特許第5914672号(P5914672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914672
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ラウドスピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/40 20060101AFI20160422BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20160422BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20160422BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H04R1/40 310
   H04R1/32 310Z
   H04R7/12 Z
   H04R9/02 102A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-533996(P2014-533996)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公表番号】特表2014-533455(P2014-533455A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】HU2012000099
(87)【国際公開番号】WO2013050797
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】P1100556
(32)【優先日】2011年10月4日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】514084152
【氏名又は名称】ベイ,ゾルタン
【氏名又は名称原語表記】BAY, Zoltan
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ベイ,ゾルタン
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−127397(JP,A)
【文献】 特開平08−102988(JP,A)
【文献】 特開昭57−021200(JP,A)
【文献】 特開2002−078079(JP,A)
【文献】 特開昭54−114231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/40
H04R 1/32
H04R 7/12
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−支持構造体、
−支持構造体に固定され、エヤーギャップ(13, 23, 41, 47, 49)を規定する磁気構造(12)、および
−支持構造体に接続され、シート材料で作られた振動板、を備えるラウドスピーカーであって、
−前記振動板は円筒形ジャケットの形状を有し、セグメント(10 , 10' , 10'' , 10''' , 10'''' )からなり、
−前記セグメント(10 , 10' , 10'' , 10''' , 10'''' )は母線の方向に走る区画ラインに沿って互いに接続され、前記セグメントは円筒形ジャケット形状の全体的な半径に関連する曲率よりも大きい曲率の表面を有し、
−2つの区画ラインに少なくとも沿ったフラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )が存在し、そのフラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )はエヤーギャップ(13, 23, 41, 47, 49)の中へそれぞれ半径方向に延び、そして、
−前記振動板は、フラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )に結合する可撓性支持部材(24)によって支持構造体に接続されて、エヤーギャップ(13, 23, 41, 47, 49)の中におけるフラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )の半径方向の動きを可能にし、
フラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )の端を支持構造体に接続する可撓性支持部材(24)が、母線の方向に走る可撓性ストランドであり、
