特許第5914372号(P5914372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914372
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】密封包装食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20160422BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20160422BHJP
   B65D 81/20 20060101ALI20160422BHJP
   A23B 7/02 20060101ALI20160422BHJP
   A23B 7/00 20060101ALI20160422BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20160422BHJP
   A23B 7/148 20060101ALI20160422BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20160422BHJP
   A23L 3/3418 20060101ALI20160422BHJP
   B65B 31/02 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A23L1/00 G
   B65D85/50 A
   B65D81/20 F
   A23B7/02
   A23B7/00 101
   A23B7/04
   A23B7/148
   A23L3/00 101A
   A23L3/3418
   B65B31/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-9892(P2013-9892)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-140319(P2014-140319A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594039125
【氏名又は名称】ソデックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001221
【氏名又は名称】特許業務法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】中村拓壬
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−008259(JP,A)
【文献】 特開2006−094858(JP,A)
【文献】 特開平05−317005(JP,A)
【文献】 特開2003−146307(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/087050(WO,A1)
【文献】 特開2007−130003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00−35/00
A23B 7/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封包装食品の製造方法であって、
食品を乾燥処理して、当該食品内部に含まれる水分を低減又は除去する工程と、
前記乾燥処理した食品内部に含まれる空気を吸引して真空にし、脱気する工程と、
前記脱気後の食品内部に第1不活性ガスを充填し、常圧に戻す工程と、
前記第1不活性ガスが内部に充填された前記食品を、第2不活性ガスと共に包装物に収容した後に、当該包装物を密封する工程、又は、前記第1不活性ガスが内部に充填された前記食品を、空気と共に包装物に収容した後、包装物内部の空気を脱気し、さらに、第2不活性ガスを導入することにより、当該空気から第2不活性ガスに置換して、包装物を密封する工程とを含む密封包装食品の製造方法。
【請求項2】
密封包装食品の製造方法であって、
食品を凍結処理して、当該食品内部に含まれる水分を凍結させる工程と、
前記凍結処理した食品を凍結真空乾燥することにより、前記凍結処理により凍結された氷を昇華により真空下で乾燥させると共に、食品内部の空気を除去する工程と、
前記凍結真空乾燥後の食品内部に第1不活性ガスを充填し、常圧に戻す工程と、
前記第1不活性ガスが内部に充填された食品を、第2不活性ガスと共に包装物に収容した後に、当該包装物を密封する工程、又は、前記第1不活性ガスが内部に充填された前記食品を、空気と共に包装物に収容した後、包装物内部の空気を脱気し、さらに、第2不活性ガスを導入することにより、当該空気から第2不活性ガスに置換して、包装物を密封する工程とを含む密封包装食品の製造方法。
【請求項3】
前記第1不活性ガス又は第2不活性ガスの少なくとも何れかがチッ素ガスである請求項1又は2に記載の密封包装食品の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥処理後の食品内部を脱気する工程、及び前記脱気後の食品内部に第1不活性ガスを充填する工程を繰り返し行う請求項1に記載の密封包装食品の製造方法。
【請求項5】
