【実施例】
【0055】
以下、図面を参照しながら、自律神経機能評価装置及びコンピュータプログラムの実施例について説明する。尚、以下では、自律神経評価装置10を備える自律神経機能評価システム1について説明を進める。
【0056】
(1)自律神経機能評価システム1の構成
図1を参照して、本実施例の自律神経機能評価システム1の構成について説明する。
図1は、本実施例の自律神経機能評価システム1の構成を示すブロック図である。
【0057】
図1に示すように、本実施例の自律神経機能評価システム1は、被験者となる人間等の生体900の自律神経機能を評価するための評価試験を行うシステムである。自律神経機能評価システム1は、自律神経機能評価装置10と、血流波形出力装置20と、ディスプレイ30と、呼吸検出装置40とを備える。
【0058】
自律神経機能評価装置10は、制御部11と、「検出手段」の一具体例に相当する算出部12と、「指示手段」の一具体例に相当する指示出力部13と、「評価手段」の一具体例に相当する評価部14とを備えている。尚、制御部11、算出部12、指示出力部13及び評価部14は、例えば専用のICチップ等によって物理的に実現されてもよい。或いは、制御部11、算出部12、指示出力部13及び評価部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)上で動作するソフトウェアによって論理的に実現されてもよい。
【0059】
制御部11は自律神経機能評価装置10全体の動作を制御する。
【0060】
算出部12は、生体900の血流状態を算出する。このとき、算出部12は、血流波形出力装置20が出力する生体900の血流波形(例えば、血流量の時間的な変化を示す波形信号)に基づいて、生体900の血流状態を算出することが好ましい。
【0061】
算出部12は、その内部に物理的に又は論理的に実現される処理ブロックとして、例えば、血流量算出部121と、脈拍算出部122とを備える。
【0062】
血流量算出部121は、血流波形出力装置20が出力する生体900の血流波形に基づいて、生体900の血流状態の一例である生体900の血流量を算出する。より具体的には、例えば、血流量算出部121は、血流波形の所定期間の平均値を、血流量として算出してもよい。
【0063】
脈拍算出部122は、血流波形出力装置20が出力する生体900の血流波形に基づいて、生体900の血流状態の一例である生体900の脈拍数を算出する。より具体的には、例えば、脈拍算出部122は、血流波形において脈拍に相当する波形の振動数(つまり、血流波形の周期の逆数)を、脈拍数として算出してもよい。但し、脈拍算出部122は、例えば高速フーリエ変換等の他の算出方法を用いて脈拍数を算出してもよい。
【0064】
尚、後述するように、本実施例では、例えば、血流量に基づいて生体900の自律神経機能が評価される。言い換えれば、本実施例では、脈拍数は、生体900の自律神経機能の評価そのものに直接的には関わってこなくともよい。このため、算出部12は、脈拍量算出部122を備えていなくともよい。
【0065】
指示出力部13は、自律神経機能評価装置10によって自律神経機能が評価される対象となる生体900に対して、所定の指示を出力する。本実施例では、指示出力部13は、所定の指示を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、所定の指示を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、指示出力部13は、所定の指示を、その他の態様で出力してもよい。例えば、指示出力部13は、所定の指示を、スピーカから出力される音声(例えば、所定の指示を通知する音声等)として出力してもよい。
【0066】
指示出力部13は、その内部に物理的に又は論理的に実現される処理ブロックとして、呼吸統制出力部131と、姿勢統制出力部132とを備える。
【0067】
呼吸統制出力部131は、自律神経機能評価システム1による自律神経機能の評価試験が行われている間、生体900の呼吸の態様を指示するための呼吸統制指示を、所定の指示として出力する。例えば、呼吸統制出力部131は、生体900に対して、呼吸を止める指示や呼吸を所定時間(より具体的には、後述の最低呼吸停止時間)止め続ける指示や呼吸を再開する指示等を含む呼吸統制得指示を出力する。
【0068】
姿勢統制出力部132は、自律神経機能評価システム1による自律神経機能の評価試験が行われている間、生体900の姿勢を指示するための姿勢統制指示を、所定の指示として出力する。例えば、姿勢統制出力部132は、生体900に対して、しゃがみ姿勢(つまり、しゃがんでいる姿勢)を所定時間(より具体的には、後述の最低しゃがみ時間)維持する指示やしゃがみ姿勢から立位姿勢(つまり、立っている姿勢)に移行する指示や立位姿勢を維持する指示等を含む姿勢統制指示を出力する。
【0069】
尚、本実施例では、「立位姿勢」とは、「第2姿勢」の一具体例であって、生体900が足を概ね伸ばした状態で立っている姿勢又は立ち上がった姿勢(つまり、足を概ね延ばした状態で生体900の体重を足で支えている姿勢)を示す趣旨である。他方で、本実施例では、「しゃがみ姿勢」とは、「第1姿勢」の一具体例であって、生体900が足を概ね折り曲げた状態でしゃがみこんでいる姿勢(つまり、足を概ね折り曲げた状態で生体900の体重を足で支えている姿勢)を示す趣旨である。このとき、「しゃがみ姿勢」にある生体900は、足のみで生体900の体重を支えていることが好ましい。つまり、足を概ね折り曲げた状態で生体900の体重を足で支えつつも生体900の足以外の部位(例えば、臀部や背部等)が地面に接地している姿勢は、本実施例の「しゃがみ姿勢」には含まれなくともよい。
【0070】
評価部14は、血流量算出部121が算出する血流量等に基づいて、生体900の自律神経機能を評価する。
【0071】
評価部14は、その内部に物理的に又は論理的に実現される処理ブロックとして、自律神経機能パラメータ演算部141と、自律神経機能評価結果出力部142とを備える。
【0072】
自律神経機能パラメータ演算部141は、血流量算出部121が算出する血流量等に基づいて、自律神経機能を評価するための自律神経機能パラメータを算出する。尚、自律神経機能パラメータ演算部141の具体的な動作については後に詳述する(
図2等参照)。
【0073】
自律神経機能評価結果出力部142は、自律神経機能パラメータ演算部141が算出した自律神経機能パラメータに基づいて、生体900の自律神経機能を評価する。加えて、自律神経機能評価結果出力部142は、生体900の自律神経機能の評価の結果を出力する。本実施例では、自律神経機能評価結果出力部142は、自律神経機能の評価の結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価の結果を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、自律神経機能評価結果出力部142は、生体900の自律神経機能を評価の結果を、その他の態様(例えば、音声等)で出力してもよい。尚、自律神経機能評価結果出力部142の具体的な動作については後に詳述する(
