(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5914959
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】農用高所作業機
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20160422BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20160422BHJP
A01D 46/24 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
B66F9/24 W
B66F11/04
A01D46/24 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-97865(P2014-97865)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-214399(P2015-214399A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000247904
【氏名又は名称】有限会社河島農具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】河島 隆則
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−068684(JP,A)
【文献】
特開2000−316300(JP,A)
【文献】
実開平04−086699(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 11/04
A01D 46/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のクローラーと、該左右のクローラーによって走向する走行車本体と、該走行車本体の後方中央部に水平方向に回転自在に支持されているブーム支柱と、該ブーム支柱の上方端に上下方向に回動自在となるように下端側を固定されているブームと、該ブームの上端に水平姿勢を維持できるように固定されると共に操縦部を具備したゴンドラと、先端が前記ブームの中間部に回転自在に固定されたピストンロッドを有し下端がブーム支柱に回転自在に支持される垂直油圧シリンダーと、前記走行車本体に一端が固定され他端のピストンロッドの先端が前記ブーム支柱から突出したブラケットに固定された水平油圧シリンダー又は水平電動シリンダーと、エンジンによって回転駆動する前記垂直、水平油圧シリンダー等に油圧を供給する油圧パッケージを具備し、更に、前記走行車本体に固定しているエンジンの回転駆動により発電してバッテリーを補充電する電力を発生させる主ジェネレーターを具備してなる農用高所作業機において、
前記主ジェネレーターとは別に前記エンジンの回転駆動軸からの動力伝達により発電してバッテリーを補充電する電力を発生させる第2ジェネレーターを具備し、
前記エンジンの回転駆動軸からの動力伝達が、前記エンジンの回転駆動軸に設けた第1プーリーに巻回してある第1ベルトに巻回した第2プーリーにより回転駆動する前記油圧パッケージの回転駆動軸に設けた第3プーリーに巻回した第2ベルトからの動力伝達によるものであることを特徴とする農用高所作業機。
【請求項2】
前記第2ジェネレーターからの電力供給によって補充電されるバッテリーは、前記主ジェネレーターからの電力供給によって補充電されるバッテリーと同じものである請求項1に記載の農用高所作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農用高所作業機の改良に関し、特に、電力の消費が激しいバッテリーへの補充電を行なえ得る農用高所作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、農用高所作業機100は、果樹園における果樹採取、果樹消毒、果樹の手入れなどの作業などのように人の背丈を超える高所での農作業を効率よく行うために使用する機材である。その主な構成は、
図4に示すように、左右のクローラ―2、2によって走向する走行車本体3と、該走行車本体3の後方中央部に水平方向に回転自在に支持されているブーム支柱4と、該ブーム支柱4の上方端に上下方向に回動自在となるように下端側を固定されているブーム5と、該ブーム5の上端に水平姿勢を維持できるように固定されておりその内部に操縦部6を具備したゴンドラ7と、先端が前記ブーム5の中間部に回転自在に固定されたピストンロッド8aを有し下端がブーム支柱4に回転自在に支持されて前記ピストンロッド8aの伸縮によりゴンドラ7を上下方向に移動させる垂直油圧シリンダー8と、前記走行車本体3内に収納されてその一端側が走行車本体3に固定され他端のピストンロッド9aの先端が前記ブーム支柱4の下方横からから突出したブラケット4aに固定されてピストンロッド9aの伸縮によりブーム支柱4を水平方向左右に回動させる水平油圧シリンダー9又は水平電動シリンダー10を具備してなるものである。
【0003】
前記走行車本体3には、
