特許第5914560号(P5914560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914560
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20160422BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   A61M5/145 500
   A61B5/05 390
   A61B5/05 383
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-77640(P2014-77640)
(22)【出願日】2014年4月4日
(62)【分割の表示】特願2013-124133(P2013-124133)の分割
【原出願日】2007年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-133162(P2014-133162A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年5月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】小野 世一
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−534859(JP,A)
【文献】 特開2007−275596(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/109778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジのピストンを押し込むピストン駆動機構を有する自動注入器と、
前記自動注入器の電源と、
前記自動注入器と、その自動注入器の動作を制御するコントローラとの間の通信を可能とする通信手段と、
を備える薬液注入システムであって、
前記通信手段は、
前記自動注入器側から前記コントローラ側に無線方式でデータを送信する第1のユニットと、
前記コントローラ側から前記自動注入器側に無線方式でデータを送信する第2のユニットと、
を有し、
前記電源および前記第1のユニットは一体的に構成され、かつ、前記自動注入器および前記コントローラとは別体に構成されている、薬液注入システム。
【請求項2】
さらに、前記自動注入器の動作を制御するコントローラを備える、
請求項1に記載の薬液注入システム。
【請求項3】
前記自動注入器は撮像室内に配置され、
前記コントローラは撮像室外に配置される、
請求項2に記載の薬液注入システム。
【請求項4】
前記自動注入器は、薬液として造影剤を注入するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液注入システム。
【請求項5】
前記自動注入器は、2つのシリンジを保持するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬液注入システム。
【請求項6】
前記自動注入器は、前記コントローラ側で設定された注入条件のデータを、前記通信手段経由で受信するように構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬液注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁遮蔽された撮像室内に磁気共鳴撮像装置及び自動注入器等が配置された磁気共鳴撮像システムに関し、特には、撮像室内の機器と室外のコントローラとの間で制御信号をやり取りするための通信インターフェースの配置の自由度を増し、利便性をより向上させた磁気共鳴撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁気共鳴撮像装置(MRI:Magnetic Resonance Imaging)を使用する場合、外部の電磁場による影響を低減するため、磁気共鳴撮像装置は電磁遮蔽された撮像室内に配置される。また、患者に造影剤を注入するための自動注入器(インジェクター)を用いる場合には、この注入器も撮像室内に配置される。
【0003】
撮像室は、シールド壁等によって囲まれた空間である。シールド壁は、撮像に影響を及ぼしうる所定の周波数帯(例えば1GHz以下)の電磁波を遮蔽する性能を有している。シールド壁の一部には、通常、室内を覗くための覗き窓が設けられている。
【0004】
特許文献1等には、撮像室内に配置された医療機器と、室外に置かれたコントローラ等との間の通信に関する技術が開示されている。具体的には、撮像室の観察窓を通じて制御信号をやり取りする通信インターフェースが提案されており、この通信インターフェースでは、赤外線や可視光線の電磁波が利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2752909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような通信インターフェースによれば、撮像室内外の機器間に通信用のラインを引き回す必要がないため、機器の使用が容易になる等の利点がある。しかし、この通信インターフェースは、赤外線や可視光線等で信号をやり取りするものであるため、基本的には、通信し合うユニット(トランシーバ)同士を、窓を挟んで比較的近接させて対向配置しなければならない等の制約がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像室内の機器と室外のコントローラとの間で制御信号をやり取りするための通信インターフェースの配置の自由度を増し、利便性をより向上させた磁気共鳴撮像システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の磁気共鳴撮像システムは、
