【実施例】
【0034】
実施例に用いた、ヒートシールラッカー層2の形成材料、プライマー層9の形成材料、添加微粒子、ヒートシールラッカーの組成を下記に示す。
<添加微粒子>
・シリコーン微粒子: メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン
・無機酸化物微粒子: SiO
2、TiO
2
・無機酸化物微粒子撥水化表面処理基: ジメチルシリル、トリメチルシリル
ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン<シリコーン微粒子/撥水化表面処理無機酸化物微粒子比率>
・比率: 単体、10/90、50/50、90/10
<一次粒子径>
・シリコン微粒子: 200、5,000、20,000、70、000nm
・無機酸化物微粒子: 15、50、200、700nm<ヒートシールラッカー>
・樹脂: アクリル、EVA、エチレン、なし
・分散溶媒: エタノール、水、MEK<シリコーン微粒子/撥水化表面処理無機酸化物微粒子比率>
・比率: 単体、10/90、50/50、90/10
<微粒子/ヒートシールラッカー比率>
・比率: 20/80、50/50、80/20
<基材>
・モゾウ紙52.3(g/m
2)/アルミ箔(7μm)/PET(16μm)
<プライマー層>
・ポリエステル樹脂とイソシアネート硬化剤
プライマー(AC)層(1g/m
2)/ヒートシールラッカー(3g/m
2)
<評価方法、判断基準>
・撥水性の評価は、水道水の転落角から求め、評価は下記のように行った。
10°>:◎、30°>:○、60°>△、60°≦:×
・粒子密着性はセロテープ(登録商標)剥離から求め、評価は下記のように行った。
粒子付着なし:○、付着:×
とした。
【0035】
実施例1〜5はヒートシール(HS)ラッカーの溶質分の重量に対するシリコーン微粒子4の添加重量を変えたもので、シリコーン微粒子4としては、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンを用い、アクリル樹脂をエタノールに溶解させたヒートシールラッカーに、20/80,50/50、80/20の比率で混合した。この時の一次粒子径は5000、20000nmであった。作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して撥水積層体10を得た。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0036】
実施例6〜10は、無機酸化物である酸化珪素、酸化チタン微粒子の表面にジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサンからなる処理基を設けたものを用いている。アクリル樹脂をエタノールに溶解させたヒートシールラッカーに、50/50の比率で混合し、この時の一次粒子径は15nmであった。作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して撥水積層体10を得た。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0037】
実施例11〜13はメチルシリコーン微粒子と酸化珪素の表面にトリメチルシリル基を設けたもので、メチルシリコーン微粒子とトリメチルシリル基処理酸化珪素微粒子の溶質比率は10/90、50/50、90/10で、アクリル樹脂をエタノールに溶解させたHSラッカーに、50/50の比率で混合し、この時の一次粒子径は5,000nm/15nmであった。作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材上に塗布して撥水積層体10を得た。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0038】
実施例14〜16は、アクリル樹脂を水に溶解させたヒートシールラッカーであり、
メチルシリコーン微粒子、表面にジメチルシリル基を設けた酸化珪素微粒子及びその50/50の混合物を、アクリルエマルションに50/50の比率で混合し、この時の一次粒子径はメチルシリコーン粒子が5,000nm、ジメチルシリル基酸化ケイ素が15nmであった。作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材上に塗布して得られた撥水積層体10である。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0039】
実施例17〜19は、実施例14〜16のヒートシールラッカーをアクリルエマルションからMEKに溶解したアクリル樹脂に変更したものであるが、作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して得られた撥水積層体10である。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0040】
実施例20〜22は、実施例14〜19のヒートシールラッカーをアクリル樹脂から、エタノールに溶解したEVAに変えたものであり、作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して得られた撥水積層体10である。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0041】
実施例23〜25は、実施例14〜22のヒートシールラッカーをアクリル樹脂、EVAからエタノールに溶解したエチレンに変えたものであり、作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して得られた撥水積層体10である。得られた撥水積層体10は水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性があり、セロテープ(登録商標)剥離テストから粒子の脱落がないことが分かった。
【0042】
比較例1は、メチルシリコーン微粒子をヒートシールラッカーなしに、基材上に塗布し、特許文献をトレースしたのであるが、水道水の転落角テストにより十分な撥水性、内容物8に対する非付着性を示したものの、セロテープ(登録商標)剥離テストにおいて粒子の脱落が認められてしまった。
【0043】
比較例2、3は、メチルシリコーン微粒子を、クリル樹脂をエタノールに溶解させたヒートシールラッカーに、10/90、90/10の比率で混合し、作製した塗液を、プライマー層9を設けた基材1上に塗布して得られた撥水性シートシール積層体10である。その比率が10/90の比率では十分な撥水性、内容物に対する非付着性が得られなかった。また90/10の比率では撥水性、内容物8に対する非付着性は得られるものの、セロテープ(登録商標)剥離テストにおいて粒子の脱落が認められ、ヒートシールラッカーの量が少なすぎることが分かった。
【0044】
比較例4は、メチルシリコーン微粒子を用いているが、その一次粒子径が70,000nmと実施例4の20,000nmと比べると大きく、その添加量が50/50と同じでも、撥水性、内容物8に対する非付着性は得られなかった。
【0045】
比較例5は、実施例6〜9に対比されるものであり、無機酸化物である酸化珪素への処理基を設けていないものであり、撥水性、内容物8に対する非付着性は得られていない。評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
以上の結果より、ヒートシールラッカーを用いずにシリコーン微粒子4、撥水化表面処理された無機酸化物微粒子5を表面に塗布したものは、十分な撥水性、内容物8に対する非付着性は得られるが、セロテープ(登録商標)剥離テストにより粒子の脱落があることが分かり、脱落した微粒子が食品などの内容物8に異物として入り込む事故の可能性あることが分かった。
【0047】
また、シリコーン微粒子4の一次粒子径が70,000nmと大きい場合には、添加量を増やしても撥水性、内容物に対する非付着性は得らなかった。
【0048】
紙又は高分子プラスチック基材1に、設けられたヒートシールラッカー層3中にシリコーン微粒子4、撥水化表面処理された無機酸化物微粒子5、又はシリコーン微粒子4及び撥水化表面処理された無機酸化物微粒子5を含有させ、その比率をヒートシールラッカーの溶質分の重量に対して2/8〜8/2の範囲コントロールすることで、十分な撥水性、内容物8に対する非付着性が得られ、セロテープ(登録商標)剥離テストにより粒子の脱落がないことが分かり、撥水層の粒子が脱落せずに撥水性が得られ、内容物8が付着し難く、包装袋内に残る内容物量が少なくすることができた。