【文献】
Rubin, Mordecai B. et al.,Synthesis and Reactions of 1,6-Diaryl-2,5-bis(diazo)-1,3,4,6-tetraoxohexanes,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry,1980年,(12),pp. 2670-2677
【文献】
Lee, Sangku et al.,Biological Evaluation of Dilactone Lignan Analogues of Phellinsin A as Chitin Synthase II Inhibitors,Bulletin of the Korean Chemical Society,2009年,30(12),pp. 3092-3094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)で表される桂皮酸誘導体としてフェルラ酸及び/又はシナピン酸を用いるとともに、前記縮合工程と脱水素化工程との間で、縮合体のフェノール性水酸基をエーテル化するエーテル化工程を含む、請求項1に記載のフロフラン誘導体の製造方法。
前記エーテル化工程では、前記縮合工程で得られた縮合体、アゾジカルボン酸ジエステル及びアルコールを少なくとも含む混合溶液を調製した後、該混合溶液にホスフィンを添加する、請求項2に記載のフロフラン誘導体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法、フロフラン誘導体およびその用途について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0018】
〔フロフラン誘導体の製造方法〕
本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で表される桂皮酸もしくはその誘導体2分子を縮合して下記一般式(2)で表される縮合体を得る縮合工程と、前記縮合工程で形成された縮合環を脱水素化してフロフラン骨格を形成する脱水素化工程とを含む。さらに、前記縮合工程と脱水素化工程の間に、縮合体のフェノール性水酸基をエーテル化するエーテル化工程を含んでいても良い。
【0020】
(上記一般式(1)において、R
1〜R
3は、同一もしくは異なって、水素原子、水酸基または直鎖もしくは分岐のアルコキシ基を示す。)
【化6】
【0021】
(上記一般式(2)において、R
4〜R
9は、同一もしくは異なって、水素原子、水酸基または直鎖もしくは分岐のアルコキシ基を示す。)
【0022】
以下、縮合工程、エーテル化工程及び脱水素化工程について詳述する。
【0023】
<縮合工程>
出発原料である桂皮酸もしくはその誘導体は天然に多く存在するものであるので、石油資源由来の合成物質を原料とする場合と比べて、環境負荷が著しく低減される。
例えば、フェルラ酸、シナピン酸、コーヒー酸、4−ヒドロキシ桂皮酸などは、いずれも天然に存在する桂皮酸誘導体として好適に挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)の縮合体のR
4〜R
6、R
7〜R
9は、上記一般式(1)の出発原料のR
1〜R
3に由来するものである。1種類の桂皮酸もしくはその誘導体を用いた場合には、R
4〜R
6とR
7〜R
9は同一のものとなるが、2種類以上の桂皮酸もしくはその誘導体を用いた場合は、R
4〜R
6とR
7〜R
9が異なったものとなることがある。
【0025】
R
1〜R
9は、同一もしくは異なって、水素原子、水酸基または直鎖もしくは分岐のアルコキシ基を示すが、アルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基である。
【0026】
なお、最終的に得られるフロフラン誘導体において、R
4〜R
9の種類は、蛍光スペクトルに大きく影響を与えるものではないが、融点、溶解性、分散性、相溶性などの物性が変化するので、これを様々に選択することにより、用途に応じた多様な設計・制御が可能となる。特に、R
4〜R
9として、それぞれ独立して、様々な官能基を採用することができるので、原料である桂皮酸またはその誘導体(官能基はR
1〜R
3の3つ)と比べて、自由度がより高いといえる。ただし、そのような必要がなければ、2種類以上の桂皮酸誘導体を用いなくともよく、製造容易性に鑑みれば、1種類の桂皮酸誘導体を用いるほうがむしろ好ましい場合がある。
【0027】
この縮合工程は、公知の方法を用いることで達成できる(例えば、J.Chem.Soc.,535(1944))。
具体的には、桂皮酸もしくはその誘導体に対し、例えば、塩化鉄(III)などの触媒の存在下、塩酸、硫酸などの強酸を作用させて、酸化的カップリングにより縮合させることができる。
この場合に使用可能な溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類と水との混合溶媒などが挙げられる。
反応条件としては、例えば、5〜80℃で、2〜40時間とすることができ、10〜50℃で、3〜24時間とすることが好ましい。
また、桂皮酸もしくはその誘導体を、銅錯体(例えば、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド)などを触媒としてジクロロメタンなどの溶剤中、室温程度で撹拌することにより、縮合体を得ることもできる。
反応後は、従来公知の方法により、縮合体を分離・精製することができる。
【0028】
<エーテル化工程>
