(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
Kitキナーゼは生物学的に重要かつ臨床的に確認された薬物標的である
KitおよびKitリガンド;Kitシグナル伝達の生物学的役割
ヒト受容体チロシンキナーゼKit(c−Kitまたは幹細胞因子受容体とも呼ばれる)は、ウイルス癌遺伝子v−Kitの細胞ホモログとして同定された[Yarden et al. (1987) EMBO J 6:3341]。1988年に、マウスのwhite spotting遺伝子座がKit遺伝子をコードすることが見出され、その後、新規な肥満細胞増殖因子が、Kit受容体のリガンドとして同定された[Geissler et al. (1988) Cell 55:185;Chabot et al. (1988) Nature 335:88]。その後まもなく、Kit受容体のリガンドのコード配列がマウスのsteel遺伝子座にマッピングされ、タンパク質が造血幹細胞の増殖因子として同定された[Zsebo et al. (1990) Cell 63:213;Zsebo et al. (1990) Cell 63:195]。このようにKitリガンドは、肥満細胞増殖因子、steel因子、および幹細胞因子としても知られている。
【0003】
Kitタンパク質は、その細胞外部分内の5つの免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン、およびその細胞内部分内のチロシンキナーゼドメインを含む。二量体Kitリガンドの、2個のKit受容体分子への結合は、受容体の二量体化およびチロシンキナーゼ活性の活性化をもたらし、受容体はチロシン残基において自己リン酸化され、生じたホスホチロシン残基は、ホスホチロシン結合のSH2およびPTBドメインを含むシグナル伝達分子のための、ドッキング部位として機能する。Kit配列内の特定の点変異はまた、受容体チロシンキナーゼのリガンド非依存性活性化にもつながる可能性がある[Kitayama et al. (1995) Blood 85:790]。
【0004】
Kit受容体チロシンキナーゼは、造血細胞、メラノサイト、肥満細胞、末梢血好酸球、血管平滑筋細胞、および上皮細胞を含む種々の細胞型において発現される[Reber et al. (2006) Eur J Pharmacol 533:327]。Kitは、様々な酵素およびリン酸化Kitに結合するアダプタータンパク質によって媒介される、複数のシグナル伝達経路に関与し、これにはRas/MAPK、Jak/STAT、およびAKT経路が含まれ[Roskoski (2005) Biochem Biophys Res Commun 338:1307]、これらは、走化性、増殖、分化および生存などを含む多様な生物学的応答に関与している[Roennstrand (2004) Cell Mol Life Sci 61:2535]。Kitシグナル伝達は、赤血球形成、リンパ球形成、肥満細胞の発達および機能、巨核球形成、配偶子形成およびメラニン形成において重要である[Roennstrand (2004) Cell Mol Life Sci 61:2535]。
【0005】
Kitの異常な活性化が悪性疾患に関与する
Kitチロシンキナーゼの異常な活性化は、多くの癌に関与する。いくつかの腫瘍の種類においては自己分泌ループが発見されており、すなわち、腫瘍がKitリガンドおよびKitの両方を生成し、これが自律的刺激につながる。これらには、小細胞肺癌、大腸癌、乳癌、婦人科腫瘍および神経芽細胞腫が含まれる[Krystal et al. (1996) Cancer Res 56:370;Inoue et al. (1994) Cancer Res 54:3049;Roennstrand (2004) Cell Mol Life Sci 61:2535]。Kitの過剰発現は、胸腺癌[Pan et al. (2004) J Pathol 202:375]および特定の黒色腫[Smalley et al. (2009) Histol Histopathol 24:643]の発症に関与している。Kitの機能獲得変異は、肥満細胞性白血病、急性骨髄性白血病[Ning et al. (2001) Blood 97:3559]、胚細胞腫瘍(精上皮腫および未分化胚細胞腫)[Tian et al. (1999) Am J Pathol 154:1643]、および黒色腫の特定のサブグループ[Curtin et al. (2006) J Clin Oncol 24:4340]、および消化管間質腫瘍(GIST)[Hirota et al. (1998) Science 279:577]、ならびに肥満細胞症[Longley et al. (1996) Nat Genet 12:312;Nagata et al. (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92:10560]を含む多くのがんにおいて見出されている。Kit突然変異の活性化は、皮膚の肥満細胞腫瘍で頻繁であり、これはイヌにおける最も一般的な皮膚腫瘍である[Khanna et al. (2009) Clin Cancer Res 15:3645]。
【0006】
Kitキナーゼはいくつかの病状に対して臨床的に確認された薬物標的である
イマチニブは、もともと慢性骨髄性白血病の処置のためのAb1阻害剤として開発された、小分子プロテインキナーゼ阻害剤である。当初の目標に加えて、Kitキナーゼに対するその阻害活性の認識は、この薬剤の、消化管間質腫瘍(GIST)―Kit受容体の活性化を特徴とする悪性腫瘍―の処置への使用および続く臨床的有効性の実証についての検討を促進した[Tuveson et al. (2001) Oncogene 20:5054;Joensuu et al. (2001) N Engl J Med 344:1052;Imatinib FDA Label, 2009]。ダサチニブおよびニロチニブなどの追加の小分子Kit阻害剤が、その後GISTの処置のために開発されてきた。さらに、新たな病理学的文脈におけるKitキナーゼの役割の同定は、Kit阻害剤の新しい効用の実証につながった。例としては、失禁[Biers et al. (2006) BJU Int 97:612;Kubota et al. (2007) Hinyokika Kiyo 53:435]、関節リウマチ[Juurikivi et al. (2005) Ann Rheum Dis 64:1126;Vernon et al. (2009) J Clin Rheumatol 15:267;Eklund et al. (2008) J Clin Rheumatol 14:294]、粘膜黒色腫[Satzger et al. (2010) Dermatology 220:77]を含む黒色腫のサブグループ[Smalley et al. (2009) Histol Histopathol 24:643]、および皮膚色素沈着障害[Legros et al. (2005) Br J Dermatol 153:691]を含む。イマチニブはまた、Kit突然変異の活性化により引き起こされる全身性肥満細胞症の患者において、有効性が実証されている[Gotlib (2006) Immunol Allergy Clin North Am 26:575]。現在当業者には、Kitシグナル伝達が関与する任意の病状において、Kit阻害剤の使用が考慮されるべきであることは、よく理解されている。
【0007】
Kitキナーゼは、皮膚および毛の色素脱失に対する高度に確認された標的である
以下にさらに詳細に説明するように、Kitは、メラノサイト(色素沈着の発生に必要な皮膚細胞)の維持および機能に必要である。Kitに対する中和抗体は、動物において可逆的な色素脱失を生じさせる[Moss et al. (2003) J Pharmacol Exp Ther 307:476]。ヒトでは、Kitにおける機能喪失型の欠陥は、斑点色素脱失障害である限局性白皮症をもたらす[Giebel et al. (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:8696]。Kitの小分子全身阻害剤(例えば腫瘍薬イマチニブおよびスニチニブ)は、副作用として、ヒト患者において皮膚および毛の可逆的な色素脱失を生じさせる[Zhao et al. (2009) Int J Hematol 89:445]。そのためKitは、新しい局所脱色剤の開発のための高度に確認された標的を提示する。
【0008】
Kitキナーゼ阻害剤:新しい処置のオプションが必要である
上述したように、Kitキナーゼは重要な治療標的である。2001年以降、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された小分子プロテインキナーゼ阻害剤のうち、イマチニブおよび別の少なくとも5種は、Kitプロテインキナーゼを阻害する。しかし、これらの薬物は全て、重大な副作用を有する腫瘍薬であり、これらは全て全身性の薬物であるが、一方、皮膚の疾患および障害などの、Kitキナーゼが関与する多くの疾患は、局部的に効果的な対処が可能である。より安全なKitキナーゼ阻害剤、特に局所薬物の明らかな必要性が存在しており、ここで全身的暴露の低減は、現在利用可能な阻害剤の特徴である全身毒性の可能性を低減させる。本発明は、局所的に生物学的利用可能な阻害剤を含むKitキナーゼの阻害薬物を提供することによって、これや他のニーズに対応する。
【0009】
FPL−62064
FPL−62064は、N−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−アミンのFisons plc.(Ipswich, Suffolk, United Kingdom)の開発コードである。この化合物およびそれを調製するための合成法は、米国特許第4,810,719号(1989年3月7日発行、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている;この特許はさらに、FPL−62064を含む1,N−ジアリールピラゾール−3−アミン類の、関節リウマチ、変形性関節症、および関節炎症;湿疹および乾癬;結膜炎;および喘息を含む炎症状態の処置または予防のための使用も開示する。関連する類似体が米国特許第5,428,044号に開示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
FPL−62064は、5−リポオキシゲナーゼ(5−LO)およびプロスタグランジン合成酵素(PGS)の二重の阻害を介して、アラキドン酸代謝を阻害することが報告されている。in vitroアッセイにおいて、FPL−62064は、5−LOを3.5〜11.5μMのIC
50値で阻害し、PGSを3.1μMのIC
50で阻害する。無傷のRBL−1細胞では、5−LOは31μMのIC
50で阻害され、PGSは3.6μMのIC
