(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914718
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】発振器を有する時間ベース、周波数分割回路及びクロックパルス抑制回路
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20160422BHJP
G06F 1/08 20060101ALI20160422BHJP
H03K 23/64 20060101ALI20160422BHJP
H03L 7/00 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
H03B5/32 E
G06F1/08
H03K23/64 D
H03K23/64 F
H03L7/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-39886(P2015-39886)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2015-171151(P2015-171151A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】14158103.3
(32)【優先日】2014年3月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596162740
【氏名又は名称】イーエム・ミクロエレクトロニク−マリン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・ゴダ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ジャンネ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・クロプフェンスタイン
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−051869(JP,A)
【文献】
特開昭51−022359(JP,A)
【文献】
特開2010−011389(JP,A)
【文献】
特開平06−082577(JP,A)
【文献】
特開平10−020052(JP,A)
【文献】
特開2000−315121(JP,A)
【文献】
特開2003−232876(JP,A)
【文献】
特開2002−374231(JP,A)
【文献】
特開平07−311289(JP,A)
【文献】
米国特許第05748570(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
G06F 1/08
H03K 23/64
H03L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準値よりも高い固有周波数を有する周期的信号(Sp)を生成する発振器(4)と、
いくつかの分割ステージ(1〜X)を定める分割チェーンによって形成され、入力において、周期的信号を受信し、出力において、被分割周波数の少なくとも1つのクロック信号(Scl1、Scl2)を運ぶような周波数分割回路(10)と、
複数の連続的な抑制期間の各抑制期間において、分割チェーンの所与のステージの入力において整数個のクロックパルス(Ninh)を抑制することによって機能する被分割周波数調整回路(16)とを有する時間ベース(2)であって、
当該時間ベースは、各抑制期間において、所定のクロック周波数と、前記所与のステージをクロックするための基準周波数との間の差を乗算した前記抑制期間に対応する第1の実数(Nct)を作るように構成し、
前記所定のクロック周波数は、前記所与のステージよりも前の分割ステージ、又は前記所与のステージが分割チェーンの最初のステージである場合には発振器によって作られ、 前記調整回路は、各抑制期間において、第2の実数を計算するように構成し、
前記第2の実数は、第1の抑制期間において前記第1の実数と等しく、そして、その後の抑制期間それぞれにおいて前記第1の実数と前の抑制期間において得られた第2の実数の小数部との和と等しく、
各抑制期間において抑制される前記整数個のクロックパルス(Ninh)は、前記抑制期間に計算された前記第2の実数の整数部によって与えられる
ことを特徴とする時間ベース。
【請求項2】
前記基準値は、32,768であり、
前記分割チェーンは、2による除算のチェーンであり、
前記所与のステージは、前記分割チェーンの第2のステージであり、
前記基準周波数は、16,384Hzである
ことを特徴とする請求項1に記載の時間ベース。
【請求項3】
各抑制期間は、持続時間が1秒であり、
前記持続時間は、前記所与のステージの下流の当該時間ベースによって運ばれたクロック信号(Sinh)によって定められる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の時間ベース。
【請求項4】
各抑制期間は、持続時間が1秒未満であり、
