(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
涙器と副鼻腔との間で形成される瘻孔を通じて涙器を副鼻腔へ流体接続するための、ヒトへのインプランテーションのためのインプラントデバイス(200)であって、前記インプラントデバイス(200)が、
前記インプラントデバイス(200)の第一の長軸方向端での近位端(202)と、
前記第一の長軸方向端と長軸方向に向かい合う前記インプラントデバイス(200)の第二の長軸方向端での遠位端(204)と、
近位端(202)付近から遠位端(204)付近に延びる導管(208)と、
前記導管(208)を通じて前記近位端(202)と前記遠位端(204)との間に延びる内部通路(210)であって、前記内部通路(210)は、前記近位端(202)で第一の末端開口および前記遠位端(204)で第二の末端開口を有している、内部通路(210)と、
前記近位端(202)と前記遠位端(204)との間で、2ミリメートルから50ミリメートルの範囲の、前記インプラントデバイス(200)を長軸方向に沿ったインプラントデバイス(200)の長さと、
0.25ミリメートルから5ミリメートルの範囲の長さを横切る内部通路(210)の幅と、
突起部エリア(212)および陥凹エリア(214)を備える固定表面特徴を備える導管(208)の外部であって、複数の前記突起部エリア(212)は前記導管(208)の一定の長軸方向の部分のみにあり、前記導管(208)の長軸方向の部分の近位端(202)は前記インプラントデバイス(200)の前記近位端(202)に最も近い突起部エリア(212)が前記インプラントデバイス(200)の近位端(202)から少なくとも4ミリメートルの位置に設けられる、導管(208)の外部とを備え、
インプラントされて涙器から副鼻腔へ瘻孔を通じて流体接続するように構成された、インプラントデバイス(200)であって、その結果、インプラントされた場合、
前記近位端(202)は前記内部通路(210)の前記第一の末端開口が涙器内で開口するように配置され、
前記遠位端(204)が、副鼻腔内に配置され、前記内部通路(210)の第二の末端開口が副鼻腔内で開口しており、かつ
前記導管(208)が、瘻孔を通じて配置されており、前記陥凹エリア(214)の
少なくとも一部が前記瘻孔内に配置され、かつ前記突起部エリア(212)の少なくとも一部が前記瘻孔内に配置され、前記瘻孔内に露出している組織に係合してインプラントデバイス(200)を固定する、
インプラントデバイス(200)。
前記突起部エリア(212)が、前記陥凹エリア(214)に相対して0.2〜0.75ミリメートルの高さを有する、請求項1に記載のインプラントデバイス(200)。
前記導管(208)の長軸方向の部分は、前記長軸方向の部分の近位端(202)から、前記インプラントデバイス(200)の前記近位端(202)に最も離間した前記突起部エリア(212)まで、前記インプラントデバイス(200)の長さに沿って少なくとも5ミリメートル延びる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプラントデバイス(200)。
前記突起部エリア(212)が、前記導管(208)の前記長軸部分に沿って前記長軸方向の部分の前記近位端(202)から遠位端(204)に延びる外面の面積の25パーセント以下をカバーする、請求項5に記載のインプラントデバイス(200)。
前記突起部エリア(212)が、少なくとも3つの間隔の空いた外周リッジを備え、各々の前記外周リッジが、前記導管(208)の全外周に沿って延びる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプラントデバイス(200)。
前記導管(208)が、1.5ミリメートルから3ミリメートルの範囲内である外部幅であって、前記長さに対して横切る前記突起部エリア(212)の程度によって規定される外部幅を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインプラントデバイス(200)。
前記ヘッド(206)は、2〜8ミリメートルの長さ寸法および、前記長さ寸法を横切る一定の幅寸法を有し、前記幅寸法に対する前記長さ寸法の比は、1.5〜4である、請求項9に記載のインプラントデバイス(200)。
前記突起部エリア(212)は、前記導管(208)の長軸方向の部分に、かつ前記ヘッド(206)から少なくとも3ミリメートルの箇所に設けられた近位端を備えて設けられる、請求項9又は10に記載のインプラントデバイス(200)。
前記導管(208)が、50から100の範囲のデュロメータ(ショアA)を有する高分子材料から構築される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインプラントデバイス(200)。
前記治療組成物は、抗炎症薬、抗菌剤、鎮痛薬、粘液溶解薬、抗ウイルス薬、充血除去薬、ステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生物質および抗真菌剤からなる群から選択された少なくとも1つの薬剤を含有する、請求項15または16に記載のキット。
【発明の概要】
【0005】
副鼻腔に関する種々の医療処置および医療手技は、涙器と副鼻腔との間で形成され得る瘻孔を通じて行われ得る。このような瘻孔によって、涙器から副鼻腔へ、侵襲が最小限の方式で直接的アクセスがもたらされる。このような直接的アクセスによって、全身的な薬物治療に依拠する必要性なしに、副鼻腔での局所的治療のために薬物を都合よく投与することが可能になる。このような直接的アクセスによって、洗浄流体を、副鼻腔に都合よく導入することが可能になる。このようなアクセスによって、流体を、副鼻腔から都合よく除去することが可能になる。このようなアクセスによって、種々の医療手技を、副鼻腔で都合よく行うことが可能になる。
【0006】
本発明の第一の側面は、瘻孔などを通じて涙器から副鼻腔へ流体接続するためにヒトにインプラントするためのインプラントデバイスに関する。このインプラントデバイスは、このデバイスの反対側の長軸方向端に位置する近位端と遠位端とを有する。導管は、近位端付近から遠位端付近まで延びる。内部通路は、近位端と遠位端との間に延びて、これは、導管を通じている。この内部通路は、第一の末端開口をインプラントデバイスの近位端に、および第二の末端開口をインプラントデバイスの遠位端に有する。このインプラントデバイスは、このデバイスの長軸方向に沿って近位端と遠位端との間に、2ミリメートルから50ミリメートルの範囲の長さを有する。この長さを横切る内部通路の幅は、0.25ミリメートルから5ミリメートルの範囲である。このインプラントデバイスは、インプラントされて涙器から副鼻腔へ瘻孔を通じて流体接続するように構成され、その結果、こ
のインプラントデバイスがインプラントされた場合:この近位端は、涙器における内部通路開口部の第一端に配置され;この遠位端が、副鼻腔内に配置され、この内部通路の第二端が副鼻腔内で開口しており;かつこの導管は、瘻孔を通じて配置されている。
【0007】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が、本発明の第一の側面にあてはまる。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第一の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0008】
導管は、その導管の外側が、インプラントデバイスがインプラントされた際にそのデバイスをアンカーすることを補助する固定表面特徴を備えるように構成され得る。この固定表面特徴は、突起部エリアと陥凹エリアとを備える。このインプラントデバイスは、インプラントされた際、この導管が、瘻孔を通じて配置され、ここで陥凹エリアの少なくとも一部が瘻孔内に配置され、かつ突起部エリアの少なくとも一部が瘻孔内に配置されて、瘻孔内に露出した組織を係合してインプラントデバイスをアンカーするように構成され得る。この突起部エリアにおける突起部の存在の構造的および機械的な特徴は、突起部エリアのアンカー能力に影響し得る。この陥凹エリアに対する突起部エリアの高さは、インプラントデバイスがインプラントされる際、アンカーの有効性に影響し得る。高さが高いほど、アンカーの有効性は大きくなり得るが、瘻孔に挿入されなくてはならないインプラントデバイスの全体的な幅も大きくなる場合がある。この突起部エリアは、陥凹エリアに対して少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.25ミリメートルまたは少なくとも0.3ミリメートルという高さを有し得る。突起部エリアは、陥凹エリアに対して、2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、または0.4ミリメートル以下という高さを有し得る。この高さは、陥凹の隣接エリアに対する特定の突起部の存在であり得る。突起部の存在はまた、本明細書においては、アンカー突起部とも呼ばれる。このようなアンカー突起部は、導管がインプランテーションのために瘻孔を通じて挿入される際、可塑性に変形されるように、例えば、アンカー突起部が、挿入の際に瘻孔に位置する組織と接触するときに挿入の方向と反対方向に可塑性に変形するように構成され得る。挿入後、このアンカー突起部は、経時的にその元の形状に復帰し得、かつ隣接組織へさらに深く延びて、インプラントデバイスをさらによくアンカーし得る。このアンカー突起部の機械的特性は、構築物の材料によって影響され得る。突起部エリアのため、およびまたインプラントデバイスの部分のための構築物の好ましい材料は、高分子材料である。この高分子材料は、好ましくは、医薬等級の材料であり得る。いくつかの好ましい高分子材料は、シリコーン類およびポリウレタン類である。能力増強のために、構築物の材料は、例えば、負荷分散および良好な固定を促進するために、瘻孔の近くの組織と正に相互作用する剛性を有するべきである。構築物の1つの好ましい材料は、50、60、70または80という下限、および100、80、70または60という上限を有する範囲で、デュロメータ(ショアA)を有する高分子材料(例えば、シリコーンまたはポリブレタン)であり、ただし、この上限は、下限よりも大きくなければならない。1つの好ましい範囲は、60から100というデュロメータ(ショアA)であり、ただし、80から100という範囲がさらに好ましい。いくつかの実施態様に関しては、高分子材料は、約60、約80または約100というデュロメータ(ショアA)を有する。この突起部エリアの突起部の存在の機械的特性はまた、突起部の存在の形状によっても影響される。この突起部の存在は、突起部の存在の基部から頂部に向かう方向で、先細になるか、または狭くなる幅を有し得、ここでこの基部は、導管の内部通路に向かって配置された突起部の存在の一部であり、この突起部の存在の頂部は、導管の内部通路から離れた突起部の存在の先端である。この幅は、導管の長さを横切ってもよい。この突起部の存在は、2ミリメートル以下、1.5ミリメートル以下、1.25ミリメートル以下、または1ミリメートル以下であ
る基部の幅を有してもよい。1つ以上の突起部の存在は、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.3ミリメートル、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートルまたは少なくとも1ミリメートルである、基部の幅を有してもよい。この突起部の存在が有し得る頂部近くの幅は、基部の幅の0.75倍以下、基部の幅の0.5倍以下、または基部の幅の0.25倍以下である。この突起部の存在が有し得る基部と頂部との間の中間の幅は、基部の幅の0.8倍以下、基部の幅の0.7倍以下、基部の幅の0.6倍以下、または基部の幅の0.5倍以下である。
【0009】
この突起部エリアは、インプラントデバイスがインプラントされる際に、瘻孔の内側と対応するように配置された単一の突起部の存在の特徴によって提供され得る。さらに好ましい実施態様では、この突起部エリアは、導管の外側に、間隔を空けて複数の突起部の存在を備える。この突起部の存在は、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.75ミリメートル、少なくとも1ミリメートルまたは少なくとも1.75ミリメートルという中心間距離を、1つ以上の方向で有し得る。この突起部の存在は、2.5ミリメートル以下、2ミリメートル以下、または1.75ミリメートル以下という中心間距離を有し得る。この突起部の存在は、導管に沿って長軸方向に、中心間距離を有し得る。この突起部の存在は、突起部の存在の基部の幅の少なくとも0.5倍、または突起部の存在の基部の幅の少なくとも1倍、または突起部の存在の基部の幅の少なくとも2倍である中心間距離を有し得る。この突起部の存在は、突起部の存在の基部の幅の5倍以下、突起部の存在の基部の幅の3倍以下、または突起部の存在の基部の幅の2倍以下である中心間距離を有し得る。
【0010】
