特許第5914729号(P5914729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914729
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ホウリン酸塩蛍光体及び光源
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/71 20060101AFI20160422BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20160422BHJP
【FI】
   C09K11/71CQF
   H01L33/00 410
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-113132(P2015-113132)
(22)【出願日】2015年6月3日
(62)【分割の表示】特願2013-535361(P2013-535361)の分割
【原出願日】2011年10月19日
(65)【公開番号】特開2015-180745(P2015-180745A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】10188834.5
(32)【優先日】2010年10月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503233336
【氏名又は名称】ロイヒトシュトッフヴェルク ブライトゥンゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ドワン、チュヨン−ジュイン
(72)【発明者】
【氏名】レスラー、スフェン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102134488(CN,A)
【文献】 佐藤夏希他,『白色LED用新規青色蛍光体KMBP2O8:Eu2+(M=Sr、Ba)の開発』,希土類,2010年,1B−12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
H01L 33/00
H01J 61/30− 61/48
H01J 9/20− 9/236
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁スペクトルの第1の波長範囲の放射線を吸収して電磁スペクトルの第2の波長範囲の放射線を放出する蛍光体であって、前記蛍光体がEu2+イオンによって賦活化されたホウリン酸塩であって、下記の一般式によって表わされる蛍光体。
ABa(1−x−z)CaEuBP(ここで、Aは、Li、K及びNaを含んでなる群から選択される少なくとも1つの一価アルカリ金属イオンであり、0<x≦0.1であり、0<z≦0.3である。)。
【請求項2】
AがKであり、その結果、
KBa(1−x−z)CaEuBPの一般式になる、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記第1の波長範囲が250nm〜420nmの範囲である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記第2の波長範囲が可視スペクトル全体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体と前記電磁スペクトルの前記第1の波長範囲の放射線を放出する放射線放出要素とを備えてなる光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光灯、有色光又は白色発光ダイオード、及び特に近紫外放射線の可視光への変換に蛍光体が使用される他の装置等の様々な技術用途に適用することができる効率的な無機ホウリン酸塩蛍光体に関する。更に、本発明は、前記効率的なホウリン酸塩蛍光体を備える光源に関する。
【背景技術】
【0002】
固体照明産業において、波長変換蛍光体材料は、それが嘗て蛍光灯において果たしていたように非常に重要な役割を果たしている。蛍光体変換LED(pc−LED)システム内の白色LED照明は、幾つかの方法によって実現することができる。即ち、最初の方法は、(455nmと465nmとの間の青色光を発光する)InGaN系青色LEDチップを黄色蛍光体、即ちYAG:Ce3+又はEASiO:Eu2+系材料と組み合わせることである。しかしながら、この周知で確立されている方法によって提供される白色LEDは、一般照明に使用される場合には、演色性が乏しく、背面照明に使用される場合には、色域が小さいという不利益を有する。二番目の方法は、青色LEDチップを、単一の黄色発光蛍光体ではなく、緑色発光蛍光体(λmax≒530nm)及び赤色発光蛍光体(λmax>600nm)と組み合わせることである。上記2つの蛍光体は、InGaNチップから青色光を吸収して、それを緑色及び赤色光に変換し、次に、混色によって、演色性が向上して色域が増大した白色光が生成される。しかし、両方の方法において、pc−LEDの最終的な色温度(CCT)及び色座標は、青色LEDチップの発光特性に強く依存する。
その結果、同様のCCTを得るためには、使用可能な青色LEDチップの一部しか使用することができない。三番目の方法は、近紫外線LEDチップと青色、緑色及び赤色発光蛍光体とを使用することである。前2つの方法と比較して、三番目の方法は演色性が改良され、色温度の範囲が広く、更に色座標が独立している。この技術的解決法の不利な点は、3つの異なる蛍光体の経年劣化速度が異なる結果、寿命期間中に色ずれが生じることである。
