特許第5914522号(P5914522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5914522グラフェン及びカーボンナノチューブに基づく耐放射線化トランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914522
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】グラフェン及びカーボンナノチューブに基づく耐放射線化トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20160422BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20160422BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   H01L29/78 626C
   H01L29/78 618A
   H01L29/78 617T
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-549485(P2013-549485)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公表番号】特表2014-502793(P2014-502793A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2012020713
(87)【国際公開番号】WO2012096914
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】13/006,081
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【復代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【復代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】リン、ユーミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤウ、ジェンバン
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540576(JP,A)
【文献】 特開2003−017508(JP,A)
【文献】 特開2004−356530(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113518(WO,A1)
【文献】 特開2010−062358(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0224230(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0238887(US,A1)
【文献】 特表2011−521445(JP,A)
【文献】 特開平07−074245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐放射線性トランジスタを製造する方法であって、
耐放射線性基板を準備するステップであって、前記耐放射線性基板は、耐放射線性材料により被覆されたシリコンウェハを含む、前記準備するステップと、
前記基板上にカーボンベース材料を形成するステップであって、前記カーボンベース材料の一部分が前記トランジスタのチャネル領域として働き、前記カーボンベース材料の他の部分が前記トランジスタのソース及びドレイン領域として働く、前記形成するステップと、
前記トランジスタの前記ソース及びドレイン領域として働く前記カーボンベース材料の前記他の部分に対するコンタクトを形成するステップと、
前記トランジスタの前記チャネル領域として働く前記カーボンベース材料の前記部分を覆ってゲート誘電体を堆積するステップと、
前記ゲート誘電体上にトップゲートコンタクトを形成するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記耐放射線性材料はフッ化カルシウム膜を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記耐放射線性材料はフッ素化二酸化シリコン膜を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記耐放射線性材料はシリコンカーバイド膜を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコンカーバイド膜を前記シリコンウェハからエピタキシャル成長させるステップと、
前記シリコンカーバイド膜を熱的にアニールして耐放射線化シリコンカーバイド膜を形成するステップと
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコンカーバイド膜は、1,200℃〜1,600℃温度で1時間〜3時間持続時間にわたってアニールされる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンベース材料がグラフェンを含み、
前記方法が、
前記グラフェンを前記シリコンカーバイド膜から成長させるステップ
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンベース材料は、グラフェン及びカーボンナノチューブのうちの1つ又は複数を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記耐放射線性基板上にカーボンベース材料を形成する前記ステップが、
