(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エアバッグと背面ボードの間に、膨張展開したエアバッグによって後方に膨出せしめられる表皮が介在し、該表皮に前記背面ボードが配設されたことを特徴とする請求項8に記載の車両用シートエアバッグシステム。
前記エアバッグは、前記架設弾性支持部材より車体後方側に配置されており、前記インフレータは、前記架設弾性支持部材よりも車体前方側に配置されたことを特徴とする請求項19に記載の車両用シート。
前記インフレータの前記シートバックフレームへの取付けは、前記インフレータが前記コーナ部乃至湾曲部を介在するシートバックフレームの両側部位間に架け渡されてなされることを特徴とする請求項28に記載の車両用シート。
前記シートバックフレームは、シートバック下部及び上部位置で幅方向にそれぞれ延在する下方クロスメンバ及び上方クロスメンバと幅方向両側にそれぞれ配置された一対の側方フレームとを有し、
前記コーナ部乃至湾曲部が前記側方フレームと前記下方クロスメンバとの連結部であり、前記インフレータが側方フレーム及び下方クロスメンバに架け渡されて取り付けられたことを特徴とする請求項29に記載の車両用シート。
前記シートバックフレームは、シートバック下部及び上部位置で幅方向にそれぞれ延在する下方クロスメンバ及び上方クロスメンバと幅方向両側にそれぞれ配置された一対の側方フレームとを有し、
前記コーナ部乃至湾曲部が前記側方フレームと前記上方フレームとの間に位置しており、前記インフレータが側方フレーム及び上方クロスメンバに架け渡されて取り付けられたことを特徴とする請求項29に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された車両用シートは、上述のように、当該座席シートの着座者の保護をエアバッグとその後方外側に存在する強固な構成の支持プレートの存在によって達成している。すなわち、着座者は後方への移動に対してはエアバッグでその衝撃が緩和され、シートバックの後方から加えられる衝撃に対しては、まず支持プレートでこれを受け止め、その衝撃がエアバッグで吸収されることとなる。
【0009】
したがって、後方にシートが存在し、着座者が居るときなどにおいて、その後席着座者の前席へのシートバック後方からの衝突は、支持プレートへの衝突時には大きな衝撃が発生する。したがって、後方からの衝撃を柔らかく受け止めることができず、後席シートの着座者の膝などへのダメージだけでなく、前席着座者への衝撃も大きなものとなるおそれが有る。
【0010】
一方、特許文献2のエアバッグ装置によると、前席シートのシートバック内で膨張展開する第2エアバッグによって前席シートの着座者の保護とダメージの軽減が期待でき、且つ、後席シートの着座者側に向かって第1エアバッグが膨脹展開することで後席着座者の保護も図られる。しかし、シートバック内のエアバッグ設置だけでなく、前席シートのシートバッグ下方部に、シートバッグ後外方へ向けて膨張展開する第1エアバッグを別途設けなければならず、シートバッグの構造の複雑化、各エアバッグの制御負担の増大が生じる。
【0011】
また、第1エアバッグが前席シートのシートバックの背面下部から後席シートの着座者に向けて斜め上方に大きく膨出することとなり、その膨脹展開形状が不安定になることから、後席シートの着座者の前席のシートバックへの衝突を的確、確実に受け止め、その衝撃を吸収することについては、安定性に欠けるおそれがある。
【0012】
以上のように、上記従来の特許文献の各構造においては、簡単な構造によって、エアバッグによる前席シートの着座者の直接の保護と、後方からのシートバックへの衝撃からの保護については、更なる改善の余地が残されている。
【0013】
なお、自動車等の車両において、上述の様な後席シートの着座者の膝などの前席のシートバックへの衝突は、前方からの衝突の際だけでなく、後方からの衝突時に車体後部の変形などにより、後席シートの着座者が前方に押され、膝が前席シートのシートバックの背面に強く突き当たるという状況でも発生する可能性が存する。
【0014】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減を可能とする車両用シートのエアバッグシステム及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する請求項1の車両用シートエアバッグシステムの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部でエアバッグを膨張展開させて
そのシートの着座者を後突時の衝撃から保護する車両用シートエアバッグシステムにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグが、シートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、
後突を予知又は検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部とを備え、前記シートバック内での膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0016】
これによれば、前席シ−トのシートバック内に配置されたエアバッグが、シートバック内で膨張展開することで、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止めて、且つ後方からの衝撃から
前席シート着座者を保護することができ、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減が可能になる。
【0017】
また、シートバック内でシートパッドと表皮と間でエアバッグが膨脹展開することで、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持される。
【0018】
更に、シートバック内に備えたエアバッグの膨張展開で、着座者の後方移動を弾性的に受け止める機能、及び背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止める機能を兼備することから、構成及びエアバッグ膨張展開制御の簡素化が得られる。
【0021】
上記目的を達成する請求項
2の車両用シートエアバッグシステムの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部でエアバッグを膨張展開させて
そのシートの着座者を後突時の衝撃から保護する車両用シートエアバッグシステムにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグが、シートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、
後突を予知又は検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部とを備え、前記シートバック内での前記膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが前記表皮を後方へ膨出せしめて着座者の上体を弾性的に支持
し且つシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0022】
これによれば、シートバック内に配置されたエアバッグが、シートバック内で表皮を後方に膨出せしめて膨脹展開する簡単な構成でエアバッグの膨脹展開量及び衝撃吸収ストロークを確保し、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止め、且つ後方からの衝撃から着座者を保護することができる。これにより、構成の複雑化を伴うことなく衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減を可能となる。また、シートパッドとシートバック背面における表皮との間でエアバッグが膨脹展開することで、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0023】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記表皮が、前記膨張展開したエアバッグに対応する領域に伸縮性部分を有することを特徴とする。これによると、表皮がエアバッグの膨脹展開に対応する領域に伸縮性部を備えることで、エアバッグの膨脹展開により表皮のエアバッグと対応する領域を後方へ容易に膨出するとともに、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持される。
【0024】
請求項
4の発明は、請求項
2に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記表皮の少なくとも前記膨張展開したエアバッグに対応する領域が、該領域以外の表皮と異なる伸縮性を備えた素材により構成されていることを特徴とする。
【0025】
これによると、表皮が膨張展開したエアバッグに対応する領域を、この領域以外の表皮と異なる伸縮性を備えた素材により構成することで、エアバッグの膨脹展開による表皮を後方へ容易に膨出するとともに、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0026】
請求項
5に記載の発明は、請求項
2に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記表皮が、前記エアバッグの膨張展開に起因する後方への膨出を可能にする襠部を有することを特徴とする。これによると、表皮が、エアバッグの膨張展開に起因する後方への膨出を可能にする襠部を有することで、エアバッグの膨脹展開により襠部が展開乃至伸長して表皮の後方へ膨出を容易にするとともに、エアバッグの展開挙動及び膨張展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0027】
請求項
6に記載の発明は、請求項
2に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記表皮が、前記エアバッグの膨張展開に起因する後方への膨出を可能にする破断部を有することを特徴とする。これによると、表皮が、エアバッグの膨張展開に起因する後方への膨出を可能にする破断部を有することで、エアバッグの膨脹展開による表皮を後方への膨出を容易にすると共に、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持される。
【0028】
請求項
7に記載の発明は、請求項
2〜5のいずれか1項に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記表皮の後方に配置され、前記表皮の膨出領域に沿って背面ボードを有することを特徴とする。これによると、膨出領域の膨出変形に影響することなく背面ボードが配置できる。
【0029】
上記目的を達成する請求項
8の車両用シートエアバッグシステムの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部でエアバッグを膨張展開させ
てそのシートの着座者を後突時の衝撃から保護する車両用シート
エアバッグシステムにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグが、シートパッドとシートバック背面に設けられた背面ボードとの間に配置され、
後突を予知又は検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部とを備え、前記シートバック内での前記膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つ前記背面ボードを後方に押動させて背面ボードに付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0030】
これによれば、シートバック内のシートパッドと背面ボードとの間に配置されたエアバッグが背面ボードを後方に押動せしめて膨張展開する簡単な構成で、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御されるとともに膨張展開量及びエアバッグによる車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保される。この押動される背面ボードに支持されて膨張展開するエアバッグによって衝突による着座者の後方移動が広範囲に亘って均一な押圧によって弾性的に受け止められ、かつ後方からの衝撃から着座者を保護することができる。これにより、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減が可能となる。
【0031】
請求項
9に記載の発明は、請求項
8に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記背面ボードは、前記シートバック背面から離反する方向に揺動自在に該シートバック背面に支持されていることを特徴とする。
【0032】
これによると、シートパッドと後方に揺動する背面ボードとによってエアバッグの展開挙動及び展開形状が制御され、且つ揺動する背面ボードに支持されて膨張展開するエアバッグによって衝突による着座者の後方移動が広範囲に亘って均一な押圧によって弾性的に受け止められ、かつ後方からの衝撃から着座者を保護することができる。
【0033】
請求項
10に記載の発明は、請求項
8又は9記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記背面ボードは、前記押動によりシートバック背面から脱離することを特徴とする。
【0034】
これによると、シートパッドとシートバック背面から離脱して移動する背面ボードとによってエアバッグの展開挙動及び展開形状が制御され、且つ背面ボードに支持されて膨張展開するエアバッグによって着座者の後方移動が広範囲に亘って均一な押圧によって弾性的に受け止められ、かつ後方からの衝撃から着座者を保護することができる。
【0035】
請求項
11に記載の発明は、請求項
8〜10のいずれか1項に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記背面ボードは、前記シートバック背面に着脱可能に固定されており、車両の衝突を予知する衝突予知手段と、該衝突予知手段によって予知された衝突発生情報に基づいて前記固定が解除される固定解除機構とを有することを特徴とする。
【0036】
これによると、衝突発生情報に基づいて背面ボードの固定を解除する固定解除機構を備えることで、エアバッグが膨張展開する際にエアバッグに付与される負荷が軽減されて迅速なエアバッグの膨張展開が実行できる。
【0037】
請求項
12に記載の発明は、請求項
8に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記エアバッグと背面ボードの間に、膨張展開したエアバッグによって後方に膨出するせしめられる表皮が介在し、該表皮に前記背面ボードが配設されたことを特徴とする。
【0038】
これによると、エアバッグの膨張展開により、表皮及び表皮に配設された背面ボードが後方に膨出することで、エアバッグの展開挙動及び展開形状が制御され安定した膨張展開が保持され、背面ボードに支持されて膨脹展開するエアバッグによって着座者の後方移動を広範囲に亘る均一な押圧で弾性的に受け止め、かつ後方からの衝撃から着座者を保護することができる。
【0039】
また、背面ボードが衝撃等で破損した際にも、エアバッグが表皮によって保持されてエアバッグの膨張展開の展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0040】
請求項
13に記載の発明は、請求項