前記凍結真空乾燥を行った直後の食品に対し、恒率乾燥させるための二次乾燥処理を行う工程を含む請求項2に記載の密封包装食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に不活性ガスなどが直接充填された密封包装食品の製造方法及び密封包装食品に関し、特に食品の酸化を防止し、品質劣化を抑制することが可能な食品に不活性ガスなどが直接充填された密封包装食品の製造方法及び密封包装食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の劣化を抑制し長期保存を図るためには、食品劣化の大きな原因の一つとなっている油脂やその他食品成分の変質及び酸化を防止する必要がある。食品の酸化は大気中に酸素が存在する限り生じる現象であるが、当該酸素との接触を防止することにより酸化を抑制することが可能になる。
【0003】
食品と酸素との接触を防止して保存する方法としては、例えば、食品の密封包装に際して、食品の包装物内の空気をチッ素等の不活性ガスに置換して食品を保存する方法がある(下記特許文献1参照)。この方法によれば、食品を収容した包装物から空気を排気し、その後にチッ素などを充填して密封している。その結果、包装物内で食品が酸化するのを防止すると共に、微生物が発生するのを抑制し、食品の長期保存を可能にしている。
【0004】
しかしながら、前記のような従来のガス置換式の包装技術であると、食品内部に残留している空気までも十分に除去することは困難である。そのため、食品表面での酸化は抑制できるものの、内部では経時変化と共に油脂等の酸化が進行し、食品の品質が低下して長期保存が十分でないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51−80479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、食品中に含まれる油脂の酸化や変質に起因した食品の劣化を抑制し、従来よりも品質保持が良好で、長期保存性に優れた密封包装食品の製造方法および密封包装食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく検討した結果、下記の構成を採用することにより前記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る密封包装食品の製造方法は、前記の課題を解決するために、密封包装食品の製造方法であって、食品を乾燥処理する工程と、前記乾燥処理した食品内部の空気を脱気する工程と、前記脱気後の食品内部に第1不活性ガスを充填する工程と、前記第1不活性ガスが内部に充填された前記食品を、第2不活性ガスと共に包装物に収容した後に、当該包装物を密封する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
食品中に含まれる油脂は空気(酸素)や、熱、水分による酸化により劣化生成物を生成させる。例えば、油脂が加水分解により変質すると、これにより遊離脂肪酸が生成する。また、油脂が酸素と接触して酸化すると、過酸化脂質を生成する。これら遊離脂肪酸や過酸化脂質等の劣化生成物は食品の品質を低下させ、長期保存性も低減させる原因物質となる。本発明はこのような劣化生成物の生成を抑制することが可能な密封包装食品の製造方法を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明に於いては、前記の構成の様に予め食品の乾燥処理を行い、当該食品内部に含まれる水分を除去又は低減している。これにより、食品中の油脂等が、水分から生じる酸素に起因して酸化するのを防止することができる。さらに、水分の存在により油脂の加水分解が進行するのも防止できる。その結果、食品内部からの劣化の抑制が図れる。また、水分の除去により食品内部の空間容積の割合も増大させるので、食品内部の空気を脱気した後に、より多くの第1不活性ガスを充填させることが可能になる。その結果、食品内部において抗酸化機能を備えた密封包装食品を製造することができる。さらに、前記の構成に於いては、第1不活性ガスが充填された食品を、第2不活性ガスと共に包装物内に収容して密封するので、食品の表面においても酸化や変質を防止することができる。尚、前記「脱気」とは、食品の内部空気を外部に真空吸引することをいう。また、前記「密封」とは、食品の流出や異物の混入はもとより、外部から包装物の内部に空気等の侵入が遮断された状態をいう。
【0011】
