各々が開放と閉塞を切り替えできる。
制御部35は、洗濯機の正面側に配置されるパネル上に、脱水スイッチ56が設けてあり、その脱水スイッチ56を入力することにより、後述で詳しく説明するが、第1〜第3排水弁5〜7の開閉の組みあわせを所定のパターンで適宜変更する制御が行われる。これにより、洗濯槽9の洗浄工程の際の洗浄水の排水と、脱水工程の際に衣類36から排出された排水と、ファン格納室2に滞留する水の排水が行われる。
【0012】
次に、ファン12とファン格納室2について説明する。ファン12は、複数の羽根部を放射状に配置する回転体であり、ファン格納室2の内部に水平軸回転自在に取り付けてあるとともに、駆動モーター11により回転方向を切り替えできるように制御されている。
また、ファン格納室2は、ファン12の形状に対応して壁部が上記ファン12を取り囲むように形成されている。また、ファン格納室2の下部には、外部側排水路3と合流するファン格納室側排水路4が設けてあり、このファン格納室側排水路4は、ファン格納室2に溜まった水を外部側排水路3に送り込むものであり、外部側排水路3とは第3排水弁7により流路の閉塞と開放を切り替えできるようになっている。外部側排水路3は、洗濯槽側排水路1から上下方向に延びており、洗濯槽9及びファン格納室2の水を洗濯機の外部に排水するものである。
【0013】
図1(a)(b)と
図2(a)(b)(c)のように、第1〜第3の各排水弁5〜7は、洗濯槽側排水路1と外部側排水路3が連続する箇所(第1排水弁5)と、洗濯槽側排水路1とファン格納室2が連続する箇所(第2排水弁6)と、ファン格納室2とファン格納室側排水路4が連続する箇所(第3排水弁7)にそれぞれ設けてある。
また、第1〜第3の各排水弁5〜7は、ほぼ円形をなす蓋部材が軸回転することにより、洗濯槽側排水路1と外部側排水路3とファン格納室側排水路4の流路内周部と一致する。これにより、各排水路1,3,4を各排水弁5〜7の切り替えにより、閉塞または開放することが可能となる。したがって、洗濯槽9やファン格納室2に溜まる脱水後の水分の排水と、洗濯槽9からの水の受け入れを任意に制御することができる。
【0014】
上記のように形成された脱水構造の作動手順について、以下に説明する。
第一の手順として、
図1(a)(b)と
図2(a)のように、洗濯槽9で衣類36の洗浄が完了した後、洗濯槽側排水路1と外部側排水路3を制御する第1排水弁5を開放し、洗濯槽側排水路1とファン格納室2を制御する第2排水弁6とファン格納室2と外部側排水路3を制御する第3排水弁7を閉塞する。これにより、洗濯槽9内の水が洗濯機の外に排水される。
第二の手順として、
図1(a)(b)と
図2(b)のように、洗濯槽9の水が排水された後、洗濯槽側排水路1とファン格納室2を制御する第2排水弁6を開放し、洗濯槽側排水路1と外部側排水路3を制御する第1排水弁5とファン格納室2と外部側排水路を制御する第3排水弁を閉塞する。これにより、洗濯槽9内が次第に減圧されていき、最終的には真空に近い状態となり、衣類36に吸収された水分を脱水する。
第三の手順として、
図1(a)(b)と
図2(c)のように、衣類36の脱水が完了した後、洗濯槽側排水路1と外部側排水路3を制御する第1排水弁5と、洗濯槽側排水路1とファン格納室2を制御する第2排水弁6を閉塞し、ファン格納室2と外部側排水路3を制御する第3排水弁7を開放する。これにより、ファン格納室2内に残留した水分を洗濯機の外に排出できる。
【0015】
上記のように第1〜第3の各排水弁5〜7の開閉状態を制御することにより、洗濯槽9の排水、衣類36の脱水、及びファン格納室2の排水を選択的に切り替えることができる。また、上記した第二の手順において、ファン12の回転により洗濯槽9内部が減圧されていき、洗濯槽9が真空に近い状態となることにより、衣類36が収縮してそこに含まれる水分が絞り出される。そして、絞り出された水分は、ファン格納室2から外部側排水路3に流れ込んで洗濯機の外部に排水される。
