特許第5915141号(P5915141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5915141噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材、噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材セット、及び噴射ノズル包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915141
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材、噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材セット、及び噴射ノズル包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20160422BHJP
   B65D 51/30 20060101ALI20160422BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   B65D81/26 J
   B65D81/26 N
   B65D51/30
   B65D77/26 Z
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-273868(P2011-273868)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124126(P2013-124126A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆欣
(72)【発明者】
【氏名】新見 健一
(72)【発明者】
【氏名】村林 茂
(72)【発明者】
【氏名】榊原 好久
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 恵美子
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−144200(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148682(WO,A1)
【文献】 特開2008−290738(JP,A)
【文献】 特開2011−153548(JP,A)
【文献】 特開平11−189284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 51/30
B65D 77/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口した有底筒状のケース本体と、
前記ケース本体の上部開口に装着され、前記ケース本体とともに気密空間を画成する蓋体と、
前記ケース本体の内部に収容された流体を噴射する尖頭状の噴射ノズルと、
前記ケース本体の内部に収容された酸素吸収キャップ部材と、を少なくとも備え、
前記酸素吸収キャップ部材は、酸素吸収性樹脂組成物を略柱状又は略筒状に成形してなり、前記尖頭状の噴射ノズルの軸方向の両端部の少なくとも前記蓋体側を収容する凹部開口が形成されており、
前記ケース本体内の前記酸素吸収キャップ部材の蓋体側には、気化性防錆剤及び/又は乾燥剤が収容されており、
前記凹部開口は、前記蓋体側の気化性防錆剤及び/又は乾燥剤に通じる孔又は穴を有する、
噴射ノズル包装体。
【請求項2】
さらに、酸素吸収性樹脂組成物を略リング状に成形してなるリング状ストッパーを備え、
前記尖頭状の噴射ノズルは、前記ノズルボディが前記リング状ストッパーと接触することにより前記ケース本体内の所定位置に規制配置された、
請求項1に記載の噴射ノズル包装体。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、前記酸素吸収キャップ部材との接触により、前記ケース本体内の軸方向及び/又は周方向への揺動が規制される、
請求項1又は2に記載の噴射ノズル包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材、噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材セット及びこれらを用いた噴射ノズル包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関の燃料噴射ノズルは、微細な構造を有し且つ精緻な動作が必要とされるため、その製造には、極めて高い技術力が要求され、それ故に、熾烈な技術競争が国際的に展開されている。とりわけ、ディーゼルエンジンは、熱効率に優れ低精製の燃料でも使用できるという特徴を有する一方、高い圧縮比が要求されているため、これに用いられる部材には、高精度及び高耐久性が要求されている、このような燃料噴射ノズルとしては、例えば、ノズルニードル(ニードル弁)を備える尖頭状の噴射ノズルが知られている(特許文献1乃至5参照)。
【0003】
