(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る車両1に搭載される電装機器等を示す構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るアース接続構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るアース接続構造を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変更例に係るアース接続構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係るアース接続構造を示す平面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るアース接続構造を示す側面図である。
【
図7】
図7(a)は第2実施形態に係るワッシャーを示す斜視図であり、
図7(b)は第2実施形態に係るワッシャーを示す側面図であり、
図7(c)は第2実施形態に係るワッシャーを示す平面図である。
【
図8】
図8(a)は第2実施形態に係る接続金具を示す斜視図であり、
図8(b)は第2実施形態に係る接続金具を示す展開図である。
【
図9】
図9(a)は第2実施形態に係る接続金具を示す平面図であり、
図9(b)は第2実施形態に係る接続金具を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の変更例に係るアース接続構造を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るアース接続構造を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るアース接続構造を示す側面図である。
【
図13】
図13(a)は第3実施形態に係るワッシャーを示す斜視図であり、
図13(b)は第3実施形態に係るワッシャーを示す側面図であり、
図13(c)は、第3実施形態に係るワッシャーを示す平面図である。
【
図14】
図14(a)は第3実施形態に係る接続金具を示す平面図であり、
図14(b)は第3実施形態に係る接続金具を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係るアース接続構造を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係るアース接続構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るアース接続構造について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
なお、図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0024】
したがって、具体的な寸法などは説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0025】
(1)第1実施形態
第1実施形態に係るアース接続構造について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(1.1)車両の概略構成
第1実施形態に係るアース接続構造100が用いられる車両1の概略構成について、
図1を参照しながら説明する。車両1は、自動車(電気自動車、ハイブリッド電気自動車等を含む)であるものとする。
【0027】
車両1には、複数の電装機器10A〜10Hが搭載されている。電装機器10A〜10Hには、芯線と被覆材とで構成された単芯丸型電線からなる複数本のアース電線20A〜20Hがそれぞれ接続されている。複数本のアース電線20A〜20Hは、第1実施形態に係るアース接続構造100によって車両1のボディBDにアースされる。
【0028】
具体的には、電装機器10A〜10Dにそれぞれ接続される複数本のアース電線20A〜20Dは接続箱110Aで一括してまとめられ、電装機器10E〜10Hにそれぞれ接続される複数本のアース電線20E〜20Hは接続箱110Bで一括してまとめられる。そして、各々の接続箱110A,110Bから引き出された導通連結部130に接続されたアース端子部120が車両1のボディBDに接続される。これにより、複数の電装機器10A〜10Hが、車両1のボディBDにアースされる。
【0029】
電装機器10A〜10Hやアース電線20A〜20H、接続箱110A,110Bのそれぞれについては全て類似の構成であるため、以下においては、電装機器10A〜10Hを単に電装機器10と称し、アース電線20A〜20Hを単にアース電線20と称し、接続箱110A,110Bを単に接続箱110と称する。
【0030】
(1.2)アース接続構造の構成
第1実施形態に係るアース接続構造100の構成について、
図2(a)、2(b)、3を参照しながら説明する。
【0031】
アース接続構造100は、車両1に搭載される複数の電装機器10にそれぞれ接続される複数本のアース電線20を車両1のボディBDに接続するものである。アース接続構造100は、複数本のアース電線20がそれぞれ接続される接続箱110(被接続部)と、車両1のボディBDに導通状態で接続されるアース端子部120と、接続箱110とアース端子部120とを導通接続する導通連結部130とを備える。
【0032】