50で阻害される[Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432]。動物試験において、FPL−62064は、モルモットにおける、UV照射により誘発される紅斑およびプロスタグランジンE2の形成、マウスの耳における、アラキドン酸により誘発される浮腫形成およびエイコサノイドの産生、およびまた、アラキドン酸と一緒に注射された場合に、ウサギの皮膚における浮腫およびエイコサノイドの形成を抑制した。生理食塩水中の微細な懸濁液として腹腔内に注射されたFPL−62064は、マウスにおいて、免疫複合体誘発性の腹膜炎症に対して局部的活性を示した[Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432;Blackham et al. (1988) Br J Pharmacol 95:536p]。
【0011】
FPL−62064は局所的に生物学的利用可能であり、局所薬物として望ましく、静脈内投与されると急速かつ広範囲に代謝される;経口経路では、ラットにおけるカラゲニン足浮腫に対して、200mg/kgまでの用量にて不活性である[Blackham et al. (1988) Br J Pharmacol 95:536p;Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432]。FPL−62064の2%の局所製剤は、Fisons plc.により、1980年代および1990年代に乾癬の処置として開発されていた。Blackhamらは予備データを引用し、この薬物の局所適用が、ヒトにおいて安全で良好に耐容されることを報告した[Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432]。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、前に乾癬の治療薬として開発されていた局所的な活性薬物であるFPL−62064が、Kitキナーゼの有力な阻害剤であるという予期せぬ発見に、少なくとも部分的に基づくものである。例1で開示されるように、生化学的アッセイにおいて、FPL−62064は、6.89μM(2μg/ml)のIC
50でKitキナーゼを阻害する。さらにFPL−62064は、M07e細胞において、1.2μM(0.3μg/ml)のIC
50でKitの自己リン酸化を阻害する。このようにKitキナーゼは、FPL−62064の臨床的に関連する低い濃度によって阻害される。背景および例示の疾患の節で議論されるように、Kitプロテインキナーゼは、限定することなくある種のがんおよび肥満細胞症を含む種々の疾患の病因において重要である。例えば、Kitは、皮膚の色素沈着過剰に対して重要である:Kitに対して活性なキナーゼ阻害薬物(例えば腫瘍化学療法剤イマチニブおよびスニチニブなど)は、副作用として、ヒト患者において可逆的な皮膚および毛の色素脱失を引き起こし、Kitに対する中和抗体は、動物において可逆的な色素脱失をもたらす(例えば、Moss et al. (2003) J Pharmacol Exp Ther 307:47参照)。したがって本発明は、とりわけ、特にFPL−62064の医薬組成物および式I、IIおよびIIIの関連化合物が、Kitシグナル伝達が役割を、例えば決定的な役割を果たしている、例えばある種のがん、肥満細胞症、および色素沈着過剰などの特に皮膚の障害および疾患、および障害および疾患の予防、抑制または処置に有用であることを提供する。FPL−62064は局所投与によって効果的であるため、色素沈着過剰やその他の疾患の局所的な処置のため、ならびに本明細書に企図される美容用途のためのFPL−62064および関連化合物の臨床使用は、例えばイマチニブ等現在承認されている全身的Kit阻害剤の使用に比べて、副作用が少ない。
【0038】
さらに本発明は、例3に記載のように、FPL−62064がヒト対象における皮膚の色素沈着を低減するとの発見に、少なくとも部分的に基づく。したがって、FPL−62064の特定の作用機序に必ずしも固着することなく、本発明は、FPL−62064および/または式I、IIおよびIIIの関連化合物を含む本明細書に開示された種々の組成物が、色素沈着において望ましい変化を達成することに、または色素沈着における望ましくない変化を予防または抑制することに有用であるとの概念を含み、これは、本開示の別の箇所でより十分に提供される。
【0039】
人の体表面の色素沈着のわずかな特徴も、観測者の心の中にその人の全体的な印象を形成する上で、重要な役割を果たす;例えば、皮膚の色素沈着のムラはその人を年不相応に老けて見せ、おそらく魅力的でなくする。したがって本明細書に記載の化合物は、色素沈着に対するその効用により、例えば局所的な化粧品組成物において用いる場合に、人の体表面に対して望ましい美容効果を達成するのに有用である。本発明が企図する望ましい美容効果は、肌を明るくすること、見かけの年齢を低下させること、または若いもしくはより生き生きした外観を提供することなどの美と化粧品の分野において一般的に用いられる多様な用語により、または外観を「改善すること」もしくは皮膚を「より美しく」見せることなどのさらに一般的な用語により言及されてよい;当業者には、これらおよびその他は、美容上望ましい外観の特定の側面(例えば「明るくする」または「均一にする」)について、またはその全体で知覚される望ましい美容成果(「若さ」または「美」)に直接言及する、同じ意味の用語であることは明らかである。したがって、本発明は「ホワイトニング」などを達成することに限定されず、より一般的に、対象の体表面に関して主観的な望ましい成果を、本明細書に開示の方法および組成物を用いて達成することに関する。当業者には、本開示が、例えば時間の経過、日光への暴露または摩擦の結果として、例えば体表面の過剰なもしくはムラのある色素沈着の進行などの美容上望ましくない成果を、低減、抑制、予防または緩和することを包含することは明らかである。
【0040】
本発明は、FPL−62064および式I、IIおよびIIIの内の関連化合物の、それらの安全性および効果的な使用に整合する種々のレベルの純度での、例えば本質的に純粋形態での使用を企図する。本明細書に記載の化合物の、種々の水和物または非共有結合複合体の使用も同様に企図され、それらの結晶、多形、および類似の形態の全ての使用も企図される。本明細書に記載の化合物は、溶液として、または種々の他の形態で、例えば種々のより粗いもしくはより細かい固体または部分的固体形態、例えば微粉化またはナノ分散形態において用いることもできる。
FPL−62064は、次の式で表される1,N−ジアリールピラゾール−3−アミンである:
【化1】
【0041】
本明細書に開示されるように、Kit受容体チロシンキナーゼは、FPL−62064により、6.89μM(2μg/ml)の化合物濃度で阻害され、これは、該薬物の以前から知られた標的である、5−リポオキシゲナーゼおよびプロスタグランジン合成酵素を阻害するのに必要な化合物濃度と類似である。本明細書に開示されるように、局所適用の文脈において、FPL−62064の2%、4%および8%製剤は、ヒト皮膚におけるメラニン指数(メラニン含量の測度)の統計的に有意な低下を引き起こす。Kit受容体チロシンキナーゼに対する低いマイクロモル化合物濃度でのFPL−62064活性、および、ヒトにおける皮膚の色素沈着に対するFPL−62064効果の本発見は、これおよび関連化合物の重要な医薬および美容適用の新しい分野を開く。
【0042】
定義
以下の定義は、明確さおよび説明目的のためのみに提供され、本発明の範囲の限定を意図しない。
【0043】
用語「アルキル」は、炭素および水素原子のみからなる直鎖もしくは分枝の炭化水素鎖基であって、不飽和を含まず、1〜18個の炭素原子を有し、残りの分子に単結合で結合しているものを指し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、および1,1−ジメチルエチル(tert−ブチル)である。好ましくは、アルキルは1〜6個の炭素原子を有する。アルキルは、シクロプロピルまたはシクロブチル等の環状アルキルであってもよい。用語「C
1〜6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、類似の添字付きの用語、例えば「C
1〜3アルキル」または「C
1〜18アルキル」は、低い添字から高い添字までの両端の数値も含む炭素原子数の範囲のアルキル鎖を意味する。
【0044】
用語「アリール」は、6〜12個の炭素の芳香族炭素環基であって、残りの分子に単結合で結合しているものを指し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどである。アリールは任意に、1または2以上のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ(−CO
2H)、カルボアルコキシ(−CO
2アルキル)、アミノ、アルキルアミノ(−NH−アルキル)、またはジアルキルアミノ(−N(アルキル)
2)基で置換されていてもよい。
【0045】
用語「アルカノイル」は、アルキルアシル(−C(=O)−アルキル)基であって、残りの分子に単結合で結合しているものを指し、例えば、アセチル(−C(=O)CH
3)、プロパノイル(−C(=O)CH
2CH
3)、3−メチルブタノイル(−C(=O)CH
2CH(CH
3)
2)、などが挙げられる。用語「C
1〜18アルカノイル」は、1〜18個の炭素原子を有するアルカノイル鎖を意味する。
【0046】
用語「アルコキシ」は、炭素および水素原子のみからなる直鎖もしくは分枝の炭化水素鎖基であって、不飽和を含まず、1〜18個の炭素原子を有し、該炭素基が酸素原子に結合しているものを指す。酸素原子は、アルコキシ基の残りの分子への単結合による結合点であり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、n−ペントキシ、および1,1−ジメチルエトキシ(tert−ブトキシ)である。
【0047】
用語「トリハロメチル」は、最大3個までのハロゲン原子により置換されたメチル基を指し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロメチル、ヨードメチル、ジブロモメチルなどである。
【0048】
Kit(NCBI GeneID:3815)は当分野において、別の識別子によっても知られており、これには、v−kitハーディ−ズッカーマン4猫肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ、肥満/幹細胞増殖因子受容体、SCFR、プロトオンコジーンチロシン−プロテインキナーゼKIT、c−KIT、およびCD117抗原を含む。ヒトKitを表すヌクレオチドおよびアミノ酸の配列は、それぞれ、GenBank受託番号NM_000222およびNP_000213に記載されている。本発明において企図される動物種はヒトに限定されず、他の動物種のKitを表すヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を、当業者であれば誰でも、例えば、NCBIGenBankから容易に検索することができる。本発明はさらに、限定はしないが、Kitの代替的転写物の形態(例えば、スプライス変異体など)および変異体形態、および任意の対応するタンパク質アイソフォームも企図し、これらはさらに翻訳後修飾することができ、ここでかかるタンパク質はキナーゼ活性を有し、式I、IIまたはIIIの化合物によって阻害することができる。本開示において、「Kitキナーゼ」はKitと同義に使用されるが、ただしKitの酵素キナーゼ活性を、またはこの活性を有するKitタンパク質の部分をさらに強調し、これは当業者には文脈から明らかである。