図2等参照)。
【0074】
尚、評価部14の少なくとも一部(例えば、自律神経機能パラメータ演算部141及び自律神経機能評価結果出力部142の双方、又は自律神経機能評価結果出力部142のみ)については、自律神経機能評価装置10が備えることに代えて、自律神経機能評価装置10の外部の装置が備えていてもよい。
【0075】
血流波形出力装置20は、生体900の血流波形を検出すると共に、当該検出した血流波形を自律神経機能評価装置10(特に、その算出部12)に出力する。血流波形出力装置20としては、例えばレーザードップラーフローメトリー法を用いて血流波形を検出するレーザ血流計が一例としてあげられる。
【0076】
ディスプレイ30は、所定の画像を表示する装置である。例えば、本実施例では、ディスプレイ30は、自律神経機能評価システム1の動作状態を示すための画像(言い換えれば、画面)や、呼吸統制出力部131から出力される呼吸統制指示を示す画像(画面)や、姿勢統制出力部132から出力される姿勢統制指示を示す画像(画面)や、自律神経機能評価結果出力部142から出力される自律神経機能の評価の結果を示す画像(画面)等を表示する。
【0077】
呼吸検出装置40は、生体900の呼吸状態を検出する。呼吸検出装置40は、生体900の口部又は鼻部に直接取り付けられる呼吸計の出力に基づいて、生体900の呼吸状態を直接的に検出してもよい。或いは、呼吸検出装置40は、生体900の任意の生体反応に基づいて、生体900の呼吸状態を間接的に検出してもよい。具体的には、例えば、呼吸検出装置40は、血流波形出力部20が出力する血流波形を周波数解析することで抽出される呼吸成分に基づいて、生体900の呼吸状態を検出してもよい。
【0078】
(2)自律神経機能評価システム1の動作
続いて、
図2を参照して、本実施例の自律神経機能評価システム1の動作の流れについて説明する。
図2は、本実施例の自律神経機能評価システム1の動作の流れを示すフローチャートである。
【0079】
図2に示すように、自律神経機能の評価試験が開始される前であっても、血流波形出力装置20が生体900の血流波形を出力している場合には、算出部12は、生体900の血流状態(つまり、血流量や脈拍数等)を算出してもよい(ステップS101)。自律神経機能の評価試験が開始される前に算出された生体900の血流状態は、後に詳述する評価動作(
図2のステップS109やステップS110)の際に評価部14によって参照されてもよい。尚、ステップS101の動作は、必ずしも行われなくともよい。
【0080】
その後、制御部11は、ステップS101で算出された血流量及び脈拍数の少なくとも一方が正常な値であるか否かを判定する(ステップS111)。例えば、血流量が大きく乱れている場合や脈拍数が異常に多い場合には、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が正常な値でないと判定される。
【0081】
ステップS111の判定の結果、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が正常な値でないと判定される場合には(ステップS111:No)、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が正常な値でない原因が、生体900が装着する血流計の装着異常であるとも想定される。そこで、指示出力部13は、血流計を再装着することを生体900に指示する(ステップS112)。その後、ステップS101以降の動作が再度行われる。
【0082】
他方で、ステップS111の判定の結果、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が正常な値であると判定される場合には(ステップS111:Yes)、制御部11は、ディスプレイ30上に表示された初期画像(初期画面)上で評価試験の開始を指示する操作が行われたか否かを判定する(ステップS102)。
【0083】
ここで、
図3を参照して、自律神経機能の評価試験が開始される前にディスプレイ30上に表示されている初期画像の一例について説明する。
図3は、自律神経機能の評価試験が開始される前にディスプレイ30上に表示されている初期画像の一例を示す平面図である。
【0084】
図3に示すように、ディスプレイ30上に表示されている初期画像は、例えば、(i)現在の日時、(ii)現在の生体900の血流量及び脈拍数、(iii)評価試験の開始、再試験及び評価試験の終了を指示するための操作ボタン、(iv)現在の評価試験の状態を示すテキストボックス、並びに(v)評価試験の結果(具体的には、
図11を用いて後に詳述する、めまい度、血流量減少率及び血流量回復時間)を示すテキストボックスを含んでいる。尚、
図3に示す例では、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスには、「自律神経機能の評価試験を行う場合には、評価試験開始ボタンを押下して下さい」という指示文章が記載されている。この状態で、例えば評価試験を受ける生体900(或いは、自律神経機能評価装置10を取り扱うオペレータ)が評価試験の開始を指示する操作ボタンを押下した場合には、評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される。
【0085】
尚、
図3に示す画像の例はあくまで一例であって、
図3に示す画像以外の画像がディスプレイ30上に表示されてもよい。
【0086】
再び
図2において、ステップS102の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われていないと判定される場合には(ステップS102:No)、ステップS101及びステップS102の動作が繰り返される。つまり、評価試験の開始の指示が行われるまでは、自律神経機能評価装置10は実質的に待機することになる。
【0087】
他方で、ステップS102の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS102:Yes)、続いて、姿勢統制出力部132は、所定タイミングでしゃがむと共にその後最低しゃがみ時間だけ(或いは、最低しゃがみ時間以上)しゃがみ続けることを生体900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS103)。つまり、姿勢統制出力部132は、所定タイミングでしゃがむ姿勢をとる共にその後最低しゃがみ時間だけ(或いは、最低しゃがみ時間以上)しゃがみ姿勢を維持し続けることを生体900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS103)。例えば、姿勢統制出力部132は、x(但し、xは0以上の任意の実数)秒後にしゃがむと共にその後最低しゃがみ時間としてy(但し、yは0以上の任意の実数)秒しゃがみ続けることを生体900に指示するための姿勢統制指示を出力する。
【0088】
ここで、
図4を参照して、