この突起部エリアは、インプラントデバイスがインプラントされる際に、瘻孔内に配置される、導管の少なくとも一部を含む、導管の長軸部分上に位置され得る。この突起部エリアは、インプラントデバイスの長さに沿って少なくとも2ミリメートル延びるか、インプラントデバイスの長さに沿って少なくとも3ミリメートル延びるか、インプラントデバイスの長さに沿って少なくとも4ミリメートル延びるか、インプラントデバイスの長さに沿って少なくとも5ミリメートル延びるか、またはインプラントデバイスの長さに沿って少なくとも8ミリメートル延びる導管の長軸部分上であり得る。突起部エリアを含む導管の長軸部分は、20ミリメートル以下であっても、15ミリメートル以下であっても、または10ミリメートル以下であってもよい。この突起部エリアを含んでいる導管の長軸部分は、このデバイスの近位端から少なくとも2ミリメートルに配置されても、このデバイスの近位端から少なくとも3ミリメートルに配置されても、またはこのデバイスの近位端から少なくとも4ミリメートルに配置されてもよい。このインプラントデバイスがヘッドを有する場合、突起部を含む導管の長軸部分は、このヘッドから少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートルまたは少なくとも3ミリメートルに配置され得る。ヘッドと突起部エリアの開始との間に有意な距離をとることによって、このヘッドは、組織の表面上に良好に「浮遊する」ことが可能になり、これによって、患者の快適性およびデバイスの能力が向上し得る。この突起部エリアは、導管の長軸部分に沿って配置されてもよく、ここで突起部エリアは、導管のその長軸部分に沿った突起部エリアの35%以下、導管のその長軸部分に沿ったエリアの25%以下または導管のその長軸部分に沿ったエリアの20%以下をカバーしている。突起部の存在の間に有意な間隔をとることによって、表面特徴を固定することによる、組織のより良好な係合が可能になり得る。
【0011】
この突起部エリアは、少なくとも1つの外周リッジを含んでもよい。外周リッジとは、導管の全外周の周りに延びるリッジを意味する。この突起部エリアは、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも5つの外周リッジを備えてもよい。この突起部エリアは、らせん状リッジを備えてもよい。このようならせん状リッジは、導管の長軸部分に沿って延びてもよい。この突起部エリアは、ノブを含んでもよいし、または複数のノブを含んでもよい。この固定表面特徴は、ざらつきのある表面を含んでもよく、この突起部エリア
は、ざらつきのある表面の突起部部分を備え、この陥凹エリアは、ざらつきのある表面の陥凹部分を備えている。
【0012】
このインプラントデバイスは、インプラントされた場合、副鼻腔内に配置される、遠位固定または保持の特徴を備え得る。このような遠位の特徴は、例えば、インプラントデバイスがインプラントされた際、瘻孔の遠位および副鼻腔内に配置されるように、および瘻孔の近位端から引き抜くことによって瘻孔からインプラントデバイスを取り除くための障壁を提供するように構成されたバルブまたは他の特徴を備えてもよい。このような特徴は、瘻孔を通じた挿入の際に、自動的に配置につき得る。このような遠位の特徴はまた、瘻孔内の組織を係合するためのアンカー突起部の使用とともに、または使用なしで用いられてもよく、かつこのような遠位の特徴は、インプラントデバイスがまた、瘻孔内の組織を係合するためにこのようなアンカー突起部を備える場合、このようなアンカー突起部の末端への延びを超えて末梢に延びてもよい。
【0013】
インプラントデバイスの長さは、瘻孔に対して近位の涙器において、および瘻孔に対して遠位の副鼻腔において、瘻孔の全長に加えて所望される任意の伸長距離全体にわたって延びるために十分な導管の長さを得るように、上述の一般的な範囲内で選択され得る。導管の長さは、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートルまたは8ミリメートルという下限、および50ミリメートル、40ミリメートル、30ミリメートル、20ミリメートル、15ミリメートルまたは10ミリメートルという上限を有する範囲内であり得る。いくつかの実施態様についての1つの好ましい範囲は、瘻孔が、眼窩と篩骨洞または上顎洞との間である場合、インプラントデバイスの長さについては、5ミリメートルから20ミリメートルの範囲であり、8ミリメートルから15ミリメートルの範囲がさらに好ましい。インプラントデバイスの長さとは、近位端から遠位端へデバイスに沿った長軸方向の寸法を意味し、内部通路を通って長軸に沿ってもよい。この長さは、例えば、内部通路が真っ直ぐである場合、真っ直ぐなラインであってもよく、またはこの長さは、例えば、内部通路が直線でない場合、曲線であっても、またはその他の形状であってもよい。本明細書において、この長さに対して横切るとの言及がある場合、この言及は、そのポイントでの長さの長軸方向に対して直角である(例えば、その長さのラインに対して、またはその長さの曲線に対する接線に対する直角)。
【0014】
このインプラントデバイスは有利には、瘻孔の所望のサイズ内にぴったりあてはまるような適切な幅の寸法の導管で設計され得る。このインプラントデバイスは、このデバイスの長さを横切る突起部エリアの最大程度によって規定される第一の外側幅寸法を有し得、この外側幅は、0.75ミリメートル、1ミリメートル、1.25ミリメートル、1.5ミリメートル、1.75ミリメートルまたは2ミリメートルという下限、および8ミリメートル、7ミリメートル、6ミリメートル、5ミリメートル、4ミリメートル、3ミリメートル、2ミリメートルまたは1.75ミリメートルという上限を有する範囲内であり、ただし、当然ながら、その上限は、下限よりも大きくなければならない。この導管は、このデバイスの長さを横切る陥凹エリアの最大程度によって規定される第二の幅の寸法を有し得、この第二の外側幅寸法は、突起部エリアによって規定される第一の外側幅寸法よりも小さい。陥凹エリアによって規定される第二の外側幅寸法は、0.2ミリメートル、0.25ミリメートル、0.35ミリメートルまたは0.5ミリメートルという下限を有し、かつ1.5ミリメートル、1ミリメートルまたは0.75ミリメートルという上限を有する範囲内の量による、突起部エリアによって規定される外側幅寸法よりも小さくてもよい。この突起部エリアの高さは、第一の外側幅と第二の外側幅との間の差異の二分の一であり得る。第一の外側幅および第二の外側幅のうちいずれか1つまたは各々1つは、円の直径であり得る。
【0015】
このインプラントデバイスは、導管の外側から導管中の内部通路への流体連通を提供す
るために、導管の壁を通じて複数の開口部を備えてもよい。この開口部は、インプラントデバイスがインプラントされる際、瘻孔に対して遠位であるように設計された導管の一部上に配置されて、副鼻腔内に配置され得る。開口部のいくつかまたは全ては、デバイスの長さに沿って、近位端から少なくとも5ミリメートル、近位端から少なくとも8ミリメートル、または近位端から少なくとも10ミリメートルに配置され得る。このような開口部の幅は、開口部がその中に開口する、内部通路の一部の幅と等しくてもよいし、またはそれよりも小さくてもよい。
【0016】
このインプラントデバイスは、インプラントデバイスの近位端で導管に対して隣接するヘッドを備えてもよい。このインプラントデバイスは、このインプラントデバイスがインプラントされる際、ヘッドが涙器中に配置され、好ましくはこのヘッドが眼窩に位置するように構成され得る。このヘッドは、有利には、インプラントデバイスのインプランテーション後に、副鼻腔に向けて瘻孔を通じて移動しないようにインプラントデバイスを保持し得る。このヘッドは、インプラントデバイスがインプラントされる際、導管に向かって配置され、瘻孔に対して外側かつ隣接する組織を係合するように構成された、ヘッドの側面上のフランジ状の組織係合表面を備え得る。このフランジ状の組織係合表面は、平坦な表面であってもよい。このフランジ状の組織係合表面は、例えば、インプランテーション後の瘻孔内のインプラントデバイスの回転を阻害するなどのために、組織に対する表面の据え付けを改善するように構成された非平坦な表面特徴を有してもよい。このヘッドは、インプラントデバイスがインプラントされる際、フランジ状の組織係合表面に対向しており、かつまた導管から離れて配置され、かつこのフランジ状の組織係合表面によって係合される組織から離れて配置されるフェイス表面を有し得る。このフェイス表面は、実質的に平坦であり得る。このフェイス表面は、インプラントデバイスの近位端に配置されてもよく、かつ内部通路は、フェイス表面で開口してもよい。このフェイス表面とフランジ状の組織係合表面との間の離隔距離は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートルまたは0.75ミリメートルという下限を有し、2ミリメートル、1.5ミリメートルまたは1ミリメートルという上限を有する範囲であり得る。このような離隔距離は、フランジ状の組織係合表面およびフェイス表面にわたって一定である必要はない。フェイス表面とフランジ状の組織係合表面との間の最大離隔距離は、ヘッドの奥行きと呼ばれてもよいし、このような奥行きは、このフェイス表面とフランジ状の組織係合表面との間の離隔距離について上記される範囲であってもよい。このフランジ状の組織係合表面は、連続している必要はなく、かつ複数の別個の表面部分に分けられてもよい。例えば、このフランジ状の組織係合表面は、内部通路の片側に配置される第一のフランジ状部分と、この第一の側に対向する、内部通路の第二の側に配置される第二のフランジ状表面部分とを備え得る。フェイス表面およびフランジ状の組織係合表面の各々は、それぞれの表面の外側エッジ上のポイントの間の最大離隔距離に相当する長さ寸法を有してもよく、かつ長さの寸法に対して横切る外側エッジ上のポイントの間の最大離隔距離である幅寸法を各々が有してもよい。フェイス表面とフランジ状の組織係合表面の長さ寸法は、同じであってもよいし、または異なってもよい。フェイス表面およびフランジ状の組織係合表面の幅寸法は、同じであってもよいし、または異なってもよい。フェイス表面およびフランジ状の組織係合表面は、対応する外側エッジを有し得る。フェイス表面、フランジ状の組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての長さ寸法は、インプラントデバイスが、上記でまとめたような、固定表面特徴を備える場合、インプラントデバイスの長さを横切る突起部エリアの程度によって規定される導管の第一の外側幅よりも大きくてもよい。フェイス表面、組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての長さ寸法は、1ミリメートル、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートルまたは5ミリメートルという下限、および10ミリメートル、8ミリメートルまたは7ミリメートルという上限を有する範囲内であり得る。フェイス表面、組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての幅寸法は、0.5ミリメートル、1ミリメートル、1.5ミリメートルまたは2ミリメートルという下限、および5ミリメートル、4ミリメートルまたは3ミリメートルという上限を有
する範囲内であり得る。フェイス表面、フランジ状の組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての長さ寸法は、インプラントデバイスが上記でまとめたような固定表面特徴を備える場合、突起部エリアの程度によって規定される導管のこのような第一の外側幅よりも少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも3ミリメートルまたは少なくとも4ミリメートル大きくてもよい。導管のこのような第一の外側幅に対する、フェイス表面、フランジ状の組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての長さの比は、少なくとも2であり得る。このような比は、4未満であってもよい。フェイス表面、フランジ状の組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全ての幅は、インプラントデバイスが上記でまとめたような固定表面特徴を備える場合、突起部エリアの程度によって規定される導管のこのような第一の外側幅以下であってもよいし、または未満であってもよい(例えば、少なくとも0.1ミリメートルまで、または少なくとも0.2ミリメートルまで)。フェイス表面、フランジ状の組織係合表面およびヘッドのうちのいずれかまたは全てについて、幅寸法に対する長さ寸法の比は、1、1.5、2または2.5という下限、および5、4、3または2.5という上限を有する範囲内であってもよく、ただし、当然ながら、その上限は、下限よりも大きくなければならない。ヘッドの幅寸法に対して長さ寸法が大きければ、このヘッドが、涙丘と半月襞の間の眼窩に配置される場合に、特に好ましい。なぜなら、長さ寸法は、有利には、眼球の隣に垂直方向に整列され得、近位端上にインプラントデバイスを効果的にアンカーするための十分なフランジ状の表面積を提供することを補助し、インプラントデバイスの内部通路への開口を結膜組織が覆わないように妨げ、幅がより狭くなることを補償する。これは、上記のような構築物の高分子材料を用いる場合、特に有利である。
【0017】
内部通路は、インプラントデバイスの全長に沿って、実質的に均一な形状を有してもよいし、または種々の形状を有してもよい。内部通路は、このデバイスの近位端からこのデバイスの遠位端まで実質的に真っ直ぐであってもよい。この内部通路は、インプラントデバイスの近位端から遠位端まで実質的に均一である流れのために利用可能な断面(デバイスの長さに対して横切る)を有し得る。この内部通路は、実質的に環状の断面を有し得る。この内部通路は、実質的に楕円形の断面を有し得る。導管の幅(流れのために利用可能な内部通路の断面を横切る最大寸法)は、0.25ミリメートル、0.5ミリメートルまたは0.75ミリメートルおよび1ミリメートルという下限、ならびに5ミリメートル、または4ミリメートルまたは3ミリメートル、2ミリメートルまたは1.5ミリメートルという上限を有する範囲内であり得る。
【0018】