【0049】
Kitの同族リガンドであるKitリガンド(NCBI GeneID:4254)もまた、当分野において別の識別子によっても知られており、これには、KITLG、steel因子、幹細胞因子、SCF、肥満細胞増殖因子、およびMGFを含む。ヒトのKitリガンドを表すヌクレオチドおよびアミノ酸の配列は、それぞれ、GenBank受託番号NM_000899およびNP_000890に記載されている。本発明において企図される動物種はヒトに限定されず、他の動物種のKitリガンドを表すヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を、当業者であれば誰でも、例えば、NCBIGenBankから容易に検索することができる。本発明はさらに、限定はしないが、Kitリガンドの代替的転写物の形態(例えば、スプライス変異体など)および変異体形態、および任意の対応するタンパク質アイソフォームも企図し、これらはさらに翻訳後修飾することができ、ここでかかるタンパク質はKitキナーゼを活性化することができる。
【0050】
用語「疾患」「障害」および「状態」、ならびに同様の意味を持つ用語は、同じ意味で使用され、それらの各々またはそれらのいくつかの任意の組み合わせは、例えばグレーブス病ならびに、単に美容上望ましくないかまたは不便な状態を含む、望ましくない状態の全範囲を包含するが、ただし、文脈により明らかに別の記載がない限りにおいてである。本明細書中に引用された任意の状態に関連して、「処置する」、「処置」などの用語は、かかる状態に関連する少なくとも1つの症状を低減、抑制または消失させること、またはかかる状態の進行を停止、遅延または逆転させること、または状態の発生を遅延させる、および/または状態の進行または悪化のリスクを予防、抑制または低減することを意味する。
【0051】
用語「化粧品組成物」は、視覚的に、または匂いまたは接触の感覚を介して感知されるところの、毛を含む身体表面の美しさ、美観、外観または魅力を、創造、強化、改善または回復する、またはその劣化または減少を予防または抑制することを意図する組成物を指し、これは、人の臭気を強化、変更または低減することを意図する組成物、および体表面または毛の触感を強化または修飾することを意図する組成物を包含し;およびさらに、クレンジングを意図する組成物も包含する。
【0052】
「美容上望ましい成果」の語句は、視覚的に、または匂いまたは接触の感覚を介して感知されるところの、毛を含む身体表面の美しさ、美観、外観または魅力、または見かけの健康もしくは若さを、創造、強化、改善または回復すること、またはその劣化または減少を予防または抑制すること;およびさらに、老化の外観もしくは老化した皮膚の感知を低減することを指し;およびさらに、クレンジングを包含する。
【0053】
皮膚の色、例えば個々の色素沈着病変または正常な皮膚の客観的な評価は、例えば、分光光度計CM-2600d(コニカミノルタ、大阪、日本)による測定によって実行することができる。この手持ち式器具は、CIE L*a*b*表色系を利用する。色は3桁の出力L*、a*、b*を用いて定量され、ここでL*は、0〜100の値を用いてグレースケール上に皮膚の反射率または明るさを測定し、ここで0は黒、100は白である。合計の表皮のメラニン含有量は、ヒトの皮膚におけるL*値と強く相関している[Alaluf et al. (2002) Pigment Cell Res 15:119]。L*値の増加は、皮膚の明るさ(美白)に対応する[Brazzelli et al. (2006) Pediatr Dermatol 23:175]。
【0054】
皮膚の色、例えば個々の色素沈着病変または正常な皮膚の客観的な評価はまた、例えばヒトの皮膚でのメラニン指数の測定により、例えばMexameter(登録商標)MX18計器(Courage & Kha-zaka, Cologne, Germany)を用いても行うことができる[Clarys et al. (2000) Skin Res Technol 6:230]。この計器を用いた例については、例えば、Huh et al. (2010) Ann Dermatol 22:21を参照のこと。
【0055】
皮膚のライトニングの客観的な評価はまた、視覚的に(「視覚的評価」または「視覚的スコアリング」)、認定された皮膚科医または他の専門の観察者に、0〜4までのなどのスケールを使用して(ここで0は変化なしを、および4は完全または可能な最大効果を意味し)、処置された領域の状態を、任意に未処置の領域を比較して、例えば毎週などの周期的な間隔で記録によっても行ってよい;例3参照。
【0056】
皮膚試料または毛の試料などの試料中のメラニン量(メラニン含有量)は、例えば[Rosenthal et al. (1973) Anal Biochem 56:91]に記載のアッセイを用い、既知量の合成メラニンで得られた標準曲線を使用して決定することができる。メラニンはまた、Fontana-Massonの方法(例えば、[Yoon et al. (2003) Anal Biochem 318:260]に記載)に従って検出および定量するしてもよい。
【0057】
キナーゼ阻害剤の量を指す場合に、用語「有効阻害量」または「有効量」は、キナーゼの活性を少なくとも25%阻害するのに十分な化合物量である。キナーゼ活性の阻害は、当分野に知られている任意の方法により、例えば、Millipore KinaseProfilerアッセイなどの放射測定(radiometric)フィルターバインディングアッセイを用いて、測定することができる。
【0058】
処置、組成物、製剤などに関連して、用語「局所的(topical)」とは、皮膚を含む身体表面;粘膜、例えば膣、肛門、口腔または喉、眼または耳;爪および歯、に適用すること、またはこれに外部的に適用することを意図することを意味する。
【0059】
用量または量に適用される用語「美容上有効」とは、式I、IIもしくはIIIの化合物、またはかかる化合物を含む医薬組成物の量であって、対象へのその投与の後に、美容上有用または望ましい効果に対して十分な、前記の量を意味する。
【0060】
語句「皮膚の色素沈着レベルを低減するのに有効である」、および語句「美容上有効である(美容効果がある)」または用語「有効である(効果がある)」とは、皮膚ライトニングに関して、または皮膚もしくは毛の色素沈着を低減する、またはその増加を抑制することに関して用いる場合、これは、対象、またはin vitroモデルへの投与の後に、適切な観察期間について(例えば対象に対しては、1週間、4週間、1か月、2か月またはそれ以上;またはin vitroモデルについては、1時間、6時間、12時間、1日、3日、またはそれ以上)、当分野に知られている任意の客観的な評価法にしたがって、皮膚または毛の色素沈着における変化を引き起こすのに十分な用量または量を指し、皮膚または毛に関しては必要に応じて、例えば以下である:少なくとも1単位のL*値の増加;少なくとも5%または少なくとも10単位のメラニン指数の低下;または、皮膚色素沈着の客観的な視覚評価において、0〜4スケール上での少なくとも2の読み取りに到達すること;または少なくとも5%のメラニン含有量の低下。皮膚モデル、例えばMelanoDerm(MatTek Corp., Ashland, MA)などの3次元再構成皮膚モデルを用いてもよい。色素沈着の増加の予防または抑制に関して、用量または量は、処置なしの場合の色素沈着の増加に相対的に決定される。
【0061】
美容効果は、例えば、物理的外観および/または美観の改善であることができる。組成物の美容有効量は、処置する特定部位、対象の年齢および身体条件、状態の重篤度、処置の期間の長さ、併用療法の性質、用いる具体的な化合物または他の活性成分、利用する特定の担体および当分野でよく知られている同様の因子により、変化し得る。
【0062】
語句「治療的に有効である(治療効果がある)」および、疾患または状態の処置に関して用いる場合に、用量または量に適用される用語「有効である(効果がある)」とは、本発明の化合物またはかかる化合物を含む医薬組成物の量であって、それらを必要とする動物に対してそれを投与して、本発明において企図される疾患または状態を処置するのに十分な、前記の量を指す。
【0063】
本発明の組成物に関連して使用される「薬学的に許容し得る」の語句は、哺乳動物(例えばヒト)に投与した場合に、生理学的に耐容され有害な反応を一般に生じない、かかる組成物の分子的実体および他の成分を指す。好ましくは、用語「薬学的に許容し得る」は、政府規制機関によって承認されるか、または米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に、哺乳動物、より具体的にはヒトにおける使用のために記載されていることを意味する。
【0064】
用語「エステル」は、オキソ酸をアルコールやフェノールなどのヒドロキシル化合物と反応させることによって導出される化学化合物を指す。エステルは通常、少なくとも1個の−OH(ヒドロキシル)基が−O−アルキル(アルコキシ)基で置き換えられている無機酸または有機酸から、および最も一般的にはカルボン酸をアルコールで縮合することにより、導出される。本発明の化合物との有益なエステルは、例えば、ヒドロキシル基を有する本発明の化合物を、薬学的に許容し得る塩の形成に当分野で用いられるカルボン酸と反応させることにより形成されるエステルが挙げられる。
【0065】
用語「プロドラッグ」は、in vivoで変換されて、それらのイオン化部分、塩、水和物もしくは溶媒和物を含む本発明の化合物生成する化合物を意味する。変換は当分野で知られている多様なメカニズムによって起こすことができ、これらは例えば以下に議論されている:Design of prodrugs. Bundgaard H, eds. Amsterdam: Elsevier 1985;Bioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, Pergamon Press, 1987;Prodrugs. Stella VJ et al., eds. New York: Springer 2007;およびProdrugs and Targeted Delivery. Mannhold R et al., eds. Weinheim: Wiley-VCH 2011。局所送達用の本発明の化合物にとって有用なプロドラッグの設計アプローチの更なる例は、特に、Sloan et al. (2006) Pharm Res 23:2729;Sloan et al. (2003) Med Res Rev 23:763;およびPro-drugs: topical and ocular drug delivery. Sloan KB, ed. New York: M. Dekker 1992に見出され;エステル、N−アシルおよびソフトなN−およびS−アルキル誘導体は、本明細書で企図されるプロドラッグの例である。