前記耐放射線性基板上に前記カーボンベース材料を堆積させるステップ
を含む、請求項1〜6及び8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記耐放射線性基板上にカーボンベース材料を形成する前記ステップが、
前記耐放射線性基板上で前記カーボンベース材料を成長させるステップ
を含む、請求項1〜6及び8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
耐放射線性トランジスタであって、
耐放射線性基板であって、前記耐放射線性基板は、耐放射線性材料により被覆されたシリコンウェハを含む、前記耐放射線性基板と、
前記基板上のカーボンベース材料であって、前記カーボンベース材料の一部分が前記トランジスタのチャネル領域として働き、前記カーボンベース材料の他の部分が前記トランジスタのソース及びドレイン領域として働く、前記カーボンベース材料と、
前記トランジスタの前記ソース及びドレイン領域として働く前記カーボンベース材料の前記他の部分に対して形成されたコンタクトと、
前記トランジスタの前記チャネル領域として働く前記カーボンベース材料の前記部分を覆って配置されたゲート誘電体と、
前記ゲート誘電体上のトップゲートコンタクトと
を含む、前記耐放射線性トランジスタ。
【請求項12】
前記耐放射線性材料はフッ化カルシウム膜を含む、請求項11に記載の耐放射線性トランジスタ。
【請求項13】
前記耐放射線性材料はフッ素化二酸化シリコン膜を含む、請求項11に記載の耐放射線性トランジスタ。
【請求項14】
前記耐放射線性材料はシリコンカーバイド膜を含む、請求項11に記載の耐放射線性トランジスタ。
【請求項15】
前記カーボンベース材料は、グラフェン及びカーボンナノチューブのうちの1つ又は複数を含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の耐放射線性トランジスタ。
【請求項16】
前記ゲート誘電体は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン又は酸化ジルコニウムを含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の耐放射線性トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐放射線性トランジスタデバイスに関し、より具体的には、グラフェン及び/又はナノチューブに基づく耐放射線性トランジスタデバイス及びそれを製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン(Si)ベースのトランジスタデバイスは、通常、放射線、特に、光子、重イオン、中性子、陽子及び電子のような高エネルギー粒子により深刻な影響を受け、その結果、シングルイベント・アップセット、シングルイベント・ラッチアップ、シングルイベント・バーンアウト、ガンマドット・アップセット、トータルドーズ曝露等が発生する。これらの効果は、特定の臨界環境、例えば、原子力発電所、宇宙空間でのミッション、又は電離放射線に対する広範な曝露が存在するその他の機会において動作するデバイス及び回路の性能の信頼性を著しく低下させる。
【0003】
シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハ上に構築されたデバイスは、基板内で発生した電荷がSOIデバイスの接合部で捕集されることを埋込み酸化膜(BOX)絶縁層が防止するならば、そのバルクSiの相当品よりも良好な耐放射線性を示す。しかしながら、それでもなおアクティブSOI膜内で(この膜は、耐放射線性用途においては比較的薄く、すなわち典型的には約80ナノメートル(nm)乃至約150nmであるとはいえ)電子が生成されることがあり、これにより、SOIデバイスは潜在的な放射線損傷を受けることになる。さらに、これらの過酷な環境下で動作する電子回路の信頼性を向上させるためには、通常、回路設計内に誤り訂正用の付加的な冗長性が必要とされ、そのことが費用及び回路の複雑さを高めることになる。
【0004】
ならば、より薄いアクティブSOI膜を用いれば、より良好な耐放射線性デバイスが製造されると思われるだろう。しかしながら、SOIデバイスにおいては、Siチャネル厚が薄くなるとキャリア移動度が劇的に低下し、従ってデバイス性能が損なわれる。例えば非特許文献1を参照されたい。そのうえ、今日のSOIウェハの製造は、スマートカット(Smart Cut)ウェハの場合のような高温(摂氏約1,110度(℃))での結合強化アニール、又はSIMOX(Separation by Implantated Oxygen:注入酸素による分離)の製造で用いられるようなイオン注入のいずれかを伴う。どちらの方法も、BOX内に、放射線により発生した電子及び正孔をトラップすることができるかなりの量の欠陥、すなわち酸素空格子点(およそ1012/cm程度)をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,156,784号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tsutsui他、「Mobility and Threshold−Voltage Comparison Between (110)− and (100)−Oriented Ultrathin−Body Silicon MOSFETs」 IEEE Trans. On Electron Devices、2006年、第53巻、第10号、2582−2588頁