8〜12のいずれか1項に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記背面ボードに脆弱部が形成されたことを特徴とする。
【0041】
これによると、背面ボードに予め破断又は折曲を可能にする脆弱部を有することで、膨脹展開するエアバッグと背面ボードの整合が得られて背面ボードの局部的な負荷が抑制される。また、エアバッグの膨脹展開に伴って背面ボードに負荷が作用した際、背面ボードが脆弱部に沿って折曲し、或いは脆弱部に沿って破断して、不特定箇所の破断が防止されて、破断面に鋭利な突起状に発生する、いわゆるシャープエッジの発生が回避できる。
【0042】
請求項
14に記載の発明は、請求項
1〜13のいずれか1項に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記エアバッグの前記膨張展開を制御する制御部と、車両への衝突の衝撃を検知する衝突検知手段と、を備え、前記制御部は、前記衝突検知手段が衝突を検知してから所定時間遅らせて前記エアバッグを膨張展開させることを特徴とする。
【0043】
これによると、衝突を検知してから所定時間遅れてエアバッグを膨張展開することで、
後突発生の際、慣性により着座者の上体がシートバッグ内に潜り込むように後方移動して頭部がヘッドレストによって支持された後、エアバッグが膨張展開して着座者の上体を弾性的に支持することにより着座者の頸部に作用する負荷が軽減されて着座者のむち打ち傷害等の発生が抑制できる。
【0044】
請求項
15に記載の車両用シートエアバッグシステムの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部でエアバッグを膨張展開させてそのシートの着座者を後突時の衝撃から保護する車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグがシートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、車両への
後突を検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部とを備え、前記制御部は、
前記衝突センサが後突を検知してから所定時間遅らせて前記エアバッグを膨張展開させる
ともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0045】
これによると、衝突予知手段によって予知された衝突発生時にエアバッグの膨張展開を開始することで、衝撃発生の際、エアバッグが膨張展開して車両シート着座者を保護することができる。あるいは、衝突予知手段によって予知された衝突発生時より所定時間遅らせて前記エアバッグを膨張展開開始させることで
、後突発生の際、慣性により着座者の上体がシートバッグ内に潜り込むように後方移動して頭部がヘッドレストによって支持された後、エアバッグが膨張展開して着座者の上体を弾性的に支持することで着座者のむち打ち傷害等の発生が抑制できる。また、予知された衝突発生時より所定時間前、即ち、衝突発生前に膨張展開開始するエアバッグによって着座者の上体を前方に押圧することで着座者の着座位置及び着座姿勢が適正化され、着座者に対して最適なエアバッグの膨張展開作用が得られる。
【0046】
請求項16の発明は、請求項
1〜13のいずれか1項に記載の車両用シートエアバッグシステムにおいて、前記エアバッグは、前記シートバックの内部で多段的に膨張展開することを特徴とする。これによると、着座者保護に適した状態に多段階でエアバッグを膨張展開させることで、着座者保護に適したエアバッグ膨張展開状態に制御できる。
【0047】
上記目的を達成する請求項
17に記載の車両用シートの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部にシートバックフレームと該シートバックフレームに架設された架設弾性支持部材と
シートの着座者を後突時の衝撃から保護するエアバッグとを備え、該エアバッグを前記シートバック内部で膨張展開させる車両用シートにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグがシートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、前記シートバックフレームにインフレータを取り付け、
後突を予知又は検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部をと備え、前記インフレータの作用による前記シートバック内での前記膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つ前記シートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0048】
これによると、エアバッグの展開挙動及び展開形状が着座者上体の直後に位置するシートバック内でそのシートバックの内部形状によって制御されて安定的に膨張展開する。よって、衝突による着座者の上体の後方移動によりその上体がシートバック前面に押し当てられる衝撃及び後方からのシートバック背面に付与される衝撃が的確に軽減される。
【0049】
そのうえ、着座性を確保して配置された骨格部材であるシートバックフレームにインフレータが取り付けられているので、インフレータを設けたことによる着座時の違和感が極力低減されると共にインフレータの支持剛性が確保されている。
【0050】
請求項
18に記載の発明は、請求項
17に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームは、シートバック形状に沿った略枠状に形成され、前記エアバッグは、略枠状のシートバックフレームの枠内に設けられ、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームの側方部分に取り付けられたことを特徴とする。
【0051】
これによると、着座時の違和感が軽減されるだけでなく、エアバッグの展開領域とは離間した側方フレームにインフレータが取り付けられているので、エアバッグの膨張展開を阻害することがないという利点がある。また、それぞれの側方フレームにインフレータを取り付けることができ、合計2個のインフレータをそれぞれの側方フレームに取り付けた場合には、これらのインフレータによってエアバッグの展開タイミング等を制御することが可能となる。
【0052】
請求項
19に記載の発明は、請求項
18に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームの枠内側に配置されたことを特徴とする。これによると、インフレータのシートバックフレーム外部への突出が無くなるとともに、シートバックフレーム内部に配置されてインフレータ自体が外力からシートバックフレームにより保護される。
【0053】
請求項
20に記載の発明は、請求項
19に記載の車両用シートにおいて、前記エアバッグは、前記架設弾性支持部材より車体後方側に配置されており、前記インフレータは、前記架設弾性支持部材よりも車体前方側に配置されたことを特徴とする。これによると、膨張展開時のエアバッグとインフレータとの干渉が回避できる。
【0054】
請求項
21に記載の発明は、請求項
18に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームの枠外側に配置されたことを特徴とする。
【0055】
これによると、膨張展開するエアバッグとのインフレータの干渉が完全に回避され、エアバッグの安定した展開が確保される。さらに、インフレータが車体外方側においてシートバックフレームの枠外に配置されている場合には、このインフレータをサイドエアバッグのインフレータと共用することができ、シートバックフレームの内側に配置されたランバーサポート機構の作用に影響しない。
【0056】
請求項
22に記載の車両用シートの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部にシートバックフレームと該シートバックフレームに架設された架設弾性支持部材と
シートの着座者を後突時の衝撃から保護するエアバッグとを備え、該エアバッグを前記シートバック内部で膨張展開させる車両用シートにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグがシートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、前記シートバックフレームにインフレータを取り付け、
後突を予知又は検知する衝突センサと前記エアバッグの膨張展開を制御する制御部をと備え、前記シートバックフレームは、シートバック形状に沿った略枠状に形成され、前記エアバッグは、略枠状のシートバックフレームの枠内に設けられ、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームの上方部分及び下方部分の少なくとも一方に取り付けられ、前記インフレータの作用による前記シートバック内での前記膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つ前記シートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0057】
これによると、エアバッグの膨張展開が着座者上体の直後に位置するシートバック内でそのシートバックの内部形状に制御されて安定的に膨張展開する。よって、衝突による着座者の上体の後方移動によりその上体がシートバック前面に押し当てられる衝撃及び後方からのシートバック背面に付与される衝撃が的確に軽減される。
【0058】
そのうえ、インフレータがシートバックフレームの上方及び/又は下方部分に取り付けられているので、エアバッグを膨張展開させる場となるシートバック内部空間が損なわれず、衝突時の衝撃吸収のためのエアバッグの展開スペースが確保されるとともに、インフレータの支持剛性が確保される。また、エアバッグとの干渉回避も可能になる。
【0059】
請求項
23に記載の発明は、請求項
22に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、前記シートバックフレームの枠内側に配置されたことを特徴とする。これによると、インフレータがシートバックフレームによって外力から保護され、インフレータのシートバックフレーム外部への突出がなくなる。また、インフレータとシートバックの一体化を図ることも可能となる。
【0060】
請求項
24に記載の発明は、請求項
22に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、前記シートバックフレームの枠外側に配置されたことを特徴とする。これによると、膨張展開するエアバッグとインフレータの干渉を完全に回避することができ、エアバッグの安定した展開が確保される。
【0061】
請求項
25に記載の発明は、請求項
23に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームの前記上方部分及び下方部分の少なくとも一方の側端部寄りの位置に取り付けられたことを特徴とする。これによると、膨張展開するエアバッグとインフレータの干渉をさらに回避することができる。
【0062】
請求項
26に記載の発明は、請求項
22に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータは、シートバックフレームの上方部分及び下方部分にそれぞれ取り付けられ、該各インフレータが時間差を有して作用し、前記膨張展開がなされることを特徴とする。これによると、シートバックフレームの上方部分及び下方部分にそれぞれ取り付けられたインフレータが時間差で作用するので、エアバッグの展開速度、膨張展開形状の維持時間をコントロールすることが可能となる。
【0063】
請求項
27に記載の発明は、請求項
22に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータが取り付けられたシートバックフレームの下方部分は、前記シートバック下方に沿って幅方向に延在する筒状のクロスメンバであり、前記インフレータが、前記クロスメンバの内部に固定されたことを特徴とする。
【0064】
これによると、クロスメンバの曲げ強度及びねじり強度の一部をインフレータが負担するので、クロスメンバが補剛され、結果としてシートバックのねじれや歪みが抑制されている。また、シートバックフレームからインフレータが突出しないので、インフレータが設けられることによる着座時の違和感が生じることがない。
【0065】
請求項
28に記載の車両用シートの発明は、
後席シートの前方に配設される前席シートであって、シートバック内部にシートバックフレームと該シートバックフレームに架設された架設弾性支持部材と
シートの着座者を後突時の衝撃から保護するエアバッグとを備え、該エアバッグを前記シートバック内部で膨張展開させる車両用シートにおいて、
前記シートバックは、前記膨張展開したエアバッグの前方を前記着座者の上体を弾性的支持可能に被覆する可撓部材と、前記膨張展開したエアバッグの後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に被覆する可撓部材乃至可動部材とを有する表皮を備え、前記エアバッグがシートパッドとシートバック背面における表皮との間に配置され、前記シートバックフレームにインフレータを取り付け、前記シートバックフレームは、全体としてシートバック形状に沿った略枠状に形成され、前記エアバッグは、略枠状のシートバックフレームの枠内に設けられ、前記インフレータは、前記略枠状のシートバックフレームのコーナ部乃至湾曲部において該シートバックフレームに取り付けられており、前記インフレータの作用による前記シートバック内での前記膨張展開は、
前記衝突センサが後突を予知又は検知して行われるともに、該膨張展開したエアバッグが着座者の上体を弾性的に支持
し且つ前記シートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止めるように行われることを特徴とする。
【0066】
これによると、エアバッグは、車両用シートの着座者上体の直後に位置するシートバック内でそのシートバックの内部形状に拘束されて安定的に膨張展開するので、着座者上体の後方移動を的確に受け止め、且つ後席シート着座者の膝の前方移動をよる衝撃を的確に吸収することで、着座者の保護が得られる。
【0067】
また、インフレータが略枠状のシートバックフレームのコーナ部乃至湾曲部においてシートバックフレームに取り付けられるので、インフレータによって車両の衝突時に応力が集中し易いコーナ部乃至湾曲部におけるねじり剛性が強化される。
【0068】
請求項
29に記載の発明は、請求項
28に記載の車両用シートにおいて、前記インフレータの前記シートバックフレームへの取付けは、前記インフレータが前記コーナ部乃至湾曲部を介在するシートバックフレームの両側部位間に架け渡されてなされることを特徴とする。
【0069】
これによると、インフレータは、それぞれコーナ部乃至湾曲部を介在させてシートバックフレームの両側部位間に架け渡されるので、インフレータからの膨張ガスの噴出に対する反力をシートバックフレーム両側部位からシートバックフレーム全体へ効率的に分散させることができる。
【0070】
請求項
30に記載の発明は、請求項
29に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームは、シートバック下部及び上部位置で幅方向にそれぞれ延在する下方クロスメンバ及び上方クロスメンバと幅方向両側にそれぞれ配置された一対の側方フレームとを有し、前記コーナ部乃至湾曲部が前記側方フレームと前記下方クロスメンバとの連結部であり、前記インフレータが側方フレーム及び下方クロスメンバに架け渡されて取り付けられたことを特徴とする。
【0071】