【0066】
本発明の化合物は、局部的または全身的に投与することができる。用語「局部的(local)」とは、例えば以下を含む投与経路を意味する:局所、皮内、表皮下、粘膜、口腔内、吸入、経皮、経粘膜、病巣内、硝子体内、直腸、膣、耳、および鼻腔内、および胃腸管を標的とする生体接着性経口製剤中の化合物の経口投与。局部投与は、薬物の濃縮局所作用を達成し、薬物の全身的な暴露を予防、低減または遅延させることを意図して用いられる。用語「全身的」とは、例えば以下を含む投与経路を意味する:薬物を体循環に送達することを意図した、静脈内または動脈内などの非経口投与、経口、経皮、経粘膜、鼻腔内、口腔投与。非経口投与は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、腹腔内、肝臓内、および頭蓋内投与を含む。
【0067】
本発明に係る好ましい投与経路は、処置される徴候に主に依存し、とりわけ、局所、粘膜、口腔内、吸入、経皮、経粘膜、病巣内、デポ注射製剤を用いた皮内、硝子体内、直腸、膣、耳、および鼻腔内投与を含む。
【0068】
用語「約」は、当業者により決定される特定の値についての許容誤差範囲内を意味し、これは、その値が如何にして測定または決定されるかに部分的に依存する。例えば、「約」は、当分野の実践について、許容偏差または誤差の範囲内を意味することができる。代替的に、「約」は、与えられた値の±10%までの範囲を意味することができる。代替的に、特に生物系またはプロセスに関して、用語「約」は、値の3.16倍以内を意味することができる。特に明記しない限り、本明細書で特定の値が提供される場合、「約」の用語は黙示的である。
【0069】
用語「対象」、「患者」等は同じ意味で使用され、文脈が明らかに別を指示していない限り、哺乳動物を含む任意の動物を意味する。特にこの用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、または、マウスもしくはラットなどの齧歯類を指すことができる。
【0070】
文脈が明らかに別を指示していない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、複数への言及も含む;男性、中性、または女性の形態は、いずれかまたは全てを指す;および、リスト中などでの「または」の使用は、包含的である。「含む」、「例えば(for example)」、「例えば(such as)」などの表現、および「例」等への任意の言及は、非限定的な例の紹介である。「本発明の」化合物、組成物等は、本発明によるそれらを指す。
【0071】
本発明の方法において用いる化合物
本発明は、以下の構造を有する式Iの化合物の使用を提供する:
式I
【化2】
式中、
R
1は、H、OR
6、アルキル、およびアリールから選択され;
R
2は、H、アルキル、およびアリールから選択され;
R
3、R
4およびR
5の各々は独立して、H、N(R
6)
2、OR
6、CON(R
6)
2、CO
2R
6、COR
6、アルキル、およびアリールから選択され;
R
6の各々は独立して、H、アルキル、およびアリールから選択され;
iは、0、1、2、3、4、または5であり;
jは、0、1、または2であり;および
kは、0、1、2、3、または4である。
【0072】
本発明はさらに、以下の構造を有する式IIの化合物の使用も包含する:
式II
【化3】
式中、
R
7は、H、C
1〜18アルキル、およびArで置換されたC
1〜18アルキルから選択され;
R
8およびR
9の各々は独立して、ハロゲン、ヒドロキシ。−CN、−COR
11、トリハロメチル、アルコキシ、−COR
11で置換されたアルコキシ、−NR
12R
13で置換されたアルコキシ、C
1〜18アルキル、−COR
11で置換されたC
1〜18アルキル、−NR
12R
13で置換されたC
1〜18アルキル、Arで置換されたアルコキシ、−OC(=O)C
1〜18アルキル、−S(O)
p−C
1〜18アルキル、−S(O)
p−Ar、−NR
12R
13、および−OArから選択され;
R
10の各々は独立して、H、ハロゲン、Ar、C
1〜18アルキル、およびArで置換されたC
1〜18アルキルから選択され;
R
11の各々は、H、C
1〜18アルキル、−OR
14、および−NR
12R
13から選択され;
R
12およびR
13の各々は独立して、H、C
1〜18アルキル、C
1〜18アルカノイル、およびArから選択され;
R
14の各々は独立して、H、C
1〜18アルキル、またはArから選択され;
Arの各々は独立して、フェニルまたはナフチルであり;
lは、0、1、2、3、4、または5であり;
mは、0、1、または2であり;
nは、0、1、2、3、4、または5であり;および
pは、0、1、または2である。
【0073】
本発明はさらに、以下の構造を有する式IIIの化合物の使用も包含する:
式III
【化4】
式中、
R
15は、H、およびC
1〜3アルキルから選択され;
R
16は、H、C
1〜18アルキル、Ar
1、−C(=O)C
1〜18アルキル、−COR
20で置換されたC
1〜18アルキル、−NR
21R
22で置換されたC
1〜18アルキル、およびAr
1で置換されたC
1〜18アルキルから選択され;
R
17およびR
19の各々は独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、−COR
20、トリハロメチル、アルコキシ、−COR
20で置換されたアルコキシ、C
1〜18アルキル、および−NR
21R
22で置換されたC
1〜18アルキルから選択され;
R
18の各々は独立して、H、ハロゲン、Ar
1、C
1〜18アルキル、およびAr
1で置換されたC
1〜18アルキルから選択され;
R
20の各々は独立して、H、C
1〜18アルキル、−OR
23、および−NR
21R
22から選択され;
R
21およびR
22の各々は独立して、H、C
1〜18アルキル、C
1〜18アルカノイル、およびAr
1から選択され;
R
23の各々は独立して、H、C
1〜18アルキル、およびAr
1から選択され;
Ar
1の各々は独立して、フェニルまたはナフチルであり;
qは、0、1、2、3、4、または5であり;
rは、0、1、または2であり;および
sは、0、1、2、3、または4である。
【0074】
本発明の具体的な化合物は以下である:
【化5】
FPL−62064、N−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−1H−ピラゾール−3−アミン
【0075】
本発明の化合物の薬学的に許容し得る塩、プロドラッグ、エステルおよび異性体、およびそれらの種々の水和物および錯体形態もまた、本明細書に包含される。
【0076】
いくつかの好ましい態様において、式I、IIまたはIIIの化合物は、その「薬学的に許容し得る塩」の形態である;前述の用語は、遊離塩基を好適な有機もしくは無機の酸と反応させることにより、または酸を好適な有機もしくは無機の塩基と反応させることにより一般に調製される、本発明の化合物の非毒性の塩を指す。代表的な塩としては、塩酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、吉草酸塩、安息香酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩などが挙げられる;例えば、Berge et al. (1977), J Pharm Sci 66:1を参照。
【0077】
式I、IIまたはIIIで表される化合物の個別の異性体、ならびにそれらの任意の完全または部分的な平衡化混合物もまた、本発明の範囲にさらに含まれる。本発明の一定の化合物は、立体異性体(例えばジアステレオマーおよび鏡像異性体)で存在することができ、本発明はこれらの各立体異性体およびラセミ化合物を含むそれらの混合物にも及ぶ。異なる立体異性体は、既知の方法によって互いに分離されてもよいし、任意の所定の異性体は、立体特異的または不斉合成によって得ることができる。本発明はまた、任意の互変異性体およびそれらの混合物にも及ぶ。
【0078】
本発明の化合物は、米国特許第4,810,719号および第5,428,044号に記載の方法により製造することができ、これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
例示の疾患
本明細書に提供されるのは、Kitキナーゼの阻害が有益となり得る疾患または状態を処置または予防するため、特に、皮膚の疾患または状態の処置または予防のために有用な、方法および組成物である。本発明の一般性を制限することなく、本明細書で企図される疾患または状態には、皮膚の色素沈着過剰、過剰なまたは望ましくない皮膚および毛の色素沈着、肥満細胞症、およびKitシグナル伝達が重要な役割を果たす異なる器官のがんを含む。本発明の化合物を用いて処置可能な疾患の選択例を、以下に詳細に記す。
皮膚の色素沈着過剰、過剰なまたは望ましくない皮膚および毛の色素沈着
【0080】
ヒトの皮膚の色合いを決める色素であるメラニンは、メラノサイトとして知られる細胞により生成される。メラノサイトは、メラノソームと呼ばれる細胞小器官でメラニンを生成する。メラノソームは、メラノサイトから、皮膚の外側表面に近いケラチン産生細胞の層であるケラチノサイトに移行される。より多くのメラニンが生成されると、より多くのメラノソームがケラチノサイトに移行され、皮膚がより黒くなる。このプロセスは、任意の皮膚タイプまたは人種において変わりうる。過度の黒ずみがもたらされる変化は、色素沈着過剰として知られている。ヒトの毛の色は、メラニン顆粒の、毛包内に常在するメラノサイトからの同様の移行プロセスの結果である。
【0081】
ヒドロキノン、レチノイド、アスコルビン酸、およびコウジ酸などの既存の抗色素沈着剤は、限られた有効性と、潜在的な発癌性、皮膚刺激、皮膚感作を含む多くの望ましくない効果を有する。ヒドロキノンは最も広く使用されている皮膚ライトニング剤であり続けるが、その安全性プロファイルは論争の的である[Briganti et al. (2003) Pigment Cell Res 16:101;Draelos (2007) Dermatol Ther 20:308]。新しい治療剤が必要とされている。
KitおよびKitリガンドはメラノサイトの生物学と色素沈着において基本的な役割を果たす
【0082】
受容体チロシンキナーゼKitと、本明細書においてKitリガンドと呼ぶそのリガンド分子の相互作用するペアは、もともとマウス着色突然変異体のペア―それぞれ、spotting(W)およびsteel(Sl)―として特徴付けられた。これらの変異は、神経冠(神経堤)由来のメラノサイトの運命と生存に特異的に影響する[Russell (1979) Adv Genet 20:357]。ホモ接合変異体は特徴的な黒眼/白色毛の表現型を示し、一方ヘテロ接合動物は、うすい毛色と、特定の鋼のような外観および額と腹上の白の斑点を示す。
【0083】
