特許第5914405号(P5914405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914405
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】光回線装置用の遠隔電源再起動装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 M
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-84581(P2013-84581)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-207593(P2014-207593A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小山 良
(72)【発明者】
【氏名】室田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】竹原 美穂
(72)【発明者】
【氏名】三好 政宏
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−130340(JP,A)
【文献】 特開2011−130181(JP,A)
【文献】 特開2000−278423(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0067901(US,A1)
【文献】 特開2007−70053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局側からの制御光を電気に変換する光電変換部と、
前記電気成分の入力によりタイマを動作させ、一定時間まで入力し続けた場合に光回線装置の電源をオフしオンする電源制御部と、
を有することを特徴とする光回線装置用の遠隔電源再起動装置。
【請求項2】
前記電源制御部は、
前記光回線装置からの通信光により前記タイマをリセットすることを特徴とする請求項1記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置。
【請求項3】
前記光回線装置とは別筐体であり、前記光回線装置の電源電圧入力線と所定の電源電圧供給線との間に後付で挿入されることを特徴とする請求項1又は2記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ONU(Optical Network Unit)を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ宅内のONUを保守監視するため、特許文献1では、ONUのLED点灯信号を無線で監視装置に送信し、その点灯状態に基づいてONUの動作状況や故障状況を遠隔から把握するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−130181号公報
【特許文献2】特開平9−130340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、落雷等によりONUがフリーズしてしまうと、フリーズ状態を自律回避する手段をONU内部に持たないため、それ以降の動作状況等を把握できず、ユーザに電源のオフ・オンを電話等で依頼するか、ユーザ宅まで保守要員を派遣する必要があった。
【0005】
これについて特許文献2の技術を利用することも考えられる。しかし、ONUがフリーズ状態の時に遠隔操作により電源のオフ・オンを行うには、通信装置が別途必要となる。また、PON(Passive Optical Network)区間内のスプリッタに収容されている全てのONUの区別は難しく、簡素な通信方式では全て再起動してしまい、正常なONUにも影響が及ぶことになる。更に、全てのONUを区別するためには、遠隔操作の通信用にOLTとONUにそれぞれ相当する各通信機器を別途用意することとなり、高価となる。また、この場合、落雷等によりONUと遠隔操作用の通信機器の双方がフリーズしてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、ONUを遠隔から再起動することを第1の目的とし、不良なONUのみを再起動することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置は、局側からの制御光を電気に変換する光電変換部と、前記電気成分の入力によりタイマを動作させ、一定時間まで入力し続けた場合に光回線装置の電源をオフしオンする電源制御部と、を有することを要旨とする。
【0008】
本発明によれば、局側からの制御光を電気に変換し、その電気成分の入力によりタイマを動作させ、一定時間まで入力し続けた場合に光回線装置の電源をオフしオンするため、ONU(光回線装置)を遠隔から再起動できる。
【0009】
請求項2記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置は、請求項1記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置において、前記電源制御部は、前記光回線装置からの通信光により前記タイマをリセットすることを要旨とする。
【0010】
本発明によれば、光回線装置からの通信光により上記タイマをリセットするため、不良なONUのみを再起動できる。
【0011】
請求項3記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置は、請求項1又は2記載の光回線装置用の遠隔電源再起動装置において、前記光回線装置とは別筐体であり、前記光回線装置の電源電圧入力線と所定の電源電圧供給線との間に後付で挿入されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ONUを遠隔から再起動でき、不良なONUのみを再起動できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】遠隔電源再起動装置の構成図である。