【非特許文献2】Cho他、「Electrical Properties of Low−Temperature−Grown CaF2 on Si(111)」、Appl.Phys.Lett.1992年、第60巻、第3号、338−340頁
【非特許文献3】da Silva他、「Radiation Response of MOS Capacitors Containing Fluorinated Oxides」、IEEE Trans. On Nuclear Science、1987年12月、第NS−34巻、第6号、1190−1195頁
【非特許文献4】Lien他、「Growth of Epitaxial 3C−SiC Films on Si(100) via Low Temperature SiC Buffer Layer」、Crystal Growth and Design Communication、2010年、第10巻、36−39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上述の欠点に遭遇しない耐放射線性トランジスタデバイスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブベースの耐放射線性トランジスタデバイス及びそれを製造するための技術を提供する。本発明の1つの態様において、耐放射線性トランジスタを製造する方法が提供される。この方法は以下のステップを含む。耐放射線性基板を準備する。基板上にカーボンベース材料を形成し、ここでカーボンベース材料の一部分はトランジスタのチャネル領域として働き、カーボンベース材料の他の部分はトランジスタのソース及びドレイン領域として働く。トランジスタのソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分に対するコンタクトを形成する。トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料の部分を覆ってゲート誘電体を堆積する。ゲート誘電体上にトップゲートコンタクトを形成する。
【0009】
本発明の別の態様において、耐放射線性トランジスタが提供される。耐放射線性トランジスタは、耐放射線性基板と、基板上のカーボンベース材料であって、該カーボンベース材料の一部分がトランジスタのチャネル領域として働き、該カーボンベース材料の他の部分がトランジスタのソース及びドレイン領域として働く、カーボンベース材料と、トランジスタのソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分に対して形成されたコンタクトと、トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料の部分を覆って配置されたゲート誘電体と、ゲート誘電体上のトップゲートコンタクトとを含む。
【0010】
本発明のより完全な理解、並びに本発明の更なる特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による、耐放射線化フッ化カルシウム(CaF)基板上にカーボンベース材料が形成され(すなわち堆積又は成長させる)、所定領域の外側のカーボンベース材料をトリムして除去した状態を示す三次元図である。
図2】本発明の実施形態による、ソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分上に形成されたコンタクトを示す三次元図である。
図3】本発明の実施形態による、チャネル領域として働くカーボンベース材料の部分を覆って堆積されたゲート誘電体を示す三次元図である。
図4】本発明の実施形態による、ゲート誘電体層上に、チャネル領域として働くカーボンベース材料の部分の上方に形成された金属トップゲートコンタクトを示す三次元図である。
図5】本発明の実施形態による、図4の構造体を切断した断面を示す図である。
図6】本発明の実施形態による、耐放射線性材料の層により被覆されたシリコン(Si)ウェハを有する耐放射線性基板を示す三次元図である。
図7】本発明の実施形態による、図6の耐放射線性基板上にカーボンベース材料が形成され、所定領域の外側の任意のカーボンベース材料をトリムして除去した状態を示す三次元図である。
図8】本発明の実施形態による、ソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分上に形成されたコンタクトを示す三次元図である。
図9】本発明の実施形態による、チャネル領域として働くカーボンベース材料の部分を覆って堆積されたゲート誘電体を示す三次元図である。
図10】本発明の実施形態による、ゲート誘電体層上に、チャネル領域として働くカーボンベース材料の部分の上方に形成された金属トップゲートコンタクトを示す三次元図である。
図11】本発明の実施形態による、エピタキシャルシリコンカーバイド(SiC)膜が上に形成されたSiウェハを示す三次元図である。
図12】本発明の実施形態による、耐放射線化SiC膜を形成するために熱的にアニールされているSiC膜を示す三次元図である。
図13】本発明の実施形態による、グラフェンを成長させるために用いられた耐放射線化SiC膜を示す三次元図である。
