特許第5914575号(P5914575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長春石油化學股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914575
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】電解銅箔
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20160422BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20160422BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   C25D1/04 311
   H01M4/64 A
   H01M4/66 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-116643(P2014-116643)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-21186(P2015-21186A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】102126230
(32)【優先日】2013年7月23日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】102140840
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】鄭桂森
(72)【発明者】
【氏名】林乾福
(72)【発明者】
【氏名】周瑞昌
(72)【発明者】
【氏名】呂志昇
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−174146(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002996(WO,A1)
【文献】 特開平07−268678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が光沢面であり、他方の面が粗さRzが2μm以下の粗面である電解銅箔であって、
前記電解銅箔の粗面の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の粗面の(220)面および(311)面の組織係数の和が60%以上を占め、
前記電解銅箔の粗面の(311)面の組織係数が1よりも大きいことを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】
前記光沢面の粗さRzが2μm以下である、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項3】
前記光沢面と粗面との粗さRzの差が0.5μm以下である、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項4】
前記光沢面と粗面との粗さRzの差が0.4μm以下である、請求項3に記載の電解銅箔。
【請求項5】
重量抵抗率が0.2Ωg/m2よりも低い、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項6】
前記電解銅箔の粗面の(111)面の組織係数が1よりも小さい、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項7】
前記電解銅箔の粗面の(200)面の組織係数が1よりも小さい、請求項1または6に記載の電解銅箔。
【請求項8】
9%以上の伸長率を有する、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項9】
14%以上の伸長率を有する、請求項1に記載の電解銅箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔、より詳しくは、充放電電池に使用される電解銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の高まりにより、使い捨ての一次電池の代わりに、高性能の二次電池が採用されるようになってきており、消費者向け電子製品、エネルギー貯蔵システムなどの産業に広く使用されるようになってきた。
【0003】
自動車工業の発展に伴って、リチウムイオン二次電池への需要もますます増加している。リチウムイオン二次電池は、良好な充放電性能を有することを必要とする外、安全性および電池寿命をも考慮する必要がある。将来的に、リチウムイオン二次電池の発展の方向性としては、電気エネルギー貯蔵システム用のエネルギー貯蔵電池が挙げられる。エネルギー貯蔵技術の発展の趨勢に合わせるように、リチウムイオン二次電池がシステム規模の要求を満たすようにするために、リチウムイオン二次電池の容量がMW/MWhレベルの機能に達することが求められるだけでなく、携帯電話規格のリチウムイオン二次電池のサイクル寿命が2000回以上のレベルに、またシステム規格のリチウムイオン二次電池のサイクル寿命が6000回以上のレベルに達することが求められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の構造としては、正極シート、セパレータ膜および負極シートを巻きつけ、容器に入れ、電解液を注入して封止することにより、電池が構成される。その際、負極シートは、銅箔からなる負極集電体と、その表面に塗布された炭素材料などを材料とする負極活物質とから構成される。銅箔は、圧延銅箔または電解銅箔であってもよい。また、電解銅箔は、硫酸と硫酸銅とからなる水溶液を電解液とし、イリジウム元素またはその酸化物で被覆されたチタン板を陽極(dimensionally stable anode、即ち、DSA)とし、チタン製ロールを陰極ドラムとし、両極の間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンをチタン製ロールに電解析出させ、析出した電解銅をチタン製ロールの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより、製造される。その際、電解銅箔のチタン製ロール表面に接する面を「光沢面(S面)」と称し、その反対面を「粗面(M面)」と称する。通常、電解銅箔のS面の粗さはチタン製ロールの表面の粗さによるため、S面の粗さは相対的に一定である。一方、M面の粗さは硫酸銅電解液の条件を調整することにより制御できる。
【0005】