これによると、インフレータは、上方クロスメンバ、側方フレーム及び下方クロスメンバにより構成される矩形の下方隅角に位置するのでシートバックがサイドエアバッグやアクティブヘッドレスト機構を備える場合であっても、これらと干渉しない位置にインフレータを配置することができる。
【0072】
請求項
31に記載の発明は、請求項
29に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームは、シートバック下部及び上部位置で幅方向にそれぞれ延在する下方クロスメンバ及び上方クロスメンバと幅方向両側にそれぞれ配置された一対の側方フレームとを有し、前記コーナ部乃至湾曲部が前記側方フレームと前記上方フレームとの間に位置しており、前記インフレータが側方フレーム及び上方クロスメンバに架け渡されて取り付けられたことを特徴とする。
【0073】
これによると、インフレータは、上方クロスメンバ、側方フレーム及び下方クロスメンバにより構成される矩形の上方の隅角に位置するので、シートバックがサイドエアバッグやアクティブヘッドレスト機構を備える場合であっても、これらと干渉しない位置にインフレータを配置することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によると、シートバック内でエアバッグが膨張展開する簡単な構成で、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止めて、且つ後方からの衝撃から車両シート着座者を保護することができ、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
(第1実施の形態)
以下、本発明による車両用シートエアバッグシステムの第1実施の形態を図を参照して説明する。
図1は車両用シートの概要を示す縦断面図、
図2は後方から見た車両用シートの一部破断概略斜視図、
図3は衝撃発生時における車両用シートの作動説明図である。なお、各図において矢印Fは車体前方方向を示し、矢印Wは車幅方向を示す
【0077】
図1に示すように、車室内のフロア1には、車両用シートである前席シート10及び後席シート60が前後に並設される。前席シート10はフロア1上に支持されて着座者Pfの尻部を支えるシートクッション11と、着座者Pfの腰部から胸部に亘る上体Pbを支えるシートバック20と、シートバック20の上方に位置してシートバック20に支持されたヘッドレスト40を有する。車両の運転中はヘッドレスト40に着座者Pfの頭部Phを当てることもできるが、このようにすると運転操作がしづらくなるため、通常、着座者Pfの頭部Phはヘッドレスト40から僅かに離した状態で着座する。
【0078】
図1及び
図2に示すように、前席シート10においては、シートバック20の骨格を形成するシートバックフレーム21の内方に、架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が収縮状態で配置され、これら全体が袋状の表皮31で被覆される。
【0079】
シートバックフレーム21は、車幅方向に延在する上方フレーム22及び上方フレーム22の両端から下方に湾曲乃至折曲して下方に延在する一対の側方フレーム23からなるコ字状乃至U字状のパイプフレームと、各側方フレーム23の側端部に配置固定された左右一対のサイドブラケット24と、車幅方向に延在して左右の各側方フレーム23の上端近傍に架設されるパイプ状の上方クロスメンバ25と、左右のサイドブラケット24の下端近傍間に架設される下方クロスメンバ26によって略矩形枠状に形成される。
【0080】
この対向する側方フレーム23の内方間及びサイドブラケット24の内方間に金属ワイヤよりなるSばね等の架設弾性支持部材27が複数、本実施の形態では3本の架設弾性支持部材27が略等間で架け渡されて張設される。
【0081】
この架設弾性支持部材27の前面に、着座者Pfの上体Pbを弾性的に支持するウレタンフォーム材等からなるシートパッド28が配設され、架設弾性支持部材27の後方に矩形平面状に折り畳まれた収縮状態のエアバッグ30が配置される。
【0082】
これらシートバックフレーム21、シートパッド28、エアバッグ30等全体を伸縮及び可撓可能な布帛(織物、編物、不織布)や皮革(天然皮革、合成皮革)でシートパッド28の前面を覆う前面部32及びエアバッグ30を覆う背面部33を有する袋状に形成された表皮31で被覆することでシートバック20が形成される。背面部には、可動部材である背面ボードが配置されることもある。エアバッグ30は、例えば、表皮31等に図示しない係止手段によって膨張展開可能に保持され、エアバッグ30に図示しないガス導入部が設けられ、サイドブラケット24の車体外方側の側面24aに取り付けられた円筒状のインフレータ29と連結される。
【0083】
シートバック20のシートバックフレーム21を構成する各サイドブラケット24の基端は、シートクッション11の後端に配置されたリクライニング装置15の回動アーム16に取付ボルト17の螺着によって取り付けられ、シートバックフレーム21がリクライニング装置15の回転アーム16に一体的に連結される。なお、リクライニング装置15は、既存の公知のものが使用でき、かつ本発明と直接関係するものではなく、詳細な説明を省略する。
【0084】
また、
図1及び
図2に示すように、シートバックフレーム21の上方フレーム22に、左右一対の筒状のステーブラケット42が一体的に形成される。このステーブラケット42にヘッドレストホルダーを介在してヘッドレスト40に装着されたステー41を挿入係止することによって、シートバック20の上端にヘッドレスト40が装着される。
【0085】
これにより、
図1及び
図2に示すように、略矩形平面状に収縮されたエアバッグ30は、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間に配設されてシートバック20内に内蔵され、シートバック20は膨張展開するエアバッグ30の前方を着座者Pfの後退を弾性的に支持可能な架設弾性支持部材27、シートパッド28及び表皮31の前面部32等の可撓性部材で被覆する一方、エアバッグ30の後方をシートバック背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能な可撓性部材乃至可動部材である表皮31の背面部33で被覆する。
【0086】
このエアバッグ30は、インフレータ29の膨張ガス噴射の基で瞬時に平面的に膨張展開するように構成され、エアバッグ30は、内部の気体を外部に放出する図示しないオリフィスを有する。オリフィスは、エアバッグ30の膨張展開後における圧縮のもとで、内部の気体を徐々に放出する孔径及び数に設定される。
【0087】
このような構成によれば、シートバック20内に配設されるシートバックフレーム21内に張設される架設弾性支持部材27及びシートパッド28の撓み変形が確保されて、通常の着座状態における着座者Pfの弾性的な支持が適切に得られ、良好な着座性が確保できる。
【0088】
一方、インフレータ29の膨張ガス噴射の基でエアバッグ30が架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で平面状に膨張展開すると、
図3に示すように架設弾性支持部材27及びシートパッド28を前方に押圧付勢して着座者Pfの上体Pbを背面側から弾性的に支持可能となり、かつ表皮31の背面部33を後方に膨出させてシートバック20の背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に展開する。このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び伸張して膨出する表皮31の背面部33によって被覆されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持されるとともに、十分な膨張展開量が得られ、且つエアバッグ30による車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保できる。
【0089】
図4は、車両用エアバッグシステムの制御回路を示し、制御回路はエアバッグ30の膨張展開を制御する制御部50を備え、制御部50は車両への後面衝突、即ち後突の衝撃を検知する衝突検知手段である衝突検知センサ51及びインフレータ29に電気的に接続され、衝突検知センサ51からの衝突発生情報とROM53に格納されたプログラムに従ってインフレータ29を作動制御する。
【0090】
衝突検知センサ51は、後突の際の衝撃力である加速度に応じた信号を発する加速度センサによって構成される。制御部50は、衝突検知センサ51によって検出される加速度と予め設定された閾値との比較に基づいて後突の発生有無を判定する。その後突発生判定に基づいて後突発生時に制御部50はインフレータ29を作動させて、エアバッグ30を膨張展開させる。
【0091】
以上のように構成された車両用エアバッグシステムの作用を説明する。
【0092】
この車両用エアバッグシステムを装備した車両において、後突等により所定以上の衝撃が加わると、衝突検知センサ51によって検出され、制御部50からインフレータ29に駆動信号が出力されてインフレータ29が点火され、インフレータ29から膨張ガスが噴出する。これにより、
図3に示すように、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が瞬時に膨張展開する。これにより後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮31の前面部32、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて規制される。
【0093】
一方、後席シート60の着座者Prは、衝撃による車体変形や、後突による慣性より上体が後方移動してシートバックを押圧した後のリバウンドで前方に直線状に移動して、例えば膝Pnが前席シート10のシートバック20の背面に当接して前席シート10の背面に衝撃力を付与する。このとき膝Pnはシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて前方移動が規制され、前席シート10の着座者Prの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力から回避されて前席シート10の着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnが膨張展開するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0094】
上記説明では、衝突検知センサ51が所定以上の衝撃を検知すると、制御部50が瞬時にインフレータ29を作動させてエアバッグ30を膨張展開するように制御したが、衝突検知センサ51が衝撃を検知してから所定時間遅らせてエアバッグ30を膨張展開させるように制御することもできる。即ち、制御部50は、衝突検知センサ51によって検知された加速度と、予め設定された閾値との比較に基づいて後突の発生の有無を判定し、後突発生から予め設定された所定時間経過後にインフレータ29を作動させて、エアバッグ30を膨張展開させる。
【0095】
これにより、後突発生時の所定時間経過後にエアバッグ30が膨張展開することから、後突発生の際、前席シート10の着座者Pfは、慣性によりシートバック20のシートパッド28及び架設弾性支持部材27が撓み変形して着座者Pfの上体Pbがシートバック20内に潜り込むように迅速に後方移動し、頭部Phが衝突後瞬時にヘッドレスト40によって拘束支持されて、頸部に作用する負荷が軽減される。しかる後、インフレータ29の膨張ガス噴射のもとでエアバッグ30が架設弾性支持部材27とシートバック20の背面を形成する表皮31との間で平面状に膨張展開し、架設弾性体27及びシートパッド28を前方に押圧付勢して着座者Pfの上体Pbを弾性的に支持し、かつ表皮31の背面部33を後方に膨出させてシートバック20の背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に展開する。これにより後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動は、シートバック20の表皮31、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介して展開膨張量及び車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保されたエアバッグ20によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0096】
これにより上記同様に前席シート10の着座者Pf及び後席シート60の着座者Prが膨張展開するエアバッグ30によって保護されるとともに、後突発生の際、前席シート10の着座者Pfの上体Pbがシートバック20内に潜り込むように迅速に後方移動し、頭部Phがヘッドレスト40に支持されて頸部に作用する負荷が軽減され、着座者Pfのむち打ち傷害の発生が抑制できる。
【0097】
本車両用シートエアバッグシステムは、上記制御回路に変えて衝突予知手段により作動制御することもできる。
【0098】
図5は、車両用シートエアバッグシステムの制御回路を示し、制御回路はエアバッグ30の膨張展開を制御する制御部55を備え、制御部55は車両への後突及び衝撃荷重を予知する衝突予知手段である衝突検知センサ56からの衝突発生情報と、ROM57に格納されたプログラムに従ってインフレータ29を作動制御する。
【0099】
ここで、制御部55は内蔵タイマを有し、後突予知時点からタイマースタートして計時を行う。また、衝突検知センサ56は、例えばミリ波センサ等の距離センサを含んで構成され、自車と後突の可能性のある他車との間の相対距離や相対速度を計測して後突を予知する。更に衝突検知センサ56は、予知された後突の際の衝撃荷重を予知する。
【0100】
これにより、予知された衝突発生時に、上述と同様に
図3に示すように、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が瞬時に膨張展開し、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は弾性的に受け止められて後方移動が規制される。一方、後席シート60の着座者Prの膝Pnが前席シート10のシートバック20の背面に当接しても、膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて前方移動が規制され、前席シート10の着座者Pfが保護される。
【0101】
また、衝突検知センサ56からの信号に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時から所定時間遅らせてエアバッグ30の膨張展開を開始するように制御することもできる。即ち、制御部55は、衝突検知センサ56からの信号に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時より所定時間経過後にエアバッグ30の膨張展開を開始する。
【0102】
これにより、予知された衝突発生時に後突が発生した際に、前席シート10の着座者Pfは、着座者Pfの慣性によりシートバック20のシートパッド28及び架設弾性支持部材27が撓み変形して着座者Pfの上体Pbがシートバック20内に潜り込むように迅速に後方移動し、頭部Phが衝突後瞬時にヘッドレスト40によって支持される。その後の予知された衝突発生時より所定時間経過後にエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動は、シートバック20の表皮31、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ20によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。これにより上記同様に前席シート10の着座者Pf及び後席シート60の着座者Prが膨張展開するエアバッグ30によって保護されると共に、後突発生の際、前席シート10の着座者Pfの上体Pbがシートバック20内に潜り込むように迅速に後方移動し、頭部Phがヘッドレスト40に支持されて頸部に作用する負荷が軽減され、着座者Pfのむち打ち傷害の発生が抑制できる。