このインプラントデバイスは、眼窩内の涙器と、前頭洞、篩骨洞、上顎洞およびちょう形骨洞からなる群から選択される、副鼻腔との間の位置の瘻孔を通る導管での実施態様のために構成され得、ここで前頭洞、上顎洞または篩骨洞が好ましく、篩骨洞または上顎洞がさらに好ましく、篩骨洞が特に好ましい。このインプラントデバイスは、鼻涙管内の涙器の位置と、篩骨洞および上顎洞からなる群から選択される、副鼻腔との間の瘻孔を通る導管での実施態様のために構成され得る。鼻涙管内の位置は、涙嚢内であってもよい。
【0019】
インプラントデバイスは、涙器と副鼻腔との間の瘻孔を通る導管で、ならびに涙器内に位置する近位端、および副鼻腔内に位置する遠位端で、インプラントされるように人体内に配置されてもよく、ここで、好ましい実施態様には、篩骨洞、上顎洞および前頭洞からなる群から選択される、副鼻腔内に位置する遠位端および眼窩に位置する近位端が関係し、さらに好ましいのは、半月襞と涙丘との間に配置された近位端である。
【0020】
インプラントデバイスは、涙器と副鼻腔との間で形成され得る瘻孔にインプラント可能であり涙器から副鼻腔への通路をもたらすインプラントデバイスを主に指し、主に構成され、かつ本明細書に記載される。このインプラントデバイスはまた、涙器(例えば、涙丘と半月襞との間の眼窩の内側部分の角から)と、鼻腔との間で形成され得る瘻孔に、例え
ば、涙液の排出の増強のために、インプラント可能であり、かつ鼻腔に対するこのような適用は、本発明の異なる側面の範囲内である。
【0021】
本発明の第二の側面は、インプラントデバイスおよびキャリアーを備える外科用ツールによって提供される。このキャリアーは、遠位先端部を有する部材を備え、この部材は、涙器と副鼻腔との間の瘻孔を通じて配置され、ここで遠位先端部が副鼻腔内に位置するように適合されている。このキャリアーはまた、この部材に接続された手技操作可能なハンドルを備える。このインプラントデバイスは、ハンドルと遠位先端部との間のキャリアー上に装着され、ここでこの部材は、内部通路を通じて配置され、このインプラントデバイスの近位端は、ハンドルに向かって配置され、かつこのインプラントデバイスの遠位端は、遠位先端部に向かって配置される。このキャリアーは、瘻孔を通じて配置されたインプラントデバイスのインプラント位置については、インプラントデバイスから離脱可能である。
【0022】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第二の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第二の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0023】
このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるインプラントデバイスであり得る。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面による設計以外のものであってもよい。
【0024】
この部材の遠位先端部は、瘻孔を形成するために組織に穴を開けるために構成された貫通先端部であってもよい(例えば、尖った先端部)。この部材の遠位先端部は、既に形成された瘻孔を通じて進入して前進するように設計された、尖っていない先端部であり得る。このキャリアーは、ハンドルとこの部材とを通じて延びる内部通路を備えてもよく、この通路を通ってガイドワイヤが通されて、キャリアーが、インプラントデバイスが瘻孔にインプラントされるべき位置に導かれるように補助され得る。
【0025】
この部材は、中実部材であって、その遠位先端部が中実部材の遠位端である。このインプラントデバイスは、中実部材上に装着されてもよく、ここでこの中実部材は、インプラントデバイスの内部通路を通じて配置されている。この中実部材は、トロカールまたはスタイレットを備えてもよい。
【0026】
この部材は、中空部材であってもよい。このインプラントデバイスは、中空部材上に装着されてもよく、この中空部材は、このインプラントデバイスの内部通路を通じて配置される。遠位先端部は、中空部材の遠位端を備え得る。この中空部材は、中空針またはカニューレであってもよい。このキャリアーは、この部材の中空内部と流体連通してシリンジハブを備え得る。このシリンジハブは、中空部材の近位端と接続され得る。このシリンジハブは、ハンドルの一部であってもよく、またはハンドルの一部を含んでもよい。このシリンジハブは、シリンジと接続して、中空部材を通じたシリンジからの流体の注入、および中空部材を通じたシリンジへの流体の吸引からなる群から選択される、少なくとも1つの処置を実行可能にするように、適合され得る。このようなハブは、シリンジとのルアー接続を行うように構成され得る。このキャリアーは別の部材を備えてもよく、この部材は、このような中空部材を通じて配置された中実部材であってもよい。このキャリアーの遠位先端部は、中実部材の遠位端を備え得る。この中実部材は、中空部材の近位端からスライドして取り外し可能であり得る。この中実部材は、中空部材から離脱可能であり得る。この中実部材は、スタイレットであっても、またはトロカールであってもよい。この中実
部材は、遠位端(尖っていない先端部の形態であるか、または中空部材の遠位端と一緒になって尖っていない先端部を形成し得る)を有してもよい。
【0027】
この部材の遠位端、および遠位先端部は、インプラントデバイスの遠位端から少なくとも0.3センチメートル、少なくとも0.5センチメートル、少なくとも0.75センチメートルまたは少なくとも1センチメートルに位置し得る。この部材の遠位端、および遠位先端部は、インプラントデバイスの遠位端から、5センチメートル以下、3センチメートル以下、または2センチメートル以下に位置し得る。この部材の遠位端、および遠位先端部は、インプラントデバイスの近位端から、少なくとも0.75センチメートル、少なくとも1センチメートルまたは少なくとも2センチメートルに位置し得る。この部材の遠位端、および遠位先端部は、インプラントデバイスの近位端から7センチメートル以下、6センチメートル以下、5センチメートル以下、4センチメートル以下、または3センチメートル以下に位置し得る。
【0028】
第一の側面と同様に、第二の側面の外科用ツールもまた、涙器と鼻腔との間の瘻孔を通じて(例えば、第一の側面の)インプラントデバイスをインプラントするために用いられ得る。
【0029】
本発明の他の側面は、ヒトの涙器と副鼻腔との間に形成された瘻孔に関係する種々の方法によって提供される。任意のこれらの方法に関係する瘻孔は、ヒトの涙器と副鼻腔との間の位置で任意の適切な技術によって外科的に形成され得る。この瘻孔は、例えば、針、切断カニューレ、トロカールまたはスタイレットのような貫通または切断装置によって形成され得る。瘻孔を形成するための他の技術例としては、ドリル、レーザ、ラジオ周波数(RF)および超音波が挙げられる。瘻孔は、本発明の第二の側面の外科用ツールを用いて形成され得る。瘻孔は、涙器中の位置と目的の副鼻腔とを接続する任意の適切な経路によって形成され得る。瘻孔の経路は、眼窩から前頭洞、篩骨洞または上顎洞であってもよい。この経路は、(場合によっては)結膜下で眼窩から、および前頭骨、篩骨または上顎骨の壁を通じてでもよい。瘻孔は、鼻涙管と、上顎洞または篩骨洞のいずれかとの間であってもよい。この位置および鼻涙管(瘻孔が形成される)は、涙嚢として公知の鼻涙管の頂部であってもよいし、または涙嚢の下の鼻涙管の位置であってもよい。一般には好ましい経路ではないが、瘻孔は、ちょう形骨洞へ、例えば、結膜下で眼窩からおよびちょう形骨の壁を通じてちょう形骨洞まで通じるものであってもよい。瘻孔は、例えば、副鼻腔へのアクセスが長期間にわたって望まれる場合には、永続開存性の瘻孔であってもよい。この瘻孔は、本来は、それよりも一時的であり、単回の手技を行うために形成され、その後は素早く修復して閉じることが望まれる。
【0030】
本発明の方法に関する瘻孔は、その瘻孔の近位端が位置すべき涙器中の位置にアクセスすることによって形成され得、次にその瘻孔は組織を通じて標的の副鼻腔へ形成される。鼻涙管中の位置は、瘻孔が形成されるべき位置が鼻涙管に配置される場合などに、鼻涙管を通じてアクセスされ得る。涙器中の位置(例えば、鼻涙管の涙嚢部分)は、小管を通じてアクセスされ得る。涙管または涙嚢に対するアクセスはまた、経皮的経路または結膜下の経路を介してであってもよく、この位置から、瘻孔は涙管または涙嚢から標的の副鼻腔へ形成され得る。鼻涙管へのアクセスはまた、上顎洞を通る、頬側歯肉反射を通じてであってもよく、次いで、瘻孔は、鼻涙管から篩骨洞へ形成され得る。瘻孔が形成される位置が眼窩である場合、アクセスは、眼窩に直接であってもよい。ある状況では、瘻孔は標的の副鼻腔に最初にアクセスすること、次いで瘻孔を外科的に副鼻腔から涙器系の標的位置に形成することによって外科的に形成され得る。例えば、上顎洞は、経皮的に、結膜下にまたは頬側歯肉反射を通じてアクセスされ得、次いで上顎洞からの瘻孔が、上顎洞から鼻涙管または涙嚢へ形成され得る。別の例では、前頭洞は、経皮的にアクセスされてもよく、次いで、前頭洞からの瘻孔が、前頭洞から眼窩または涙嚢へ形成され得る。瘻孔が、鼻
涙管または涙嚢にある涙器と副鼻腔との間の位置である場合の状況に関して、涙器の全てまたは一部が、その涙点から鼻涙嚢または鼻涙管中の位置へ挿管され得る。このような挿管としては、例えば、涙点から小管を通って、かつ涙嚢または鼻涙管中の位置まで延びる導管を挙げることができる。このような導管は、瘻孔を副鼻腔へ通すインプラントデバイスの、欠くことのできない部分であり得る。
【0031】
ある方法が、治療用の処方物(治療組成物とも呼ばれる)に関する場合、この治療処方物とは、例えば、鼻炎またはその他の疾患の治療のための薬物処方物(薬物組成物とも呼ばれる)であってもよい。このような薬物処方物は、1つ以上の薬物を含んでもよい。このような薬物処方物に含まれ得るいくつかの例となる薬物としては、抗炎症薬、抗菌剤、鎮痛薬、粘液溶解薬、抗ウイルス薬、充血除去薬、ステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生物質および抗真菌剤が挙げられる。このような治療処方物は、副鼻腔を洗浄するための洗浄流体であってもよい。
【0032】
ヒトの涙器と副鼻腔との間の瘻孔に関する本発明のいくつかの具体的な方法を、以下にまとめる。
本発明の第三の側面は、長期間にわたり副鼻腔内で医療処置または手技を行うことを可能にする、ヒトの副鼻腔に対するアクセスを提供するための方法によって提供される。この方法は、ヒトの涙器と副鼻腔との間で外科的に形成された永続開存性の瘻孔を創出する工程を備える。
【0033】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第三の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第三の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0034】
長期間にわたって瘻孔の永続開存性を維持することを補助するために1つ以上の技術が用いられ得る。永続開存性を付与するための1つの技術は、創出の際に、比較的大きな直径を有する、そして好ましくはスパッと切れた切り口を有する瘻孔を外科的に形成して、瘻孔を形成することである。スパッと切れた切り口の組織のこのような大きな直径の開口部は、天然の修復機構に対して極めて耐性が高く、このような瘻孔は、十分な期間におよんで開口を保持し得、これは本質的に永続的であり得る。この瘻孔は、少なくとも2ミリメートル、または少なくとも3ミリメートルの直径で形成され得る。この瘻孔は、6ミリメートル以下、5ミリメートル以下、4ミリメートル以下、または3.5ミリメートル以下であってもよい。瘻孔に対して永続開存性をもたらすための別の技術は、瘻孔を通じてインプラントデバイスを配置する工程を備える。このインプラントデバイスは、瘻孔内のスペースを占有し、組織が修復すること、および瘻孔が閉じることを妨げる。インプラントデバイスは、瘻孔の全長にわたって延びる内部通路を備え得る。瘻孔を通じて配置されるように作製されたインプラントデバイスの導管は、開存性を維持する。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるものであり得る。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるもの以外であってもよい。このインプラントデバイスは、本発明の第二の側面の外科用ツールを用いてインプラントされ得る。この瘻孔は、本発明の第二の側面による外科用ツールを用いて形成され得る。瘻孔を形成することは、1つの外科用ツールを用いる瘻孔の形成、および異なる外科用ツールによるインプラントデバイスのインプランテーションを包含し得る。この瘻孔は、瘻孔の最初の形成と、インプラントデバイスのインプランテーションとの間で拡張されてもよい。1つ以上の手技は、瘻孔を通じて延びるガイドワイヤの使用によって補助され得る。例えば、インプラントデバイスのインプランテーションは、このようなガイドワイヤの使用を包含し得る。別の例として、瘻孔の拡張は、このようなガイドワイヤの使用に関し得る。瘻孔に対して永続開存性を
付与するために用いられ得る別の技術は、組織修復および瘻孔閉鎖を阻害するための、瘻孔に隣接する組織の機械的な処置を備える。1つの機械的な処置技術は、瘻孔に隣接する組織を縫合することであり得る。別の機械的な処置技術は、瘻孔に隣接する組織をステープルで固定することであり得る。瘻孔に対して永続開存性を付与するための別の機械的な処置技術は、瘻孔の自然な修復を阻害するために有効な物質(例えば、薬物)を用いて、瘻孔に隣接する組織を処置することである。この物質としては、抗肉芽形成剤または抗瘢痕形成剤を挙げることができる。この物質は、ステロイドを含んでもよい。この物質は、マイトマイシンCを含んでもよい。
【0035】