【0003】
近紫外線源によって励起可能であり、可視光を発光する蛍光体、特に、何らかの他の蛍光体との組合せを必要とせずに白色光を発光することができる単一の蛍光体を提供しようという試みもされている。その発光スペクトルは、3つの原色(青色、緑色及び赤色)で構成され、400nm〜700nmの可視範囲全体に及ぶ。以下に、これらの試みの幾つかを引用する。
【0004】
非特許文献1には、一般式EAMgSi:Eu2+,Mn2+(EA=Sr,Ba)の蛍光体が提示されている。この蛍光体は、422nm、505nm及び620nmにピークを有する3つの発光帯を示す。442nm及び505nmの発光はEu2+イオンに由来し、620nmの発光は、Mn2+イオンに由来する。400nm発光チップをEAMgSi:Eu2+,Mn2+(EA=Sr,Ba)蛍光体と一体化して製造した白色発光ダイオードは、市販されている青色励起YAG:Ce3+と比較して、温かい白色光を発し、入力電力に対して演色評価数が高く、色の安定性が高い。しかし、この白色LEDは、発光効率が低く、長期安定性に乏しい。
【0005】
非特許文献2では、白色発光蛍光体がEAMgSi:Eu2+,Mn2+(EA=Sr,Ba)とEASiO:Eu2+(EA=Ba,Sr)との混合物であることが、証明されている。実際、505nmにピークを有する発光帯は、EAMgSi:Eu2+,Mn2+(EA=Sr,Ba)ではなくEASiO:Eu2+(EA=Ba,Sr)に由来する。
【0006】
非特許文献3には、式SrSiO:Eu,Ceで表わされる系が示唆されている。この系は、効率が低く安定性に乏しい。
【0007】
非特許文献4では、式CaMgSi:Eu,Mnのシステムが示唆されている。
この系も、また、効率が低く安定性に乏しい。
【0008】
非特許文献5には、青色(445nm)、緑色(515nm)及び赤色(624nm)の光を同時に発光することができる単一蛍光体が提示されている。CIE座標は、(0.31,0.34)に位置し、これは標準的な白色発光の(0.33,0.33)に非常に近い。ホスト格子は、有機化合物であるが、このものは高温では、あまり安定ではない。
【0009】
特許文献1は、一定していない組成を有する白色発光非化学量論的化合物を示している。
【0010】
最近、新しい機能材料の探求において、基本的構造単位としてホウ酸塩基及びリン酸塩基の両方を含有するホウリン酸塩も、また、注目を集めている。この20年間に多くのホウリン酸塩が合成され、その構造が同定された。発光に関する限り、作業の大部分は、MBPO(M=Ca,Sr,Ba)、(Ba,Sr)BP12、及び(Ba,Sr)BP20BaBPOホスト格子における希土類イオンの発光特性の研究に集中されてきた。
【0011】
特許文献2は、低圧水銀灯に使用されるBa0.995Eu0.005BPO、Sr0.99Eu0.01BPO等のホウ酸リン酸塩蛍光体を示している。これらのEu2+賦活化MBPO蛍光体は、存在するアルカリ土類金属に応じて385nm〜400nmに最大値を有する、紫外から青色範囲への広い発光帯を示す。
【0012】
特許文献3は、低圧水銀灯に使用する一般式Ba3−pEuBP12のホウリン酸塩蛍光体を示している。これらの蛍光体は、490nm〜520nmの波長範囲に最大値を有する緑色がかった発光を示す。
【0013】
非特許文献6には、470nm〜510nmの波長範囲に青色がかった緑色発光を示すEu2+賦活化(Ba,Sr)BP20蛍光体が示されている。
【0014】
新種のホウリン酸塩、即ちKMBP(M=Ba,Sr)が、Zhaoらによって2009年に発見された(非特許文献7)。現在までに、これらのホスト格子における希土類イオンの発光特性は全く報告されていない。このホスト格子の主要な構造特徴は、他のホウリン酸塩化合物、即ち、PO四面体及びBO三角形/BO四面体のネットワークの構造特徴に類似している。
【0015】
特許文献4は、LaPO:Ce3+,Tb3+、Y:Eu3+、SrBP20:Eu2+及びMgGeO5.5F:Mn4+を含んでなるコンパクトな蛍光灯用の蛍光体混合物を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2006/111568A2号
【特許文献2】ドイツ国特許発明第1927455号明細書
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開2900989A1号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/036425A1号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Park他;Appl.Phys.Lett.82(2004)、2931〜2933ページ;Solid state comm.136(2005)504
【非特許文献2】J.Electrochem.Soc.155(2008)のJ193〜J197ページ;Electrochem. Solid state lett.11[2](2008)El
【非特許文献3】Lakshminarasimhan他;J.electrochem.Soc.152[9](2005)H152
【非特許文献4】Chang他;Appl.Phys.Lett.90(2007)161901)
【非特許文献5】J.Liu他;Adv.Mater.17(2005)、2974〜2978ページ
【非特許文献6】Appl.Phys.B86(2007)の647〜651ページ
