【実施例】
【0044】
(水分率の測定)
水分率の測定は、熱質量分析の原理に基づき行った。すなわち、先ず加熱乾燥前の試料の質量W
0を測定した後、次いでハロゲンランプで加熱乾燥した後の試料の質量W
1を測定した。加熱乾燥においては、加熱温度を105℃とし、加熱時間については各試料において水分量が0になるまでとした。測定後、水分率は次式により算出した。
水分率(質量%)=(W
0−W
1)/W
0×100
【0045】
(過酸化物価の測定)
1.試料の前処理
先ず、試料100gを秤取り、共栓三角フラスコに入れた。次いで、共栓三角フラスコ中に試料が浸るまで200mlのエーテルを加えた。その後、時々振り混ぜながら共栓三角フラスコを2時間静置した。
【0046】
続いて、共栓三角フラスコ中の溶液を濾過した後、100mlのエーテルを共栓三角フラスコに添加した。さらに、共栓三角フラスコ中の溶液を濾過した。濾過後の濾液を分液ロートに移し、濾液の約1/2〜1/3程度の量の水を加えた。さらに、分液ロート中の溶液を振り混ぜ、水層を流去した。その後、前記水を加えた後に分液ロート中の溶液を振り混ぜ、水層を流去する操作を2回繰り返した。これにより、水性成分を除去してエーテル層の分取を行った。
【0047】
分取したエーテル層を共栓付き300mlの三角フラスコに移し、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。続いて、脱水したエーテルを別の三角フラスコに移し、当該三角フラスコ中のエーテルに対しチッ素ガスの通気を行った。チッ素ガスの通気は、水温40℃の水で三角フラスコを水浴しながら行った。これによりエーテルを除去し、油脂分を試料として、チッ素ガスと共に密栓し5℃の温度下で保存した。
【0048】
2.過酸化物価(POV)の測定
チッ素ガスの雰囲気下で保存している試料から2gを正確に秤取り、これを共栓付き三角フラスコに入れた。次いで、クロロホルムと氷酢酸の混合溶液(クロロホルム:氷酢酸=2:3)40mlを三角フラスコに添加した。
【0049】
続いて、三角フラスコ中の試料に対しチッ素ガスの通気を行いながら、飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを添加した。その後、直ちに三角フラスコを密栓し、1分間振り混ぜた。その後、温度5℃の環境下で5分間静置した。
【0050】
さらに、三角フラスコに蒸留水40mlを加えて振り混ぜてサンプルとした。このサンプルに数滴の1%のデンプン試薬を指示薬として添加し、0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。そして、暗紫青色から黄白色に変化したときのチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(使用量)を測定した。また、前記試料を含まないサンプルに対しても、数滴の1%のデンプン試薬を添加した後に、0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。これにより、空試験におけるチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量も別途測定した。
【0051】
過酸化物価の値は下記(1)式により算出した。
過酸化物価(meq/kg)=((A−B)×F)/S×10 (1)
S:試料採取量(g)
A:0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量(ml)
B:空試験における0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量(ml)
F:0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
【0052】
(酸価の測定)
1.試料の前処理
過酸化物価の測定の際と同様の前処理を行った。
2.酸価(AV)の測定
チッ素ガスの雰囲気下で保存している試料から2gを正確に秤取り、これを共栓付き三角フラスコに入れた。次いで、アルコールとエーテルの混合溶液(アルコール:エーテル=1:2)100mlを三角フラスコに添加し、当該試料を溶解させた。
【0053】
次に、三角フラスコ中のサンプルに数滴のフェノールフタレイン溶液を指示薬として加え、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液を滴定した。そしてこのときのアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(使用量)を測定した。前記試料を含まないサンプルに対しても、指示薬として数滴のフェノールフタレイン溶液を添加した後、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。これにより、空試験におけるアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量も別途測定した。
【0054】
酸価の値は下記(2)式により算出した。
酸価=(5.611×(a−b)×f)/s (2)
s:試料採取量(g)
a:0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)
b:空試験における0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)
f:0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0055】
(実施例1)
本実施例に於いては、試料としてAOL‐G錠(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)の錠剤(300mg/粒)を500粒程度用いた。先ず、原材料の粉末の流動性を良くするため造粒し、直径9mm重量300mgに打錠後(水分5〜7質量%)、棚式熱風乾燥機を用いて熱風乾燥をした。乾燥条件としては熱風温度80℃とし、熱風の吹き付け時間を3時間とした。熱風乾燥は水分率が約3質量%以下になるまで行った。
【0056】
次に、真空機内に試料を載置し、真空機内部の空気の脱気を除々に行った。このとき真空度は0.4kPaとした。これにより、試料内部の空気を除去した。
【0057】
続いて、真空機内に第1不活性ガスとしてのチッ素ガスを導入し、真空機内を常気圧に戻した。これにより、試料内部にチッ素ガスを充填させた。ここで、得られた試料の水分率、酸価(AV)および過酸化物価(POV)について、前述の通り測定を行った。
【0058】
さらに、試料を密封保存すための包袋(商品名:ラップ(株)製アルミ包袋)を用意し、第2不活性ガスとしてのチッ素ガスと共に前記試料を当該包袋内に入れ密封した。密封してから4ヶ月後に包袋から試料を取り出し、再び試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定を行った。結果を下記表1、
図3及び
図4に示す。
【0059】
