【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を積み重ねた結果、モノアリル化合物及び/又はジアリル化合物とトリアリル化合物及び/又はテトラアリル化合物とを共重合させることにより、又、モノアリル化合物及び/又はジアリル化合物とトリアリル化合物及び/又はテトラアリル化合物と末端に不飽和結合を有するポリアルキレングリコール化合物とを共重合させることにより、反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、下記一般式(1)で表わされる化合物、
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、R
1、及びR
2は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基を表し、R
3は水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は、分岐又は環状のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。X
1はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0010】
及び下記一般式(2)で表される化合物、
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、R
4、及びR
5は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。X
2はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0013】
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(3)で表される化合物、
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、R
6は水素原子又は炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基又はメトキシエチル基又はメトキシプロピル基又はエトキシエチル基又はフェニル基を表す。X
3はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0016】
及び下記一般式(4)で表される化合物、
【0017】
【化4】
【0018】
[X
4はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0019】
の中から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(5)で表される化合物、
【0020】
【化5】
【0021】
[式中、R
7、及びR
8は同一又は異なって水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、R
9は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。X
5はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0022】
及び下記一般式(6)で表される化合物、
【0023】
【化6】
【0024】
[式中、R
10は水素原子又は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表し、R
11は炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。X
6はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0025】
及び下記一般式(7)で表される化合物、
【0026】
【化7】
【0027】
[式中、R
12は炭素数4〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。X
7はハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は有機酸、無機酸のアニオンを表す。]
【0028】
の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする。
【0029】
また、上記一般式(1)、(2)、(5)、(6)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、
上記一般式(3)、(4)、(7)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、
【0030】
下記一般式(8)で表される化合物、
【0031】
【化8】
【0032】
[式中、エチレングリコールユニットの繰り返し単位はl=0〜30、プロピレングリコールユニットの繰り返し単位はm=0〜13、ブチレングリコールユニットの繰り返し単位はn=0〜6を表す(l+m+n≠0)。R
13は水素原子又は炭素数1〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基又はベンジル基又はフェニルエチル基を表す。R
14は水素原子又はメチル基を表す。]
【0033】
の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合を行って得られる高分子であって、高分子鎖中にペンダントアリル基を1個以上含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、ポリマーの分子量、ポリマーの構造、ペンダントニ重結合の数を自由に設計することができ、水系でも溶剤系でも共重合に供することができ、尚且つ、他の組成からなる高分子鎖中に共有結合を介してカチオンポリマー鎖を導入することができる。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(3)で表される化合物及び前記一般式(4)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(5)で表される化合物及び前記一般式(6)で表される化合物及び前記一般式(7)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合させて得ることができる。
【0037】
もしくは、前記一般式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物及び前記一般式(5)で表される化合物及び前記一般式(6)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、前記一般式(3)で表される化合物及び前記一般式(4)で表される化合物及び前記一般式(7)で表わされる化合物の中から少なくとも一種と、前記一般式(8)で表される化合物中から選ばれる少なくとも1種とを、1〜98/1〜98/1〜98モル%の比率で多元共重合させて得ることができる。
【0038】
前記一般式(1)で表される化合物のR
1、R
2及びR
3で示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。X
1で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0039】
前記一般式(1)で表される化合物としては、アリルジメチルアミン塩酸塩、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルジエチルアミン塩酸塩、アリルジメチルアミン臭酸塩、アリルジメチルアミン硫酸塩、アリルジメチルアミン硝酸塩等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
前記一般式(2)で表される化合物のR
4及びR
5で示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。X
