(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、材料費や輸送費を低減するためプラスチックボトルの軽量化が要請されている。プラスチックボトルの容量を保ちながら軽量化するとボトルの肉厚が薄くなるため剛性が低下する。特に、大型のプラスチックボトルの場合は内容物が収められた状態の重量が比較的重くなるので剛性不足が顕在化しやすい。
【0006】
上記の各特許文献のように、窪み部が設けられたプラスチックボトルの場合、ユーザが窪み部に指を入れた状態でボトルが持ち上げられると、窪み部の上部傾斜面に指の側面が押し込まれてその部位に応力が集中する傾向にある。それにより、窪み部の上部傾斜面と胴部との境界部分が折れ曲がって凹む変形が生じる場合があった。ユーザが窪み部に指を入れた状態でボトルを持ち上げて移動したり、斜めに傾けて注出動作をしたりする過程において当該変形が生じると、ユーザは窪み部の上部傾斜面に指の力を十分に掛けることできなくなるので、ボトルを支えるために窪み部に入っていない指や掌の支えを強くする必要が生じる。その結果としてプラスチックボトルの把持性が悪化するおそれがある。当該変形は、軽量化によってボトルの肉厚が薄くなるほど生じやすいので、プラスチックボトルの軽量化の妨げになるおそれがある。
【0007】
特許文献3又は4のプラスチックボトルはその窪み部にリブが形成されているが、その形成部位は窪み部の傾斜面や底面に限られている。そのため、これらの文献のリブは窪み部自体の剛性を高めるために寄与し得るが、上記のような窪み部の上部傾斜面と胴部との境界部分の変形の抑制には寄与しない。
【0008】
そこで、本発明は、把持用の窪み部の上側の壁面と胴部との境界部分が折れ曲がって凹む変形を抑えることができるプラスチックボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラスチックボトルは、ボトル内部側に窪んだ把持用の窪み部(12)が形成された胴部(3)を備え、前記窪み部
の内周方向に一巡する周壁部(16)を
前記窪み部が有するプラスチックボトルにおいて、前記胴部は、前記窪み部の前記周壁部に連なる外表面部(3a)を有し、前記周壁部は、ボトル上部側に傾斜しながら前記胴部の前記外表面部に連なる上側傾斜部(17)を有し、前記胴部には、前記窪み部の前記上側傾斜部から前記外表面部に至るまで前記ボトル上部側に向かって延び
ることにより前記上側傾斜部と前記外表面部との境界部分(S1)を横切っていて、前記ボトル内部側に後退し又はボトル外部側に突出する複数の線状補強部(20…)が形成されているものである。
【0010】
このプラスチックボトルによれば、複数の線状補強部が窪み部の上側傾斜部から胴部の外表面部に至るまで延びているので、上側傾斜部と外表面部との境界部分の剛性が高まり補強される。したがって、ユーザが窪み部に指を入れてボトルを持ち上げて取り扱う際に指の側面によって押し込まれても、境界部分の一点に応力が集中せずに境界部分を横切る複数の線状補強部のそれぞれに応力が分散する。このため、上側傾斜部と外表面部との境界部分が折れ曲がって凹む変形が抑えられる。これにより、ユーザが窪み部に指を入れてボトルを持ち上げて取り扱う際のボトルの把持性の悪化を抑制することができる。
【0011】
本発明のプラスチックボトルの窪み部は、胴部に形成されている限り、個数、位置、形状又は大きさ等は任意である。例えば、本発明のプラスチックボトルの一態様において、少なくとも一対の前記窪み部が互いに対向するように前記胴部に形成されてもよい。この態様によれば、ユーザがボトルを把持する際に、互いに対向する一方の窪み部に第1を、他方の窪み部に第2指を入れた状態でユーザがボトルを把持できるので、把持性が向上する。なお、この態様においては、互いに対向する窪み部が二対以上存在してもよい。
【0012】
複数の線状補強部の本数は複数であれば特に制限はないが、以下の構成のプラスチックボトルの場合には線状補強部の本数について好ましい範囲が存在する。
【0013】
