特許第5914905号(P5914905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センカ株式会社の特許一覧

特許5914905反応基を有する両親媒性のカチオン性高分子組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914905
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】反応基を有する両親媒性のカチオン性高分子組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 226/02 20060101AFI20160422BHJP
【FI】
   C08F226/02
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-46976(P2012-46976)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181130(P2013-181130A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 第60回高分子学会予稿集(平成23年9月13日発行)第3496−3497ページに発表
(73)【特許権者】
【識別番号】391003473
【氏名又は名称】センカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】泉 則和
(72)【発明者】
【氏名】景山 忠
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】砂田 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−136774(JP,A)
【文献】 特開昭55−013778(JP,A)
【文献】 特開昭61−130317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00− 45/02
C08F 24/00− 34/04
C08F 224/00−234/04
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、
【化1】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]及び下記一般式(2)で表される化合物、
【化2】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)で表される化合物、
【化3】
[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]及び下記一般式(4)で表される化合物、
【化4】
[Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(5)で表される化合物、
【化5】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、Rは炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]及び下記一般式(6)で表される化合物、
【化6】
[式中、R10は水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、R11は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオンまたは有機酸、無機酸のアニオンを表す。]及び下記一般式(7)で表される化合物、
【化7】
[式中、R12は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物。
【請求項2】
下記一般式(1)で表わされる化合物、
【化8】

[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
及び下記一般式(2)で表される化合物、
【化9】

[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
及び下記一般式(5)で表される化合物、
【化10】

[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、Rは炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
及び下記一般式(6)で表される化合物、
【化11】

[式中、R10は水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、R11は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオンまたは有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)で表される化合物、
【化12】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
及び下記一般式(4)で表される化合物、
【化13】

[Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
及び下記一般式(7)で表される化合物、
【化14】

[式中、R12は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(8)で表される化合物、
【化15】

[式中、エチレングリコールユニットの繰り返し単位はl=0〜30、プロピレングリコールユニットの繰り返し単位はm=0〜13、ブチレングリコールユニットの繰り返し単位はn=0〜6を表す(l+m+n≠0)。R13は水素原子又は炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。R14は水素原子又はメチル基を表す。]の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応基を有する両親媒性のカチオン性高分子組成物に関するものであり、使用する目的に合わせポリマーの分子量、ペンダントニ重結合の数、ポリマー構造等を如何様にも設計可能で、水系でも溶剤系でも共重合に供することができ、尚且つ、他の組成からなる高分子鎖中に共有結合を介してカチオンポリマー鎖を導入することができる高分子組成物を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
アクリルアミド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、モノアリルアンモニウムクロライド重合体等のポリマーは工業的にも非常に重要であり、様々な用途に使用されている。例えば、水処理関係では凝集剤や脱色剤、製紙関係では染料定着剤や歩留向上剤等、医療・食品関係では抗菌剤や生体触媒として使用されており、その性能のより一層の向上が求められている。
【0003】
カチオン性ポリマーは親水性が強く、水、メタノール等の非常に極性が高い溶媒にしか溶解しない。この欠点を克服し極性の溶媒のみならず、広く有機溶媒に溶解する新規な両親媒性のカチオン性高分子を設計・合成すれば、多方面に渡っての新たな用途が開拓される。非極性溶媒に溶解するカチオン性ポリマーは少ないが、いくつかの報告例がある。例えば、カチオン性の会合性ポリウレタンは、水に溶解、分散可能であり有機溶剤にも溶解可能なカチオン性ポリマーである(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載のカチオン性ポリマーは他の成分からなる高分子鎖中に共有結合を介して導入することはできない。また、特許文献2に記載のカチオン性高分子化合物でも、各種有機溶剤に溶解可能ではあるが、他の成分からなる高分子鎖中に共有結合を介して導入することは不可能である。特許文献3に記載の3級アミンおよび/または4級アンモニウム塩を含有する高分子架橋剤を用いる方法では高分子鎖の両末端のみに反応基を残存させており、分子量の増大機構はメチレンビスアクリルアミドのような低分子量の架橋剤と同等であり、水系のみにしか用いることができない。いずれの場合でも、水にも有機溶剤にも溶解し、さらに他の成分からなる高分子鎖中に共有結合を介してカチオンポリマー鎖を導入することが可能であるという2つのことを満たすカチオン性ポリマーは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−105161号公報
【特許文献2】特開平5−194671号公報
【特許文献3】特開2002−105138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、使用する目的に合わせポリマーの分子量、ペンダントニ重結合の数、ポリマー構造等を如何様にも設計可能で、水系でも溶剤系でも共重合に供することができ、尚且つ、他の組成からなる高分子鎖中に共有結合を介してカチオンポリマー鎖を導入することができる、反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を積み重ねた結果、モノアリル化合物及び/又はジアリル化合物とトリアリル化合物及び/又はテトラアリル化合物とを共重合させることにより、又、モノアリル化合物及び/又はジアリル化合物とトリアリル化合物及び/又はテトラアリル化合物と末端に不飽和結合を有するポリアルキレングリコール化合物とを共重合させることにより、反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、下記一般式(1)で表わされる化合物、
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は、分岐又は環状のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0010】
及び下記一般式(2)で表される化合物、
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0013】
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)で表される化合物、
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0016】
及び下記一般式(4)で表される化合物、
【0017】
【化4】
【0018】
[Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0019】
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(5)で表される化合物、
【0020】
【化5】
【0021】
[式中、R、及びRは同一又は異なって水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、Rは炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0022】
及び下記一般式(6)で表される化合物、
【0023】
【化6】
【0024】
[式中、R10は水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、R11は炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0025】
及び下記一般式(7)で表される化合物、
【0026】
【化7】
【0027】
[式中、R12は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0028】
の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする。
【0029】
また、上記一般式(1)、(2)、(5)、(6)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、上記一般式(3)、(4)、(7)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、



