特許第5914741号(P5914741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5914741
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】ランドセル
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   A45F3/04 400J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-205667(P2015-205667)
(22)【出願日】2015年10月19日
【審査請求日】2015年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152664
【氏名又は名称】株式会社日乃本錠前
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081802(JP,A)
【文献】 特開2004−267687(JP,A)
【文献】 特開2006−026392(JP,A)
【文献】 特開2006−068454(JP,A)
【文献】 特許第5770916(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランドセル本体を背負うための左右一対の背負いベルトと、
前記ランドセル本体の背板に配設され背環と、
この背環に揺動可能に配設され前記ランドセル本体を背負うユーザーの背中に対向する対向面をほぼ平坦面に形成した弾性を有する左右一対の揺動アームと、
前記ユーザーの背中に対向する前記揺動アームの背中対向面の背面下部に一体に形成されたスリーブと、
前記背負いベルトの長手方向一端部に配設されて前記スリーブの軸方向開口両端部内に挿脱可能に挿入されて連結される一対の切欠端部を有する金属製の連結環と、
を具備し、
前記連結環は、前記一対の切欠端部を前記スリーブの軸方向開口両端部内に挿入してからこれら一対の切欠端部どうし間の開口を縮小させるように狭圧されてこのスリーブに連結されてなり、
前記背負いベルトが前記ランドセル本体の背板側へ傾倒されたときに、この背負いベルトの上部が前記揺動アームの上端に当接されることにより、この背負いベルトの上部を揺動アームの上端よりも上方に立ち上げるように形成していることを特徴とするランドセル。
【請求項2】
前記一対の揺動アームは、前記スリーブ内にブシュを配設していることを特徴とする請求項1記載のランドセル。
【請求項3】
前記一対の揺動アームは、ポリエステル系エラストマー製であることを特徴とする請求項1または2記載のランドセル。
【請求項4】
前記一対の揺動アームは、前記背面に複数の小円形突起を形成していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のランドセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ランドセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のランドセルでは、児童等のユーザが左右一対の背負いベルトに腕を通して両肩に掛け、ランドセルを背中に担いだときに、ランドセルが下方に垂れ下がり易いので、ランドセルが重く感じられることが多かった。また、ユーザがランドセルを担ぐ前は、左右一対の背負いベルトが下方に垂れ下がっているので、これら一対の背負いベルトにユーザが腕を通し難く、ランドセルが担ぎにくいという課題もあった。
【0003】
そこで、従来のランドセルの中には、背負いベルトの上部を上方に若干立ち上げ、その状態を保持することにより、腕を通し易くすると共に、ランドセルをユーザの背中に密着するようにしたものが種々提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−237072号公報
【特許文献2】特開2004−81800号公報
【特許文献3】実用新案登録第3157591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の発明では、背環の揺動アーム等の連結体に設けた連結環に、長い一対の背負いベルト(肩掛けベルト)を連結してから、背環をランドセル本体に取り付けている。
【0006】