図5に示すように、エンジン11、燃料タンク12、エンジン11の回転駆動軸11aに固定した第1プーリー13、エンジン11の駆動力により発電する装置内に組込まれた主ジェネレーター14などからなる駆動部15と、前記主ジェネレーター14と電気的に接続されていてここで発生した電気を蓄電するバッテリー16と、前記第1プーリー13に巻回した第1ベルト17に巻回して回転力を伝達される第2プーリー18からの回転動力伝達によって油圧を発生させて前記垂直及び水平油圧シリンダー8,9等に供給する油圧パッケージ19等を具備している。エンジン11を始動させる図外の電動機や電動シリンダー、更には操縦部6の電気系統などの制御ユニットなどはバッテリー16と電気的に接続されていて、ここから供給される電気により動作する。
【0004】
このような農用高所作業機100によって、例えば、樹木の上方に実った果実を採取する作業の場合には、ゴンドラ7に載った作業者Aは操縦部6の操作によって採取作業が最も効率よく行える最適の位置にゴンドラ7を移動させる。この時の操縦は、2つのクローラ2,2を回転させる駆動部15の停止、始動や前後進を繰り返すことによる走行車本体3の前後左右方向への移動、或いは垂直、水平油圧シリンダー8,9や水平電動シリンダー10の伸縮のコントロールによるゴンドラ7の上下及び左右方向への移動等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4915627号公報
【特許文献2】特許第4923305号公報
【特許文献3】特許第5158445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の農用高所作業機100によると、ゴンドラ7の作業者Aの仕事が最もし易い状態を維持するために、その位置を常時こまめに、即ち、作業者Aが異なった位置にある多数の果実をもぎ取り易いように逐次こまめに移動させる必要がある。このこまめな移動は、操作部6の操作により、クローラ2、2を頻繁に停止、始動させるので駆動部15のエンジン11を始動させる図外の電動機のスイッチの入切の回数が増えたり、ゴンドラ7の向きを変えるために垂直、水平油圧シリンダー8,9や電動シリンダー10を頻繁に作動させたりするなど、電動機やシリンダーの始動、停止時に電気を消費するという問題点がある。
【0007】
更に、前記主ジェネレーター14は、クローラ2、2を駆動させるエンジン11を動力源として発電しているが、作業の性質上、走行車本体3を移動させるクローラ2、2の作動時間が少ないので、エンジン11が停止する時間が多く、又、作動していてもアイドリング時間も多く、結果としてエンジン11の全体の回転数が少なく、この点からも補充電が十分になされないという問題点がある。
【0008】
加えて、近隣に家屋があるような場合にはアイドリングも騒音の原因となるのでこれさえも停止しなければならなくなる場合が多く、なお一層補充電が出来なく、且つ、エンジンン11の始動、停止回数が増えて、バッテリー16の消耗が激しくなり、結果として、バッテリー16の電力の残量を常時気にしながら作業しなければならなく、作業に支障を生じるという問題点がある。
【0009】
この発明は、このようなバッテリー16の消耗が激しく電力不足が生じ易いという従来の農用高所作業機100の有する特有の問題点を解決するためになされたものであって、その手段とするところは、
本発明においては、左右のクローラーと、該左右のクローラーによって走向する走行車本体と、該走行車本体の後方中央部に水平方向に回転自在に支持されているブーム支柱と、該ブーム支柱の上方端に上下方向に回動自在となるように下端側を固定されているブームと、該ブームの上端に水平姿勢を維持できるように固定されると共に操縦部を具備したゴンドラと、先端が前記ブームの中間部に回転自在に固定されたピストンロッドを有し下端がブーム支柱に回転自在に支持される垂直油圧シリンダーと、前記走行車本体に一端が固定され他端のピストンロッドの先端が前記ブーム支柱の下方横からから突出したブラケットに固定された水平油圧シリンダー又は水平電動シリンダーと、
エンジンによって回転駆動する前記垂直、水平油圧シリンダー等に油圧を供給する油圧パッケージを具備し、更に、前記走行車本体に固定しているエンジンの回転駆動により発電してバッテリーを補充電する電気を発生させる主ジェネレーターを具備してなる農用高所作業機において、前記主ジェネレーターとは別に前記エンジンの回転駆動軸からの動力伝達により発電してバッテリーを補充電する電気を発生させる第2ジェネレーターを具備してなる農用高所作業機としたところにある。
【0010】
請求項
1の発明は、前記エンジンの回転駆動軸からの動力伝達が、前記エンジンの回転駆動軸に設けた第1プーリーに巻回してある第1ベルトに巻回した第2プーリーにより回転駆動する前記油圧パッケージの回転駆動軸に設けた第3プーリーに巻回した第2ベルトからの動力伝達によるものである農用高所作業機としたことにある。
【0012】
請求項
2の発明は、前記第2ジェネレーターからの電力供給によって補充電されるバッテリーは、前記主ジェネレーターからの電力供給によって補充電されるバッテリーと同じである農用高所作業機としたことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の農用高所作業機によると、バッテリーへの補充電が、エンジンの回転駆動軸からの動力伝達により発電して補充電する電気を発生させる主ジェネレーターの他に、エンジンの回転駆動軸に設けてあるプーリーからベルトを介して回転駆動する第2ジェネレーターを設け、これによって発電した電気をバッテリーの補充電用に利用するものである。これにより、エンジンの駆動中は、主と第2の2つのジェネレーターによってバッテリーへの補充電が行われるので、作業の性質上こまめな操縦になってエンジンの始動、停止の回数が増えてバッテリーの電気消費が多くても電力不足になることが生じない。又、エンジンの駆動時間が全体として短くなって補充電の時間が少なくなっても、また、エンジンの回転数が少なくなっても十分な補充電を行うことが出来、電力不足を生じさせなく、結果として、バッテリーの電気の残量を気にする必要がないので作業に集中する事が