【0030】
下記一般式(8)で表される化合物、
【0031】
【化8】
【0032】
[式中、エチレングリコールユニットの繰り返し単位はl=0〜30、プロピレングリコールユニットの繰り返し単位はm=0〜13、ブチレングリコールユニットの繰り返し単位はn=0〜6を表す(l+m+n≠0)。R13は水素原子又は炭素数1〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。R14は水素原子又はメチル基を表す。]
【0033】
の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、ポリマーの分子量、ポリマーの構造、ペンダントニ重結合の数を自由に設計することができ、水系でも溶剤系でも共重合に供することができ、尚且つ、他の組成からなる高分子鎖中に共有結合を介してカチオンポリマー鎖を導入することができる。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(3)で表される化合物及び前記一般式(4)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(5)で表される化合物及び前記一般式(6)で表される化合物及び前記一般式(7)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合させて得ることができる。
【0037】
もしくは、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物及び前記一般式(5)で表される化合物及び前記一般式(6)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、前記一般式(3)で表される化合物及び前記一般式(4)で表される化合物及び前記一般式(7)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、前記一般式(8)で表される化合物中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合させて得ることができる。
【0038】
前記一般式(1)で表される化合物のR、R及びRで示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。Xで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0039】
前記一般式(1)で表される化合物としては、アリルジメチルアミン塩酸塩、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルジエチルアミン塩酸塩、アリルジメチルアミン臭酸塩、アリルジメチルアミン硫酸塩、アリルジメチルアミン硝酸塩等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
前記一般式(2)で表される化合物のR及びRで示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。X2で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0041】
前記一般式(2)で表される化合物としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下DADMACと略称)、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
前記一般式(3)で表される化合物のR6で示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。Xで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0043】
前記一般式(3)で表される化合物としては、トリアリルアミン塩酸塩(以下Tri−AACと略称)、トリアリルメチルアンモニウムクロライド、トリアリルエチルアンモニウムクロライド、トリアリルメチルアンモニウムブロマイド、トリアリルメチルアンモニウムサルフェート、トリアリルメチルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
前記一般式(4)で表される化合物のXで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0045】
前記一般式(4)で表される化合物としては、テトラアリルアンモニウムクロライド、テトラアリルアンモニウムサルフェート、テトラアリルアンモニウムナイトレート、テトラアリルアンモニウムアセテート、テトラアリルアンモニウムオキサレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
前記一般式(5)で表される化合物のR、R及びRで示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ラウリル基、n−ステアリル基等を挙げることができる。Xで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0047】
前記一般式(5)で表される化合物としては、アリルラウリルアミン塩酸塩(以下ALACと略称)、アリルステアリルアミン塩酸塩(以下ASACと略称)、アリルジブチルアミン塩酸塩、アリルトリオクチルアンモニウムクロライド、アリルトリオクタデシルアンモニウムクロライド、アリルジベンジルアミン塩酸塩、アリルジシクロヘキシルアミン塩酸塩、アリルトリシクロヘキシルアンモニウムクロライド等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0048】
前記一般式(6)で表される化合物のR10及びR11で示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。Xで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0049】