前記持続時間は、前記所与のステージの下流の当該時間ベースによって運ばれるクロック信号によって定められる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の時間ベース。
【請求項5】
当該時間ベースは、前記所与のステージとこの所与のステージの下流の分割ステージのいずれかから前記分割チェーンとは異なる複数の分割ステージのそれぞれの出力によって生成される複数の被調整クロック信号を運ぶように構成した
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに1項に記載の時間ベース。
【請求項6】
前記第1の実数(Nct)及び前記第2の実数は、2つの対応するレジスター(22、26)においてロードされ、これにおいて、各レジスターは、小数部のために少なくともNビットを有し、
前記第1の実数は、当該ロード時点の後に数Nの精度で決められ、
数Nは5よりも大きい
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の時間ベース。
【請求項7】
前記第1の実数(Nct)及び前記第2の実数は、2つの対応するレジスターにそれぞれロードされ、小数部のために少なくともNビットをそれぞれ有し、
前記第1の実数は、当該ロード時点の後に数Nの精度で決定され、
数Nは10以上である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに1項に記載の時間ベース。
【請求項8】
時間ベース(2)によって作られた少なくとも1つのクロック信号の周波数を調整する方法であって、前記時間ベースは、
基準値よりも高い固有周波数を有する周期的信号を生成する発振器(4)と、
いくつかの分割ステージを定める分割チェーンによって形成され、入力において、周期的信号を受信し、出力において、被分割周波数の少なくとも1つのクロック信号を運ぶような周波数分割回路(10)と、
複数の連続的な抑制期間の各抑制期間において、分割チェーンの所与のステージの入力において整数個のクロックパルスを抑制することによって機能する被分割周波数調整回路(16)とを有し、
A)各抑制期間において、抑制期間に、所定のクロック周波数と前記所与のステージをクロックする基準周波数との間の差を乗算した値に対応する第1の実数を用意するステップであって、前記クロック周波数は、前記所与のステージが分割チェーンの最初のステージである場合に前記所与のステージよりも前の分割ステージ、又は発振器によって、作られるようなステップと、
B)各抑制期間において、第2の実数を計算するステップであって、この第2の実数は、第1の抑制期間においては第1の実数と等しく、その後の各抑制期間においては前記第1の実数と前の抑制期間に対して得られた当該第2の実数の小数部との和と等しいようなステップと、及び
C)各抑制期間において、前記抑制期間において計算された前記第2の実数の整数部の分を抑制するステップとを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記基準値は、32,768であり、
前記分割チェーンは、2による除算のチェーンであり、
前記所与のステージは、前記分割チェーンの第2のステージであり、
前記基準周波数は、16,384Hzである
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各抑制期間は、持続時間が1秒であり、
前記持続時間は、前記所与のステージの下流の前記時間ベースによって運ばれたクロック信号によって定められる
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
各抑制期間は、持続時間が1秒未満であり、
前記持続時間は、前記所与のステージの下流の前記時間ベースによって運ばれたクロック信号によって定められる
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記時間ベースは、前記所与のステージと前記所与のステージの下流の前記分割ステージのいずれかから、前記分割ステージとは異なる複数の分割ステージの出力によって生成された複数の被調整クロック信号を運ぶように構成する
ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の実数及び前記第2の実数は、小数部に対して少なくともNビットをそれぞれ有する2つの対応するレジスターにロードされ、
前記第1の実数点は、当該ロード時点の後に数Nの精度で決定され、
数Nは、5以上である
ことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の実数及び前記第2の実数は、小数部のために少なくともNビットをそれぞれ
有する2つの対応するレジスターにロードされ、
前記第1の実数は、当該ロード時点の後に数Nの精度で決定され、
前記数Nは10以上である
ことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力において発振器、特に、水晶発振器によって生成される周期的信号を受信する周波数分割回路によって周波数が生成されるような一又は複数のクロック信号を提供する時間ベースの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