この方法は、瘻孔を通じた副鼻腔への治療処方物の導入に関する手技を行うことを包含し得る。このような治療処方物としては、薬物処方物を挙げることができる。このような治療処方物としては、副鼻腔を洗浄するための洗浄流体を挙げることができる。この方法は、副鼻腔からの流体の除去に関する手技を包含し得る。このような除去は、瘻孔が、副鼻腔よりも低くなっている涙器中の位置へ向かう場合(例えば、前頭洞から眼窩への瘻孔)には、重力ドレナージによって達成され得る。副鼻腔へ治療処方物を導入すること、または副鼻腔から流体を取り除くことは、場合によっては、瘻孔を通じて配置された中空部材を通じて行われ得る。治療処方物は、このような中空部材から副鼻腔へ注入されてもよく、流体は、このような中空部材を通じて副鼻腔から吸引によって除去されてもよい。このような中空部材は、瘻孔の形成と同時に瘻孔を通じて配置され得る。この中空部材は、本発明の第二の側面による外科用ツールの中空部材であってもよい。本発明は、瘻孔を形成するのと同時ではなく、遅れて手技を行う工程を包含してもよい。この方法は、涙器から瘻孔を通って副鼻腔内へ流れるように眼の近傍へ治療処方物を投与することを含んでなる治療を行うことを包含し得る。この治療処方物は、点眼剤の形態で投与されてもよい。この治療組成物は、眼科用の組成物であり得る。
【0036】
本発明の第四の側面は、ヒトの副鼻腔へ治療処方物を送達するための方法によって提供される。この方法は、ヒトの涙器と副鼻腔との間で形成された瘻孔を通じて副鼻腔へ送達するために治療処方物を投与することを包含する。
【0037】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第四の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第四の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0038】
この投与は、瘻孔を通じて配置された中空部材から副鼻腔へ治療処方物を注入することを包含し得る。このような中空部材は、中空針であっても、またはカニューレであってもよい。この瘻孔は、外科的に形成される、永続開存性の瘻孔であってもよい。この瘻孔は、永続開存でなくてもよい。この中空部材は、治療組成物を送達する目的で、瘻孔を通じて配置されてもよく、その後、その中空部材は、瘻孔が修復して閉じることを可能にするために取り出されてもよい。
【0039】
この投与は、涙器から瘻孔を通じて副鼻腔内へ流れるように眼の近傍へ治療処方物を投与することを包含し得る。この治療組成物は、点眼剤の形態で投与されてもよい。この点眼剤は、眼科用の組成物であってもよい。
【0040】
本発明の第五の側面は、副鼻腔で医療手技を行うための方法によって提供される。この方法は、涙器と副鼻腔との間の瘻孔を通じて導管を配置しながら、医療器具の導管を通じて副鼻腔から流体を吸引する工程、または副鼻腔へ流体を注入する工程を包含する。
【0041】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第五の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第五の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0042】
この導管は、インプラントデバイスの導管であってもよい。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によってもよい。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるもの以外であってもよい。この導管は、副鼻腔内に配置された中空部材の先端部によって瘻孔を通じて配置された中空部材を備えてもよい。このような中空部材は、例えば、中空針であっても、またはカニューレであってもよい。この流体は、治療処方物を含んでもよい。
【0043】
本発明の第六の側面は、ヒトの副鼻腔を治療するための方法によって提供される。この方法は、ヒトの涙器と副鼻腔との間の、外科的に形成された永続性の開存性の瘻孔を通じて涙器から涙液を送達する工程を包含する。
【0044】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第六の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第六の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0045】
涙液(涙)は、有意な治療特性を有し、副鼻腔へ涙液を供給することによって、副鼻腔炎のような副鼻腔の疾患に関する有益な効果がある場合がある。瘻孔は、上で考察した技術のような任意の適切な技術(1または複数)によって永続開存が維持され得る。瘻孔は、涙器から副鼻腔へ涙液を送達するための、涙器と副鼻腔との間の流体連通を提供する内部通路を有するインプラントデバイスによって、永続開存として維持され得る。このインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるものであってもよい。この瘻孔は、上で述べたように、涙器と副鼻腔との間の位置であってもよい。1つの好ましい瘻孔経路は、眼窩と篩骨洞との間である。別の好ましい瘻孔経路は、眼窩と上顎洞との間である。
【0046】
本発明の第七の側面は、複数の外科用ツールを備えるキットによって提供される。このキットは、最初に瘻孔を形成するために設計された第一の外科用ツールと、インプラントデバイスを備えており、かつ瘻孔が既に所望のサイズに形成された後に、インプラントデバイスを瘻孔内にインプラントするために設計された第二の外科用ツールとを備える。
【0047】
多数の特徴の微調整および追加的な特徴が本発明の第七の側面にあてはまり得る。これらの特徴の微調整および追加的な特徴は、個々に用いられても、または任意の組み合わせで用いられてもよい。従って、以下の特徴の各々は、本発明の第七の側面または任意の他の側面の任意の他の特徴または特徴の組み合わせとともに用いられてもよいが、ただし、必ずしも用いる必要はない。
【0048】
このキットは、第一の外科用ツールを用いて最初に形成された瘻孔を拡張するように設計された第三の外科用ツールを備えてもよい。このキットは、瘻孔へ、および瘻孔を通じてツールをガイドするために用いられ得るガイドワイヤを備えてもよい。この第二の外科用ツールは、本発明の第二の側面による外科用ツールであり得る。第二の外科用ツールのインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるものであってもよい。この第二の外科用ツールのインプラントデバイスは、本発明の第一の側面によるものでなくてもよい。
【0049】
本発明のさらなる他の側面を以下にまとめる:
本発明の方法および下に記載の発明は、最新の外科的技術よりも格段に侵襲が少ない副鼻腔炎を治療する新規な方法を目的とする。自然な涙は、リゾチームならびに強力な抗菌活性および抗炎症特性を有する他の因子が豊富である。ヒトの眼は、1日に平均で300マイクロリットルの涙を産生する。これらの涙は、眼の内眼角の領域から、収集槽、鼻−涙嚢(NLS:naso−lacrimal sac)(本明細書では涙嚢とも呼ばれる)へ流出し、次に鼻−涙管(NLD:naso−lacrimal duct)を通じて、鼻腔へポンピングされ、副鼻腔をバイパスする。涙の流出は、部分的には、眼輪筋の収縮に加えて、NLDを構成するコラーゲンおよびエラスチンファイバーのらせん配置に起因する涙腺のポンピング機構による受動的な関与および能動的な関与のうちの少なくとも一方によって支配される。NLSは、篩骨洞(孤立性副鼻腔炎の一般的な部位)とは、薄い骨の壁で隔てられている。NLDの中央部分はまた、薄い骨の壁で上顎洞から隔てられている。
【0050】
診断および治療を目的として、涙器系の小管は、種々のプローブでカニュレーション可能である。さらに、内視鏡または放射性物質(蛍光透視鏡的なまたはコンピュータ断層撮影法(CT))による可視化によって、NLSおよびNLDにカニュレーションするための優れたナビゲーションによる誘導を得ることができる。NLSと前篩骨洞との間の永続的または一時的な連通の創出によって、抗生物質の液滴の副鼻腔への直接の一定流が可能になる。同様に、NLDと同側の上顎洞との間のさらに下方に永続的または一時的な連通を創出することによって、この副鼻腔への涙の流路の迂回が生じる。急性感染媒体を排出するための新規な方法を得ることに加えて、涙腺の流れのこの再経路設定によって、宿主の副鼻腔内への直接的な、眼に安全かつ活性な医薬の有効な送達経路が得られ、副鼻腔炎の医療処置に対する大きな制限が回避される。急性/慢性の副鼻腔炎を予防する可能性および治療する可能性のうちの少なくとも一方が極めて高い医薬としては、抗生物質(例えば、オフロキサシン点眼剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド、およびさらには静菌性生理食塩水点眼剤(自然涙)が挙げられる。
【0051】
一旦、NLS/NLDと所望の副鼻腔との間の骨切り術(これに関する一般的な用語は、ダクロシストシノトミー(dacrocystosinotomy)であろう)が行われれば(涙小管または鼻開口部のいずれかから)、一時的または永続的なステントまたはポータルが長期の開存性を保証するために挿入され得る。このような瘻孔形成術は、現在行われている涙嚢鼻腔吻合(ここで、NLDは、正常な排出開口部よりも上の位置で鼻腔内に開口される)と類似の、ダクロシストエトモイドトミー(NLSから篩骨洞へ)またはダクロシストマキロトミー(NLDから上顎洞へ)と呼ばれてもよい。NLD内へのアクセスの別の経路は、下鼻甲介の下で下鼻道を通るものであろう。以下の方法および装置は、機能的な解剖学および生理学を利用して、所望のエリアへの流路迂回を最適化し、かつNLS/NLDの正常なポンピング機能を損なうことなく、骨切り術(1または複数)の開存性を維持する。追加的な解剖学的詳細に関しては、
図1から
図3を参照のこと。
【0052】
本発明のいくつかの具体的な追加的側面は、本発明の他の側面、またはその任意の特徴との任意の組み合わせで組み合わされてもよく、これには以下が考えられる:
1.涙管経路(1または複数)を、上部小管および下部小管からNLSおよびNLDへ、および標的の副鼻腔へ向かう下鼻道を迂回する方法であって、NLS/NLD系の自然なポンピング機構を利用する種々の副鼻腔疾患を治療する目的のための導管を創出する方法。
2.一旦、この導管が確立されれば、標的の副鼻腔の吸引、ドレナージ、洗浄のうちの少なくともいずれか1つを行う方法。
3.誘導システムの有無にかかわらない、標的副鼻腔のドレナージを補助するためのツールまたは装置。
4.種々の疾患を治療するために標的副鼻腔に対して所望の薬物または他の物質が送達されるように、導管形成術の開存性を維持するための方法およびツールであって、ステント、ドレーン管、特定の薬物またはエネルギー源、例えば、光、音響、RF、熱、または冷凍の装置を包含するもの。
5.涙の自然な抗菌特性および抗炎症特性が、感染性疾患または炎症性疾患の再発、ぶり返し、または慢性化を軽減するために標的の副鼻腔に送達され得る方法。
6.2つ以上の副鼻腔が、片側または両側のいずれかを標的とする場合、優先的に、所望の副鼻腔内への、または副鼻腔を離れての流動動態を最適化するための方法およびツール。
7.蛍光透視鏡的誘導、断面画像化誘導、内視鏡誘導、触知性および指向性のフィードバックであって無誘導のもの、またはそれらの組み合わせを用いて全身麻酔なしに診療室での手技としてこの手技を行う方法。
8.必要に応じて開放または画像誘導手技として操作環境でこの手技を行うための方法。9.3Dおよび定位固定誘導によってこれらの手技を行うための方法。
10.経皮的または結膜下経路を介してNLSおよびNLDのうちの少なくとも一方にアクセスするための方法およびツール。
11.頬側歯肉反射を通じて上顎洞にアクセスし、これによってNLD中にポータルを創出するための方法およびツール。
12.上部小管および下部小管を通じてNLSにアクセスし、それによって導管またはポータルを創出し、これを通じて他の装置が送達され得る、専門的な装置。
13.所望の解剖エリア全体にわたって剛性および可塑性の両方のデバイスのナビゲーションを改善するためのツールの特殊コーティング。
14.上部小管または下部小管からNLSへのチャネルは、お互いに対する鏡像であり;これらの専門的な装置は、挿入のいずれかのポータルにアクセスするために可逆性であり、かつ人間工学的に効率的であるように設計される。
15.涙嚢造影を行って、蛍光透視鏡的誘導を補助するための方法およびツール。
16.下鼻道を通ってNLDにアクセスし、それによって導管またはポータル(これを通じて他の装置が送達され得る)を創出するための専門的な装置。
17.下鼻道を介して装置にアクセスを提供するためのハスナー(Hasner)のバルブを越えて、NLSおよびNLDを通じて剛性、可塑性、半可塑性もしくは操舵可能なガイドワイヤまたは他のナビゲーションデバイスを通すための方法および装置。
18.下部小管および上部小管から、NLSおよびNLDを通じて剛性、可塑性、半可塑性もしくは操舵可能なガイドワイヤまたは他のナビゲーションデバイスを通すための方法および装置。
19.NLS/NLDと前篩骨胞との間の瘻孔形成術を行うための方法および装置。
【0053】
a)このような瘻孔形成術を創出するためのツールとしては、ドリルおよびパンチのような機械源ならびにエネルギー源(例えば、RF、レーザおよび音響)が挙げられる;
b)このような瘻孔形成術の位置を最適化するための、このような装置の専門的な形状;
c)瘻孔形成の安全性を最大限にするための専門的な保護デバイス;ならびに
d)所望の解剖でデバイスをアンカーして、それによって安定したプラットフォームを創出して瘻孔形成するためのバルーン、フック、または他の摩擦デバイスの使用。