図2のステップS103で姿勢統制出力部132が出力する姿勢統制指示を示す画像の一例について説明する。
図4は、
図2のステップS103で姿勢統制出力部132が出力する姿勢統制指示を示す画像の一例を示す平面図である。
【0089】
図4に示すように、
図2のステップS103で姿勢統制出力部132が出力する姿勢統制指示を示す画像は、
図3に示す初期画像と比較して、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスが異なっている。
図4に示す例では、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスには、「しゃがんで下さい」という指示文章、「その後」という指示文章及び矢印記号、並びに「あと○○秒しゃがみ続けて下さい」という指示文章が記載されている。最低しゃがみ時間をy秒とすると、「あと○○秒しゃがみ続けて下さい」という指示文章中の「○○秒」という表記は、「しゃがんで下さい」という指示文章が表示された時点では「y秒」という表記となる。その後、時間の経過とともに、「あと○○秒しゃがみ続けて下さい」という指示文章中の「○○秒」という表記は、徐々にデクリメントされる。このような指示を見た生体900は、(i)「しゃがんで下さい」という指示文章が表示されたタイミングでしゃがみ、(ii)その後、「あと○○秒しゃがみ続けて下さい」という指示文章に従って、最低しゃがみ時間だけしゃがみ続ける(つまり、しゃがみ姿勢を維持する)ことになる。
【0090】
ここで用いられる「最低しゃがみ時間」は、以下の観点から予め設定されていることが好ましい。以下、最低しゃがみ時間の設定について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、しゃがみ時間を変化させたときの血流量の変化量及び平均血圧の変化量を示すグラフである。
図6は、しゃがみ時間を変化させたときの、平均血圧、耳朶血流及び心拍数の時間的変化を示すグラフである。尚、
図5及び
図6に示すグラフは、いずれも本願発明者の実験の結果導き出されたデータに基づくグラフである。また、この実験では、8人の生体900を実験体として用いている。
【0091】
図5(a)は、ある生体900が立位姿勢からしゃがみ姿勢に移行した時点を基準(つまり、0秒)として、その後しゃがみ姿勢を維持する時間(つまり、しゃがみ続ける時間)を0秒、15秒、30秒、45秒及び60秒に設定し、設定された時間しゃがみ姿勢をとった後に立位姿勢に移行させ、しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行したときの生体900の血流量の変化量[a.u.]を示す。
図5(a)に示すグラフを見ると、しゃがみ続ける時間を0秒、15秒、30秒、45秒及び60秒と設定した場合であっても、血流量の変化量には、大きなないしは特徴的な有意差が見られないことが分かる。
【0092】
一方で、
図5(b)は、ある生体900が立位姿勢からしゃがみ姿勢に移行した時点を基準(つまり、0秒)として、その後しゃがみ姿勢を維持し続ける時間を0秒、15秒、30秒、45秒及び60秒と設定し、設定された時間しゃがみ姿勢をとった後に立位姿勢に移行させ、しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行したときの生体900の平均血圧の変化量[mmHg]を示す。
図5(b)に示すグラフを見ると、しゃがみ続ける時間が0秒、15秒及び30秒と設定されたときの平均血圧の変化量は、しゃがみ続ける時間が長くなればなるほど大きくなっていることが分かる。つまり、しゃがみ続ける時間が0秒、15秒及び30秒と設定された場合には、生体900の血流の状態は、未だ十分に安定していない(言い換えれば、0秒、15秒ないしは30秒しゃがみ続けたとしても、その後も血流の状態が変動する可能性が高い)と推測される。一方で、
図5(b)に示すグラフを見ると、しゃがみ続ける時間が45秒及び60秒と設定されたときの平均血圧の変化量は、しゃがみ続ける時間に関わらず概ね一定になっていることが分かる。つまり、しゃがみ続ける時間が45秒及び60秒と設定された場合には、生体900の血流の状態は十分に安定している(言い換えれば、45秒ないしは60秒しゃがみ続けた場合には、その後の血流の状態が変動する可能性が低い)と推測される。
【0093】
本実施例では、しゃがみ姿勢にある生体900の血流量を基準とするしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行した後の血流量の変化の態様に基づいて、生体900の自律神経機能が評価される。従って、高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うという観点からは、しゃがみ姿勢から立位姿勢への移行による血流の状態は、安定した状態で変化することが好ましいと考えられる。従って、しゃがみ姿勢にある(つまり、立位姿勢に移行する前の)生体900の血流の状態は、十分に安定している(言い換えれば、変動が少ない)ことが好ましいと考えられる。つまり、しゃがみ姿勢にある(つまり、立位姿勢に移行する前の)生体900の血流の状態には、しゃがみ姿勢を取る前の生体900の活動状況(例えば、運動状況)に起因した雑音成分が重畳されていないことが好ましいと考えられる。そうすると、最低しゃがみ時間は、しゃがみ姿勢から立位姿勢への移行による血流の状態が安定した状態で変化するために必要な時間(或いは、生体900の血流の状態が十分に安定するようになるまでに必要な時間)に応じて設定されることが好ましいことが分かる。このため、
図5(b)に示すグラフによれば、しゃがみ姿勢から立位姿勢への移行による血流の状態が安定した状態で変化するために必要なしゃがみ時間(つまり、最低しゃがみ時間)は、少なくとも45秒以上であることが好ましいことが分かる。
【0094】
続いて、
図6は、しゃがみ時間が30秒及び60秒に設定された場合の、平均血圧、耳朶血流及び心拍数の時間的変化を示すグラフである。より具体的には、しゃがみ時間が30秒と設定された場合のグラフは、0秒から30秒の間に生体900が体操等の運動を行い、30秒から60秒の間に生体900が座位姿勢で安静状態にあり、60秒から90秒の間に生体900がしゃがみ姿勢にあり、90秒の時点で生体900がしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行し、以降は生体900が立位姿勢を維持している場合のグラフに相当する。他方で、しゃがみ時間が60秒と設定された場合のグラフは、0秒から30秒の間に生体900が体操等の運動を行い、30秒から90秒の間に生体900がしゃがみ姿勢にあり、90秒の時点で生体900がしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行し、以降は生体900が立位姿勢を維持している場合のグラフに相当する。
図6に示すように、しゃがみ時間が60秒に設定された場合には、しゃがみ姿勢にある間(つまり、30秒から90秒の間)に生体900の血流の状態が安定している(例えば、心拍の変動が相対的に小さい)ことが分かる。他方で、