ヒトにおいて、Kit遺伝子のヘテロ接合変異は、ときに部分的白皮症と呼ばれる、色素沈着障害のまだら症を生じさせる[Giebel et al. (1991) Proc Natl Acad Sci U S A 88:8696;Spritz (1994) J Invest Dermatol 103:137S]。影響を受けた個人は、メラノサイトが全く存在しない、皮膚や毛の無着色先天性のパッチを示す。
【0084】
マウスにおいて、KitまたはKitリガンド遺伝子座におけるヌル突然変異は、メラノサイト前駆体の移動ならびに生存をブロックする[Mizoguchi (2004) Pigment Cell Res 17:533]。成体マウスの表皮はKitリガンドを発現せず、メラノサイトを有さない;メラノサイトはもっぱら毛球に局在しているので、マウスは、色素沈着のない皮膚と、着色された毛皮を有する[Nishimura et al. (1999) Dev Biol 215:155]。
【0085】
マウスとは対照的に、Kitリガンドはヒト成人表皮で発現され、ここで表皮のKit受容体発現メラノサイトの恒常性に重要な役割を果たす[Grichnik et al. (1998) J Invest Dermatol 111:233;Spritz et al. (1994) J Invest Dermatol 103:148]。ヒトケラチノサイトおよび線維芽細胞の両方は、Kitリガンドを分泌する[Morita et al. (1994) Arch Dermatol Res 286:273;Imokawa et al. (1998) Biochem J 330:1235]。KitまたはKitリガンドのブロッキング抗体の、ヌードマウスに体外移植されたヒト皮膚への注入は、メラノサイトの消失をもたらす。一方、Kitリガンドの可溶形態の注入は、体外移植された皮膚組織の色素沈着過剰を引き起こす[Grichnik et al. (1998) J Invest Dermatol 111:233]。同様に、マウスの表皮におけるKitリガンドの強制発現は、表皮メラノサイトの損失を防ぎ、高度に色素沈着した表皮をもたらす[Nishimura et al. (1999) Dev Biol 215:155;Kunisada et al. (1998) J Exp Med 187:1565;Kunisada et al. (1998) Development 125:2915]。このことは、マウスおよびヒトの両方において、表皮メラノサイトは、その維持のために一定のケラチノサイト由来のKitリガンド刺激を必要とすることを示唆している。
【0086】
マウスのメラノサイトを生成するためのKitリガンド/Kit経路の重要な役割は、抗Kitリガンド抗体ACK2を使用してさらに実証された。この抗体は、Kitを活性化するKitリガンドの能力をブロックし、メラノサイトの消失をもたらす[Nishikawa et al. (1991) EMBO J 10:2111;Okura et al. (1995) J Invest Dermatol 105:322;Reid et al. (1995) Dev Biol 169:568]。おそらくはKit非依存性メラノサイト幹細胞からのメラノサイトの再生は、ACK2処置の停止後約1か月後に開始される[Kunisada et al. (1998) Development 125:2915]。
【0087】
Kitリガンド/Kitシグナル伝達はまた、色素沈着の生物学的メカニズムに決定的に関与している。例えば、茶色がかったモルモットの皮膚の、紫外線(UV)B誘発性の色素沈着の経過において、Kitの阻害抗体の表皮下注射は、(UV)B暴露領域での色素沈着の誘発を完全に消失させた[Hachiya et al. (2001) J Invest Dermatol 116:578]。
色素沈着に対するKitの影響のメカニズム
【0088】
Kit受容体シグナル伝達は、MITFの調節を介して色素沈着を制御すると考えられている[Hemesath et al. (1998) Nature 391:298;Price et al. (1998) J Biol Chem 273:17983;Wu et al. (2000) Genes Dev 14:301];MITFは、チロシナーゼを含む色素生合成経路におけるいくつかの酵素発現を制御する、鍵となる転写因子であり[Widlund et al. (2003) Oncogene 22:3035]、メラニン合成における律速段階を触媒する[Hearing et al. (1989) Pigment Cell Res 2:75]。Kitリガンドの添加は、例えばメラノーマ細胞株における、チロシナーゼ活性の増加を引き起こすことが知られている[Luo et al. (1995) Melanoma Res 5:303]。
Kitの阻害薬物は、ヒトにおける皮膚および毛の色素脱失を引き起こす
【0089】
現在、Kit阻害薬物(イマチニブならびに、ダサチニブ、スニチニブおよびパゾパニブなどのより新しいKit阻害剤)が患者の皮膚および毛の色素沈着に影響を与えることを実証する、圧倒的な量の証拠が存在する;例えば、Arora et al. (2004) Ann Oncol 15:358;Sharma et al. (2005) Indian J Dermatol Venereol Leprol 71:45;Deshmukh et al. (2005) J Assoc Physicians India 53:291;Sunita et al. (2006) Indian J Pharmacol 38:66;Leong et al. (2004) Cancer 100:2486-7;およびZhao et al. (2009) Int J Hematol 89:445を参照。Kitの阻害薬物による治療の際、皮膚の色素脱失と低色素沈着の副作用は、民族的に着色された患者では非常に多く、いくつかの研究で報告された発生率は80%に近い。色白の患者では、通常、皮膚の色素脱失は毛の脱色との関連で注目され、報告された発生率は60%を超え(例えば、[Faivre et al. (2006) J Clin Oncol 24:25])、または、既存の色素沈着過剰した病変との関連で注目される[Campbell et al. (2009) Arch Dermatol 145:1313;McPartlin et al. (2005) Br J Haematol 129:448]。
黒皮症
【0090】
黒皮症(melasma)は、顔、そして時折、前腕および背中を含むその他の日光に露出される領域に関連する、淡褐色から灰褐色の不規則な斑を特徴とする、通常の後天性対称性メラニン増加症である。黒皮症は、表皮および真皮の過剰なメラニン沈着を引き起こす、特定のハイパー機能メラノサイトの結果である[Grimes et al. (2005) Am J Dermatopathol 27:96]。KitおよびKitリガンドの両方の発現は、非病変部の皮膚と比べて病変部で増加し、KitおよびKitリガンドが、黒皮症の色素沈着過剰のメカニズムにおいて重要な役割を果たすことを示唆する[Kang et al. (2006) Br J Dermatol 154:1094]。したがって、本発明の化合物を用いてKitシグナル伝達に干渉することにより、黒皮症の外観を改善が期待される。
老人性黒子
【0091】
老人性黒子(LS)病変は、年齢によるしみ(age spot)とも呼ばれ、表皮の基底および基底上の層に局在するメラニン沈着の増加を特徴とする、色素沈着したしみであり、これは、メラノサイトの刺激された増殖およびメラニン形成活性に起因する。LS病変表皮では、皮膚におけるチロシナーゼmRNAの発現の増加に伴いチロシナーゼ陽性メラノサイトの数の増加がある[Kadono et al. (2001) J Invest Dermatol 116:571]。LSの臨床的および組織化学的特徴は、一般的に日光に露出した領域への高い局在化、ならびに基底の色素沈着および表皮肥厚の外観の点で、UVB誘発性色素沈着過剰に類似する[Hattori et al. (2004) J Invest Dermatol 122:1256]。Kitリガンドタンパク質は、表皮病変部において、非病変部の皮膚と比べて過剰発現されており、LS病変の表皮色素沈着過剰の特性におけるKitリガンドの関与を示唆する[Hattori et al. (2004) J Invest Dermatol 122:1256]。したがって、本発明の化合物を用いてKitシグナル伝達に干渉することにより、LSの外観の改善が期待される。
【0092】
要約すると、Kitキナーゼは、皮膚および毛の色素沈着過剰または望ましくない色素沈着に関連する状態に対する、高度に確認された薬剤標的である。したがって本発明は、かかる状態の処置または予防のための、ならびに、病状の非存在下で皮膚のトーンをライトニング、または黒ずみを防止するなどの望ましい美容効果を達成するための、組成物を提供する。本発明において企図される、増加したかまたは望ましくない色素沈着の状態には、限定することなく以下が含まれる:黒子; 眼窩周囲色素沈着過剰;カフェオレ斑;炎症後色素沈着過剰;ベッカーの母斑、色素性毛髪表皮母斑;太田母斑;堀母斑、後天性真皮メラノサイトーシス;黒皮症、肝斑、妊娠性黒皮症;雀卵斑、そばかす;遺伝性対側性色素異常症、四肢の対称性色素異常;網状肢端色素沈着症;Peuiz-Jeghers症候群;内分泌障害に続発する色素沈着;蒙古斑、先天性真皮メラノサイトーシス;伊藤母斑、fusco-caeruleus acromiodeltoides母斑;色素失調症;黒色表皮症;リール黒皮症;薬剤誘発性色素沈着過剰;色素異常性固定性紅斑;および母斑。
肥満細胞症
【0093】
肥満細胞症または肥満細胞疾患は、様々な臓器における、多くは皮膚における、肥満細胞数の増加によって特徴付けられる状態の異種性群である[Longley (1999) Cutis 64:281]。一形態である色素性じんましんは、複数の分散した色素沈着過剰病変によって特徴付けられる。多くの研究では、異常なKitシグナル伝達が肥満細胞症を引き起こす可能性が示唆された。これらには、皮膚の肥満細胞症患者の皮膚におけるKitリガンド(肥満細胞増殖因子とも呼ばれる)レベルの増加の実証[Longley et al. (1993) N Engl J Med 328:1302]、および患者の皮膚の肥満細胞で発現されるKit受容体の恒常的活性化をもたらす突然変異の同定[Longley et al. (1996) Nat Genet 12:312;Longley et al. (2000) Hematol Oncol Clin North Am 14:697]が含まれる。要約すると、Kitキナーゼの阻害は、肥満細胞症の少なくともいくつかのサブタイプの処置のための有望な戦略を提示する。米国特許第6,977,159号(2005年12月20日発行)も参照のこと;これは、肥満細胞症の処置のための、Kitリガンド/Kitシグナル伝達を阻害する方法を開示している。したがって本発明は、Kitキナーゼ活性の阻害を介した、Kitの阻害に感受性である皮膚肥満細胞症の処置のための化合物および組成物を提供する。
【0094】