図14】本発明の実施形態による、トリムされたグラフェンを示す三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、放射線及びバルクシリコン(Si)又はシリコン・オン・インシュレータ(SOI)デバイスに関連した上述の問題に遭遇しない耐放射線性トランジスタデバイスが提供される。すなわち、以下で詳細に説明されるように、本トランジスタデバイスは、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブのようなカーボンベースの材料を使用し、かつ、耐放射線性基板上に構築される。これらの両方の特徴が、本デバイスの耐放射線性に寄与する。幾つかの異なる耐放射線性基板構成を、本教示に従って使用することができる。
【0013】
図1乃至図5は、1つの例示的な耐放射線性基板構成、すなわちフッ化カルシウム(CaF)基板を用いて本デバイスを製造するためのプロセスを示す。図6乃至図10は、異なる例示的な耐放射線性基板構成、すなわち耐放射線性材料(例えばCaF又はフッ素化二酸化シリコン(SiO)など)又は耐放射線化材料(熱アニールされたシリコンカーバイド(SiC)膜など)で被覆されたSiウェハを用いたデバイス製造プロセスを示す。これらの実施形態の各々を以下詳細に説明する。
【0014】
製造プロセスを開始するために、特定の耐放射線性/耐放射線化基板が準備される。図1に示される例においては、耐放射線性基板102はCaF膜である。CaF材料は、種々のサイズ及び厚さで市販されている。CaF膜の電気的性質は、例えば、その内容が引用により本明細書に組み入れられる非特許文献2において論じられている。CaF膜は、SiOのような従来の酸化物基板と比べて、放射線で誘導される酸化物の電荷及び界面でのトラップの量が少ないこと、誘電率の変化が小さいこと、及び照射下での絶縁破壊電圧の低下が小さいことを含む、改善された放射線応答を示す。CaFの相対的に良好な耐放射線性は、SiOにおけるSi原子と酸素(O)原子との間の結合に比べて、カルシウム(Ca)原子とフッ素(F)原子との間の結合の方が強いことに起因するものであり得る。CaFにおけるそのような堅牢な結合強度の結果として、放射線により還元される(reduced)電荷の主な源である欠陥又は表面のダングリングボンドがより少なくなる。本技術によれば、CaFは、単独で耐放射線性基板として(この現行の例の場合のように)、又は、Siウェハ上で成長させたエピタキシャル膜として(後述の図6乃至図10の説明を参照のこと)使用することができる。
【0015】
次に、耐放射線性基板102上にカーボンベース材料104が形成され(すなわち、堆積又は成長させる)、リソグラフィ及び酸素プラズマを用いて、望ましい寸法及び幾何学的形状にトリムされる。このデバイスは、1つ又は複数のトランジスタを含むことができ、カーボンベース材料104を用いて、各々のトランジスタのチャネル領域並びにソース及びドレイン領域が形成される(後述を参照)。例示的な実施形態によれば、カーボンベース材料104は、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブの単層又は多層(例えば、数層の単分子層まで)を含むグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ膜である。デバイスの機能及び目的に応じて、グラフェンを単独で又はカーボンナノチューブを単独で用いて、トランジスタのチャネル領域/ソース及びドレイン領域を形成することができる。あるいは、グラフェンとカーボンナノチューブとの組み合わせを用いて、ハイブリッド回路を作成することもできる。例えば、ハイブリッド回路においては、高い電流オン/オフ切換比が要求される特定のトランジスタは、カーボンナノチューブをチャネル/ソース及びドレイン材料として用いることができ、一方、高い電流密度及びキャリア移動度が望まれる他のトランジスタは、グラフェンをチャネル/ソース及びドレイン材料として用いることができる。ハイブリッド回路においては、グラフェン及びカーボンナノチューブを別々に堆積又は成長させ、横に並べて配置し、それぞれの機能を提供することができる。
【0016】
グラフェンは、六角形の網目状に配置された炭素原子の層であり、炭素原子はsp2混成により結合している。カーボンナノチューブは、直径が約1ナノメートル(nm)から約10nmまでの範囲の巻き上げたグラフェンシートである。グラフェン及びカーボンナノチューブの構造は、炭素原子間の高い結合エネルギー(約7.3電子ボルト(eV))のため、照射に対して堅牢であると予期される。それに加えて、グラフェン及びカーボンナノチューブの極小の厚さ、すなわちわずか1原子の厚さは、高エネルギー入射粒子に対する散乱断面積を最小化する。従って、グラフェン及びカーボンナノチューブは、耐放射線性用途にとって他に例を見ない利点をもたらす。
【0017】
グラフェン及びカーボンナノチューブは、耐放射線性基板102上に、例えば化学気相堆積(CVD)により直接成長させることもでき、又は別の場所で製造して耐放射線性基板102上に移すこともできる。グラフェン及びカーボンナノチューブ材料を堆積させ、成長させ、及び/又は移すための技術は当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。
【0018】