図6に示すように、しゃがみ時間が30秒に設定された場合には、しゃがみ姿勢にある間(つまり、60秒から90秒の間)に生体900の血流の状態があまり安定していない(例えば、心拍の変動が未だ相対的に大きい)ことが分かる。
【0095】
ここで、本実施例の自律神経機能評価システム1による評価試験を生体900が受ける場合には、当該評価試験を受ける前に生体900の血流の状態が相対的に安定していない(例えば、心拍が相対的に高い)状態も想定される。このような状態を考慮した上で高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うという観点からは、
図5に示す事例と同様に、しゃがみ姿勢にある(つまり、立位姿勢に移行する前の)生体900の血流の状態には、しゃがみ姿勢を取る前の生体900の活動状況(例えば、運動状況)に起因した雑音成分が重畳されていないことが好ましいと考えられる。つまり、評価試験を行う場合には、しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行するまでの間に、生体900の血流の状態を安定させておくことが好ましいと想定される。言い換えれば、評価試験で基準となる立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態を、好適な評価に影響を及ぼさなくなる程度に安定させておくことが好ましいと考えられる。そうすると、
図6に示すグラフによれば、生体900の血流の状態を十分に安定させるために必要なしゃがみ時間(つまり、最低しゃがみ時間)は、少なくとも60秒以上であることが好ましいことが分かる。
【0096】
このため、本実施例では、最低しゃがみ時間は、45秒以上に設定されることが好ましい。或いは、最低しゃがみ時間は、60秒以上に設定されてもよい。
【0097】
尚、
図5及び
図6に示すグラフの結果導き出される最低しゃがみ時間(つまり、45秒以上ないしは60秒以上という最低しゃがみ時間)は、あくまで一例であることは言うまでもない。従って、生体900の血流の状態を十分に安定させることができるのであれば、最低しゃがみ時間に、45秒未満の適切な値が設定されてもよい。
【0098】
再び
図2において、算出部12は、算出部12での算出結果を参照することで、ステップS103で出力された姿勢統制指示に従ってしゃがみ姿勢を維持し続けている生体900の血流量及び脈拍数の少なくとも一方を算出する(ステップS104)。加えて、制御部11は、算出部12での算出結果を参照することで、ステップS103で出力された姿勢統制指示に従ってしゃがみ姿勢を維持し続けている生体900の血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定しているか否かを判定する(ステップS105)。ここでは、制御部11は、例えば、血流量及び脈拍数の少なくとも一方の所定時間中の変動量が所定閾値以内に収まる場合に、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定していると判定してもよい。
【0099】
ステップS105の判定の結果、血流量及び脈拍数の双方が安定していないと判定される場合には(ステップS105:No)、ステップS104及びステップS105の動作が繰り返される。つまり、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定するまでは、ステップS104における血流量及び脈拍数の少なくとも一方の算出動作及びステップS105における血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定しているか否かの判定動作が繰り返される。
【0100】
他方で、ステップS105の判定の結果、血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定していると判定される場合には(ステップS105:Yes)、制御部11は、生体900がしゃがんだタイミング(言い換えれば、ステップS103の姿勢統制指示が出力されたタイミング)を起点として、最低しゃがみ時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。つまり、制御部11は、生体900が最低しゃがみ時間以上しゃがみ姿勢を維持し続けたか否かを判定する。
【0101】
尚、上述したように、最低しゃがみ時間は、生体900の血流の状態を十分に安定させることができるという観点から適切な値が設定されている。従って、最低しゃがみ時間以上生体900がしゃがみ姿勢を維持し続けた場合(つまり、ステップS106でYesと判定される場合)には、生体900の血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定している(つまり、ステップS105でYesと判定される)可能性が高いと想定される。逆に、生体900の血流量及び脈拍数の少なくとも一方が安定している(つまり、ステップS105でYesと判定される)場合には、最低しゃがみ時間以上生体900がしゃがみ姿勢を維持し続けている(つまり、ステップS106でYesと判定される)可能性が高いと想定される。このようなステップS105とステップS106との間の関係を考慮すれば、ステップS105及びステップS106のいずれか一方は、行われなくともよい。
【0102】
ステップS106の判定の結果、最低しゃがみ時間が経過していないと判定される場合には(ステップS106:No)、ステップS106の動作が繰り返される。つまり、最低しゃがみ時間が経過するまでは、ステップS106における最低しゃがみ時間が経過したか否かの判定動作が繰り返される。
【0103】
他方で、ステップS106の判定の結果、最低しゃがみ時間が経過したと判定される場合には(ステップS106:Yes)、続いて、呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132は、協働して、呼吸を止めながら所定タイミングで立ち上がると共に立ちあがった後も最低呼吸停止時間だけ(或いは、最低呼吸時間以上)呼吸を止め続けることを生体900に指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力する(ステップS107)。言い換えれば、呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132は、協働して、呼吸を止めながら所定タイミングでしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行すると共に立位姿勢に移行後も最低呼吸停止時間だけ(或いは、最低呼吸時間以上)呼吸を止め続けることを生体900に指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力する(ステップS107)。例えば、呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132は、協働して、X(但し、Xは0以上の任意の実数)秒後に呼吸を止めながら立ち上がると共に立ちあがった後も最低呼吸停止時間としてY(但し、Yは0以上の任意の実数)秒呼吸を止め続けることを生体900に指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力する。