これらの燃料噴射ノズルは、微細な構造を有し且つ精緻な動作が必要とされるが故に、また、保管時において水分や酸素の影響による噴射ノズルの腐食(酸化、錆)を抑制するために、製造後においても厳重に取り扱うことが要求されている。とりわけ、燃料噴射ノズルの作動部となるノズルヘッド及びノズルニードルは、腐食の発生や異物の混入を防止することが強く求められている。そのため、このような燃料噴射ノズルを保管・搬送する場合には、気密ケース内でスペーサー等を用いて支持された噴射ノズルを防錆油中に浸漬した包装形態が古典的に採用されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−257535号
【特許文献2】特開2004−108195号
【特許文献3】特開2010−116801号
【特許文献4】特開2000−314356号
【特許文献5】特開2011−153548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の包装形態を採用する場合、気密ケース中に防錆油を充填するとき或いは包装後に開封するときに、防錆油により周囲が汚染される、防錆油の臭気が発生する等の問題があった。
【0006】
また、かかる上記従来の包装形態においては、防錆油が使用されているため、気密ケース自身のみならず、蓋やスペーサー等においても耐油性が求められ、使用材料が限定されるという問題があった。
【0007】
さらに、気密ケースから噴射ノズルを取り出した際には、噴射ノズルの洗浄が必要とされる場合があり、また、不要となった防錆油(廃油)の廃棄処理も必要とされるという問題もあった。
【0008】
その上さらに、かかる上記従来の包装形態において透明或いは半透明の気密ケースを採用した場合、外部からは防錆油の色(一般には、黄褐色或いは茶褐色)が視認されるものとなるので、見栄えが悪いという問題もあった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、保管時における噴射ノズルの腐食を抑制可能であるとともに噴射ノズルを外部から確実に保護可能であり、上記従来の防錆油による湿式保管(包装)に代わる新たな包装形態を実現可能な、噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材及び噴射ノズル用の酸素吸収キャップ部材セットを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、保管時における噴射ノズルの腐食を抑制可能であるとともに、噴射ノズルを外部から確実に保護可能であり、作業性、取扱性、生産性、及び経済性に優れる、噴射ノズル包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、ケース本体内で尖頭状の噴射ノズルの軸方向の両端部を保護する酸素吸収性樹脂組成物からなるキャップ部材を採用することにより、噴射ノズルの保管時における噴射ノズルの腐食の発生や噴射ノズルへの異物の混入を確実に抑制できるとともに噴射ノズルを外部から確実に保護可能であり、これにより、上記従来の防錆油による湿式保管(包装)に代わる新たな包装形態を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下[1]〜[3]を提供する。
[1] 上部開口した有底筒状のケース本体と、
前記ケース本体の上部開口に装着され、前記ケース本体とともに気密空間を画成する蓋体と、
前記ケース本体の内部に収容された流体を噴射する尖頭状の噴射ノズルと、
前記ケース本体の内部に収容された酸素吸収キャップ部材と、を少なくとも備え、
前記酸素吸収キャップ部材は、酸素吸収性樹脂組成物を略柱状又は略筒状に成形してなり、前記尖頭状の噴射ノズルの軸方向の両端部の少なくとも前記蓋体側を収容する凹部開口が形成されており、
前記ケース本体内の前記酸素吸収キャップ部材の蓋体側には、気化性防錆剤及び/又は乾燥剤が収容されており、
前記凹部開口は、前記蓋体側の気化性防錆剤及び/又は乾燥剤に通じる孔又は穴を有する、
噴射ノズル包装体。
[2] さらに、酸素吸収性樹脂組成物を略リング状に成形してなるリング状ストッパーを備え、
前記尖頭状の噴射ノズルは、前記ノズルボディが前記リング状ストッパーと接触することにより前記ケース本体内の所定位置に規制配置された、
前記[1]に記載の噴射ノズル包装体。
[3] 前記噴射ノズルは、前記酸素吸収キャップ部材との接触により、前記ケース本体内の軸方向及び/又は周方向への揺動が規制される、
前記[1]又は[2]に記載の噴射ノズル包装体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保管時における噴射ノズルの腐食を抑制できるとともに噴射ノズルを外部から確実に保護できるので、上記従来の防錆油による湿式保管(包装)に代わる新たな乾式保管(包装)を実現することができる。また、キャップ部材として樹脂成形体を用いているので、作業性、取扱性、生産性、及び経済性をも高められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の噴射ノズル包装体100及び酸素吸収キャップ部材10,20を概略的に示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態の酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30が噴射ノズル40に装着された状態を概略的に示す斜視図である。