また、本発明に係る密封包装食品の製造方法は、前記の課題を解決する為に、密封包装食品の製造方法であって、食品を凍結処理する工程と、前記凍結処理した食品を凍結真空乾燥する工程と、前記凍結真空乾燥後の食品内部に第1不活性ガスを充填する工程と、前記第1不活性ガスが内部に充填された食品を、第2不活性ガスと共に包装物に収容した後に、当該包装物を密封する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記の構成においては、先ず、食品を凍結処理することにより、食品内部に存在する水分を凍結させている。次いで、凍結処理した食品を真空下におくことにより、凍結している水分を昇華させ、これを水蒸気として排気させる。これにより、食品に含まれる水分を低減又は除去し、水分から生じる酸素に起因した油脂の酸化を防止することができる。さらに、水分の存在により油脂の加水分解が進行するのも防止できる。その結果、食品内部からの劣化の抑制が図れる。また、加熱により成分等が変質するような食品の場合でも、当該方法であると、食品の変質を防止しつつ乾燥処理を行うことができる。さらに、水分を除去することにより、食品内部の空間容積の割合も増大させるので、食品内部の空気や水蒸気を脱気した後に、より多くの第1不活性ガスを内部に充填させることができる。その結果、食品内部において抗酸化機能を備えた密封包装食品を製造することができる。さらに、前記の構成に於いては、第1不活性ガスが充填された食品を、さらに第2不活性ガスと共に包装物内に収容して密封するので、食品の表面においても油脂の酸化や変質を防止することができる。
【0013】
また、前記の構成に於いて、前記第1不活性ガス又は第2不活性ガスの少なくとも何れかがチッ素ガスであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る密封包装食品は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の密封包装食品の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、前記に説明した構成により、以下に述べるような効果を奏する。
本発明によれば、食品を乾燥させることによりその内部に含まれる水分を除去又は低減するので、水分から発生する酸素に起因した食品の内部劣化を防止することができる。さらに、水分の存在により油脂の加水分解が進行するのも防止できる。また、水分の除去により食品内部の空間容積の割合も増大させるので、より多くの第1不活性ガスを充填させることができる。その結果、食品内部においても抗酸化機能に優れた密封包装食品の製造を可能にする。
【0016】
すなわち、本発明であると、酸化に起因した食品の劣化を防止又は低減し、従来よりも品質保持が良好で、長期保存性に優れ、賞味期限の延長が可能になり販売の在庫期間等に有利な密封包装食品の製造方法および密封包装食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る密封包装食品の製造方法を説明する為のフローチャート図である。
図2】本発明の実施の形態2に係る密封包装食品の製造方法を説明する為のフローチャート図である。
図3】AOL‐G錠(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)における経過時間と酸価の関係を表すグラフである。
図4】AOL‐G錠(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)における経過時間と過酸化物価の関係を表すグラフである。
図5】AOL原末(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)入りカプセルにおける経過時間と酸価の関係を表すグラフである。
図6】AOL原末(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)入りカプセルにおける経過時間と過酸化物価の関係を表すグラフである。
図7】小麦胚芽入りカプセルにおける経過時間と酸価の関係を表すグラフである。
図8】小麦胚芽入りカプセルにおける経過時間と過酸化物価の関係を表すグラフである。
図9】ピーナツにおける経過時間と酸価の関係を表すグラフである。
図10】ピーナツにおける経過時間と過酸化物価の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る密封包装食品の製造方法について、図1を参照しながら以下に説明する。図1は、実施の形態1に係る密封包装食品の製造方法を説明する為のフローチャート図である。
【0019】
本実施の形態1に係る密封包装食品の製造方法は、食品を乾燥処理する工程(S1)、食品内部の空気を脱気する工程(S2)、食品内部に第1不活性ガスを充填する工程(S3)、および前記食品を第2不活性ガスと共に包装物に収容し密封する工程(S4)を少なくとも含む。
【0020】
前記食品はその対象と種類が特に限定されるものではない。例えば、穀類や珈琲豆、ピーナツなどの種子類や乾燥果物等の食品が挙げられる。また、前記食品は、健康食品、健康補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性食品等も含む。健康食品とは、健康の保持増進に役立つ機能を有する食品を意味する。健康補助食品とは、毎日の食事だけでは十分に取ることのできない栄養素を補うための食品を意味する。栄養機能食品とは、栄養素(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品で、栄養素の機能を表示するものを意味する。特定保健用食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取によってこの特定の保健の目的が期待できる旨の表示をする食品を意味する。機能性食品とは生体防御,体調リズム調節,疾病の防止と回復などの機能を備えた食品を意味する。
【0021】