すなわち、本発明のプラスチックボトルの一態様において、前記窪み部は、ボトル左右方向の幅であり、かつ30mm以上40mm以下の範囲に設定された横幅(Wde)を有するように構成され、前記複数の線状補強部が形成された領域を配置領域(Adi)としたときに、前記配置領域の前記ボトル左右方向の横幅(Wdi)が、前記窪み部の前記横幅よりも5mm以下の範囲で狭くなるように形成され、前記複数の線状補強部の本数が4本以下であってもよい。
【0014】
この態様においては、前記複数の線状補強部の本数は3本であってもよい。線状補強部が2本以上であれば上述した変形の抑制効果が発揮されるが、本件の発明者らが所定の評価試験を行った結果、線状補強部の本数が3本であることが最も好ましいと判明した。
【0015】
本発明のプラスチックボトルは周壁部を含む限りにおいて窪み部の形態に特段の制限はない。例えば、周壁部が凹曲面状に構成されていて窪み部が形成され、その窪み部に底部を観念できない形態であってもよいし、底部と周壁部とを区別できる窪み部の形態であってもよい。
【0016】
底部と周壁部とを区別できる形態の場合、本発明のプラスチックボトルの一態様において、前記窪み部は前記周壁部に連なる底部(15)を有し、かつ前記上側傾斜部は前記底部から前記ボトル上部側に傾斜しながら前記胴部の前記外表面部に連なっており、前記複数の線状補強部の少なくとも一つは、前記底部から前記上側傾斜部を経由して前記胴部の前記外表面部に至るまで延びてもよい。この態様によれば、上側傾斜部と外表面部との境界部分だけでなく、複数の線状補強部の少なくとも一つによって底部と上側傾斜部との境界部分も補強できるので、窪み部自体の剛性も高まる結果、ボトルの把持性の向上が期待できる。
【0017】
なお、本発明において、ボトル上部側やボトル下部側等の上下方向を示す用語は、ボトルを基準とした方向のことであり、水平方向や鉛直方向等の絶対的な方向を意味しない。複数の線状補強部が延びている方向であるボトル上部側に向かう方向は、ボトルの上下方向と一致する方向でもよいし、ボトルの上下方向に対して斜め方向であってもよい。複数の線状補強部は全てが互いに平行であってもよいし、これらの一部又は全部が互いに非平行であってもよい。また、以上の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、本発明のプラスチックボトルによれば、複数の線状補強部が窪み部の上側傾斜部から胴部の外表面部に至るまで延びているので、上側傾斜部と外表面部との境界部分の剛性が高まり補強される結果、その境界部分が折れ曲がって凹む変形を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図4に図示されたプラスチックボトル1はプラスチックの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)を材料としてブロー成形によって製造されている。プラスチックボトル1は、ミネラルウォータ、緑茶、紅茶等の無炭酸飲料の包装容器を想定して設計されている。一般に、無炭酸飲料の包装容器は、無炭酸飲料が内容物となるため耐圧性が必要な炭酸飲料を収める包装容器よりも肉厚を薄くして軽量化を図ることができる。
【0021】
図1〜
図4に示すように、プラスチックボトル1は、2000mLの液体を収めることができる容量を有した大型のいわゆる角型ボトルであり、ボトル上下方向から見た場合に角部が丸められた概略長方形の形状を有している(
図4参照)。なお、ボトル上下方向は
図2及び
図3の上下方向と一致する。
【0022】
プラスチックボトル1は、内容物の注ぎ口として機能する口部2と、ボトル上下方向に延びる筒状の胴部3と、口部2と胴部とを連結する肩部4と、胴部3の下端を閉鎖するボトル底部5とを備えている。口部2の周囲には雄ねじが形成されており、その雄ねじに不図示のキャップがねじ込まれることにより口部2が塞がれて密封される。胴部3にはその高さ方向のほぼ中央に位置し外周寸法が他の部位よりも狭められたウエスト部10が形成されるとともに、胴部3の外表面部3aには周方向に細長く延びていてボトル内部側に後退する多数の補強溝11…が主として剛性を高めるために形成されている。各補強溝11の詳細な配置や機能については本発明との関連性が低いので説明を省略する。
【0023】
胴部3には、その高さ方向のほぼ中央、かつ
図2のボトル左右方向のほぼ中央に位置する把持用の窪み部12がウエスト部10と重なるように形成されている。窪み部12は、