【0103】
更に、衝突検知センサ56からの信号に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時より所定時間前にエアバッグ30の膨張展開を開始するように制御することもできる。即ち、制御部55は、衝突検知センサ56からの信号に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時より所定時間前にエアバッグ30の膨張展開を開始する。
【0104】
これによると、予知された衝突発生時より所定時間前、即ち衝突発生前に架設弾性支持部材27と表皮材31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開始し、膨張展開するエアバッグ30によってシートパッド28を及び表皮31の前面部32を介して着座者Pfの上体Pbを前方に押圧することで、着座者Pfの背筋を伸ばした状態となり、着座者Pfの着座位置及び着座姿勢が適正化される。
【0105】
この着座者Pfの着座姿勢及び着座位置が適正化された状態でエアバッグ30が更に膨張展開することで、着座者Pfに対して最適なエアバッグ30の膨張展開作用が得られ、後突発生時に前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動をエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0106】
従って、本実施の形態によると、シートバック20内に配置されたエアバッグ30が、シートバック20内で膨張展開することで、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止めて、且つ後方からの衝撃から車両シート着座者を保護することができ、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減が可能になる。
【0107】
そのうえ、着座性を確保するように配置される骨格部材であるシートバックフレーム21のサイドブラケット24の車体外方側の側面24aにインフレータ29が取り付けられているので、インフレータ29を設けたことに起因する着座者の違和感が完全に解消されるとともに、インフレータ29の支持剛性が確保されている。
【0108】
さらに、インフレータ29がシートバックフレーム21の枠外側に配置されることとなるので、シートバック20内で膨張展開するエアバッグ30とインフレータ29との干渉が完全に回避され、エアバッグ30の安定した展開が確保される。
【0109】
また、前席シート10にサイドエアバッグが設けられる場合には、当該インフレータ29をサイドエアバッグのインフレータとして共用することが可能となり、前席シート10に設けられるエアバッグ装置全体としての装置の効率化を図ることが可能となる。
【0110】
そして、前席シート10におけるシートバックフレーム21の内側にランバーサポート機構が設けられる場合には、その作用に影響を与えることがない。
【0111】
また、この態様によれば、インフレータ29が対向する各サイドブラケット24間に、又は各側方フレーム23間に位置することが無いので、それらの間に架設される架設弾性支持部材27の取付けが阻害されないという効果も得られる。
【0112】
以上のように、前席シート10に衝突が生じた際の作用を、車両の後突を例に説明したが、衝突は後突に限られない。例えば、前突の場合であっても、順序は前後するが、前席シート10は、同様にエアバッグ30の膨張展開により、まず、後席シート着座者Prの膝Pnの前方移動による衝撃を弾性的に受け止め、その後に前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動を弾性的に受け止めることが可能である。
【0113】
(第2実施の形態)
図6乃至17を参照して第2実施の形態を説明する。
図6は第2実施の形態の概要を示す後方から見た車両用シートの概略説明図であり、
図7は衝撃発生時における車両用シートの作動説明図、
図8は車両用シートの作動説明図である。なお、第1実施の形態と対応する部分には
図1乃至
図5と同一符号を付すことで該部の詳細な説明は省略する。
【0114】
第1実施の形態と同様に、前席シート10においては、シートバック20の骨格を形成するシートバックフレーム21の内方に、架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27の後方にエアバッグ30が収縮状態で配置され、これら全体が袋状の表皮31で被覆される。
【0115】
表皮31の背面部33は、
図6に示すようにエアバッグ30に対応する略矩形のエアバッグ対応領域74Aが、その周囲の背面部領域74Bの表皮素材に比較して伸縮性に優れた表皮素材によって形成されて、エアバッグ30に対応して伸縮性部分が形成される。
【0116】
一方、インフレータ29の膨張ガス噴射の基でエアバッグ30が架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で平面状に膨張展開すると、
図7に断面図を示し、かつ
図8に背面部33の要部斜視図を示すように、架設弾性支持部材27及びシートパッド28を前方に押圧付勢して着座者Pfの上体Pbを背面側から弾性的に支持可能となる。一方、表皮31の背面部33、特に伸縮性に優れた表皮素材によって形成されたエアバッグ30に対応する領域74Aが後方に矩形ドーム状に膨出して、エアバッグ30の膨張展開量を十分に確保してシートバック20の背面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能に展開する。
【0117】
このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び伸張して膨出する表皮31の背面部33によって被覆されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持される。また、伸縮する架設弾性部材27と表皮31の背面部33を膨出させて膨張展開することで、エアバッグ30の膨張展開量が得られ、且つエアバッグ30における車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保できる。
【0118】
このように構成された車両用シートを備えた車両において、後突等により所定以上の衝撃が加わると、衝突検知センサによって検出され、制御部からインフレータ29に駆動信号が出力されてインフレータ29が点火され、インフレータ29から膨張ガスが噴出する。これにより、
図7及び
図8に示すように、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮31の前面部32、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0119】
一方、後席シート60の着座者Prは、後突により後方移動してシートバックを押圧した後のリバウンド等で前方に直線状で移動して、例えば膝Pnが前席シート10のシートバック20の背面に当接することがある。このとき膝Pnはシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で膨張展開したエアバッグ30によって膨張出展開する表皮31を介在して弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1から保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保されたエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0120】
エアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図9(a)に示すように、エアバッグ30に対応する略矩形のエアバッグ対応領域81Aの表皮素材に対し、その周囲を取り囲む背面部領域81Bを伸縮性に優れた表皮素材によって形成し、エアバッグ対応領域81Aを囲む背面部領域81Bに伸縮性部分を形成することもできる。
【0121】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図9(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域81Aを囲む周囲の背面部領域81Bの伸張により膨出するよう膨張展開する。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0122】
一方、後席シート60の着座者Prは、膝Pnが架設弾性支持部材27と表皮31との間で膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート10の着座者Pfの上体Pbはその衝撃力F1から保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0123】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及び主にエアバッグ対応領域81Aを取り囲む背面部領域81Bの伸張により膨出する表皮31の背面部33によって制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0124】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図10(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁82b及び下縁82cに沿って略コ字状に切断されたエアバッグ対応領域82Aと、各側縁82bの上端から下方に移行するに従って漸次側縁82bから離反する両側縁82e及び下縁82cから所定距離離間して延在すると共に両端が両側縁82eの下端に連続する下縁82fを有してエアバッグ対応領域82Aを取り囲む背面部領域82Bを有する。このエアバッグ対応領域82Aは、その上縁82aにおいて背面部領域82Bに連続するリッド状に形成される。
【0125】
エアバッグ対応領域82Aの各側縁82bと背面部領域82Bの各側縁82eとの間に下方に移行するに従って幅広となる略テーパ状で伸縮性に優れた表皮素材が架け渡されて縫合された一対の側部伸縮領域82Cと、エアバッグ対応領域82Aの下縁82cと背面領域82Bの下縁82fに架け渡されて縫合される帯状の下部伸張領域82Dとが一体連続形成される。
【0126】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図10(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域82Aが押圧されると、伸縮性に優れた両側部伸縮領域82C及び下部伸縮領域82Dが伸張してリッド状のエアバッグ対応部82Aの上縁82aに対し、下縁82c側が大きく後方に迫り出して膨張展開量が確保され、且つ車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保できる断面略三角形状に展開する。
【0127】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及び主にエアバッグ対応領域82Aを取り囲む背面部領域82B及び伸張する両側部伸縮領域82C及び下部伸縮領域82Dにより膨出する表皮31の背面部33によって制御されて安定した膨張展開が保持される。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が拘束される。
【0128】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnがシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31との間で大きく膨張展開したエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1から回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝による衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0129】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図11(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁83b及び上縁83aに沿って略コ字状に切断されたエアバッグ対応領域83Aと、各側縁83bの下端から上方に移行するに従って漸次側縁83bから離反する両側縁83e及び上縁83aから所定距離離間して延在すると共に両端が両側縁83eの上端に連続する上縁83gを有してエアバッグ対応領域83Aを取り囲む背面部領域83Bを有する。エアバッグ対応領域83Aは、その下縁83cにおいて背面部領域83Bに連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0130】
エアバッグ対応領域83Aの各側縁83bと背面部領域83Bの各側縁83eとの間に上方に移行するに従って幅広となる略テーパ状で伸縮性に優れた表皮素材が架け渡されて縫合された一対の側部伸縮領域83Cと、エアバッグ対応領域83Aの上縁83aと背面部領域83Bの上縁83gに架け渡されて縫合される帯状の上部伸縮領域83Dとが一体連続形成される。
【0131】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図11(b)に示すように背面部33を形成するシートバック内方からエアバッグ対応領域83Aが押圧されると、伸縮性に優れた両側部伸縮領域83C及び上部伸縮領域83Dが伸張してリッド状のエアバッグ対応部83Aの下縁83cに対し上縁83a側が大きく後方に迫り出して増大する断面略三角形状に膨張展開する。
【0132】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及び主にエアバッグ対応領域83Aを取り囲む背面部領域83Bと伸張する両側部伸縮領域83C及び上部伸縮領域83Dにより膨出する表皮材31の背面部33によって制御されて安定した膨張展開に保持される。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0133】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnがシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31との間で膨張展開して傾斜するエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められ、且つ上体が大きく膨張展開するエアバッグ30の上部によって効率的に弾性的に受け止められる。前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1から回避されて保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0134】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図12(a)に示すように、背面部33にエアバッグ30に対応して上下に切断された両側縁84b及び中央部に沿って切断された下縁84Ac及び上縁84Baを有する上側エアバッグ対応領域84A及び下側エアバッグ対応領域84Bと、各側縁84bの下端及び上端から高さ方向中央に移行するに従って漸次側縁84bから離反する各側縁84eを有して上側エアバッグ対応領域84A及び下側エアバッグ対応領域84Bを取り囲む背面部領域84Cを有する。この上側エアバッグ対応領域84A及び下側エアバッグ対応領域84Bは、それぞれ上縁84Aa及び下縁84Bcにおいて背面部領域84Cに連続し互いの下縁84Acと上縁84Baが間隙を有して対向する略矩形のリッド状に形成される。