このため、電解銅箔のM面の粗さを低下させるために、従来の電解銅箔では、硫酸銅電解液に、低分子量ゲル(例えば、ゼラチン(Gelatin))、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose、即ち、HEC)またはポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol、即ち、PEG)などの有機添加剤や、結晶微細化の効果を有する3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(Sodium 3-mercaptopropane Sulphonate、即ち、MPS)、ビス−(3−ナトリウムスルホプロピルジスルフィド)(Bis-(3-sodiumsulfopropyl disulfide)、即ち、SPS)などの硫黄含有化合物を添加することにより、電解銅箔の結晶相を変化させることが知られている。
【0006】
従来知られた方法では、例えば、韓国特許10-1117370号で作製された電解銅箔は、結晶相が、得られた電解銅箔の(111)面、(200)面および(220)面の組織係数(texture coefficient、即ち、TC)の合計を基準として、前記電解銅箔の(111)面および(200)面の組織係数の和が60%〜85%を占め、かつ、前記電解銅箔の(111)面および(200)面の組織係数がそれぞれ18%〜38%および15%〜40%を占めることにより、M面の粗さが低い微細結晶構造の電解銅箔を得て、リチウムイオン二次電池に使用される。
【0007】
従って、従来では、電解銅箔の(111)面および(200)面の組織係数が高い場合、当該電解銅箔は、結晶粒が小さく、M面の粗さが低く、引張強度が高く、伸長率が低いと考えられていた。逆に、電解銅箔の(111)面および(200)面の組織係数が低い場合および/または電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数が高い場合、当該電解銅箔は、結晶粒が大きく、M面の粗さが粗いと考えられていた。
【0008】
上記の記載から、従来の方法で作製された電解銅箔は、電解銅箔の(111)面および(200)面の組織係数を高めることにより、M面の粗さを低下させ、容量を向上させることが期待されることがわかる。しかしその代わりに、電解銅箔は、膨張収縮により破断が生じやすく、電池の寿命を犠牲にすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許10-1117370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、低いM面の粗さを有し、且つ電池のサイクル寿命を向上させることができる、リチウムイオン二次電池に使用される電解銅箔の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一方の面が光沢面であり、他方の面が粗さが2μm以下の粗面である電解銅箔であって、前記電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数の和が60%以上を占める電解銅箔を提供する。
【0012】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は、前記電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数の和が70%以上を占める。
【0013】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は、前記電解銅箔の(311)面の組織係数が1よりも大きい。
【0014】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は、前記光沢面の粗さが2μm以下である。
【0015】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は、前記光沢面と粗面との粗さの差が0.5μm以下である。前記具体的な実施態様において、前記光沢面と粗面との粗さの差は0.4μm以下である。
【0016】
また、一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔の重量抵抗率は、0.2Ωg/m2よりも低い。
【0017】
また、一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔の(111)面の組織係数が1よりも小さく、当該電解銅箔の(200)面の組織係数が1よりも小さい。
【0018】
一つの具体的な実施態様において、前記電解銅箔は、9%以上の伸長率、好ましくは14%以上の伸長率を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電解銅箔は、(220)面および(311)面では特別な結晶相の特徴を有しているため、電解銅箔の伸長率を14%以上とすることが可能である。加えて、この結晶相の特徴を有する電解銅箔は、従来の製品が粗さが粗すぎてリチウムイオン二次電池に使用できないという問題を解決することを発見した。即ち、本発明の電解銅箔は、粗面の粗さが2μm以下であるため、光沢面と粗面との粗さの差がより小さくなり、リチウムイオン二次電池に特に使用される電解銅箔となる。
【0020】
また、一つの具体的な実施態様において、本発明の電解銅箔の重量抵抗率が0.2Ωg/m2よりも低いため、好ましい充放電性能を有する。
【0021】
上記の内容から、従来の電解銅箔に比べて、本発明の電解銅箔は、全く異なる結晶相構造を有し、両面の粗さがいずれも低く、且つ両面の粗さの差が極めて小さいため、充放電サイクルの際、亀裂や破断が生じにくく、電池の寿命を延長させることがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、特定の具体的な実施態様により、本発明を実施するための形態を説明する。本技術分野に習熟した者は、本明細書に記載された内容によって簡単に本発明の他の利点や効果を理解することができる。下記内容のように、本発明は、厚みが6〜10μmの電解銅箔を実施態様とするが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0023】
また、本願明細書に記載の「含んでいない」とは、含有量が1.2ppmよりも低いかまたは0であることを示す。
【0024】
本発明の電解銅箔の製造は、硫酸と硫酸銅とからなる水溶液を電解液とし、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより、行うことができる。その場合、電解銅箔の陰極ドラム表面に接する面を「光沢面(S面)」と称し、その反対面を「粗面(M面)」と称する。
【0025】
従来では習慣的に、硫酸銅電解液に、低分子量ゲル(例えば、ゼラチン)、ヒドロキシエチルセルロースまたはポリエチレングリコールなどの有機添加剤や、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、ビス−(3−ナトリウムスルホプロピルジスルフィド)などの硫黄含有化合物を添加している。しかしながら、本願の発明者は、硫酸銅電解液に、例えばカルボン酸変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、リン酸変性ポリビニルアルコールといった酸変性ポリビニルアルコールを添加することにより、思いがけない結果が得られることを発見した。即ち、得られた電解銅箔は、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数の和が60%以上を占める。非制限的な実施態様において、得られた電解銅箔は、当該電解銅箔の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の組織係数の合計を基準として、前記電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数の和が60%〜90%を占める。また、伸長率を大幅に向上させることができ、例えば、14%よりも高く、ひいては15%よりも高くすることが可能である。また、電解銅箔の粗面の粗さが2μm以下となる。