また、前記食品は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤など、通常使用される剤形を採用することができる。但し、水溶液、懸濁物、乳化物等の液状又はペースト状の食品については乾燥後に第1不活性ガスの充填を行うのが好ましい。
【0022】
食品を乾燥処理する工程(S1)は食品内部に含まれている水分を低減又は除去することを目的として行われる。食品内部に水分を含んだ状態であると、当該水分から酸素ガスが放出され、当該酸素に起因した油脂の酸化が生じる場合がある。また、油脂の加水分解が進行して遊離脂肪酸が生成し、油脂の変質が生じる場合がある。しかし、本工程の様に、乾燥処理により予め食品内部の水分を除去しておくことにより、油脂の酸化や変質が生じるのを防止することができる。また、食品内部の水分を除去することにより、食品内部に充填させたい第1不活性ガスの量を多くすることができる(第1不活性ガスの充填に関する工程は後述する)。
【0023】
本工程S1で行われる乾燥方法としては特に限定されず、例えば、自然乾燥、熱風乾燥、送風乾燥、除湿空気乾燥、噴霧乾燥、間接加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、太陽熱利用乾燥、吸着乾燥、膨化乾燥、加熱水蒸気乾燥等が挙げられる。これらの乾燥方法のうち、例えば、熱風乾燥では、常圧下において、加熱した空気を熱風として食品に直接又は間接に吹き付けて行われる。また、熱風を吹き付ける食品は静置状態でもよく、又は食品を撹拌若しくは循環させた状態で行ってもよい。また、移動するベルトやコンベヤ上で熱風を吹き付けるベルト乾燥又はコンベヤ乾燥でもよい。さらに、回転するドラム内を撹拌、移動させながら熱風で乾燥する回転ドラム乾燥でもよい。
【0024】
本工程S1における前記の乾燥方法や乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間等)は、食品の種類等に応じて適宜設定される。尚、対象となる食品が加熱によりその成分の変質等を生じるような場合には、凍結真空乾燥を応用した密封包装食品の製造方法により製造するのが好ましい(詳細については後段で述べる)。
【0025】
食品の乾燥処理により、乾燥直後の食品に含まれる水分の水分率は4%以下にまで低減されていることが好ましく、より好ましくは3%以下である。また、食品に対する熱処理に起因した変質等のダメージを抑制するとの観点からは、水分率の下限は2%以上であることが好ましい。尚、前記水分率は(株)エー・アンド・ディ製の加熱乾燥式水分計により測定した値である。
【0026】
食品内部の空気を脱気する工程(S2)は食品の内部に含まれる空気を吸引し真空にして除去する目的で行われる。空気の脱気を行わずに次工程の第1不活性ガスの導入を行おうとしても、第1不活性ガスの充填は殆どできず困難である。従って、食品内部に酸素が残存することになり、食品内部での油脂の酸化や変質を防止することが困難になる。脱気の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の真空機を用いることが可能である。
【0027】
食品内部に第1不活性ガスを充填する工程(S3)は、食品内部に第1不活性ガスを導入する目的で行われる。これにより、酸素に起因した食品内部からの酸化を防止することができる。第1不活性ガスを導入する方法としては、例えば、真空状態下で食品が置かれている前記真空機内に第1不活性ガスを導入することにより可能である。
【0028】
前記第1不活性ガスとは化学的に不活性で他の元素と結合する傾向が低い気体をいい、具体的には、食品を酸化させることがなく、無味無臭であり反応性に低い気体をいう。例えばチッ素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスや二酸化炭素、エタノールガス等が挙げられる。これらの第1不活性ガスは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。また、前記第1不活性ガスはコストや入手の容易性の観点から、チッ素やアルゴンが好ましく、チッ素がより好ましい。本実施の形態において第1不活性ガスを使用する目的は、酸素の存在に起因した油脂の酸化や変質を防止することにある。従って、第1不活性ガス中の酸素濃度は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%以下であることが特に好ましい。
【0029】
尚、前記工程S2と工程S3は、図1に示すように繰り返し行ってもよい。これにより、真空機内および食品内部に残存する空気をさらに除去することができ、残存酸素濃度の一層の低下が図れる。また、工程S2及び工程S3の繰り返し回数は特に限定されない。
【0030】
食品を第2不活性ガスと共に包装物に収容し密封する工程(S4)は、食品が包装物内で酸素の存在により劣化するのを防止する目的で行われる。食品内部の空気を第1不活性ガスに置換しただけでは、当該食品が空気で満たされた包装物内で保存された場合に、食品の劣化が時間の経過と共に進行する。しかしながら、本工程S4の様に、食品を第2不活性ガスと共に包装物に収容して密封することにより、食品表面での油脂の酸化や変質も防止することができ、長期保存性の一層の向上が図れる。本工程S4は食品内部に第1不活性ガスを充填する工程が終了した後、速やかに行うのが好ましい。これにより、食品内部に充填された第1不活性ガスが外部の空気と置換されるのを防止することができる。