ラウドスピーカーは、ケーブル構造を備え、そのケーブル構造は、フラップ(11, 11' , 11'' , 11''' , 11'''' )に沿って振動板に付設されるケーブルストランドを備えるラウドスピーカー。
【請求項2】
エヤーギャップ(13, 23, 41, 47, 49)を介して進み、各エヤーギャップ(13, 23, 41, 47, 49)において同じ電流方向を保証するケーブルストランドを備えることを特徴とする請求項1記載のラウドスピーカー。
【請求項3】
ケーブル構造は1エヤーギャップ当たり、又は一対のエヤーギャップ当たり一対の接続ケーブル部を備えることを特徴とする請求項記載のラウドスピーカー。
【請求項4】
ケーブル構造が共通の一対の接続ケーブル部を備えることを特徴とする請求項記載のラウドスピーカー。
【請求項5】
可撓性ストランドが、都合よく可撓性被覆を有するケーブルストランドであることを特徴とする請求項のいずれか1つに記載のラウドスピーカー。
【請求項6】
振動板のセグメント(10 , 10' , 10'' , 10''' , 10'''' )が可撓性のプリント配線板で作られていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のラウドスピーカー。
【請求項7】
振動板のすべてのセグメント(10 , 10' , 10'' , 10''' , 10'''' )が単一のシート材料片から作られていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のラウドスピーカー。
【請求項8】
振動板のセグメント(10, 10' )のエッジが弾性フランジ(34, 38)を介して支持構造体に接続されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のラウドスピーカー。
【請求項9】
振動板のセグメント(10, 10' )により囲まれた内部空間と、支持構造体と、弾性フランジ(34, 38)とを備えることを特徴とする請求項記載のラウドスピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はラウドスピーカーに関する。この発明の主題は、特に、全方向の音響再生に適した広帯域ラウドスピーカーである。
【背景技術】
【0002】
異なる構造の多くのラウドスピーカーが、先行技術により知られている。例えば、いわゆるストリップ振動板を有するラウドスピーカーは、他の公知のタイプと比較してひずみが小さく負荷容量が大きいので、広く使用されている。
【0003】
ストリップ振動板を有するラウドスピーカーは、例えば、文献WO 2000/041492に記載されている。その文献による解決策において、振動板はストリップのような形状を有し、いくつかのセグメントに分割されている。その振動板は、個々のセグメントが互いに交わるように動く。2つの端の位置においてセグメントはラウドスピーカーの支持構造体に、それらの長手方向に沿って固定されている。この公知のラウドスピーカーは、全方向の音響再生には適さず、固定されたセグメントは、端の位置で振動板の動きを制限する。
【0004】
音を空間のいくつかの方向に又は水平に全方向に放出する他のラウドスピーカーが知られている。
【0005】
全方向ラウドスピーカーは米国特許第3,590,942号、同6,009,972号および英国特許第1451169号に記載されている。これらのラウドスピーカーは、柱、円柱又は球のような空間的な形態の表面に設置される異なる方向に放射する音響放射体によって構成される。これらのラウドスピーカーの共通の欠点は、いくつかの個々の音響放射体がそれらを組立てるのに必要であることである。或る周波数以上では、個々の音響放射体は可干渉的に作動せず、放射特性を著しく悪化させる。
【0006】
さらに、全方向ラウドスピーカーは、米国特許第5,115,882号、同5,451,726号、同5,673,329号、同第6,064,744号および同第6,431,308B1号に記載されている。これらの公知のラウドスピーカーは、拡散器の援助により全方向特性を作り出す。これらの解決策の共通の欠点は、その拡散器が周波数依存要素であることである。これによって、或る音波は拡散器に吸収され、それらのいくつかはその位相が変化する。結果的に、適当な位相応答のリニア周波数応答を作り出すことは、ほとんど不可能である。
【0007】
米国特許第5,014,321号と同第6,785,397B2号において、ボール形状の振動板を有する音響放射体が記載され、その放射体の上下部分において、従来のラウドスピーカーの振動板を動かし、作動中に振動板を変形させる構成要素が設けられている。
