特許第5914942号(P5914942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000002
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000003
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000004
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000005
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000006
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000007
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000008
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000009
  • 特許5914942-端子付きアルミ電線 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914942
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】端子付きアルミ電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/62 20060101AFI20160422BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01R4/62 A
   H01R4/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-168155(P2012-168155)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-26905(P2014-26905A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】大沼 健太郎
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−259558(JP,A)
【文献】 特開2010−073638(JP,A)
【文献】 特開2010−232040(JP,A)
【文献】 特開2009−117085(JP,A)
【文献】 特開2009−117039(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024032(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/096527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線を撚り合わせてなる導体部と該導体部に被覆される絶縁体とからなるアルミ電線の前記絶縁体が剥離され露出する前記導体部に接続される銅製または銅合金製の圧着端子の導体圧着部から前記導体部の先端側が露出してなる圧着端子付きアルミ電線であって、
前記アルミ電線の露出する前記導体部の外周全体に被膜される半田被膜部を備え、
前記圧着端子の圧着部は、
前記半田被膜部に割れが生じる強圧着部と、前記強圧着部の先端側において前記半田被膜部に割れが生じない弱圧着部を有している
ことを特徴とする圧着端子付きアルミ電線。
【請求項2】
前記弱圧着部の先端側に該弱圧着部が連成されてベルマウス部が形成されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の圧着端子付きアルミ電線。
【請求項3】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線を撚り合わせてなる導体部と該導体部に被覆される絶縁体とからなるアルミ電線の前記絶縁体が剥離され露出する前記導体部に接続される銅製または銅合金製の圧着端子の導体圧着部から前記導体部の先端側が露出してなる圧着端子付きアルミ電線であって、
前記アルミ電線の露出する前記導体部の外周全体に被膜される半田被膜部を備え、
前記圧着端子の圧着部は、
前記半田被膜部に割れが生じる強圧着部と、前記強圧着部の先端側及び基端側のそれぞれにおいて前記半田被膜部に割れが生じない弱圧着部を有している
ことを特徴とする圧着端子付きアルミ電線。
【請求項4】
前記弱圧着部の先端側に該弱圧着部が連成されてベルマウス部が形成されてなり、
前記弱圧着部の基端側に該弱圧着部が連成されてベルマウス部が形成されてなる
ことを特徴とする請求項3に記載の圧着端子付きアルミ電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付きアルミ電線に係り、特にアルミ電線の導体部に水分が入るのを防止することのできる端子付きアルミ電線に関する。
なお、本明細書においては、アルミニウムによって製造される電線と、アルミニウム合金によって製造される電線の両方を、アルミ電線と称している。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスには、銅電線が使用されている。そして、このワイヤハーネス同士、あるいはワイヤハーネスと車載機器とを接続するにあたり、ワイヤハーネスの銅電線には端子が取り付けられ、この種の端子は、一般に圧着によって銅電線に取り付けられている。
【0003】
銅電線に圧着する端子は、一般に、銅製の複数の素線を撚り合わせてなる銅電線の導体部が載置される底板部と、底板部に載置された導体部を挟むために底板部に連設された一対の導体加締片とを備えて構成されている。
この一対の導体加締片は、内側に加締めることによって、銅電線の導体部を底板部との間で挟み込み、この挟み込むことによって端子を銅電線の導体部に圧着されようになっている。
【0004】