図2】ONU再起動の全体動作シーケンス図である。
図3】全体動作説明時の第1参照図である。
図4】全体動作説明時の第2参照図である。
図5】全体動作説明時の第3参照図である。
図6】電力線制御部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0015】
まず、図1を参照しながら、遠隔電源再起動装置1の構成について説明する。遠隔電源再起動装置1は、外部インタフェースとして、電話局側(OLT2の設置側)の光ファイバ5aを接続するための第1の光通信ポート11と、ONU3の光ファイバ5bを接続するための第2の光通信ポート12と、ONU3の電源電圧入力線6を接続するための電源ポート13と、家庭コンセント内の電源電圧供給線4に接続するための電源ケーブル14とを備えている。
【0016】
そして、その内部には、第1の光通信ポート11を介してOLT2から送信される下り通信光(及び制御光(ONU3がフリーズしているか否かを試験するために用いられ、通信光とは波長帯の異なる光))を分配する第1の非対称カプラ15と、第2の光通信ポート12を介してONU3から送信される上り通信光を分配する第2の非対称カプラ16とを備えている。
【0017】
第1の非対称カプラ15と第2の非対称カプラ16は光ファイバ17で直接接続されており、OLT2とONU3は、PON区間内に遠隔電源再起動装置1が挿入された場合でもそれを意識することなく互いに通信することができる。
【0018】
また、電源ポート13と電源ケーブル14は電源線18で直接接続されており、ONU3は、自装置の電源電圧入力線6を遠隔電源再起動装置1の電源ポート13に接続することにより、電源電圧供給線4からの電源電圧を用いて自装置を動作させることができる。
【0019】
このような遠隔電源再起動装置1の内部には、更に、第1の非対称カプラ15からの分配光(下り通信光及び制御光)から制御光の波長帯のみを透過する波長選択フィルタ19と、透過された制御光を電力に変換して電力線制御部23に入力する第1の光・電力変換部20と、第2の非対称カプラ16からの分配光(上り通信光)を電力に変換して電力線制御部23に入力する第2の光・電力変換部21と、電源線18上に挿入接続された電力線スイッチ22と、第1の光・電力変換部20と第2の光・電力変換部21からの各電力に基づいて電力線スイッチ22を制御する電力線制御部23とを備えている。
【0020】
電力線制御部23は、具体的には、第1の光・電力変換部20から電力に応じた電流が流入した場合、内部のタイマを動作させ、一定時間まで流入し続けた際に電力線スイッチ22をオフしオンする機能を備えている。この機能を備えることで、電話局側からの継続する制御光の入力により、ONU3を遠隔から再起動するようにしている。
【0021】
また、電力線制御部23は、第2の光・電力変換部21から電力に応じた電流が流入した場合、上記タイマをリセットする機能を備えている。この機能を備えることで、ONU3が正常であれば上り通信光によりタイマがリセットされ、電力線スイッチ22がオフされないことから、PON区間内のスプリッタ7に収容されている複数のONUのうち不良なONUのみを再起動するようにしている。
【0022】
次に、図2図5を参照しながら、ONU再起動の全体動作について説明する。図2は、全体動作の動作シーケンスであり、図3図5は、その動作説明時の参照図である。
【0023】
まず、ONU3からの上り通信光の未着等によりOLT2で通信異常が検知された場合(ステップS1)、電話局内の管理者により、その局内に予め用意されている制御光源8がオンされる(ステップS2)。
【0024】
この制御光は、通信光用の光ファイバ5aを介して全ての遠隔電源再起動装置1に送出され、第1の非対称カプラ15と波長選択フィルタ19を介して第1の光・電力変換部20で受光される。
【0025】
次に、各遠隔電源再起動装置1では、それぞれ、第1の光・電力変換部20により、その制御光が電力に変換され、電力線制御部23により、その電力による電流の流入を契機としてタイマ動作が開始される(ステップS3)。
【0026】
次に、そのタイマの閾値時間が経過する前に、OLT2により、全てのONU3に対して通信要求が送信される(ステップS4)。この通信要求は、下り通信光を用いて行われ、遠隔電源再起動装置1内の光ファイバ17を介してONU3に直接送信される。波長選択フィルタ19により、第1の光・電力変換部20への入力はカットされる。
【0027】
次に、ONU3が正常である場合、その正常なONU3により、OLT2からの通信要求に応じて上り通信光による応答が送出され、遠隔電源再起動装置1内の光ファイバ17を介してOLT2に直接送信される(ステップS5)。
【0028】
また、ステップS5と同時に、第2の光・電力変換部21により、その通信光が電力に変換され、電力線制御部23により、その電力による電流の流入を契機としてタイマがリセットされる(ステップS6)。
【0029】
一方、ONU3がフリーズしている場合、その異常なONU3’からは上り通信光が送出されないため、そのONU3’に取り付けられている遠隔電源再起動装置1’内のタイマはリセットされず継続動作する。
【0030】
次に、制御光の連続入力によりタイマの閾値時間に到達すると(ステップS7)、その遠隔電源再起動装置1’の電力線制御部23により、異常なONU3’の電源ライン上に挿入されている電力線スイッチ22がオフしオンされる。これにより、その異常なONU3’が再起動される(ステップS8)。
【0031】
尚、制御光源8はオン状態のため、制御光による連続的な流入電流により、ステップS6〜ステップS8の後は各遠隔電源再起動装置1,1’のタイマ動作がそれぞれ再開される(ステップS9)。
【0032】