【0026】
また、電解銅箔の(311)面の組織係数が1よりも大きく、ひいては2よりも大きく、さらに2.5にもなる。また、同時に、前記光沢面と粗面との粗さの差を0.5μm以下にすることができ、好ましくは0.4μm以下にし、ひいては0.14μmにすることができる。
【0027】
また、本発明は、電解液の組成を簡素化することができ、ヒドロキシエチルセルロースおよび/またはポリエチレングリコールを添加しない場合でも、優れた結果を得ることができる。また、本発明の電解銅箔の製造プロセスにおいて、電解液は、エチレンチオ尿素を含んでいない。
【実施例】
【0028】
[実施例1 本発明の電解銅箔の製造]
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO4・5H2O)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、5mgのスルホン酸変性ポリビニルアルコール(長春石油化学社製のTA-02F)および1.2mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(HOPAX社製のMPS)を添加した。
【0029】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み10μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm2である。本発明の電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率および重量抵抗率を測定し、実施例1にて製造された電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。その結果を表3に示す。
【0030】
[実施例2〜4 本発明の電解銅箔の製造]
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例2〜4にて添加されたスルホン酸変性ポリビニルアルコールの添加量を表1に示されるように変更し、さらに、表1に示されるような添加量で低分子量ゲル(Nippi社製のDV)を添加した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0031】
[実施例5および6 本発明の電解銅箔の製造]
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例5および6にて製造された電解銅箔は携帯電話に使用される厚さが6μmであり、また、実施例5および6にて添加されたスルホン酸変性ポリビニルアルコールの添加量を表1に示されるように変更し、さらに、表1に示されるような添加量で低分子量ゲル(Nippi社製のDV)を添加した。
電解銅箔の測定結果を表4に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
[比較例1 電解銅箔の製造]
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO4・5H2O)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、1.5mgのヒドロキシエチルセルロース(DAICEL社製のLC-400)、3.5mgの低分子量ゲル(Nippi社製のDV)および1.2mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(HOPAX社製のMPS)を添加した。
【0034】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み10μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm2である。この電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率および重量抵抗率を測定し、電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。その結果を表3に示す。
【0035】
[比較例2 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、硫酸銅電解液1リットル当たり、ヒドロキシエチルセルロースの代わりに、1.5mgのポリエチレングリコール(東聯化学社製のPEG2000)を添加することに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0036】
[比較例3 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり5mgに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0037】
[比較例4 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースを添加せず、低分子量ゲルの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり10mgに、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの添加量を3.2mgにそれぞれ変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0038】
[比較例5 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースおよび3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムを添加せず、低分子量ゲルの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり0.5mgに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0039】
[比較例6 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、比較例6にて製造された電解銅箔の厚みは6μmである。
電解銅箔の測定結果を表4に示す。
【0040】
試験例
上記実施例1〜6および比較例1〜6にて製造された電解銅箔から、それぞれ適切なサイズの試料を切り取り、引張強度、伸長率、粗さおよび重量抵抗率の測定を行い、さらに、電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。試験例に用いられる検出方法を以下に述べる。