出来る。
【0014】
又、請求項
1記載の農用高所作業機によると、エンジンの回転駆動軸の周囲に新たなプーリーやベルト更には第2ジェネレーターを設置するスペースがない場合であっても、油圧パッケージの駆動軸から回転駆動力を取るので、適用範囲が広くなる利点がある。
【0016】
請求項
2の農用高所作業機によると、主及び第2ジェネレーターで生じた電力を一つのバッテリーに補充電するだけで良いので、バッテリーは1個で良く経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の農用高所作業機の走行車本体内を透視した斜視図
【
図4】従来の農用高所作業機の走行車本体内を透視した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の農用高所作業機1の実施形態について
図1乃至3を参照しつつ説明する。
図4,5の従来技術と同じ構成要件については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図1、2に示すこの発明の第1実施形態及び
図3に示す第2実施形態の農用高所作業機1が、前記従来技術の農用高所作業機100と異なるところは、前記主ジェネレーター14に加えて、第2ジェネレーター20によっても発電しバッテリー16に補充電する電気を供給することにある。又、第1実施形態と第2実施形態の農用高所作業機1が異なるところは、エンジン11の回転駆動軸11aからの第2ジェネレーター20の回転駆動軸20aへの回転力の伝達の仕方であり、その他の構成は同じである。なお、垂直油圧シリンダー8と水平油圧シリンダー9のブーム支柱4、ブーム6、走行車本体3への取付けは、それぞれのシリンダーとピストンロッドが逆であっても同じである。
【0020】
第1実施形態の農用高所作業機1は、前記エンジン11の回転駆動軸11aに設けてある第1プーリ―13に巻回した第1ベルト17に巻回して回転力を伝達している第2プーリ―18によって回転する油圧パッケージ19の図外の回転駆動軸に第3プーリー21を設け、この第3プーリー21に巻回した第2ベルト22に巻回して回転力を伝達している第4プーリ―23によって回転する回転駆動軸20aの回転によって発電する第2ジェネレーター20を走行車本体3に固定して設けたものである。
【0021】
第2実施形態の農用高所作業機1が前記第1実施形態と異なるところは、
図3に示すように、第2ジェネレーター20を、エンジン11の回転駆動軸11aに設けてある第1プーリ―13とは別に第5プーリ―25を設け、この第5プーリ―25に巻回している第3ベルト26に巻回して回転力を伝達している第6プーリ―27によって回転駆動する回転駆動軸20aの回転によって発電するようにしたものである。
【0022】
前記第2ジェネレーター20は、バッテリー16と電気的に接続されているので、ここで生じた電気はこのバッテリー16に補充電される。このバッテリー16は主ジェネレーター14で補充電されるものと同じバッテリー16であっても良いが、別途設けた図外の第2バッテリーであっても良い。この場合には、エンジン11の図外の駆動源等は双方のバッテリーと並列に接続されていて双方から必要な電気の供給を受けるので、いずれか一方のバッテリーの電力が弱くなっても他方のバッテリーから供給を受けるのでエンジン11の始動に影響を受けることがない。又、一つのバッテリー16の場合と較べてバッテリーの寿命が長持ちする。また、主バッテリー16又は第2バッテリーに異常を来たしたような場合であっても、エンジンン11の始動に影響を受けないので、作業が継続して行なうことが出来る。
【0023】
前記第1実施形態と第2形態の農用高所作業機1は、第2ジェネレーター20へのエンジン11の回転駆動軸11aからの回転伝達力の経路が異なることにより、走行車本体3の機構等に応じて最も適切な方を選ぶことが出来るようにしたものである。即ち、前者の場合には、エンジン11の回転駆動軸11aの周囲に新たなプーリーやベルト更には第2ジェネレーター20を設置するスペースがない場合であっても、油圧パッケージ19の回転駆動軸から回転駆動力を取るので、適用範囲が広くなる利点がある。
【0024】
又、後者の場合には、エンジン11の回転駆動軸11aからプーリー13やベルト26を介して直接に第2ジェネレーター20の回転駆動力を得るので、動力伝達機構が簡易となる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る農用高所作業機は、始動、停止などを頻繁に繰り返して作業する場合であっても、バッテリーへの補充電が継続的に十分になされるので、バッテリーが作業途中で切れることがない。そのため、樹木の果実の採取や手入れなどのように自分の背丈よりも高い位置でこまめに移動しながら作業する農用高所作業に適しているので、このような農作業を行う農家に最適である。
【符号の説明】
【0026】
1 農用高所作業機
2 クローラ
3 走行車本体
4 ブーム支柱
5 ブーム
6 操縦部
7 ゴンドラ
8 垂直油圧シリンダー
9 水平油圧シリンダー
10 電動油圧シリンダー
11 エンジン
12 燃料タンク
13 第1プーリー
14 主ジェネレーター
15 駆動部
16 バッテリー
17 第1ベルト
18 第2プーリー
19 油圧パッケージ
20 第2ジェネレーター