【0016】
次に、本実施による脱水構造を適用する洗濯機について、以下に説明する。
洗濯機の主要部である洗濯槽9は、
図3(a)(b)のように、ドラム31と、蓋40と、フィン32,33とから構成している。
【0017】
ドラム31は、ほぼ水平に設置されており、筒状をなす外周壁部41bと、外周壁部41bの両側を塞ぐ両側壁部41aとから構成してあり、その内部には衣類36を収容するために中空の洗濯槽9を形成している。また、ドラム31の両側壁部41a外周側の中心位置には、蓋支持部41cが設けてある。また、ドラム31の上部には、洗濯槽9への衣類36の投入口9aが設けてあり、さらに、その投入口9aを開放または閉塞する蓋40が設けてある。また、ドラム31の内周面には凹凸部37が設けてあり、この凹凸部37は、ドラム31の内周面の下方に間隔をあけて複数配置してある。
【0018】
蓋40は、
図5(a)(b)のように、ドラム31の外周壁部41bの外周面に沿って彎曲する半円弧状をなしており、その両側部には、前述したドラム31の両側壁部41aに設けてある蓋支持部41cに回動自在に連結する連結部を有している。これにより蓋40は、両側壁部41aの外周側に水平軸回転自在に軸支され、ドラム31の外周壁部41bの外周側に沿って移動する。また、ドラム31の投入口9aは、その投入口9aを囲むように外周壁部41bの外周部にシール材42が沿わせてある。これにより、蓋40が投入口9aの位置まで回動したときに、蓋40の内周面の窪み40aに投入口9a側のシール材42が吸着することによりドラム31内の洗濯槽9の水密性が保たれる。さらに、蓋40の内周面と投入口9aの外周部のシール材(ドラム側シール材)42は、蓋40の閉塞時に凹凸に嵌合するようになっており、洗濯槽9の水密性をさらに高める構造となっている。
【0019】
フィン32,33は、
図4(a)(b)のように、両側何れのものについても回転部材43と、ガイド部材44とから構成されている。回転部材43は、一面側が緩やかに膨らみを持つ円盤状をなしている。また、回転部材43には羽根部43aが設けてあり、羽根部43aは、洗濯槽9に旋回流を起こさせるものであり、回転部材43の一面側(洗濯槽9と面する側)にほぼ90°間隔で4カ所に設けてある。また、回転部材43は、回転モーター46によって正逆何れの回転方向にも回転するように形成されており、いずれの方向に回転した場合であっても、水流が遠心力に逆らって中心に集約するように旋回するものとなっている。ガイド部材44は、棒状をなしており、その先端部の外周面に凹凸状の溝部44aが複数設けてある。さらに、ガイド部材44は、回転部材43の一面側の外周部に沿って間隔をあけて複数取り付けてある。本実施形態のものでは、ほぼ90°間隔で4カ所に取り付けてある(
図4(a)参照)。また、一方と他方のフィン32,33のうち、いずれかのフィン(図中では右側のフィン)32,33は、回転部材43がシリコン等の弾性または可撓性を有する素材で形成してあり、さらに、回転部材43のドラム31の側壁部と対向する側には、外周部の複数箇所にリブ45が設けてある。このようにすることにより、フィン32,33の回転に伴って回転部材43が回転時の水圧でドラム31の側壁部側に反り返るように変形する。このときに、回転部材43のリブ45がドラム31の側壁部に当たり、弾性で回転部材43を洗濯槽9側に戻そうとすることにより、その回転部材43に有するガイド部材44が不規則に揺動しながら洗濯槽9内を回転することになる。
【0020】
制御部35は、