【0008】
米国特許第6,411,914B1号によると、いわゆるPVDFフォイル(foil)の援助により、筒形の振動板が作られる。PVDFフォイルは、多層の電子放射体であり、その使用時の欠点は、それが電圧の供給を必要とすることである。
【0009】
米国特許第6,587,571号によれば、変形可能なチューブが振動板として用いられ、そのチューブは磁気回路とコイルの援助により、圧縮され、引張される。円筒状およびチューブ状の解決策の共通の欠点は、振動板のサイズをきわめてわずかに変更することにより、その文献によるラウドスピーカーは高い音響周波数のみで作動するということである。
【0010】
欧州特許第0 201 101 A2号は、ストリップ形状の振動板を有するラウドスピーカーを記載している。
【0011】
ストリップ振動板付のラウドスピーカーはまた、米国特許公開公報第2010/0284560A1号に記載されている。中国特許第201234341Y号に記載されたラウドスピーカーも、ストリップ振動板を有する。中国特許第201260241Y号に記載されたラウドスピーカーは円筒状振動板を有する。低音を放射するのに適したラウドスピーカーは、ドイツ国特許第10 2007016 582 B3号に記載されている。円筒状振動板付のラウドスピーカーは英国特許第2 370 939 A号および日本国特許公開公報第2007-020024号に記載されている。
【0012】
公知の解決策のいくつかの共通の欠点は、音響周波数の駆動装置(drive)によって制御される振動板の動きが、振動板に接続される要素により制限されるということである。公知の解決策の他の部分の共通の欠点は、それらの放射特性が、制御された不完全な全方向の音響を保証するということである。さらに、公知の解決策の大多数は、比較的制限された周波数範囲においてのみ、一様な効率の音波を生成できるという欠点を有する。
【0013】
公知の解決策を考慮して、良好な近似によって音波を全方向に放射するのに適した、また、できる限り広い音響周波数範囲で音を放射するのに適したラウドスピーカーの開発要求が生じてきた。さらに、その振動板が、公知の解決策の場合よりも運動の自由において制限されない、つまり、駆動装置によりより完全に動くことができるラウドスピーカーの開発が要求されている。
【0014】
この発明の主目的は、先行技術による解決策の欠点をできるだけ免れるラウドスピーカーを作ることである。この発明の目的は、ほぼ全方向の音響放射を行うことが可能なラウドスピーカーを作ることである。さらに、この発明の目的はできるだけ広い音響周波数において均一な効率の音波を出射できるラウドスピーカーを作ることである。さらに、この発明の目的は、ラウドスピーカーの支持構造体にラウドスピーカーの振動板を、その自由な運動が可能な最小範囲に制限されるように取付けることである。同時に、この発明の目的はまた、振動板を適当な位置に保持して、ドライブによる振動板の動きをできるだけ妨げないようにする可撓性支持部材を作ることである。
【0015】
この発明に関して、設定された目的は請求項1によるラウドスピーカーにより達成された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
この発明の好ましい実施形態は、例として図に基づいて説明される。
図1図1は、この発明によるラウドスピーカーの第1実施形態の一部の立体画像である。
図2図2は、図1に示すラウドスピーカーの内部の上面図である。
図3図3は、図1に示すラウドスピーカーの支持構造体の要素を上面図で示す。
図4図4は、閉鎖板を搭載した、図1に示すラウドスピーカーを示す。
図5図5は、この発明によるラウドスピーカーの他の実施形態の一部の立体画像である。
図6図6は、図5に示すラウドスピーカーの立体的上面図である。
図7図7は、図5に示すラウドスピーカーの側面図である。
図8図8は、この発明によるラウドスピーカーの第3実施形態の立体画像である。
図9図9は、図8に示すラウドスピーカーの上面図である。
図10図10は、この発明によるラウドスピーカーの第4実施形態の立体画像である。
図11図11は、図10に示すラウドスピーカーの上面図である
図12】図12は、この発明によるラウドスピーカーの第5実施形態の立体画像である。
図13】図13は、図12に示すラウドスピーカーの上面図である。
【0017】