クロック信号の周波数又はいくつかのクロック信号のそれぞれの周波数を調整する回路が設けられた種類の時間ベースが知られている。この調整回路は、一般的に、分割チェーンにおけるクロックパルス抑制回路によって形成され、この抑制回路は、各抑制期間の分割チェーンにおける1つのステージにおいて特定の整数個のクロックパルスを抑制するように構成している。一般的には、第1の分割ステージにおいてクロックパルスが抑制されて分解能が改善されるように構成している。
【0003】
具体的には、このような時間ベースを備え、周波数F
oscが32
,768Hzの周波数(一般的に、32Hz信号と呼ばれる)よりもわずかに高い周期的信号を水晶発振器が生成するような電子的な計時器用ムーブメントが知られている。周波数分割回路は、2による除算のチェーンで形成される。発振器周波数は、32
,768=2
15であるために選択されていることを理解できるであろう。抑制回路は、例えば、第2の分割ステージに対して、クロック周波数が発振器周波数F
oscを2で除算した値に対応するような第2のステージの入力において、より正確に作用する。このように、基準周波数F
ref=32
,768/2=16
,384を定めることができる。各抑制期間P
inhにおいて抑制されるクロックパルスの整数個N
inhは、一般的に、F
oscdet/2と、F
refと抑制期間P
inhを乗算した値との間の差を丸めた整数値をとることによって得られる。すなわち、(F
oscdet/2−F
ref)・P
inhを単位元まで丸めた値である。ここで、F
oscdetは、周期的信号に対して決められた周波数である。この周波数の決定は、初期測定によって得るか、あるいは発振器周波数の依存性を温度の関数として表す所定の多項式を使用することによって測定温度を考慮に入れて計算によって得られる。このようにして、得られた分解能は、1/(2・F
ref・P
inh)で与えられる。したがって、分解能、したがって時間ベースの精度を長期的に改善するためには、期間P
inhを増加させることが必要であることを理解できるであろう。この状況は、最大の瞬間的エラーがこの期間P
inhに応じて増加するということに起因する第1の課題を引き起こす。この課題は、比較的短い試験期間、例えば、数時間にわたって行われる時間ベースの精度テストにおいて重大となる。また、一般的に各期間P
inhの短い区間において抑制が行われるので、一又は複数のクロック信号がこの短い区間の間で損害を受けることに起因して第2の課題が発生する。このようにして、各抑制期間において、調整されていない周波数の信号があり、例えば、抑制期間の終わりにおいて、意図した整数のクロックパルスが抑制され、この抑制中にクロック信号が周期的信号を提供するのを止める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分解能が非常に高く、同時に最大の瞬間的エラーが低いような時間ベースを提供することによって、従来技術の前記課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、請求項1に記載の時間ベース、及び請求項8に記載の少なくとも1つのクロック信号の周波数を調整する方法に関する。
【0006】
添付図面を参照しながら本発明を下記で例(これに限定されない)として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、様々な機能ブロックを備えた本発明に係る時間ベースの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の時間ベースの少なくとも1つのクロック信号の周波数を調整する回路のアーキテクチャについての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び
図2を参照して、本発明に係る時間ベースを下記に説明する。この時間ベース2は、
− 基準値よりも高い固有周波数F
oscを有する周期的信号S
pを生成する発振器4と、
− いくつかの分割ステージ(1、2、3、…、X−1、Xとして参照する)を定める分割チェーンで形成される周波数分割回路10であって、入力において周期的信号S
pを受信し、分割された周波数を有する少なくとも1つのクロック信号S
cl1又はS
cl2を出力において運ぶ前記周波数分割回路と、
− 複数の連続的な抑制期間の各抑制期間P
inhにおいて、分割チェーンの所与のステージ14の入力において整数個N
inhのクロックパルスを抑制することによって機能する被分割周波数調整回路16とを有する。
【0009】
本発明によると、時間ベースは、各抑制期間P
inhにおいて、抑制期間P
inhに、所定のクロック周波数F
ctと所与のステージをクロックするための基準周波数F
refの間の差を乗算した値に対応する第1の実数N
ctを作るように構成している。この所定のクロック周波数F