すなわち、揺動アーム等の連結体に付設された連結環の環状挿通孔内に、左右一対の背負いベルトの一端部を挿通して折り返し、この折返端部をリベット止めにより固定する。このために、折返端部の裏面側では、打ち込まれたリベットの挿通先端部を受けてかしめる受け金具が必要になる。
【0007】
この背負いベルトのリベット止め部は、ランドセル本体の背板上に位置するために、背環をランドセル本体の背板上に配設した後にリベット止めする場合には、このランドセル本体の軟弱な背板上に直接リベット受け金具を配置し、打ち込められたリベットを受け止めてこのリベットの挿通先端部をかしめる作業が必要になる。このために、このリベット止め作業が極めて困難になる。
【0008】
そこで、従来は、背負いベルトを背環の揺動アームの連結環に連結してから、この背環をランドセル本体に取り付けていた。
【0009】
しかし、これでは、長い左右一対の背負いベルトが背環に取り付けられたままの長尺状態でランドセル組立ライン上を流れるために、広い組立スペースが必要になるうえに、流れている際に周囲の設備や機器または作業員に衝当して機器や作業員に損傷を与える等、組立作業性を低下させる虞が高いという課題がある。
【0010】
本発明の解決課題は、ランドセル本体に背環を取り付けた後に、この背環の揺動アーム等の連結体に、背負いベルトを取り付けることができるランドセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態に係るランドセルは、ランドセル本体を背負うための左右一対の背負いベルトと、ランドセル本体の背板に配設され背環と、この背環に揺動可能に配設されランドセル本体を背負うユーザーの背中に対向する対向面をほぼ平坦面に形成した弾性を有する左右一対の揺動アームと、ユーザーの背中に対向する揺動アームの背中対向面の背面下部に一体に形成されたスリーブと、背負いベルトの長手方向一端部に配設されてスリーブの軸方向開口両端部内に挿脱可能に挿入されて連結される一対の切欠端部を有する金属製の連結環と、を具備している。連結環は、一対の切欠端部をスリーブの軸方向開口両端部内に挿入してからこれら一対の切欠端部どうし間の開口を縮小させるように狭圧されてこのスリーブに連結されてなり、背負いベルトがランドセル本体の背板側へ傾倒されたときに、この背負いベルトの上部が揺動アームの上端に当接されることにより、この背負いベルトの上部を揺動アームの上端よりも上方に立ち上げるように形成していることを特徴とするランドセル。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、左右一対の揺動アームのスリーブの軸方向開口両端部内に、左右一対の背負いベルトの長手方向一端部に取り付けられた金属製の連結環の一対の切欠端部を挿入することにより連結することができる。
【0013】
したがって、背環をランドセル本体に取り付けた後にも、この背環の一対の揺動アームに一対の背負いベルトを連結環により連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るランドセルの一部を縦断面で示す要部背面図。
図2図1で示す要部を有する一実施形態の全体の背板側の正面図。
図3図2で示す一実施形態の上部拡大正面図。
図4】(a)は図2で示す背環の正面図、(b)は同,(a)の一部分解右側面図。
図5図4(a)で示す背環の背面図。
図6】(a)は図4(a)で示す背環の一部縦断面図、(b)は同(a)のVIb−VIb線断面図。
図7】(a)は図1〜3で示す連結環の挿通部を、背負いベルトの折返端部の挿通用間隙内に挿通して配設した状態を一部断面で示す要部背面図、(b)は同(a)で示す連結環の一対の切欠端部の一方を揺動アームのスリーブとブシュの軸方向開口両端部の一方内に挿入した状態を一部断面で示す要部背面図。
図8】(a)は同,連結環の他方の切欠端部を揺動アームのスリーブの軸方向開口両端部の他方内に挿入しようとする状態を一部断面で示す要部背面図、(b)は同,(a)で示す連結環の他方の切欠端部を、同スリーブとブシュの軸方向開口両端部内に挿入して連結した状態を一部断面で示す要部背面図。
図9】(a)は図1の裏面,すなわち,正面から見たときの本実施形態の要部拡大正面図、(b)は同(a)の側面図。
図10】(a)は図1図8で示す本実施形態の揺動アームがユーザの背中側へ弾性的に湾曲する状態を示す側面図、(b)はユーザが背負いベルトを持ってランドセル本体をぶら下げたときの揺動アームの撓曲状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0016】