【0135】
上側エアバッグ対応領域84A及び下側エアバッグ対応領域84Bの各側縁84bと背面部領域84Cの各側縁84eとの間に伸縮性に優れた表皮素材が架け渡されて縫合された一対の側部伸縮領域84Dと、上側エアバッグ対応領域84Aの下縁84Acと下側エアバッグ対応領域84Bの上縁84Baとの間に帯状で伸縮性に優れた表皮素材が架け渡されて縫合された中央部伸縮領域84Eとが一体連続形成される。これにより、エアバッグ30の膨張展開にあたり、架設弾性支持部材27及び主に上側エアバッグ対応領域84A及び下側側部伸縮部84Bを取り囲む背面部領域84C及び伸張する両側部伸縮領域84D及び中央部伸縮領域84Fにより膨出する表皮31の背面部33によって制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0136】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図12(b)に示すように背面部33を形成するシートバック内方から上側エアバッグ対応領域84A及び下側エアバッグ対応領域84Bが押圧されると、伸縮性に優れた両側部伸縮領域84D及び中央部伸縮領域84Eが伸張してリッド状の上側エアバッグ対応部84Aは上縁84Aaに対し下縁84Acが後方に迫り出すと共に、下側エアバッグ対応部84Bの下縁84Bcに対して上縁84Baが後方に迫り出して上側エアバッグ対応部84A及び下側エアバッグ対応部84Bが傾斜する断面略台形に膨張展開する。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0137】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnが膨張展開して傾斜するエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められ、かつ上体が傾斜して膨張展開するエアバッグ30の上部によって効率的に弾性的に受け止められて前方移動が規制され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝による衝撃力F1から回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0138】
このエアバッグ30の膨張展開にあたり、架設弾性支持部材27及び主に上側エアバッグ対応領域84A及び下側側部伸縮部84Bを取り囲む背面部領域84C及び伸張する両側部伸縮領域84D及び中央部伸縮領域84Fにより膨出する表皮材31の背面部33によって制御されて安定した膨張展開が保持される。
【0139】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図13(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁85b及び下縁85cに沿って略コ字状に切断されたエアバッグ対応領域85Aと、エアバッグ対応領域85Aの各側縁85b及び下縁85cに沿った両側縁85e及び下縁85fを有してエアバッグ対応領域85Aを取り囲む背面部領域85Bを有する。このエアバッグ対応領域85Aは、その上縁85aにおいて背面部領域85Bを連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0140】
エアバッグ対応領域85Aの各側縁85bと背面部領域85Bの各側縁85eとの間に下方に移行するに従って幅広となるテーパ状で折り畳まれた襠部85Cが掛け渡されて縫合わされる。同様にエアバッグ対応領域85Aの下端85cと背面部領域85Bの下縁85fとの間に帯状で折り畳まれた襠部85Dが架け渡されて縫合わされる。更に、エアバッグ対応領域85Aの側縁85b及び下縁85cと背面部領域85Bの側縁85e及び下縁85fが互いに重ね合わせ、或いは当接した状態で図示しない比較的脆弱でエアバッグ30の膨張展開で破断可能な縫合糸で互いに縫い合わせられる。
【0141】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図13(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域85Aが押圧されると、その押圧でエアバッグ対応領域85Aの側縁85b及び下縁85cと背面部領域85Bの側縁85e及び下縁85fを縫い合わせた縫合糸が破断する。これにより、襠部85C及び襠部85Dが伸長乃至展開して、リッド状のエアバッグ対応部85Aの上縁85aに対し下縁85cが大きく後方に迫り出す膨張展開量が確保された断面略三角形状に膨張展開する。
【0142】
このエアバッグ30の膨張展開にあたり、架設弾性支持部材27及び主にエアバッグ対応領域85Aを取り囲む背面部領域85B及び展開する襠部85C及び襠部85Dによって被覆されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持される。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動が、エアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0143】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnが大きく膨張展開したエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0144】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図14(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁86b及び上縁86aに沿って略コ字状に切断されたエアバッグ対応領域86Aと、エアバッグ対応領域86Aの各側縁86b及び上縁86aに沿って両側縁86e及び上縁86dを有してエアバッグ対応領域86Aを取り囲む背面部領域86Bを有する。このエアバッグ対応領域86Aは、その下縁86cにおいて背面部領域86Bを連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0145】
エアバッグ対応領域86Aの各側縁86bと背面部領域86Bの各側縁86eとの間に上方に移行するに従って幅広となるテーパ状で折り畳まれた襠部86Cが掛け渡されて縫合わされる。同様にエアバッグ対応領域86Aの上端86aと背面部領域86Bの上縁86dとの間に帯状で折り畳まれた襠部86Dが架け渡されて縫合わされる。更に、エアバッグ対応領域86Aの側縁86b及び上縁86aと背面部領域86Bの側縁86e及び下縁86dが互いに重ね合わせ、或いは当接した状態で比較的脆弱でエアバッグ30の膨張展開で破断可能な縫合糸で互いに縫い合わせられる。
【0146】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図14(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域86Aが押圧されると、その押圧でエアバッグ対応領域86Aの側縁86b及び上縁86aと背面部領域86Bの側縁86e及び上縁86dを縫い合わせた縫合糸が破断する。これにより、襠部86C及び襠部86Dが伸長乃至展開し、リッド状のエアバッグ対応部86Aの下縁86cに対し上縁86a側が大きく後方に迫り出して膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保される断面略三角形状に膨張展開する。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて規制される。
【0147】
一方、後席シート60の着座者Prは、膨張展開したエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体の当接により衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0148】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面33は、
図15(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁87b及び下縁87cに沿って略コ字状にエアバッグ30の膨張展開で分断可能な破断部となる脆弱部87dによって区画されたエアバッグ対応領域87Aと、エアバッグ対応領域87Aを取り囲む背面部領域87Bを有する。このエアバッグ対応領域87Aは、その上縁87aにおいて背面部領域87Bを連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0149】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図15(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域87Aが押圧されると、その押圧によって下縁87c側から両側縁87bに沿って形成された脆弱部87dが漸次破断して下方から開口し、エアバッグ対応領域87Aの下縁87c側が大きく後方に迫り出した膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保される断面略三角形状に膨張展開する。
【0150】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及びエアバッグ30の膨張展開に伴い脆弱部87dで破断するエアバッグ対応領域87Aを取り囲む背面部領域87Bにより制御されて安定した膨張展開が保持される。これにより、後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0151】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnが膨張展開したエアバッグ30の下部によって有効的に弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1が回避される。同様に、後席シート60の着座者Prの膝の当接による衝撃力F1及び上体の当接による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0152】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図16(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁88b及び上縁88aに沿って略コ字状にエアバッグ30の膨張展開で破断可能な破断部となる脆弱部88dによって区画されたエアバッグ対応領域88Aと、エアバッグ対応領域88Aを取り囲む背面部領域88Bを有する。このエアバッグ対応領域88Aは、その下縁88cにおいて背面部領域88Bを連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0153】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図16(b)に示すように背面部33を形成するエアバッグ対応領域88Aが押圧されると、その押圧によって上縁88a側から両側縁88bに沿って形成された脆弱部88dが漸次破断されて上方から開口し、エアバッグ対応領域88Aの上縁88c側が大きく後方に迫り出した膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保される断面略三角形状に膨張展開する。
【0154】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及びエアバッグ30の膨張展開に伴い破断する脆弱部58dで分断するエアバッグ対応領域88Aを取り囲む背面部領域88Bにより制御されて安定した膨張展開が保持される。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0155】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnがエアバッグ30の下部によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束される一方、胸部等の上体が大きく膨脹展開したエアバッグ30の上部によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束される。
【0156】
このように、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝に当接による衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0157】
他のエアバッグ30の膨張展開に伴って膨出するシートバック20の表皮31の背面部33は、
図17(a)に示すように、背面部33のエアバッグ30に対応して両側縁89b及び両側縁89bの高さ方向中央部で幅方向に延在する略H字状にエアバッグ30の膨脹展開で破断可能な脆弱部89c、89dによって区画された上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ領域89Bと、上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ対応領域89Bを取り囲む背面部領域89Cを有する。この上側エアバッグ対応領域89Aの下縁89Acと下側エアバッグ対応領域89Bの上縁89Baは脆弱部89dを介して連続し、上側エアバッグ対応領域89Aはその上縁89Aa及び下側エアバッグ対応領域89Bはその下縁89Bcにおいて背面部領域89Cと連続する略矩形のリッド状に形成される。
【0158】
これによれば、後突等により、架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開し、
図17(b)に示すように背面部33を形成する上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ対応領域89Bが押圧されると、その押圧によって上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ対応領域89Bと間の脆弱部89dから両側縁89bに沿って形成された脆弱部89cが漸次分断されて上側エアバッグ対応領域89Aの下縁89Acと下側エアバッグ領域89Bの上縁89Baとの間から開口し、高さ方向中央部の上側エアバッグ対応領域89Aの下縁89Ac及び下側エアバッグ領域89Bの上縁89Ba側が大きく後方に迫り出す膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが得られる断面略台形乃至三角形状に膨張展開する。
【0159】
このエアバッグ30の膨張展開は、架設弾性支持部材27及びエアバッグ30の膨張展開に伴い脆弱部89d、89cで破断する上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ対応領域89Bと、上側エアバッグ対応領域89A及び下側エアバッグ対応領域89Bを取り囲む背面部領域89Cとにより制御されて安定した膨張展開が保持される。これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動がエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が拘束される。