ctは、所与のステージ14よりも前の分割ステージ又は所与のステージが分割チェーンの最初のステージである場合は発振器によって作られるものである。すなわち、第1の実数N
ctは、次の数式で与えられる。
N
ct=P
inh・(F
oscdet−F
oscref)/K
Div (1)
ここで、F
oscdetは、発振器4によって作られる周期的信号S
pの所定の周波数、F
oscrefは、発振器周波数の基準値、K
Divは、周波数分割回路10の入力と、クロックパルス抑制が発生する分割チェーンの所与のステージの入力の間の分割係数である。したがって、F
ct=F
oscdet/K
Div、かつ、F
ref=F
oscref/K
Divである。所与のステージが分割チェーンの最初のステージ12であるような第1の変種においては、K
Div=1である。所与のステージが2による除算のチェーンの第2のステージ14であるような第2の変種においては、K
Div=2である。
【0010】
次に、被分割周波数調整回路16は、各抑制期間において(n=1、2及び3、…など)、第2の実数NB
nを計算するように構成する。これは、第1の抑制期間(n=1)において、第1の実数N
ct(したがって、NB
1=N
ct)と等しく、そして、後の抑制期間それぞれにおいて、この第1の実数と、前の抑制期間に得られた第2の実数NB
n-1の小数部との和と等しい。各抑制期間に抑制される整数の数のクロックパルスは、その抑制期間において計算した第2の実数NB
nの整数部によって与えられる。
【0011】
図1に示す変種において、発振器4は、デジタル周期的信号S
pを提供する電子回路8に関連づけられた水晶振動子6で形成される。第1の実数は、電子ユニット18によって作られ、これは、単純な変種において、初期には実数が導入されるメモリーによって形成することができる。以下に説明するより高度な変種では、電子ユニット18は、特定の計算を行うことができる電子回路、あるいはマイクロプロセッサーである。
【0012】
なお、
図1において、抑制信号N
inhが周波数分割回路の第2のステージ14に運ばれる。しかし、これは単に好ましい変種であって、本発明を限定するものではない。なお、本発明の説明を単純化するために、抑制信号を、抑制期間当たりに抑制される整数個N
inhのクロックパルスによって参照する。また、
図1において、2つのクロック信号S
cl1及びS
cl2が周波数分割回路の出力において示されており、第1のクロック信号S
cl1が分割チェーンの端において作られており、これに対して、第2のクロック信号S
cl2は、X個の分割ステージを有する分割チェーンの最後から2番目のステージX−1によって作られることに留意すべきである。この例によって本発明が限定されることはない。実際に、変種の1つにおいて、時間ベースは、単一のクロック信号を運ぶことができ、別の変種では、2つよりも多くのクロック信号を運ぶことができる。また、抑制が行われる分割ステージの下流の分割ステージのいずれの出力においても、その所与の分割ステージの出力でさえも、クロック信号が作られるように構成することもできる。
【0013】
発振器周波数の温度依存性が考慮に入れられない場合には、第1の実数N
ctは、初期には前記で与えられた数式(1)を使用して計算され、発振器周波数F
oscdetの測定が続く。その後、N
ctが時間ベースのメモリーに入力される。好ましい変種においては、時間ベースに関連づけられた温度センサーによって温度が周期的に測定され、温度依存性が、特に次の種類の多項式で与えられる。
N
ct=a(T−T
0)
4+b(T−T
0)
3+c(T−T
0)
2+d(T−T
0)+N
ct(T
0) (2)
【0014】
例えば、T
0=20°を選ぶことができる。発振器周波数F
oscdetは、20°で測定され、N
ct(20°)が数式(1)を使用して計算される。多項式(2)のパラメーターa、b、c及びdの値については、2つの手法を想起することができる。これらのパラメーターは、水晶振動子6についての理論的又は経験的な測定及び/又は知識に基づいて、発振器のバッチ群のために決定され、バッチの時間ベースすべてにおいて初期に入力されるか、あるいはいくつかの周波数測定が様々な温度で各発振器4に対して行われ、このようにして、各発振器に対してパラメーターが計算され、各時間ベースに入力される。各抑制期間に対して温度Tを再び測定することができるが、温度が通常ゆっくり変わるため、及びエネルギーの節約のために、温度Tの測定の期間は、一般的に、抑制期間よりも大きい。
【0015】
水晶振動子を用いる変種によると、基準値F
oscrefは、32.768であり、分割チェーンは2による除算のチェーンである。抑制が行われるステージは、分割チェーンの第2のステージ14であり、したがって、基準周波数F
refは16.384Hzである。
【0016】
別の変種によると、各抑制期間P
inhは、持続時間が1秒であり、この持続時間は、クロック信号S
inhによって定められる。これは、分割チェーンの抑制ステージの下流の周波数分割回路10によって調整回路16に運ばれるものである。最後の分割チェーンXがトップセカンドを運ぶ場合、信号S
inhは、ここでは
図1に示すクロック信号S
cl1である。
【0017】