【0031】
密封の方法としては特に限定されず、例えば、包装物の内部に第2不活性ガスと共に食品を入れた後、密封してもよい。また、予め食品を収納した包装物を真空機内に載置し、内部の空気を脱気することにより、包装物内部の空気も脱気する。その後、第2不活性ガスを導入することにより、包装物内部を空気から第2不活性ガスに置換し、包装物を密封してもよい。
【0032】
前記第2不活性ガスとしては、前述の第1不活性ガスと同様、チッ素等の希ガスや二酸化炭素、エタノールガス等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。また、第2不活性ガスとしてはコストや入手の容易性の観点から、チッ素やアルゴンが好ましく、チッ素がより好ましい。さらに、第2不活性ガスを使用する目的は、前記第1不活性ガスの場合と同様、酸素の存在に起因した食品の劣化を防止することにある。従って、第2不活性ガス中の酸素濃度についても前述の通りである。本工程S4で用いられる第2不活性ガスは、食品内部に充填されている第1不活性ガスと同種であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
前記包装物としては特に限定されず、収容される食品や第2不活性ガスの外部への漏洩を防止でき、また外部の空気が包装物の内部へ侵入するのを防止できるものが好ましい。すなわち、包装物内の食品が包装物外の空気と隔離されている状態を維持できるものであれば特に限定されない。そのような気密性のある包装物としては、例えば、容器包装、フィルム包装、カップ包装、深絞り包装、オーバーラップ包装(シュリンク包装、ストレッチ包装)、トレー包装、スキンパック包装、袋包装等が挙げられる。
【0034】
以上により、本実施の形態1に係る密封包装食品が得られる。当該製造方法により得られる密封包装食品は、食品内部での酸素の存在に起因した劣化を抑制できるものであり、従来よりも食品の品質保持が良好で、長期保存性に優れている。
【0035】
尚、本実施の形態においては、食品内部の空気の脱気を行う工程に代えて、当該食品の凍結処理を行う工程(S5)、および凍結真空乾燥を行う工程(S6)を行ってもよい(図1参照)。この製造プロセスは、凍結真空乾燥工程S6において、脱気工程S2を事実上行うものであり、工程の短縮を図りながら、食品内部の水分の一層の低減又は除去を可能にするものである。また、加熱により食品成分が変質を生じるような場合にも、そのような変質を伴うことなく食品の乾燥を行うことができる点で、この製造プロセスは有効である。
【0036】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る密封包装食品の製造方法について、図2を参照しながら以下に説明する。図2は、実施の形態2に係る密封包装食品の製造方法を説明する為のフローチャート図である。
【0037】
本実施の形態2に係る密封包装食品の製造方法は、食品を凍結処理する工程(S7)、食品を凍結真空乾燥する工程(S8)、食品内部に第1不活性ガスを充填する工程(S3)、および前記食品を第2不活性ガスと共に包装物に収容し密封する工程(S4)を少なくとも含む。
【0038】
食品を凍結処理する工程(S7)は食品内部に含まれる水分を凍結させることを目的として行う。凍結処理は食品の種類に応じて、緩慢凍結又は急速凍結のいずれを採用してもよい。緩慢凍結を採用した場合、食品内部の水分が凝固して得られる氷を比較的大きくすることができる。そのため、当該氷を次工程において真空乾燥により除去した後には、食品内部に大きなポーラス(空隙)を形成することができる。その結果、食品内部の真空の程度を大きくすることができると共に、第1不活性ガスの充填も容易化できる。さらに、第1不活性ガスの充填量も多くすることができる。その一方、急速凍結を採用した場合には、食品内部の水分が凝固して得られる氷の体積膨張が抑制されるので、食品内部に大きなポーラスが形成されるのを防止することができる。その結果、食品の組織が破壊されるのを防止することができる。
【0039】
凍結処理における温度や凍結時間等の処理条件は食品の種類等に応じて適宜設定され得る。但し、温度に関しては、試料が凍結する温度(共晶点)以下に設定することにより、試料を確実に凍結させるのが好ましい。また、本実施の形態に於いては、凍結処理の前にさらに予備凍結処理を行ってもよい。これにより、食品の保形性等の向上が図れる。
【0040】
食品を凍結真空乾燥する工程(S8)は前記工程S7で凍結させた氷を昇華により真空下で乾燥させると共に、食品内部の空気を除去することを目的として行う。すなわち、本工程S8は単に氷の除去による乾燥のみを目的とするものではない。本工程S8における温度や真空度等の乾燥条件は、食品内部の空気を十分に除去することができ、かつ、食品が融けない範囲内で適宜設定され得る。
【0041】