前記一般式(6)で表される化合物としては、ジアリルジオクチルアンモニウムクロライド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムクロライド、ジアリルベンジルアミン塩酸塩、ジアリルシクロヘキシルアミン塩酸塩、ジアリルジシクロヘキシルアンモニウムクロライド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムサルフェート、ジアリルジオクタデシルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0050】
前記一般式(7)で表される化合物のR12で示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。Xで示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0051】
前記一般式(7)で表される化合物としては、トリアリルドデシルアンモニウムクロライド、トリアリルオクタデシルアンモニウムクロライド、トリアリルドデシルアンモニウムブロマイド、トリアリルドデシルアンモニウムサルフェート、トリアリルドデシルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
前記一般式(8)で表される化合物のR13で示される炭素数1〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。
【0053】
前記一般式(8)で表される化合物としては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリブチレングリコールモノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノメタクリレート、エチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等を挙げることができる。
【0054】
反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物の作製方法としては、ラジカル重合反応を用いることが好ましい。ラジカル重合反応は、公知の方法で容易に行うことができ、例えば、上記一般式(3)で表される化合物の中の一つであるTri−AACと上記一般式(5)で表される化合物の中の一つであるALACとを1〜99/99〜1モル%の比率で、水溶媒中で、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩のような開始剤を用いて、重合温度25〜90℃で1〜48時間反応させることにより行うことが可能である。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸化カリウム、過硫酸アンモニウム、t−ブチルハイドロパーオキシド等の無機又は有機過酸化物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2硫酸塩2塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2-カルボキシル)−2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2‘−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2-イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2‘−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジンノ−2−メチルプロパン)2塩酸塩等のアゾ化合物等が挙げられるができるが、特に限定されない。
【0056】
重合温度は25〜90℃が適当であり、目的とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物の分子量を制御するために加熱してもよい。
【0057】
一般式(3)、(4)、(7)の仕込み量が多いほど低重合率でゲル化することになり、不溶・不融のネットワークポリマーが形成するが、溶媒抽出法によりゾルとゲルとを分離することが可能であり、分離したゾルが目的とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物である。
【0058】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、今までの架橋剤では得られなかった分子構造を有するポリマーが提供され、水処理関係の凝集剤や脱色剤、製紙関係の染料定着剤や歩留向上剤等の産業上の利用価値が高い。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0060】
実施例1〜2
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、DADMAC、Tri−AACとALACのモル比を(DADMAC/Tri−AAC/ALAC)を76.5/8.5/15(実施例1)、45/5/50(実施例2)、となるように仕込み、溶媒に水を用い、[全モノマー濃度](以下[M]と略称)=2mol/L、開始剤として2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(和光純薬製、以下V−50と略称)を使用し、[開始剤濃度](以下[I]と略称)=0.015 mol/L、重合温度50℃の条件下に共重合を行った。重合途中の重合液をアセトン中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をアセトンにて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のプロトン核磁気共鳴分光法(以下H−NMRと略称)測定結果において、5.5ppmにメチレンプロトンに帰属されるシグナルが、また5.8ppmにメチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されたことから重合体中にペンダントアリル基が残基していることを確認した。
【0061】