【非特許文献7】Zhao他;Inorg.Chem.48(2009)、6623〜6629ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、近紫外線の放射源によって励起可能であり可視光を発光する改良された蛍光体、特に、何らかの他の蛍光体と組合せることを必要とせずに白色光を発光することができる単一の蛍光体としての、改良された蛍光体を提供することである。他の目的は、適切な光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、電磁スペクトルの第1の波長範囲の放射線を吸収して電磁スペクトルの第2の波長範囲の放射線を放出する蛍光体であって、前記蛍光体がEu2+イオンによって賦活化されたホウリン酸塩であって、下記の一般式によって表わされる蛍光体
ABa(1−x−z)CaEuBP
(ここで、Aは、少なくとも1つの一価アルカリ金属イオンであり、0<x≦0.1であり、0<z≦0.3である。)
及びこの蛍光体と前記電磁スペクトルの前記第1の波長範囲の放射線を放出する放射線放出要素とを備えてなる光源によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】KBa1−xEuBP(x=0.05)の典型的な粉末XRDパターンを示す参考図である。
図2】KBa1−xEuBP(x=0.05)の典型的な励起及び発光スペクトルを示す参考図である。
図3】Eu2+をドープしたKBaBPの発光の温度依存性を示す参考図である。
図4】Eu2+ドーピング濃度が異なるKBa1−xEuBP蛍光体の発光スペクトルを示す参考図である。
図5】Eu2+をドープしたK(Ba,Sr)BP及びK(Ba,Ca)BP蛍光体の典型的なXRDパターンを示す参考図である。
図6】Sr及びBaの含有量が異なるEu2+ドープK(Ba,Sr)Eu0.03BPの励起(挿入図)及び発光スペクトルを示す参考図である。
図7】Ca及びBaの含有量が異なるEu2+ドープK(Ba,Ca)Eu0.03BPの励起(挿入図)及び発光スペクトルを示す図である。
図8】Naで部分的に置換したEu2+ドープKBaBPの発光スペクトルを示す参考図である。
図9】Liで部分的に置換したEu2+ドープKBaBPの発光スペクトルを示す参考図である。
図10】Znで部分的に置換したEu2+ドープKBaBPの発光スペクトルを示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
驚くべきことに、単一のEu2+賦活化KMBP(M=Ba,Sr,Ca)蛍光体は、近紫外線励起下で高い発光効率で白色光を示す。この挙動は予想外であった。というのは、他の全てのホウリン酸塩蛍光体は、このような発光特性を決して示さないからであり、また、賦活化剤Eu2+に使用可能な結晶学的座が1つしかないからである。更に、これらはYAG:Ce3+蛍光体に匹敵する高い熱安定性を示す。Eu2+をドープしたKMBP蛍光体の発光特性(例えばピーク中心、色合わせ及びFWHM)は、KMBPホスト格子中のEu2+の濃度又はBa、Sr及びCaの間の比率を変化させることによって調整することができる。Eu2+の濃度は広範囲に変動可能である。Eu2+をドープしたKBaBP蛍光体の発光帯は、Eu2+の濃度を上昇させることによって、より長波長範囲側へとシフトすることができる。一方、Eu2+をドープしたKBaBP蛍光体の発光帯は、Ba2+をSr2+で置換することによって、より短波長範囲側へとシフトすることができる。更に、その発光効率も、このような置換によって劇的に改良することができる。Ba2+をCa2+で置換することによっても、同じ効果を達成することができる。Eu2+をドープした蛍光体の全てにおいて、Eu2+は、M2+の結晶学的座を8重の酸素配位で置換することが予想される。
【0022】
本発明は、Eu2+イオンによって、賦活化される新規なホウリン酸塩蛍光体を開示する。
【0023】
本発明の蛍光体は、放射線を変換する。このために、本発明の蛍光体は、電磁スペクトルの第1の波長範囲の放射線を吸収して、前記電磁スペクトルの第2の波長範囲の放射線を放出する。電磁スペクトルの前記第1の波長範囲は、前記電磁スペクトルの前記第2の波長範囲とは異なる。
【0024】
本発明のホウリン酸塩蛍光体は、Eu2+イオンによって賦活化される。本発明のホウリン酸塩蛍光体は、下記の一般式によって表わされる。
ABa(1−x−z)CaEuBP
【0025】
記号Aは、少なくとも1つの一価アルカリ金属イオンを表わす。上記一般式において、0<x≦0.1であり、そして0<z≦0.3である。
【0026】
記号Aは、Li、K、Na、Rb及びCsを含んでなる群から選択される。記号Aは、より好ましくは、Li、K及びNaを含んでなる群から選択される少なくとも1つの一価アルカリ金属イオンを表わす。
【0027】
下記の一般式によって表わされる本発明のホウリン酸塩蛍光体においては、
ABa(1−x−z)CaEuBP
(ここで、0<x≦0.1であり、0<z≦0.3である。)Aは、Kであることが好ましく、その結果、KBa(1−x−z)CaEuBPの一般式になり、ここで、変数xは、0.08以下であることがより好ましく、ここで、(x+z)≦0.3である。
【0028】
本発明の蛍光体は、250nm〜420nmの波長範囲に強い励起帯を示す。そこから、前記第1の波長範囲は、好ましくは250nm〜420nmであり、より好ましくは300nm〜370nmである。
【0029】