この発明によるラウドスピーカーのすべての実施形態は、支持構造体と、支持構造体に固定されエヤーギャップを画定する磁気構造(magnetic arrangement)と、支持構造体に接続された振動板シート材料とを備える。この発明によるラウドスピーカーの場合には、シート材料は、振動板が広げられたときに、平坦な材料から作られ、都合よく折り重ねて接着されることを意味する。
【0018】
この発明によるラウドスピーカーにおいて、振動板はセグメントからなる円筒形ジャケットの形状を有する。振動板は、1枚以上のシート材料片からなる。振動板のすべてのセグメントは、単一のシート材料片から作られると好都合である。個々のセグメントは、それらが一緒に円筒形ジャケット状の形を作るように、互いに接続される。
【0019】
この発明の観点から、円筒形ジャケットの形状は、その表面がトレースライン(traceline)の平面に直角にトレースラインに沿って位置する母線によって決定されることを意味する。結果的に、円筒形ジャケットの形状は、母線の方向に沿った恒久的な断面を有する。セグメントは、母線の方向に沿った区画ラインに沿って互いを接合し、円筒形ジャケット形状の総体半径に対応する曲率よりも大きい曲率の表面を有する。個々のセグメントは凸面体でも凹面体でもよい。
【0020】
2つの区画ラインに少なくとも沿ってフラップ(flaps)が存在し、これらのフラップはそれぞれ半径方向にエヤーギャップ内に延びる。フラップとエヤーギャップは、いくつかの異なる方法で互いに構成されるか、配置されることが可能である。例えば、フラップは、セグメントの結合ラインに沿ってシート材料上に形成された鋭角の折り目によって形成されることが可能である。つまり、フラップは互いに接着された隣接セグメントの表面で折りたたまれることが可能である。
【0021】
振動板がラウドスピーカーの内部空間から見て凸面状に湾曲したセグメントを有する場合には、磁気構造によって区画されるエヤーギャップは、振動板によって区画される振動板の内部空間に位置する。しかしながら、セグメントがラウドスピーカーの内部空間から見て凹面構造を有する場合、つまり個々のセグメントが内部に向かって湾曲している場合には、磁気構造は、通常、振動板によって形成される内部空間を越えて構成されるべきである。
【0022】
さらに、この発明によれば、振動板は、フラップを結合してエヤーギャップ内でのフラップの半径方向の動きを可能にする可撓性支持部材によって支持構造体に接続される。好ましくは可撓性支持部材は、母線方向に走って支持構造体にフラップの端を接続する可撓性ストランドであり、休止状態ではフラップをゆるい懸垂姿勢に保持する。
【0023】
この発明によるラウドスピーカーは、またケーブル構造を備え、そのケーブル構造は、フラップに沿って振動板に取り付けられてエヤーギャップを介して進み、各エヤーギャップにおいて同一の電流方向を保証するケーブルストランドを備える。そのケーブル構造は、そのケーブル構造を介して流れる電流の強度と、磁気構造によって生成される磁気誘導に依存して振動板に力を加えるようになっている。知られていることであるが、磁気構造によって生成される永久磁界は、使用される電流強度によって導体に力を加える。このようにして加えられた力によって振動板は、ラウドスピーカーの機能に適した音響周波数の動きに委ねられる。
【0024】
この発明によるラウドスピーカーにおいて、振動板は、先行技術によるラウドスピーカーと比べて、より自由な構造を有する。この理由により、この発明によるラウドスピーカーは、先行技術による解決策の場合よりも広い周波数範囲において均一な性能を発揮することができる。
【0025】
上記に基づいて、この発明によるラウドスピーカーは、磁気学の原理に基づいて作動するダイナミック音響放射体であり、セグメントからなるその振動板により、小さい収納体積の中に大きい音響放射表面を保証し、軸を中心に360度のフィールドに放射する。結果的に、この発明は全方向(360度)音響放射体である。この放射の特性の利点は、単極の音響ディストリビュータよりもリアルなステレオ音響イメージを与えることである。この発明による解決策のさらなる利点は、そのステレオ音響イメージは、音響放射体が例えば実際の壁のような表面に近づいても、著しく悪くならないことである。
【0026】
この発明によるラウドスピーカーの磁気構造の援助により、エヤーギャップにおける磁束の方向と導体における電流の方向は、電流が導体を介して流れる時に振動板のすべてのフラップが半径方向に同じ方向に動くように決定される。
【0027】