次に、ステップS4と同様に、各タイマの閾値時間が経過する前に、OLT2により、全てのONU3に対して通信要求が再度送信される(ステップS10)。
【0033】
ここで、ステップS8により異常なONU3’は正常化されているため、全てのONU3により、その通信要求に応答するための上り通信光がそれぞれ送出され(ステップS11)、全ての遠隔電源再起動装置1により、それぞれの上り通信光に基づく流入電流により各タイマがリセットされる(ステップS12)。
【0034】
その後、OLT2により、収容している全てのONU3から応答を受信したか否かが判定され(ステップS13)、受信した場合には、電話局内の管理者により、制御光源8がオフされる(ステップS14)。
【0035】
制御光が放出されなくなるため、全ての遠隔電源再起動装置1の各タイマはそれぞれリセットされ、動作を終了する。尚、未応答のONU3がある場合にはステップS4に戻り、全てのONU3から応答を受信するまで通信要求を繰り返し送信する。
【0036】
続いて、これまで説明した機能動作を持つ遠隔電源再起動装置1の実現例について説明する。
【0037】
第1の光・電力変換部20や第2の光・電力変換部21は、例えば、太陽電池に用いられるような、光エネルギーを電力エネルギーに変換する光電変換素子を用いて実現できる。
【0038】
また、電力線制御部23は、例えば、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、IC回路、それらを組み合わせた論理回路を用いて、図6に示すような回路により実現できる。以下説明する。
【0039】
具体的には、タイマとして動作する充電器23aを、充電用ライン23bにより第1の光・電力変換部20に接続し、途中分岐型の放電用ライン23cによりアースと電力線スイッチ22にそれぞれ接続している。
【0040】
また、アースへのライン上に、動作トリガ端子を第2の光・電力変換部21に接続した第1のスイッチ素子23dを挿入し、電力線スイッチ22へのライン上に、充電器23aでの電圧をトリガとして制御される第2のスイッチ素子23eを挿入している。
【0041】
電話局内で制御光が発光すると、充電用ライン23bを介して第1の光・電力変換部20から電流が流入し、充電器23aが充電される。その制御光の発光時間に応じて充電器23aの電圧値は次第に上昇するものの、正常なONU3からの上り通信光に応じた流入電流により第1のスイッチ素子23dが導通し、充電器23aに蓄えられた電力はアースへ放電される。
【0042】
一方、上り通信光が発光されず充電器23aの電圧が閾値に到達すると、第2のスイッチ素子23eが導通して電力線スイッチ22を動作させ、ONU3の電源がオフされる。そして、充電器23aの電力が十分使用されると、第2のスイッチ素子23eは再び切断され、ONU3の電源がオンされる。
【0043】
尚、図6に示した回路構成は一例であり、例えば、光発電により論理回路で構成してもよい。また、これら以外の各機能部については、既存技術を用いて実現できる。例えば、電力線スイッチ22は、磁力式リレースイッチやトランジスタを用いて実現できる。また、波長選択フィルタ19は、WDMカプラを用いて実現できる。
【0044】
以上より、本実施の形態によれば、電話局側からの制御光を電力に変換し、その電力に応じた電流の流入によりタイマを動作させ、そのタイマの閾値時間まで流入し続けた場合にONU3の電源をオフしオンするので、ONU3を遠隔から再起動できる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、ONU3からの通信光により上記タイマをリセットするので、PON区間内の不良なONU3のみを再起動できる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、パッシブな素子やアナログ回路等により遠隔電源再起動装置1を構成するので、本装置1を動作させるための電源は不要であり、故障率を低減することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、ONU3とは別筐体で遠隔電源再起動装置1を構成するので、ONU3に後付けで機能を追加することができる。既存のONU3をそのまま利用できることから、低コストで環境に優しい遠隔電源再起動装置1を提供することができる。
【0048】
最後に、本実施の形態では、制御光源8を新設する実施例について説明したが、ONU3との通信を試験するためにOLT2が通常使用する試験光を制御光として用いても構わない。その場合、その新たな制御光源8を不要とすることができる。
【0049】
また、通信光や制御光の分配装置として非対称カプラを用いた実施例について説明したが、通信光のロスをある程度許容可能であれば、対称カプラ等、少ない光でも動作する仕組みの他の装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1…遠隔電源再起動装置
2…OLT(Optical Line Terminal:光回線終端装置)
3…ONU(Optical Network Unit:光回線装置)
4…電源電圧供給線
5a…電話局側の光ファイバ
5b…ONU側の光ファイバ
6…ONUの電源電圧入力線
7…スプリッタ
8…制御光源
11…第1の光通信ポート
12…第2の光通信ポート
13…電源ポート
14…電源ケーブル
15…第1の非対称カプラ
16…第2の非対称カプラ
17…遠隔電源再起動装置内の光ファイバ
18…電源線
19…波長選択フィルタ
20…第1の光・電力変換部(光電変換部)
21…第2の光・電力変換部(光電変換部)
22…電力線スイッチ
23…電力線制御部
23a…充電器
23b…充電用ライン
23c…放電用ライン
23d…第1のスイッチ素子
23e…第2のスイッチ素子
S1〜S14…ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6