近年、銅資源の不足に加え、車両の軽量化、材料のリサイクルの容易性を考慮して、銅電線に代えて、アルミニウム電線を用いることが検討されている。しかしながら、アルミニウムは、銅に比べて表面に形成される酸化皮膜が厚く、アルミニウム電線においては、導体部と圧着端子との間の接触抵抗が比較的高くなる傾向にある。
そこで、アルミ電線の導体部と圧着端子との間の接触抵抗を低減するため、圧着端子のバレルをアルミ電線の導体部に強く加締め、アルミ電線の導体部の圧縮率を高くする方法が採られている。この方法によると、アルミ電線の導体部を強く加締めることによってアルミ電線の導体部を構成する各素線の酸化皮膜を破壊し、アルミ電線の導体部と圧着端子との間の接触抵抗の低減を図っている。
【0005】
アルミニウム材と銅材という異種金属同士の接触部(圧着部)に水分が介在すると、アルミニウムと銅の両金属が水中にイオンとして溶け込んで両者の間に電位差などが生じて電食が発生することが知られている。
アルミ電線の導体部と、銅製または銅合金製の圧着端子とを導通接続させる場合、圧着端子のバレルによるアルミ電線の導体部の圧着部分では、高圧縮で圧着することから、アルミ電線の導体部と圧着端子のバレルとの接触部分に浸水することが防止され、電食の発生を回避することができる。
【0006】
しかしながら、圧着端子のバレルによって圧着しているとはいっても防水硬化は完璧なものとはなっていない。そこで、従来は、特許文献1に示されるように、アルミ芯線202のうち、先端側の絶縁被覆201を剥がしてアルミ電線先端部202aを露出し、このアルミ電線先端部202aを、アルミニウムと馴染みやすいSn−Znハンダ等用いて約300℃に溶融した溶融ハンダ203aに浸漬することで、アルミ電線先端部202aの表面に被覆ハンダ203を付着させて、被覆することが行われている。
そして、この特許文献1には、アルミ電線先端部202aの表面に付着させる被覆ハンダ203が、ワイヤーバレル片13による圧着によって割れが生じない程度の厚みであることが望ましいと記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、防食剤を使用することなく電線と端子金具との接続部分の電食を確実に防止するため、金属製の芯線11を絶縁被覆13で覆ったアルミ電線10と、芯線11とは異種の金属製であって、アルミ電線10と接続されるワイヤバレル25を設けた雌端子金具20と、雌端子金具20とイオン化傾向が近い金属を主成分とする半田からなり、アルミ電線10の絶縁被覆13の一部が皮剥きされて露出された芯線11を半田によってシールした状態で、ワイヤバレル25が圧着される半田シール30と、露出された芯線11に連なる絶縁被覆13と半田シール30との間をシールした状態でこれらを接続するシール接続部14とを備えた構成としている。
そして、この特許文献2には、半田シール30は、オーバーラップ圧着方式でワイヤバレル25によって圧着されるようになっているものの、この圧着によって半田シール30が割れないように圧着条件が設定されていると記載されている。
【特許文献1】WO2011/096527A1
【特許文献2】特開2011−210593号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1に開示された接続構造体によると、アルミ電線先端部202aの表面に付着させる被覆ハンダ203を、ワイヤーバレル片13によって均一に圧着するため、ワイヤーバレル片13の圧着によって被覆ハンダ203に割れが生じない程度の厚みに形成しても、ワイヤーバレル片13の圧着によって割れが生じることがあり、この割れ目からアルミ電線先端部202aに水分が侵入し、電食が発生するという問題点を有している。
【0009】
また、特許文献2に開示された端子金具付き電線によると、半田シール30が、オーバーラップ圧着方式でワイヤバレル25によって圧着されるようになっており、この圧着によって半田シール30に割れが生じることが示されているが、それに対する対策が示されておらず、半田シール30が、オーバーラップ圧着方式でワイヤバレル25による圧着によつて割れが生じると、その割れ目からアルミ電線10の絶縁被覆13が皮剥きされて露出された芯線11に水分が侵入し、電食が発生するという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、アルミ電線の導体部に導体部が外気に晒されないようにコーティングしたハンダが、圧着端子の導体圧着部によるアルミ電線の導体部を圧着しても、少なくとも導体部の端部近傍に割れが生じるのを防止し、アルミ電線の導体部に水分が侵入するのを防止して起きる電食が発生するのを防止することのできる端子付きアルミ電線を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線を撚り合わせてなる導体部と該導体部に被覆される絶縁体とからなるアルミ電線の前記絶縁体が剥離され露出する前記導体部に接続される銅製または銅合金製の圧着端子の導体圧着部から前記導体部の先端側が露出してなる圧着端子付きアルミ電線であって、
前記アルミ電線の露出する前記導体部の外周全体に被膜される半田被膜部を備え、
前記圧着端子の圧着部は、
前記半田被膜部に割れが生じる強圧着部と、前記強圧着部の先端側において前記半田被膜部に割れが生じない弱圧着部を有していることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項2に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線は、請求項1に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線において、前記弱圧着部の先端側に該弱圧着部連成されてベルマウス部形成されてなることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項3に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線を撚り合わせてなる導体部と該導体部に被覆される絶縁体とからなるアルミ電線の前記絶縁体が剥離され露出する前記導体部に接続される銅製または銅合金製の圧着端子の導体圧着部から前記導体部の先端側が露出してなる圧着端子付きアルミ電線であって、
