特許第5914524号(P5914524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914524
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】3Dカメラによる摩擦係数推定
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/068 20120101AFI20160422BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20160422BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20160422BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20160422BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20160422BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B60W40/068
   H04N5/225 C
   H04N5/225 Z
   B60T8/172 B
   B60W40/06
   G01B11/30 W
   G01N21/17 F
【請求項の数】10
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-552840(P2013-552840)
(86)(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公表番号】特表2014-512291(P2014-512291A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】DE2012100029
(87)【国際公開番号】WO2012110030
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】102011011182.4
(32)【優先日】2011年2月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ラントラー・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ・シュテファン
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083765(JP,A)
【文献】 特開2001−334921(JP,A)
【文献】 特開2007−137138(JP,A)
【文献】 特開2005−084959(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/110030(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/068
B60T 8/172
B60W 40/06
G01B 11/30
G01N 21/17
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dカメラを用いて少なくとも一枚の車両前方の周辺の画像が撮影される3Dカメラを用いた摩擦係数推定の方法であって、該3Dカメラの画像データから、車両前方全域において、道路表面の凹凸プロファイルが、作成され、該凹凸プロファイルから、車両前方の道路表面の状態が分類され、その分類された道路表面の状態に対応した摩擦係数から、車両前方における道路表面の、予測すべきその場所の摩擦係数が推定され、凹凸プロファイルにおいて実際の道路表面よりも低い領域に反射が分類されることにより、道路表面の凹凸プロファイルから道路上の反射面として水面を認識することを特徴とする3Dカメラを用いた摩擦係数推定の方法。
【請求項2】
3Dカメラを用いて少なくとも一枚の車両前方の周辺の画像が撮影される3Dカメラを用いた摩擦係数推定の方法であって、該3Dカメラの画像データから、車両前方全域において、道路表面の凹凸プロファイルが、作成され、該凹凸プロファイルから、車両前方の道路表面の状態が分類され、その分類された道路表面の状態に対応した摩擦係数から、車両前方における道路表面の、予測すべきその場所の摩擦係数が推定され、凹凸プロファイルから、雪が、前方を走っている車両のタイヤによって低くなった轍、並びに、2D画像データ、特に、3Dカメラの少なくとも一台の単眼カメラのグレースケール画像データからの情報も考慮することにより認識されることを特徴とする3Dカメラを用いた摩擦係数推定の方法。
【請求項3】
凹凸プロファイルから砂利敷きは、凹凸プロファイルの断面の顕著なノイズから認識されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
凹凸プロファイルに加え、3Dカメラの少なくとも一台の単眼カメラの2D画像データが、エッジ認識メソッドによって、該凹凸プロファイルから導き出される情報をサポートするために、評価されることを特徴とする請求項1からのうち何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
3Dカメラがステレオ・カメラであることを特徴とする請求項1からのうち何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
3Dカメラが、PMD(Photonic Mixer Device)カメラであることを特徴とする請求項1からのうち何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一枚の車両前方の周辺の画像を撮影するための3Dカメラを包含する摩擦係数推定用の装置であって、3Dカメラの画像データから車両前方全体の道路表面の凹凸プロファイルを作成し、凹凸プロファイルから、車両前方の道路表面の状態を分類し、その分類された道路表面の状態に対応した摩擦係数から、車両前方における道路表面の、予測すべきその場所の摩擦係数を推定する評価手段が設けられ、凹凸プロファイルにおいて実際の道路表面よりも低い領域に反射が分類されることにより、道路表面の凹凸プロファイルから道路上の反射面として水面を認識することを特徴とする摩擦係数推定用の装置。