20.蛍光透視鏡的ゆうどうもしくは内視鏡誘導、または他の形態の画像化誘導、例えば3Dまたは立体的な仮想の誘導およびナビゲーションによる、このような瘻孔形成術を通じた篩骨洞全体にわたるナビゲートのための方法およびツール。
21.篩骨洞と、ちょう形骨洞と、前頭洞との間の開存連通を創出して保証し、その結果これらの副鼻腔の各々が、本明細書に記載の方法によっても治療され得るような、篩骨洞全体にわたるナビゲーションのための方法およびツール。
22.NLS/NLDと上顎洞との間の瘻孔創出術のための方法および装置。
【0054】
a)このような瘻孔形成術のためのツールとしては、ドリルおよびパンチのような機械源ならびにエネルギー源(例えば、RF、レーザおよび音響)が挙げられる;
b)このような瘻孔形成術の位置を最適化するための、このような装置の専門的な形状;ならびに
c)瘻孔形成の安全性を最大限にするための専門的な保護デバイス。
23.NLSおよびNLDの自然な機能的解剖を利用して所望のエリアに対する流路迂回を最適化する方法および装置。
24.このような瘻孔形成術の開存性を維持するための、薬物溶出のための特殊な材料およびコーティングのうちの少なくとも一方または容量を含む、方法、ツールおよび装置。25.開存性の治癒を補助するか、または治療を最適化するための任意の一次的または永続的なインプラントデバイスの薬物溶出能力を提供するための技術。
26.ドリル、パンチ、骨鉗子、プローブまたは拡張性のバルーンのような機械的方法を介して、所望の最終直径まで瘻孔形成を拡張するための方法およびツール。
27.光、熱、RFまたは音響の装置のようなエネルギー源を介して、所望の最終直径まで瘻孔形成を拡張するための方法およびツール。
28.ある場合には、このような瘻孔形成術の開存性を維持することを補助するための瘻孔形成術を通じた、バルーン拡張性または自己拡張性のステントまたは導管の送達のための方法。
29.長期の開存性を保証するためのこのようなステントまたは導管を製造するための特殊な設計および技術。
30.流路迂回を最適化し、かつこのような経路の開存性の維持を補助するための、このようなステントまたは導管の特殊な形状。
31.所望の副鼻腔内へ、かつ鼻腔から離れて流路迂回を最適化するために、一時的または永続的な方式でNLDを最適に閉鎖するための方法および装置であって、これは副鼻腔を閉鎖するためのエネルギー源の使用、または一時的もしくは永続的な閉塞性構造の設置を包含している。
32.鼻涙嚢および鼻涙管から標的の副鼻腔への涙管経路(1または複数)を迂回するための治療方法であって、この方法は以下の工程を有する:
a)下部小管または上部小管を介して涙嚢または涙管内へ外科用ツールを挿入する工程と;
b)標的の副鼻腔に隣接する標的のスポットに対して外科用ツールの先端部をガイドする工程と;
c)涙嚢または涙管と標的の副鼻腔との間の中隔に瘻孔を開口するためにこの外科用ツールを用いる工程と;
d)種々の副鼻腔疾患を治療する目的で、標的の副鼻腔内への涙または薬剤の流れのための導管を創出するために、このような外科用ツールを取り除く工程。
33.標的の副鼻腔が篩骨洞である、32番に記載の方法。
34.前頭洞を、前頭篩骨陥凹での篩骨洞とのその連通を介して、またはこの副鼻腔内への直接穿孔によって、前頭洞炎の治療のためにカニュレーションするための方法およびツール。
35.ちょう形骨洞を、ちょう形篩骨陥凹での篩骨洞とのその連通を介して、またはこの副鼻腔内への直接穿孔によって、ちょう形骨洞炎の治療のためにカニュレーションするための方法およびツール。
36.標的の副鼻腔が上顎洞である、32番に記載の方法。
37.涙の経路の迂回が、鼻−涙嚢および涙管系の自然なポンピング機構を利用する、32番に記載の方法。
38.32番に記載の方法であって、前記手技が、蛍光透視鏡的誘導、断面画像化誘導、内視鏡誘導、触知性および指向性のフィードバックであって無誘導のもの、または上記の組み合わせを用いて、全身麻酔の有無にかかわらず、診療室での手技として行われ得る方
法。
39.32番に記載の方法であって、外科用ツールを用いて、鼻−涙嚢および涙管と標的の副鼻腔との間の組織および骨を切断または切除する方法。
40.鼻涙嚢および涙管から標的の副鼻腔へ涙管経路(1または複数)を迂回させるための治療方法であって、この方法は以下の工程を有する:
a)ハスナーのバルブを介して外科用ツールを涙管内に挿入する工程と;
b)標的の副鼻腔に隣接する標的のスポットに対して外科用ツールの先端部をガイドする工程と;
c)涙管と標的の副鼻腔との間の中隔に瘻孔を開口するためにこの外科用ツールを用いる工程と;
d)種々の副鼻腔疾患を治療する目的で、標的の副鼻腔内への涙の流れのための導管を創出するために、このような外科用ツールを取り除く工程。
41.40番に記載の方法であって、標的の副鼻腔が篩骨洞であり、拡張による方法、34番および35番にあるこれらの副鼻腔の正常なまたは創出された連通経路を通じた前頭洞およびちょう形骨洞の両方を治療するための、方法およびツール。
42.上記標的の副鼻腔が上顎洞である、40番に記載の方法。
43.上記涙の経路の迂回が、鼻−涙嚢および涙管系の自然なポンピング機構を利用する、40番に記載の方法。
44.40番に記載の方法であって、前記手技が、蛍光透視鏡的誘導、断面画像化誘導、内視鏡誘導、触知性および指向性のフィードバックであって無誘導のもの、または上記の組み合わせを用いて、全身麻酔の有無にかかわらず、診療室での手技として行われ得る方法。
45.40番に記載の方法であって、外科用ツールを用いて、鼻−涙嚢および涙管と標的の副鼻腔との間の組織および骨を切断または切除する方法。
46.鼻涙嚢および涙管から標的の副鼻腔へ涙管経路(1または複数)を迂回させるための治療方法であって、この方法は以下の工程を有する:
a)経皮的な方法を介して上顎洞に直接外科用ツールを挿入し、次いで涙管への連通を創出する工程と;
b)標的の副鼻腔に隣接する標的のスポットに対して外科用ツールの先端部をガイドする工程と;
c)涙管と標的の副鼻腔との間の中隔に瘻孔を開口するためにこの外科用ツールを用いる工程と;
d)種々の副鼻腔疾患を治療する目的で、標的の副鼻腔内への涙の流れのための導管を創出するために、このような外科用ツールを取り除く工程。
47.46番に記載の方法であって、標的の副鼻腔が篩骨洞であり、拡張による方法、これらの副鼻腔の正常な連通経路を通じた前頭洞およびちょう形骨洞の両方を治療するための、方法およびツール。
48.上記涙の経路の迂回が、鼻−涙嚢および涙管系の自然なポンピング機構を利用する、46番に記載の方法。
49.46番に記載の方法であって、前記手技が、蛍光透視鏡的誘導、断面画像化誘導、内視鏡誘導、触知性および指向性のフィードバックであって無誘導のもの、または上記の組み合わせを用いて、全身麻酔の有無にかかわらず、診療室での手技として行われ得る方法。
50.46番に記載の方法であって、外科用ツールを用いて、鼻−涙嚢および涙管と標的の副鼻腔との間の組織および骨を切断または切除する方法。
51.鼻涙嚢および涙管から標的の副鼻腔へ涙管経路(1または複数)を迂回させるため治療の方法であって、この方法は以下の工程を有する:
a)外科用ツールを鼻涙嚢または涙管へ、経皮的または結膜下のアプローチを介して直接挿入し、次いで涙管から標的の副鼻腔内への連通を創出する工程と;
b)標的の副鼻腔に隣接する標的のスポットに対して外科用ツールの先端部をガイドす
る工程と;
c)涙管と標的の副鼻腔との間の中隔に瘻孔を開口するためにこの外科用ツールを用いる工程と;
d)種々の副鼻腔疾患を治療する目的で、標的の副鼻腔内への涙の流れのための導管を創出するために、このような外科用ツールを取り除く工程。
52.51番に記載の方法であって、標的の副鼻腔が篩骨洞であり、拡張による方法、およびこれらの副鼻腔の正常な連通経路を通じた前頭洞およびちょう形骨洞の両方を治療するための、方法およびツール。
53.前記標的の副鼻腔が上顎洞である、51番に記載の方法。
54.上記涙の経路の迂回が、鼻−涙嚢および涙管系の自然なポンピング機構を利用する、51番に記載の方法。
55.51番に記載の方法であって、前記手技が、蛍光透視鏡的誘導、断面画像化誘導、内視鏡誘導、触知性および指向性のフィードバックであって無誘導のもの、または上記の組み合わせを用いて、全身麻酔の有無にかかわらず、診療室での手技として行われ得る方法。
56.46番に記載の方法であって、外科用ツールを用いて、鼻−涙嚢および涙管と標的の副鼻腔との間の組織および骨を切断または切除する方法。
【発明を実施するための形態】
【0056】
「涙器」および「涙器系」という用語は、本明細書において交換可能に用いられて、眼球を潤滑するための涙液の産生および分泌、眼窩の涙液のリザーバへの涙液の封入、ならびに眼窩から鼻腔への涙液の排出を達成する、生理学的構成要素の集合を指す。涙器は、涙腺、涙液排出系および涙腺と涙液排出系との間に位置する涙液のリザーバを備える。涙液のリザーバは、眼瞼辺縁および結膜嚢を備える(涙湖と呼ばれることもある、下部の結膜円蓋における涙のプールを備える)。涙液排出系は、涙点、小管および鼻涙管(鼻涙管の頂部に位置するいわゆる涙嚢を含む)を備え、これを通って、余分な涙液が、ハスナーのバルブに、および鼻腔に排出される。
図1は一般には、涙器を示す。涙液は、産生され、涙腺102から分泌されて、眼窩内に位置する眼球104の表面を潤滑させる。涙液は、眼球104の上にコーティングを形成し、一般には、結膜嚢(下部のまぶた106、上部のまぶた108および眼球104(裏に結膜がある)の間の空間)内に含まれる。余分な涙液が、内眼角(眼の内側の角)の近傍に伝達され、涙点110を通じて涙小管112へ、および鼻涙管116の涙嚢114へ流れ出る。次いで、涙液は、ハスナーのバルブを通じて鼻涙管116から鼻腔内へ流れ出る。
【0057】
本明細書において用いる場合、涙器と副鼻腔との間の瘻孔とは、涙器と副鼻腔とを流体接続する、人工的に作製された通路を指す。副鼻腔は、前頭洞、上顎洞、篩骨洞およびちょう形骨洞を備えるが、これらは、それぞれ前頭骨、上顎骨、篩骨およびちょう形骨に含まれる空洞である。副鼻腔は、鼻腔内へ排出を行う。
図2は、前頭洞122、上顎洞124および篩骨洞126の位置を一般的に示す、ヒト頭部の略図である。ちょう形骨洞(図示せず)は、一般に、篩骨洞126の後ろに位置する。
図3は一般に、涙器系と副鼻腔との間の瘻孔に関して考えられる、いくつかの経路を示す。参照番号は、注記したものを除いて、
図1および
図2に示すものと同じ特徴を示す。
図3は、涙器の特徴に対する、前頭洞122、上顎洞124および篩骨洞126の一般的な近接性を示す。瘻孔経路のいくつかの例を、
図3に破線で示す。瘻孔経路の第一の例130は、眼窩から前頭洞への経路である。瘻孔経路の第二の例132は、眼窩から篩骨洞126への経路である。瘻孔経路の第三の例134は、眼窩から上顎洞124への経路である。瘻孔経路の第四の例136は、鼻涙管116の頂部の涙嚢114から篩骨洞126への経路である。瘻孔経路の第五の例138は、涙嚢114の下の位置の鼻涙管116から篩骨洞126への経路である。瘻孔経路の第六の例140は、涙嚢114の下の位置の鼻涙管116から上顎洞124への経路である。
図3に示される瘻孔経路の例は、一般的な図示の目的でしかなく、瘻孔が涙器の一部と対応する副鼻腔と接続するように形成され得る正確な位置を示すものではない。
図3には示されないが、ちょう形骨洞への瘻孔経路の例は、眼窩からちょう形骨洞、および鼻涙管116からちょう形骨洞への経路を備える。ちょう形骨洞に接続する瘻孔を形成することは一般に、篩骨洞に接続するように瘻孔を形成するほど好ましくない。この理由は例えば、後者の方がより簡便であり、かつ、篩骨洞と直接接続するからである。また、篩骨洞126または上顎洞124のいずれかに対して瘻孔を形成することは一般には、瘻孔から前頭洞122へ形成することより好ましく、1つの理由は、涙器系と篩骨洞126または上顎洞124のいずれかとの間の瘻孔は、瘻孔を通じた涙器系から対応する副鼻腔への涙液のドレナージを補助するために重力の力を借りるような方式で形成され得るということである。前頭洞は、一般に眼窩上に位置し、副鼻腔内への涙液の重力ドレナージと同じ方法では利点がない。しかし、重力ドレナージは、前頭洞からの流体のドレナージを有益に補助し得る。
【0058】
引き続き、
図3を参照する。瘻孔経路の第一、第二および第三の例である130、132および134は、結膜に浸透して、対応する副鼻腔へ結膜嚢内の涙液リザーバに直接接続する結膜下経路である。このような結膜下経路に沿う瘻孔は、結膜および(対応する副鼻腔が位置する)骨の隣接壁を通じた外科用ツール穿刺によって外科的に形成され得る。例えば、瘻孔経路130の第一の例に関しては、瘻孔は、結膜下で眼窩から前頭骨の壁を通って、前頭洞122へ通じる。例えば、瘻孔の経路の第二の例132による瘻孔は、結膜下で眼窩から篩骨の壁を通って篩骨洞126へ通じる。例えば、瘻孔経路の第三の例134による瘻孔は、結膜下で眼窩から上顎骨の壁を通って上顎洞124へ通じる。瘻孔の結膜下経路、例えば、瘻孔の経路の第一、第二および第三の例である130、132および134の経路は、一般に、アクセスが比較的容易である位置で形成されるため、好ましい。瘻孔の経路の第一、第二および第三の例である130、132および134の好ましい実施態様では、眼窩内へ開口する瘻孔の近位端は、
図3に示される涙丘142と半月襞144との間に位置する。
【0059】
引き続き、
