特許第5914720号(P5914720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許5914720-樹脂の成形加工機 図000002
  • 特許5914720-樹脂の成形加工機 図000003
  • 特許5914720-樹脂の成形加工機 図000004
  • 特許5914720-樹脂の成形加工機 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5914720
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】樹脂の成形加工機
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/40 20060101AFI20160422BHJP
   B29C 45/62 20060101ALI20160422BHJP
   B29C 47/38 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B29B7/40
   B29C45/62
   B29C47/38
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-56234(P2015-56234)
(22)【出願日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】富山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−312728(JP,A)
【文献】 特開2014−037147(JP,A)
【文献】 特開平11−300811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00− 7/94
B29C 45/00−45/84
B29C 47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸を有するシリンダと、前記シリンダに収容された、前記シリンダと同軸のスクリュと、を有し、
前記シリンダは前記スクリュの側面と対向するスクリュ対向部を有し、前記スクリュ対向部の少なくとも一部は透明であり、
前記スクリュ対向部は前記長手軸の周りを回転可能である、樹脂の成形加工機。
【請求項2】
前記スクリュ対向部は、前記スクリュが停止しているとき回転可能である、請求項1に記載の樹脂の成形加工機。
【請求項3】
前記スクリュは少なくとも一方向に回転可能であり、前記スクリュ対向部は、前記一方向のスクリュの回転方向と逆方向に回転可能である、請求項1または2に記載の樹脂の成形加工機。
【請求項4】
前記シリンダは、前記長手軸の方向における前記スクリュ対向部の両端部と対向し回転不能な2つの固定部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂の成形加工機。
【請求項5】
前記固定部の一方は前記シリンダから液体を回収する液体回収口を有し、他方は前記シリンダに前記液体を循環させる液体循環口を有し、
前記液体循環口と前記液体回収口とを接続する循環流路を有している、請求項4に記載の樹脂の成形加工機。
【請求項6】
前記固定部は、前記長手軸の方向における前記固定部の側面で前記スクリュ対向部を回転可能に支持する第1の軸受と、前記長手軸の方向における前記固定部の端面で前記スクリュを回転可能に支持する第2の軸受と、を有している、請求項4または5に記載の樹脂の成形加工機。
【請求項7】
前記シリンダの回転数及び回転時間、並びに前記スクリュの回転数及び回転時間を制御可能な制御部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂の成形加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂の成形加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の成形加工、例えば押出成形においては、円筒状のシリンダにスクリュが挿入された押出機が使用される。押出機を回転することで固体樹脂が溶融可塑化され、その後必要に応じて樹脂を混練することで、所望の品質を有する溶融樹脂が吐出される。所定の形状のスクリュにおける樹脂の溶融可塑化状態あるいは樹脂の混練状態を把握・評価するためには、吐出された樹脂の品質評価を行うことが一般的である。一方、シリンダ内の樹脂の挙動を直接把握することが望まれる場合もある。その場合、シリンダの内部は目視確認が行えないため、目視確認を可能とする何らかの構成が必要となる。
