【実施例】
【0028】
[実施例1 本発明の電解銅箔の製造]
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、5mgのスルホン酸変性ポリビニルアルコール(長春石油化学社製のTA-02F)および1.2mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(HOPAX社製のMPS)を添加した。
【0029】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み10μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm
2である。本発明の電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率および重量抵抗率を測定し、実施例1にて製造された電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。その結果を表3に示す。
【0030】
[実施例2〜4 本発明の電解銅箔の製造]
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例2〜4にて添加されたスルホン酸変性ポリビニルアルコールの添加量を表1に示されるように変更し、さらに、表1に示されるような添加量で低分子量ゲル(Nippi社製のDV)を添加した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0031】
[実施例5および6 本発明の電解銅箔の製造]
実施例1の製造プロセスを繰り返すが、実施例5および6にて製造された電解銅箔は携帯電話に使用される厚さが6μmであり、また、実施例5および6にて添加されたスルホン酸変性ポリビニルアルコールの添加量を表1に示されるように変更し、さらに、表1に示されるような添加量で低分子量ゲル(Nippi社製のDV)を添加した。
電解銅箔の測定結果を表4に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
[比較例1 電解銅箔の製造]
銅線を50wt%の硫酸水溶液で溶解し、320g/Lの硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解液を製造し、さらに、硫酸銅電解液1リットル当たり、1.5mgのヒドロキシエチルセルロース(DAICEL社製のLC-400)、3.5mgの低分子量ゲル(Nippi社製のDV)および1.2mgの3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(HOPAX社製のMPS)を添加した。
【0034】
続いて、得られた液体を用い、チタン製ロールを陰極ドラムとし、陽極と陰極との間に直流電流を通電し、電解液中の銅イオンを陰極ドラムに電解析出させ、電解銅箔(厚み10μm)を形成した後、析出した電解銅箔を陰極ドラムの表面から剥離して、連続的に巻き取ることにより電解銅箔を製造した。なお、電解銅箔を製造時の条件は、液温50℃、電流密度50A/dm
2である。この電解銅箔の粗さ、引張強度、伸長率および重量抵抗率を測定し、電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。その結果を表3に示す。
【0035】
[比較例2 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、硫酸銅電解液1リットル当たり、ヒドロキシエチルセルロースの代わりに、1.5mgのポリエチレングリコール(東聯化学社製のPEG2000)を添加することに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0036】
[比較例3 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり5mgに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0037】
[比較例4 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースを添加せず、低分子量ゲルの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり10mgに、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの添加量を3.2mgにそれぞれ変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0038】
[比較例5 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、ヒドロキシエチルセルロースおよび3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムを添加せず、低分子量ゲルの添加量を硫酸銅電解液1リットル当たり0.5mgに変更した。
電解銅箔の測定結果を表3に示す。
【0039】
[比較例6 電解銅箔の製造]
比較例1の製造プロセスを繰り返すが、比較例6にて製造された電解銅箔の厚みは6μmである。
電解銅箔の測定結果を表4に示す。
【0040】
試験例
上記実施例1〜6および比較例1〜6にて製造された電解銅箔から、それぞれ適切なサイズの試料を切り取り、引張強度、伸長率、粗さおよび重量抵抗率の測定を行い、さらに、電解銅箔の結晶相構造をX線回折法によって測定し、その組織係数を計算した。試験例に用いられる検出方法を以下に述べる。
【0041】
引張強度:
IPC-TM-650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG-I型抗張力試験機を用いて、室温(約25℃)下で、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック(chuck)距離50mm、クロスヘッド速度(crosshead speed)50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0042】