実施例3
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、Tri−AAC/アリルオクチルアミン塩酸塩=10/90、となるように仕込み、溶媒に水を用い、[M]=4mol/L、開始剤としてV−50を使用し、[I]=0.06 mol/L、重合温度65℃の条件下に共重合を行った。重合途中の重合液をアセトン中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をアセトンにて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のH−NMR測定結果において、5.5ppmにメチレンプロトンに帰属されるシグナルが、また5.8ppmにメチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されたことから重合体中にペンダントアリル基が残基していることを確認した。
【0062】
実施例4
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、DADMAC、Tri−AACとASACのモル比を(DADMAC/Tri−AAC/ASAC)を85.5/9.5/5となるように仕込み、溶媒に水/メタノールの混媒を用い、[M]=2mol/L、開始剤としてV−50を使用し、[I]=0.015mol/L、重合温度60℃の条件下に共重合を行った。重合途中の重合液をアセトン中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をアセトンにて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のH−NMR測定結果において、5.5ppmにメチレンプロトンに帰属されるシグナルが、また5.8ppmにメチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されたことから重合体中にペンダントアリル基が残基していることを確認した。
【0063】
実施例5〜6
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、DADMAC、Tri−AAC、ブレンマーPE−350(ポリエチレングリコールモノメタクリレート、オキシエチレン基の繰り返し単位数は約8、固形分100%、日油株式会社製)のモル比を(DADMAC/Tri−AAC/ブレンマーPE−350)を63/7/30(実施例5)、27/3/70(実施例6)となるように仕込み、溶媒に水/メタノールの混媒を用い、[M]=2mol/L、開始剤としてV−50を使用し、[I]=0.015mol/L、重合温度60℃の条件下に共重合を行った。反応終了後、アセトン中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をアセトンにて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のH−NMR測定結果において、5.5ppmにメチレンプロトンに帰属されるシグナルが、また5.8ppmにメチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されたことから重合体中にペンダントアリル基が残基していることを確認した。
【0064】
比較例1
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、DADMACとTri−AACのモル比を、90/10(比較例1)となるように仕込み、溶媒に水を用い、[M]=2mol/L、開始剤としてV−50を使用し、[I]=0.015mol/L、重合温度50℃の条件下に共重合を行った。重合途中の重合液を2−プロパノール(以下IPAと略称)中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をIPAにて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のH−NMRによる測定結果において、5.5ppmにメチレンプロトンに帰属されるシグナルが、また5.8ppmにメチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されたことから重合体中にペンダントアリル基が残基していることを確認した。
【0065】
比較例2
セパラブルフラスコに攪拌機、Nガス導入管、ガストラップを取り付け、DADMACとALACのモル比を、85/15(比較例2)となるように仕込み、溶媒に水を用い、[M]=2mol/L、開始剤としてV−50を使用し、[I]=0.015mol/L、重合温度60℃の条件下に共重合を行った。重合途中の重合液をアセトン/IPAの混媒中に投入し重合体を沈殿させ、得られた白色固体をアセトン/IPAの混媒にて再沈殿を繰り返し行い精製した。得られた白色固体のH−NMRによる測定結果において、5.5〜5.8ppmにアリル基のメチレンプロトン、メチンプロトンに帰属されるシグナルが検出されなかった。
【0066】
作製した反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物の溶解性は下記表1の通りである。溶解性の確認方法は、各種溶媒に対して重合体が5wt%なるように添加して試験を行った。
【0067】
【表1】
○:可溶、×:不溶、△:乳化・分散
A:水、B:メタノール、C:エタノール、D:n−プロパノール、E:n−ブタノール、F:n−ヘキサノール、G:n−ヘプタノール、H:n−オクタノール、I:クロロホルム、J:テトラヒドロフラン、K:N, N−ジメチルホルムアミド、L:N−メチル−2−ピロリドン
【0068】
図1


実施例2で得られたポリマーのH−NMRスペルトル
【0069】
図2
比較例1で得られたポリマーのH−NMRスペクトル
【0070】
実施例1〜6では高分子鎖中にペンダントアリル基を有し、各種溶媒に溶解可能であったが、比較例1では高分子鎖中にペンダントアリル基を有するが、水等の非常に極性の高い溶媒にしか溶解せず、比較例2では溶解性は向上するものの、高分子鎖中にペンダントアリル基は存在しなかった。