本発明の製造方法において任意の工程であるエーテル化工程では、後述の脱水素化工程の前に、上記縮合工程で得られた縮合体のフェノール性水酸基をエーテル化する。
このエーテル化工程により、後に続く脱水素化工程での酸化反応時の副生成物の発生を抑えることができるという利点がある。
原料が水酸基を有していない場合(例えば、桂皮酸など)や、水酸基を有している場合(例えば、フェルラ酸、シナピン酸、コーヒー酸、4−ヒドロキシ桂皮酸など)であっても上記縮合工程の前にフェノール性水酸基をエーテル化している場合は、縮合工程後のエーテル化工程は必要ではない。
【0029】
縮合体のフェノール性水酸基をエーテル化する方法としては、特に限定するわけではないが、光延反応が高収率であり好適である。
ここで、光延反応は、アルコールの水酸基をアゾジカルボン酸ジエステルとホスフィン(特にトリフェニルホスフィン)で活性化して行なうS
N2反応のことである。具体的には、アゾジカルボン酸ジエステル、ホスフィン、アルコールと求核剤を混合するとアルコールの水酸基が求核剤によって置換された生成物が得られる。
従って、この光延反応において、上記縮合工程で得られた縮合体を求核剤として作用させることで、縮合体のフェノール性水酸基をエーテル化することができるのである。
【0030】
ただし、本発明者の検討によれば、上記光延反応においてホスフィンの添加タイミングを制御することにより、通常のエーテル化反応(NaHや炭酸カリウムなどの強塩基とハロゲン化アルキルの組み合わせなど)や、単なる光延反応と比べて、エーテル化工程の収率が格別に良好となることが判明した。これは、通常のエーテル化反応や何ら工夫のない光延反応においては、縮合体のラクトン構造が塩基性の試薬により開裂して、収率低下を招く恐れがあるところ、光延反応において塩基性であるホスフィンの添加タイミングを極力遅らせることでこれによるラクトン構造の開裂を抑制し、縮合体の環状構造を維持したままフェノール性水酸基をエーテル化することができるからであると理解される。
すなわち、上記エーテル化反応においては、縮合工程で得られた縮合体、アゾジカルボン酸ジエステル及びアルコールを少なくとも含む混合溶液を調製した後、該混合溶液にホスフィンを添加することが好ましい。
【0031】
このエーテル化反応で導入されるアルコキシ基は、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜8のものが特に好ましい。上記光延反応の場合、使用するアルコールの炭素数によってこれが決定される。
このエーテル化工程で使用可能な溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、酢酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類などが挙げられる。
反応条件としては、例えば、−5〜120℃で、1分〜24時間とすることができ、0〜40℃で、1分〜8時間とすることが好ましい。
反応後は、従来公知の方法により、エーテル化物を分離・精製することができる。
【0032】
上に詳述したとおり、フェルラ酸やシナピン酸などを出発原料とした場合のように、縮合体がフェノール性水酸基を有している場合は、このエーテル化工程を経ることにより、次の脱水素化工程での副生成物の生成を抑えることができるのであり、しかも、ホスフィンの添加タイミングを制御した上述の光延反応によれば、このエーテル化反応も極めて高収率に行うことができるので、結果として、目的のフロフラン誘導体の総収率向上に資することとなる。
【0033】
<脱水素化工程>
脱水素化工程では、上記縮合工程で形成された縮合環を脱水素化する。
この脱水素化工程により、縮合環に炭素−炭素二重結合が導入されてフロフラン骨格が形成され、本発明特有の蛍光性が発現されるものと推測される。
【0034】
脱水素化は、酸化剤の使用により行うことができ、該酸化剤としては、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)、2,3,5,6−テトラクロロ−p−ベンゾキノン(クロラニル)などが挙げられる。中でも、DDQを用いることが好ましい。
【0035】
また、酸化剤の使用割合としては、その種類にもよるが、例えば、上記縮合体もしくはそのエーテル化物1モルに対して、酸化剤3〜100モルであり、好ましくは、酸化剤10〜20モルである。
【0036】
この脱水素化工程で使用可能な溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジオキサンなどが挙げられる。
反応条件としては、例えば、100〜150℃で、3〜48時間とすることができ、110〜130℃で、5〜20時間とすることが好ましい。
反応後は、従来公知の方法により、最終生成物を分離・精製することができる。
【0037】
〔フロフラン誘導体〕
本発明にかかるフロフラン誘導体は、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表されるものである。
【0040】
(上記一般式(3)、(4)において、R
10,R
11は、同一もしくは異なって、直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)
【0041】
上記一般式(3)の構造のものは、上記本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法において、出発原料としてフェルラ酸を用いることで容易に得ることができ、上記一般式(4)の構造のものは、上記本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法において、出発原料としてシナピン酸を用いることで容易に得ることができる。