一般に、各トランジスタは、ソース領域とドレイン領域とを相互接続するチャネル領域と、誘電体(ゲート誘電体)材料によってチャネル領域から分離されたゲートとを含む。本明細書に記載されるトランジスタは、トップゲート型トランジスタであり、トップゲートコンタクトの下にあるカーボンベース材料の部分は、トランジスタのチャネル領域として働き、一方、トップゲートコンタクトの下から横方向外方に延びるカーボンベース材料の他の部分は、トランジスタのソース及びドレイン領域として働く。図2に示すように、トランジスタのソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分の上にコンタクト202が形成される。例示的な実施形態によれば、コンタクト202は、リソグラフィ及びリフトオフ技術を用いて適切なソース/ドレイン金属を堆積することにより形成される。これらの技術は当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。描写を簡単にするために図1乃至図5では単一のトランジスタの形成を示すが、所望であれば同じ方法で複数のトランジスタを形成できることが理解される。チャネル又はソース/ドレイン領域の外側の任意の余分なグラフェン/カーボンナノチューブをリソグラフィ及び酸素プラズマエッチングを用いて除去することができる。
【0019】
図3に示されるように、次に、トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料104の部分を含むカーボンベース材料104の露出部分を覆って、ゲート誘電体302の層が堆積される。適切なゲート誘電体の例には、それらに限定されないが、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン及び酸化ジルコニウムが含まれる。例示的な実施形態によれば、ゲート誘電体302は、約1nmから約20nmまでの厚さtまで堆積される。この厚さ範囲では、ゲート誘電体内での放射線損傷及び電荷発生は問題にならないと予期される。図3に示されるように、ゲート誘電体302は、各々のコンタクト202の少なくとも一部を被覆してもよい。特定の状況において、ソースとドレインとの間のチャネル領域全体にわたる効果的な静電的ゲート制御を保証するためにゲートがソース及びドレインのコンタクトの部分に重なるように設計されている場合には、ソース及びドレイン・コンタクトの部分を(例えば、ゲート誘電体で)被覆することは必須であり得る。
【0020】
最後に、図4に示されるように、ゲート誘電体302上に、トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料104の部分の上方に、トップゲートコンタクト402が形成される。この構成により、トップゲートコンタクト402の配置は、トランジスタのソース及びドレイン領域、すなわちゲートコンタクト402の下から横方向外方に延びるカーボンベース材料104の部分もまた画定する。トップゲートコンタクト402は、チャネル領域を通る伝導を調整することになる。例示的な実施形態によれば、トップゲートコンタクト402は、リソグラフィ及びリフトオフを用いて、ゲート誘電体302上に適切なゲート金属を堆積することにより形成される。金属ゲートコンタクトを形成するためのこれらのプロセスは当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。
【0021】
図5は、図4の構造体を切断した、すなわち線A1−A2に沿った断面を示す。図5に示される例示的な実施形態においては、トップゲートコンタクト402は、ソース及びドレイン領域コンタクト202に重なっていない。この構成は、アンダーラップ・ゲート設計と呼ばれることもある。
【0022】
上で強調したように、この耐放射線性/耐放射線化トランジスタデバイスは、耐放射線性/耐放射線化材料の層で被覆されたSiウェハからなる基板上に製造することもできる。このプロセスを、以下図6乃至図10を参照して詳細に説明する。
【0023】
製造プロセスを開始するために、特定の耐放射線性基板が準備される。図6に示される例において、耐放射線性基板602は、耐放射線性材料602bの層で被覆されたSiウェハ602aを含む。1つの例示的な実施形態において、耐放射線性材料602bはフッ素化SiO膜である。一例として、フッ素化SiO膜は、Siウェハ602aを希薄三フッ化窒素(NF)ガスの存在下で酸化することにより、Siウェハ602a上に形成することができる。例えば、その内容が引用により本明細書に組み入れられる非特許文献3を参照されたい。フッ素化SiO/Si基板は、SiOのような従来の酸化物基板と比べて、放射線で誘導される酸化物の電荷及び界面でのトラップの量が少ないこと、誘電率の変化が小さいこと、及び照射下での絶縁破壊電圧の低下が小さいことを含む、改善された放射線応答を示す。フッ素化SiOの耐放射線性は、フッ素化SiOを室温で長期間、例えば約3時間から約100時間まで貯蔵することを含む「エージング」プロセスによってさらに改善することができる。さらに、エージングプロセスは、試料を高温、例えば摂氏約75度(℃)までの温度の環境内で保持することによって加速することができる。
【0024】
別の例示的な実施形態において、耐放射線性材料602bの層は、熱的にアニールされたSiC膜である。SiC膜の熱的アニールは、その耐放射線性を高める。例えば、SiC膜を1,250℃で2時間アニールすることがSiCの耐放射線性を顕著に高める働きをすることができることが記載された、その内容が引用により本明細書に組み入れられる、Fuentesに対して発行された「Method for Fabricating a Silicon Carbide Film to Provide Improved Radiation Hardness」と題する特許文献1を参照されたい。
【0025】