図2は一実施形態に係るランドセルの背面側のほぼ全体を示す正面図、図3は、同,背面側の上部を示す上部拡大正面図、図4(a)は図2,3で示す背環の拡大正面図、(b)は同(a)で示す背環の補強板を取り外した状態の右側面図である。
【0017】
これら図2,3に示すようにランドセル1は、皮革製または合成樹脂製等の有蓋有底角筒状のランドセル本体2の背板3の上部中央部上に、背環4を配設している。背環4は、左右一対の背負いベルト5,6の各長手方向一端部(図1では上端部)を取り付けるものであり、正面形状がほぼ横長楕円状の合成樹脂製の本体ケース7と、この本体ケース7内で左右方向に揺動可能に配設される合成樹脂製(例えばポリエステル系エラストマー)の左右一対の揺動アーム8,9と、これら揺動アーム8,9の相互の中間部にて、これら一対の揺動アーム8,9の背後に配設される金属製の吊り環10とを具備している。吊り環10は、例えばランドセル1を吊持する図示省略のフック等に掛止されて吊持される。
【0018】
図5(a)は背環4の背面図、図6(a)は背環4の内部構成を示す一部縦断面図、図6(b)は同(a)のVIb−VIb線断面図である。図4(a),図6(a)に示すように背環4の本体ケース7は、その図中上端部の左右両端部にてそれぞれ開口する左右一対の上部開口部7a,7a、ランドセル本体2の背板3の上部中央部に固定される有底偏平角筒状の合成樹脂製のベース7b、このベース7bの図4(a)中手前側の正面を開口させた正面開口部7cおよびこの正面開口7cを閉じる図4(a)で示す合成樹脂製の本体蓋であるフロントカバー7dを有する。
【0019】
図6(b)に示すようにベース7bは、その正面開口部7cの開口縁部のほぼ左右両側面部と底部とに、図6(a)中、手前(正面)側に若干突出する内嵌合壁7eを一体に形成している。
【0020】
一方、図6(b)に示すようにフロントカバー7dは、その外周縁部に、ベース7bの内嵌合壁7eに突合される外嵌壁7fを一体に連成している。
【0021】
図4(a)に示すようにフロントカバー7dの外面上部には、円弧板状の補強板11を、複数、例えば3個の止めねじ12,12,12によりねじ止めして本体ケース7の強度の補強を図っている。補強板11は、合成樹脂製の補強板本体11aの前面に、鉄やステンレス、アルミニウム板等の金属製帯板状の複数のメタルバー11b,11bを埋設して補強板本体11a自体の強度の補強を図っている。なお、補強板11は、フロントカバー7dの内面に添設される図示省略の円弧板状のバックプレートを介して複数の止めねじ12,12,…によりフロントカバー7dに取り付けられる。
【0022】
図1図6に示すように左右一対の揺動アーム8,9は、合成樹脂製の所定厚の一枚板によりそれぞれ形成されたアーム本体8a,9aを有する。
【0023】
図6(a),(b)に示すように各アーム本体8a,9aは、本体ケース7の左右一対の上部開口部7a,7aからその内部へほぼ垂直に延伸するアーム内端部8b,9bと、上部開口部7a,7aから本体ケース7の外部へ延伸するアーム外端部8c,9cとを合成樹脂によりそれぞれ一体に連成している。
【0024】
図4(b),図6(b)に示すように、各アーム外端部8c,9cはランドセル本体2を児童等ユーザが背負ったときの当該児童の背中側へ接近するように所要角で前傾している。また、各アームの外端部8c,9cは、児童の背中に対向する背中対向面8d,9d、すなわち、正面の上部に、上部が外方に凸の円弧状のほぼ矩形環状の装飾用の溝13を形成している。この溝13は省略してもよい。
【0025】
一方、各アーム内端部8b,9bは、ほぼ垂直に立ち上がるように直状に形成される。各アーム内端部8b,9bには、左右一対のアーム本体8a,9aを左右に揺動可能に支持する支軸14,15をそれぞれ挿通させる座ぐりを有する挿通孔14a,15aを設けている。
【0026】
図6(b)に示すように各支軸14,15は、ベース7bの図中内側面からフロントカバー7d側へほぼ垂直に突出して各アーム本体8a,9aの各挿通孔14a,15a内を挿通する円筒状のベース取付ボス7gと、フロントカバー7dの図中内側面からベース7b側へほぼ垂直に突出し、円筒状のベース取付ボス7gの挿通孔内に嵌入するカバー取付ボス7hと、これら取付ボス7g,7hを嵌合して連結した状態でねじ止めする図示省略の止めねじとにより構成される。
【0027】
すなわち、これらベース取付ボス7gをカバー取付ボス7hの挿通孔内に嵌入して連結した後、支軸14,15を、ベース取付ボス7gの背面のねじ孔からそれぞれねじ込むことにより、ベース取付ボス7gとカバー取付ボス7hとの連結状態を固着して、ベース7bとフロントカバー7dとを締結している。