2で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0041】
前記一般式(2)で表される化合物としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下DADMACと略称)、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジメチルアンモニウムサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
前記一般式(3)で表される化合物のR
6で示される炭素数1〜3の直鎖及び分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。X
3で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0043】
前記一般式(3)で表される化合物としては、トリアリルアミン塩酸塩(以下Tri−AACと略称)、トリアリルメチルアンモニウムクロライド、トリアリルエチルアンモニウムクロライド、トリアリルメチルアンモニウムブロマイド、トリアリルメチルアンモニウムサルフェート、トリアリルメチルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
前記一般式(4)で表される化合物のX
4で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0045】
前記一般式(4)で表される化合物としては、テトラアリルアンモニウムクロライド、テトラアリルアンモニウムサルフェート、テトラアリルアンモニウムナイトレート、テトラアリルアンモニウムアセテート、テトラアリルアンモニウムオキサレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
前記一般式(5)で表される化合物のR
7、R
8及びR
9で示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ラウリル基、n−ステアリル基等を挙げることができる。X
5で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0047】
前記一般式(5)で表される化合物としては、アリルラウリルアミン塩酸塩(以下ALACと略称)、アリルステアリルアミン塩酸塩(以下ASACと略称)、アリルジブチルアミン塩酸塩、アリルトリオクチルアンモニウムクロライド、アリルトリオクタデシルアンモニウムクロライド、アリルジベンジルアミン塩酸塩、アリルジシクロヘキシルアミン塩酸塩、アリルトリシクロヘキシルアンモニウムクロライド等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0048】
前記一般式(6)で表される化合物のR
10及びR
11で示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。X
6で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0049】
前記一般式(6)で表される化合物としては、ジアリルジオクチルアンモニウムクロライド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムクロライド、ジアリルベンジルアミン塩酸塩、ジアリルシクロヘキシルアミン塩酸塩、ジアリルジシクロヘキシルアンモニウムクロライド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、ジアリルジオクタデシルアンモニウムサルフェート、ジアリルジオクタデシルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0050】
前記一般式(7)で表される化合物のR
12で示される炭素数4〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。X
7で示されるハロゲン化物イオン、有機酸、無機酸のアニオンとしてはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、シュウ酸イオン等を挙げることができる。
【0051】
前記一般式(7)で表される化合物としては、トリアリルドデシルアンモニウムクロライド、トリアリルオクタデシルアンモニウムクロライド、トリアリルドデシルアンモニウムブロマイド、トリアリルドデシルアンモニウムサルフェート、トリアリルドデシルアンモニウムナイトレート等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
前記一般式(8)で表される化合物のR
13で示される炭素数1〜18の直鎖、分岐及び環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等を挙げることができる。
【0053】
前記一般式(8)で表される化合物としては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリブチレングリコールモノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノメタクリレート、エチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等を挙げることができる。
【0054】
反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物の作製方法としては、ラジカル重合反応を用いることが好ましい。ラジカル重合反応は、公知の方法で容易に行うことができ、例えば、上記一般式(3)で表される化合物の中の一つであるTri−AACと上記一般式(5)で表される化合物の中の一つであるALACとを1〜99/99〜1モル%の比率で、水溶媒中で、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩のような開始剤を用いて、重合温度25〜90℃で1〜48時間反応させることにより行うことが可能である。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸化カリウム、過硫酸アンモニウム、t−ブチルハイドロパーオキシド等の無機又は有機過酸化物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2硫酸塩2塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2-カルボキシル)−2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2‘−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2-イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2‘−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジンノ−2−メチルプロパン)2塩酸塩等のアゾ化合物等が挙げられるができるが、特に限定されない。
【0056】
重合温度は25〜90℃が適当であり、目的とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物の分子量を制御するために加熱してもよい。
【0057】
一般式(3)、(4)、(7)の仕込み量が多いほど低重合率でゲル化することになり、不溶・不融のネットワークポリマーが形成するが、溶媒抽出法によりゾルとゲルとを分離することが可能であり、分離したゾルが目的とする反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物である。
【0058】
本発明の反応基を有する新規な両親媒性のカチオン性高分子組成物は、今までの架橋剤では得られなかった分子構造を有するポリマーが提供され、水処理関係の凝集剤や脱色剤、製紙関係の染料定着剤や歩留向上剤等の産業上の利用価値が高い。