本発明の化合物は、他の処置または化合物と併用して(例えば、同時に、または順番に、1つまたは異なる組成物中で、1または異なる部位に)投与することもできる;ここで、かかる併用投与は、Kit疾患の処置のための、または、例えば皮膚または毛の色素沈着の低減が関与する、美容上有用な効果を達成するための、本発明の化合物および組成物の有効性を強化することができる。かかる組み合わせ処置としては、例えば抗炎症剤(例えば、グルココルチコイドまたはステロイド)、皮膚ライトニングまたは抗色素沈着剤(例えばレチノイド、ヒドロキノン、グリコール酸、トリクロロ酢酸、アルブチン、またはコウジ酸)、抗線維化剤(例えば、ピルフェニドン、ハロフギノン、またはトラニラスト)、抗掻痒薬(例えば、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤)、日焼け止め剤、アロエエモジン、および抗生物質や抗真菌剤などの抗感染剤を含むことができる。
本発明の医薬組成物および投与経路
【0095】
ヒトおよび動物の患者への投与について、本発明の化合物は、1または2種以上の薬学的に許容し得る担体および/または賦形剤と組み合わせて医薬組成物に製剤化することができ、その例としては、任意の従来の溶媒および希釈剤(例えば、水、生理溶液、グリセロール、エタノールなど)およびその組み合わせ、緩衝剤、湿潤剤、酸化防止剤、安定剤、保存剤(conservant)、被覆剤、着色剤、香料及び風味剤、崩壊剤、乳化剤(emulgator)、充填剤、潤滑剤、浸透または透過促進剤、吸収遅延剤、抗菌および抗真菌剤、ならびに組成物の活性成分の1または2種以上の貯蔵寿命または有効性を高める他の周知の剤が挙げられる。かかる有用な物質の例は、例えばRemington: the science and practice of pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins 2005;およびHandbook of pharmaceutical excipients, Rowe RC, Sheskey PJ, Quinn ME, eds., Pharmaceutical Press 2009に見出すことができ、実際にかかる物質の使用は当分野の実践に不可欠であり、本明細書に提供される他の文献でも広範囲に説明されている。任意の従来の媒体または薬剤は、活性成分との互換性がない場合を除き、本発明の組成物においてその使用が企図される。
【0096】
本発明の組成物は、当分野で知られている任意の経路による送達用に製剤化することができる。局所投与は、好ましい投与経路である。本発明において有用な局所組成物は、当分野において知られている任意の手段によって、例えば、Topical and Transdermal Drug Delivery: Principles and Practice. Benson HAE, Watkinson AC, eds. Wiley 2011,およびTopical Drug Delivery Formulations. Osborne DW, Amann AH, eds. Marcel Dekker 1990に記載されているようにして、製剤化することができる。例えば、本発明の化合物は、軟膏として、1または2種以上の鉱物油、ワセリン、プロピレングリコール、乳化ワックス、ポリソルベート、セテアリルアルコール、ベンジルアルコール、および水との混合物中に懸濁または溶解することにより;乳化剤(単数または複数)を含む乳剤として;ゲルとして、例えば天然ゴム、アクリル酸およびアクリラートポリマーおよびコポリマーなどのゲル化剤、およびセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)を用いる水ベースのゲルとして、製剤化することができる。局所組成物は、溶液、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、フォーム、粉末、ムース、貼付、ヒドロゲル、およびフィルムを含む多様な製品種類にすることができる。当業者は、製剤の特性を意図される使用と整合させることの望ましさを考慮し、例えば皮膚で使用するための局所製剤においては、皮膚の適切な層を優先的に標的化するように;例えば皮膚の色素沈着を変えることを意図する製剤の場合は、皮膚の表皮層のメラノサイトを標的とするようにすることであり、有用な1つのアプローチは、本発明の組成物などの製剤の活性成分を、表皮層の近傍に優先的に沈着または保持するような製剤を選択することである。
【0097】
本発明の医薬組成物は、対象に投与された場合に組成物中に存在する物質(例えば本発明の化合物)の分散を変更および制御するよう、製剤化することができ;かかる制御放出製剤は周知であり、当分野で広く実践されている;例えば、Wise DL. Handbook of pharma-ceutical controlled release technology. New York: Marcel Dekker 2000;およびLi XP, Jasti BR. Design of controlled release drug delivery systems. New York: McGraw-Hill 2006を参照のこと。
【0098】
本発明の医薬組成物は、化粧品組成物を含む。かかる化粧品組成物は、好ましくは局所的であり、任意に、本明細書に開示されるような局所製剤において一般的に有用な他の物質および成分に加えて、1または2以上の美容上有用な物質または成分、例えば香料、酸化防止剤、アミノ酸、ペプチド、植物またはその他の抽出物、ビタミン類、着色ブロッキング剤を含む着色剤、日焼け止め剤、製剤に心地よい触感特性を付与するために用いられる増粘剤またはゲル化剤なども、含むことができる。かかる美容上有用な物質および成分は、当分野でよく知られている;選択された例、ならびに化粧品組成物を調製する分野における当業者に有用な手引きは、例えば以下に見出すことができる:Flick EW Cosmetic and toiletry formulations. Park Ridge, N.J., U.S.A.: Noyes Publications 1989,Draelos ZK, Thaman LA Cosmetic formu-lation of skin care products. New York: Taylor & Francis 2006,Barel AO, Paye M, Mai-bach HI. Handbook of cosmetic science and technology. New York: Informa Healthcare 2009,およびRosen MR Delivery system handbook for personal care and cosmetic products: technology, applications, and formulations. Norwich, NY: William Andrew Pub 2005。
化合物の投与および有効量
【0099】
本開示を活用して、当業者は、本発明の化合物が含まれている多数の好適な組成物のいずれかの適当な投与量および投与スケジュールを導出することができる。本明細書中に開示されているように、対象への投与に適した化合物の量は、一般に安全かつ治療的または美容上有効であると確立されたものである。化合物は、例えば、局所的に約0.02mg/kg〜200mg/kgの用量で、または、局所適用で、処置される領域に相応して、本発明の化合物を重量で約0.01%〜20%、例えば0.1%〜10%、例えば1%〜5%含有する組成物の用量で、投与することができる。
【0100】
本発明の範囲内の医薬組成物は、本発明の活性成分が、細胞内でKitキナーゼ活性を阻害するために有効な量で含まれている組成物を含む。本発明の化合物および組成物の有効性は、in vitroおよびin vivoアッセイを用いて決定することができる。有用なin vitroアッセイには、Kitキナーゼの阻害をモニタリングするためのアッセイを含み、例えば(i)放射測定ベースのフィルターバインディングアッセイ(例えばMilliporeのKinaseProfilerアッセイ);(ii)シンチレーション近接アッセイ(例えば、ProQinase のFlashPlateアッセイ);(iii)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(例えばProQinase GmbH (Freiburg, Germany)の基質特異的サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法);および(iv)発光アッセイ(例えば、PromegaのKinase-Glo発光キナーゼアッセイ)であり;これらについては、Ma et al. (2008) Expert Opin Drug Discov 3:607によく紹介されている。
【0101】
本発明による治療有効用量は、以下のようなアプローチの組み合わせによって段階的に決定することができる:(i)Kitキナーゼ活性を読み取りとして用いるin vitroアッセイにおける化合物の有効量の特性評価に続いて、(ii)Kitキナーゼ活性および/またはメラニン生成の減少を用い、例えばMelanoDermアッセイを用いた、細胞培養物中の特性評価に続いて、(iii)例えば、UV照射検体におけるメラニン量を読み取りとして用いる動物試験における特性評価に続いて、(iv)皮膚の色または着色病変の客観的比色評価を読み取りとして用いるヒト試験における特性評価。治療有効用量は、特定の投与経路および投与スケジュールとの関連において決定してもよい。好ましい態様において、投与経路は局所的である。さらに好ましい態様において、治療有効用量は、出発点として局所製剤中、前に試験されたFPL−62064用量の重量で2%〜8%を用いる臨床実験により決定する([Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432]および例3)。一側面において、投与スケジュールは、1日2回(bid)、朝と夕方である。好ましい態様において、投与量とスケジュールは、対象を観察する保健専門家によって、または対象によって、調整される。一側面において、所望の治療効果が一度達成されれば、新しい投与、例えば減少投与などが所望の効果を維持するのに十分であるように、投与を調整する。
【0102】