【0104】
ここで、
図7を参照して、
図2のステップS107で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像の一例について説明する。
図7は、
図2のステップS107で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像の一例を示す平面図である。
【0105】
図7に示すように、
図2のステップS107で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像は、
図3に示す初期画面と比較して、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスが異なっている。
図7に示す例では、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスには、「呼吸を止めて立ち上がって下さい」という指示文章、「その後」という指示文章及び矢印記号、並びに「立ったまま、あと○○秒呼吸を止め続けて下さい」という指示文章が記載されている。最低呼吸停止時間をY秒とすると、「立ったまま、あと○○秒呼吸を止め続けて下さい」という指示文章中の「○○秒」という表記は、「呼吸を止めて立ちあがって下さい」という指示文章が表示された時点では「Y秒」という表記となる。その後、時間の経過とともに、「立ったまま、あと○○秒呼吸を止め続けて下さい」という指示文章中の「○○秒」という表記は、徐々にデクリメントされる。このような指示を見た生体900は、(i)「呼吸を止めて立ちあがって下さい」という指示文章が表示されたタイミングで呼吸を止めながら立ち上がり、(ii)その後、「立ったまま、あと○○秒呼吸を止め続けて下さい」という指示文章に従って、立ったまま、最低呼吸停止時間だけ呼吸を止め続けることになる。
【0106】
尚、生体900は、生体900自身の筋肉を使用することで立ち上がる能動起立を行うことで、しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行してもよい。或いは、生体900は、例えば他者の力を借りて立ち上がる受動起立(例えば、電動ベッドに寝ている生体900が、電動ベッドが自動的に起き上がる力を借りて立ち上がる受動起立等)を行うことで、しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行してもよい。いずれにせよ、生体900は、何らかの手法を用いてしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行する。
【0107】
ここで利用される「最低呼吸停止時間」は、以下の観点から予め設定されていることが好ましい。以下、最低呼吸停止時間の設定について、
図8を参照して説明する。
図8は、呼吸を止めた場合の生体900の血流量及び呼吸を止めていない場合の生体900の血流量の夫々の時間的変化を示すグラフである。尚、
図8に示すグラフは、本願発明者の実験の結果導き出されたデータに基づくグラフである。
【0108】
図8に示すように、呼吸ありの場合(つまり、呼吸を止めていない場合)には、呼吸なしの場合(つまり、呼吸を止めている場合)と比較して、生体900の血流量が呼吸に伴って変動してしまう(つまり、揺らぎが発生している)ことが分かる。尚、
図8は、概ね0.25Hzで呼吸をしている(つまり、4秒に1回呼吸をしている)場合の血流量の変化の例を示している。
【0109】
本実施例では、しゃがみ姿勢にある生体900の血流量を基準とするしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行した後の血流量の変化の態様に基づいて、生体900の自律神経機能が評価される。従って、高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うという観点からは、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態は、自律神経機能に起因しない雑音成分(例えば、
図8に示す呼吸に関連した成分)が重畳されていないことが好ましいと考えられる。そうすると、最低呼吸停止時間は、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態を計測することで自律神経機能を評価するために必要な時間に応じて設定されることが好ましいことが分かる。
【0110】
ここで、本実施例では、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態が立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態に戻るまでの間の血流の状態の変化の態様に基づいて、自律神経機能の評価が行われる。従って、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態を計測することで評価試験を行うために必要な時間は、実質的には、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態が立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態に戻るまでに必要な時間であるとも言える。本願発明者等の実験によれば、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態を計測することで自律神経機能を評価するために必要な時間(つまり、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態が立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態に戻るまでに必要な時間)は、被験者が健常者の場合は概ね10秒から20秒(より好ましくは、15秒から20秒)であることが判明している。尚、ここでいう「戻る」とは、「立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態が立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態と同一となるように戻る」状態のみならず、「立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態が立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態と実質的に同一視することができる程度に戻る」状態や「立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態と立位姿勢に移行する前の生体900の血流の状態との差分が所定値以下となる程度に戻る」状態をも含み得る広い趣旨である。一方で、生体900の一例である人間が呼吸を楽に止め続けることができる限界の時間もまた、概ね20秒程度であると推測される。このため、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態を計測するために必要な時間(つまり、最低呼吸停止時間)は、10秒から20秒(或いは、15秒から20秒)の範囲に収まる時間であることが好ましい。