一例として、SiC膜は、Siウェハ602a上にエピタキシャル成長させることができる。Siウェハ上でエピタキシャルSiCを成長させるプロセスは当業者に公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。いったん成長させると、SiC膜を、例えば約1,200℃から約1,600℃までの温度、例えば約1,250℃で、約1時間から約3時間までの持続時間にわたって熱的にアニールして、その耐放射線性を高める。随意に、酸素反応性イオンエッチング(ORIE)を用いて、アニールで残ったSiC膜/Siウェハからの任意のグラファイト副産物を除去することができる。熱的にアニールされたSiC膜は、SiOのような従来の酸化物基板と比べて、アニールが仲介した低応力から、放射線で誘導される電荷及び界面でのトラップの量が少ないこと、誘電率の変化が小さいこと、及び照射下での絶縁破壊電圧の低下が小さいことを含む、改善された放射線応答を示す。
【0026】
このプロセスにおいて、市販のSiC含有基板を使用することも可能である。そのような市販の基板においては、SiC膜は、典型的にはサファイアウェハ上に存在するか、又は独立した基板として存在する。このSiC膜は、上述の方法と同じ方法で処理することができる。すなわち、SiC膜を、例えば約1,200℃から約1,600℃までの温度、例えば約1,250℃で、約1時間から約3時間までの持続時間にわたって熱的にアニールして、その耐放射線性を高め、その後、ORIEによって、アニールで残った任意のグラファイト副産物を除去することができる。
【0027】
さらに別の例示的な実施形態において、耐放射線性材料602bの層は、エピタキシャルCaFである。すなわち、上で強調したように、CaFを、単独で、又はSiウェハ(例えば、Siウェハ602a)上にエピタキシャル成長させた膜として、本デバイスにおける耐放射線性材料として用いることができる。Siウェハ上にエピタキシャルCaFを成長させるためのプロセスは当業者に公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。耐放射線性に関するCaFの利点は上述した。さらに有利なことに、CaFをSi上でエピタキシャル成長させた場合、CaF/Si界面におけるフッ素がSi内の界面歪みの軽減を助長することができるので耐放射線性をさらに改善することができる。
【0028】
次に、図7に示されるように、耐放射線性基板602上にカーボンベース材料704が形成され(すなわち、堆積又は成長させる)、リソグラフィ及び酸素プラズマを用いて、望ましい寸法及び幾何学的形状にトリムされる。例示的な実施形態によれば、カーボンベース材料704は、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブの単層又は多層(例えば、数層の単分子層まで)を含むグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ膜である。
【0029】
上述のように、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブの構造は、炭素原子間の高い結合エネルギー(約7.3eV)のため、照射に対して堅牢であると予期される。それに加えて、グラフェン及びカーボンナノチューブの極小の厚さ、すなわちわずか1原子の厚さは、高エネルギー入射粒子に対する散乱断面積を最小化する。従って、グラフェン及びカーボンナノチューブは、耐放射線性用途にとって他に例を見ない利点をもたらす。
【0030】
耐放射線性基板602上にカーボンベース材料704を形成する方法は、使用される特定の耐放射線性材料に応じて変更することができる。上述のように耐放射線性材料602bがフッ素化SiO又はCaF層である場合には、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブは、CVDにより耐放射線性材料602bの層上に堆積させることもでき、又は別の場所で製造して耐放射線性材料602bの層上に移すこともできる。グラフェン及びカーボンナノチューブ材料を堆積させ、成長させ及び/又は移すための技術は当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。
【0031】
上述のように耐放射線性材料602bが熱的にアニールされたSiC膜である場合には、上記のように、グラフェン及び/又はカーボンナノチューブは、CVDにより耐放射線性材料602bの層上に堆積させることもでき、又は別の場所で製造して耐放射線性基板602bの層上に移すこともできる。あるいは、グラフェンは、耐放射線化SiC膜から成長させることができる。例示のみを目的として、SiC膜を加熱して、SiCをシリコン原子と炭素原子とに分解することができる。シリコン原子が昇華して、炭素に富んだ表面が残り、これが自己再組織化により1層又は複数のグラフェン層となることができる。エピタキシャルSiC膜からグラフェンを成長させるためのこの例示的な実施形態は、以下で説明される図11乃至図14においてさらに詳細に示される。
【0032】
上述の実施形態におけるように、カーボンベース材料は、トランジスタのチャネル領域及びソース/ドレイン領域を形成する。すなわち、トップゲートコンタクトの下にあるカーボンベース材料の部分は、トランジスタのチャネル領域として働き、一方、トップゲートコンタクトの下から横方向外方に延びるカーボンベース材料の部分は、トランジスタのソース及びドレイン領域として働く。図8に示されるように、トランジスタのソース及びドレイン領域として働くカーボンベース材料の部分の上にコンタクト802が形成される。例示的な実施形態によれば、コンタクト802は、リソグラフィ及びリフトオフ技術を用いて適切なソース/ドレイン金属を堆積することにより形成される。これらの技術は当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。チャネル又はソース/ドレイン領域の外側の任意の余分なグラフェン/カーボンナノチューブは、リソグラフィ及び酸素プラズマエッチングを用いて除去することができる。