接続箱110は、アース電線20と導通連結部130とを導通状態で接続する。接続箱110には、各々のアース電線20の一端21と導通連結部130の一端131が圧着や溶接等により固定される。
【0033】
各々のアース電線20の一端21及び導通連結部130の一端131は、必ずしも圧着や溶接等により接続箱110に固定される必要はなく、アース電線20と導通連結部130とが導通状態で接続されていればよい。
【0034】
アース端子部120は、導通連結部130の他端132に接続される。アース端子部120には、ボディBDに固定する際に用いられるボルトB(固定部材)が挿通する円形状のボルト挿通孔121が形成されている。アース端子部120は、ボディBDに導通状態で接続されればよく、大きさや形状等については適宜変更できる。
【0035】
ボルトBは、導通性を有しており、ボディBDに溶接固定されたナットNとともにボディBDにアース端子部120を固定する。
図2(b)に示すように、ボルトBは、ナットNに螺合されるボルト部BBと、アース端子部120をボディBD側に押さえ付けるための円盤状のフランジBFとを備える。ボルト部BBには、ボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止めなどのナットN内の外装を削り取る凹部B1が形成されている。
【0036】
導通連結部130は、接続箱110とアース端子部120との間に設けられる。導通連結部130の一端131は、接続箱110に導通状態で接続される。導通連結部130の他端132は、アース端子部120に導通状態で接続される。
【0037】
導通連結部130は、低いインダクタンスを有する低インダクタンス材130Aによって構成される。第1実施形態では、導通連結部130を構成する部材として、複数本のアース電線20に基づく電流容量によって径が設定される単芯丸型電線よりもインダクタンスが低い低インダクタンス材130Aが用いられる。つまり、低インダクタンス材130Aは、背景技術で説明した導通連結部(電流容量により径が設定される単芯丸型電線)よりも低いインダクタンスを有する。
【0038】
具体的には、低インダクタンス材130Aは、可撓性を有する平型編組線によって形成される。低インダクタンス材130Aの延在方向に直交する断面形状は、平型状(楕円状や矩形状を含む)である。低インダクタンス材130Aは、平型編組線に限らず、平型にした素線やバスバー等、延在方向に直交する断面形状が平型状の導体よって形成されてもよい。
【0039】
(1.3)比較評価
低インダクタンス材130Aと公知の単芯丸型電線とを導通連結部130に使用した場合の比較評価について、表1を参照しながら説明する。
【0040】
第1実施形態に係る低インダクタンス材130Aは、平型編組線によって形成される。低インダクタンス材130Aの延在方向に直交する断面形状は、平型状である。一方、単芯丸型電線は、芯線及び被覆材によって形成される。単芯丸型電線の延在方向に直交する断面形状は、丸型状である。
【表1】
【0041】
交流電流の周波数をfとし、導通連結部130のインダクタンスをLとした場合、導通連結部130のインピーダンスZはZ=2πfLで表される。表1に示すように、低インダクタンス材130A(平型編組線)と単芯丸型電線とを比較すると、インダクタンスLが145 nHから97 nHに小さくなっている。このため、インピーダンスZが0.1 MHzの周波数で0.09 Ωから0.06 Ωに低下し、1 MHzの周波数で0.91 Ωから0.61 Ωに低下し、10 MHzの周波数で9.11 Ωから6.09 Ωに低下する。つまり、低インダクタンス材130Aは、単芯丸型電線と比較して約2/3の低インピーダンス化を図ることができる。
【0042】
(1.4)作用・効果
第1実施形態では、導通連結部130は、低いインダクタンスを有する低インダクタンス材130A、すなわち、背景技術で説明した導通連結部(電流容量により径が設定される単芯丸型電線)よりも低いインダクタンスを有する低インダクタンス材130Aによって構成される。このため、低インダクタンス材130Aによりインピーダンスを小さくすることができるので、特に、高周波数の交流電流成分に対する低インピーダンス化を実現できる。導通連結部130の低インピーダンス化によって電位降下が生じ難く、電位降下の作用によってノイズ電圧が上昇してしまうことを抑制でき、電位上昇に起因するノイズを抑制することができる。その結果、車両に搭載される電装機器へのノイズによる悪影響(電装機器が不安定になることや機能しないこと)を防止することができる。
【0043】
第1実施形態では、接続箱110とアース端子部120とを導通接続する導通連結部130が設けられている。これにより、アース電線20を接続箱110まで配索すれば、接続箱110からボディBDまでは導通連結部130のみの配索で済む。このため、導通連結部130の配索性能を確保することができる。
【0044】
第1実施形態では、低インダクタンス材130Aの断面形状は、平型状である。これにより、断面形状が円型状である単芯丸型電線と比較して、低インダクタンス材130Aではインピーダンスをより小さくすることができる。このため、特に、高周波数の交流電流成分に対して導通連結部130の低インピーダンス化を実現できる。
【0045】
第1実施形態では、低インダクタンス材130Aは、平型編組線によって形成される。これにより、可撓性に優れているため、導通連結部130の配索性能を向上させることができる。
【0046】
