(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914749
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】可変磁束モーター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
H02K1/27 502A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-504473(P2015-504473)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公表番号】特表2015-512610(P2015-512610A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】KR2013001373
(87)【国際公開番号】WO2013165080
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0046057
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512272708
【氏名又は名称】ニュモテク株式会社
【氏名又は名称原語表記】NEW MOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソ ゼヒョン
(72)【発明者】
【氏名】バク スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウンピル
(72)【発明者】
【氏名】ゾ ヒュジン
(72)【発明者】
【氏名】ギム ビョンテク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジンソク
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−258189(JP,A)
【文献】
特開平03−243154(JP,A)
【文献】
特開2010−130719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターと前記ローターの内側に配設されるステーターとを備える可変磁束モーターにおいて、
前記ローターは、ローターハウジングと、前記ローターハウジングの内側壁面に取り付けられる複数の単位ローターコア及びマグネットを備え、前記単位ローターコアはマグネットと交互に配設され、
前記ステーターは、ステーターコアベースと、前記ステーターコアベースの外周面に放射状に等間隔をもって形成された複数のティースと、を備え、前記ティースの末端の両側にはティースイヤが形成されており、
前記マグネットは、第1マグネットと第2マグネットを備え、
前記第2マグネットは、前記単位ローターコアのうち向かい合う一対の単位ローターコアの両側に配設されるマグネットと前記一対の単位ローターコアを連結する線と直交する線が遭遇する一対の単位ローターコアの両側に配設されるマグネットであり、
前記第1マグネットは、第2マグネットを除く残りのマグネットであり、
さらに、前記第1マグネットは、フェライトマグネットであり、前記第2マグネットは、アルニコマグネットであることを特徴とする可変磁束モーター。
【請求項2】
前記ティース末端の外周面には、内側に窪んだ形状のティース溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変磁束モーター。
【請求項3】
前記ティースイヤの外周面には、内側に窪んだ形状のティースイヤ溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変磁束モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターに関する。さらに詳しくは、本発明は、ローターに適用されているマグネットの一部を減磁または着磁させることにより全体モーターの可変速運転が可能であり、磁束量を集中させて高効率が得られる新規な構造のモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モーターの可変速運転と高効率を両立させるために、様々な構造及び形状を有するモーターが提案されてきている。その代表例として、可変磁束メモリモーター(Variable Flux Memory Motor:VFMM)(以下、「先行技術1」と称する。)と日本公開特許公報第2009−112454号に開示されているようなモーター(以下、「先行技術2」と称する。)が挙げられる。
【0003】
先行技術1によるVFMMモーターの回転子は、基本的にスポークタイプ(spoke type)のBLDCモーターとほとんど同様である。このモーターは、固定子の磁束発生軸であるd軸に負のd軸電流を流すと、永久磁石の厚さの差分により永久磁石の幅が狭い部分から永久磁石が減磁されるようなモーターである。このような原理に基づいて、永久磁石を減磁及び着磁して可変磁束運転を行うことになる。
【0004】
先行技術2によるモーターの場合、回転子の形状は基本的に突極集中捲構造の外転型BLDCモーターとほとんど同様である。このモーターの特徴は、保磁力が異なる2種の磁石をローターコアに埋め込むが、埋め込むときに異なる極を形成するように周方向に交互に配置されているというところにある。すなわち、ローターコアには第1磁石と第2磁石の埋め込みのための孔を形成しなければならず、且つ、ローターコアの内側部に突出部を形成しなければならないためローターコアの構造が複雑になり、しかも、製造コストが高騰するという不都合がある。特に、第1マグネットとしてネオジム(Nd)マグネットを使用するが、これもまた製造コストの高騰の原因になっている。
【0005】
そこで、本発明者らは、上述した不都合を解消するために鋭意検討したところ、ローターはスポークタイプの構造を有し、且つ、固定子は突極集中捲構造を有するように変形された新規な構造を提案することにより、磁束量を集中させることができ、性能を大幅に向上させることができる他、製造コストを削減することのできる可変磁束モーターを開発するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規な構造の可変磁束モーターを提供することである。