前記アルミ電線の露出する前記導体部の外周全体に被膜される半田被膜部を備え、
前記圧着端子の圧着部は、
前記半田被膜部に割れが生じる強圧着部と、前記強圧着部の先端側及び基端側のそれぞれにおいて前記半田被膜部に割れが生じない弱圧着部を有していることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項4に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線は、請求項3に記載の本発明に係る圧着端子付きアルミ電線において、前記弱圧着部の先端側に該弱圧着部連成されてベルマウス部形成されてなり、前記弱圧着部の基端側に該弱圧着部連成されてベルマウス部形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された本発明によれば、アルミ電線の導体部を圧着端子の導体圧着部によって圧着しても、アルミ電線の導体部に形成した半田被膜部がアルミ電線の導体部の先端側で導体圧着部の圧着力によって割れを生じることがなく、アルミ電線の導体部の内部に水分が侵入することを防止することができる。
【0016】
請求項2に記載された本発明によれば、導体圧着部に形成される弱圧着部の先端側に弱圧着部に連成してベルマウス部を形成することにより、導体圧着部を圧着した際に導体圧着部の先端側にエッジが形成されるのを防止することができ、アルミ電線の導体部を傷つけるのを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載された本発明によれば、アルミ電線の導体部を圧着端子の導体圧着部によって圧着しても、アルミ電線の導体部に形成した半田被膜部がアルミ電線の導体部の先端側と基端側のそれぞれで導体圧着部の圧着力によって割れを生じることがなく、アルミ電線の導体部の先端側と基端側のそれぞれからアルミ電線の導体部の内部に水分が侵入することを防止することができる。
【0018】
請求項4に記載された本発明によれば、弱圧着部の先端側に弱圧着部の先端部に連成してベルマウス部を形成し、弱圧着部の基端側に弱圧着部の基端部に連成してベルマウス部を形成することにより、導体圧着部を圧着した際に導体圧着部の先端部と導体圧着部の基端側のそれぞれにエッジが形成されるのを防止することができ、アルミ電線の導体部を傷つけるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例1を示す分解斜視図である。
図2図1に図示の圧着端子付きアルミ電線の絶縁体を剥離して露出した導体部に半田を被覆してなるアルミ電線示す図である。
図3図2に図示のアルミ電線の絶縁体を剥離して露出した導体部に半田を被覆するアルミ電線を導体圧着部に載置した状態を示す図である。
図4図3に図示のアルミ電線を圧着端子の導体圧着部に載置し、アルミ電線を専用の圧着機で圧着端子に圧着する状態を示す図である。
図5図4に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めする状態を示す側面図である。
図6図5に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めて完成した圧着端子付きアルミ電線の導体圧着部の加締め強さを説明するための図である。
図7】本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例2を示す分解斜視図である。
図8図7に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めする状態を示す側面図である。
図9図8に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めて完成した圧着端子付きアルミ電線の導体圧着部の加締め強さを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の圧着端子付きアルミ電線の具体的な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
〔実施例1〕
図1図6には、本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例1が示されている。
図1は、本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例1を示す分解斜視図、図2は、図1に図示の圧着端子付きアルミ電線の絶縁体を剥離して露出した導体部に半田を被覆してなるアルミ電線示す図、図3は、図2に図示のアルミ電線の絶縁体を剥離して露出した導体部に半田を被覆するアルミ電線を導体圧着部に載置した状態を示す図、図4は、図3に図示のアルミ電線を圧着端子の導体圧着部に載置し、アルミ電線を専用の圧着機で圧着端子に圧着する状態を示す図、図5は、図4に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めする状態を示す側面図、図6は、図5に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めて完成した圧着端子付きアルミ電線の導体圧着部の加締め強さを説明するための図である。
【0022】
図1において、符号1はアルミ電線を示している。このアルミ電線1は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線3を撚り合わせて構成される導体部2を有し、この導体部2の外周に絶縁材料によって形成されたシース4を被覆してなる被覆電線によって構成されている。
このアルミ電線1を構成するアルミニウム合金としては、例えば、アルミニウムと鉄との合金が挙げられる。この合金の場合は、アルミニウム製の導体に比べて、延び易く、強度(特に引張強度)を増すことができる。
【0023】