図3を参照する。瘻孔経路の第四、第五、第六の例による瘻孔136、138および140は、鼻涙管116内の位置への近位端開口を有する。このような位置における瘻孔の形成は、涙点110および小管112を通じて鼻涙管116へアクセスするような、または鼻を通じて鼻涙管116へアクセスするような、涙器排出系への外科用ツールの挿入を必要とする。例えば、瘻孔経路の第四の例による瘻孔136は、涙点110の1つに挿入された穿刺装置(例えば、トロカールまたはトロカール/カニューレアセンブリ)によって、小管112の1つを通り、涙嚢114を横切って、瘻孔経路の第四の例136の位置で穴を穿刺するように形成され得る。別の例としては、瘻孔は、涙点110の1つに挿入されたガイドワイヤを用いて、小管112の1つを通り、涙嚢114へ、および鼻涙管116を下向きに通る、瘻孔経路の第四、第五および第六の例である136、138および140のうちの1つで形成され得る。このガイドワイヤを用いて、外科用ツールを係合し、かつ、この外科用ツールを鼻からハスナーのバルブ(図示せず)を通じて、鼻涙管116内の適切な位置までガイドして、その位置での外科手術の実施によって、所望の瘻孔を形成することを可能にしてもよい。
【0060】
図4から
図7は、インプラントデバイスの一実施形態を示す。
図4から
図7に示されるとおり、インプラントデバイス200は、近位端202および遠位端204(インプラントデバイス200の反対側の長軸方向端に対向して位置する)を有する。インプラントデバイス200は、近位端202にヘッド206を、およびこのヘッド206から遠位端204へ延びる導管208を備える。内部通路210は、近位端202から遠位端204に延びて、ヘッド206および導管208を通る。内部通路210は、近位端202および遠位端204で開口し、それによってインプラントデバイス200の長軸全体を通る通路がもたらされる。
図4に示される実施形態の内部通路210は、均一な環状断面(インプラントデバイス200の長さを横切る)を有する円筒状形状であり、その内部通路の幅は、断面の環の直径に等しく、インプラントデバイス200の長さに沿って均一である。インプラントデバイス200の長さは、近位端202と遠位端204との間でインプラントデバイス200に長軸方向に沿った最小距離であり、典型的には、近位端202から遠位端204の内部通路210の軸に沿った距離に等しい。インプラントデバイス200は、導管208の外側に複数のアンカー突起部212を備える。
図4から
図7に示される実施形態では、アンカー突起部212は、導管208の全外周に沿って各々が延びる、間隔の空いた外周リッジの形態である。アンカー突起部212の隣接する外周リッジは、導管208の外側上の陥凹214のエリアである。
【0061】
引き続き、
図4から
図7を参照する。インプラントデバイスが、瘻孔を通じて涙器を副鼻腔へ流体接続するようにインプラントされている場合、ヘッド206は、涙器中に配置
され、近位端202は、副鼻腔内に配置され、ここで導管208の少なくとも一部は、このインプラントデバイス200をアンカーするように瘻孔内の組織を係合するアンカー突起部212のうちの少なくとも1つ、および好ましくは2つ以上によって、瘻孔を通じて配置される。この方式でインプラントされた場合、内部通路210は、近位端202で涙器内へ、および遠位端204で副鼻腔内へ開口する。ヘッド206は、導管208に向かって配置されたヘッド206の側面上のフランジ状の組織係合表面216を有し、このフランジ状の組織係合表面216は、瘻孔の近位端に隣接する組織を係合して、インプランテーション後の瘻孔へインプラントデバイス200の近位端202が移動しないよう妨げるために有利に構成されている。このフランジ状の組織係合表面216の反対側のヘッド206の片側は、ヘッド206のフェイス表面218であり、このフェイス表面218は、インプラントデバイスがインプラントされる際、フランジ状の組織係合表面216によって係合される組織から離れて配置される。ヘッド206は、第一の寸法220および第二の寸法222を、フランジ状の組織係合表面216およびフェイス表面218の双方の上に有する。この第一の寸法220は、それぞれの表面の長さであり、かつ第二の寸法は、それぞれの表面の幅である。このような長さおよび幅の寸法はまた、主要寸法および小寸法を指す場合もある。表面216または218の第一の寸法220は、この表面の外側エッジ上のポイントの間の最大離隔距離に相当し、かつ表面216または218の第二の寸法222は、この表面の外側エッジ上のポイントの間の最大離隔距離(これは、第一の寸法を横切るライン上である)に相当する。好都合なことに、フェイス表面218およびフランジ状の組織係合表面216は、対応する外側エッジで作製され、その結果、対向する表面216および218は実質的に等しい長さおよび幅の寸法を有し得るが、これは必須ではない。第一の寸法220および第二の寸法222は、
図4から
図7に示される実施形態の場合のように、表面216および218が対応する形状を有する場合、一般にはそれぞれ、ヘッド206の長さおよび幅と呼ばれる場合がある。表面216および218が対応する形状を有さない場合、ヘッドの長さおよび幅の寸法は、表面216および218の長さおよび幅の寸法のうち1つ以上と異なる。このヘッド206は、表面216と218との間の奥行き寸法223を有する。この奥行き寸法223は、ヘッド206が、インプラントデバイス200が瘻孔の近位端に隣接する組織を係合するフランジ状の組織係合表面とインプラントされる際、瘻孔の近位端に隣接する薄い形状を有するように、好ましくは、小容積に保持されるべきである。
【0062】
引き続き、
図4から
図7を参照する。導管208は、導管208の長さを横切るアンカー突起部212の最大程度によって規定されるような導管208の最大外側幅である第一の外側幅224を有する。導管208は、陥凹214のエリアの最も陥凹した部分の間で規定される導管208の最小外側幅である第二の外側幅226を有する。
図4から
図7に示される実施形態では、アンカー突起部212の高さは、導管208の第一の外側幅224と第二の外側幅226との間の差の二分の一に等しい。
図4から
図7に示されるヘッド206の構成では、このヘッドの第一の寸法220は、導管208の第一の外側幅224および第二の外側幅226の両方よりも大きいが、このヘッドの第二の寸法222は、この導管208の第二の外側幅224に対してほぼ等しい。
【0063】
引き続き、
図4から
図7を参照する。アンカー突起部212は、陥凹214のエリアに隣接して位置するリッジの底で最大である幅を有する外周リッジの形態であり、その幅は、陥凹エリア214から離れて位置するリッジ212の頂部で最小にまで先細にする。アンカー突起部の他の構成が可能であり、インプラントデバイス上の全てのアンカー突起部は、同じサイズ、形状または高さである必要はない。同様に、陥凹のエリアは、異なる構成を有してもよく、あるインプラントデバイス上の全ての陥凹が同じサイズまたは構成である必要はない。インプラントデバイス200は、ヘッド206の奥行き223と、導管208の長さとを含む長さ228を有する。アンカー突起部212は、導管208の長軸部分230上である。
【0064】
ここで、
図8を参照する。ノブまたはボタン、およびアンカー突起部242に隣接する陥凹244の形態で、アンカー突起部242を有するインプラントデバイスの導管240の別の実施形態が示される。導管240は、アンカー突起部242によって規定される、第一の外側幅246、および陥凹244のエリアによって規定される(第一の外側幅よりも)小さな第二の外側幅248を有する。アンカー突起部のための別の構成の例は、
図9に示される。
図9に示すように、インプラントデバイスの導管250は、アンカー突起部252および陥凹254のエリアを、導管250の外部表面上に有する。アンカー突起部252は、導管250の長軸方向の長さのある部分に沿って延びる、連続らせん状リッジの形態である。導管250は、アンカー突起部254によって規定される第一の外側幅256、および陥凹254のエリアによって規定される、(第一の外側幅よりも)小さな、第二の外側幅258を有する。
図4から
図7に示される実施形態と同様に、
図8および
図9に示される導管の実施形態は、それぞれの導管の大きな方の外径と小さな方の外径との間の差の半分に等しいアンカー突起部の高さを有する。
図8および
図9の実施形態から理解されるとおり、第一の外側幅は、アンカー突起部を含む外被容積の幅として決定される。
【0065】
図10は、アンカー突起部の頂部に向かうアンカー突起部の基部からの方向で先細りする幅を備える、アンカー突起部について、いくつかの形状の例を示す。
図10は、各々が頂部よりも基部で大きな幅を有する、アンカー突起部構成の断面(A−Dの記号で表示)を示す。アンカー突起部の高さ(H)および基部の幅(W)は、
図10に示す。
図10に示される断面は、例えば、リッジ(例えば、外周リッジ、らせん状リッジ)、ノブ突起部または他のアンカー突起部型であってもよい。
図10のアンカー突起部A−Dの全てが、アンカー突起部の右側のアンカー突起部の先行側、および左側の後続側で示される。先行側とは、アンカー突起部に接触する導管が、インプランテーションのために瘻孔に挿入される場合、最初に瘻孔に進入する側を意味する。後続側とは、先行側に対向する側であって、先行側よりも後に瘻孔に進入する側を意味する。理解されるとおり、瘻孔への挿入際に、アンカー突起部を含む組織によってアンカー突起部へ加えられる力は、アンカー突起部に対して、アンカー突起部の構築の材料で許容される程度まで応力を与え、このような応力は、後続側に向かう方向でアンカー突起部を変形する傾向がある。このような変形は、挿入を補助し、一般にはある程度まで好ましい。構造A−Dの異なる形状は、瘻孔内への導管の挿入および瘻孔からの導管の除去の相対的な容易性に影響する。構造Aは、瘻孔への挿入および瘻孔からの除去を等しく容易にするように設計されているが、構造B−Dの各々は、瘻孔への挿入に関してさらに容易であり、かつ瘻孔からの除去が困難となるように設計されている。構成BおよびCは、瘻孔へのさらに容易な挿入およびさらに困難な除去を促進する方式に角度付けされている。構成Dは、後続側に組織を係合して瘻孔からの除去を挿入よりも困難にさせるように鉤付きの末端を備えている。
【0066】
図11は、インプラントデバイスのヘッドに関するいくつかの異なる例の構成(E−Hの記号で表示)を示す。各々のヘッド構成に関して、ヘッドの長さ寸法(L)および幅寸法(W)を示す。構成E−Hのヘッドは、フェイス表面(インプラントされた際、瘻孔と離れて面する表面)を末端上で示しており、かつインプラントデバイスの近位端で内部通路の開口を示す。ヘッド構成E−Hの各々に関して、フェイス表面の長さおよび幅、ならびに対向するフランジ状の組織係合表面は同じである。
図11に示されるとおり、ヘッド構成Eは、環状の外側エッジを有し、従って、等しい長さおよび幅の寸法を有する。ヘッド構成Fは、
図4から
図7を参照して記載されるインプラントデバイスの実施形態で示されるものと同様に、幅の寸法に対して細長い長さ寸法を有する。ヘッド構成Gは、構成Fと同様に、幅の寸法に対して細長い長さ寸法を有するが、構成Gについては、インプラントデバイスの近位端で開口する内部通路開口は、環状断面ではなく、構成EおよびFについての場合と同様に楕円形の断面を有する。ヘッド構成Hは、幅の寸法よりも有意に大き
な長さの三日月形のヘッドを有する。構成Hの内部通路もまた、楕円形の断面で示される。幅よりも長さが長い構成F−Hは、有利には、半月襞と涙丘との間で眼窩内へ開口する瘻孔での使用のために構成され、ここでヘッドの長さ寸法は一般に、眼窩の底から眼窩の頂部に向かって眼球に沿った方向に延び、そして構成Hに関しては、三日月の凹面は、眼球に向けて配置され、三日月の凸側は、涙丘に向けて配置されている。
【0067】
図12および
図13は、インプラントデバイスの別の実施形態を示す。
図12および
図13に示すとおり、インプラントデバイス300は、近位端302および遠位端304を有し、ここでヘッド306は、遠位端304に位置しており、導管308が、ヘッド306から遠位端304に延びる。導管308は、円筒状形状を有する、近位端302および遠位端304で開口する内部通路310を備える。導管310は、アンカー突起部312を備える外面を、先細りする幅を有する外周リッジ、およびアンカー突起部312に隣接する陥凹314のエリアの形態で有する。ヘッド306は、幅寸法318よりも有意に長い寸法の316を有する細長い形状を有する。
図12に示されるとおり、フランジ状の組織係合表面320は、インプラントされた場合、インプラントデバイス300の回転を妨げる方式で組織に対して定着することを補助する構成(中央ラインから延びる傾斜の半分)を有する。フェイス表面322は、インプラントデバイス300がインプラントされる際、ヘッド306に対して薄い形状をもたらす平坦な表面である。ヘッド306の構成は、眼窩内への瘻孔の開口が、半月襞と涙丘との間に位置する、眼窩からの結膜下瘻孔経路での使用のための半月襞と涙丘との間の位置に、よく適する。長さ寸法316と幅寸法318は、フェイス表面322とフランジ状の組織係合表面320の各々の長さおよび幅に相当する。
【0068】
図14は、涙丘350と半月襞352との間で、結膜下で形成される瘻孔を通る導管を有するインプラントデバイスの例を示し、このインプラントデバイスのヘッド354について例示的な位置を示している。ヘッド354は、例えば、
図4から
図7に示されるヘッド構成、
図11に示されるヘッド構成F−Hのうちの1つ、または
図12および
図13に示されるヘッド構成のような、細長い構成で示される。
【0069】
図15は、インプラントデバイスの別の実施形態を示す。
図15に示すとおり、インプラントデバイス400は、近位端402および遠位端404を有する。このインプラントデバイス400は、近位端402にヘッド406を、およびこのヘッド406から遠位端404に延びる導管408を備える。導管408は、アンカー突起部412を有する外面と、アンカー突起部412に隣接する陥凹414のエリアとを有する。内部通路410(破線で示される)は、近位端402から遠位端404に延びる。導管408の長軸部分は、導管408の壁を貫通する開口部415を備え、内部通路410から導管408の外側への流体連通を提供する。開口部415は、インプラントデバイス400がインプラントされる際、副鼻腔内の異なる位置へ内部通路から出すための、薬物処方物、洗浄溶液または他の治療組成物の経路を提供する。インプラントデバイス400がインプラントされる際、アンカー突起部412のうち少なくとも1つ以上が、固定のために組織を係合するために瘻孔内に位置し、開口部415の少なくともいくつか、および好ましくは全てが副鼻腔の内側の瘻孔の遠位端を越えて配置される。