図1は、この発明によるラウドスピーカーの好ましい第1実施形態である。この発明のこの実施形態によるラウドスピーカーは、シート材料で作られた8つのフラップ11を有する振動板(diaphragm)を備え、フラップ11のセグメント(segments)10は、図に示される配列によって互いを結合している。この実施形態の場合には、ラウドスピーカーの支持構造体(bearing structure)は、支持構造体要素14と、一端(図1の上端)に沿って振動板に接する平板18と、他端(図1の下端)に沿って振動板に接する平板20を備える。平板20は図4に示される。振動板は後述するように支持構造に接続される。
【0028】
図1による実施形態は、この目的のために作られた支持構造体要素14の凹部17に固定され、8つのエヤーギャップ13を規定する磁気構造12を備える。振動板はセグメント10を有し、円筒形ジャケットのような形状を有する。個々のセグメント10は、母線の方向に沿った区画線に沿って互いを結合している。図に示すように、区画線はフラップ11の折り目つまり継ぎ目に位置し、フラップ11は磁気構造12によって作られるエヤーギャップ13の中へ外側から入り込んでいる。また、図に見られるように、各セグメント10の表面は、ラウドスピーカーを収容する仮想の円筒の半径よりも大きい曲率を有する。セグメントの大きい曲率により、振動板は自由に伸縮することができ、これによってリアルな音響再生を保証する。
【0029】
上記により、フラップ11は区画線に沿って形成され、各フラップ11はエヤーギャップ13の中に入り込む。支持構造に振動板を接続する可撓性支持部材は、後述される。
【0030】
図2は、この発明によるラウドスピーカーの実施形態の一部の上面図である。図2において詳細に見ることができるが、振動板のフラップ11は磁気構造12の中に作られるエヤーギャップ13の中に入り込んでいる。好ましくは、1つ以上のケーブルストランド(簡単のため図1図2には示さない)がフラップ11に沿って振動板に取り付けられ、ラウドスピーカーを作動する電流がそのケーブルストランド(cable strands)を流れる。
【0031】
図2はまた、磁気構造12が、支持構造体要素14の上に、この目的のために作られた凹部17に嵌入する方法を示している。例えば、磁気構造12は、図に見られるように、2つの軟鉄部と、それらの間に固定される永久磁石を備える。
【0032】
図3は、図1図2に示される実施形態の支持構造の一部を形成する支持構造体要素14の上面図である。支持構造体要素14はまた、固定要素16を収容する開口15を備える。
【0033】
図4はまた、図1図2に助けられて図示される実施形態を示し、それは支持構造体の一部を形成する平板20によって閉じられている。図4に見られるが、平板20は、ねじのような固定要素16の助けにより、支持構造体要素14に固定される。
【0034】
図1〜4に示す実施形態の支持構造体要素14は、標準の引き抜き形材であれば好都合である。磁気構造の構成要素は、支持構造体要素14の凹部17の中に設置される。つまり、平坦な磁石を挟んだ軟鉄部が各凹部17の中に存在する。図1〜4に示される実施形態は、低音放射広帯域ラウドスピーカーを実現するために、特に適している。
【0035】
図5はこの発明によるラウドスピーカーの他の実施形態の一部の立体画像である。ラウドスピーカーのこの実施形態は、6つのフラップ11を有する6つのセグメント10' からなる振動板を備える。ここでは、支持構造体は、振動板の1つのエッジの近くに設けられた端板28と、振動板の他のエッジの近くに設けられた端板40と、端板28と端板40との間に挿入されたスペーサ要素36を備える。例えば、支持構造体は、モータ技術で知られた分離磁石32を、端板28と端板40に形成され分離磁石32の間に延びる指30によって保持する。結果的に、この実施形態の磁気構造は、エヤーギャップ23によって互いに分離した6つの分離磁石32によって形成される。ラウドスピーカーの作動を保証するケーブル設備は、フラップ11' に沿って振動板に固定され、エヤーギャップ23を通り、各エヤーギャップ23において同じ電流方向を有するケーブルストランドを備える。図において、ケーブルストランドの中に続く接続ケーブル部26を見ることができる。振動板はフラップ11' に接続された可撓性支持部材24によって支持構造体に接続され、エヤーギャップ23の中のフラップ11' の半径方向の動きを可能にする。この実施形態の場合には、可撓性支持部材24は、母線の方向に走り、フラップ11' の端を支持構造体に接続する可撓性のストランド(strands)である。
【0036】