伸長率:
室温(約25℃)下で、IPC-TM-650方法に従って、SHIMADZU CORPORATION社製のAG-I型の抗張力試験機を用いて、電解銅箔から長さ100mm×幅12.7mmの試料を切り取って、チャック距離50mm、クロスヘッド速度50mm/minの条件下で、測定を行った。
【0043】
粗さ(十点平均粗さ、Rz)試験:
α型表面粗さ計(Kosaka Laboratory社製、型番SE1700)を用いて、IPC-TM-650方法に従って、測定を行った。
【0044】
重量抵抗率試験:
IPC-TM-650 2.5.14方法に従って、電解銅箔から長さ70cm×幅3cmの試料を切り取って、チャック距離50cmの条件下で、ホイートストンブリッジ(Wheatstone bridge)により測定を行った。
【0045】
組織係数(texture coefficient、即ち、TC):
PANalytical社製のPW3040型X線粉末回折分析装置を用いて、45kVの印加電圧下、電流40mA、走査解析度0.04°、且つ走査範囲(2θ)40°〜95°の条件下で、分析を行った。また、下記式(I)により各試料の組織係数を計算した。
【0046】
【数1】
【0047】
式(I)中、TC(hkl)が(hkl)結晶面の組織係数であり、TC値が大きくなるほど、当該結晶面の選択配向(preferred orientation)の程度が高くなることを示す。I(hkl)は、分析された試料の(hkl)結晶面の回折強度を示す。I
0(hkl)は、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials、即ち、ASTM)の標準銅粉末の(hkl)結晶面の回折強度(PDF#040836)を示す。また、nは、特定の回折角度(2θ)範囲内の回折ピークの数である。
【0048】
電池の充放電試験:
(リチウムイオン二次電池の製造)
N-メチルピロリドン(1-Methyl-2-pyrrolidone、即ち、NMP)を溶剤として、表2に記載の正極材料を用いて、固液比が195wt%(100gの正極材料:195gのNMP)となるように、正極スラリーを製造した。また、水を溶剤として、表2に記載の負極材料を用いて、固液比が73wt%(100gの負極材料:73gの水)となるように、負極スラリーを製造した。
【0049】
次に、前記正極スラリーをアルミニウム箔に塗布し、前記負極スラリーを前記実施例1〜6および比較例1〜6にて製造された電解銅箔にそれぞれ塗布し、溶剤を蒸発させた後、正極シートおよび負極シートとした。
【0050】
電池を組み立てる前に、予め負極シートを140℃のオーブンで5時間焼くことにより、炭素材料の表面の水分を除去することができる。その後、正極シート、セパレータ膜(Celgard社製)および負極シートを巻きつけ、容器に入れ、電解液を注入して、封止することにより、電池を構成した。電池の規格は、通常の円筒形の18650型を用いた。
【0051】
電解液は、体積比が1:2の炭酸エチレン(ethylene carbonate、即ち、EC)と炭酸エチルメチル(ethyl methyl carbonate)との混合液に、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)および2wt%の炭酸ビニレン(vinylene carbonate、即ち、VC)を添加したものである。
【0052】
【表2】
【0053】
<充放電試験>
実施例1〜6および比較例1〜6の電解銅箔を利用することにより製造されたリチウムイオン二次電池に対して、充放電の試験を行った。即ち、実施例1〜4および比較例1〜5の電解銅箔を使用することにより製造されたリチウムイオン二次電池を6000回充放電を繰り返した後、リチウムイオン二次電池を解体して、銅箔に亀裂が生じるか否かを確認した。また、実施例5、6および比較例6の電解銅箔を使用することにより製造されたリチウムイオン二次電池を2000回充放電を繰り返した後、リチウムイオン二次電池を分解して、銅箔に亀裂が生じているか否かを確認した。その際、充電は、CCCV(定電流定電圧)方式、充電電圧3.75V、充電電流1Cで行った。放電は、CC(定電流)方式、放電電圧2.8V、放電電流1Cで行った。電池の充放電試験は、室温(25℃)下で行った。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
従来、比較例5に示されるように、電解銅箔の(220)面および(311)面の組織係数が高いほど、当該電解銅箔の結晶粒が大きくなり、M面の粗さが粗くなると考えられていた。しかし、表3および表4の結果に示されるように、本発明の電解銅箔は、(220)面および(311)面の組織係数の和が占める割合が高い場合でも、M面の粗さを小さくすることができる。粗さの差が小さい場合では、両面にある炭素材料の塗布が均一となり、電池の充放電サイクル寿命を向上させることができる。
【0057】
また、表3および表4に示されるように、本発明の電解銅箔は、相対的に高い伸長率および低い重量抵抗率を有する。このため、厚み6μmの電解銅箔が満足すべき2000回の電池充放電については、表4に示されるように、本発明の電解銅箔は、2000回の電池充放電試験を行っても亀裂が生じない利点を有する。また、厚み10μmの電解銅箔が満足すべき6000回の電池充放電については、表3に示されるように、本発明の電解銅箔は、6000回の電池充放電試験を行っても亀裂が生じない利点を有する。
【0058】
上記の内容から、従来の電解銅箔に比べて、本発明の電解銅箔は、全く異なる結晶相構造を有し、両面の粗さがいずれも低く、且つ両面の粗さの差が極めて小さいため、充放電サイクルの際、亀裂や破断が生じにくく、電池の寿命を延長させることがわかる。
【0059】
上記の実施例は例示的に本発明の原理とその効果を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に修正と変更を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載される通りであり、本発明による効果および達成できる目的を損なわない限り、いずれも本発明に開示された技術内容で包括できる範囲内に入る。