図3から明らかなように胴部3の背面側(
図2の反対側)にも同一形態で形成されている。以下、特に断らない限り二つの窪み部12を区別せずに本形態を説明する。
【0024】
図1及び
図2に示したように、窪み部12は、ボトル上下方向の辺の長さがボトル左右方向の辺の長さよりも短い概略長方形状に開口する形態を有している。窪み部12は、底部15と、底部15の周囲からボトル外部側に立ち上がり胴部3の外表面部3aに連なる周壁部16とを有する。周壁部16は窪み部12の内周方向に一巡している。
【0025】
図2とともに
図5A〜
図5G及び
図6を参照することによって周壁部16の形態を把握できる。すなわち、周壁部16は、ボトル上部側に傾斜しながら胴部3の外表面部3aに連なる上側傾斜部17と、ボトル下部側に傾斜しながら外表面部3aに連なる下側傾斜部18と、上側傾斜部17及び下側傾斜部18の左右方向の端部同士を連結し、底部15からそれぞれボトル左側及びボトル右側に傾斜しながら外表面部3aに連なる左右対称に配置された二つの連結傾斜部19とを有する。
【0026】
ユーザが窪み部12に指を入れた状態で飲料が収まったプラスチックボトル1を持ち上げて移動したり、斜めに傾けて飲料の注出動作をしたりすると、窪み部12の上側傾斜部17に指の側面が押し込まれてその部位に荷重が掛かる。そうすると、
図6に示すように、上側傾斜部17と外表面部3aとの境界部分S1に応力が集中する傾向がある。
【0027】
そこで、本形態のプラスチックボトル1の胴部3には、
図2、
図5B、
図5C及び
図6に示した3本の線状補強部20…が境界部分S1を横切るように形成されている。すなわち、3本の線状補強部20…は、窪み部12の底部15との境界部分S0を起点として上側傾斜部17から外表面部3aに至るまでボトル上部側に細長く延びるように胴部3に形成されている。3本の線状補強部20…は全て同一の長さ及び形状を有していてボトル内部側に後退して溝状に形成されている。各線状補強部20の上端部20a及び下端部20bはいずれも円弧状に形成されていてプラスチックボトル1がブロー成形によって製造される場合に成形不良が生じにくい。
【0028】
プラスチックボトル1によれば、3本の線状補強部20…が窪み部12の上側傾斜部17から胴部3の外表面部3aに至るまで延びているので、上側傾斜部17と外表面部3aとの境界部分S1の剛性が高まり補強される。したがって、ユーザが窪み部12に指を入れてプラスチックボトル1を持ち上げて取り扱う際に指の側面によって押し込まれても、境界部分S1の一点に応力が集中せずに境界部分S1を横切る3本の線状補強部20…のそれぞれに応力が分散する。このため、境界部分S1が折れ曲がって凹む変形が抑えられる。
【0029】
境界部分S1の当該変形が抑えられることにより、ユーザが窪み部12に指を入れた状態でプラスチックボトル1を持ち上げて移動したり、斜めに傾けて注出動作をしたりする過程で窪み部12に入れた指が上側傾斜部17にしっかりと引掛り指の力を十分に掛けることができる。それにより、窪み部12に入っていない指や掌に余計な力が掛らない。これにより、ユーザが窪み部12に指を入れてプラスチックボトル1を持ち上げて取り扱う際のボトルの把持性の悪化を抑制できる。
【0030】
プラスチックボトル1には3本の線状補強部20…が設けられているが、その本数が2本以上であれば上述した変形の抑制効果が発揮されることが分かっている。線状補強部の本数が3本であることの優位性は、本件の発明者らが実施した以下の試験対象に対する官能評価試験及び筋電位評価試験の結果から確認できた。
【0031】
(試験対象の準備)
上記の線状補強部がないことを除きプラスチックボトル1と同一の形状及び大きさである比較例を準備した。また、プラスチックボトル1と同一の形状及び大きさで線状補強部の本数が2本の実施例A及び当該本数が4本の実施例Cと、プラスチックボトル1の実施品であり、線状補強部の本数が3本の実施例Bとを準備した。容器重量(空の状態の重量のことをいう。以下同じ。)は比較例及び3つの実施例A〜Cのいずれも29gである。
【0032】
比較例及び各実施例A〜Cの窪み部、並びに各実施例A〜Cの線状補強部の各種パラメータの定義及び寸法を説明する。窪み部及び線状補強部の各パラメータの寸法は、