(比較例1)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入をした。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、
図3及び
図4に示す。
【0060】
(比較例2)
本比較例に於いては、試料の内部の空気を脱気し、チッ素ガスの充填を行った。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入をした。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、
図3及び
図4に示す。
【0061】
(比較例3)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填しながら封入した。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、
図3及び
図4に示す。
【0062】
(比較例4)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、
図3及び
図4に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例2)
本実施例に於いては、試料としてAOL原末(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)入りカプセル500粒を用いた。AOL原末としては水分率が約3質量%のものを用いた。また、カプセルとしては1号カプセルを用い、AOL原末はそのカプセルに約350mg充填した。さらに、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、チッ素ガスの充填直後の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、
図5および
図6に示す。
【0065】
(比較例5)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、
図5及び
図6に示す。
【0066】
(比較例6)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、
図5及び
図6に示す。
【0067】
(比較例7)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、
図5及び
図6に示す。
【0068】
(比較例8)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、
図5及び
図6に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例3)
本実施例に於いては、試料として小麦胚芽粉末入りカプセルを用いた。カプセルとしては1号カプセルを用い、小麦胚芽粉末はそのカプセルに約300mg充填した。また、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、包袋への密封直前の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、
図7および
図8に示す。
【0071】
(比較例9)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、
図7および
図8に示す。
【0072】
(比較例10)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、
図7および
図8に示す。
【0073】
(比較例11)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、
図7および
図8に示す。
【0074】
(比較例12)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、
図7および
図8に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
(実施例4)
本実施例に於いては、試料として予め乾燥処理がなされた市販のピーナツ粒を用いた。また、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、包袋への密封直前の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、
図9および
図10に示す。
【0077】
(比較例13)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、
図9および
図10に示す。
【0078】
(比較例14)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、
図9および
図10に示す。
【0079】
(比較例15)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、
図9および
図10に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
(結果)
各実施例1〜4は、比較例1〜16と比較して、酸価及び過酸化物価の値が所定の時間経過した後であっても十分に抑制されており、何れも試料の品質保持、長期保存性に優れていることが確認された。
【0082】
例えば、実施例1に於いては、酸価及び過酸化物価の値が、4ヶ月後においても、比較例1〜4と比較して抑制されていることが確認された(表1、
図3及び
図4参照)。特に酸価の値は抑制されており、これにより油脂の加水分解により生じる遊離脂肪酸の抑制に有効であることが確認された。
【0083】
また、実施例2に於いては、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例5〜8と比較して抑制されていることが確認された(表2、
図5及び
図6参照)。特に過酸化物価の値は抑制されており、これにより油脂の酸化により生じる過酸化脂質の抑制に有効であることが確認された。
【0084】
実施例3については、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例9〜12と比較して十分に抑制されていることが確認された(表3、
図7及び
図8参照)。すなわち、実施例3では油脂が劣化してその加水分解により生じる遊離脂肪酸や、油脂の酸化により生じる過酸化脂質の何れの劣化生成物についてもその生成量が抑制されていた。
【0085】
実施例4では、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例13〜16と比較して十分に抑制されていることが確認された(表4、
図9及び
図10参照)。特に過酸化物価については、各比較例と比較して十分に抑制されており、油脂の酸化により生じる過酸化脂質の生成が十分に抑えられていることが確認された。