なお、上記において、R
10O基,R
11O基の各アルコキシ基は、上記本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法の任意工程であるエーテル化反応で容易に導入し得るものであり、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜8のものが特に好ましい。
【0042】
このように、天然物質であるフェルラ酸又はシナピン酸を原料として容易に製造できるものである点で、石油資源由来の従来のフロフラン誘導体にはない優位性があり、また、アルコキシ基を有する点、及び、黄色の発色を示す点でも従来にない化合物である。
【0043】
〔フロフラン誘導体の用途〕
本発明にかかるフロフラン誘導体は、特に限定されないが、上述のように黄色の発色を示すため、例えば、蛍光材料としての用途に適している。
【0044】
本発明にかかるフロフラン誘導体は、溶剤に溶解あるいは分散させて使用してもよいし、他の樹脂と相溶させて使用してもよいし、それ単独で固体状態で使用してもよい。
【0045】
本発明にかかるフロフラン誘導体を、溶剤に溶解あるいは分散させて使用する場合、該溶剤としては、例えば、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、水などやこれらの2種以上の混合溶剤などが挙げられる。
【0046】
本発明にかかるフロフラン誘導体を、他の樹脂と相溶させて使用する場合、該樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、ポリエステル−メラミン硬化系樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0047】
具体的な使用形態としては、特に限定するわけではないが、例えば、溶剤に溶解あるいは分散させることにより塗料や化粧料としたり、樹脂成形品を得る際に添加し樹脂中に分散させた後に成形することにより樹脂成形品中に含有させるようにしたり、蒸着法などによって所望の基板上に製膜したりといった使用形態が例示できる。
【0048】
用途に応じて、本発明にかかるフロフラン誘導体以外の他の成分を配合してもよい。
例えば、有機蛍光材料に適用する場合、前記他の成分として、以下の水性成分、粉末成分、油成分などの成分を配合してもよい。
【0049】
すなわち、ワセリン、固体パラフィン、液状パラフィン、スクワランなどの炭化水素類;シリコン油類、オリーブ油、地ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどの植物性もしくは動物性の油脂類やロウ類;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類;ホホバ油、カルナバワックス、合成ゲイロウ、ミツロウなどのエステル類;オリーブ油、水添ヤシ油、ヒマシ油、牛脂などのトリグリセライド類;エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類;セチルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチルアルコールなどの高級アルコール類;グリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ソルビトールなどの多価アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩酸などのカチオン性界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤;パラベン類やグルコン酸クロルヘキシジンなどの防腐剤;ビタミンE、ブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤;ポリエチレングリコールなどの保湿剤;アルカリ、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などのpH調節剤;酸化チタン、ベンガラ、タルク、粘土鉱物、シリカゲルなどの粉体類などが挙げられ、さらに、香料、色素、薬効成分、乳化安定剤、キレート剤、水溶性高分子、油溶性高分子などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて、本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法、フロフラン誘導体およびその有機蛍光材料としての用途について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔フロフラン誘導体の製造〕
<実施例1>
(縮合工程)
フェルラ酸を出発原料として、下記一般式(5)で表される縮合体を得た。
【0052】
【化9】
【0053】
具体的には、以下のようにして縮合体を得た。
フェルラ酸10.0gをエタノール80mLに溶解し、この溶液をFeCl
3・6H
2O(35g)水溶液(500mL)中に滴下したのち、室温で1晩撹拌した。析出した固体を濾別し、この固体を200mLの水に分散した。分散液に12N HCl水溶液25mLを加えて80℃、15分間撹拌したのち、室温まで冷却した。析出した固体を濾別して水洗したのち、アセトンにより再結晶させた。その結果、上記一般式(5)に示す縮合体2.50gを得た(収率25%)。なお、この縮合体は
1H NMR及び