図7に示すようにボトル上下方向と平行な平面状の投影面に投影した縮尺1:1の投影図上で定義される。寸法が投影図上で定義されるとは、実物を測定するのではなく、図面に現れる各パラメータの図面上の長さを測定するという意味である。また、窪み部や外表面部に存在する溝や突起等の存在は無視することとする。
【0033】
なお、以下の説明は比較例の同じパラメータをも対象とするが、説明の便宜上、上記形態で使用した参照符号と同一の参照符号を図面に付して説明する。
図7の上下方向及び左右方向は、ボトル上下方向及びボトル左右方向にそれぞれ一致する。
図7に示された各パラメータの定義は以下の通りである。
【0034】
Adi:配置領域
配置領域Adiは複数の線状補強部20が形成された領域のことである。配置領域Adiのボトル左右方向の限界は一番右側に位置する線状補強部20及び一番左側に位置する線状補強部20の各中心線CLxで規定される。
【0035】
Wdi:配置領域の横幅
この横幅Wdiは、配置領域Adiのボトル左右方向の限界に等しい。したがって、横幅Wdiは、一番右の線状補強部20の中心線CLxと一番左側の線状補強部20の中心線CLxとの間隔に相当する。
【0036】
Wde:窪み部の横幅
この横幅Wdeは、窪み部12と胴部3の外表面部3aとの境界線Boのボトル左右方向の最大幅のことである。窪み部12は投影図上では概略的に矩形状であるから横幅Wdeはボトル上下方向で一定である。なお、窪み部12の形状によって、横幅Wdeはボトル上下方向で異なる場合がある。
【0037】
Hde:窪み部の高さ
この高さHdeは、境界線Boのボトル上下方向の最大幅のことである。横幅Wdeと同様に、窪み部12は投影図上では概略的に矩形状であるから高さHdeはボトル左右方向で一定である。なお、窪み部12の形状によって、高さHdeはボトル左右方向で異なる場合がある。
【0038】
他のパラメータの定義及び寸法は、
図7の投影面と垂直な平面状の投影面に投影した投影図である
図8の図面上で定義される。ただし、窪み部12は投影図では隠れるので、隠れ線で
図8に描かれるものとする。また、窪み部12に存在する溝や突起等の存在は無視する。
【0039】
Dp:窪み部の深さ
深さDpは、胴部3の外表面部3aの最外位置(
図8ではボトル下側の外表面部3aの位置)から底部15に対して垂線を下ろした場合の垂線の長さである。
【0040】
θup:上側傾斜部の傾斜角
傾斜角θupは、底部15の表面と上側傾斜部17の表面とで形成される角度である。
【0041】
<実施例A〜C及び比較例の各寸法数値>
(実施例A)
Wdi:28mm、Wde:33mm、Hde:25mm、Dp:13mm、θup:104°
(実施例B)
Wdi:30mm、Wde:33mm、Hde:25mm、Dp:13mm、θup:104°
(実施例C)
Wdi:30mm、Wde:33mm、Hde:25mm、Dp:13mm、θup:104°
(比較例)
Wde:33mm、Hde:25mm、Dp:13mm、θup:104°
【0042】
(官能評価試験)
比較例、実施例A、実施例B、及び実施例Cの4つのボトルのそれぞれに2000mLの水を入れた4つのサンプルを作成した。男女各5名の被験者に各サンプルの一方の窪み部に第1指を、他方の窪み部に第3指をそれぞれ入れた状態で持ち上げて各人共通の基準位置に設置されたグラスにボトル内の水を注ぎ入れる動作を実施させた。そして、当該動作を実施した各被験者が使いやすさの観点から以下のようにランク付けされた点数で各サンプルを評価した。そして、サンプル毎の合計点数を平均して各サンプルの評価点として集計した。
【0043】
・4点 :非常に使いやすい
・3.5点:使いやすい
・3点 :普通(使いやすくもなく、使いにくくもない)
・2.5点:使いにくい
・2点 :かなり使いにくい
・1点 :非常に使いにくい
【0044】
この試験の集計結果は
図9の通りとなった。
図9に示すように、比較例の評価点である2.69点を基準とすると、複数の線状補強部が設けられた実施例A〜Cは、いずれの評価点も基準点2.69点を上回っている。この結果から、境界部分の変形が複数の線状補強部によって抑制されることによってボトルの把持性が向上したものと判断できる。
【0045】