前記第2の波長範囲は、好ましくは、可視スペクトル全体、特に400nm〜700nmの範囲、又は少なくとも420nm〜600nmの範囲である。前記第2の波長のピーク中心は、450nmと480nmの間にあることが好ましい。
【0030】
本発明の蛍光体は、UV光の照射下で十分に励起することができ、青色又は白色光を発光する。また、本発明の蛍光体は、高い熱安定性を示し、これはYAG:Ce3+蛍光体のそれに匹敵する。
【0031】
上記発光特性により、本発明による蛍光体は、UV(250nm〜420nm)をこれより長い波長の、好ましくは青色からオレンジ色のスペクトル領域において、蛍光体により十分発光される、可視光へと変化させる放射変換体として使用することができる。
【0032】
本発明の蛍光体は、光源、例えば白色発光光源、に使用することができる。或いは、この蛍光体は、光電池、温室の箔又は温室のガラスに使用することができる。これらの用途では、太陽光が電磁スペクトルの前記第1の波長範囲の放射を形成する。蛍光体によって放出される放射線は、それぞれ光電池及び温室の植物へと誘導される。
【0033】
本発明の光源は、本発明の蛍光体と電磁スペクトルの前記第1の波長範囲の放射線を放出する放射線放出要素とを備える。蛍光体は、放出された前記第1の波長範囲の放射線を前記第2の波長範囲の放射線へと変換する。放射線放出要素は、蛍光体の励起源として作用する。光源は、少なくとも蛍光体の第2の波長範囲の放射線を放出する。
【0034】
本発明の光源の特殊な実施形態では、光源は、光源の性能を改良するために、赤色、黄色、緑色及び/又は青色光を発光する少なくとも1つの別の蛍光体を備える。
【0035】
本発明の光源は、蛍光灯、有色発光LED、白色発光LED、又はUVレーザ又は紫色レーザ励起に基づく応用によって形成することが好ましい。
【0036】
放射線放出要素は、好ましくは、高圧放電プラズマ又は低圧放電プラズマ、UV無機発光ダイオード(LED)又は紫色−青色無機発光ダイオード(LED)、又はレーザ又はレーザダイオードによって、形成する。放射線放出要素は、LEDによって形成することができる。このLEDには、SMD、上部照射型LED、側面照射型LED等のプラスチック又はセラミックの本体を有し、前記第1の波長範囲、特にUV−A及び紫色−青色域、の放射線を放出する発光要素を組み込んだ様々なタイプの無機LEDが含まれる。
【0037】
本発明による発光ホウリン酸塩蛍光体は、成分要素の酸化物又は加熱により対応する酸化物に変換される化合物の混合物の高温における固相反応によって調製することができる。概して、開始混合物は、2段階で加熱すると有利である。得られた生成物は、各加熱操作後に冷却した後、粉砕する必要がある。最後の加熱操作は、通常、所望の二価状態のユーロピウムを得るために、還元雰囲気(即ち70%N−30%H)中で実行される。
【実施例】
【0038】
以下では、なお幾つかの実施例に基づいて合成条件を更に詳細に説明する。実施例は、典型的な条件及び材料について説明するが、制限する作用をするものではない。当業者には、蛍光体を取得する幾つかの異なる方法、例えば原料を他の分解可能な塩で置換する、例えば炭酸塩をシュウ酸塩、酢酸塩、硝酸塩で置換する;ボールミル、振動ミルその他のような他の混合方法を使用する;高温固相反応の温度、雰囲気及び継続時間を逸脱させる;ゾル−ゲル法又は噴霧熱分解その他を適用する;等が分かるであろう。
【0039】
(参考例1)
混合物は1.380gのKCO、4.020gのBaCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。原料を瑪瑙乳鉢に秤取し、均質に混合した。この混合物をアルミナの坩堝に入れた。アルミナ板で覆った坩堝を炉に入れ、空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内において、流通70%N−30%H雰囲気中で8時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.97Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。X線回折写真では、結晶質粉末がKBaBPの結晶構造を有しているように見えた。
【0040】
(参考例2)
混合物は、1.380gのKCO、2.644gのBaCO、0.886gのSrCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で10時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.67Sr0.30Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。X線回折写真では、結晶質粉末がKBaBP相の結晶構造を有しているように見えた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約135%である。
【0041】
(実施例1)
混合物は1.380gのKCO、3.236gのBaCO、0.300gのCaCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で6時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で12時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.82Ca0.15Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。X線回折写真では、結晶質粉末がKBaBP相の結晶構造を有するように見えた。この試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約126%である。