13C NMRの測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6):δ9.26(2H,s),7.00(2H,d,J=2.0Hz),6.87(2H,dd,J=2.0,8.4Hz),6.80(2H,d,J=8.4Hz),5.74(2H,br),4.21(2H,br),3.80(6H,s)
13C NMR(100MHz,DMSO−d
6):δ174.90,147.33,146.83,128.48,118.69,114.91,110.10,81.55,55.26,47.55
【0054】
(エーテル化工程)
上記で得られた縮合体を原料として、下記一般式(6)で表されるエーテル化物を得た。
【0055】
【化10】
【0056】
具体的には、以下のようにしてエーテル化物を得た。
上記縮合体200mg、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(40%トルエン溶液として使用)780mg及びn−ブタノール120mgをジクロロメタン100mLに分散させた。分散液にトリフェニルホスフィン400mgを加え、室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮したのち、カラムで精製することにより、上記一般式(6)に示すエーテル化物247mgを得た(収率96%)。
【0057】
(脱水素化工程)
上記で得られた縮合体のエーテル化物を原料として、下記一般式(7)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0058】
【化11】
【0059】
具体的には、以下のようにしてフロフラン誘導体を得た。
上記エーテル化物500mg及びDDQ1.0gをジオキサン30mLに溶解させ、20時間、110℃で還流させた。室温まで戻した後、析出固体を濾別して、得られた溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラム精製することにより、上記一般式(7)に示す実施例1のフロフラン誘導体を440mg得た(収率89%)。
【0060】
上述のとおり、上記実施例1では、縮合工程の収率が25%、エーテル化工程の収率が96%、脱水素化工程の収率が89%であったので、総収率は21%であった。
【0061】
<実施例2>
(縮合工程)
シナピン酸を出発原料として、下記一般式(8)で表される縮合体を得た。
【0062】
【化12】
【0063】
具体的には、以下のようにして縮合体を得た。
シナピン酸25.0gをメタノール20mL及びエタノール250mLに分散して、分散液をFeCl
3・6H
2O(43g)水溶液(1L)中に滴下したのち、室温で1晩撹拌した。反応液から析出した固体を濾別し、濾別した固体を200mLの水に分散させた。分散液に12N HCl水溶液50mLを加えて80℃、1時間撹拌し、室温まで冷却した。反応液から固体を濾別して、水洗し、アセトンにより再結晶した。その結果、上記一般式(8)に示す縮合体20.5gを得た(収率82%)。なお、この縮合体は
1H NMR及び
13C NMRの測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,DMSO−d
6):δ8.61(2H,s),6.70(4H,s),5.74(2H,br),4.27(2H,br),3.79(12H,s)
13C NMR(100MHz,DMSO−d
6):δ175.52,148.14,136.23,128.14,104.00,82.23,56.18,47.99
【0064】
(エーテル化工程)
上記で得られた縮合体を原料として、下記一般式(9)で表されるエーテル化物を得た。
【0065】
【化13】
【0066】
具体的には、以下のようにしてエーテル化物を得た。
上記縮合体190mg、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル(40%トルエン溶液として使用)750mg及びn−ブタノール98mgをジクロロメタン110mLに分散させた。分散液にトリフェニルホスフィン390mgを加え、室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮したのち、カラムで精製することにより、上記一般式(9)に示すエーテル化物218mgを得た(収率92%)。
【0067】
(脱水素化工程)
上記で得られた縮合体のエーテル化物を原料として、下記一般式(10)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0068】
【化14】
【0069】
具体的には、以下のようにしてフロフラン誘導体を得た。
上記エーテル化物200mg及びDDQ500mgをジオキサン30mLに溶解させ、20時間、110℃で還流させた。室温まで戻した後、析出固体を濾別して、得られた溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラム精製することにより、上記一般式(10)に示す実施例2のフロフラン誘導体112mgを得た(収率88%)。
【0070】
上述のとおり、上記実施例2では、縮合工程の収率が82%、エーテル化工程の収率が92%、脱水素化工程の収率が88%であったので、総収率は66%であった。
【0071】
<実施例3>
実施例1の縮合工程で得られた一般式(5)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりにメタノールを用いることで、総収率18%で、下記一般式(11)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0072】