【0160】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方上方に向かって押し出される膝Pnがシートバック20の架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間で膨脹展開いたエアバッグ30の下部によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束される一方、胸部等の上体が大きく膨脹展開したエアバッグ30の上部によって弾性的に受け止められて前方移動が拘束される。
【0161】
このように、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝による衝撃力F1が回避されて前席シート10着座者Pfが保護される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝による衝撃力F1及び上体による衝撃力F2が膨張展開して膨出するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0162】
また、上記各実施例において、表皮31の背面部に形成される膨出領域に沿って背面ボードを配置することで、膨出領域の膨出変形に影響することなく背面ボードを配置することができる。
【0163】
従って、上記説明した実施の形態によると、シートバック内に配置されたエアバッグが、シートバック内で表皮を後方に膨出せしめて膨脹展開する簡単な構成でエアバッグの膨脹展開量及び衝撃吸収ストロークを確保し、衝突による着座者の後方移動を弾性的に受け止め、且つ後方からの衝撃から着座者を保護することができ、構成の複雑化を伴うことなく、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減を可能となる。
【0164】
(第3実施の形態)
第3実施の形態を
図18乃至
図22を参照して説明する。
図18は車両用シートの概要を示す縦断面図、
図19は後方から見た車両用シートの一部破断概略斜視図、
図20(a)は背面ボード支持部の概要を示す
図18のa部拡大図、(b)は背面ボード保持部の概要を示す
図18のb部拡大図、
図21は衝撃発生時における車両用シートの作動説明図である。なお。第1実施の形態と対応する部分には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する
【0165】
図18及び
図19に示すように、前席シート10においては、シートバック20の骨格を形成するシートバックフレーム21の内方に、架設弾性支持部材27が複数張設され、架設弾性支持部材27の前面にシートパッド28が配設されるとともに、架設弾性支持部材27と背面ボード90との間にエアバッグ30が収縮状態で配置され、背面ボード90を除く全体が袋状の表皮31で被覆される。
【0166】
架設弾性支持部材27の前面に、着座者Pfの上体Pbを背面側から弾性的に支持するウレタンフォーム材等からなるシートパッド28が配設され、架設弾性支持部材27と背面ボード90との間に矩形平面状に折り畳まれた収縮状態のエアバッグ30が配置される。
【0167】
背面ボード90は、エアバッグ30の後方となるシートバック20の背面を覆う略矩形であって、上部及び下部がそれぞれ背面ボード支持部91及び背面ボード保持部92によってシートバックフレーム21に取り付けられる。なお、背面ボード90は硬質樹脂製であって、予め設定された湾曲変形を可能にする溝状或いは薄肉部等によって形成された複数の脆弱部90aが形成される。また、この脆弱部90aの形成により、背面ボード90に過剰の負荷が付与された際、背面ボード90が脆弱部90aに沿って折曲し、或いは脆弱部90aに沿って破断して不特定箇所の破断が防止されるとともに、破断した際には破断面に鋭利な突起状に発生する、いわゆるシャープエッジの発生が回避できる。
【0168】
背面ボード支持部91は、
図18及び
図20(a)に示すように、左右のサイドブラケット24の上端後面に結合されて後方に突出する支持ブラケット91Aと、背面ボード90の上部両端に結合されて前方に突出するブラケット91Bとを揺動可能に連結するヒンジ機構91Cによって構成される。これにより背面ボード90の上部は、ヒンジ機構91Cを支点として前方及び後方に揺動可能にシートバックフレーム21の上部に支持される。
【0169】
背面ボード保持部92は、
図18及び
図20(b)に示すように、各サイドブラケット24の下端後面に取り付けられたハット状で、後端面にクリップ係止穴92aが形成された係止ブラケット92Aと、背面ボード90の下部に突出形成されたクリップ保持部92Bの先端に取付支持されたクリップ92Cによって構成される。このサイドブラケット24に設けられた係止ブラケット92Aのクリップ係止穴92aに、クリップ保持部92Bに取付支持されたクリップ92Cを挿入して係止することで背面ボード90が
図18に示す通常使用位置に固定される。
【0170】
一方、背面ボード90の前面に前方から所定値以上の荷重が入力された際には、
図18及び
図20(b)に仮想線で示すように、背面ボード90の後方移動に伴ってクリップ保持部92Bに取付支持されたクリップ92Cが、係止ブラケット92Aのクリップ係止穴92aから抜け出して固定が解除され、背面ボード90の後方移動、すなわち後方への揺動が許容される。
【0171】
一方、インフレータ29の膨張ガス噴射の基でエアバッグ30が架設弾性支持部材27と背面ボード90との間で膨張展開すると、
図21に断面図を示すように、架設弾性体27及びシートパッド28を前方に押圧付勢して着座者Pfの上体Pbを背面側から弾性的に支持可能なり、かつ背面ボード90を後方に押圧してクリップ保持部92Bに取付支持されたクリップ92Cを係止ブラケット92Aのクリップ係止穴92aから抜け出して背面ボード90の固定を解除する。更に背面ボード90の後方移動、すなわち、後方へ揺動してエアバッグ30の膨張展開量及びエアバッグ30による車体前後方向の衝撃吸収ストロークを確保する。この膨張展開するエアバッグ30によって背面ボード90の後面に付与される衝撃力を弾性的に受け止め可能になる。
【0172】
このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び揺動する背面ボード90の広範囲によって挟持保持されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開が保持されると共に、膨脹展開するエアバッグ30は揺動する背面ボード90によって背面側から支持されて平面状に膨張展開することで着座者Pfの上体Pbの広範囲に均一な押圧力が付与される。
【0173】
以上のように構成された車両用シートを備えた車両において、衝突検知センサからの衝突発生情報に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時に制御部からインフレータ29に駆動信号が出力されてインフレータ29が点火され、インフレータ29から膨張ガスが噴出し、架設弾性支持部材27と背面ボード90との間でエアバッグ30が膨張展開する。
【0174】
図21に示すように、この膨張展開するエアバッグ30により架設弾性支持部材27及びシートパッド27を前方に押圧する一方背面ボード90を後方に押圧してクリップ保持部92Bに支持されたクリップ92Cが係止ブラケット92Aのクリップ係止穴92aから抜け出して背面ボード90が後方揺動する。
【0175】
これにより、後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮31、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介して膨張展開するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0176】
一方、後席シート60の着座者Prは、後突の衝撃による車体変形や、後方移動してシートバックを押圧した後のリバウンド等で前方に押し出されて移動し、エアバッグ30の膨張展開により後方に揺動する背面ボード90に例えば膝Pnが当接することがある。この膝Pnが前席シート10の背面ボード90に当接する衝撃力F1は、背面ボード90を介在してエアバッグ30の広範囲によって弾性的に受け止められて、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1から回避されて前席シート10の着座者Pfが保護される。同じように前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力は膨張展開量が確保されたエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0177】
特に、後席シート60の着座者Prの膝Pnが背面ボード90の背面に対して傾斜して当接する際には、当接する膝Pnが背面ボード90に後面に沿って滑動して移動することで、背面ボード90に当接する膝の衝撃力F1が減少することから、背面ボード90を車体前後方向に対して傾斜するように設定することもできる。
【0178】
なお、上記実施の形態では、膨張展開するエアバッグ30のよる背面ボード90の押圧移動によって、背面ボード保持部92による背面ボード90の固定を解除するように構成したが、エアバッグ30の膨張展開にあたり予め背面ボード90の固定を解除して背面ボード90を揺動可能にすることで、エアバッグ30の膨張展開による固定解除動作をなくして膨張展開するエアバッグ30の負荷を軽減することができる。
【0179】
具体的には、例えば、シートバックフレーム21と背面ボード90を固定する背面ボード保持部92に代えて、
図22に示すように固定解除機構となる背面ボード保持部93を備える。背面ボード保持部93は、シートバックフレーム21のサイドブレーム24の下部後面に設けられた係止穴93aを有する一対の係止ブラケット93Aと、電磁アクチュエータ93Baによって軸部93bが選択的に係止穴93aを貫通するロック位置と係止穴93aから退避するアンロック位置に移動する係止機構93Bを備える。一方、背面ボード90の下端部に背面ボード90が通常使用位置においてシートバックフレーム21に設けた一対の係止ブラケット93Aの間に挿入可能で、かつ貫通穴93cが形成された係止部93Cを設ける。
【0180】
この構成において背面ボード90に設けた係止部93Cがシートバックフレーム21に設けた両係止ブラケット93Aの間に挿入した状態で係止機構93Bの軸部93bをロック位置にして係止部93Cの貫通穴93cに挿入して係止することで、背面ボード90が通常使用位置に固定される。一方、係止機構93Bの軸部93bをアンロック位置に移動することで、貫通穴93c内から退避して固定解除される。
【0181】
衝突予知手段からの衝突発生情報に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時に制御部からの駆動信号により、電磁アクチュエータ93Baの作動により軸部93bをアンロック位置に移動させて背面ボード90の揺動を可能にし、かつエアバッグ30を膨張展開することで、エアバッグ30の膨張展開による負荷が軽減されて、エアバッグ30の膨張展開がより円滑にかつ迅速に実行できる。
【0182】
なお、背面ボード90をシートバックフレーム21に支持する背面ボード支持部91、背面ボード保持部92及び固定解除機構となる背面ボード保持部93等は、上記構成に限定されることなく、上記機能を有する他の適宜構成によって形成することができる。
【0183】
(第4実施の形態)
第4実施の形態を
図23乃至
図25を参照して説明する。
図23は車両用シートの概要を示す縦断面図、
図24(a)は背面ボード支持部の概要を示す
図23のc部拡大斜視図、(b)は背面ボード保持部の概要を示す
図23のd部拡大図であり、
図25は衝撃発生時におる車両用シートの作動説明図である。なお、本実施の形態の車両用シートは、上記第3実施の形態と背面ボード90の取付構成が異なり、他の主要構成は第3実施の形態と同様であり、
図23乃至
図25において
図18乃至
図22と対応する部分に同一符号を付することで、該部の詳細な説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0184】
図23に示すように、エアバッグ30の後方においてシートバック20の背面に配置される背面ボード90は、その上部が背面ボード支持部95によってシートバックフレーム21の上部に支持され、下部が背面ボード保持部96によってシートバックフレーム21の下部に取り付けられる。
【0185】
背面ボード支持部95は、
図23のc部拡大斜視図を
図24(a)に示すように、左右のサイドブラケット24の上部後面に結合されたハット状で、先端下部に凹溝状の係止溝95aが形成された支持ブラケット95Aと、背面ボード90の上部両端に結合されて前方に突出すると共に先端上部に支持ブラケット85Aの係止溝95aに下方から係止可能な凹溝状の係合部95bが形成された係合ブラケット95Bによって構成される。
【0186】
支持ブラケット95Aの係止溝95aに係合ブラケット95Bの係合部95bを係合することで背面ボード90の上部が通常使用位置に保持され、背面ボード90の下方移動によって支持ブラケット95Aの係止溝95aからと係合ブラケット95Bの係合部95bが抜け出して係合が解除される。
【0187】
背面ボード保持部96は、
図23のd部拡大斜視図を
図24(b)に示すように、各サイドブラケット24の下端後面に取り付けられたハット状で後面にクリップ係止穴96aが形成された係止ブラケット96Aと、背面ボード90の下部両端に突出形成されたクリップ保持部96Bの先端に取付支持されたクリップ96Cによって構成される。
【0188】
このサイドブラケット24に設けられた係止ブラケット96Aのクリップ係止穴96aに、クリップ保持部96Bに取付支持されたクリップ96Cを挿入して係止することで背面ボード90の下部が通常使用位置に固定される。一方、背面ボード90の前面に前方から所定値以上の荷重が入力された際には、背面ボード90の後方移動に伴ってクリップ保持部96Bに支持されたクリップ96Cが、係止ブラケット96Aのクリップ係止穴96aから抜け出して背面ボード90の固定が解除される。
【0189】
サイドブラケット24の上部に設けられ支持ブラケット95Aの係止溝95aに、下方から背面ボード90の上部に設けられた係合ブラケット95Bの係合部95bを係合した状態で、サイドブラケット24に設けられた係止ブラケット96Aのクリップ係止穴96aに、背面ボード90に設けられたクリップ保持部96Bに取付支持されたクリップ96Cを挿入して係止することで背面ボード90がシートバック20の背面の通常使用位置に固定される。
【0190】
背面ボード90の前面に前方から所定値以上の荷重が入力された際には、背面ボード90の後方移動に伴ってクリップ保持部96Bに支持されたクリップ96Cが係止ブラケット96Aのクリップ係止穴96aから抜け出し、かつ背面ボード90の移動に追従して支持ブラケット95Aの係止溝95aからと係合ブラケット95Bの係合部95bが抜け出して係合が解除され、背面ボード90がシートバック20の背面から脱離可能にする。
【0191】
一方、インフレータ29の膨張ガス噴射の基でエアバッグ30が架設弾性支持部材27と背面ボード90との間で膨張展開すると、