【0042】
(参考例3)
混合物は1.106gのKCO、0.202gのNaCO、3.828gのBaCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で9時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式K0.8Na0.2Ba0.97Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約120%である。
【0043】
(参考例4)
混合物は1.106gのKCO、0.148gのLiCO、3.828gのBaCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で9時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式K0.8Li0.2Ba0.97Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約80%である。
【0044】
(参考例5)
混合物は1.382gのKCO、0.163gのZnO、3.434gのBaCO、0.106gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で9時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.87Zn0.1Eu0.03BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約105%である。
【0045】
(参考例6)
混合物は1.382gのKCO、0.070gのSm、3.710gのBaCO、0.140gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で9時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.94Eu0.04Sm0.02BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約98%である。
【0046】
(参考例7)
混合物は1.382gのKCO、0.078gのYb、3.710gのBaCO、0.140gのEu、1.298gのHBO及び4.601gのNHPOで作成される。この混合物を炉に入れて空気中で4時間、400℃の温度で加熱した。冷却及び粉砕の後、生成物を、覆いをしたアルミナ坩堝内の流通70%N−30%H雰囲気中で9時間、900℃の加熱処理に供した。冷却及び粉砕の後、式KBa0.94Eu0.04Yb0.02BPで規定される組成を有する発光材料が得られた。試料の発光強度は、340nmの励起下で参考例1の試料の発光強度に対して約85%である。
【0047】
下表では、参考のために、Eu2+ドーピング濃度が異なるEu2+ドープKBaBP蛍光体の発光特性を列挙した。
【0048】
【表1】
【0049】
下表では、参考のために、Sr含有量が異なるEu2+ドープKBa1−ySrBP(0≦y≦1.0)蛍光体の発光特性を列挙した。
【0050】
【表2】
【0051】
下表では、Ca含有量が異なるEu2+ドープKBa1−zCaBP(0≦z≦0.30)蛍光体の発光特性を列挙した。
【0052】
【表3】
【0053】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、以下の添付図面を参照することによって更によく理解されるので、更に容易に評価されることになる。
図1は、KBaBPと比較したKBa1−xEuBP(x=0.05)、即ちKBa0.95Eu0.05BP、の典型的な粉末XRDパターンを示す。
図2は、KBa1−xEuBP(x=0.05)、即ちKBa0.95Eu0.05BP、の典型的な励起及び発光スペクトルを示す。
図3は、YAG:Ce3+と比較した405nmの励起下におけるEu2+ドープKBaBP蛍光体の発光の温度依存性を示す。
図4は、Eu2+のドーピング濃度がx=0.005からx=0.10の範囲で異なるKBa1−xEuBP蛍光体の発光スペクトルを示す。
図5は、KBaBP及びKSrBPと比較したKBa0.67Ca0.3Eu0.03BP、KBa0.87Ca0.1Eu0.03BP及びKBa0.77Sr0.2Eu0.03BPの典型的なXRDパターンを示す。
図6は、KBa0.97Eu0.03BP、KBa0.87Sr0.1Eu0.03BP、KBa0.77Sr0.2Eu0.03BP、KBa0.67Sr0.3Eu0.03BP及びKSr0.97Eu0.03BPの励起(挿入図)及び発光スペクトルを示す。
図7は、KBa0.97Eu0.03BP、KBa0.92Ca0.05Eu0.03BP、KBa0.87Ca0.1Eu0.03BP、KBa0.82Ca0.15Eu0.03BP及びKBa0.67Ca0.3Eu0.03BPの励起(挿入図)及び発光スペクトルを示す。
図8は、Eu2+でドープしたKBaBP及びKをNaで部分的に置換した場合の発光スペクトルを示す。
図9は、Eu2+でドープしたKBaBP及びKをLiで部分的に置換した場合の発光スペクトルを示す。
図10は、Eu2+でドープしたKBaBP及びBaをZnで部分的に置換した場合の発光スペクトルを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10