そして、このアルミ電線1は、その端末部(電線の先端部分)において、所定の長さでシース4が除去されて導体部2が露出しており、このアルミ電線1の端末部に圧着端子10が圧着される。この導体部2には、図2の鎖線で示すように、導体部2の外周全体にわたって、半田5aが塗布され、導体部2の外周に被膜半田部5が形成されている。
この導体部2の外周全体にわたって、図2の鎖線で示すように半田5aを塗布被覆して半田被膜部5を形成する方法としては、溶融した半田を収容した容器にアルミ電線1の導体部2を浸漬して半田5を被覆する方法が採られる。
このアルミ電線1の導体部2の外周に形成される半田被膜部5は、超音波振動を利用して、超音波振動を誘起した溶融する半田5aにアルミ電線1の導体部2を浸漬して半田付けを行って半田被膜部5を形成しても良い。
【0024】
このようにアルミ電線1の導体部2は、図2に示すように、外周に半田5aを塗布し、半田被膜部5を形成すると、露出されたアルミ電線1の導体部2から、この導体部2に連なるシース4にかけての領域が半田被膜部5によって覆われる。このようにアルミ電線1の導体部2が半田被膜部5によって覆われることにより、露出された導体部2が防水される。そして、導体部2に圧着端子10が圧着されることで、導体部2と圧着端子10との間の電気的接続が取られる。
【0025】
圧着端子10は、図1に示すように、銅合金等の導電性金属製の板材をプレス成形(折り曲げ成形を含む。)することによって形成されている。この圧着端子10の先端部に相手方端子(図示していない)との接続部11が設けられており、その基端部にアルミ電線1を保持する保持部12が設けられている。
保持部12は、その先端側にアルミ電線1の導体部2の先端部分を保持する導体圧着部13と、その基端側にアルミ電線1のシース4を保持するシース保持部14とを備えている。
【0026】
また、導体圧着部13の底板部20から導体圧着部13の底板部22までが共通の底板部として連続して形成されている。さらに、導体圧着部13の導体加締片21とシース保持部14のシース加締片23との間には、それら導体加締片21およびシース加締片23に連続した壁として、導体加締片21およびシース加締片23の加締め加工に伴って導体圧着部13とシース保持部14の間を覆うように塑性変形する一対の覆い壁15が設けられている。
このように図1に図示の圧着端子10は、導体部2の先端側が導体圧着部13から露出する先端露出型の構成となっている。
【0027】
導体圧着部13は、図3に示すように、底板部20と、導体加締片21aと導体加締片21bとからなる一対の導体加締片21とを備え、圧着端子10の長手方向に対して直交する断面において略U字状に成形されており、底板部20に、アルミ電線1の導体部2を載置するようになっている。
また、シース保持部14は、底板部22と、シース加締片23aとシース加締片23bとからなる一対のシース加締片23とを備え、圧着端子10の長手方向に対して直交する断面において略U字状に成形されており、底板部22に、アルミ電線1の端末部のシース4が被覆されている部分を載置するようになっている。
【0028】
導体圧着部13は、底板部20と、該底板部20の左右両側縁から上方に延長するように一対の導体加締片21a,21bが起立形成されている。そして、この圧着端子10の導体圧着部13の上に、図4に示すように、アルミ電線1の導体部2を位置決めして、専用の圧着機30によってアルミ電線1の導体部2を圧着端子10に圧着接続する。
【0029】
圧着機30によってアルミ電線1の導体部2を圧着端子10に圧着すると、一対の導体加締片21a,21bは、それぞれアルミ電線1の導体部2を包み込むように内側に曲げられた際、一対の導体加締片21a,21bのそれぞれの先端部21c,21dが、互いの外面を擦り合わせながら底板部20に向けて位置的に近接した後に、互いの導体加締片21a,21bの並び方向(左右方向)下側を向いて曲がってアルミ電線1の導体部2に食い込むようになっている。
【0030】
専用の圧着機30は、上側圧着ヘッド31と、下側圧着ヘッド32とからなる加締めヘッド33を備えている。
上側圧着ヘッド31には、図5に示すように、圧着端子10の保持部12に向かった圧着面に段差が設けられている。すなわち、圧着機30の上側圧着ヘッド31には、圧着端子10の導体加締片21の中央を強い圧着力で加締めて強圧着部24を形成する強圧着部形成部33が設けられている。この強圧着部形成部33の先端側には、強圧着部形成部33よりも弱い圧着力で加締めて弱圧着部25を形成する弱圧着部形成部34が設けられている。
【0031】
また、弱圧着部形成部34は、強圧着部形成部33と一緒に圧着端子10の導体加締片21を加締めた際、アルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さの加締め力(圧着力)を備えたものとなっている。
したがって、圧着端子10の導体加締片21を加締めた際、アルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さの加締め力(圧着力)を備えたものとなっている。
すなわち、専用の圧着機30の上側圧着ヘッド31によって圧着端子10の導体加締片21を加締めた際、強圧着部形成部33においては、アルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じても、弱圧着部形成部34においては、アルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じないような状態になっている。
【0032】
強圧着部形成部33の圧着力と弱圧着部形成部34の圧着力の強弱の設定は、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する強圧着部形成部33の圧着面の角度と、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する弱圧着部形成部34の圧着面の角度を変えることによって行っている。