図15に示される構成は、導管408が、副鼻腔の多数の腔を通じて延びる場合の状況、または導管408が1つの副鼻腔から別の副鼻腔に延びる場合の状況に特に有利である。
図15に示される実施形態は、開口部415が配置される導管408の長軸部分上にアンカー突起部412を有さない。別の構成として、開口部415を有する導管408の長軸方向部分は、アンカー突起部412の構成と同じ構成の、または異なる構成の、アンカー突起部を備え得る。
【0070】
図16は、外科用ツールの一実施形態を示す。
図16に示されるように、外科用ツール500は、例えば、
図4から
図15のいずれかに関して上で記載した、ヘッド504およ
び導管506を有するインプラントデバイス502を備える。インプラントデバイス502は、キャリアー510に装着される。キャリアー510は、外科用ツール500の近位端に隣接するハンドル511を備える。このキャリアー510は、ハンドル511に接続された作業部材512を備える。作業部材512は、ハンドル511からインプラントデバイス502の内部通路を通じて、外科用ツール500の遠位端まで延びる。作業部材512の遠位端は、遠位先端部514である。ハンドル511は、構築物の任意の適当な材料、例えば、プラスチックまたは金属組成物からできていてもよい。作業部材512は、例えば、医療等級のステンレス鋼のような、医療等級の金属組成物からできていてもよい。一般には、部材が本明細書において「作業部材」と呼ばれる場合、この用語は、この部材の少なくとも一部が、この部材を備えるツールが、例えば、瘻孔の形成の間に用いられる場合、または瘻孔内かもしくは瘻孔を通じて何らかの手技を行う間に用いられる場合、瘻孔内にかもしくは瘻孔を通じて配置されるように設計されていることを示す。作業部材のいくつかの例としては、種々の中空部材(例えば、皮下注射針、カニューレ)および種々の中実部材(例えば、トロカール、スタイレット、拡張部材、インプラント送達部材)が挙げられる。このような作業部材は、瘻孔内かまたは瘻孔を通じて、この部材が瘻孔内の組織に接触する方式で配置されても、または瘻孔中の組織に接触しないような方式で、配置されてもよい(例えば、瘻孔を通るインプラントデバイスの通路の内側)。
【0071】
引き続き、
図16を参照する。インプラントデバイス502は、インプラントデバイス502の内部通路を通じて配置される作業部材512によってキャリアー510上に装着される。インプラントデバイス502の内部通路を通じて配置される作業部材512の幅は、有利には、それらの間の緊密な嵌合のために、インプラントデバイスの内部通路よりも少しだけ小さいようにサイズ決めされてもよく、ただし、その嵌合は、インプラントデバイス502が、遠位先端部514に向けて作業部材512を下にスライドすることが難しいほどには緊密ではない。
【0072】
引き続き、
図16を参照する。外科用ツール500は、涙器系と副鼻腔との間で瘻孔を形成するために、および瘻孔内のインプラントデバイス502のインプランテーションを容易にするために用いられ得る。外科医は、ハンドル511を把持することによって外科用ツール500を操作し得る。外科医は、標的の副鼻腔に対して瘻孔が形成されるべき涙器内の位置へ遠位先端部514を前進させ得る。次いで、外科医は、涙器と標的の副鼻腔とを隔てる組織に対し、遠位先端部を強制的に貫通させて、瘻孔を形成するようにしてもよい。瘻孔を通じて配置される作業部材512の先行部位を考慮すれば、外科医は、インプラントデバイス502を、作業部材512に沿って遠位先端部514の方へ、インプラントデバイス502が、瘻孔および涙器における瘻孔の近位端に隣接する組織に対して配置されたヘッド506のフランジ状の組織係合表面を通じて配置された導管506でのインプランテーションのために配置されるまで、スライドしてもよいし、またはキャリアーは前進させられ続けて、導管506を瘻孔に押し入れてもよい。インプラントデバイス502が、インプランテーションのために配置された後、次に外科医はハンドル504を操作して、作業部材512を後退させ、インプラントデバイス502の内部通路から作業部材を引き抜いて、インプラントデバイス502からキャリアー510を完全に切り離し、瘻孔を通じて副鼻腔内へ延びる導管506でインプラントされたインプラントデバイス502を残す。
【0073】
引き続き、
図16を参照する。作業部材512は、中実部材(例えば、トロカール、スタイレット)であってもよく、または中空部材(例えば、中空針、切断カニューレ)であってもよい。作業部材512が、遠位先端部514で開口する中空部材であるならば、組織は、外科用ツール500を用いて瘻孔を形成する場合、作業部材512の中空内部にコアリングされ収集される傾向にある。作業部材512が中実部材であるならば、組織のコアリングは生じないはずである。多くの場合、コア組織でない中実部材である作業部材5
12を有することが好ましい場合がある。なぜならインプラントデバイスは、組織コアリングなしで形成される瘻孔内での方が、より確実に保持される傾向にあるからである。
図16で示される外科用ツール500は、眼窩から結膜下で副鼻腔への瘻孔を形成するように、特に、半月襞と涙丘との間の眼窩中のある位置で瘻孔が形成される場合、特によく適合される。
【0074】
図17および
図18は、別の外科用ツールを示す。
図17は、外科用ツール520のいくつかの特徴の展開図を示し、
図18は、外科用ツール520が完全に組み立てられた場合の同じ外科用ツール520を示す。
図17に示すとおり、外科用ツール520は、ヘッド524および導管526を有するインプラントデバイス522を、例えば、
図3から
図16のいずれかに関して上で記載したように備える。外科用ツール520は、2つのピース、すなわち、第一のキャリアーピース530と第二のキャリアーピース532とを有するキャリアーを備える。第一のキャリアーピース530は、シリンジハブ534(例えば、ルアー接続を生じるため)と、ハブ534と接続された中空作業部材536(例えば、中空針、カニューレ)とを有する。この中空作業部材536は、遠位先端部538を有する。第二のキャリアーピース532は、ハンドル540と、このハンドル540と接続された中実作業部材542(例えば、スタイレット、トロカール)とを有する。中実作業部材542は、遠位先端部544を有する。組み立てられた場合、外科用ツール520は、ハブ534の内部を通じて、かつ中空作業部材536の中空内部を通じて挿入された中実作業部材542を備える。組み立てられた場合、第二のキャリアーピース532のハンドル540は、ハブ534の内部に挿入された係合部材544でハブ534の遠位に配置される。理解されるとおり、ハブ534、係合部材544およびハンドル540のうちの少なくとも1つについての特徴は、組み立てられた際、第一のキャリアーピースおよび第二のキャリアーピースの着脱可能な係合を整列させるか、および/または可能にするキーイング特徴および係合特徴を備えてもよい。
図18は、完全に組み立てられた様を呈する、同じ外科用ツール520を示す。
図18に示すとおり、第一のキャリアーピース522と第二のキャリアーピース532は、中空作業部材536の中空内部を通じて配置された中実作業部材542と係合される。
【0075】
引き続き、
図17および
図18を参照する。外科用ツール520を用いて、涙器と副鼻腔との間の瘻孔を形成してもよい。第一および第二のキャリアーピース530および532の遠位先端部538および544は、意味合い的にはコア組織ではない遠位先端部を形成する。外科医は、ハンドル540を把持して、遠位先端部を涙器の位置に前進させ、ここで瘻孔が形成され(例えば、眼窩内で、鼻涙管内で)、この遠位先端部が次に、組織から強制的に副鼻腔へ貫通し、標的の副鼻腔に瘻孔を形成し得る。瘻孔を通じて配置される中空作業部材536の先行部分を考慮すれば、インプラントデバイス522は、中空作業部材536を下に、インプランテーションのための位置までスライドされてもよく、ここで導管526は、瘻孔を通じて配置され、ヘッド524は、瘻孔の近位端に隣接して配置されるか、または中空作業部材536は、導管526を瘻孔内へ押すように、さらに前進させられ得る。次いで、中空作業部材536は、インプラントデバイス522から後退させられ、切り離されて、インプラントされた位置にインプラントデバイス522を残してもよい。
【0076】
引き続き、
図17および
図18を参照する。中空作業部材536は、副鼻腔から流体を吸引する工程または副鼻腔内へ流体を導入する工程を包含する、補助的医療手技の実施を容易にする。例えば、インプランテーションのための適切な位置にインプラントデバイス522を配置する前後に、第二のキャリアーピース532を、第一のキャリアーピース534から切り離して、中空作業部材536の中空内部から中実作業部材542を取り出す。次いで、中空作業部材536は、副鼻腔からの流体の吸引または副鼻腔内への流体の注入のために利用可能である。ハブ534は、シリンジの対応する接続構造と係合されても
よく、このシリンジは、副鼻腔からシリンジ内へ流体を吸引するために、またはシリンジから流体を副鼻腔内へ注入するために操作され得る。副鼻腔へ注入され得る流体としては、例えば、副鼻腔炎の治療のために薬物ボーラスを注入するための、薬物を含有する洗浄流体または治療組成物が挙げられる。本明細書において用いる場合、「流体」としては、流動可能な組成物が挙げられ、この組成物としては、流体媒体中で分散または懸濁される固体材料を有し得る組成物が挙げられる。インプラントデバイスがインプランテーションのために適切に配置された後、および任意の所望の補助的医療手技を行った後、第一のキャリアーピースは、後退させられて、中空作業部材536をインプラントデバイス522の内部通路から切り離して、インプラントデバイス522をインプラントとして残してもよい。
図19は、シリンジ550と接続された外科用ツール500の第一のキャリアーピース536を示す。
【0077】
ここで、
図20から
図25を参照する。瘻孔を形成すること、およびインプラントデバイスをインプラントすることを包含する、外科的手技のいくつかの追加的な例、ならびにそれらと使用するための外科用ツールのいくつかの例がここで記載される。
【0078】
図20では、外科用ツールは、進入ツール600の形態であって、涙丘142と半月襞144との間の組織を通じて瘻孔を作製するプロセスにおいて示している。解剖部分の番号付けは、
図1および
図3と同じである。瘻孔は、眼窩中の結膜嚢と篩骨洞126との間の組織を通じて形成される。瘻孔の経路は、
図3に示されるように、一般的な瘻孔経路132と一致している。進入ツール600は、第一のピース602および第二のピース604を備える。第一のピース602は、中空作業部材606とハブ608とを備える。第二のピース604は、中空作業部材606の中空内部を通じて配置される中実作業部材(図示せず)を備える。第一のピース602の中空作業部材606の遠位先端部分および第二のピース604の中実作業部材の遠位先端部分は、組織を通じた挿入に適している形状を有する遠位先端部610を形成して、瘻孔を結膜嚢から篩骨洞126へ形成する。第二のピース604は、手で操作可能なハンドル612を備える。ハブ608は、たとえばルアー接続を通じて、シリンジまたは他の流体操作デバイスとの接続のために構成され得る。ハンドル612は、ハブ608に対して後退させられ、中空作業部材606の内部から中実作業部材が取り出されて、第二のピース604が第一のピース602から切り離され得る。
図20に示されるとおり、遠位先端部610は、涙丘142と半月襞144との間の結膜嚢の位置から前進させられて、結膜嚢と篩骨洞126との間で瘻孔が形成された。示したとおり、瘻孔は、涙丘142、小管112および鼻涙管116の後ろを通って、篩骨洞126にアクセスする。進入ツール600の第一のピース602は、中空作業部材606が特定の距離を越えて組織を通って前進しないように妨げるカラーストップ614を備える。第一のピース602および第二のピース604は、例えば、
図17のツールアセンブリ520の第一のキャリアーピース530および第二のピース532と実質的に同じであってもよいが、ここではカラーストップ614が追加されており、その上にインプラントデバイスは装着されていない。
【0079】
進入ツール600を用いて、最初に篩骨洞126まで瘻孔を形成した後、次に、第二のピース604が、第一のピース602から切り離されて、ガイドワイヤが中空作業部材606を通じる内部通路を通って挿入され得る。
図21は、第一のピース602を示しており、これは第二のピース604の切り離し後、ならびに第一のピース602を通じたガイドワイヤ620の挿入後であって、篩骨洞126における第一のピース602の遠位端から延びている。ガイドワイヤ620の挿入後、第一のピース602は、瘻孔から後退させられ、瘻孔から取り出されてもよく、瘻孔を通してガイドとして適所にガイドワイヤ620を残す。
図22は、第一のピース602の取り出し後の瘻孔を通じて配置されたガイドワイヤ620を示す。ガイドワイヤ620はこの際、篩骨洞126内へ、瘻孔へおよび瘻孔を通じて追加的ツールをガイドするために利用できる。
【0080】
ここで、
図23を参照する。ガイドワイヤ620は、インプラントツール624の形態で外科用ツールをガイドするために用いられた。インプラントツール624は、中空作業部材626と手で操作可能なハンドル628とを備える。インプラントツール624は、ハンドル628および中空作業部材626を通る内部通路を備える。