(1.5)変更例
第1実施形態に係るアース接続構造100の変更例について、
図4を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に係るアース接続構造100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0047】
第1実施形態に係るアース接続構造100では、導通連結部130は低インダクタンス材130Aのみによって構成される。これに対して、変更例に係るアース接続構造100Aでは、導通連結部130は、低インダクタンス材130Aと、低インダクタンス材130Aを被覆する被覆部材130Bとによって構成される。被覆部材130Bは、例えば、熱収縮チューブ、光硬化樹脂などを用いてもよく、塩化ビニール、エラストマ、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの樹脂を金型成型して設けてもよい。
【0048】
このように、変更例に係るアース接続構造100Aの導通連結部130では、低インダクタンス材130Aが被覆部材130Bによって被覆される。これにより、低インダクタンス材130Aを劣化などから保護でき、低インダクタンス材130Aの劣化を防止することができる。このため、低インダクタンス材130Aの耐久性を向上させることができる。また、被覆部材130Bは、低インダクタンス材130Aの形状を平型に保持する機能を有する。
【0049】
(2)第2実施形態
第2実施形態に係るアース接続構造について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に係るアース接続構造100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0050】
(2.1)アース接続構造の構成
第2実施形態に係るアース接続構造100Aの構成について、
図5―9を参照しながら説明する。
【0051】
図5、6に示すように、アース接続構造100Aは、アース端子部120と車両1のボディBDとの間に設けられる円盤状のワッシャー140(第1被締結材)を更に備える。第2実施形態では、ワッシャー140は、鉄材によって形成されるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、銅やアルミなどの金属材によって形成されていてもよい。
【0052】
図7(a)−7(c)に示すように、ワッシャー140には、ボルトBが挿通する円形状のボルト挿通孔141が形成されている。ワッシャー140は、ボディBD側に向けて突出する複数(図面では6つ)の突起142を備える。すなわち、突起142は、ワッシャー140のボディBDに当接する側の面に形成されている。
【0053】
突起142は、ワッシャー140と別体に設けられている。具体的には、突起142は、ワッシャー140の溝部143に固定される基部142Aと、基部142Aに連続して先端に向かって鋭利状(円錐状)に形成される先端部142Bとを備える。先端部142Bとワッシャー140の溝部143との間には、空隙144が形成されている。
【0054】
突起142は、ボルトBとナットNとによってワッシャー140が締め付けられるときに、突起142がボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装E(
図6の太線)を削り取りながらボディBDに接触する。削り取られたボディBDの外装Eは、空隙144に入り込む。このため、ワッシャー140とボディBDとの導通性を確保できる。ワッシャー140は、硬度を増大させるために、突起142が形成された後に焼き入れ加工が施されることが好ましい。
【0055】
アース接続構造100Aは、第1実施形態で説明した接続箱110の代わりに、複数本のアース電線20と導通連結部130とを通電状態で接続可能な接続金具150(被接続部)を備える。
【0056】
図8、9に示すように、接続金具150は、複数本のアース電線20と導通連結部130とを導通状態で接続する。接続金具150は、長尺状の板材(金属材)を折曲中心線WLに沿って折り曲げることによって形成される。
【0057】
接続金具150には、複数本のアース電線20と接続される電線接続溝151と、導通連結部130と接続される連結部接続溝152とが形成される。
【0058】
電線接続溝151にアース電線20の一端21が挿入されることによって、アース電線20が位置決めされる。連結部接続溝152に導通連結部130の一端131が挿入されることによって、導通連結部130が位置決めされる。そして、
図9(a),9(b)に示すように、アース電線20の一端21が、抵抗溶接Sにより電線接続溝151に固定される。同様に、導通連結部130の一端131が、抵抗溶接Sにより連結部接続溝152に固定される。
【0059】
なお、抵抗溶接Sとは、溶接する母体(アース電線20や導通連結部130)に電流を流してジュール熱を発生させることによって母体を溶解させると同時に加圧することによって接続する方法である。
【0060】
第2実施形態では、導通連結部130の他端132も、抵抗溶接Sにより端子部120に固定される(
図5参照)。また、ナットNは、抵抗溶接SによりボディBDに固定される(
図6参照)。つまり、アース接続構造100A内の各接続部位は、全て抵抗溶接Sにより固定される。
【0061】
(2.2)作用・効果