実施例Aの評価点は3.88点、実施例Bの評価点は3.93点、実施例Cの評価点は3.91点であった。実施例A〜Cのうち、評価点が最も高かったのは3本の線状補強部を持つ実施例Bであり、次に評価点が高かったのは4本の線状補強部を持つ実施例Cであり、評価点が低かったのは2本の線状補強部を持つ実施例Aであった。したがって、使いやすさの観点から最も好ましい線状補強部の本数は3本である。
【0046】
(筋電位評価試験)
比較例、実施例A、実施例B、及び実施例Cの4つのボトルのそれぞれに2000mLの水を入れた同じ重量の4つのサンプルを作成した。男女各3名に各サンプルの一方の窪み部に第1指を、他方の窪み部に第3指をそれぞれ入れた状態で各人共通の基準位置まで持ち上げる動作を実施させた。当該動作過程における被験者の腕の身体的負荷を、各被験者の以下の各筋肉の筋電位を測定して数値化し、その身体的負荷を反映した数値をサンプル毎に集計した。
【0047】
・浅指屈筋:第2指〜第5指の屈曲に使用される筋肉
・総指伸筋:第2指〜第5指の伸展に使用される筋肉
・橈側手根伸筋:手関節の橈屈及び伸展に使用される筋肉
【0048】
この試験の集計結果は
図10の通りとなった。
図10に示すように、比較例に関する各筋電位の数値の合計を平均した平均値0.0448を基準とすると、複数の線状補強部が設けられた実施例A〜Cのいずれの平均値も比較例を下回っている。これは被験者の腕の身体的負荷が低下していることを意味する。したがって、複数の線状補強部を設けることでボトルの把持性が向上して使いやすくなっているともいえる。
【0049】
測定した各筋電位には、窪み部に入れた第1指の外転時に使用する長母指外転筋及び第1指の内転時に使用する第1背側骨間筋の各筋電位は含まれていない。つまり、上記の平均値が低いということは第1指以外の身体的負荷が低下していることを意味する。これにより、複数の線状補強部が設けられた実施例A〜Cのいずれも、比較例に比べて上述した境界部分の変形が抑制されていて第1指以外の指や掌に余計な力が加わっていないことを意味する。
【0050】
実施例Aの平均値は0.0388、実施例Bの平均値は0.0271、実施例Cの平均値は0.0359であった。実施例A〜Cのうち、平均値が最も低いのは3本の線状補強部が設けられた実施例Bであり、次に平均値が低いのは4本の線状補強部が設けられた実施例Cであり、最も平均値が高かったのは2本の線状補強部が設けられた実施例Aである。したがって、身体的負荷の観点から最も好ましい線状補強部の本数は3本である。
【0051】
(評価結果のまとめ)
以上の試験結果から、使いやすさを反映した官能評価と、身体的負荷を反映した筋電位評価とが互いに相関性を持つことが分かった。これら二つの観点からみて、最も好ましい線状補強部の本数は3本であり、次に好ましい線状補強部の本数は4本であり、次に好ましい線状補強部の本数は2本であると結論でき、線状補強部の本数についての優位性の序列が判明した。なお、線状補強部の本数を5本以上にした場合は比較例より優位性はあるが、当該本数が2〜4本の実施例A〜Bの場合と比べると特段の優位性はない。
【0052】
(変形例)
本発明のプラスチックボトルは上記形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。プラスチックボトルの材料に制限はなく、プラスチックの範疇に属する材料であればどのような材料を用いてもよい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを材料としたプラスチックボトルであってもよい。また、プラスチックボトルの用途は必ずしも飲料の包装容器に限定されない。例えば、植物油や醤油等の液体調味料などの液体食用品の包装容器として使用されるプラスチックボトルであってもよい。あるいは、液体の薬品や洗剤等の液体の非食品の包装容器として使用されるプラスチックボトルであってもよい。
【0053】