磁気共鳴撮像装置による撮像に影響を及ぼしうる所定の周波数帯を遮蔽するシールド壁によって囲まれた、前記磁気共鳴撮像装置が配置される撮像室と、
前記撮像室内に配置された、患者へ薬液を注入する注入手段と、
前記撮像室外に配置された、前記注入手段の動作を制御するコントローラと、
前記注入手段と前記コントローラとの間で制御信号をやり取りするための通信インターフェースと、
を備え、
該通信インターフェースは、前記所定の周波数帯より高い周波数帯を利用して前記シールド壁越しに通信を行う無線方式である。
なお、「壁越しに通信」とは、無線電波がシールド壁を貫通し、その電波により制御信号がやり取りされることをいう。
【0009】
このような構成によれば、通信インターフェースが無線方式であるので、シールド壁に開口部を設けてそこに通信用のラインを通したり、床下にラインを敷設したりする必要がない。また、通信インターフェースがシールド壁越しに通信を行う無線方式であるため、特許文献1記載の構成のように通信インターフェースのユニットを窓を挟んで対向配置させたりする必要がなく、配置の自由度が改善される。
【0010】
上記通信インターフェースの無線方式としては、例えば、2GHz以上の周波数帯を利用してもよい。また、IEEE802.11a、802.11b、又は802.11g等の規格を利用するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明によれば、撮像室内の機器と室外のコントローラとの間で制御信号をやり取りするための通信インターフェースの配置の自由度を増し、利便性をより向上させた磁気共鳴撮像システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の磁気共鳴撮像システムを示す模式図である。
図2図1のシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の磁気共鳴撮像システムを示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、この磁気共鳴撮像システム1は、磁気共鳴撮像装置13が配置される撮像室10を備えており、この撮像室10は、周囲がシールド壁11によって囲まれている。シールド壁11に電磁遮蔽性をもたせる手段としては、特に限定されるものではないが、例えば金属製のメッシュ材等を利用することができる。シールド壁11は、磁気共鳴撮像装置13の撮像に影響を及ぼしうる所定の周波数帯(例えば1GHz以下)の電磁波を遮蔽する。なお、図示は省略するが、シールド壁11には、内部の様子を見るための覗き窓(不図示)や、室内に出入りするためのドア等が設けられている。
【0015】
撮像室10内に配置された磁気共鳴撮像装置13は従来公知のものであり、この例では、寝台に横になった患者の所定部位を撮像する。
撮像室10には、また、患者に造影剤などの薬液を注入するための自動注入器15が配置されている。この自動注入器15は、薬液が充填されたシリンジが装着されるシリンジ保持部14と、該シリンジのピストンをシリンダ部材に向けて押し込む駆動手段(不図示)と、その動作を制御する制御回路(不図示であるがメモリやCPU等を備える)と、を有している。なお、自動注入器15は、キャスター付きのスタンド上に保持されているので、自由に移動させることができる。
【0016】
患者への薬液の注入は、例えば、患者の体重などに応じて予め設定されたプロトコル(注入条件)に従って自動で行われる。このような自動注入によれば、患者に対して適正な量の薬液を好ましい注入速度で注入できる。
【0017】
撮像室10の外には、自動注入器15等の動作を制御するための、モニタやキーボード等(不図示)を備えたコントローラ21が配置されている。
【0018】
本実施形態の磁気共鳴撮像システム1では、コントローラ21と自動注入器15との間の制御信号のやり取りは、無線方式を利用した通信インターフェース18を介して行われるようになっている。具体的には、この通信インターフェース18は、撮像室内のユニット18aと室外のユニット18bとで構成されている。
【0019】
室内のユニット18aは、この例では、自動注入器15に一体的に構成されている(自動注入器15の一機能として注入器に組み込まれていてもよいし、又は、別部品として注入器15に取り付けられるものであってもよい)。室外のユニット18bは、一例として、コントローラ21にライン接続されている。いずれのユニット18a、18bも、電波を送信する機能と、相手側から送信された電波を受信する機能とを備えている。
【0020】