尚、前記工程S8の直後に、さらに水分の除去を目的として二次乾燥処理を行ってもよい。具体的には、食品に影響が出ない程度の温度まで加熱し食品の最終的な恒率乾燥を行う。加熱により食品の成分等に変質が生じる場合には、二次乾燥処理を省略してもよい。加熱温度および加熱時間等の処理条件は食品の種類等に応じて適宜設定され得る。これにより、食品を構成する分子との間で分子間結合している水も除去することができる。
【0042】
食品を凍結真空乾燥した後は、食品内部に第1不活性ガスを充填する工程(S3)および食品を包装物に収納して密封する工程(S4)を順次行う。これらの工程については、実施の形態1において述べた通りである。
【0043】
以上により、本実施の形態2に係る密封包装食品が得られる。当該製造方法により得られる密封包装食品は、加熱による食品の変質がなく、内部での酸素の存在に起因した劣化を抑制できるものである。また、従来よりも食品の品質保持が良好で、長期保存性に優れている。
【実施例】
【0044】
(水分率の測定)
水分率の測定は、熱質量分析の原理に基づき行った。すなわち、先ず加熱乾燥前の試料の質量Wを測定した後、次いでハロゲンランプで加熱乾燥した後の試料の質量Wを測定した。加熱乾燥においては、加熱温度を105℃とし、加熱時間については各試料において水分量が0になるまでとした。測定後、水分率は次式により算出した。
水分率(質量%)=(W−W)/W×100
【0045】
(過酸化物価の測定)
1.試料の前処理
先ず、試料100gを秤取り、共栓三角フラスコに入れた。次いで、共栓三角フラスコ中に試料が浸るまで200mlのエーテルを加えた。その後、時々振り混ぜながら共栓三角フラスコを2時間静置した。
【0046】
続いて、共栓三角フラスコ中の溶液を濾過した後、100mlのエーテルを共栓三角フラスコに添加した。さらに、共栓三角フラスコ中の溶液を濾過した。濾過後の濾液を分液ロートに移し、濾液の約1/2〜1/3程度の量の水を加えた。さらに、分液ロート中の溶液を振り混ぜ、水層を流去した。その後、前記水を加えた後に分液ロート中の溶液を振り混ぜ、水層を流去する操作を2回繰り返した。これにより、水性成分を除去してエーテル層の分取を行った。
【0047】
分取したエーテル層を共栓付き300mlの三角フラスコに移し、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。続いて、脱水したエーテルを別の三角フラスコに移し、当該三角フラスコ中のエーテルに対しチッ素ガスの通気を行った。チッ素ガスの通気は、水温40℃の水で三角フラスコを水浴しながら行った。これによりエーテルを除去し、油脂分を試料として、チッ素ガスと共に密栓し5℃の温度下で保存した。
【0048】
2.過酸化物価(POV)の測定
チッ素ガスの雰囲気下で保存している試料から2gを正確に秤取り、これを共栓付き三角フラスコに入れた。次いで、クロロホルムと氷酢酸の混合溶液(クロロホルム:氷酢酸=2:3)40mlを三角フラスコに添加した。
【0049】
続いて、三角フラスコ中の試料に対しチッ素ガスの通気を行いながら、飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを添加した。その後、直ちに三角フラスコを密栓し、1分間振り混ぜた。その後、温度5℃の環境下で5分間静置した。
【0050】
さらに、三角フラスコに蒸留水40mlを加えて振り混ぜてサンプルとした。このサンプルに数滴の1%のデンプン試薬を指示薬として添加し、0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。そして、暗紫青色から黄白色に変化したときのチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量(使用量)を測定した。また、前記試料を含まないサンプルに対しても、数滴の1%のデンプン試薬を添加した後に、0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。これにより、空試験におけるチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量も別途測定した。
【0051】
過酸化物価の値は下記(1)式により算出した。
過酸化物価(meq/kg)=((A−B)×F)/S×10 (1)
S:試料採取量(g)
A:0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量(ml)
B:空試験における0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液の使用量(ml)
F:0.01Nのチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
【0052】
(酸価の測定)
1.試料の前処理
過酸化物価の測定の際と同様の前処理を行った。
2.酸価(AV)の測定
チッ素ガスの雰囲気下で保存している試料から2gを正確に秤取り、これを共栓付き三角フラスコに入れた。次いで、アルコールとエーテルの混合溶液(アルコール:エーテル=1:2)100mlを三角フラスコに添加し、当該試料を溶解させた。
【0053】