図5に示す指(finger)30は、支持部材24のための固定点である。図に示す実施形態において、指30はエヤーギャップ23を越えて伸びる、つまり、フラップ11' に接続される支持部材24はフラップ11' をエヤーギャップ23の外側に固定する。同時に、ケーブルストランドは、各ケーブルストランドが個々のエヤーギャップ23の中に設置されるように配置される。この方法において、もし、電流がケーブルストランドを介して流れると、磁気構造はケーブルストランドに力を加えるが、その力の強度は電流強度に依存する。ケーブルストランドがフラップ11' の近くの振動板に固定されるとき、ケーブルストランドに与えられる電流強度に依存する強度の力が、振動板に加えられる。変化可能な強度を有するこの力によって、振動板のセグメント10' は所望の音響周波数で移動又は振動する。
【0037】
図6図5に示す実施形態の上面図である。図において、支持構造を形成する平板28、分離磁石32、スペーサ要素36、および底部でラウドスピーカーに接する平板40が詳細に見られる。さらに、平板28と振動板のエッジを接続する弾性フランジ34もまた見られる。通常、弾性フランジ34はゴム製フランジであり、それは柔軟な材料で作られ、最小可能範囲までの振動板の運動に影響を与えるか又はその運動を防止する。
【0038】
図7図5および図6に示す実施形態の側面図を示す。その側面図では、2つの側面における振動板のセグメント10' に接する弾性フランジ34と38が見られる。この側面図において見られるが、分離磁石32は、ラウドスピーカーの下部と上部において、端板28と端板40を越えて延び、これによって、エヤーギャップ23において可能な最も均一な磁界を保証する。
【0039】
都合のよいことに、この実施形態において、ラウドスピーカーは閉じた内部空間を備えるが、それは振動板のセグメント10,10' 、支持構造および弾性フランジ34,38によって仕切られる。
【0040】
図5〜7に示す実施形態の場合には、支持構造の個々の要素は、例えばレーザ切断により作製されるか又は切断された要素から作製されることが可能である。
【0041】
図8図9は、この発明によるラウドスピーカーの第3実施形態の立体的上面画像を提供する。この発明によるラウドスピーカーのこの実施形態は、2つのセグメント10'' からなり2つのフラップ11'' を有する振動板を備える。この実施形態はまた、支持構造体要素42,43を備え、それらは共にこの実施形態の支持構造体を形成する。エヤーギャップ41は、鏡面対称の支持構造体要素42と、その間でスペーサとしても機能する支持構造体要素43とによって形成される。同時に、支持構造体要素42,43はまた、支持構造体要素42が軟鉄部になり、支持構造体要素43が磁石になるような磁気構造を形成する。ラウドスピーカーの作動中に電流が流れて振動板を動かすために必要な、図8と9に示されないケーブルは、エヤーギャップ41の中へ延びるフラップに沿って配置される。結果的に、この実施形態において、この発明によるラウドスピーカーの作動に必要な振動板の動きは、上述のように、エヤーギャップ41の中へ延びるフラップ11の動きによって達成される。セグメント10'' はまた、中央の母線の方向に適合するカーブに沿った折り目ラインを備えるが、その利点は、それらがセグメント10'' の長手方向の強度を保証し、セグメント10'' のねじれから生じるゆがみを減少することである。
【0042】
図10図11は、この発明によるラウドスピーカーのさらに異なる実施形態の立体的および上面画像を提供する。この実施形態はフラップ11''' を有するセグメント10''' からなる振動板と、エヤーギャップ47を有する支持構造体要素44とを備える。支持構造体要素44間のスペーサは、図10又は11に示されていない。この実施形態において、支持構造体要素44自体が永久磁石であり、それらが磁気構造を形成する。振動板の適正な動きに必要なケーブルは、エヤーギャップ47の中へ延びるフラップ11'''に沿って設置され、図8と9に示される実施形態と同様の配置に従う。さらに、図11において、スペーサ盤52と、スペーサ盤52に接続された保持部材が存在する。スペーサ盤52は支持構造体要素44の両方に接続されている。
【0043】
10と11に示される実施形態動板のセグメント10''' をスペーサ盤にフラップ11'''において固定する保持部材で形成されることが可能である。この実施形態の場合には、可撓性の保持部材は母線の方向に走り、フラップ11''' の端を支持構造体に、つまりスペーサ盤を介して支持構造体要素44に接続する可撓性ストランドであり、可撓性ストランドは、可撓性の被覆を有するケーブルストランドであれば、好都合である。
【0044】