本発明の上記の目的及びその他の内在されている目的は、後述する本発明によっていずれも達成可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による可変磁束モーターは、ローターと前記ローターの内側に配設されるステーターとを備える可変磁束モーターにおいて、前記ローターは、ローターハウジングと、前記ローターハウジングの内側壁面に取り付けられる複数の単位ローターコア及びマグネットを備え、前記単位ローターコアはマグネットと交互に配設され、前記ステーターは、ステーターコアベースと、前記ステーターコアベースの外周面に放射状に等間隔をもって形成された複数のティースと、を備え、前記ティースの末端の両側にはティースイヤが形成されて
おり、前記マグネットは、第1マグネットと第2マグネットを備え、前記第2マグネットは、前記単位ローターコアのうち向かい合う一対の単位ローターコアの両側に配設されるマグネットと前記一対の単位ローターコアを連結する線と直交する線が遭遇する一対の単位ローターコアの両側に配設されるマグネットであり、前記第1マグネットは、第2マグネットを除く残りのマグネットであり、さらに、前記第1マグネットは、フェライトマグネットであり、前記第2マグネットは、アルニコマグネットであることを特徴とする。
【0008】
【0009】
【0010】
本発明において、前記ティース末端の外周面には、内側に窪んだ形状のティース溝部が形成されていてもよい。
【0011】
本発明において、前記ティースイヤの外周面には、内側に窪んだ形状のティースイヤ溝部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造がさらに簡素化されて製造コストを削減することができ、磁束量を集中させ易いことから性能を大幅に向上させることのできる新規な構造の可変磁束モーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による可変磁束モーターの構造を示す平面図である。
【
図2】本発明による可変磁束モーターのローター構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明による可変磁束モーターのローターに用いられる単位ローターコアを示す斜視図である。
【
図4】本発明による可変磁束モーターのステーターを示す斜視図である。
【
図5】本発明による可変磁束モーターのステーターを示す平面図である。
【
図6】本発明による可変磁束モーターの磁束変化を説明するための概念図である。
【
図7】本発明の実施形態による可変磁束モーターの無負荷運転時の着磁状態の逆起電力を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施形態による可変磁束モーターの無負荷運転時の脱磁状態の逆起電力を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施形態による可変磁束モーターの低速運転における定格運転時の電流特性を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態による可変磁束モーターの低速運転における定格運転時のトルク特性を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施形態による可変磁束モーターの低速運転における最大出力時の電流特性を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施形態による可変磁束モーターの低速運転における最大出力時の運転トルク特性を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施形態による可変磁束モーターの高速運転における定格運転時の電流特性を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施形態による可変磁束モーターの高速運転における定格運転時のトルク特性を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施形態による可変磁束モーターの高速運転における最大出力時の電流特性を示すグラフである。
【
図16】本発明の実施形態による可変磁束モーターの高速運転における最大出力時の運転トルク特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、本発明による可変磁束モーターについて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による可変磁束モーターの構造を示す平面図であり、
図2は、本発明による可変磁束モーターのローター1の構造を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明による可変磁束モーターは、ローター1と、ステーター2と、を備える。
本発明におけるローター1は、ステーター2の外周面に配設される多数の単位ローターコア10と、第1マグネット11及び第2マグネット12を備え、
図2に示すように、単位ローターコア10と、第1マグネット11及び第2マグネット12はローターハウジング13の内側壁面に配設される。
【0016】
本発明におけるステーター2は、ステーターコアベース21と、このステーターコアベース21の外周面に放射状に形成されている多数のティース22と、を備える。
コイル3はステーター1のティース22に巻き取られており、隣り合う二つのティース22の間に形成されるスロットにある程度の空間を占めている。
【0017】
本発明による可変磁束モーターとしては、
図1及び
図2に示すように、24極18スロットモデルを例にとって説明しているが、本発明はこれに必ずしも限定されるものではなく、必要に応じて極数及びスロット数を変形して適用することができる。
【0018】
24極18スロットのモーターの場合、
図1に示すように、24個の単位ローターコア10が24個のマグネット11、12と交互に配設されている。24個のマグネットのうち16個は第1マグネット11であり、8個は第2マグネット12である。