図3】第1実施形態の噴射ノズル包装体100及び酸素吸収キャップ部材10,20を概略的に示す断面図である。
図4】第1実施形態の酸素吸収キャップ部材10を概略的に示す断面図である。
図5】第1実施形態の酸素吸収キャップ部材20を概略的に示す断面図である。
図6】第1実施形態の酸素吸収リング状ストッパー30を概略的に示す断面図である。
図7】酸素吸収性樹脂成形体の酸素吸収特性の一例を示すグラフである。
図8】第2実施形態の噴射ノズル包装体200及び酸素吸収キャップ部材80,90を概略的に示す分解斜視図である。
図9】第2実施形態の噴射ノズル包装体200及び酸素吸収キャップ部材80,90を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の噴射ノズル包装体100及び酸素吸収キャップ部材10,20を概略的に示す分解斜視図であり、図2は、酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30が噴射ノズル40に装着された状態を概略的に示す斜視図であり、図3は、噴射ノズル包装体100及び酸素吸収キャップ部材10,20を概略的に示す断面図である。
【0018】
本実施形態の噴射ノズル包装体100は、ケース本体60と、このケース本体60の上部開口60aに装着される蓋体70と、ケース本体60の内部に収容された尖頭状の噴射ノズル40と、この噴射ノズル40の軸方向(図示上下方向)の両端部を収容する酸素吸収キャップ部材10,20と、噴射ノズル40をケース本体60内で支持するリング状ストッパー30と、を備えている。
【0019】
ケース本体60は、上部開口した有底筒状の成形体(気密ケース)からなる。ケース本体60の外形形状は、本実施形態では略円柱状に形成されているが、これに特に限定されず、角柱状(例えば、四角柱状、六角柱状、八角柱状等)など、任意の形状を適宜採用することができる。
【0020】
ケース本体60の内周60bの略中央には、リング状ストッパー30が配置されるリブ状段差60cが形成されており、これにより、ケース本体60は、上部開口60aから底部に向かって縮径する多段略円筒状の内部空間を有するものとなっている。
【0021】
ケース本体60は、ケース本体60内の気密性が確保できるものである限り、その素材や厚み等において、特に限定されるものではない。本実施形態においては、噴射ノズル40の腐食を防止する観点から、酸素透過性が低い素材を用いてケース本体60を構成することが好ましいが、ケース本体60が十分な厚みを有する場合は、酸素透過性が高い素材を用いることもできる。一般的には、ケース本体60の厚みが増すほどガスバリア性が高められる傾向にあるので、使用する素材のガスバリア性を考慮して、ケース本体60の厚みを適宜設定すればよい。ケース本体60を構成する素材の具体例としては、例えば、金属、合金、ガラス、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、塩素系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されず、公知のものを適宜選択して用いることができる。なお、外部からのケース本体60内部の視認性を確保する観点からは、ケース本体60は光学透明又は半透明の成形体であることが好ましい。また、ケース本体60は、必要に応じて、適宜に着色された成形体であってもよい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類等が挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。また、これらポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマー等が添加されていてもよい。
【0023】
ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0024】
ポリアミド樹脂としては、例えば、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド等が挙げられる。これらの具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製 MXナイロン)、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12等を挙げることができる。
【0025】
ポリビニルアルコール樹脂としては、例えば、ビニルエステル重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体をアルカリ触媒を用いてケン化して得られる樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、特に限定されないが、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール樹脂の配合物(混合物)であってもよい。
【0026】
エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得られる樹脂が挙げられる。その中でも、エチレン含量5〜60モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂のエチレン含量は、特に限定されないが、その下限は20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは25モル%以上である。また、エチレン含量の上限は、55モル%以下が好ましく、より好ましくは50モル%である。さらに、ビニルエステル成分のケン化度も特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0027】
塩素系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルを主体とするブロック共重合体、グラフト共重合体、更には塩化ビニル樹脂を主体とするポリマーブレンド等が挙げられる。塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタアクリル酸及びそのエステル類、アクリロニトリル類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、マレイン酸及びその無水物等が例示される。
【0028】
蓋体70は、嵌合部71及び頭部72と有する多段略円柱状の成形体からなる。蓋体70の嵌合部71には、ケース本体60内の気密性をより一層高めるために、ガスバリア性のトップシールフィルム73が設けられており、このトップシールフィルム73とケース本体60の上部開口60aとを熱溶着させることにより、ケース本体60は封止され、ケース本体60及び蓋体70により画成される空間が気密に保たれている。なお、蓋体70を構成する素材は、特に限定されるものではなく、例えば、ケース本体60で説明したものを上記と同様の理由で用いることができる。
【0029】
ケース本体60内には、ケース本体60の底部に配置された酸素吸収キャップ部材10と、ケース本体60の上部開口側に配置された酸素吸収キャップ部材20と、ケース本体60の略中央においてリブ状段差60c上に配置されたリング状ストッパー30と、これら酸素吸収キャップ部材20及びリング状ストッパー30によってケース本体60内の所定位置に規制配置された噴射ノズル40とが収容されている。
【0030】
ここで、本実施形態で用いている噴射ノズル40は、所謂ディーゼルエンジンに用いられる燃料噴射ノズルである。この噴射ノズル40は、第一筒部41a、第二筒部41b及び第三筒部41cを有する金属製の中空ノズルボディ41と、この中空ノズルボディ41内に装着されたノズルニードル42とを備えている。この中空ノズルボディ41において、第一筒部41a、第二筒部41b及び第三筒部41cは、この順に外径が拡径したものとなっており、そのため、中空ノズルボディ41は、多段筒状の外形を有している。また、第一筒部41aの先端には、流体を噴射する噴孔(図示せず)を有するノズルヘッド43が形成されている。さらに、中空ノズルボディ41内に装着されたノズルニードル42は、その一端が第三筒部41cから外方へ突出するように装着されている。そのため、本実施形態においては、噴射ノズル40の軸方向の一端ではノズルヘッド43が、噴射ノズル40の軸方向の他端ではノズルニードル42が、それぞれ第一筒部41a及び第三筒部41cから外方へ突出した構成となっている。
【0031】
以下、酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30について詳述する。図4図6は、本実施形態の酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30の概略断面図である。
【0032】
図4は、本実施形態の酸素吸収キャップ部材10の概略断面図である。酸素吸収キャップ部材10は、酸素吸収性樹脂組成物を外形略円柱状に成形した、酸素吸収性樹脂成形体からなる。酸素吸収キャップ部材10の外径は、上述したリブ状段差60cよりも底面側のケース本体60の内径と略同寸とされており(図3参照)、ケース本体60の上部開口側から挿入された酸素吸収キャップ部材10は、ケース本体60の底部に配置されるようになっている。また、酸素吸収キャップ部材10の上面には、ノズルヘッド43、すなわち第一筒部41aの下側形状(雄形状)に対応した雌形状の凹部11が形成されている。この凹部11の略中央には、酸素吸収キャップ部材10の下面まで貫通する貫通孔11aが設けられており、これら凹部11及び貫通孔11aの連通により、酸素吸収キャップ部材10は、多段略円筒状の凹部開口を有するものとなっている。そして、後述するように、噴射ノズル40が酸素吸収キャップ部材20及びリング状ストッパー30によって規制配置されたときには、噴射ノズル40のノズルヘッド43(第一筒部41a)は、凹部11の壁面から離間して、凹部11内に収容されるようになっている。一方、酸素吸収キャップ部材10の下面には、貫通孔11aと連通する凹部12が形成されており、この凹部12内には、乾燥剤15が収容されている。
【0033】