次に、三角フラスコ中のサンプルに数滴のフェノールフタレイン溶液を指示薬として加え、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液を滴定した。そしてこのときのアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(使用量)を測定した。前記試料を含まないサンプルに対しても、指示薬として数滴のフェノールフタレイン溶液を添加した後、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。これにより、空試験におけるアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量も別途測定した。
【0054】
酸価の値は下記(2)式により算出した。
酸価=(5.611×(a−b)×f)/s (2)
s:試料採取量(g)
a:0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)
b:空試験における0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(ml)
f:0.1Nのアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0055】
(実施例1)
本実施例に於いては、試料としてAOL‐G錠(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)の錠剤(300mg/粒)を500粒程度用いた。先ず、原材料の粉末の流動性を良くするため造粒し、直径9mm重量300mgに打錠後(水分5〜7質量%)、棚式熱風乾燥機を用いて熱風乾燥をした。乾燥条件としては熱風温度80℃とし、熱風の吹き付け時間を3時間とした。熱風乾燥は水分率が約3質量%以下になるまで行った。
【0056】
次に、真空機内に試料を載置し、真空機内部の空気の脱気を除々に行った。このとき真空度は0.4kPaとした。これにより、試料内部の空気を除去した。
【0057】
続いて、真空機内に第1不活性ガスとしてのチッ素ガスを導入し、真空機内を常気圧に戻した。これにより、試料内部にチッ素ガスを充填させた。ここで、得られた試料の水分率、酸価(AV)および過酸化物価(POV)について、前述の通り測定を行った。
【0058】
さらに、試料を密封保存すための包袋(商品名:ラップ(株)製アルミ包袋)を用意し、第2不活性ガスとしてのチッ素ガスと共に前記試料を当該包袋内に入れ密封した。密封してから4ヶ月後に包袋から試料を取り出し、再び試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定を行った。結果を下記表1、図3及び図4に示す。
【0059】
(比較例1)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入をした。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、図3及び図4に示す。
【0060】
(比較例2)
本比較例に於いては、試料の内部の空気を脱気し、チッ素ガスの充填を行った。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入をした。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、図3及び図4に示す。
【0061】
(比較例3)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填しながら封入した。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、図3及び図4に示す。
【0062】
(比較例4)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表1、図3及び図4に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例2)
本実施例に於いては、試料としてAOL原末(大豆、小麦胚芽、玄米、鳩麦、緑茶の粉末混合品)入りカプセル500粒を用いた。AOL原末としては水分率が約3質量%のものを用いた。また、カプセルとしては1号カプセルを用い、AOL原末はそのカプセルに約350mg充填した。さらに、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、チッ素ガスの充填直後の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、図5および図6に示す。
【0065】
(比較例5)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包袋内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、図5及び図6に示す。
【0066】
(比較例6)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、図5及び図6に示す。
【0067】
(比較例7)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例2と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、図5及び図6に示す。