【0028】
そして、各アーム内端部8b,9bは、その各左右側端部に、その外側方へそれぞれ突出するほぼ三角形状のストッパ用突部8d,8e、9d,9eをそれぞれ一体に連成している。
【0029】
これら各ストッパ用突部8d,8e、9d,9eは、本体ケース7内に配設された左右2組のストッパ16aと16b、16cと16dに、それぞれ当接することにより、各揺動アーム8,9の左右方向の揺動角がそれぞれ所定角度に規制される。
【0030】
これらストッパ16a,16b,16c,16dは、左右一対の揺動アーム8,9の図中左右両側において、所要の間隔を置いて本体ケース7のベース7bの内側面に一体に突設された突部(リブ)により構成されている。
【0031】
そして、各アーム内端部8b,9bは、その図中下端部に、図中横方向に突出するほぼ三角形状の係止突部8f,9fをそれぞれ一体に突設している。
【0032】
これら左右一対の係止突部8f,9fには、図中縦方向に配設された左右一対の圧縮コイルばね17,18の各下端に設けた角筒状の摺動端子17a,18aの半球状外端面をそれぞれ当接させている。これら圧縮コイルばね17,18は、係止突部8f,9fを図中下方へ常時弾性的に押圧して、左右一対のアーム外端部8c,9cが互いに接近する位置に付勢する。
【0033】
各摺動端子17a,18aは、合成樹脂により角筒状に形成され、圧縮コイルばね17,18の図中下端にそれぞれ結合され、摺動可能に配設される。左右一対の圧縮コイルばね17,18は、ベース7bの内側面に形成した縦孔内に収容され、各上端が固定されている。
【0034】
そして、図2(a),(b)に示すように各揺動アーム8,9は、アーム本体8a,9aのアーム外端部8c,9cの表面、すなわち、ランドセル1を背負ったときの児童の背中側に対向する背中対向面8d,9dを平坦面に形成している。
【0035】
そして、図4(b),図5に示すように各揺動アーム8,9は、各アーム外端部8c,9cの背中対向面8d,9d(正面)の背面側の一部に、左右一対のほぼ円筒状のスリーブ19,20を一体に連成している。これらスリーブ19,20は、各アーム外端部8c,9cの背面(背中対向面8d,9dの裏面)に、その上端よりも下方の下部にて、横方向(アーム外端部8c,9cの幅方向)に一体に連成されている。
【0036】
各スリーブ19,20は、各アーム外端部8c,9cの幅方向両端まで延在し、その軸心部に、円形の挿通孔19a,20aをそれぞれ形成している。これら挿通孔19a,20aは、その軸方向両端を、それぞれ開口19b,19c、20b,20cさせている。
【0037】
そして、図7(a)〜図8(b)にも示すように各スリーブ19,20は、その各挿通孔19a,20a内に、これら挿通孔19a,20aよりも軸長が若干短いステンレス(SUS)等の金属製の円筒状のブシュ21,22を圧入等によりそれぞれ挿入し、各挿通孔19a,20aの軸方向中間部内に固定している。
【0038】
また、各アーム外端部8c,9cは、その背面に、各スリーブ19,20よりも上方の上部にて、外方に凸の小径半球状の複数の凸丸m,m,…を一体に突設している。これら複数の凸丸m,m,…は、例えば各アーム外端部8c,9cの図5中上方に凸の円弧状上端部の内側にて、複数列、例えば2列で所要の間隔を置いて配設されている。
【0039】
次に、図7(a)〜図8(b)に基づいて、左右一対のアーム外端部8c,9cに左右一対の背負いベルト5,6を連結する方法について説明する。
【0040】
図7(a)〜図8(b)に示すように左右一対の背負いベルト5,6は、各アーム外端部8c,9cに連結されるべき長手方向一端部を所要長折り返して折返端部5a,6aを形成している。各折返端部5a,6aは、その幅方向中央部にリベット23,23を打設することによりそれぞれ固着すると共に、幅方向(図中縦方向)に、ミシン糸24によりそれぞれ縫着することにより、折返端部5a,6a内にほぼ長円筒状の挿通用間隙25をそれぞれ形成している。図7(a)〜図8(b)では、挿通用間隙25がその長手方向に貫通する間隙であることを強調するために、挿通用間隙25の内側(リベット23)の側壁断面を図示しているが、実際には表われない。
【0041】
各挿通用間隙25は、各背負いベルト5,6の折返端部5a,6aの幅方向両端まで延在し、その両端をそれぞれ開口させることにより開口端25a,25bに形成している。
【0042】