本発明による美容上有効用量、例えば皮膚のトーンをライトニングすることを意図した局所化粧品製剤のための有効用量は、以下のようなアプローチの組み合わせによって段階的に決定することができる:(i)Kitキナーゼ活性を読み取りとして用いるin vitroアッセイにおける化合物の有効量の特性評価に続いて、(ii)Kitキナーゼ活性および/またはメラニン生成の減少を用い、例えばMelanoDermアッセイを用いた、細胞培養物中の特性評価に続いて、(iii)例えば、UV照射検体におけるメラニン量を読み取りとして用いる動物試験における特性評価に続いて、(iv)読み取りとして、皮膚の色の客観的比色評価、または例えば対象による、効果の主観的評価を用いるヒト試験における特性評価。美容上有効用量は、特定の投与経路および投与スケジュールとの関連において決定してもよい。好ましい態様において、投与経路は局所的である。さらに好ましい態様において、美容上有効用量は、出発点として局所製剤中、前に試験されたFPL−62064用量の重量で2%〜8%を用いる臨床実験により決定する([Blackham et al. (1990) Agents Actions 30:432]および例3)。一側面において、投与スケジュールは、1日2回(bid)、朝と夕方である。好ましい態様において、投与量とスケジュールは、対象によって調整される。一側面において、所望の美容効果が一度達成されれば、新しい投与、例えば減少投与などが所望の効果を維持するのに十分であるように、投与を調整する。
【0103】
当分野で良好に確立されている手法に従い、in vitro試験で良好に作用する本発明の化合物および組成物の有効用量および毒性を、それらが治療的に有効であることが見出されている小動物モデル(例えば、マウス、ラットまたはモルモット)を用いた研究において決定することができ、ここでこれらの薬物は、ヒト試験に対して提案されたものと同じ経路により投与可能である。本発明の方法において使用される任意の医薬組成物について、動物系に由来する用量反応曲線を用いて、ヒトへの投与に対する試験用量を決定することができる。各組成物の安全性の決定では、投与の用量および頻度は、任意の臨床試験での使用が予想される値に整合する、または上回る必要がある。安全性試験および適切な組成物および投与の選択は、例えばDrug Discovery and Evaluation: Safety and Pharmacokinetic Assays. Vogel HG, Hock FJ, Maas J, Mayer D, eds. Springer 2006;前臨床開発ハンドブックであるToxicology. Gad SC, ed. Hoboken, NJ: Wiley-Interscience 2008;ならびに、特に局所薬物および化粧品については、Principles and practice of skin toxicology. Chilcott RP, Price S, eds. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons 2008、Marzulli and Maibach's dermatotoxicology. Maibach HI, Wilhelm K-P, Zhai H, eds. Boca Raton: CRC Press 2008およびDermatologic, cosmeceutic, and cosmetic development. Walters KA, Rob-erts MS, eds. New York: Informa Healthcare 2008に議論されている。
【0104】
本発明の化合物または組成物の好適な治療または美容上有効量は、投与の正確なモード、化合物が投与される形態、対処される徴候、関係する対象(例えば体重、健康状態、年齢、性別など)、および担当の医師または獣医師の好みおよび経験などの要因を、または化粧品用途のためには、ヒト対象の好みなどを考慮して、実験的に決定することができる。
【0105】
本発明の実施において、本発明の化合物の治療投与のための製剤および用量は、処置する状態の重篤度、他の薬物を投与されているかどうか、対象の体重、年齢、および性別、およびその他の基準に依存する。局所投与では、適用される本発明の組成物の量は、当然、治療される部位の程度に依存する。熟練した医師または美容師は、これらの基準の観点から、公開された臨床試験の結果に基づき、適切な製剤、量、および服用量を選択することができる。投与量および投与レジメンは、例えば、皮膚の色素沈着などの所望の効果をモニタリングすることにより、特定の対象に対してさらに調整することができる。
【0106】
本発明の方法において用いる組成物はさらに、かかる組成物投与の意図した効果に寄与することが可能であり得る物質を含む、さらなる物質を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、皮膚を明るくすることが知られている他の薬剤を含んでもよい。ある態様において、本発明の化合物ならびに別の活性成分とを有することの効果は、一方で同じ効果を保ちつつ、活性成分の各々またはいくつかの量を大幅に減少可能であること、例えば相乗効果(独立して用いられた場合に、同一の効果を生成するのに必要なかかる成分(単数または複数)の量と比較して)、または代替的に、同一量の活性成分で、効果が大幅に増強されることであり;上記の現象は相加的、または超相加的、または相乗的であることができる。
【0107】
物理的治療法は、本明細書において、デバイスから放出される高濃度のエネルギーの適用により、または機械的な力もしくは手段の適用により機能する治療法を指し、これには以下を含む:外科手術、例えば美容整形手術、鍼治療、マイクロダーマブレーション、超短パルス光(IPL)、レーザー、高周波治療、および超音波治療法。外科手術、IPLまたはレーザーなどの物理的治療法による処置は、当分野において、時折望ましくない色素沈着の生成をもたらすことが知られている。したがって、本開示に記載の方法、化合物および組成物は、かかる望ましくない色素沈着を処置、抑制または予防するために、物理的治療法と組み合わせて有用である。
超短パルス光(IPL)。治療用IPL装置は、選択的写真熱融解の原理に基づいており、ここで組織内の発色団は光源により励起され、局所的なハイパーサーミア(高熱)を引き起こして望ましくない組織を破壊する。IPL源は、血管病変、不規則な色素沈着、毛細血管拡張症、多毛症、および顔のシワ(rhytides)を含む様々な美容上の問題に対して、医療において広く用いられている。IPLは、非コヒーレント光(単一波長ではない)を用いる点で、レーザーとは異なる。IPL処置については、Gold (2007) Facial Plast Surg Clin North Am 15:145およびCiocon et al. (2009) Facial Plast Surg 25:290に議論されている。
レーザー。コヒーレント(単一波長)な低発散光源はレーザーと呼ばれる。様々なレーザー装置が利用可能であり、これには、パルス色素レーザー(PDL)、品質スイッチ(Qスイッチ)レーザー、例えばNd:YAG(ネオジムドープされたイットリウムアルミニウムガーネット)レーザー、およびレーザアブレーションシステム、例えばCO
2レーザーを含み、これらは医療、特に皮膚科および美容処置において多くの使用に適用される[Applied Laser Medicine. Breuer H, Krasner N, eds. Springer 2003]。皮膚科で選択される用途としては、表面的な血管異常、入れ墨の除去および脱毛、および色素沈着病変の軽減を含む[Watanabe (2008) Arch Dermatol Res 300 Suppl 1:S21,Jasim et al. (2007) J Am Acad Dermatol 57:677]。
高周波療法。高周波技術は、治療用レーザー光源の範囲を超えた深い真皮および皮下組織に熱損傷を生成するために、光エネルギーの代わりに電流を使用する。高周波技術は、例えばにきびおよびフォトトリートメント(photorejuvenation)において用いられている。
超音波。用語「超音波」は、約100MHzまでおよびこれを超える高周波音響波であって、組織中に制御された温熱(治療目的のために、身体の領域に昇温を誘導する)または組織にキャビテーションを誘発することができるものを指す。超音波で加熱することにより、周囲の健康な組織に重大な損傷を与えることなく、望ましくないまたは病変組織に応力を適用し、さらに切除することもできる。医療での超音波の使用は、Physical principles of medical ultrasonics. Hill CR, ed. John Wiley & Sons 2004に記載されている。
【実施例】
【0108】
本発明はさらに、以下の特定の実施例によって説明される。しかしながら、かかる例の使用は例示のみであり、本発明のまたは任意の例示の用語の範囲もしくは意味を限定するものではない。また本発明は、本明細書に記載された任意の特定の好ましい実施態様または態様(単数または複数)に限定されるものではない。実際、本発明の多くの改良および変形は、本明細書を読めば当業者に明らかとなり、かかる「均等物」は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく作製することができる。本発明はしたがって、添付の特許請求の範囲の用語によって、およびこの特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によってのみ、制限される。
例1:Kit受容体チロシンキナーゼのFPL−62064による阻害の有効性の生化学的研究
【0109】
FPL−62064のKitキナーゼに対する阻害活性を特徴付けるために、薬物をMillipore KinaseProfiler放射測定ベースのフィルターバインディングアッセイ(EMD Millipore Corporation, Billerica, MA)を用いて試験した。25μLの最終反応容積のKit(ヒト)(5〜10mU)を、を用いてインキュベートした8mMのMOPS、pH7.0、0.2mMのEDTA、10mMのMnCl2、0.1mg/mLのポリ(Glu、Tyr)4:1、10mMの酢酸Mg、および10μMの[γ
33P−ATP](比活性約500cpm/pmol)を用いてインキュベートした。反応は、MgATP混合物の添加によって開始された。室温で40分間インキュベートした後、反応を、3%リン酸溶液5μLを添加することにより停止させた。10μLの反応物を次にFiltermatA上にスポットし、75mMのリン酸で5分間、3回、およびメタノール中で1回洗浄し、その後乾燥およびシンチレーション計数を行った。
図1に示すように、FPL−62064はKitキナーゼを、6.9μM(2μg/ml)のIC
50で効率的に阻害する。
例2:FPL−62064の、細胞におけるKit受容体チロシンキナーゼのキナーゼ活性に対する阻害影響
【0110】
FPL−62064の、Kitの細胞キナーゼ活性に対する阻害影響を特徴付けるために、薬物を次のように、ProQinase GmbH (Freiburg, Germany)で試験した。高レベルの野生型Kitを内因性に発現する、ヒト急性巨核芽球性白血病細胞株M07eを、細胞Kitリン酸化アッセイに用いた。これら細胞のヒトKitリガンドによる刺激は、受容体チロシンの自己リン酸化をもたらす。M07e細胞を、マルチウェル細胞培養プレート内で20%FCSと10ng/mlのGM−CSFを補足したRPMI中にプレートした。血清および増殖因子を一晩スタベーション(factor-starvation)後、細胞を無血清培地中で試験化合物と共にインキュベートした。予備希釈した試験試料を、細胞培養培地に1:100で添加し、1%の最終DMSO濃度とした。37℃で90分間のインキュベーション後、細胞を100ng/mlのKitリガンドで3分間刺激した。スタウロスポリンで処理した細胞を低対照と定義し、溶媒のみで処理した細胞を高対照と定義した。試験試料で処理した細胞、ならびに高対照と低対照を、同じ様式で刺激した。基質のリン酸化の定量は、96ウェルプレート中で基質特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン検出抗体を用いたサンドイッチELISAにより評価した。生データを、100%に設定した高対照に対する基質リン酸化のパーセンテージに変換した。IC