【0003】
非特許文献1には、上下二分割が可能なシリンダを有する押出機が開示されている。運転時に押出機を急停止し、上半のシリンダを取り外すことで、シリンダ内の樹脂の溶融可塑化状態を観察することができる。この装置では、押出機の実際の運転状態、すなわちスクリュが回転しながら樹脂が可塑化していく状態を動的に観察することができない。
【0004】
非特許文献2には、サイドガラスを設けた二軸押出機が開示されている。シリンダの側壁に透明なガラスが設けられている。押出機内でスクリュが回転する際に樹脂が可塑化され、混練される挙動を、サイドガラスを通して動的に観察することができる。
【0005】
非特許文献3には、透明なアクリル樹脂からなるシリンダを備えた、二軸スクリュ方式の混練機が開示されている。この混練機ではスクリュの全周を観察することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】溝口光明、「押出機中の樹脂の溶融挙動」、日本製鋼所技報、1972年3月、第32号、p.3−8
【非特許文献2】酒井忠基、「押出成形技術の歴史と今後の展望」、成形加工、2005年4月、第17巻、第4号、p.216−223
【非特許文献3】酒井忠基、「二軸スクリューミキシングエレメント部における流れ挙動の観察」、高分子論文集、1981年4月、第38巻、第4号、p.279−284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1〜3に記載されている成形加工機によれば、スクリュが停止した直後の、またはスクリュが回転する際のシリンダ内部の樹脂の流動状態を知ることができる。しかし、回転するスクリュの表面の流動状態の評価、あるいはスクリュの特異的な形状、部位がシリンダ内部の流動状態にどのような影響を与えているかについての詳細な流動メカニズムの評価を行うことは困難である。それはスクリュが回転することが前提の成形加工機においては、スクリュ表面の樹脂の流動状態を定点観察することができないためである。
【0008】
本発明は、スクリュ表面の流動状態を定点観察することが可能な樹脂の成形加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂の成形加工機は、長手軸を有するシリンダと、シリンダに収容された、シリンダと同軸のスクリュと、を有している。シリンダはスクリュの側面と対向するスクリュ対向部を有し、スクリュ対向部の少なくとも一部は透明である。スクリュ対向部は長手軸の周りを回転可能である。
【0010】
本発明では、シリンダのスクリュ対向部は長手軸の周りを回転可能である。シリンダ内部の流動状態はシリンダが回転することで模擬される。シリンダが回転しているとき、スクリュは停止することができ、または低速で回転することができるため、スクリュ対向部の透明な部分を通してスクリュを定点観測することが容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スクリュ表面の流動状態を定点観察することが可能な樹脂の成形加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の成形加工機の全体を示す概略図である。
図2】本発明の成形加工機の固定部を示す断面図である。
図3】本発明の成形加工機の制御の流れを示す概略図である。
図4】本発明の成形加工機における定点観測の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の樹脂の成形加工機の実施形態を説明する。以下の実施形態は試験用の押出機を対象とするが、本発明は実機の押出機に適用することも可能であり、さらにはシリンダとスクリュを有する樹脂の成形加工機に広く適用することができる。図1(a)は、単軸スクリュ型の押出機の上面図、図1(b)は側面図を示している。