図25に断面図を示すように、架設弾性体27及びシートパッド28を前方に押圧付勢して着座者Pfの上体Pbを背面側から弾性的に支持可能となり、かつ背面ボード90の移動に追従して支持ブラケット95Aの係止溝95aから係合ブラケット95Bの係合部95bが抜け出して係合が解除され、背面ボード90がシートバック20の背面から脱離可能にする。これにより、エアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27及び背面ボード90の広範囲によって挟持保持されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持されて膨張展開量及び車体前後方向の衝撃吸収ストロークが確保されると共に、エアバッグ30は脱落した背面ボード90によって背面側から支持されて平面状に膨張展開することで着座者Pfの上体Pbの広範囲に均一な押圧力が付与される。
【0192】
以上のように構成された車両用シートを備えた車両において、衝突予知手段からの衝突発生情報に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時に制御部からインフレータ29に駆動信号が出力されてインフレータ29から膨張ガスが噴出し、架設弾性支持部材27と背面ボード90との間でエアバッグ30が膨張展開する。
【0193】
この膨張展開するエアバッグ30により架設弾性支持部材27及びシートパッド28を前方に押圧する一方、クリップ保持部96Bに支持されたクリップ96Cが係止ブラケット96Aのクリップ係止穴96aから抜け出し、かつ背面ボード90の移動に追従して支持ブラケット95Aの係止溝95aから係合ブラケット95Bの係合部95bが抜け出して係合が解除されて、背面ボード90が後方移動する。
【0194】
これにより、後突による前席シート10着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮31、シートパッド28、架設弾性支持部材27を介して膨張展開するエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0195】
一方、後席シート60の着座者Prは、エアバッグ30の膨張展開により後方に押動された背面ボード90に例えば膝Pnが前席シート10の背面ボード90に当接することがある。この膝Pnが前席シート10の背面ボード90に当接する衝撃力F1は、背面ボード90を介在してエアバッグ30の広範囲によって弾性的に受け止められて、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1から回避されて前席シート10の着座者Pfが保護される。同様に前進移動する後席シート60の着座者Prの膝Pnによる衝撃力F1及び上体による衝撃力は膨張展開量及び衝撃吸収ストロークが確保されたエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0196】
また、上記実施の形態では、エアバッグ30の膨張展開による押圧によって背面ボード90の背面ボード保持部96による固定を解除するように構成したが、例えば、背面ボード保持部96に代えて、上記
図22に示す背面ボード保持部93と同様の背面ボード保持部を備え、予知された衝突発生時のエアバッグ30の膨張展開にあたり、予め背面ボード90の固定を解除することより背面ボード90の移動可能にすることで、エアバッグ30による背面ボード90の移動による背面ボード90の固定解除が不要になり、エアバッグ30の膨張展開する際の負荷を軽減することができる。
【0197】
(第5実施の形態)
第5実施の形態を
図26及び
図27を参照して説明する。なお、
図26及び
図27は上記
図18及び
図22に対応し、上記第3実施の形態と背面ボード90の取付構成が異なり、他の主要構成は第3実施の形態と同様であり、
図26及び27に
図18及び
図22と対応する部分に同一符号を付することで、該部の詳細な説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0198】
図26に示すようにシートバック20の表皮31は、その伸縮性を背面部33によってエアバッグ30を覆い、背面部33の背面に背面ボード90が配設される。背面ボード90はエアバッグ30を覆う矩形板状であって、予め設定された湾曲変形を容易にする溝状或いは薄肉部による脆弱部90aが形成される。
【0199】
インフレータ29の膨張ガス噴射によりエアバッグ30が架設弾性支持部材27と表皮13の背面部33と間で平面状に膨張展開すると、
図27に示すように、架設弾性支持部材27及びシートパッド28を前方に押圧付勢し、かつ表皮31の背面部33及び背面ボード90を膨出させ、エアバッグ30の膨張展開量及びエアバッグ30の衝撃吸収ストロークを十分に確保する。このエアバッグ30の膨張展開は、エアバッグ30を保持する架設弾性支持部材27と伸張して膨出する表皮31の背面部33及び背面ボード90によって挟持保持されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持すると共に、エアバッグ30は背面ボード90によって背面側から支持されて平面状に膨張展開することで着座者Pfの上体Pbの広範囲に均一な押圧力が付与される。
【0200】
このように構成された車両用シートを備えた車両において、衝突予知手段からの信号に基づいて車両の後面衝突の不可避を予知した際に、その予知された衝突発生時に制御部からインフレータに駆動信号が出力されインフレータから膨張ガスが噴出し、
図27に示すように架設弾性支持部材27と表皮31の背面部33との間でエアバッグ30が膨張展開する。これにより後突による前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、表皮31、シートパッド28及び架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30によって弾性的に受け止められて後方移動が規制される。
【0201】
一方、後席シート60の着座者Prは、前方に移動して、例えば膝Pnは前席シート20の背面ボード90に当接することがある。このとき膝Pnは架設弾性体27と表皮31の背面部33及び背面ボード90との間で膨張展開したエアバッグ30によって表皮31及び背面ボード90を介在して弾性的に受け止められて前方移動が拘束され、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは後席シート60の着座者Prの膝部Pnによる衝撃力F1が回避される。同様に、前進移動する後席シート60の着座者Prの膝部Pn及び上体が膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められて保護される。
【0202】
また、背面ボード90が衝撃等で破損した際にも、エアバッグ30が表皮31によって保持されてエアバッグ30の膨張展開の展開挙動及び展開形状が制御されて安定した膨張展開形状が保持される。
【0203】
従って、以上説明した第3乃至第5の各実施の形態によると、シートバック内のシートパッドと背面ボードとの間に配置されたエアバッグが背面ボードを後方に押動せしめて膨張展開する簡単な構成で、背面ボードに支持されて膨張展開するエアバッグによって衝突による着座者の後方移動が広範囲に亘って均一な押圧によって弾性的に受け止められ、かつ後方からの衝撃から着座者を保護することができ、衝突時におけるエアバッグでの着座者の直接の保護及びシートバック後方からの衝撃の的確な軽減が可能となる。
【0204】
なお、上記各説明では、単一のインフレータによってエアバッグ30を膨張展開させる場合を例に説明したが、着座者保護に適した状態に多段階でエアバッグ30を膨張展開させることもできる。例えば、着座者保護に適した状態に、複数のインフレータを用いてエアバッグ30を多段階的に膨張展開させることでエアバッグ30の膨張展開圧力及び展開時間等の展開状態を制御することもできる。
【0205】
(第6実施の形態)
図28及び
図29を参照して第6実施の形態を説明する。
図28は、本実施の形態の概要を示す一部破断概略後面図であり、
図29は、
図28のXXIX−XXIX線断面図である。なお、第1実施の形態と対応する部分には
図1乃至
図5と同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0206】
図28及び
図29に示すように、インフレータ29は、車体外方側の側方フレーム23或いはサイドブラケット24に、シートバックフレーム21の内方に位置するように取り付けられている。そして、
図29に示すように、インフレータ29は、架設弾性支持部材27を介してエアバッグ30よりも車体前方方向に位置するように配置されている。
【0207】
この構成によれば、衝突によりエアバッグ30がシートバック20内部で膨張展開した場合において、その反力が架設弾性支持部材27によって受け止められるので、エアバッグ30とインフレータ29との干渉回避効果が得られる。
【0208】
(第7実施の形態)
第7実施の形態を、
図30乃至
図32を参照して説明する。
図30は前席シート10の概略断面図、
図31は前席シート10を後方から見た一部破断概略斜視図、
図32は前席シート10の衝撃発生時における作動説明図である。なお、第1実施の形態と対応する部分には
図1乃至
図5と同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。インフレータ29は、本実施の形態においては、サイドブラケット24ではなく、
図30及び
図31に示すように、上方クロスメンバ25と並列に並ぶように周面を上方クロスメンバ25の延在方向略中央位置に接触させてこれに固定される。したがって、インフレータ29は、シートバックフレーム21の枠内に、且つシートバックフレーム21の上方部分に取り付けられている。
【0209】
この前席シート10を有する車両に後方から他の車両が衝突すると、衝突検知手段の作用により、或いは衝突予知手段によって予知された衝突情報により、インフレータ29が点火され、これによりインフレータ29から噴出した膨張ガスによって、
図32に示すように、架設弾性支持部材27とシートバック20背面間の領域でエアバッグ30が瞬時に膨張展開する。
【0210】
この際、エアバッグ30の前方は架設弾性支持部材27、シートパッド28及び表皮材31等の可撓材に被覆されているので、エアバッグ30の膨張展開により、これらの可橈材は
図32に示すように車体前方方向にやや変形する挙動を示し、エアバッグ30の後方を被覆する可撓性材料の表皮材31は、車体後方に大きく突き出して変形する挙動を示す。
【0211】
この前席シート10によれば、このエアバッグ30前後の可橈材乃至可橈性材料の変形挙動により、エアバッグ30の車体前後方向の展開量Eが確保され、シートバック20による車体前後方向の衝撃吸収ストロークが大きく確保できる。
【0212】
すなわち、同図に示すように、後突の衝撃によって前席シート着座者Pfの上体Pbの後方移動は、シートバック20前面の表皮材31、シートパッド25、架設弾性支持部材27及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート着座者Pfの上体Pbは、シートバック20に押し当てられる衝撃から保護される。
【0213】
一方で、後席シート着座者Prは後突の衝撃で後席シート60に押付けられ、その後のリバウンドで前方へと移動する。このリバウンドにより前方へ移動する後席シート着座者Prの膝Pnは、シートバック背面の表皮材31及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは、後席シート着座者Prの膝Pnが突き当たる衝撃から保護される。
【0214】
このとき、エアバッグ30は、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの直後に位置するシートバック20内でそのシートバック20の内部形状にある程度拘束されて展開挙動及び展開形状が制御されて安定的に膨張展開するので、着座者Pfの上体Pbの後方移動を的確に受け止め、且つ後席シート着座者Prの膝Pnの前方移動による衝撃を的確に吸収することができ、着座者Pfの適正な保護を図ることができる。
【0215】
また、係る着座者Pfの保護は、シートバック20内部で膨張展開するエアバッグ30と、その前後方向の可撓性材料(すなわち、表皮材31、シートパッド28、架設弾性支持部材27等)の配置により実現されているので、構成が大幅に簡素化されている。
【0216】
そのうえ、上方クロスメンバ25に固定されることでインフレータ29の支持剛性が確保されており、上方クロスメンバ25はシートバックフレーム21の上方部分であるので、エアバッグ30を膨張展開させる場となるシートバック内部空間はインフレータ29によって阻害されることがなく、衝突時の衝撃吸収のためのエアバッグ展開スペースが確保されている。
【0217】
さらに、インフレータ29が略矩形枠状に形成されたシートバックフレーム21の内部に配置されているので、インフレータ29はシートバックフレーム21によって外力から保護され、且つシートバックフレーム21外部へのインフレータ29の突出も解消される。そのうえ、インフレータ29を、シートバックフレーム21の枠内に設けられたエアバッグ30と一体化させることも可能となる。
【0218】
(第8実施の形態)
次に、第8実施の形態を、
図33及び
図34を参照して説明する。第7実施の形態においては、1個のインフレータを用い、1個のエアバッグを膨張展開させる場合について説明したが、本第8実施の形態では、2個のインフレータを用い1個のエアバッグを膨張展開させる場合について説明する。
【0219】
図33は、前席シート10を後方から見た一部破断概略斜視図であり、
図34は、前席シート0の一部を破断した部分斜視図である。
図33に示すように、本実施の形態に係る前席シート10においては、インフレータの構成以外のシートバック20の全体構成については第7実施の形態と変更が無いので、その詳細の説明を省略する。
【0220】
インフレータ29は、
図33及び
図34に示すように、筒状の上方クロスメンバ25及び筒状の下方クロスメンバ26の内部に、それぞれ1個ずつ取り付け固定されている。
【0221】
インフレータ29の下方クロスメンバ26への取付けは、
図34に示すように、円筒形状のインフレータ29が、その外周面を下方クロスメンバ26の内周面に周接させて図示しない固定金具により強固に固定されることで行われている。
【0222】
インフレータ29の外周面と対応する下方クロスメンバ26の部位には、
図34に示すように、複数の小孔26aが設けられており、インフレータ29から噴出した膨張ガスがこの小孔26aを通過してエアバッグ30に導入されるように、図示しないガス導入部が設けられている。
【0223】
インフレータ29の上方クロスメンバ25への取付けも、下方クロスメンバ26への取付けと同様に行われており、その説明は省略するが、上方クロスメンバ25に開口する小孔25aから膨張ガスが噴出される。
【0224】
本実施の形態に前席シート10によれば、車両に後方から他の車両が衝突すると、各インフレータ29の作用により膨張展開したエアバッグ30、シートバック20背面の表皮材31、シートパッド28及び架設弾性支持部材27によって前席シート着座者Pfの上体Pbの後方移動が弾性的に受け止められ、着座者Pfの上体Pbが保護される。
【0225】
一方で、車両の後突に起因して前方へと移動する後席シート着座者Prの膝Pnは、シートバック20背面の表皮材31及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート着座者Pfの上体Pbは後席着座者Prの膝Pnが突き当たる衝撃から保護される。したがって、第7実施の形態同様、着座者Pfの適正な保護が得られ、且つその構成が大きく簡素化されている。
【0226】
また、各インフレータ29が、上方フロスメンバ25及び下方クロスメンバ26の内部に固定されているので、上方クロスメンバ25及び下方クロスメンバ26の曲げ強度及びねじり強度の一部をインフレータ29が負担し、各クロスメンバ25、26の曲げ剛性及びねじり剛性が強化されている。したがって、結果としてシートバックフレーム21が補剛され、シートバック20のねじれや歪みが抑制されている。