【請求項8】
少なくとも一枚の車両前方の周辺の画像を撮影するための3Dカメラを包含する摩擦係数推定用の装置であって、3Dカメラの画像データから車両前方全体の道路表面の凹凸プロファイルを作成し、凹凸プロファイルから、車両前方の道路表面の状態を分類し、その分類された道路表面の状態に対応した摩擦係数から、車両前方における道路表面の、予測すべきその場所の摩擦係数を推定する評価手段が設けられ、凹凸プロファイルから、雪が、前方を走っている車両のタイヤによって低くなった轍、並びに、2D画像データ、特に、3Dカメラの少なくとも一台の単眼カメラのグレースケール画像データからの情報も考慮することにより認識されることを特徴とする摩擦係数推定用の装置。
【請求項9】
該3Dカメラが、ステレオ・カメラであることを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
該3Dカメラが、PMD(Photonic Mixer Device)カメラであることを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(空間的解像度を有する)3Dカメラを用いた摩擦係数の推定方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DE102009033219A1は、ある車線における車両の前方の道路の特徴を割出すための方法及び装置を開示している。画像取得手段、或いは、車両固有運動データから、車両の前方にある車線の道路の特徴を割出している。該画像取得手段は、車両の前方に搭載され、画像取得ユニットを包含するカメラであることができる。割出された道路の特徴に応じて、アクティブなシャーシ・コントロールや可変ダンパーを制御できる。
【0003】
事故回避は、ドライバー・アシスタント・システムにおいて、ますますその意味が増してきている。中でも特に緊急ブレーキシステムは、重要な貢献をしている。しかしその効果は、車両のタイヤに対する路面の摩擦係数(coefficient of friction)に大きく依存している。特に濡れは、乾燥した路面と比較して、摩擦係数を非常に低下させる。
【0004】
WO2011/007015A1は、車両におけるレーザーを用いた摩擦係数の段階的評価の方法を開示している。ここでは、走行路面に向けられたライダー・センサーやCVセンサーのシグナルが、評価され、続いて、特に、振幅に基づいて、測定された走行路面に摩擦係数が割り当てられる。例えば、走行路面が、雪、アスファルト、氷のいずれであるかが推測される。
【0005】
従来の技術における摩擦係数を割出すための方法には、付加的なライダー・センサーが高価であること、車載されている該ライダー・センサーは、路面に向けられなければならないこと、そして、路面の摩擦係数が十分に前もって予測できないことと言った欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 102009033219 A1
【特許文献2】WO 2011/007015 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の課題は、これらの欠点を排除し、安価であるにもかかわらず信頼性が高く、予見的な摩擦係数の推定を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、車両周辺の少なくとも一枚の画像を3Dカメラによって撮影することにより解決される。該3Dカメラの画像データからは、車両前方全域において、道路表面の凹凸プロファイルが測定され、作成される。そして、該凹凸プロファイルから、(車両前方の道路表面の)摩擦係数を推測することができる。オプション的に、特別な3Dパターンを評価することも可能である。
【0009】
好ましい実施形態では、道路表面の凹凸プロファイルから道路上の反射面として水面を認識することができる。即ち、水膜や水たまりに起因する反射は、凹凸プロファイルにおいて実際の道路表面よりも低い領域に分類することができる。これは、凹凸プロファイルにおいて、明らかに認識できる。
【0010】
また、凹凸プロファイルから、雪は、前方を走っている車両のタイヤによって低くなった轍から認識できる。付加的に2D画像データの情報、特に、3Dカメラの少なくとも一台の単眼カメラのグレースケール画像も考慮されることが特に好ましい。
【0011】
好ましい実施形態では、凹凸プロファイルから砂利敷きは、凹凸プロファイルの断面の顕著なノイズから認識される。
【0012】
凹凸プロファイルに加え、3Dカメラの少なくとも一台の単眼カメラの2D画像データが、特に、エッジ認識メソッドによって、該凹凸プロファイルから導き出される情報をサポートするために、評価されることが好ましい。
【0013】
更に、本発明は、少なくとも一枚の車両周辺の画像を撮影するための3Dカメラ摩擦係数推定用の装置にも関する。3Dカメラの画像データから車両前方全体の道路表面の凹凸プロファイルを作成し、凹凸プロファイルから道路表面の場所で予測される摩擦係数を推定する評価手段が設けられている。
【0014】
該3Dカメラとしては、ステレオ・カメラやPMD(Photonic Mixer Device)カメラやPMDセンサーが好ましく採用される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって、発明を詳しく説明する。
【0016】
ステレオ・カメラは、少なくとも一枚の車両前方の周囲の画像を撮影し、続いて、該画像から車線の凹凸プロファイルを作成する。該凹凸プロファイルの分析から、例えば、走行方向に延びた二つの、それぞれの横方向の幅が、おおよそタイヤの幅に相当し、それらの横方向での間隔が、おおよそ車幅に相当、例えば1.5メートルであ凹みが割出されたとする。その結果からは、雪が積もっている、或いは、舗装されていない道路表面(例えば、ぬかるんだ農道)である、のいずれかであると分類されることができる。ステレオ・カメラの画像取得ユニットの2Dカメラ画像の分析からは、該道路の表面が、白、或いは、暗い色であるかを割出すことができる。即ち、前者であれば、路面に雪が積もっており、その他の場合、舗装されていない道路表面であると割出される。そしてこれらの結果から、それぞれの路面の摩擦係数、例えば、雪の場合、μ<0.2、農道の場合約0.2から0.3、が推定される。