これらユニット18a、18b間の通信には、シールド壁11越しに通信可能な無線方式が利用され、シールド壁11が遮蔽しうる所定の周波数帯(例えば1GHz)よりも高い周波数帯(例えば2GHz以上、好ましくは2.4GHz、5GHz)が利用されている。一般に、磁気共鳴撮像装置13が撮像に利用する周波数帯は数百MHzであることが多い(これに対応してシールド壁11が例えば1GHz以下を遮蔽できるようになっている)。これに対して、本実施形態の通信インターフェース18はそれよりも高い周波数帯域を使用するものであるため、この電波が撮像に影響を及ぼすことはない。
【0021】
なお、上記のような周波数帯を利用する場合、IEEE802.11a、802.11b、又は802.11g等の無線規格を利用してもよいし、又は、3〜4GHzの周波数帯を使用する無線USBなどのインターフェースを用いることもできる。
【0022】
次に、上記のように構成された本実施形態の磁気共鳴撮像システムの動作について説明する。図2は、上記磁気共鳴撮像システムの動作の例を示すフローチャートである。
【0023】
ステップS1において、オペレータはコントローラ21を操作して、同コントローラ21に所定の注入プロトコル(患者への薬液注入条件)を読み込ませ、必要に応じて、この注入条件に修正を加える。例えば、患者の現在の体重や、注入する薬液の種類などに応じて、注入条件を適宜修正することができる。
【0024】
この注入条件のデータは、次いで、コントローラ21側から、通信インターフェース18を介して自動注入器15へと送信される(ステップS2)。自動注入器15では、このデータを受信して、内臓するメモリ(不図示)でこれを保持する。
【0025】
次いで、ステップS3において、自動注入器15はこの注入条件にしたがって注入動作を実施する(ステップS3)。注入動作を実施中、自動注入器15は、注入の状況に関するデータ(現時点でどれだけの量の薬液が患者に注入されたか等のデータ)を、随時、通信インターフェース18を介してコントローラ21に送る。
コントローラ21はこれを受信し、モニタ(不図示)に注入状況としてリアルタイムに表示する。
【0026】
注入動作を実施中、コントローラ21は、所定の時間間隔で、通信インターフェース18が通信可能な状態に維持されているかどうかを確認する(ステップS4)。何らかの原因で、通信インターフェース18が通信不能となっていた場合、コントローラ21は、所定のアラームをそのモニタ(不図示)上に表示する(ステップS5)。このような構成によれば、このアラームを確認したオペレータが所定の処置(例えば、自動注入器の緊急停止のための操作を行う等)をすることで、薬液の注入を停止することができる。
通信インターフェース18が正常である場合、薬液注入が継続され、所定量の薬液が注入された時点で注入動作が終了する(ステップS6)。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の磁気共鳴撮像システムによれば、電磁遮蔽された撮像室10の外に配置されたコントローラ21と、中に配置された自動注入器15との間のやり取りを、無線方式を採用した通信インターフェース18を介して行うことができる。そのため、シールド壁11に開口部を設けてそこに通信用のライン(ケーブル)を通したり、床下にラインを敷設したりする必要が無いので、システムを構築する作業が簡素化する。また、本システムの通信インターフェース18によれば、赤外線や可視光を利用するものではないため、通信インターフェース18のユニット18a、18b同士を窓を挟んで対向配置する等の必要もなく、機器の配置の自由度を向上させることができる。
【0028】
なお、上記の例では、通信インターフェース18のユニット18aが自動注入器15に組み込まれた形態について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、自動注入器15に有線接続されるものであってもよい。
あるいは、自動注入器15の電源として撮像室10内にバッテリーが配置される場合、ユニット18aがこのバッテリーと一体的に構成され、撮像室内の隅付近に置かれる構成としてもよい。
(付記)
1.磁気共鳴撮像装置による撮像に影響を及ぼしうる所定の周波数帯を遮蔽するシールド壁によって囲まれた、前記磁気共鳴撮像装置が配置される撮像室と、
前記撮像室内に配置された、患者へ薬液を注入する注入手段と、
前記撮像室外に配置された、前記注入手段の動作を制御するコントローラと、
前記注入手段と前記コントローラとの間で制御信号をやり取りするための通信インターフェースと、を備え、
該通信インターフェースは、前記所定の周波数帯より高い周波数帯を利用して前記シールド壁越しに通信を行う無線方式である、磁気共鳴撮像システム。
2.前記無線方式が、2GHz以上の周波数帯を利用する、上記1に記載の磁気共鳴撮像システム。
3.前記無線方式が、IEEE802.11a、802.11b、又は802.11g規格である、上記1又は2に記載の磁気共鳴撮像システム。
4.前記コントローラは、前記通信インターフェースにおける通信が正常に実施されているか否かの判断を行い、正常にされていない場合にはアラームを発する、上記1〜3のいずれかに記載の磁気共鳴撮像システム。
【符号の説明】
【0029】
1 磁気共鳴撮像システム
10 撮像室
11 シールド壁
13 磁気共鳴撮像装置
15 自動注入器
18 通信インターフェース
18a、18b ユニット
21 コントローラ
図1
図2