図5は、本実施形態の酸素吸収キャップ部材20の概略断面図である。酸素吸収キャップ部材20は、酸素吸収性樹脂組成物を外形略円柱状に成形した、酸素吸収性樹脂成形体からなる。酸素吸収キャップ部材20の外径は、上述したリブ状段差60cよりも上方側のケース本体60の内径と略同寸とされており(図3参照)、酸素吸収キャップ部材10の外径よりも大きく設定されている。また、酸素吸収キャップ部材20の下面には、噴射ノズル40の第三筒部41cの上側形状(雄形状)に対応した雌形状の凹部21が形成されている。さらに、この凹部21の略中央には、酸素吸収キャップ部材20の上面まで貫通する貫通孔21aが設けられており、これら凹部21及び貫通孔21aの連通により、酸素吸収キャップ部材20は、多段略円筒状の凹部開口を有するものとなっている。そして、貫通孔21aの内径はノズルニードル42の外径よりも大きく設定されており、噴射ノズル40の第三筒部41cが凹部21に収容された際には、ノズルニードル42が貫通孔21aの壁面から離間して収容されるようになっている。一方、酸素吸収キャップ部材20の上面には、貫通孔21aと連通する凹部22が形成されており、この凹部22内には、乾燥剤25が収容されている。
【0034】
図6は、本実施形態のリング状ストッパー30の概略断面図である。リング状ストッパー30は、酸素吸収性樹脂組成物を外形略リング状に成形した、酸素吸収性樹脂成形体からなる。リング状ストッパー30は、噴射ノズル40のノズルヘッド43、第一筒部41a及び第二筒部41bが挿通される孔30aを有する。また、リング状ストッパー30の外径は、上述したリブ状段差60cより底面側のケース本体60の内径よりも大きく、且つ、上述したリブ状段差60cより上方側のケース本体60の内径と略同寸とされており、これにより、リング状ストッパー30がケース本体60内に装着された際には、リング状ストッパー30がリブ状段差60c上に配置されるようになっている(図3参照)。一方、リング状ストッパー30の孔30aの内径は、噴射ノズル40のノズルヘッド43、第一筒部41a及び第二筒部41bの外径よりも大きく、且つ、噴射ノズル40の第三筒部41cの外形よりも小さく設定されており、これにより、噴射ノズル40のノズルヘッド43、第一筒部41a及び第二筒部41bが孔30a内に挿通された際には、噴射ノズル40の第三筒部41cの下面がこのリング状ストッパー30の上面と接触して、噴射ノズル40がケース本体60の所定位置に規制配置されるようになっている。
【0035】
凹部12,22内に収容される乾燥剤15,25は、雰囲気中の水分を化学的・物理的に吸収或いは吸着又は雰囲気中の水分と化学反応を生じて、雰囲気中の水分濃度を低減させるものである。かかる乾燥剤としては、当業界で種々のものが知られており、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0036】
以下、上述した酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)について、詳述する。本実施形態において用いている酸素吸収性樹脂成形体は、雰囲気中の酸素を吸収するものであり、酸素吸収性樹脂組成物を所定形状に成形することにより得られる。本実施形態において用いている酸素吸収性樹脂組成物は、易酸化性熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒を少なくとも含有するものである。
【0037】
易酸化性熱可塑性樹脂は、アリル基、ベンジル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、第三級炭素のいずれかを有する熱可塑性樹脂である。このような熱可塑性樹脂としては、炭素と炭素が二重結合で結合した部分を有する有機高分子化合物、第3級炭素原子に結合した水素原子を有する有機高分子化合物、ベンジル基を有する有機高分子化合物が挙げられる。炭素と炭素が二重結合で結合した部分を有する有機高分子化合物における炭素−炭素二重結合は高分子の主鎖にあってもよいし、側鎖にあってもよい。易酸化性熱可塑性樹脂の具体例としては、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸シクロヘキセニルメチル共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、水添スチレンブタジエンゴム、水添スチレンイソプレンゴム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、酸素吸収能の観点から、また、得られる成形体にゴム状弾性を付与する観点から、易酸化性熱可塑性樹脂は、炭素と炭素が二重結合で結合した部分を有する有機高分子化合物が好ましく、より好ましくはアリル基を有する熱可塑性樹脂であり、さらに好ましくは共役ジエンポリマーであり、特に好ましくは1,2−ポリブタジエンである。なお、易酸化性熱可塑性樹脂は、1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、易酸化性熱可塑性樹脂の配合割合は、特に限定されないが、酸素吸収性能、成形体の強度及びゴム弾性、経済性等の観点から、酸素吸収性樹脂組成物中、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましい。
【0038】