【0111】
但し、10秒から20秒(或いは、15秒から20秒)の範囲に収まる最低呼吸停止時間は、あくまで一例であることは言うまでもない。従って、生体900の血流の状態に呼吸に起因した雑音成分があまり、殆ど或いは全く重畳されないのであれば、最低呼吸停止時間に、10秒から20秒(或いは、15秒から20秒)の範囲に収まる時間以外の適切な値が設定されてもよい。
【0112】
再び
図2において、その後、呼吸検出装置40は、生体900の呼吸状態を検出する(ステップS113)。その後、制御部11は、呼吸検出装置40での検出結果に基づいて、生体900が呼吸を止めているか否かを判定する(ステップS114)。つまり、制御部11は、ステップS107で出力される呼吸統制指示に従って生体900が呼吸を適切に止めているか否かを判定する。
【0113】
ステップS114の判定の結果、生体900が呼吸を止めていないと判定される場合には(ステップS114:No)、上述したように、生体900の血流量が呼吸に伴って変動してしまうとも推測される。この場合、立位姿勢に移行した後の生体900の血流の状態に対して自律神経機能に起因しない雑音成分(例えば、
図8に示す呼吸に関連した成分)が重畳されてしまいかねない。従って、高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うことが困難であるとも推測される。このため、この場合には、自律神経機能の評価試験がやり直される。つまり、ステップS103以降の動作が再度行われる。
【0114】
一方で、ステップS114の判定の結果、生体900が呼吸を止めていると判定される場合には(ステップS114:No)、制御部11は、生体900が立ちあがったタイミング(言い換えれば、ステップS107の姿勢統制指示が出力されたタイミング)を起点として、最低呼吸停止時間が経過したか否かを判定する(ステップS115)。つまり、制御部11は、生体900が最低呼吸停止時間以上呼吸を停止し続けたか否かを判定する。
【0115】
ステップS115の判定の結果、最低呼吸停止時間が経過していないと判定される場合には、ステップS114の動作が繰り返される。
【0116】
他方で、ステップS115の判定の結果、最低呼吸停止時間が経過したと判定される場合には(ステップS115:Yes)、呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132は、協働して、立ったまま呼吸を再開してもよいことを生体900に指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力する(ステップS108)。
【0117】
ここで、
図9を参照して、
図2のステップS108で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像の一例について説明する。
図9は、
図2のステップS108で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像の一例を示す平面図である。
【0118】
図9に示すように、
図2のステップS108で呼吸統制出力部131及び姿勢統制出力部132が協働して出力する呼吸統制指示及び姿勢統制指示を示す画像は、
図3に示す初期画面と比較して、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスが異なっている。
図7に示す例では、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスには、「立ったまま、呼吸を再開して下さい」という指示文章が記載されている。このような指示を見た生体900は、「立ったまま、呼吸を再開して下さい」という指示文章が表示されたタイミングで、起立したまま呼吸を再開することになる。
【0119】
再び
図2において、その後、自律神経機能パラメータ演算部141は、ステップS103からステップS109の動作が行われている間に算出部11によって算出された生体900の血流状態に基づいて、自律神経機能を評価するために用いられるパラメータを算出する(ステップS109)。尚、ステップS109において自律神経機能パラメータ演算部141によるパラメータの算出が行われることを考慮すれば、
図2では明示的に記載していないものの、算出部11は、ステップS106からステップS108の動作が行われている間も生体900の血流状態を算出することが好ましい。
【0120】
本実施例では、自律神経機能パラメータ演算部141は、パラメータの一例として、例えば、血流量算出部111が算出した血流量に基づいて、血流量の減少率と血流量の回復時間を算出する。以下、
図10を参照して、パラメータの一例である血流量の減少率及び血流量の回復時間について説明する。
図10は、パラメータの一例である血流量の減少率及び血流量の回復時間の算出の態様を示すグラフである。
【0121】
図10に示すように、しゃがみ姿勢を維持している間の生体900の血流量の平均値をF
aveとし、立位姿勢に移行した後の血流量の最小値をF
minとする。そうすると、立位姿勢に移行した後の血流量の最大の減少量ΔFは、F
ave−F
minとなる。この場合、パラメータの一例である血液量の減少率は、ΔF/F
ave×100=(F
ave−F
min)/F
ave×100[%]と定義される。また、パラメータの一例である血液量の回復時間は、立位姿勢に移行した時点を0秒としたときの、立位姿勢に移行した後の血流量F
aft(立位姿勢に移行した後の血流量の平均値F
aft)がしゃがみ姿勢を維持している間の生体900の血流量の平均値をF
aveのX(但し、Xは、例えば80以上であり、好ましくは90以上であり、より好ましくは95以上)[%]の量に回復するまでに要する時間と定義される。
【0122】
尚、
図10に示すパラメータはあくまで一例であるため、自律神経機能を評価するためであって且つ算出部11が算出する血流状態に基づいて算出される他のパラメータを用いてもよいことは言うまでもない。
【0123】
再び