【0068】
(比較例8)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表2、図5及び図6に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例3)
本実施例に於いては、試料として小麦胚芽粉末入りカプセルを用いた。カプセルとしては1号カプセルを用い、小麦胚芽粉末はそのカプセルに約300mg充填した。また、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、包袋への密封直前の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、図7および図8に示す。
【0071】
(比較例9)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、図7および図8に示す。
【0072】
(比較例10)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、図7および図8に示す。
【0073】
(比較例11)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例3と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、図7および図8に示す。
【0074】
(比較例12)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、試料を包装物にも封入することなく空気中に曝露した状態で保存した。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表3、図7および図8に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
(実施例4)
本実施例に於いては、試料として予め乾燥処理がなされた市販のピーナツ粒を用いた。また、試料の水分率、酸価および過酸化物価の測定については、包袋への密封直前の他に、密封後2ヶ月目、及び6ヶ月目に行った。それ以外は、実施例1と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、図9および図10に示す。
【0077】
(比較例13)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。また、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、図9および図10に示す。
【0078】
(比較例14)
本比較例に於いては、包装物内に試料を入れる際に、チッ素ガスを充填せずに空気と共に封入を行った。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、図9および図10に示す。
【0079】
(比較例15)
本比較例に於いては、試料の内部の空気の脱気およびチッ素ガスの充填を行わなかった。それ以外は、実施例4と同様にした。測定した試料の水分率、酸価および過酸化物価について、結果を下記表4、図9および図10に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
(結果)
各実施例1〜4は、比較例1〜16と比較して、酸価及び過酸化物価の値が所定の時間経過した後であっても十分に抑制されており、何れも試料の品質保持、長期保存性に優れていることが確認された。
【0082】
例えば、実施例1に於いては、酸価及び過酸化物価の値が、4ヶ月後においても、比較例1〜4と比較して抑制されていることが確認された(表1、図3及び図4参照)。特に酸価の値は抑制されており、これにより油脂の加水分解により生じる遊離脂肪酸の抑制に有効であることが確認された。
【0083】
また、実施例2に於いては、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例5〜8と比較して抑制されていることが確認された(表2、図5及び図6参照)。特に過酸化物価の値は抑制されており、これにより油脂の酸化により生じる過酸化脂質の抑制に有効であることが確認された。
【0084】
実施例3については、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例9〜12と比較して十分に抑制されていることが確認された(表3、図7及び図8参照)。すなわち、実施例3では油脂が劣化してその加水分解により生じる遊離脂肪酸や、油脂の酸化により生じる過酸化脂質の何れの劣化生成物についてもその生成量が抑制されていた。
【0085】
実施例4では、酸価及び過酸化物価の値が、2ヶ月後及び6ヶ月後の何れにおいても、比較例13〜16と比較して十分に抑制されていることが確認された(表4、図9及び図10参照)。特に過酸化物価については、各比較例と比較して十分に抑制されており、油脂の酸化により生じる過酸化脂質の生成が十分に抑えられていることが確認された。

図1
図2
図3
図4
図5
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図10