【化15】
【0073】
<実施例4>
実施例1の縮合工程で得られた一般式(5)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりにn−ヘキサノールを用いることで、総収率22%で、下記一般式(12)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0074】
【化16】
【0075】
<実施例5>
実施例1の縮合工程で得られた一般式(5)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いることで、総収率17%で、下記一般式(13)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0076】
【化17】
【0077】
<実施例6>
実施例2の縮合工程で得られた一般式(8)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりにメタノールを用いることで、総収率60%で、下記一般式(14)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0078】
【化18】
【0079】
<実施例7>
実施例2の縮合工程で得られた一般式(8)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりにn−ヘキサノールを用いることで、総収率62%で、下記一般式(15)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0080】
【化19】
【0081】
<実施例8>
実施例2の縮合工程で得られた一般式(8)の縮合体を原料として、n−ブタノールの代わりに2−エチル−1−ヘキサノールを用いることで、総収率58%で、下記一般式(16)で表されるフロフラン誘導体を得た。
【0082】
【化20】
【0083】
<評価>
上述の通り、本発明にかかるフロフラン誘導体の製造方法では、総収率が最も低い実施例5であっても17%であり、従来の製法の収率がせいぜい10%程度であったことと比較して、高い収率でフロフラン誘導体を合成できるものであることが分かった。
【0084】
また、天然に存在するフェルラ酸やシナピン酸を出発原料とするものであるので、石油資源を用いていた従来の合成法と比べて有用であることが明らかである。
【0085】
加えて、本発明の製造方法によれば、フェルラ酸を出発原料とする実施例1と実施例3〜5、シナピン酸を出発原料とする実施例2と実施例6〜8の各総収率を見ると分かるように、同程度の総収率で様々なアルコキシ基を有するフロフラン誘導体の製造が可能となることが分かった。
【0086】
〔有機蛍光材料としての有用性〕
<実施例9>
ITO基板(三容真空社製、10Ω/sq、1500A)をアセトン、エタノールで洗浄した後、窒素ブローおよび130℃のホットプレートで乾燥し、これをUV洗浄した。スピンコーター(アクティブ社製、ACT−300D)にてPEDOT:PSS(CLEVIOS P VP AI 4083、H.C.Starck社製)を3000rpmでスピンコートし、130℃で10分間乾燥させ40nmの薄膜を成膜した。真空蒸着装置(エイコー社製、EO−5)で、正孔輸送層としてα−NPD(N,N'-Di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine、同仁化学研究所製)を40nm、発光層として実施例1にかかる一般式(7)のフロフラン誘導体を4%含む発光ホスト材料CBP(4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)biphenyl、東京化成製)を共蒸着法で40nm、正孔ブロック層としてBCP(2,9-Dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline、同仁化学研究所製)を20nm、電子輸送層としてAlq3(Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)、アルドリッチ製)を20nmの順に成膜した。真空蒸着装置(エイコー社製、EO−5)で、LiF(99%、高純度化学研究所製)を0.5nm、Ag(99.999%、高純度化学研究所製)を10%含むMg(99.9%up、高純度化学研究所製)を共蒸着法で30nm、Ag(99.999%、高純度化学研究所製)を100nmの順に成膜した。窒素雰囲気のグローブボックス内で成膜部分を封止し、エレクトロルミネッセンス素子を調製した。
このエレクトロルミネッセンス素子を電極につないで徐々に電圧を上げ、輝度(トプコン社製、Bm−9)及び色度(大塚電子社製、MCPD−7000)を測定したところ、16Vで1700cd/m
2、色度x=0.44、y=0.52の高輝度黄色発光を確認した。
【0087】
<実施例10>
実施例1にかかる一般式(7)のフロフラン誘導体に代えて、実施例2にかかる一般式(10)のフロフラン誘導体を用いたこと以外は実施例9と同様にしてエレクトロルミネッセンス素子を作製し、輝度及び色度を測定した結果、17Vで3000cd/m
2、色度x=0.41、y=0.54の高輝度黄色発光を確認した。
【0088】
<評価>
実施例9、10から、本発明の製造方法で製造し得る新規構造のフロフラン誘導体は、従来報告例の少ない黄色の発色を示すものであり、有機蛍光材料として極めて有効であることが確認された。