【0227】
更に、シートバックフレーム21からインフレータ29が突出しないので、インフレータ29がシートバックフレーム21の枠内に取り付けられている場合であっても着座時の違和感が生じることがなく、インフレータ29によってエアバッグ30の膨張展開が阻害されることがない。
【0228】
更に、この構成によれば、上下に配置した各インフレータ29を時間差で作用させることも可能である。このように、時間差で作用させることにより、エアバッグ30の膨張展開状態を、同時にインフレータ29を作用させる場合及び1個の一段式のインフレータを作用させる場合と比べて持続させることができるので、長時間に亘ってエアバッグの衝撃吸収作用を発揮させることが可能となる。
【0229】
なお、本実施の形態においては、1個のエアバッグ30を用いる構成としたが、2個のエアバッグを用いる構成としても良い。
図35は、本実施の形態の変形例を説明するための一部破断概略後面図であり、
図36は、同変形例に係る前席シート10の衝撃発生時における作動説明図である。
【0230】
図35に示すように、本変形例においては、エアバッグ30は、シートバック20内の架設弾性支持部材27とシートバック20背面の表皮材31との隙間において上方側に配置された上部エアバッグ30aと、その下方側に配置された下部エアバッグ30bとからなり、それぞれ、例えば、表皮材31等に図示しない係止手段によって膨張展開可能に保持されている。
【0231】
上部エアバッグ30aは、上端が上方クロスメンバ25の高さに、及び下端が上方クロスメンバ25と下方クロスメンバ26の略中間地点の高さに位置し、且つ左右の各側方フレーム23及びサイドブラケット24に近接する位置まで到達する幅を有する平面視略矩形の袋体であって、シートバック20の前後方向に圧縮されて折り畳まれている。
【0232】
下部エアバッグ30aは、下端が下方クロスメンバ26の高さに、及び上端が上方クロスメンバ25と下方クロスメンバ26の略中間地点の高さに位置するとともに、上部エアバッグ30aと同様の幅を有し、同じくシートバック20の前後方向に圧縮されて折り畳まれている。
【0233】
なお、両エアバッグ30a、30bは、互いに膨張展開した際に両エアバッグ間に隙間が生じないように、一部が若干重なり合うようにして配置されている。
【0234】
この構成によれば、上下のインフレータ29を共に作用させた場合、
図36に示すように、後席着座者Prの膝Pnの位置が多少上下していても上下に位置するそれぞれのエアバッグ30a、30bにより的確に受け止めることができるので、1個のエアバッグを用いる場合と比較して後方からの衝撃をより確実に受け止めることができる。
【0235】
また、インフレータ29の点火の有無の制御により、エアバッグ30全体としての膨張展開形状をコントロールすることができる。
【0236】
(第9実施の形態)
図37乃至
図39を参照して第9実施の形態を説明する。
図37は、前席シート10の概略説明断面図であり、
図38は、前席シート10を後方から見た一部破断概略斜視図であり、
図39は衝撃発生時における作動説明図である。
【0237】
本実施の形態に係るインフレータ29の配置及び構成について説明する。
図37に示すように、シートバックフレーム21における上方フレーム22と側方フレーム23の間の曲り部は、パイプフレームが湾曲乃至折曲されてなるコーナ部乃至湾曲部21aとなっており、各サイドブラケット24と下方クロスメンバ26の連結部は、各サイドブラケット24間に下方クロスメンバ26が架設されてなるコーナ部21bとなっている。また、各側方フレーム23と上方クロスメンバ25の連結部は、各側方フレーム23間に上方クロスメンバ25が架設されてなるコーナ部21cとなっている。
【0238】
インフレータ29は、
図38に示すように、2個のインフレータが、それぞれシートバックフレーム21の上部及び下部に取り付けられている。シートバックフレーム21の上部に取付けられたインフレータ29は、上方クロスメンバ25に対して一方のコーナ部21cの近傍に一端101aが固定され、他端101bがこのコーナ部21cを介在させてその近傍において側方フレーム23に固定されたブラケット101の直線状部101cに固定されている。
【0239】
シートバックフレーム21の下部に取付けられたインフレータ20も、同様に、下方クロスメンバ26に対して一方のコーナ部21bの近傍に一端102aが固定され、他端102bがこのコーナ部21bを介在させてその近傍においてサイドブラケット24に固定されたブラケット102の直線状部102cに固定されている。
【0240】
したがって、両インフレータ29は、上方クロスメンバ25、各側方フレーム23、各サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26により構成される矩形の対角となるコーナ部21c及び21bにそれぞれ設けられている。
【0241】
以上の構成を有する本実施の形態に係る前席シート10によれば、当該前席シート10を有する車両において、衝突検知手段の作用により、或いは衝突予知手段によって予知された衝突情報により、各インフレータ29が点火され、これによりインフレータ29から噴出した膨張ガスによって、
図39に示すように、架設弾性支持部材27とシートバック20背面間の領域でエアバッグ30が瞬時に膨張展開する。
【0242】
この際、エアバッグ30の前方は架設弾性支持部材27、シートパッド28及び表皮材31等の可撓材に被覆されているので、エアバッグ30の膨張展開により、これらの可橈材は39の車体前方方向にやや変形する挙動を示し、エアバッグ30の後方を被覆する可撓性材料の表皮材31は、車体後方に大きく突き出して変形する挙動を示す。
【0243】
このとき、このエアバッグ30前後の可橈材乃至可橈性材料の上記変形挙動により、エアバッグ30の車体前後方向の展開量Eが確保され、シートバック16による車体前後方向の衝撃吸収ストロークが大きく確保できる。
【0244】
すなわち、同図に示すように、後突の衝撃によって前席シート10の着座者Pfの上体Pbの後方移動は、シートバック20前面の表皮材31、シートパッド28、架設弾性支持部材27及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート10の着座者Pfの上体は、後突によりその着座するシートのシートバック20に押し当てられる衝撃から保護される。
【0245】
一方で、後席シート60の着座者Prは後突の衝撃で後席シートに押付けられ、その後のリバウンドで前方へと移動する。このリバウンドにより前方へ移動する後席シート着座者Prの膝Pnは、シートバック20背面の表皮材31及び膨張展開したエアバッグ30によって弾性的に受け止められ、前席シート10の着座者Pfの上体Pbは、後席シート着座者Prの膝Pnが突き当たる衝撃から保護される。
【0246】
このとき、エアバッグ30は、前席シート10の着座者Pfの上体Pbの直後に位置するシートバック20内でそのシートバック20の内部形状により制御されて安定的に膨張展開するので、上体pbの後方移動を的確に受け止め、且つ後席シート着座者Prの膝Pnの前方移動による衝撃を的確に吸収することができ、着座者Pfの適正な保護を図ることができる。
【0247】
また、係る着座者Pfの保護は、シートバック16内部で膨張展開するエアバッグ26と、その前後方向の可撓性材料(すなわち、表皮材31、シートパッド28、架設弾性支持部材27等)の配置により実現されているので、構成が大幅に簡素化されている。
【0248】
そのうえ、インフレータ29が略枠状のシートバックフレーム21のコーナ部21c及び21bに取り付けられているので、インフレータ29がエアバッグ30の膨張展開を阻害することがなく、且つこのインフレータ30によって車両の衝突時に応力が集中しやすいコーナ部21c及び21bにおけるねじり剛性が強化されている。
【0249】
さらに、各インフレータ29は、それぞれ、コーナ部21c及び21bを介在させてシートバックフレーム21の両側部位間(すなわち、それぞれ、上方クロスメンバ25の部位とサイドブラケット24の部位の間、及び下方クロスメンバ26の部位と側方フレーム23の部位の間)に、ブラケット101及び102によってそれぞれ架け渡されているので、インフレータ29からのガスの噴出に対する反力をシートバックフレーム21の両側部位からシートバックフレーム21全体へと効果的に分散させることができる。
【0250】
また、各インフレータ29は、それぞれ、上方クロスメンバ25、各側方フレーム23、各サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26により構成される矩形の隅角に位置するので、シートバック20がサイドエアバッグやアクティブヘッドレスト機構を備える場合であっても、これらと干渉しない位置にインフレータ29を配置することができる。
【0251】
さらに、この構成によれば、シートバックフレーム21の上部及び下部に配置した各インフレータ29を時間差で作用させることも可能である。このように、時間差で作用させることにより、同時にインフレータ29を作用させる場合及び1個の一段式のインフレータを作用させる場合と比べてより緩やかな速度でエアバッグ30を膨張展開させることが可能となり、エアバッグ展開による乗員への負荷を低減させることが可能となる。
【0252】
そのうえ、エアバッグの膨張展開状態を、同時にインフレータを作用させる場合及び1個の一段式のインフレータを作用させる場合と比べて持続させることができるので、長時間に亘ってエアバッグの衝撃吸収作用を発揮させることが可能となる。
【0253】
(第10実施の形態)
次に、第10実施の形態を、
図40及び41を参照して説明する。第9実施の形態においては、2個のインフレータを用い、1個のエアバッグを膨張展開させる場合について説明したが、第10実施の形態では、4個のインフレータを用い4個のエアバッグを膨張展開させる。
【0254】
図40は、前席シート10を後方から見た一部破断概略斜視図であり、
図41は、前席シート10のオフセット衝突発生時における作動状態を、
図40におけるXXXXI−XXXXI線断面と対応する断面で表わした概略断面図である。
【0255】
図40に示すように、前席シート10においては、インフレータ及びエアバッグの構成以外のシートバック20の全体構成については第9実施の形態と変更が無いので、その詳細の説明を省略する。
【0256】
インフレータ29は、
図40に示すように、上方クロスメンバ25、各側方フレーム23、各サイドブラケット24及び下方クロスメンバ25により囲まれた矩形の全ての隅角部(すなわち、4隅のコーナ部21c及び21b)に、それぞれブラケット103、104、105及び106を介して取り付けられている。これらのブラケットの構成は、第9実施の形態に係るブラケット101及び102と同様の構成を有する。
【0257】
エアバッグ30は、この略矩形枠状のシートバックフレーム21内に、上方クロスメンバ25、各側方フレーム23、各サイドブラケット24及び下方クロスメンバ26により構成される矩形を、後面視で各フレーム又はクロスメンバの中点で4等分した矩形形状でそれぞれ4個配置されており(以降、それぞれエアバッグ30c、30d、30e及び30fと記す)、それぞれ、例えば、表皮材31等に図示しない係止手段によって膨張展開可能に保持されている。
【0258】
各エアバッグ30c、30d、30e及び30fは、シートバックフレーム21の上記矩形の四隅に位置するインフレータ29にそれぞれ図示しないガス導入部を介して連結されており、全てのエアバッグ30が膨張展開した際に各エアバッグ30間に隙間が生じないように、一部が若干重なりあうようにして配置されている。
【0259】
この前席シート10によれば、例えば、前述の衝突検検知手段(図示省略)又は衝突予知手段に衝突情報を検知させ、この情報に応じて図示しない制御部に点火すべきインフレータ29を制御させることで、衝突時に4個のエアバッグのうちの適切なものを選択的に膨張展開させ、エアーバッグ30のうち負荷される荷重の大きい部分についてその荷重を的確に吸収することが可能となる。これは、例えば、オフセット衝突が生じた場合等に効果的である。
【0260】
具体的な例として、車両が左後方から後突を受けた場合について説明する。まず、左後方から後突を受けた場合、車両は右前方へとヨーイングする挙動を示し、前席シート10の着座者Pfは左後方へと上体Pbがシートバック20へ押し付けられる挙動を示し、後席シートの着座者Prは同様に左後方へと上体が押付けられた後にリバウンドで膝部が左前方へと投げ出される挙動を示す。
【0261】
このとき、衝突検知手段(図示省略)又は衝突予知手段が左後方からの後突を認識し、認識された衝突情報により図示しない制御部が点火するインフレータ29をシートバック20における車幅方向内方側に位置する2個のインフレータ29に限定し、
図41に示すように、2個のエアバッグ30c及び30dを膨張展開させることで、着座者Pfの上体Pbの左後方への(すなわち、矢印A方向への)移動及び着座者Prの膝Pnの左前方への(すなわち、矢印B方向への)移動を的確に受け止めることができる。
【0262】
したがって、本実施の形態に係る前席シート10によれば、複数のエアバッグ30を衝突に連動させて個別に制御することが可能となるので、上記の通り衝突の態様に応じて必要なエアバッグ30のみを選択的に膨張展開させ、的確に衝撃を吸収することが可能となる。
【0263】
さらに、シートバックフレーム21の矩形の四隅に、インフレータ29が架け渡された構造を介したトラス構造を構成することができるので、エアバッグ30の膨張展開を阻害しない構成をとりつつシートバックフレーム21の剛性が強化されている。
【0264】
そして、シートバックフレーム21の略矩形形状内に配置された4個のエアバッグ30がそれぞれ個別のインフレータ29により膨張展開するので、4個のエアバッグ30c〜30fを合わせた容積に対応する容積を1個のインフレータ29で膨張展開させる場合と比較して、大きなエアバッグ反力を確保することができる。
【0265】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1実施の形態においてはインフレータ30を車体幅方向外方側のサイドブラケット24に取付ける構成としているが、車体幅方向外方側のサイドブラケット24及び車体幅方向内方側のサイドブラケット24の両方に取付ける構成とすることも可能である。この構成によれば、インフレータ29を時間差で点火させることで、エアバッグの膨張展開持続時間や膨張展開量を変更させることが可能となる。
【0266】
さらに、各実施の形態においては、前席シート10と後席シート60が並設される車両となっているが、後席シート60は必須の構成要素ではない。例えば、前席シート10の後部は荷台となっていても良い。この場合においても、エアバッグ30の膨張展開により、車両の衝突によって荷台上の搭載物が前方に移動し、この搭載物がシートバック30背面に衝突する衝撃から車両用シート10の着座者を保護することができる。
【0267】
また、第8実施の形態においては、インフレータ29を上方クロスメンバ25に取付けられた構成として例示したが、インフレータ29を、上方フレーム22における筒状のステーブラケット42が形成された部位のさらに車幅方向外方において、シートバックフレーム21の枠外となるように配置されて取り付けてもよい。この構成によれば、膨張展開するエアバッグ30とインフレータの干渉を完全に回避することができ、エアバッグ30の安定した展開が確保される。
【0268】
また、シートバックフレーム21の上方部分にインフレータを取り付けた場合、アクティブヘッドレスト用のエアバッグを膨張展開させるインフレータを供用することも任意である。
【0269】
また、第9実施の形態においては、インフレー29を、コーナ部21c又は32bに取り付けているが、該部に限らず、パイプフレームが湾曲乃至折曲されてなる上方フレーム22と側方フレーム23の間のコーナ部乃至湾曲部21aに取り付けても良い。