第2実施形態では、ワッシャー140は、ボディBD側に向けて突出する突起142を備える。突起142がボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装Eを削り取るため、ワッシャー140とボディBDとの導通性が向上する。このため、ボディBDの外装Eが削られない場合と比較して、ワッシャー140とボディBDの地金との間(ボルトB周辺)おける電気抵抗が小さくなり、特に、直流電流成分に対する電気抵抗が小さくなる。このため、ボルトB周辺で生じる電位降下の作用によってノイズ電圧が上昇してしまうことを抑制でき、電位上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0062】
例えば、幅20 mm、長さ200 mm、断面積14 mm
2の条件の低インダクタンス材130Aを使用した場合、低インダクタンス材130Aの電気抵抗が約0.33 mΩであり、ワッシャー140とボディBDとの間の電気抵抗が約0.4〜0.6 mΩとなった。つまり、ボルトB周りの電気抵抗が0.5 mΩ程度に小さくなり、ボルトBをボディBDの電位により近づいた電位にすることができる。従って、電位上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0063】
第2実施形態では、電流が通過するアース接続構造100A内の各接続部位は、抵抗溶接Sにより固定される。これにより、電流が通過するアース接続構造100A内の各接続部位での電位差が低減され、アース電線20から導通連結部130までの電流干渉を小さくできる。このため、接続金具150とボディBDとの間を等電位化することができ、背景技術で説明した第1従来例のアース接続構造のような複数本のアース電線をボディBDに直接接続する場合とほぼ同等のアース性能を得ることができる。
【0064】
(2.3)変更例
第2実施形態に係るアース接続構造100Aの変更例について、
図10を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係るアース接続構造100Aと同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0065】
第2実施形態では、ワッシャー140は、アース端子部120と車両1のボディBDとの間に設けられる。これに対して、変更例に係るアース接続構造100Aは、第2実施形態で説明したワッシャー140に加えて、ボルトB(固定部材)とアース端子部120との間に設けられる円盤状のワッシャー160をさらに備える。ワッシャー160の構成については、ワッシャー140の構成と同様である。
【0066】
変更例では、第2実施形態の作用・効果に加えて、ワッシャー160とアース端子部120との導通性を確保でき、アース端子部120をより確実に車両1のボディにアースすることができる。
【0067】
(3)第3実施形態
第3実施形態に係るアース接続構造について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係るアース接続構造100や第2実施形態に係るアース接続構造100Aと同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0068】
(3.1)アース接続構造の構成
第3実施形態に係るアース接続構造100Bの構成について、
図11―14を参照しながら説明する。
【0069】
図11、12に示すように、アース接続構造100Bは、第2実施形態で説明したワッシャー140,160を備える。
【0070】
図13に示すように、ワッシャー140の外周縁には、ワッシャー140の内周側(すなわち、ボルト挿通孔141や突起142側)に向かう液体の侵入を防止するための防水パッキン140A(第1防水部材)が設けられている。防水パッキン140Aは、シリコンゴム等によって形成されている。
【0071】
ワッシャー160の構成についても、ワッシャー140と同様である。すなわち、
図12に示すように、ワッシャー160の外周縁にも、ワッシャー160の内周側に向かう液体の侵入を防止するための防水パッキン160A(第2防水部材)が設けられている。
【0072】
アース接続構造100Bでは、接続金具150が樹脂性の封止材170によって被覆される。具体的には、
図11、12、14に示すように、電線接続溝151に抵抗溶接Sによりアース電線20が固定され、かつ連結部接続溝152に抵抗溶接Sにより導通連結部130が固定されている状態において、接続金具150近傍が封止材170によって被覆される。
【0073】
(3.2)作用・効果
第3実施形態では、ワッシャー140に、防水パッキン140Aが設けられる。これにより、ワッシャー140の内周側に水などの液体が侵入することなく、突起142によってボディBDの塗装(カチオン塗装面)や錆止め等の外装Eが削り取られた箇所へ液体が付着することを防止できる。このため、ボディBDの外装Eの耐久性を向上させることができる。
【0074】
第3実施形態では、ワッシャー160に、防水パッキン160Aが設けられる。これにより、ワッシャー160の内周側に水などの液体が侵入することなく、ボルトBとアース端子部120との接触部分に液体が付着することを防止できる。このため、ボルトBやアース端子部120に電位差が生じても、電気腐食(イオン酸化)が発生することを抑制することができる。この結果、腐食によるボルトBの緩みや電極浮きが生じにくく、ボルトBの脱落を防止することができる。また、ボルトBが腐食しないため、ボルトBの経年劣化が生じることなく、導通連結部130とボディBDとの間の等電位化を実現することができる。