12と図13は、この発明によるラウドスピーカーのさらに異なる実施形態を示す。前述の2つの実施形態と同様に、この実施形態においても閉じられた音響空間が存在する。この実施形態は、フラップ11''' を有するセグメント10''' からなる振動板と、その上にエヤーギャップ49を有する支持構造体要素48とを備える。個々のフラップ11'''は、個々のエヤーギャップ49の中へ延びている。この図において、ケーブル46が振動板に、フラップ11''' を形成する折り目の内側に外側から接着されるように、配置されたフラップ11''' に沿ってケーブル49が存在することが見られる。この実施形態において、磁気構造は、支持構造体要素48自体によって形成できるが、磁気構造はエヤーギャップ49に接する表面に沿って設置することもできる。
【0045】
図813に示される実施形態の場合には、振動板を支持構造体に固定する保持部材がフラップ11'' 、11''' 、11'''' の端を支持構造体に接続する可撓性ストランドであると好都合である。可撓性ストランドがケーブルストランド自体で形成されるとさらに好都合である。この場合には、可撓性ストランドを形成するケーブルストランドの部分は、可撓性被覆を備えると好都合である。
【0046】
振動板に固定され振動板に動きを与えるケーブル構造は図面に示されていないことが指摘される。振動板の上を走るケーブル構造は、適当な方法、例えば、文献WO 2000/041492A2に記載された方法を用いて実現される。
【0047】
放出される音波が比較的大きい波長を有するときのみ、ラウドスピーカーの適当な作動用の閉鎖音響スペースを作成することが必要であることが指摘される。この場合、振動板の2つの異なる側面から来る音波が互いに打消すことがある。小さい波長が生成される場合には、そのような打消しは考えられないので、音響スペースを作る必要はない。
【0048】
いくつかの生成点(generation point)を有する、いくつかのセグメントからなる振動板と閉鎖内部空間を備えた実施形態は、低い音を放射するのにとくに適している。少ない生成点を有する、少ないセグメントから構成された振動板を備えた実施形態は、高い音を放射するのにとくに適している。高い音に用いられる実施形態の場合には、閉鎖音響空間を作る必要はない。
【0049】
この発明は適当なパラメータにより、全音響周波数領域をほぼカバーするラウドスピーカーを保証するのに適することが可能である。この発明によるラウドスピーカーの著しい利点は、公知の音響放射と比較して、その都合のよい特性を失うことなしに著しく大きい振動板表面を備えることである。セグメントの数を増やすことによって、振動板の表面は放射パラメータを弱めることなく増大する。同じたわみの場合には、大きい振動板表面は大きい音圧につながる。
【0050】
この発明によるラウドスピーカーのさらなる変形も可能であり、それによって放射効率を増大することができる。このための可能な解決策は、特に低音の範囲において、ラウドスピーカーの内部空間は、内部空間の一端が音響空洞に接続され、他端が閉鎖されるように音響空洞に接続されることである。他の可能な解決策によれば、音響用の漏斗が内部空間の開口側に設置され、その結果それらは支持構造体要素によって閉じられない。
【0051】
公知のダイナミック音響放射の解決策と比較すると、この発明による解決策は、360度の範囲に音響放射を向けることができるように著しく大きな振動板表面を作ることを可能にする。セグメントの数とサイズを増やすことによって、ほぼ無制限の表面を有するラウドスピーカーを構成することができる。公知のダイナミックコーン音響放射体は、可動コイルが単一の点から振動板を制御するので、無制限に増大させることはできず、もし、振動板の表面が増大すると、移動する大きさも増大し、振動板の直径が増大するほど、その剛性は無限ではないので、さらに独立して移動し、著しく音響再生を悪化する。
【0052】
上記と異なる他の振動板構造もまた可能である。上記以外の多数のセグメントを形成する場合には、支持構造体と磁気構造もまた、変更する必要がある、つまり、適当な数のエヤーギャップが、上述のラウドスピーカーの作動に必要なケーブルストランドがその上を走るフラップを収容するために作られなければならない。強調すべきことであるが、この発明の観点から、振動板が偶数又は奇数のセグメントからなるかどうかは問題にならない。都合のよいことに、この発明によるラウドスピーカーの振動板は筒形形状から引出されることができ、その上で、セグメントの数にふさわしい数のエッジが折り込まれる。この点において、図に示される花弁が実現される。このようにして作られた振動板は、折り込まれたエッジで半径方向に動かされると、その直径と表面を容易に変化することができると共に、その中に閉じ込められた空気の体積をこれによって変化することができる。