強圧着部形成部33は、圧着端子10の導体加締片21の底部16と略平行に形成されている。これに対し、弱圧着部形成部34は、強圧着部形成部33の圧着面と所定の角度(α)の拡がりをもって形成されている。このように弱圧着部形成部34に、強圧着部形成部33の圧着面と所定の角度(α)の拡がりを持たせることにより、専用の圧着機30の上側圧着ヘッド31によって圧着端子10の導体加締片21を加締めた際に、同じ圧着力で加締めても強圧着部形成部33と弱圧着部形成部34とに圧着力に差を持たせることができるようになっている。
【0033】
弱圧着部形成部34の先端側には、弱圧着部形成部34の先端側に連成して、ベルマウス部形成部35が設けられている。このベルマウス部形成部35は、圧着端子10の導体加締片21の先端にベルマウス部26を形成するためのものである。このベルマウス部26は、着端子10の導体加締片21を加締めた際に、導体加締片21を均一の形状にして加締めると、導体加締片21によってエッジを形成してしまい、このエッジによって着端子10よりも柔らかいアルミ電線1の導体部2に傷を付けてしまい、アルミ電線1の導体部2を破損してしまうのを防止するために、圧着端子10の導体加締片21の端部をベルの形状に似せて外側に拡がりをもって形成するものである。
したがって、弱圧着部形成部34の圧着力とベルマウス部形成部35の圧着力の強弱の設定は、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する弱圧着部形成部34の圧着面の角度と、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する弱圧着部形成部34の圧着面の角度を変えることによって行っている。
【0034】
弱圧着部形成部34は、圧着端子10の導体加締片21の底部16と所定角度(α)に形成されている。これに対し、ベルマウス部形成部35は、弱圧着部形成部34の圧着面と所定の角度(β)の拡がりをもって形成されている。
この弱圧着部形成部34の所定角度(α)と、ベルマウス部形成部35の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。
このようにベルマウス部形成部35に、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する圧着面の角度を、圧着端子10の導体加締片21の底部16に対する弱圧着部形成部34の圧着面と所定の角度(α)の拡がりよりも大きくすることによって、圧着端子10の導体加締片21を弱圧着部形成部34よりもベルマウス部形成部35を弱く加締めることで導体加締片21にエッジを形成するのを防止している。
【0035】
また、強圧着部形成部33の基端側には、強圧着部形成部33に連成してアルミ電線1の導体部2からシース4に架けた部分を圧着する傾斜部27を形成する形傾斜部成部36が、この傾斜部形成部36に連接してシース4を圧着して樹脂部28を形成する樹脂部圧着部形成部37が設けられている。
また、下側圧着ヘッド32では、上側を向いた圧着面32aが面一に形成されている。したがって、上側圧着ヘッド31と下側圧着ヘッド32とによって圧着端子10の導体圧着部13の導体加締片21と、圧着端子10のシース保持部14のシース加締片23とが加締められると、図6に示すような端子付きアルミ電線100が形成される。
【0036】
図6に示すように上側圧着ヘッド31と下側圧着ヘッド32とによって加締められた端子付きアルミ電線100の圧着端子10には、その基端部にアルミ電線1を保持する保持部12が設けられており、保持部12には、先端側にアルミ電線1の導体部2の先端部分を保持する導体圧着部13と、基端側にアルミ電線1のシース4を保持するシース保持部14とが備えられている。
圧着端子10の保持部12には、強い圧着力で加締められた強圧着部24と、強圧着部24よりも弱い圧着力で加締められた弱圧着部25と、弱圧着部25よりも弱い圧着力で加締められたベルマウス部26と、アルミ電線1の導体部2からシース4に架けた部分が加締められた傾斜部27と、シース4の部分が加締められた樹脂部28とが設けられている。
【0037】
強圧着部24は、アルミ電線1の導体部2の形状に合わせて距離aの長さ強い圧着力で加締められている。この強圧着部24の圧着力は、強圧着部形成部33を加締めたときにアルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じる程度の強さを有している。
また、この距離aの長さは、強圧着部形成部33を加締めたときに導体部2の表面の半田被膜部5を割って、アルミ電線1の導体部2と圧着端子10の導体加締片21との接続が十分保持できる長さとなっている。
また、弱圧着部25は、強圧着部24とは外側に所定の角度(α)の拡がりを持たせ、距離bの長さ分、強圧着部24の加締め力よりも弱い圧着力で加締められている。この弱圧着部25の圧着力は、弱圧着部形成部34を加締めたときにアルミ電線1の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さとなっている。
また、この距離bの長さは、弱圧着部形成部34を加締めたときに導体部2の表面の半田被膜部5が割れることなく保持され、アルミ電線1の導体部2の防水を保持できる長さとなっている。
【0038】
さらに、ベルマウス部26は、弱圧着部25とは外側に所定の角度(β)の拡がりを持たせて弱圧着部25の加締め力よりもさらに弱い圧着力で加締められている。このベルマウス部26の圧着力は、ベルマウス部形成部35を加締めたときにベルマウス部形成部35によってベルマウス部26にエッジが生じることがない程度圧着力となっている。
この弱圧着部25の所定角度(α)と、ベルマウス部26の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。この弱圧着部25の所定角度(α)と、ベルマウス部26の所定の角度(β)は、共に上側圧着ヘッド31によって形成される。
圧着端子10の保持部12の強圧着部24の基端側には、アルミ電線1の導体部2からシース4に架けた部分を加締めた傾斜部27が設けられている。さらに、アルミ電線1のシース4の部分を加締めた樹脂部28が設けられている。