図3(b)のように、本実施による洗濯装置のケース体59の正面側に配置してあり、操作パネル35a上に、電源スイッチ53と、洗浄時間設定タイマー54と、作動スイッチ55と、上述した脱水スイッチ56を有している。また、本実施による洗濯装置では、制御部35の電源スイッチ53をONにし、使用者が洗浄時間設定タイマー54を適宜な時間に設定した後、作動スイッチ55を押すことにより作動するものである。尚、制御部35については、本実施のものでは、任意の設定時間で洗浄から脱水までが一連の流れで行われる。しかしながら、洗浄と脱水を個別に切り替えて行えるように設定するものや、洗浄工程における濯ぎの回数、また、洗浄工程時のフィン32,33の回転数の上げ下げによる洗浄力の調整等、洗浄状態を使用者の好みに合わせて設定するもの等、様々な手順で工程を行うように設定することもできる。
【0021】
上記実施形態の洗濯装置は、持ち運びができて携帯性を有する構造となっている。具体的に、
図3(b)を参照すれば、ケース体59の両側部に跨る状態で持手57が取り付けてある。この持手57は、全体が下向き略コ字型をなしており、一端部と他端部にリング状をなす持手取付部58を有しており、この持手取付部58が回動自在に取り付けてあることにより、ケース体59におけるドラム31のモータースペースに各々軸支される。また、バッテリー61には、電源接続用の延長ケーブル(図示省略)が取り付けてあり、家庭用電源等から電力供給させられる。尚、
図3(b)中の符号60は、洗濯装置ケース体59でドラム31を外部に露出させる外蓋である。また、
図3(b)中の符号61は、排水口10から本実施による洗濯装置の外に排水するための延長パイプである。さらに、符号62は、本実施による洗濯装置のベースであり、重心を底部に置くことで洗濯装置を安定設置できるとともに、内部にバッテリーを内蔵している。
【0022】
また、本発明の脱水構造は、
図6(a)(b)のように、洗濯槽9が折り畳み自在に形成された洗濯機に対して取り付けることが可能である。具体的に上記の洗濯機は、可撓性を有する素材からなる袋体で洗濯槽9を形成している。また、袋体71は、開放口に蓋73を有するとともにフレーム72で支持されており、その袋体からなる洗濯槽9の底部に本発明の脱水構造を内蔵するものである。このような洗濯機は、未使用時や搬送時に袋状の洗濯槽9が折り畳まれるが、本実施による脱水構造80は、袋状をなす洗濯槽9の底部に配置されていることにより、フレーム72等に緩衝せずに洗濯槽9の折り畳みを遮ることがない。さらに、ファン12等がほぼ水平に配置されていることにより、洗濯槽9の折り畳み時にフレーム72と並行に配置できることから、省スペースで嵩張ることがない。
尚、本実施の脱水構造80は、ほぼ水平な基盤の中央に垂直軸回転するファン81を有し、さらに、その外周部に排水口82を有するものである。また、袋体71の内周側にはゴミポケット74を有しており、洗浄工程時の衣類36から排出された糸クズやゴミ等を回収する。また、作動や洗浄工程と脱水工程の切り替えは、袋体71の外周部に設けてある制御部35で制御されるものであり、制御部35は、電源スイッチ53と、タイマー54と、作動スイッチ55と、脱水スイッチ56とを有している。
【0023】
本発明の脱水構造は、上記各実施形態のような携帯可能な態様のものの他、一般的な洗濯機のように固定型にすることもできる。この場合には、洗濯機に取り付けてある給水ホースを家庭や事業所の給水装置(蛇口、シャワー装置)等に接続し、さらに、洗濯機に取り付けてある排水ホースを排水溝等に延長することで使用する。また、洗濯槽9のファンについては、ドラムを水平に置いてファンを水平軸回転で回転させるもの(
図3(b)参照)の他、ファンを垂直軸回転させるものであってもよい(
図6(a)(b)参照)。 また、脱水構造は、洗濯槽を真空状態にできるものであれば特に限定するものではない。