図1に示すように、隣り合うマグネットの間には単位ローターコア10が配設され、第2マグネット12は、ローターの12時方向、3時方向、6時方向及び9時方向に2つずつ合計で8個を使用する。すなわち、隣り合う第2マグネット12の間に配設される単位ローターコア10と向かい合う位置の単位ローターコアの両側に第2マグネットが設けられ(
図1におけるA部分参照)、これらの向かい合う二つの単位ローターコアを連結する線と直交する線が遭遇する二つの単位ローターコアの両側にそれぞれ第2マグネットが設けられる(
図1におけるB部分参照)。このため、合計で8個の第2マグネットが適用される。
【0019】
本発明における第1マグネット11はフェライトマグネットであり、第2マグネット12はアルニコマグネットである。これらの2種類の磁石が有する保磁力の差分を用いて第2マグネット12の磁束量を調節することができる。
【0020】
図3は、本発明による可変磁束モーターのローター1に用いられる単位ローターコア10を示す斜視図である。
図3に示すように、本発明の単位ローターコア10は、その両側面にマグネットが取り付けられる構造を有し、多数のマグネットと単位ローターコア10が繰り返し取り付けられると、全体的に円の形状を呈する。隣り合うマグネットへの取り付けのために、単位ローターコア10の両側面に溶接線10aを形成してもよい。この溶接線10aに沿ってレーザー溶接を行ってマグネットと単位ローターコアとの結束を行う。もちろん、取り付け方法はこのようなレーザー溶接に何ら限定されるものではなく、様々な取り付け方法が採用可能である。例えば、かしめやその他の溶接方法を採用してもよい。
【0021】
図4は、本発明による可変磁束モーターのステーター2を示す斜視図であり、
図5は、本発明による可変磁束モーターのステーター2を示す平面図である。
【0022】
図4及び
図5に示すように、本発明によるステーター2は、円形のステーターコアベース21と、このステーターコアベース21の外周面に放射状に等間隔をもって形成されているティース22と、を備える。このティース22の末端には、ティースイヤ23が両側に形成されている。このステーター2は、枚葉状のコア鋼板を繰り返し積み重ねて形成する。ステーターコアベース21の内周面には複数のベース溶接溝21aが形成されているが、このベース溶接溝21aに沿ってレーザー溶接を行って多数枚のコア鋼板を強固に固定する。もちろん、レーザー溶接に加えて、かしめなどの方法を適用してもよい。
【0023】
隣り合う両ティース22の間に形成された空間はスロット25の形状を呈する。ティース22にはコイルが巻き取られる。ティース末端部分の外周面には内側に僅かに窪んだ形状のティース溝部22aが形成され、ティース末端両側のティースイヤ23にも同様に内側に僅かに窪んだ形状のティースイヤ溝部23aが形成される。このようなティース溝部22a及びティースイヤ溝部23aは、磁束量が集中して発生するコギングトルクを低減する役割を果たす。
【0024】
ティース溝部22aにはティース溶接溝22bが形成されるが、このティース溶接溝22bは、上述したベース溶接溝21aと同様に、溶接などの方法により枚葉状のステーターコアを結合する役割を果たす。
【0025】
図6は、本発明による可変磁束モーターの磁束変化を説明するための概念図である。
【0026】
図6を参照すると、
図6において、ステーターのA相がアルニコ磁石である第2マグネット12間の単位ローターコア10に配列されると、起磁力の方向とは反対方向に負(−)のd軸電流を流して第2マグネットを減磁させることができる。また、
図1におけるA部分とB部分を同時に減磁することはできないため、A部分の二対を一度に減磁させた後、B部分の二対を減磁させる2回の過程を経てもよい。
【0027】
実施形態
本発明による可変磁束モーターの減磁特性を解析するために有限要素解析法(Finite Element Analysis:FEA)を適用して解析した。24極18スロット状のモーターを製作して様々な解析条件下で有限要素解析法(FEA)を適用した。適用されたモーターのローターの外径は272mmであり、ステーターのスタック高さは25mmであった。巻き線径は1.25φであり、巻き線数は120[turn]であった。フェライトマグネットは型番pmf−7BEを使用し、アルニコマグネットはPMC−9Bを採用した。マグネットの長さは20mmであり、厚さは16mmであった。巻き線抵抗は1.87Ωであり、d軸インダクタンスは38.9mHであり、q軸インダクタンスは50.2mHであった。
【0028】
まず、無負荷運転をするが、150rpmにおいて完全に着磁したときの逆起電力を測定し、150rpmにおいてアルニコマグネットを脱磁した状態で運転して逆起電力を測定した。測定結果を
図7及び
図8に示す。
図7は、完全着磁時の結果であり、
図8は、アルニコマグネット脱磁時の結果である。
【0029】
図7及び
図8に示すように、完全着磁時と脱磁時の逆起電力を比較して可変磁束が得られるか否かを予測した。その結果、約52.6%の磁束可変が得られることが分かった。
【0030】
次いで、低速運転時の運転特性を解析するために、45rpmにおける定格運転時と最大出力時の電流及びトルクを予測した。定格運転時の解析条件は、相電圧ピーク値Vph[peak]=43.58[V]であり、最大出力運転時には相電圧ピーク値Vph[peak]=46.7[V]であった。
【0031】
図9及び
図10に低速運転の定格運転時における電流特性及びトルク特性を示す。最大出力運転時の電流特性及びトルク特性は、
図11及び
図12に示す。
【0032】
次いで、高速運転時の運転特性を解析するために、1400rpmにおいて定格運転時と最大出力時の電流及びトルクを予測した。定格運転時の解析条件は、相電圧ピーク値Vph[peak]=147[V]であり、最大出力運転時にも相電圧ピーク値Vph[peak]=147[V]であった。
【0033】
図13及び
図14に高速運転の定格運転時における電流特性及びトルク特性を示す。最大出力運転時の電流特性及びトルク特性は
図15及び
図16に示す。
【0034】
上述した本発明の具体的な説明及び実施形態は本発明を例示するための説明に過ぎず、本発明の範囲を定めるためのものではないことに留意すべきである。本発明の範囲は下記の添付の特許請求の範囲によって定められるべきであり、この範囲内における単なる変形や変更はいずれも本発明の範囲に属するものと理解すべきである。