折返端部5a,6aは、各挿通用間隙25内に、塑性変形可能な金属製の矩形C字状の連結環26の挿通部26aを挿通させることにより、連結環26を保持している。連結環26は、金属製矩形環状の連結環本体26bと、その一部を所要長切り欠いた図7(a)〜図8(b)中上下一対の切欠端部26c,26dと、この切欠端部26c,26dに対向する対向辺部であって、上記挿通用間隙25内に挿通されるほぼ直状挿通部26aと、連結環本体26bにより囲まれた矩形C字状の透孔26eを具備している。
【0043】
まず、図7(a)に示すように連結環26の挿通部26aを、背負いベルト5,6に、その各折返端部5a,6aの挿通用間隙25内に挿通した状態で取り付ける。
【0044】
すなわち、背負いベルト5,6の長手方向一端部を各連結環26の矩形C字状の透孔26e内を挿通してから所要長折り返し、その折返端部の重ね合せ部をミシン糸24等により縫着すると共に、リベット23をそれぞれ打ち込み固着する。このリベット打込み時には、その打込みの裏面側に、リベット23の打込み挿通先端部を受けてかしめる図示省略の受け金具を配置する。
【0045】
このとき、連結環26は、その図中上下一対の切欠端部26c,26dの開口を、各アーム外端部8c,9cのスリーブ20内の、例えばブシュ22の長さよりも若干長くなるように拡開されている。
【0046】
次に、図7(b)に示すように、この連結環26をアーム外端部8c,9cのスリーブ19,20に連結する工程に移行するが、この連結工程の前に、一対の揺動アーム8,9を備えた背環4はランドセル本体2に既に取り付けられている。連結環26は、一対の切欠端部26c,26dの一方、例えば26dを、各アーム外端部8c,9cのスリーブ20の一対の開口端20b,20cの一方、例えば20cと、この開口端20cと同一側のブシュ22の開口端内に挿入する。
【0047】
この後、図8(a)に示すように連結環26は、その他方の切欠端部26cを図示省略のプライヤー等の工具により塑性変形させて、各アーム外端部8c,9cのスリーブ20の他方の開口端20bとブシュ22の同一側の開口端内に挿入する。
【0048】
次に、図8(b)に示すように連結環26の一対の切欠端部26c,26dの両外端部を、その外側から内側へ所要の図示省略の工具により挟圧することにより、これら一対の切欠端部26c,26dの開口が縮小するように塑性変形させる。
【0049】
これにより、各背負いベルト5,6の折返端部5a,6aがスリーブ19,20の各挿通孔19a,20aとブシュ21,22の軸方向両開端部19b,19c、20b,20c内へより深く挿入される。その結果、一対の背負いベルト5,6の折返端部5a,6a側が各連結環26を介して各揺動アーム8,9に連結される。図9(a)はこの連結状態の要部正面図、図9(b)はその側面を示す要部側面図である。なお、背負いベルト5,6の折返端部5a,6aの長手方向反対側の他端部は、ランドセル本体2の底部に固定された図示しないダルマ環に連結されている。
【0050】
そして、図10(a)は図2で示す図中左右一対の背負いベルト5,6を背環4側へ傾倒させてランドセル1を背負うときの状態を示しており、左右一対の背負いベルト5,6の図中上部が、左右一対のアーム外端部8c,9cの背面(図10(a),(b)では右側面)に当接して若干上方へ立ち上げられている状態を示している。
【0051】
このように左右一対の背負いベルト5,6の図中上部が立ち上げられているので、児童等のユーザがこれら一対の背負いベルト5,6の内側に腕を通し易くなり、両肩に担ぎ易くなる。
【0052】
また、一対の背負いベルト5,6を上方へ若干立ち上げているために、ランドセル本体2を高い位置で背負うことができる。このために、ランドセル本体2を児童の背中に密着させた状態でランドセル1を担ぐことができるので、ランドセル1を軽く感じさせることができ、その分、担ぎ易さの向上を図ることができる。
【0053】
また、児童がランドセル1を担いでいるときに、万一髪の毛がアーム外端部8c,9cの背面と背負いベルト5,6の間隙に侵入した場合には、髪の毛が複数の凸丸,m,…同士間の間隙に分散されるので、髪の毛が挟まれて引っ張られることを低減できる。
【0054】
さらに、凸丸m,m,…の頂端面と背負いベルト5,6との当接面に髪の毛が挟まる場合には、各凸丸23の頂端面が小径の球面に形成されているので、背負いベルト5,6との当接面積が非常に小さく、点状に接触するに過ぎないので、髪の毛が挟まるような状態をさらに低減し、安全・安心性の向上を高めることができる。