図23に示されるとおり、ガイドワイヤ620は、インプラントツール624の内部通路内を通り抜けて、中空作業部材626を瘻孔へ、かつ瘻孔を通じて、および篩骨洞126内へガイドした。インプラントツール624はまた、中空作業部材626上に装着されたインプラントデバイス630を備える。
図23は、インプラントデバイス630の遠位端が結膜嚢へ開口する瘻孔の近位端の近傍であるポイントまで前進したインプラントツール624を示す。この位置から、インプラントデバイス630は、瘻孔内に前進させられてもよく、ここでインプラントデバイス630のヘッドは、結膜嚢中の結膜に隣接して位置しており、インプラントデバイス630の遠位端は、篩骨洞626内に延びる。インプラントツール624は、例えば、
図16における外科用ツール500について示されるような設計のツールであってもよく、ここでは、作業針518について中空針がある。インプラントツール624のインプラントデバイス630は例えば、
図4から
図19のいずれかに関して記載されたような特徴を有する。引き続き、
図23を参照する。ツール624の中空作業部材626は好ましくは、尖っていない先端部を備える。ハンドル628および中空作業部材626は、インプラントデバイス630のキャリアーを形成する。ハンドル628は格納されて、中空作業部材626は、インプラントデバイスが瘻孔を通じたインプランテーションのために適切に位置決めされた後に、インプラントデバイス630から切り離され得る。
図23に示されるようなインプラントツール624の構成のための代替法としては、インプラントツール624は、他の流体操作デバイスのシリンジとの接続(例えば、ルアー接続による)のためのハブを備えるように構成され得る。例えば、インプラントツール624は、
図21に示される第一のピース602の構成と同様の方式のハブで、およびインプランテーションのために適切に装着されたインプラントデバイスで構成されてもよい。インプラントツール624の構成に対する別の変化形として、作業部材626は、カラーストップ(例えば、
図21に示されるような)または他の装着補助具と嵌合されてもよく、これに対してインプラントデバイス630が配置されて、インプラントデバイス630の近位端とハンドル628との間のある程度の追加的な距離が得られ得る。
図24は、インプラントされた場合、およびインプラントツール628の中空作業部材626の切り離し後のインプラントデバイス630を示す。インプラントされた場合、インプラントデバイス630の近位端のヘッド632は、涙丘142と半月襞144との間の眼窩内の結膜嚢における結膜に隣接して位置し、インプラントデバイス630の遠位端634は、副鼻腔626に位置する。アンカー突起部636のいくつかは、瘻孔内に配置されて、組織を係合して、インプラントデバイス630のアンカーを補助する。
【0081】
図20から
図24を参照して記載される手技によって、進入ツール600の作業部材606が、より大きな直径の作業部材626を有して、インプラントデバイス630に適合するために適切なサイズの瘻孔を形成することが可能になり、このインプラントデバイス630が次に、瘻孔を形成するために用いられる作業部材606よりも小さな直径を有する場合が有利であり得る、作業部材626に対して担持されるインプラントデバイス630を有するインプラントツール624を用いて別の工程でインプラントされる。代替法として、インプランテーションのため望ましいサイズまで瘻孔を拡張する中間段階は、進入ツール600での最初の瘻孔形成と、インプラントツール624を用いるインプラントデバイス630のインプラントとの間で行われ得る。
図25は、中空作業部材642と、手で操作可能なハンドル644とを有する拡張ツール640の形態の外科用ツールを示す。作業部材642は、拡張ツール640を通じて内部通路を通るガイドワイヤ620によってガイドされ、瘻孔を通じて配置される。
図25に示されるように、作業部材642は、作業部材642に結合されるストップカラー646が、瘻孔の近位端に隣接する結膜嚢に
おいて結膜組織を係合したポイントまで前進させられた。この代替的なインプランテーションに関しては、拡張ツール640の中空作業部材642は、
図20および
図21に示される進入ツール600の中空作業部材606よりも大きな直径を有する。従って、拡張ツール640の中空作業部材642は、瘻孔を、インプラントデバイス630のさらに容易な挿入に適合する望ましいサイズまでさらに広げる。示される拡張の中間工程は必要ないが、これによって、瘻孔の最初の形成の間の、より小さな直径の作業部材606の使用が可能になる。最初に瘻孔を形成するための作業部材606に関してさらに小さな直径を用いることで、この手技を行う外科医にとって良好な可視性が提供され、および手技管理が可能になる。作業部材642は好ましくは、尖っていない先端部を備えてもよい。
【0082】
長期間にわたって副鼻腔内の医療処置または医療手技の実施を可能にするために、ヒトへ副鼻腔へのアクセスを提供するための方法では、外科的に形成された永続開存性の瘻孔を、ヒトの涙器と副鼻腔との間で創出してもよい。外科的に形成されるとは、瘻孔が、外科手術によって意図的に形成される組織を通じた人工的な通路であることを意味する。例えば、瘻孔は、トロカール、スタイレット、針またはカニューレを用いて形成され得る。この瘻孔は、
図16から
図19のいずれかを参照して記載されるような外科用ツールによって形成され得る。「永続開存」とは、瘻孔が、長期間にわたって自然な組織修復機構によって閉鎖することに耐性を有し、かつ開口(開存)を保持して、長期間にわたって副鼻腔へのアクセスを提供することを意味する。長期間とは、任意の所望の医療処置または医療手技を、瘻孔を通じて行うために十分な任意の期間であり得る。長期間とは、例えば、少なくとも7日、少なくとも14日、少なくとも30日、少なくとも180日、またはそれ以上であり得る。長期間とは、永続的であってもよい。
【0083】
瘻孔は、種々の技術によって長期間にわたって永続開存として維持され得る。瘻孔開存性を維持するための1例として、インプラントデバイスを、瘻孔を通じて配置して、瘻孔を閉鎖から防いでもよく、インプラントデバイスは、瘻孔を通じて副鼻腔内へのアクセスを提供するための内部通路を備えてもよい。副鼻腔へのアクセスがもはや必要ない場合、インプラントデバイスを取り出し、組織を修復させて、瘻孔を閉鎖してもよい。このインプラントデバイスは、例えば、
図4から
図19のいずれかに関して記載されるような構成を有してもよいし、または異なる構成を有してもよい。瘻孔の開存性を維持するめの別の例としては、瘻孔は、比較的大きな直径で、好ましくはスパッと切れた切り口で最初に形成され得る。大きくスパッと切れた穴には、自然に開存性を保持する傾向があり、少なくとも十分な期間、修復しない。瘻孔の比較的大きな直径は、例えば、上記のように、少なくとも2ミリメートル以上であってもよい。瘻孔がこのような大きな直径で形成される場合、瘻孔は好ましくは、鼻涙管のある位置で形成される。瘻孔開存性を維持するための別の例としては、瘻孔が形成された後、瘻孔に隣接する組織は、瘻孔を閉鎖する組織修復に対して機械的な妨害を形成するように機械的に処置され得る。機械的な処置とは、例えば、瘻孔に隣接する組織を縫合する工程、または瘻孔に隣接する組織をステープルして、瘻孔を閉鎖する組織修復を阻害するような方式で、組織を機械的に保持する工程を包含し得る。瘻孔開存性を維持するための別の例としては、瘻孔に隣接する組織は、例えば、抗肉芽形成剤または抗瘢痕化剤(例えば、ステロイド、マイトマイシンC)での処置のような、天然の組織修復および瘻孔の閉鎖を阻害するために有効な物質(例えば、薬物)で処置されてもよい。
【0084】
種々の医療処置および医療手技を、瘻孔が永続開存していようがいまいが、涙器と副鼻腔との間で形成される瘻孔を通じて行ってもよい。1つ以上の医療デバイスが、瘻孔を通じて副鼻腔内に挿入され得る。例えば、中空作業部材(例えば、中空針、カニューレ)は、瘻孔を通じて副鼻腔内に挿入されて、これによって副鼻腔からの治療処方物(例えば、薬物処方物、洗浄流体)の流体の吸引、または副鼻腔への治療処方物の注入が可能になり得る。別の例としては、治療処方物(例えば、薬物処方物、洗浄流体)が、瘻孔を通じて
、涙器系からの自然な流れによって副鼻腔内へ伝達され得る。治療処方物は、瘻孔を通じて、涙器から、および副鼻腔内へ自然に流れるように、眼の近傍に(例えば、点眼剤として)投与され得る。瘻孔は、永続開存性の瘻孔であってもよいが、そうである必要はない。例えば、医療デバイスの導管は、涙器から組織を通じておよび副鼻腔内へ挿入され、流体は、導管を通じて吸引されてもよいし、または導管から注入されてもよく、次いで、この導管が取り出されて、導管の挿入によって形成される瘻孔が迅速に修復することが可能になり得る。このような導管は、例えば、皮下注射針であっても、またはカニューレ(例えば、シリンジ、点滴システム、または他の流体注入/吸引システムに接続される)であってもよい。瘻孔は、針またはカニューレを含む部材の挿入によって形成されてもよく、導管の除去後に自然に修復して、急速に閉鎖し得る。例えば、瘻孔は、皮下注射針の挿入によって形成されてもよく、流体は、皮下注射針を通じて注入または吸引されてもよく、そして皮下注射針は、瘻孔が修復することを可能にするために取り除かれてもよい。別の例としては、瘻孔は、トロカール/カニューレの組立によって形成されてもよく、次いでトロカールが取り除かれてもよく、カニューレ(例えば、流体注入または吸引)を通じて医療手技が行われ、次いでカニューレが取り除かれて、瘻孔が修復することが可能にされてもよい。別の例としては、瘻孔は、切断カニューレ、カニューレを通じて行われる医療手技(例えば、流体注入または吸引)によって形成されてもよく、次いでカニューレが取り除かれて、瘻孔が修復されることが可能にされてもよい。
【0085】
外科的に作製された、永続開存性の瘻孔は、副鼻腔に対して涙液(涙)を伝達するために配置されることが有利である場合がある。涙器からの涙液は、副鼻腔内へ流れ出すことが可能にされ得る。好ましいインプランテーションでは、外科的に創出された、永続開存性の瘻孔は、眼窩または鼻涙管のいずれかから、篩骨洞または上顎洞のいずれかに対してのものであって、眼窩からの瘻孔経路であることがさらに好ましい。
【0086】
本発明の前述の考察およびその異なる側面は、例示および説明の目的のために示した。前述の内容は、本明細書に具体的に開示される形態(1または複数)にのみ本発明を限定する意図ではない。結果として、上の技術と対応する変更および改変、ならびに関連の分野の技術または知識は、本発明の範囲内である。本明細書において上記した実施形態はさらに、本発明を行うために公知のベストモードを説明して、他の当業者が本発明を利用することを、このようなまたは他の実施形態において、および本発明の特定の適用または用途によって必要とされる種々の改変によってできるようにする意図である。添付の特許請求の範囲は、先行技術によって可能になる程度まで別の実施形態を含むものと解釈されるものとする。本発明の詳細な説明は、1つ以上の可能な実施態様ならびに特定の変更および改変の詳細な説明を含んだが、他の変更および改変は、本発明の範囲内であり、例えば、同様に、本開示を理解した後では、当該分野の技術および当業者の知識の範囲内であり得る。特許請求された範囲に対して、代替の、交換可能な、および/または等価な構造、機能、範囲または工程を含んで、可能な程度まで別の実施形態を含む権利を、このような代替の、交換可能な、および/または等価な構造、機能、範囲または工程が本明細書に開示されるか否かにかかわらず、ならびに任意の特許可能な主題を公的に捧げる意図はなしに、得るものとする。さらに、任意の開示された実施態様に関して記載または特許請求される任意の特徴は、任意の他の実施態様(1または複数)の1つ以上の任意の他の特徴との任意の組み合わせで、その特徴が技術的に必ずしも不適合ではない程度まで、組み合わされてもよく、全てのこのような組み合わせが本発明の範囲内である。
【0087】
「含んでいる」、「含有している」、「包含している」および「有している」という用語ならびにこれらの用語の文法上の変化形は、このような用語の使用が、いくつかの条件または特徴の存在を示すが、任意の他の条件または特徴の存在を排除するものではないという点で、包括的であり、非限定的であるものとする。「含んでいる」、「含有している」、「包含している」および「有している」という用語、ならびにこれらの用語の文法上
の変化形の使用は、1つ以上の構成要素、下位構成要素または材料の存在について述べる場合、また、この「含んでいる」、「含有している」、「包含している」または「有している」という用語(またはこのような用語の変化形)が場合によっては、「本質的に〜からなる」または「〜からなる」または「〜のみからなる」という任意の狭義の用語(またはこのような狭義の用語の適切な文法的変化)によって置き換えられる、さらに具体的な実施形態を包含し、かつ開示するものとする。例えば、言及した要素(1または複数)を何物かが「含む」と言うことはまた、言及された要素(1または複数)「から本質的になる」もの、および言及された要素(1または複数)「からなる」ものの、さらに具体的な狭義の実施形態を包含しかつ開示するものでもある。種々の特徴の例は、例示の目的のために提供され、「例」、「例えば」などの用語は、限定されておらず、任意の特定の例に対して特徴(1または複数)を限定すると受け取られるべきでもなく、解釈されるべきでもない、例示的な実施例を示す。「少なくとも」という用語の後に数が続けば(例えば、「少なくとも1つ」)、その数またはその数よりも大きな数を意味する。「少なくとも一部分」という用語は、全てまたは全体未満の一部分を意味する。「少なくとも一部」という用語は、全てまたは全体未満の一部を意味する。