また、窪み部が形成されているプラスチックボトルであれば、その容量にも制限はない。上記形態のプラスチックボトルは、2000mLの液体を収めることができる容量を有しているが、例えば上記形態のプラスチックボトルよりも小型の1000mLの容量を持つプラスチックボトルも本発明の適用対象となり得る。また、4000mLの液体を収めることができるプラスチックボトルには取っ手が設けられていることが広く知られているが、このような取っ手を設ける代わりに上記形態のような窪み部を胴部に形成して保把持可能にすることもできる。したがって、本発明は、比較的大型で内容物を収めた場合に重量感のある1000mL以上4000mL以下の液体を収めることができるプラスチックボトルに適用することも可能である。
【0054】
上記形態のプラスチックボトルは、ボトル上下方向から見た場合に概略的に長方形に見え、その長方形の長辺側のそれぞれに一対の窪み部が形成されているが、これに限定されない。同方向から見た場合に正方形に見えるプラスチックボトルに本発明を適用し、互いに対向する辺側のそれぞれに一対ずつ窪み部を設ける形態で本発明を実施することも可能である。要するに、ボトル上下方向から見た場合に長方形及び正方形を含む矩形状に見える場合において互いに対向する辺側のそれぞれに窪み部を設ける形態で本発明を実施することもできる。もっとも、本発明は、ボトル上下方向から見た場合に矩形状に見える形状のプラスチックボトルには限定されない。例えば、同方向から見た場合に円形状や楕円形等の非多角形状に見える場合、あるいは、こうした非多角形形状に近い形状に見えるプラスチックボトルにも本発明を適用できる。
【0055】
上記形態は、窪み部12の底部15と周壁部16とを区別できるものであるが、例えば、窪み部の周壁部が凹曲面状に構成されていて、その窪み部に底部を観念できない形態であってもよい。この場合にも周壁部に上側傾斜部が存在するので、その上側傾斜部から外表面部に至るまで延びる上記形態と同様の複数の線状補強部を設ける形態で本発明を実施することもできる。
【0056】
上記形態の線状補強部は、
図6に示すように窪み部12の底部15には形成されていない。しかしながら、
図11に示すように、底部15から上側傾斜部17を経由して胴部3の外表面部3aに至るまで延びている複数の線状補強部20′…に変更して本発明を実施することもできる。さらには、これらの線状補強部を下側傾斜部まで延ばすこともできる。
図11の場合には、上側傾斜部17と外表面部3aとの境界部分S1だけでなく、複数の線状補強部20′…によって底部15との境界部分S0も補強できるので、窪み部12自体の剛性も高まる結果、ボトルの把持性の向上が期待できる。
図11の場合には、複数の線状補強部のうちの一部だけが底部に形成されていてもよい。
【0057】
上記形態の線状補強部の本数は3本であるが、特に制限されない。上述した評価試験で使用した実施例のように、2本や4本の線状補強部が設けられた形態で本発明を実施することもできる。上述した線状補強部は、いずれもボトル内部側に後退しているものであるが、これとは反対にボトル外部側に突出した形状で実施することも可能である。この場合には複数の線状補強部のいずれかを又は全部をボトル外部側に突出した形状で実施することもできる。複数の線状補強部の長さが全て揃っていなくてもよく、一部又は全部の長さが互いに異なってもよい。
【0058】
上記形態ではプラスチックボトルを側方から見たときに各線状補強部が直線であるが(
図2参照)、同方向から見たときに各線状補強部が曲線であってもよい。
【0059】
上述した実施例A〜Cのそれぞれの、複数の線状補強部の配置領域Adiの横幅Wdi、窪み部の横幅Wde、窪み部の高さHde、窪み部の深さDp、及び上側傾斜部の傾斜角θupの各寸法数値は一例にすぎず、これらの寸法数値は適宜に定めてよい。ただし、これらのパラメータには、以下の好適な範囲が存在する。
【0060】
30mm≦Wde≦40mm、Wde−Wdi≦5mm、
20mm≦Hde≦30mm、10mm≦Dp≦15mm、
100°≦θup≦110°
【解決手段】プラスチックボトル1はボトル内部側に窪んだ把持用の窪み部12が形成された胴部3を備えている。窪み部12は内周方向に一巡する周壁部16を有している。胴部3は、窪み部12の周壁部16に連なる外表面部3aを有し、周壁部16は、ボトル上部側に傾斜しながら胴部3の外表面部3aに連なる上側傾斜部17を有する。胴部3には、窪み部12の上側傾斜部17から外表面部3aに至るまでボトル上部側に向かって延びていて、ボトル内部側に後退する複数の線状補強部20…が形成されている。