【0039】
このように本実施例によれば、銅製または銅合金製の圧着端子の強圧着部において強く圧着されることでとアルミ電線の導体部と良好な導通接続を保ち、圧着端子の弱圧着部とベルマウス部においてアルミ電線の導体部の表面に形成された半田被膜部が割れることなく保持され、長期間にわたって水分が侵入するのを防止することができる。
また、本実施例によれば、防食材を被覆する必要がないので低コストで電食を防止することができる。
【0040】
〔実施例2〕
図7図9には、本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例2が示されている。
図7は、本発明に係る圧着端子付きアルミ電線の実施例2を示す分解斜視図、図8は、図7に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めする状態を示す側面図、図8は、図8に図示のアルミ電線を載置した圧着端子の導体圧着部を専用の圧着機によって圧着加締めて完成した圧着端子付きアルミ電線の導体圧着部の加締め強さを説明するための図である。
【0041】
図7図9に図示の実施例2が図1図6に図示の実施例1と異なる点は、図1図6に図示の実施例1が導体部の先端側が圧着端子の導体圧着部から露出する型の圧着端子付きアルミ電線であるのに対し、図7図9に図示の実施例2が導体部の先端側及び基端側が圧着端子の導体圧着部から露出する型の圧着端子付きアルミ電線である点である。
図7において、符号40はアルミ電線を示している。このアルミ電線40は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の複数の素線3を撚り合わせて構成される導体部2を有し、この導体部2の外周に絶縁材料によって形成されたシース4を被覆してなる被覆電線によって構成されている。
【0042】
図7において、アルミ電線40は、図1に図示のアルミ電線1と同じ構成を有しており、このアルミ電線40には、その端末部(電線の先端部分)において、所定の長さでシース4が除去されて露出している導体部2が露出されている。
この導体部2には、図7の鎖線で示すように、導体部2の外周全体にわたって、半田5aが塗布され、導体部2の外周に被膜半田部5が形成されている。
【0043】
このようにアルミ電線40の導体部2は、図7に示すように、外周に半田5aを塗布し、半田被膜部5を形成すると、露出されたアルミ電線40の導体部2から、この導体部2に連なるシース4にかけての領域が半田被膜部5によって覆われる。このようにアルミ電線40の導体部2が半田被膜部5によって覆われることにより、露出された導体部2が防水される。そして、導体部2に圧着端子50が圧着されることで、導体部2と圧着端子50との間の電気的接続が取られる。
【0044】
圧着端子50は、図7に示すように、銅合金等の導電性金属製の板材をプレス成形(折り曲げ成形を含む。)することによって形成されている。この圧着端子50の先端部に相手方端子(図示していない)との接続部51が設けられており、その基端部にアルミ電線40を保持する保持部52が設けられている。
保持部52は、その先端側にアルミ電線40の導体部2の先端部分を保持する導体圧着部53と、その基端側にアルミ電線40のシース4を保持するシース保持部54とを備えている。
また、導体圧着部53の底板部60から導体圧着部53の底板部62までが共通の底板部として連続して形成されている。
このように図7に図示の圧着端子50は、導体部2の先端側及び基端側が圧着端子50の導体圧着部53から露出する型の構成となっている。
【0045】
専用の圧着機70は、図8に示すように、上側圧着ヘッド71と、下側圧着ヘッド72とからなる加締めヘッド73を備えている。
上側圧着ヘッド71には、図5に示すように、圧着端子50の保持部52に向かった圧着面に段差が設けられている。すなわち、圧着機30の上側圧着ヘッド71には、圧着端子50の導体加締片61の中央を強い圧着力で加締めて強圧着部64を形成する強圧着部形成部73が設けられている。この強圧着部形成部73の先端側には、強圧着部形成部73よりも弱い圧着力で加締めて弱圧着部65を形成する弱圧着部形成部74が設けられている。
【0046】
また、弱圧着部形成部74は、強圧着部形成部73と一緒に圧着端子50の導体加締片61を加締めた際、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さの加締め力(圧着力)を備えたものとなっている。
したがって、圧着端子50の導体加締片61を加締めた際、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さの加締め力(圧着力)を備えたものとなっている。
すなわち、専用の圧着機70の上側圧着ヘッド71によって圧着端子50の導体加締片61を加締めた際、強圧着部形成部73においては、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じても、弱圧着部形成部74においては、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じないような状態になっている。
【0047】
強圧着部形成部73の圧着力と弱圧着部形成部74の圧着力の強弱の設定は、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する強圧着部形成部73の圧着面の角度と、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部74の圧着面の角度を変えることによって行っている。
強圧着部形成部73は、圧着端子50の導体加締片61の底部56と略平行に形成されている。これに対し、弱圧着部形成部74は、強圧着部形成部73の圧着面と所定の角度(α)の拡がりをもって形成されている。このように弱圧着部形成部74に、強圧着部形成部73の圧着面と所定の角度(α)の拡がりを持たせることにより、専用の圧着機70の上側圧着ヘッド71によって圧着端子50の導体加締片61を加締めた際に、同じ圧着力で加締めても強圧着部形成部73と弱圧着部形成部74とに圧着力に差を持たせることができるようになっている。