【0014】
成形加工機1は、長手軸Cを有するシリンダ2と、シリンダ2に収容された、シリンダ2と同軸の一軸のスクリュ3と、を有している。シリンダ2は架台6の上に設置されている。シリンダ2は、長手軸Cの側方ないしスクリュ3の側面3aでスクリュ3と対向するスクリュ対向部4と、長手軸Cと平行な長手方向Lにおけるスクリュ対向部4の両端部と対向する2つの固定部(以下、第1の固定部5a、第2の固定部5bという)と、を有している。スクリュ対向部4は長手軸Cの周りを回転可能である。第1及び第2の固定部5a,5bは長手軸Cの周りの回転が固定されており、回転することができない。
【0015】
本実施形態では、スクリュ3のほぼ全域は、混練部に対応した混練エレメントで形成されている。他の実施形態では、スクリュ3は実機と同様、輸送部、ゲート部に対応する形状をさらに備えることができる。図4に示すように、混練エレメントは所定の溝を有している。
【0016】
シリンダ2のスクリュ対向部4はアクリルなどの透明な材料で形成されている。スクリュ対向部4は全面が透明であり、シリンダ2の内部とスクリュ3をシリンダ2の全周から透視することができる。スクリュ対向部4の一部にアクリル、ガラスなどの透明な窓を設け、シリンダ2の内部とスクリュ3を透視できるようにしてもよい。さらに定点観測のためにスクリュ対向部4にカメラ、ビデオカメラなどの撮像装置を取り付けてもよい。
【0017】
成形加工機1は、スクリュ3を回転させるスクリュ用モータ8と、シリンダ2のスクリュ対向部4を回転させるシリンダ用モータ9と、を有している。これらのモータ8,9は架台6の上に設置されている。スクリュ用モータ8はカップリング10を介してスクリュ3に連結されている。シリンダ用モータ9はギア10,11(詳細は図2参照)を介してスクリュ対向部4に連結されている。第1及び第2の固定部5a,5bはシリンダ用モータ9に連結されておらず、シリンダ用モータ9が回転するときに回転しない。本実施形態では、シリンダ2が停止した状態でスクリュ3を回転することはもとより、スクリュ3が停止した状態で、シリンダ2のスクリュ対向部4をスクリュ3の回転方向と同方向または逆方向に回転させることができる。スクリュ3が回転した状態で、シリンダ2のスクリュ対向部4をスクリュ3の回転方向と同方向または逆方向に回転させることもできる。
【0018】
シリンダ2の内部には、常温で液体状態のシリコンオイルが供給される。シリコンオイルは溶融状態の樹脂を模擬している。実機ではスクリュ3が回転することで溶融樹脂が混練され、一方向に押し出される。本実施形態ではスクリュ対向部4は、スクリュ3の回転方向と逆方向に回転することが可能である。シリンダ2のスクリュ対向部4が逆方向に回転することで、溶融樹脂を模擬したシリコンオイルが、スクリュ3が回転した場合と同じ方向に押し出される。スクリュ3が回転する場合と、シリンダ2がスクリュ3の回転方向と反対方向に回転する場合とでは、溶融樹脂ないしシリコンオイルを搬送し、吐出させるメカニズムが実質的に同一である。このため、スクリュ3が停止した状態で流動するシリコンオイルを観察することは、実際のプロセスとほぼ同一の挙動を捉えていることになる。スクリュ3が停止した状態でシリンダ2を回転させることによって、スクリュ3の表面を移動する流体の挙動が観測できるため、実際にスクリュ3が回転しながら混練が促進されていく様子を定点で動的に観察できる。
【0019】
第2の固定部5bはシリンダ2からシリコンオイルを回収する液体回収口13を有し、第1の固定部5aは液体回収口13から回収されたシリコンオイルをシリンダ2に循環させる液体循環口12を有している。これらの液体循環口12と液体回収口13は循環流路14で接続されている。スクリュ3は一般的に、回転することで、液体を軸方向に搬送する推進力を発生させる。その推進力によって押し出されたシリコンオイルは、液体回収口13を出て、循環流路14を通り、再び液体循環口12からシリンダ2の内部に供給される。これによって、連続的な流体の循環状態が観察可能となり、実際のプロセスで樹脂が連続的に供給され、混練され押し出される様子を模擬することができる。循環流路14には開閉バルブ15が設けられている。何らかの意図でシリコンオイルを循環させずにシリンダ2の内部を観察する場合には、開閉バルブ15を閉じることでそのような観察が可能となる。第1の固定部5aには、シリコンオイルをシリンダ2に供給するための液体供給口16が設けられている。