【0053】
エヤーギャップの中へ延びるフラップに属するケーブル構造が、エヤーギャップ毎に、又はエヤーギャップの対毎に一対の接続ケーブル部を備えると、好都合である。この場合には、個々のフラップ又は対のフラップは、他のフラップから独立して制御されることが可能である。ケーブル構造が単一の共通対の接続ケーブル部を備える実施形態もまた、可能である。
【0054】
この後者の構造は、振動板のセグメントが可撓性プリント配線板から作られている実施形態において特に好都合である。この場合、ケーブル構造つまりプリント配線板のケーブルパターンは、フラップを形成する接着箇所において適当なケーブルストランドが互いに連結するように、プリント配線板上で実現できる。その結果、プリント配線板上で完全な振動板ケーブル構造が先んじて作成され、都合のよいことに、単一の共通対の接続ケーブル部が完全なケーブル構造に属する。もし、両面プリント配線板が使用されると、個々のフラップにおいて4つのケーブルストランド層が実現され、それによってラウドスピーカーはさらに高感度に作られる。多層プリント配線板を用いることによって、ラウドスピーカーの感度をさらに増大させることができる。
【0055】
一対の接続ケーブル部が、コイル内に配置されるケーブルストランドにより、各対のエヤーギャップに対して作られると、電流はエヤーギャップの中を反対方向に流れる。しかしながら、同じ強度のエヤーギャップ対の力における磁気構造(逆極性)の適当な組立てにより、放射状に内側に又は外側に向くすべてのものは、個々のフラップに働くので、振動板はどこでも同じ放射状の力によって動かされる。そのような構造の例は、図8〜11に見られる。
【0056】
ケーブル構造を組み立てるとき、一対の接続ケーブル部のケーブルストランドの遊びが保証されると好都合である。もし、ケーブルストランドに遊びがない場合、それらの共振周波数が伝達周波数範囲を超えていると、それらはこの発明によるラウドスピーカーの作動に影響を与えない。ケーブル構成を形成するケーブルストランドは、特に一対の接続ケーブル部において、それらの破損を防止する可撓性の被覆を備える。
【0057】
可撓性保持部材は、いくつかの異なる方法で組み立てることができる。可撓性保持部材の組み立てる観点から、それらが振動板上で作られたフラップに接続されることが重要である。可撓性保持部材は、それらがラウドスピーカーの作動に必要なフラップの自由な動きが可能なように組み立てられる。同時に、保持部材は無負荷状態の休止位置へ振動板を戻すことができる。
【0058】
ケーブル構造と保持部材は、保持部材がケーブルストランド自体によって、およびそれらによって作られたケーブルの束によって形成されるように組み立てられると、好都合である。そのような振動板のつり下げは、例えば図813に示す実施形態の場合に、好都合である。
【0059】
振動板は回転対称に組立てられると好都合である。これによって、好ましくない低調波の出現につながる振動板の自由振動が回避できる。
【0060】
弾性のフランジが振動板の動きを妨げない柔軟なゴムから作られると、好都合である。例えば、弾性のフランジは、平坦なシートの形状を有するときに、振動板に一様に固定又は接着される。
【0061】
自明なことであるが、この発明は、詳細に記述された好ましい実施形態に限定されず、さらなる改造、組合せ、変形および拡張が特許請求の範囲によって定められる保護範囲内で可能である。
【0062】
符号のリスト
10 セグメント
10' セグメント
10'' セグメント
10''' セグメント
10'''' セグメント
11 耳(フラップ)
11' 耳(フラップ)
11'' 耳(フラップ)
11''' 耳(フラップ)
11'''' 耳(フラップ)
12 磁気構造
13 エヤーギャップ
14 支持構造体要素
15 開口
16 固定要素
17 凹部
18 平板
20 平板
23 エヤーギャップ
24 保持部材
26 接続ケーブル部
28 平板
30 指
32 分離磁石
34 弾性フランジ
36 スペーサ要素
38 弾性フランジ
40 平板
41 エヤーギャップ
42 支持構造体要素
43 支持構造体要素
44 支持構造体要素
46 固定要素
47 エヤーギャップ
48 支持構造体要素
49 エヤーギャップ
50 平
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13