【0048】
弱圧着部形成部74の先端側には、弱圧着部形成部74の先端側に連成して、ベルマウス部形成部75が設けられている。このベルマウス部形成部75は、圧着端子50の導体加締片61の先端にベルマウス部66を形成するためのものである。このベルマウス部66は、着端子50の導体加締片61を加締めた際に、導体加締片61を均一の形状にして加締めると、導体加締片61によってエッジを形成してしまい、このエッジによって着端子50よりも柔らかいアルミ電線40の導体部2に傷を付けてしまい、アルミ電線40の導体部2を破損してしまうのを防止するために、圧着端子50の導体加締片61の端部をベルの形状に似せて外側に拡がりをもって形成するものである。
したがって、弱圧着部形成部74の圧着力とベルマウス部形成部75の圧着力の強弱の設定は、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部74の圧着面の角度と、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対するベルマウス部形成部75の圧着面の角度を変えることによって行っている。
【0049】
弱圧着部形成部74は、圧着端子50の導体加締片61の底部56と所定角度(α)に形成されている。これに対し、ベルマウス部形成部75は、弱圧着部形成部74の圧着面と所定の角度(β)の拡がりをもって形成されている。
この弱圧着部形成部74の所定角度(α)と、ベルマウス部形成部75の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。
このようにベルマウス部形成部75に、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する圧着面の角度を、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部74の圧着面と所定の角度(α)の拡がりよりも大きくすることによって、圧着端子50の導体加締片21を弱圧着部形成部74よりもベルマウス部形成部75を弱く加締めることで導体加締片61にエッジを形成するのを防止している。
【0050】
また、強圧着部形成部73の基端側には、強圧着部形成部73よりも弱い圧着力で加締めて弱圧着部65を形成する弱圧着部形成部76が設けられている。この弱圧着部形成部76は、弱圧着部形成部74と同様、強圧着部形成部73と一緒に圧着端子50の導体加締片61を加締めた際、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さの加締め力(圧着力)を備えたものとなっている。
したがって、専用の圧着機70の上側圧着ヘッド71によって圧着端子50の導体加締片61を加締めた際、強圧着部形成部73においては、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じても、弱圧着部形成部76においては、アルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じないような状態になっている。
【0051】
強圧着部形成部73の圧着力と弱圧着部形成部76の圧着力の強弱の設定は、強圧着部形成部73の圧着力と弱圧着部形成部74の圧着力の強弱の設定と同様、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する強圧着部形成部73の圧着面の角度と、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部76の圧着面の角度を変えることによって行っている。
すなわち、弱圧着部形成部76を、強圧着部形成部73の圧着面と所定の角度(α)の拡がりをもって形成し、弱圧着部形成部76に、強圧着部形成部73の圧着面と所定の角度(α)の拡がりを持たせることにより、専用の圧着機70の上側圧着ヘッド71によって圧着端子50の導体加締片61を加締めた際に、同じ圧着力で加締めても強圧着部形成部73と弱圧着部形成部74とに圧着力に差を持たせることができるようになっている。
【0052】
また、弱圧着部形成部76の基端側には、弱圧着部形成部76の基端側に連成して、ベルマウス部形成部77が設けられている。このベルマウス部形成部77は、ベルマウス部形成部75と同様、圧着端子50の導体加締片61の端部をベルの形状に似せて外側に拡がりをもって形成するものである。
したがって、弱圧着部形成部76の圧着力とベルマウス部形成部77の圧着力の強弱の設定は、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部76の圧着面の角度と、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対するベルマウス部形成部77の圧着面の角度を変えることによって行っている。
【0053】
弱圧着部形成部76は、圧着端子50の導体加締片61の底部56と所定角度(α)に形成されている。これに対し、ベルマウス部形成部77は、弱圧着部形成部74の圧着面と所定の角度(β)の拡がりをもって形成されている。
この弱圧着部形成部76の所定角度(α)と、ベルマウス部形成部77の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。
このようにベルマウス部形成部77に、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する圧着面の角度を、圧着端子50の導体加締片61の底部56に対する弱圧着部形成部74の圧着面と所定の角度(α)の拡がりよりも大きくすることによって、圧着端子50の導体加締片61を弱圧着部形成部76よりもベルマウス部形成部75を弱く加締めることで導体加締片61にエッジを形成するのを防止している。
【0054】