【0020】
図示は省略するが、架台6にはスクリュ用モータ8とシリンダ用モータ9の起動ボタン、各モータ8,9の回転方向設定ボタン、各モータ8,9の回転数を設定するためのインバータ、各モータ8,9の回転時間を設定するタイマー、非常停止ボタンなどが設置されている。シリンダ2及びスクリュ3の駆動、停止などの動作は、成形加工機1の制御部を構成するシーケンサ(制御回路)によって、任意に設定した条件で制御することができる。
【0021】
図2(a)は、図1のA部(第1の固定部5aの近傍)の拡大図を、図2(b)は、図1のB部(第2の固定部5bの近傍)の拡大図を示している。便宜上、図2(a)には液体循環口12と液体供給口16を図示している。
【0022】
図2(a)を参照すると、第1の固定部5aはスクリュ3の端部近傍の側面を覆うハウジングないしカバーの形態を有している。第1の固定部5aの長手軸Cと直交する端面17aに、スクリュ3が貫通する第1の貫通孔18が形成されている。第1の貫通孔18に隣接して第2の軸受22が設けられ、スクリュ3は第2の軸受22の内周面で回転可能に支持されている。図2(a)には図示しないが、スクリュ3の端部はカップリング10を介して、スクリュ用モータ8に連結されている。
【0023】
第1の固定部5aの側面には円周溝25が設けられ、第1の軸受21が装着されている。シリンダ2のスクリュ対向部4は第1の軸受21の内周面で回転可能に支持されている。スクリュ対向部4の外側側面には第1のギア10が取り付けられている。第1のギア10はシリンダ用モータ9の出力軸20に連結された第2のギア11と噛み合っており、シリンダ用モータ9の回転駆動力は第2のギア11、第1のギア10を介してシリンダ2のスクリュ対向部4に伝達される。シリンダ用モータ9の出力軸20はシリンダ2の長手軸Cと平行に設けられている。
【0024】
シリンダ2のスクリュ対向部4の外径は端部で若干小さくされており(図2(a)のC部)スクリュ対向部4の外面には段差が設けられている。第1のギア10は段差と当接しており、第1のギア10の段差の反対側の面は、第1の固定部5aに隣接するブッシュ26で長手方向Lに拘束されている。ブッシュ26は第1のギア10が長手方向Lに動くことを防止するとともに、シリンダ用モータ9から第1のギア10を介して伝達される駆動力をシリンダ2のスクリュ対向部4に確実に伝達する。シリンダ2の回転時には、シリンダ2のスクリュ対向部4とブッシュ26が、第1のギア10とともに回転する。第1の軸受21のブッシュ26と対向する側にはOリング27が設けられており、シリンダ2内のシリコンオイルがシリンダ2外に漏えいすることが防止される。
【0025】
図2(b)を参照すると、第2の固定部5bはスクリュ3の端部近傍の側面を覆うハウジングないしカバーの形態を有している。第2の固定部5bの長手軸Cと直交する端面17bには、スクリュ3が貫通する第2の貫通孔19が形成されている。第2の貫通孔19に隣接して第4の軸受24が設けられ、スクリュ3は第4の軸受24の内周面で回転可能に支持されている。
【0026】
第2の固定部5bの側面には凹部28が設けられ、第3の軸受23が装着されている。シリンダ2のスクリュ対向部4は第3の軸受23の内周面で回転可能に支持されている。シリンダ2のスクリュ対向部4は第1の軸受21と第3の軸受23で両端を回転可能に支持され、同様にスクリュ3は第2の軸受22と第4の軸受24で両端を回転可能に支持されている。これにより、スクリュ対向部4とスクリュ3の回転時の軸振れが抑制される。
【0027】
図3に、上述した各種設定ボタンの操作方法と成形加工機1の制御方法をフローチャートで示す。シリンダ2の回転数と回転時間、スクリュ3の回転数と回転時間などの制御は、設定ボタンとシーケンサを備える制御部によって実行される。
【0028】