50値は、GraphPad Prism 5.01ソフトウェアにより、ボトムを0、トップを100の制約で、可変ヒルの傾きを持つ非線形回帰曲線近似を用いて決定した。式は、4パラメータロジスティック方程式である。データ品質は、参照化合物(スニチニブ)のIC
50値を、以前のテストの実行中にこの化合物を用いて得られた基準値と比較することにより、判定した。現在のプロジェクト(IC
50=1.3nM)の間にスニチニブで得られたIC
50値は、0.8nM(以前にProQinaseで実施した3回のランについて計算された平均のIC
50)の予測値を再現した。FPL−62064による、Kit媒介性自己リン酸化の阻害を示すIC
50曲線を、
図2に示す。データは、FPL−62064が、細胞内でKitキナーゼ活性を効率的に、1.2μM(0.3μg/ml)のIC
50で阻害することを示す。
例3:皮膚ライトニング剤FPL−62064の黒いヒト皮膚に対する安全性と有効性:単盲検予備臨床試験
【0111】
この予備研究の目的は、FPL−62064が、そのビヒクルに比べてライトニング効果を有するかどうかを、客観的計測データと視覚的スコアリングを用いて評価することであった。研究プロトコールおよびインフォームドコンセントフォームは、研究の開始前に広州治験審査委員会(広州、中国)によって審査され、承認された。
【0112】
選定基準。以下のすべての基準が満たされた場合に、対象をこの研究に含めることとした:(1)対象は黒めの皮膚のトーンを有する中国人である、(2)対象(男性または女性)は18歳以上で、病歴および研究者による現在の健康状態の評価から判断して、健康である、(3)対象は明らかな皮膚疾患を有していない、(4)対象は研究の期間中、彼(彼女)の背中にいかなる局所製品の使用も進んで控えようとしている、(5)対象は、試験期間中に日光への露出を進んで控えようとしている、(6)対象は、研究における自分の責任と役割を理解し、全てのスケジュールされた処置に現れ、フォローアップ訪問のためにクリニックに戻り、すべての研究の要件に従うことに合意した、(7)対象は、治験審査委員会(IRB)承認のインフォームドコンセントフォームに署名した。
【0113】
除外基準。以下の基準のいずれかが適用された場合、対象をこの研究の対象から除外した:(1)妊娠中または授乳中の女性、(2)研究者の意見によりこの研究への参加から除外するとされた、任意の医学的、心理学的またはその他の疾患の重大な履歴または現在の証拠;(3)研究中、背中に任意の皮膚薬物療法(外用コルチコステロイドを含む)、または他のスキンケア製品を使用すること、(4)「エタノールパッチテスト」を使用して決定した、エタノールに対する皮膚の感受性;70%エタノールを含有する吸収材料のパッチを皮膚に15分間適用し、対象を1時間観察する。パッチ適用部位における一時的な紅斑の出現は(典型的には、20〜30分以内に現れる)、エタノール感受性を示唆する。
【0114】
対象。すべての対象は広州エリア(中国)コミュニティから募集され、研究者がスクリーニングした。6人(男性1人と女性5人;平均年齢26歳、22〜34歳の範囲)が登録されて研究に参加した。対象2、3、および4は1日目から研究に参加し、対象8、9,および10は4日目から研究に参加した。全6人の対象が研究を完了した。
【0115】
試験材料。以下の試験製剤を調製し、以下に示すように、各製剤のpHを測定した。すべての材料は、製薬、分析、またはHPLC等級であった。
【表1】
【0116】
製剤Eは、FDA承認のブランド医薬品Tri-Luma (Galderma)と同一の活性成分を含む:市販の親水性クリーム基剤中、フルオシノロンアセトニド0.01%、ヒドロキノン4%、トレチノイン0.05%。
【0117】
適用。各対象の背下部を試験領域として使用した。5つの同一サイズの適用部位(3cm×3cmの正方形)を各対象の皮膚にマークし、A〜Eとラベルした。シリンジから押し出しにより測定したそれぞれ0.1gの物質を、皮膚上のマークと適用部位の図の助けにより、訓練された技術者が適切な部位に手袋をした指で適用した。適用は、承認の外来施設で1日2回(朝および午後/夜)、1週間に6日(日曜は処置なし)行った。研究期間中、この手順を同様に継続した。対象2、3、および4は1日目(金曜日)から研究に参加し、各々は48回の処置を受けた(全員が全ての処置を受けた)。対象8、9および10は4日目(月曜日)から研究に参加し、各々は44回の処置を受けた。全員が全ての処置を受けた。
【0118】
評価と測定スケジュール。
視覚的スコアリングのスケール:0=変化なし、1=やっと目に見えるライトニング、2=はっきりわかるライトニング、3=中程度のライトニング、4=顕著なライトニング。視覚的スコアリングは、認定された臨床皮膚科医によって行われた。
計器による測定:L値(明度)の読み取りは、分光光度計CM-2600d(コニカミノルタ、大阪、日本)を用いてデュプリケートで行った。メラニン(M)指数の読み取りは、Mexameter(登録商標)MX18(Courage & Khazaka, Cologne, Germany)を用いてデュプリケートで行った。対象2、3、および4については研究の1日目、および対象8、9および10については研究の4日目に、全ての処置の前に、「ベースライン」の視覚的評価および計器測定を実施した。全ての対象に対して、視覚的評価および計器測定は研究の8日目、15日目および22日目に、朝の処置の前に実施した。全ての対象に対して、最後の視覚的評価および計器測定は29日目に行った。
【0119】
統計分析。統計分析は、Microsoft Windows(登録商標)コンピュータ上のコンピュータプログラムSigmaStat 11(Systat Software Inc., Chicago, IL, USA)を用いて行った。すべてのデータ(視覚的スコアリング(VS)、L値(明度)(L)、およびメラニン指数(M))について、ベースライン読み取り値を分析前に差し引いた。LおよびM値のそれぞれについて、分析は、2つの読み取り値の平均を用いて行った。ノンパラメトリックデータ(視覚的スコア)の場合、データは、ランクによるフリードマンの反復測定分散分析をダネットの対照群(製剤D、ビヒクル)に対する多重比較と組み合わせて用いて分析した。パラメトリックデータ(LおよびMの値)は、一元配置反復測定分散分析(ANOVA)をダネットの対照群(製剤D、ビヒクル)に対する多重比較と組み合わせて用いて分析した。統計的有意性は、p<0.05で承認した。
【0120】
安全性および有害事象。
FPL−62064:FPL−62064を含有する任意の製剤について(製剤A、BおよびC)、研究中の任意の時点で、浮腫、紅斑、スケーリング、または感応性もしくは刺激のいかなる別の証拠も観察されなかった。
陽性対照:対象2,3,4,8および10について、紅斑、スケーリング、丘疹、痒み、および/または色素沈着過剰の領域が観察された。すべてのケースにおいて、製剤Eで処置された部位の状態は、処置の停止で改善された。
ビヒクル:研究中の任意の時点で、ビヒクル対照(製剤D)に対しては、浮腫、紅斑、スケーリング、または感応性もしくは刺激のいかなる別の証拠も観察されなかった。
【0121】
皮膚ライトニングデータ。視覚的スコア(VS)、ならびにL値(L)およびメラニン指数(M)のそれぞれのベースラインからの差は、全対象について平均をとり、8日目、15日目、22日目および29日目について以下に示す。ベースラインは、対象2、3、および4については研究の1日目、および対象8、9および10については研究の4日目である。陽性対照である製剤Eについての最後の測定(29日目)は、目に見える刺激、スケーリング、または色素沈着過剰の領域を回避するようにして行った;しかしながら上記の要因は、陽性対照の効力の解釈を混乱させる。
【表2】
【0122】
皮膚ライトニングデータ分析。
視覚的スコア(VS):29日目に、製剤C(8%のFPL−62064)で処置された部位は、対照部位(製剤D、ビヒクル)と比較して、視覚的な明るさスコアの有意な増加を示した(p<0.05)。視覚的スコア2「はっきりわかるライトニング」が、製剤C(8%のFPL−62064)について、6人の対象中4人で報告された。
L値(明度):29日目に、製剤BおよびC(それぞれ4%および8%のFPL−62064)で処置された部位は、対照部位(製剤D、ビヒクル)と比較して、―皮膚ライトニングと整合して―、ベースラインからのL値(明度)の有意な(p<0.05)増加を示した。
メラニン指数:研究の29日目に、製剤A、BおよびC(それぞれ2%、4%および8%のFPL−62064)ならびに製剤E(陽性対照)で処置された各々の部位は、対照部位(製剤D、ビヒクル)と比較して、皮膚ライトニングと整合して、ベースラインからのメラニン指数(M)の有意な(p<0.05)減少を示した。研究期間中のメラニン指数の変化を、
図3に示す。
【0123】
要約。(1)FPL−62064は、使用された全ての濃度(2%、4%および8%)で良好に耐容された:研究中、全ての対象において有害事象は観察されなかった。(2)FPL−62064は、ライトニング剤としての活性を示した:(a)研究終了時、製剤C(8%FPL−62064)について、用いた3種類全ての測定値:視覚的スコア、L値(明度)およびメラニンM指数について、皮膚ライトニングは統計的に有意であった;(b)研究終了時、製剤B(4%FPL−62064)について、統計的に有意な変化はL値(明度)およびメラニンM指数について観察された;(c)研究終了時、製剤A(2%FPL−62064)について、統計的に有意な変化はメラニンM指数について観察された、(d)研究終了時、視覚的スコア2「はっきりわかるライトニング」は、製剤C(8%FPL−62064)について、6人の対象中4人で報告された、(e)研究終了時、ベースラインからのメラニンM指数の平均の減少は、製剤A(2%FPL−62064)について19.7単位、製剤B(4%FPL−62064)について24.6単位、製剤C(8%FPL−62064)について26.3単位であった;(f)メラニンM指数の測定値の減少は、濃度依存的に生じるように見える。
その他の態様
【0124】
本発明は、本明細書に記載された具体的な態様によってその範囲を限定されることはない。実際当業者には、本明細書に記載されたものに加え、本発明の種々の改良が前述の記載から明らかとなる。かかる改良は、添付のクレームの範囲内であることが意図される。
【0125】
本明細書に引用される全ての文献は、全ての特許、公開された特許出願および公開された科学文献を含み、それらの全体が全ての目的のために、参照により組み込まれる。