【0041】
引張強度:
IPC-TM-650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG-I型抗張力試験機を用いて、室温(約25℃)下で、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック(chuck)距離50mm、クロスヘッド速度(crosshead speed)50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0042】
伸長率:
室温(約25℃)下で、IPC-TM-650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG-I型の抗張力試験機を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック距離50mm、クロスヘッド速度50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0043】
粗さ(十点平均粗さ、Rz)試験:
α型表面粗さ計(Kosaka Laboratory社製、型番SE1700)を用いて、IPC-TM-650方法に従って、測定を行った。
【0044】
重量抵抗率試験:
IPC-TM-650 2.5.14方法に従って、電解銅箔から長さ70cm×幅3cmの試料を切り取って、チャック距離50cmの条件下で、ホイートストンブリッジ(Wheatstone bridge)により測定を行った。
【0045】
組織係数(texture coefficient、即ち、TC):
PANalytical社製のPW3040型X線粉末回折分析装置を用いて、45kVの印加電圧下、電流40mA、走査解析度0.04°、且つ走査範囲(2θ)40°〜95°の条件下で、分析を行った。また、下記式(I)により各試料の組織係数を計算した。
【0046】
【数1】
【0047】
式(I)中、TC(hkl)が(hkl)結晶面の組織係数であり、TC値が大きくなるほど、当該結晶面の選択配向(preferred orientation)の程度が高くなることを示す。I(hkl)は、分析された試料の(hkl)結晶面の回折強度を示す。I0(hkl)は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials、即ち、ASTM)の標準銅粉末の(hkl)結晶面の回折強度(PDF#040836)を示す。また、nは、特定の回折角度(2θ)範囲内の回折ピークの数である。
【0048】
電池の充放電試験:
(リチウムイオン二次電池の製造)
N-メチルピロリドン(1-Methyl-2-pyrrolidone、即ち、NMP)を溶剤として、表2に記載の正極材料を用いて、固液比が195wt%(100gの正極材料:195gのNMP)となるように、正極スラリーを製造した。また、水を溶剤として、表2に記載の負極材料を用いて、固液比が73wt%(100gの負極材料:73gの水)となるように、負極スラリーを製造した。
【0049】
次に、前記正極スラリーをアルミニウム箔に塗布し、前記負極スラリーを前記実施例1〜6および比較例1〜6にて製造された電解銅箔にそれぞれ塗布し、溶剤を蒸発させた後、正極シートおよび負極シートとした。
【0050】
電池を組み立てる前に、予め負極シートを140℃のオーブンで5時間焼くことにより、炭素材料の表面の水分を除去することができる。その後、正極シート、セパレータ膜(Celgard社製)および負極シートを巻きつけ、容器に入れ、電解液を注入して、封止することにより、電池を構成した。電池の規格は、通常の円筒形の18650型を用いた。
【0051】
電解液は、体積比が1:2の炭酸エチレン(ethylene carbonate、即ち、EC)と炭酸エチルメチル(ethyl methyl carbonate)との混合液に、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)および2wt%の炭酸ビニレン(vinylene carbonate、即ち、VC)を添加したものである。
【0052】
【表2】
【0053】
<充放電試験>
実施例1〜6および比較例1〜6の電解銅箔を利用することにより製造されたリチウムイオン二次電池に対して、充放電の試験を行った。即ち、実施例1〜4および比較例1〜5の電解銅箔を使用することにより製造されたリチウムイオン二次電池を6000回充放電を繰り返した後、リチウムイオン二次電池を解体して、銅箔に亀裂が生じるか否かを確認した。また、実施例5、6および比較例6の電解銅箔を使用することにより製造されたリチウムイオン二次電池を2000回充放電を繰り返した後、リチウムイオン二次電池を分解して、銅箔に亀裂が生じているか否かを確認した。その際、充電は、CCCV(定電流定電圧)方式、充電電圧3.75V、充電電流1Cで行った。放電は、CC(定電流)方式、放電電圧2.8V、放電電流1Cで行った。電池の充放電試験は、室温(25℃)下で行った。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
従来、比較例5に示されるように、電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数が高いほど、当該電解銅箔の結晶粒が大きくなり、M面の粗さが粗くなると考えられていた。しかし、表3および表4の結果に示されるように、本発明の電解銅箔は、(220)面および(311)面の組織係数の和が占める割合が高い場合でも、M面の粗さを小さくすることができる。粗さの差が小さい場合では、両面にある炭素材料の塗布が均一となり、電池の充放電サイクル寿命を向上させることができる。
【0057】
また、表3および表4に示されるように、本発明の電解銅箔は、相対的に高い伸長率および低い重量抵抗率を有する。このため、厚み6μmの電解銅箔が満足すべき2000回の電池充放電については、表4に示されるように、本発明の電解銅箔は、2000回の電池充放電試験を行っても亀裂が生じない利点を有する。また、厚み10μmの電解銅箔が満足すべき6000回の電池充放電については、表3に示されるように、本発明の電解銅箔は、6000回の電池充放電試験を行っても亀裂が生じない利点を有する。
【0058】
上記の内容から、従来の電解銅箔に比べて、本発明の電解銅箔は、全く異なる結晶相構造を有し、両面の粗さがいずれも低く、且つ両面の粗さの差が極めて小さいため、充放電サイクルの際、亀裂や破断が生じにくく、電池の寿命を延長させることがわかる。
【0059】
上記の実施例は例示的に本発明の原理とその効果を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に修正と変更を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載される通りであり、本発明による効果および達成できる目的を損なわない限り、いずれも本発明に開示された技術内容で包括できる範囲内に入る。