【0033】
図9に示されるように、次に、トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料704の部分を含むカーボンベース材料104の露出部分を覆って、ゲート誘電体902の層が堆積される。適切なゲート誘電体の例には、それらに限定されないが、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン及び酸化ジルコニウムが含まれる。例示的な実施形態によれば、ゲート誘電体902は、約1nmから約20nmまでの厚さtまで堆積される。この厚さ範囲では、ゲート誘電体内での放射線損傷及び電荷発生は問題にはならないと予期される。図9に示されるように、ゲート誘電体902は、ソース及びドレイン・コンタクト802の少なくとも一部を被覆してもよい。上述のように、特定の状況において、ソースとドレインとの間のチャネル領域全体にわたる効果的な静電的ゲート制御を保証するためにゲートがソース及びドレインのコンタクトの部分に重なるように設計されている場合には、ソース及びドレインのコンタクトの部分を(例えば、ゲート誘電体で)被覆することは必須であり得る。
【0034】
最後に、図10に示されるように、ゲート誘電体902上に、トランジスタのチャネル領域として働くカーボンベース材料704の部分の上方にトップゲートコンタクト1002が形成される。この構成により、トップゲートコンタクト1002の配置は、トランジスタのソース領域及びドレイン領域、すなわちゲートコンタクト1002の下から横方向外方に延びるカーボンベース材料704の部分もまた画定する。トップゲートコンタクト1002は、チャネル領域を通る伝導を調整することになる。例示的な実施形態によれば、トップゲートコンタクト1002は、リソグラフィ及びリフトオフを用いて、ゲート誘電体902上に適切なゲート金属を堆積することにより形成される。金属ゲートコンタクトを形成するためのこれらのプロセスは当業者には公知であり、従って本明細書ではさらに説明はしない。描写を簡単にするために図6乃至図10には単一のトランジスタの形成を示すが、所望であれば同じ方法で複数のトランジスタを形成できることが理解される。
【0035】
本明細書で記載された方式で製造されたトランジスタは、放射線の影響に対して不感受性となることができる一方で、同時に高いキャリア移動度を維持し、高性能用途を可能にすることができる。すなわち、耐放射線性基板と、トランジスタ・チャネルとしてのグラフェン及び/又はカーボンナノチューブとを組み合わせることにより、得られるデバイス構造体は優れた放射線応答を示すと予期される。
【0036】
図11乃至図14は、熱的にアニールされたエピタキシャルSiCが耐放射線化材料であり、かつ、カーボンベース材料、この場合はグラフェンが、SiC材料から成長させたものである場合の、上述の例示的な実施形態を示す。図11に示されるように、Siウェハ1102が準備され、SiC膜1104をSiウェハ1102から成長させる。一例として、エピタキシャルSiC膜は、1,200℃でメチルトリクロロシランを用いたCVDプロセスによりSiウェハ上に成長させることができる。例えば、その内容が引用により本明細書に組み入れられる非特許文献4を参照されたい。
【0037】
次に、SiC膜1104は、熱的にアニールされる。図12を参照されたい。上述のように、SiC膜を約1,200℃から約1,600℃までの温度、例えば約1,250℃で、約1時間から約3時間までの持続時間にわたって熱的にアニールすることで、膜の耐放射線性を高める。その後、上述のように、ORIEを用いて、アニールで残った任意のグラファイト副産物を除去することができる。
【0038】
図13に示されるように、耐放射線化SiC膜には、この耐放射線化SiC膜をアニール前の膜と区別するようにここで符号1301が付され、次にこれを用いて、1つ又は複数のグラフェン層1302を成長させる。例えば、約1,200℃から約1,600℃までの温度でSiC膜を加熱すると、SiCがそれぞれシリコン原子と炭素原子とに分解することになる。シリコン原子が昇華して、残された炭素は、自己再配列により1層又は複数のグラフェン層1302となることができる。図13に示されるように、形成されるグラフェンは、おそらくはSiC膜1301の表面を被覆するであろう。グラフェンを例えばウェハの活性領域に局所化するために、リソグラフィ及び酸素プラズマを使用して、グラフェンを望ましい寸法及び幾何学的形状にトリムすることができる。その結果として、パターン形成されたグラフェン1402が得られる。図14を参照されたい。
【0039】
本発明の例示的な実施形態を本明細書において説明したが、本発明は、これらの実施形態そのままに限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により種々の他の変更及び改変が行われ得ることが理解される。
【符号の説明】
【0040】
102、602:耐放射線性基板
104、704:カーボンベース材料
202、802:コンタクト
302、902:ゲート誘電体
402、1002:トップゲートコンタクト
602a、1102:Siウェハ
602b:耐放射線材料
1104:SiC膜
1301:耐放射線化SiC膜
1302:グラフェン層
1402:パターン形成されたグラフェン
図1
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