まず、スクリュ回転設定ボタンでスクリュ3の回転方向を設定する(ステップS1)。回転方向は、通常は実機の樹脂の押出方向と一致する方向に設定されるが、逆方向に設定することもできる。次に、シリンダ回転設定ボタンでシリンダ2の回転方向を設定する(ステップS2)。通常は、スクリュ2の回転方向と逆方向の回転方向に設定される。次に、連続運転か、タイマー運転かを選択し(ステップS3)、タイマー運転を選択した場合、スクリュ用モータ8とシリンダ用モータ9の稼働時間(回転時間)をそれぞれ設定する(ステップS4,S5)。連続運転を設定した場合、スクリュ用モータ8のインバータでスクリュ3の回転速度を、シリンダ用モータ9のインバータでシリンダ2の回転速度をそれぞれ設定する(ステップS6,S7)。
【0029】
次にモータ切り替えスイッチで、スクリュ3のみを回転させるか、シリンダ2のみを回転させるかを選択する(ステップS8)。スクリュ3のみを回転させることを選択した場合、シリンダ用モータ9のインバータの信号を遮断し(ステップS9)、シリンダ2のみを回転させることを選択した場合、スクリュ用モータ8のインバータの信号を遮断する(ステップS10)。スクリュ3とシリンダ2を同時に回転させることもできる。その後、成形加工機1を起動する(ステップS11)。なんらかの非常事態が生じた場合、非常停止ボタンを押して(ステップS12)、成形加工機1を停止させることができる(ステップS13)。
【0030】
ボタン類の選択や設定は全て図3の手順に従う必要はない。例えば、起動ボタンを押しスクリュ3やシリンダ2が回転しているときに、シーケンサで各種設定を変更し、変更された設定条件を即座に成形加工機1の運転に反映させることが可能である。スクリュ用モータ8とシリンダ用モータ9のタイマーは起動時間と停止時間を設定することが可能であり、モータ8,9の間欠運転を連続的に行うことも可能である。このため、スクリュ3とシリンダ2が同時回転するようにモータ切り替えスイッチを設定した状態で、スクリュ3とシリンダ2が交互に起動するように設定することで、シリンダ2だけを一定時間回転させた後に、スクリュ3だけを一定時間回転させることが可能である。
【0031】
次に実施例について説明する。図1の領域Bからスクリュ3を構成する混練エレメントを挿入し、スクリュ3上をどのように液体が流れ、混連が促進されるかを観察した。粘度1×10-3Pa・S(1000cP)のシリコンオイルをシリンダ2内に完全に充填し、さらに粒子径0.2mmのプラスチックパウダーをシリンダ2内に投入した。スクリュ3が停止した状態でシリンダ2だけを62回転/分の回転速度で回転させ、三脚で固定されたビデオカメラで定点撮影を行った。ビデオカメラの映像を画像解析し、混練エレメントの入口から出口までプラスチックパウダーが流動した軌跡を一枚の画像上にプロットした。図4には、このようにして得られたプラスチックパウダーの軌跡を示している。図中の線29がプラスチックパウダーの軌跡である。スクリュ3の混練エレメントを通過する流体は、混練エレメントの表面に形成された溝30の内部をらせん状に循環しながら長手方向Lへ流れ、溝30と溝30の間の境界部(溝30と溝30の間の突起)とシリンダ2の内壁との間の狭小な間隙を高い剪断速度で通過していく様子が確認できた(図中D部)。本実施例では、これまで数値流動解析でのみ予測されていたスクリュ周辺の液体の流動が可視化された。これは、スクリュが停止した状態でシリンダを回転させる本発明の成形加工機を適用したことではじめて明らかとなった事象である。
【符号の説明】
【0032】
1 成形加工機
2 シリンダ
3 スクリュ
4 スクリュ対向部
5a 第1の固定部
5b 第2の固定部
8 スクリュ用モータ
9 シリンダ用モータ
10 第1のギア
11 第2のギア
12 液体循環口
13 液体回収口
14 循環流路
15 開閉バルブ
16 液体供給口
21 第1の軸受
22 第2の軸受
23 第3の軸受
24 第4の軸受
C 長手軸
【要約】
【課題】スクリュ表面の流動状態を定点観察する。
【解決手段】成形加工機1は、長手軸Cを有するシリンダ2と、シリンダ2に収容された、シリンダ2と同軸のスクリュ3と、を有している。シリンダ2はスクリュ3の側面と対向するスクリュ対向部4を有し、スクリュ対向部4の少なくとも一部は透明である。スクリュ対向部4は長手軸Cの周りを回転可能である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4