図2において、自律神経機能評価結果出力部142は、ステップS109で算出されたパラメータに基づいて、生体900の自律神経機能を評価する(ステップS110)。例えば、自律神経機能評価結果出力部142は、パラメータの一例である血液量の減少率に応じた評価及び血液量の回復時間に応じた評価を個別に行うと共に、当該個別に行った評価を組み合わせることで、生体900の自律神経機能を評価してもよい。より具体的には、自律神経機能評価結果出力部142は、例えば、血液量の減少率が50%未満である場合には、血液量の減少率に基づく評価が「0(良)」であると判定してもよい。一方で、自律神経機能評価結果出力部142は、例えば、血液量の減少率が50%以上である場合には、血液量の減少率に基づく評価が「1(悪)」であると判定してもよい。また、自律神経機能評価結果出力部142は、例えば、血液量の回復時間が20秒未満である場合には、血液量の回復時間に基づく評価が「0(良)」であると判定してもよい。他方で、自律神経機能評価結果出力部142は、例えば、血液量の回復時間が20秒以上である場合には、血液量の回復時間に基づく評価が「1(悪)」であると判定してもよい。その後、自律神経機能評価結果出力部142は、血液量の減少率及び血液量の回復時間の双方の評価結果が「0(良)」である場合には、生体900の自律神経機能が「優(めまい度:低)」であると判定してもよい。或いは、自律神経機能評価結果出力部142は、血液量の減少率及び血液量の回復時間のいずれか一方の評価結果が「1(悪)」である場合には、生体900の自律神経機能が「良(めまい度:中)」であると判定してもよい。或いは、自律神経機能評価結果出力部142は、血液量の減少率及び血液量の回復時間の双方の評価結果が「1(悪)」である場合には、生体900の自律神経機能が「悪(めまい度:高)」であると判定してもよい。
【0124】
尚、ここで説明した自律神経機能の評価結果はあくまで一例であって、自律神経機能評価結果出力部142は、血液量の減少率及び血液量の回復時間の閾値を更に細分化した上で評価を行ってもよい。或いは、自律神経機能評価結果出力部142は、その他の方法で評価を行ってもよい。
【0125】
その後、自律神経機能評価結果出力部142は、生体900の自律神経機能の評価の結果を出力する(ステップS110)。例えば、自律神経機能評価結果出力部142は、自律神経機能の評価の結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価の結果を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、自律神経機能評価結果出力部142は、生体900の自律神経機能を評価の結果を、必ずしも出力しなくともよい。
【0126】
ここで、
図11を参照して、
図2のステップS110で自律神経機能評価結果出力部142が出力する評価結果を示す画像の一例について説明する。
図11は、
図2のステップS110で自律神経機能評価結果出力部142が出力する評価結果を示す画像の一例を示す平面図である。
【0127】
図11に示すように、
図2のステップS110で自律神経機能評価結果出力部142が出力する評価結果を示す画像は、
図3に示す初期画像と比較して、現在の評価試験の状態を示すテキストボックス及び評価試験の結果を示すテキストボックスが異なっている。
図11に示す例では、現在の評価試験の状態を示すテキストボックスには、「自律神経機能の評価結果を以下に示します」という指示文章が記載されている。また、評価試験の結果を示すテキストボックスには、めまい度が「低」であり、血流量減少率が「30%」であり且つ血流量回復時間が「14秒」であることを示す評価試験の結果が記載されている。
【0128】
再び
図2において、その後、制御部11は、ディスプレイ30上に表示された画像(画面)上で、再度の評価試験(つまり、再試験)の開始を指示する操作が行われたか否かを判定する(ステップS111)。例えば、
図11に示す画像上で、評価試験を受ける生体900(或いは、自律神経機能評価装置10を取り扱うオペレータ)が再試験の開始を指示する操作ボタンを押下した場合には、再試験の開始を指示する操作が行われたと判定される。
【0129】
ステップS111の判定の結果、再度の評価試験(つまり、再試験)の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS111:Yes)、ステップS103以降の動作が繰り返される。
【0130】
他方で、ステップS111の判定の結果、再度の評価試験(つまり、再試験)の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS111:Yes)、自律神経機能評価システム1の動作が終了する。
【0131】
以上説明したように、本実施例の自律神経機能評価システム1によれば、算出部11は、特定の状態(つまり、(i)呼吸を止めながらしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行すると共に(ii)立位姿勢に移行後も最低呼吸停止時間以上呼吸を止め続ける状態)にある生体900の血流状態を算出することができる。仮に、特定の状態にない生体900の血流状態を算出部11が算出しようとすると、算出した血流状態には、生体900の呼吸の影響が雑音成分(言い換えれば、ノイズ成分ないしは不要な成分)として重畳されている可能性がある。従って、このような呼吸の影響が重畳された血流状態に基づいて評価部14が自律神経機能を評価すると、評価結果の信頼性は相対的に低下してしまいかねない。しかるに、本実施例では、上述したように、算出部11は、特定の状態(つまり、(i)呼吸を止めながらしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行すると共に(ii)立位姿勢に移行後も最低呼吸停止時間以上呼吸を止め続ける状態)にある生体900の血流状態を算出することができる。従って、算出した血流状態に、生体900の呼吸の影響が重畳されてしまう不都合を概ね又は殆ど排除することができる。その結果、評価部14は、このような呼吸の影響が殆ど又は全く重畳されていない血流状態に基づいて自律神経機能を評価することができる。従って、評価部14による自律神経機能の評価結果の信頼性の低下を好適に抑制することができる。言い換えれば、本実施例の自律神経機能評価システム1は、特定の状態にない生体900の血流状態(つまり、呼吸の影響が重畳された血流状態)に基づいて自律神経機能を評価する他のシステムと比較して、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0132】
また、自律神経機能評価システム1は、呼吸性の変動を、血流量の周波数解析などを用いて検知してもよい。この場合、自律神経機能評価システム1は、起立後に呼吸性の変動が検知された場合は、その旨を通知すると共に再測定(つまり、再試験)を促すようにしても良い。
【0133】