遷移金属触媒は、遷移金属の塩や酸化物等の金属化合物を有する触媒である。遷移金属としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好適であり、マンガン、鉄、コバルトが優れた触媒作用を示すため特に好適である。また、遷移金属の塩としては、遷移金属の鉱酸塩及び脂肪酸塩が含まれ、例えば、遷移金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、高級脂肪酸塩等が挙げられる。遷移金属触媒の具体例としては、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ステアリン酸コバルト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。扱い易さの観点から、好ましい遷移金属触媒は、担体に遷移金属の塩に担持させた担持触媒である。ここで用いられる担体としては、特に限定されないが、例えば、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸カルシウム類等が挙げられる。特に、触媒調製時及び調製後の大きさが0.1〜200μmの凝集体は、取扱い性がよいため、好ましい。また、樹脂組成物中に分散した際に10〜100nmである担体は、樹脂組成物中に配合した際に透明な樹脂組成物を与えるため、殊に好ましい。このような担体としては、例えば、合成ケイ酸カルシウムが例示される。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、遷移金属触媒の配合割合は、特に限定されないが、酸素吸収性能、成形体の強度、経済性等の観点から、酸素吸収性樹脂組成物中、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0039】
上述した酸素吸収性樹脂組成物は、他の配合成分の分散性を向上させるため、或いは酸素透過性を上げ酸素吸収速度を高めるために、上述した易酸化性熱可塑性樹脂とは異なる他の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。このような他の熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「m−LLDPE」と表記する)、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの他の熱可塑性樹脂の配合割合は、特に限定されないが、上述した易酸化性熱可塑性樹脂100質量部に対して1000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。この配合量が1000質量部以下であると、易酸化性熱可塑性樹脂の配合量が相対的に増加し、結果として、配合量が1000質量部を超える場合と比較して、酸素吸収性能の低下をより十分に抑制できる。また、配合する熱可塑性樹脂は、易酸化性熱可塑性樹脂との相溶性が高いものやフィルム化した際の酸素透過度が高いものが好ましい。なお、これらの他の熱可塑性樹脂の配合割合の下限は、特に限定されないが、上述した易酸化性熱可塑性樹脂100質量部に対して10質量部である。
【0040】
また、上述した酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を活性化させるため、光開始剤を含有することが好ましい。光開始剤とは、光照射により酸素吸収反応の反応系に効率的に活性種を発生させ、反応速度を向上させる働きを持つ物質である。照射する光は、電磁波の1種であり、光開始剤にエネルギーを与え励起状態にするものである。酸素吸収を活性化する光の波長は、使用する光開始剤の種類や分光感度により異なるが、一般的には、180nm〜800nmが好ましく、200〜380nmの紫外光が特に好ましい。光照射により、励起した光開始剤分子が易酸化性熱可塑性樹脂から水素を引き抜いて活性なラジカルを生じさせ、酸化反応を開始或いは促進される。光開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。好ましい光開始剤としては、ベンゾフェノン骨格構造を含むベンゾフェノン誘導体が挙げられる。なお、光開始剤は、1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、光開始剤の配合割合は、特に限定されないが、酸素吸収性樹脂組成物中、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。なお、外部から電子線、α線、β線、γ線、X線等の放射線或いは熱、高周波、超音波等のエネルギーを付与することによっても、上述した酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収を活性化させることができる。
【0041】