別の変種によると、各抑制期間P
inhは、持続時間が1秒未満であり、この持続時間は、分割チェーンの抑制ステージの下流の周波数分割回路10によって調整回路16に運ばれるクロック信号S
inhによって定められる。2による除算のチェーンの場合には、持続時間は、好ましくは、1/2
y秒である。ここで、yは、1以上の整数である。このようにして、調整回路に運ばれるクロック信号S
inhは、2
yHzの周波数の被調整クロック信号を運ぶ周波数分割回路によって直接生成される。
【0018】
以上に言及した変種によると、時間ベースは、周波数分割回路10の分割チェーンと異なる複数の分割ステージの対応する出力によって生成された複数の被調整クロック信号を生成するように構成し、この複数のステージは、抑制ステージ及びその抑制ステージの下流の分割ステージの中から選択される。
【0019】
図2に示す被分割周波数調整回路16の1つの実施形態によると、前記で定められる第1の実数N
ct及び第2の実数は、2つのレジスター22及び26にそれぞれロードされる。これらの2つのレジスターは、それぞれ小数部用に少なくともNビットを有し、ここで、Nは、1よりも大きな整数である。したがって、第1の実数N
ctは、当該ロード時点の後に数Nの数の精度で決定される。第1の変種において、数Nは、5よりも大きい。第2の好ましい変種において、数Nは、10以上である。
【0020】
各抑制期間において、レジスター26にある第2の実数の整数部は、フリップフロップ30を介して周波数分割回路に運ばれる。これは、抑制ステージにおいてクロックパルスの対応する数を抑制することによって、当該データを正確に処理するように構成する。レジスター26の小数部は、バッファメモリーを形成するレジスター24においてフリップフロップ28を介して転送される。レジスター26の整数部及び小数部がクロック信号S
inhを受信した際に転送されると、レジスター24にある剰余値がレジスター22における数N
ctに加えられ、この加算の結果が、またレジスター26に入力される。次のクロック信号S
inhに対して、上に示すように、レジスター26の整数部及び小数部が再び転送され、その後の抑制期間についても同様である。このようにして、実数N
ctの小数部が、各抑制期間において、前の抑制期間の小数部の積算された合計に加えられ、積算された合計が1以上の値に達すると毎回、レジスター26の整数部が1単位分増やされる。したがって、次のクロック信号S
inh上の抑制されたクロックパルスの数は、1単位分増やされる。
【0021】
本発明の特徴の結果、時間ベースによって運ばれるクロック信号の高い分解能を実現しつつ、最大の瞬間的エラーを低く抑えることができる。なぜなら、分解能はもはや抑制期間だけに依存するわけではなく、第1及び第2の実数の小数部レジスターの大きさにも依存するからである。実際に、本発明に係る時間ベースにおいて、分解能Rは、次によって与えられる。
R=(1/P
inh)・(1/F
ct)・(1/2
N)
ここで、Nは、対応するレジスター22及び26における第1及び第2の実数の小数部のために用意されるビットの数であり、F
ctは、周波数分割器における抑制ステージのクロック周波数であり、P
inhは、抑制期間である。したがって、分解能を非常に高くすることができることが明らかである。すなわち、Rは非常に小さい。
【0022】
本発明は、さらに、上記のような時間ベースによって作られる少なくとも1つのクロック信号の周波数を調整する方法に関する。一般的には、この時間ベースは、
− 基準値よりも高い固有周波数を有する周期的信号を生成する発振器と、
− いくつかの分割ステージを定める分割チェーンによって形成され、入力において、周期的信号を受信し、出力において、被分割周波数の少なくとも1つのクロック信号を運ぶような周波数分割回路と、
− 複数の連続的な抑制期間の各抑制期間において、分割チェーンの所与のステージの入力において整数個のクロックパルスを抑制することによって機能する被分割周波数調整回路とを有する。
【0023】
本発明に従って少なくとも1つのクロック信号の周波数を調整する方法は、
A)各抑制期間P
inhにおいて、抑制期間P
inhに、所定のクロック周波数と前記所与のステージをクロックする基準周波数との間の差を乗算した値に対応する第1の実数N
ctを用意するステップであって、前記クロック周波数は、前記所与のステージが分割チェーンの最初のステージである場合に前記所与のステージよりも前の分割ステージ、又は発振器によって、作られるようなステップと、
B)各抑制期間において、第2の実数を計算するステップであって、この第2の実数は、第1の抑制期間においては第1の実数N
ctと等しく、その後の各抑制期間においては前記第1の実数と前の抑制期間に対して得られた当該第2の実数の小数部との和と等しいようなステップと、
C)各抑制期間において、前記抑制期間において計算された前記第2の実数の整数部の分を抑制するステップとを有する。
【符号の説明】
【0024】
2 時間ベース
4 発振器
6 水晶振動子
8 電子回路
10 周波数分割回路
14 ステージ
16 被分割周波数調整回路
18 電子ユニット
22、24、26 レジスター