【0055】
また、児童が背負いベルト5,6を把んでランドセル本体2を下方にぶら下げた場合には、図10(b)に示すように揺動アーム8,9全体が弾性的に撓曲するので、揺動アーム8,9の破損を低減できる。
【0056】
そして、このランドセル1によれば、背環4の一対の揺動アーム8,9に、一対の背負いベルト5,6を連結環26により連結するので、背環4をランドセル本体2に取り付ける作業と、一対の背負いベルト5,6の折返端部5a,6aに、連結環26を取り付ける作業とを別々に行うことができる。
【0057】
このために、背負いベルト5,6の折返端部5a,6aにリベット23を打ち込む際に、その打込み面の裏面側のスペースを大きく確保できるので、この裏面側のスペースにリベット23の打込み先端部を受けてかしめる受け金具を配置してリベット23,23を打込むことができる。すなわち、本実施形態によれば、かしめ用受け金具を従来例のようにランドセル本体2上に配置してリベット打ちする必要がないので、リベット23の打込み作業の作業性の向上と打込み精度の向上とを共に図ることができる。
【0058】
また、従来例のように、予め背環4の揺動アーム8,9に一対の背負いベルト5,6を取り付けてから、この背環4をランドセル本体2に取り付ける必要もないので、背環4に一対の背負いベルト5,6を取り付けた長尺状態で組立ライン上に流すことを回避できる。
【0059】
その結果、組立ラインを含む作業スペースの節約を図ることができるうえに、互いに連結された背環4と一対の背負いベルト5,6が組立ライン上を流れているときに、その組立ラインの周辺機器や作業員等に衝当して破損や怪我を発生させることを低減できる。
【0060】
そして、連結環26による左右一対の揺動アーム8,9と左右一対の背負いベルト5,6との連結は、これら揺動アーム8,9の背中対向面8d,9dの裏面側で行うので、これら連結部が児童の背中等に当接して擦れ、痛感を与える事態を回避できる。
【0061】
さらに、背環4は一対の背負いベルト5,6を取り付ける前の単独状態でランドセル本体2に取り付けられるので、一対の背負いベルト5,6に干渉されずにランドセル本体2に取り付けることができる。このために、この背環4の取付作業の作業性の向上と取付精度の向上とを図ることができる。
【0062】
また、このランドセル1によれば、アーム外端部8c,9cの背中対向面8d,9d、すなわち、正面をほぼ平坦面に形成しているので、背中対向面8d,9dに児童の背中が当っても痛感を与えることが殆どなく、安全・安心性の向上を図ることができる。なお、アーム外端部8c,9cの背中対向面8d,9dに形成した装飾用の溝13は削除してもよい。これによれば、背中対向面8d,9dの平面性をさらに高めるので、さらなる安全・安心性の向上を図ることができる。
【0063】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…ランドセル、2…ランドセル本体、3…背板、4…背環、5,6…左右一対の背負いベルト、5a,6a…折返端部、8,9…左右一対の揺動アーム、8a,9a…アーム本体、8b,9b…アーム内端部、8c,9c…アーム外端部、8d,9d…背中対向面、19,20…スリーブ、19a,20a…挿通孔、21,22…ブシュ、23…リベット、25…挿通用間隙、26…連結環、26a…挿通部、26b…連結環本体、26c,26d…一対の切欠端部。
【要約】      (修正有)
【課題】ランドセル本体に背環を取り付けた後に、この背環の揺動アーム等の連結体に、背負いベルトを取り付けることができるランドセルを提供する。
【解決手段】ランドセル本体を背負うための左右一対の背負いベルト5,6と、ランドセル本体の背板に配設された背環4と、この背環に揺動可能に配設された弾性を有する左右一対の揺動アーム8,9と、ユーザの背中に対向する揺動アームの背中対向面の背面下部に形成されたスリーブ19,20と、背負いベルトの長手方向一端部に配設されてスリーブの軸方向開口両端部内に挿脱可能に挿入されて連結される一対の切欠端部26c,26dを有する金属製の連結環26と、を具備している。また、背負いベルトがランドセル本体の背板側へ傾倒されたときに、この背負いベルトの上部が揺動アームの上端に当接されることにより、この背負いベルトの上部を揺動アームの上端よりも上方に立ち上げるように形成している。
【選択図】図1
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