加えて、本実施例では、算出部11は、特定の状態(つまり、しゃがみ姿勢を最低しゃがみ時間以上維持した後にしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行する状態)にある生体900の血流状態を検出することができる。仮に、特定の状態にない生体900の血流状態を算出部11が算出しようとすると、算出した血流状態には、しゃがみ姿勢をとる前の(或いは、立位姿勢に移行する前の、以下同様)生体900の活動状況に起因した影響が雑音成分(言い換えれば、ノイズ成分ないしは不要な成分)として重畳されている可能性がある。例えば、しゃがみ姿勢をとる前の生体900が相対的に多くの運動量を伴う運動を行っていた場合には、仮に生体900がしゃがみ姿勢を維持する時間が少なければ、立位姿勢に移行する直前の生体900の血流状態が安定していない(つまり、運動に起因した変動が生じている)可能性がある。従って、このようなしゃがみ姿勢をとる前の生体900の活動状況に起因した影響が重畳された血流状態に基づいて評価部14が自律神経機能を評価すると、評価結果の信頼性は相対的に低下してしまいかねない。言い換えれば、このようなしゃがみ姿勢をとる前の生体900の活動状況に起因した影響が重畳された血流状態に基づいて評価部14が自律神経機能を評価すると、しゃがみ姿勢をとる前の生体900の活動状況に応じて、評価結果にばらつきが生じてしまいかねない。しかるに、本実施例では、上述したように、算出部11は、特定の状態(つまり、しゃがみ姿勢を最低しゃがみ時間以上時間維持した後にしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行する状態)にある生体900の血流状態を検出することができる。つまり、生体900が立位姿勢に移行する前にしゃがみ姿勢を最低しゃがみ時間以上維持することによって、しゃがみ姿勢をとる前の生体900の活動状況を、評価結果に影響を与えない程度に小さくすることができる。従って、算出した血流状態に、しゃがみ姿勢を取る前の生体900の活動状況の影響が重畳されてしまう不都合を概ね又は殆ど排除することができる。その結果、評価部14は、このようなしゃがみ姿勢を取る前の生体900の活動状況の影響の影響が殆ど又は全く重畳されていない血流状態に基づいて自律神経機能を評価することができる。従って、評価部14による自律神経機能の評価結果の信頼性の低下を好適に抑制することができる。言い換えれば、本実施例の自律神経機能評価システム1は、特定の状態にない生体900の血流状態(つまり、しゃがみ姿勢を取る前の生体900の活動状況の影響が重畳された血流状態)に基づいて自律神経機能を評価する他のシステムと比較して、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0134】
尚、上述した説明では、指示出力部13が呼吸統制指示や姿勢統制指示等の所定の指示を出力し、その結果、生体900が呼吸の態様や姿勢を変えている。しかしながら、指示出力部13は所定の指示を必ずしも出力しなくともよい。この場合、生体900は、例えば取り扱い説明書等のマニュアルに記載された指示を閲覧することで、自発的に(言い換えれば、指示出力部13の指示によらずに)呼吸の態様や姿勢を変えてもよい。この場合、自律神経機能評価装置10は、指示出力部13を備えていなくともよい。
【0135】
また、上述した説明では、指示出力部13は、(i)所定タイミングでしゃがむと共にその後最低しゃがみ時間だけ(或いは、最低しゃがみ時間以上)しゃがみ続けることを指示するための姿勢統制指示、並びに(ii)呼吸を止めながら所定タイミングで立ち上がると共に立ちあがった後も最低呼吸停止時間だけ(或いは、最低呼吸時間以上)呼吸を止め続けることを指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示の双方を出力している。しかしながら、指示出力部13は、所定タイミングでしゃがむと共にその後最低しゃがみ時間だけ(或いは、最低しゃがみ時間以上)しゃがみ続けることを指示するための姿勢統制指示を出力する一方で、呼吸を止めながら所定タイミングで立ち上がると共に立ちあがった後も最低呼吸停止時間だけ(或いは、最低呼吸時間以上)呼吸を止め続けることを指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力しなくともよい。この場合、
図2のステップS107からステップS108の動作が行われなくともよい。つまり、評価試験の開始を指示する操作が行われた場合には(
図2のステップS102:Yes)、姿勢統制出力部132が生体900に立ち上がるように指示するための姿勢統制指示を出力した後に、
図2のステップS109以降の動作が行われる。或いは、指示出力部13は、呼吸を止めながら所定タイミングで立ち上がると共に立ちあがった後も最低呼吸停止時間だけ(或いは、最低呼吸時間以上)呼吸を止め続けることを指示するための呼吸統制指示及び姿勢統制指示を出力する一方で、所定タイミングでしゃがむと共にその後最低しゃがみ時間だけ(或いは、最低しゃがみ時間以上)しゃがみ続けることを指示するための姿勢統制指示を出力しなくともよい。この場合、
図2のステップS103からステップS106の動作が行われなくともよい。つまり、最低しゃがみ時間を経過した場合には(
図2のステップS106:Yes)、姿勢統制出力部132が生体900にしゃがむように指示するための姿勢統制指示を出力した後に、
図2のステップS107以降の動作が行われる。
【0136】
また、上述した説明は、生体900がとる姿勢として、しゃがみ姿勢及び立位姿勢が例示されている。つまり、生体900がしゃがみ姿勢から立位姿勢に移行することで、生体900の血流状態を変化させるための負荷が生体900に加えられ、結果として、生体900の血流状態が変化している。しかしながら、生体900の血流状態を変化させるための負荷が与えられる前の生体900の姿勢であれば、しゃがみ姿勢の代替姿勢として用いてもよい。より具体的には、例えば、生体900が臀部を地面又は支持体に乗せた状態で生体900の体重を支えている座位姿勢や、生体900が背部又は腹部を地面又は支持体に乗せることで生体900の体重を支えている臥位姿勢等を、しゃがみ姿勢の代替姿勢として用いてもよい。同様に、生体900の血流状態を変化させるための負荷が与えられた後の生体900の姿勢であれば、立位姿勢の代替姿勢として用いてもよい。但し、しゃがみ姿勢の代替姿勢や立位姿勢の代替姿勢を用いる場合には、上述した最低しゃがみ時間や最低呼吸時間として、しゃがみ姿勢の代替姿勢や立位姿勢の代替姿勢に適応した適切な時間が設定されることが好ましい。
【0137】
或いは、「しゃがみ姿勢から立位姿勢に移行する」動作に代えて、生体900の頭部の位置が重力方向に対して下方側から上方側に向かって移動する動作を用いてもよい。この場合には、生体900の頭部の位置が重力方向に対して相対的に下方側にある場合の姿勢が「しゃがみ姿勢」に代わる第1姿勢の一例となり、生体900の頭部の位置が重力方向に対して相対的に上方側にある場合の姿勢が「立位姿勢」に代わる第2姿勢の一例となる。
より具体的には、電動ベッドに寝ている生体900が、電動ベッドが自動的に起き上がる力を借りて生体900の上体を起こす受動起立等を行うことで、生体900の頭部の位置が重力方向に対して相対的に上方側にある場合の姿勢変化としても良い。この場合も、上述した最低しゃがみ時間や最低呼吸時間として、しゃがみ姿勢の代替姿勢や立位姿勢の代替姿勢に適応した適切な時間が設定されることが好ましい。
【0138】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自律神経機能評価装置及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。