下側圧着ヘッド72では、上側を向いた圧着面72aが面一に形成されている。したがって、上側圧着ヘッド71と下側圧着ヘッド72とによって圧着端子50の導体圧着部53の導体加締片61と、圧着端子50のシース保持部54のシース加締片63とが加締められると、図9に示すような端子付きアルミ電線200が形成される。
【0055】
図9に示すように上側圧着ヘッド71と下側圧着ヘッド72とによって加締められた端子付きアルミ電線200の圧着端子50の保持部52には、強い圧着力で加締められた強圧着部64と、強圧着部64よりも弱い圧着力で加締められた弱圧着部65と、弱圧着部25よりも弱い圧着力で加締められたベルマウス部66と、強圧着部64よりも弱い圧着力で加締められた弱圧着部66と、弱圧着部25よりも弱い圧着力で加締められたベルマウス部67とが設けられている。
【0056】
強圧着部64は、アルミ電線40の導体部2の形状に合わせて距離aの長さ強い圧着力で加締められている。この強圧着部64の圧着力は、強圧着部形成部73を加締めたときにアルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じる程度の強さを有している。
また、この距離aの長さは、強圧着部形成部73を加締めたときに導体部2の表面の半田被膜部5を割って、アルミ電線40の導体部2と圧着端子50の導体加締片61との接続が十分保持できる長さとなっている。
また、弱圧着部65は、強圧着部64とは外側に所定の角度(α)の拡がりを持たせ、距離bの長さ分、強圧着部64の加締め力よりも弱い圧着力で加締められている。この弱圧着部65の圧着力は、弱圧着部形成部74を加締めたときにアルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さとなっている。
また、この距離bの長さは、弱圧着部形成部74を加締めたときに導体部2の表面の半田被膜部5が割れることなく保持され、アルミ電線40の導体部2の防水を保持できる長さとなっている。
【0057】
さらに、ベルマウス部66は、弱圧着部65とは外側に所定の角度(β)の拡がりを持たせて弱圧着部65の加締め力よりもさらに弱い圧着力で加締められている。このベルマウス部66の圧着力は、ベルマウス部形成部75を加締めたときにベルマウス部形成部75によってベルマウス部66にエッジが生じることがない程度圧着力となっている。
この弱圧着部65の所定角度(α)と、ベルマウス部66の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。この弱圧着部65の所定角度(α)と、ベルマウス部66の所定の角度(β)は、共に上側圧着ヘッド71によって形成される。
【0058】
また、弱圧着部67は、強圧着部64の基端側に設けられ、強圧着部64とは外側に所定の角度(α)の拡がりを持たせ、距離bの長さ分、強圧着部64の加締め力よりも弱い圧着力で加締められている。この弱圧着部67の圧着力は、弱圧着部形成部74を加締めたときにアルミ電線40の導体部2の表面に形成されている半田被膜部5に割れが生じない程度の強さとなっている。
また、この距離bの長さは、弱圧着部形成部74を加締めたときに導体部2の表面の半田被膜部5が割れることなく保持され、アルミ電線40の導体部2の防水を保持できる長さとなっている。
【0059】
さらに、ベルマウス部68は、弱圧着部67の基端側に設けられ、弱圧着部67とは外側に所定の角度(β)の拡がりを持たせて弱圧着部67の加締め力よりもさらに弱い圧着力で加締められている。このベルマウス部68の圧着力は、ベルマウス部形成部75を加締めたときにベルマウス部形成部75によってベルマウス部68にエッジが生じることがない程度圧着力となっている。
この弱圧着部67の所定角度(α)と、ベルマウス部68の所定の角度(β)とは、
β>α
との関係を有している。この弱圧着部67の所定角度(α)と、ベルマウス部68の所定の角度(β)は、共に上側圧着ヘッド71によって形成される。
【0060】
このように本実施例によれば、銅製または銅合金製の圧着端子の強圧着部において強く圧着されることでとアルミ電線の導体部と良好な導通接続を保ち、圧着端子の弱圧着部とベルマウス部においてアルミ電線の導体部の表面に形成された半田被膜部が割れることなく保持され、アルミ電線の導体部の外部に露出する部分は、外周に形成される半田被膜部によって長期間にわたって水分が侵入するのを防止することができる。
また、本実施例によれば、防食材を被覆する必要がないので低コストで電食を防止することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,40……………………………………アルミ電線
2……………………………………………導体部
4……………………………………………シース
5a…………………………………………半田
5……………………………………………半田被膜部
10,50…………………………………圧着端子
12,52…………………………………保持部
13,53…………………………………導体圧着部
14,54…………………………………シース保持部
15…………………………………………覆い壁
20,22,60,62…………………底板部
21,61…………………………………一対の導体加締片
21a,21b,61a,61b………導体加締片
23,63…………………………………シース加締片
23a,23b,63a,63b………シース加締片
24,64…………………………………強圧着部
25,65,67…………………………弱圧着部
26,66,68…………………………ベルマウス部
27…………………………………………部傾斜部
28…………………………………………樹脂部
30,70…………………………………圧着機
31,71…………………………………上側圧着ヘッド
32,72…………………………………下側圧着ヘッド
33,73…………………………………強圧着部形成部
34,74…………………………………強圧着部形成部
35,75…………………………………ベルマウス部形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9