【0075】
第3実施形態では、接続金具150は、封止材170によって被覆される。これにより、接続金具150の内部は勿論、アース電線20の内部(被覆材の内周に位置する芯線)への液体が侵入することを防止でき、接続金具150やアース電線20の内部での電気腐食(イオン酸化)が生じることを抑制することができる。
【0076】
第3実施形態では、アース接続構造100Bは、ワッシャー140,160を備えているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ワッシャー140のみを備えていてもよい。また、接続金具150は、必ずしも封止材170によって被覆される必要はない。
【0077】
(4)第4実施形態
第4実施形態に係るアース接続構造について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に係るアース接続構造100、第2実施形態に係るアース接続構造100A、第3実施形態に係るアース接続構造100Bと同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0078】
(4.1)アース接続構造の構成
第4実施形態に係るアース接続構造100Cの構成について、
図15、16を参照しながら説明する。
【0079】
アース接続構造100Cは、複数本のアース電線20のうち、少なくとも1つのアース電線20(
図15では最も上側のアース電線20)に取り付けられたフェライト180(磁性体)を備える。
【0080】
フェライト180は、高周波数のノイズを吸収するものである。フェライト180は、複数本のアース電線20のうちのノイズ発生源とされるアース電線20の一端21側に取り付けられる。なお、ノイズ発生源とされる電線20とは、最も大きい高周波数のノイズが生じる電線や、ノイズの発生頻度が最も多い電線、最も高電圧で使用される電装機器10に接続された電線などを示す。
【0081】
第4実施形態では、フェライト180は、ノイズ発生源とされるアース電線20のみに取り付けられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、全てのアース電線20に取り付けられていてもよい。
【0082】
アース接続構造100Cは、接続金具150及びフェライト180を含む複数本のアース電線20を覆う樹脂性のケース190をさらに備える。なお、アース接続構造100Cは、必ずしもケース190を備える必要はなく、ケース190を備えなくてもよい。
【0083】
(4.2)作用・効果
第4実施形態では、複数本のアース電線20のうちのノイズ発生源とされるアース電線20に取り付けられる磁性体のフェライト180を備える。これにより、高周波数の電流が接続金具150に流入することを阻止でき、接続金具150内の電位差を抑制することができる。このため、接続金具150内での電位上昇を抑制でき、ボディBDの電位により近づいた電位にすること(すなわち、接続金具150とボディBDとの間を等電位化すること)ができる。従って、電位上昇に起因するノイズを抑制することができる。
【0084】
第4実施形態では、ケース190は、接続金具150及びフェライト180を含む複数本のアース電線20を覆う。これにより、接続金具150及びフェライト180の内部は勿論、アース電線20の内部(被覆材の内周に位置する芯線)への液体が侵入することを防止し易くなり、接続金具150やフェライト180、アース電線20の内部での電気腐食(イオン酸化)が生じることを抑制できる。
【0085】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0086】
例えば、被接続部としては、接続箱110や接続金具150であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、複数本のアース電線20を一括してまとめられる構成であればよい。
【0087】
また、アース端子部120としては、ボディBDに導通状態で接続されればよく、各実施形態で説明した構成や形状以外であってもよいことは勿論である。さらに、アース端子部120をボディBDに固定する手段として、ボルトB及びナットNであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、アース端子部120をボディBDに導通状態で固定できればよい。
【0088】
また、各実施形態に係る導通連結部130(低インダクタンス材130A)は、例えば、車両に搭載されたバッテリーのマイナス端子と車両のボディとを導通状態で接続するためのバッテリーアース線としても好適に用いることができる。導通連結部130をバッテリーアース線として用いる場合、低インダクタンス材130Aが被覆部材130Bによって被覆されていることが好ましく、導通連結部130の一端131にもアース端子部120のような端子が接続されていることが好ましい。
【0089】
なお、本発明のアース接続構造としては、第1実施形態〜第4実施形態で説明した様々な構成を組み合わせてもよいことは勿論である。
【0090】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。