また、上述した酸素吸収性樹脂組成物は、上述した成分以外に、樹脂成形体の分野において公知の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滑剤、加工助剤、分散剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤等が挙げられる。また、吸着剤、抗菌剤、着色剤等を酸素吸収性樹脂組成物に配合することにより、酸素吸収性樹脂組成物のさらなる多機能化を図ることもできる。ここで、吸着剤とは、その表面に原子、分子、微粒子などを物理的に固定させる剤を意味し、具体的には、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、酸化アルミニウム等が例示され、これらは1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シリカゲルや酸化アルミニウムは、乾燥剤としての機能も有しているため好ましい。また、抗菌剤とは、細菌の増殖を抑制し或いは細菌を殺傷する能力を有するものを意味し、その具体例としては、無機系抗菌剤や有機系抗菌剤が例示される。ここで、無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛やその化合物が挙げられ、また、有機系抗菌剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、チアベンダゾール、有機シリコン四級アンモニウム塩などの化学薬品の他、ヒノキチオールやキトサンが挙げられ、これらは1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、安全性の観点から、天然系抗菌剤がより好ましい。一方、着色剤とは、酸素吸収性樹脂組成物及びこれを成形して得られる酸素吸収性樹脂成形体の全部または一部を着色するために用いられる剤を意味し、その具体例としては、例えば、酸化チタンのような無機顔料、フタロシアニンのような有機顔料等が挙げられる。
【0042】
とりわけ、本実施形態においては、酸素による金属腐食を抑制するとともに水分による金属腐食を抑制する観点から、酸素吸収性樹脂組成物は、空気中から水分を吸収する乾燥剤を含有することが好ましい。乾燥剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、シリカゲル、生石灰、塩化カルシウム、五酸化二リン、酸化アルミニウム等が挙げられ、これらは1種を単独で、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本実施形態の酸素吸収性樹脂成形体は、当業界で公知の製法を適用して上述した酸素吸収性樹脂組成物を所望の形状に成形することにより得ることができる。生産性や経済性の観点から、所望する形状の金型を用いた射出成形法が好ましく用いられる。なお、酸素吸収性樹脂成形体の成形時に複数の酸素吸収性樹脂組成物を用いて所謂二色成形或いは多色成形とすることもでき、この場合、得られる酸素吸収性樹脂成形体は二色成形体或いは多色成形体となる。
【0044】
図7に、上述した酸素吸収性樹脂成形体の酸素吸収特性の一例を示すグラフを示す。この酸素吸収特性の測定においては、容量45mLの容器内(初期酸素濃度20.9%)に酸素吸収性樹脂成形体を封入し、25℃の条件下で容器内の酸素濃度を測定したものである。なお、ここで用いた酸素吸収性樹脂成形体は、易酸化性熱可塑性樹脂としてポリブタジエン(20.0wt%、40.0wt%、80.0wt%)、遷移金属触媒としてコバルト塩(1.21wt%)、光開始剤としてベンゾフェノン誘導体(0.18wt%)、担体として合成ケイ酸カルシウム(0.61wt%)、他の熱可塑性樹脂としてm−LLDPE(78.0wt%、58.0wt%、18.0wt%)を含有する酸素吸収性樹脂組成物をリング状(直径17mm、内径10mm、肉厚3.5mm、高さ11mm)に成形し、成形後に光照射して酸素吸収を活性化させたものである。図7に示すように、上述した酸素吸収性樹脂成形体は、十分な酸素吸収能を有し、噴射ノズル包装体100内における噴射ノズル40の腐食を十分に抑制可能なものであることが理解される。ここで、酸素吸収性樹脂成形体の酸素吸収能は、例えば、組成物中の各成分の種類により、また、組成物中の各成分の配合量、使用する成形体の容量(体積)或いは光照射の強度等を増減させることにより、さらに飛躍的に向上し得るものであるから、必要とされる噴射ノズル包装体100内の酸素濃度及び酸素吸収能の維持期間等に応じて、これらを適宜設定すればよい。
【0045】
なお、本実施形態では、易酸化性熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒を少なくとも含有する酸素吸収性樹脂組成物を所定形状に成形した酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)を例示したが、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物に代えて、当業界で公知の他の酸素吸収性樹脂組成物を用いてもよい。当業界で公知の他の酸素吸収性樹脂組成物としては、例えば、特開平05−115776号公報に記載された配合物、特開2001−106866号公報に記載された酸素吸収樹脂組成物、
特開2005−186060号公報に記載された酸素吸収剤、特開2005−104064号公報に記載された樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)、特開2011−080034号公報に記載された酸素吸収樹脂組成物や、特開平10−045177号公報に記載された酸素吸収樹脂層を構成する樹脂組成物、特開2007−185653号公報に記載された脱酸素剤及び熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。このように他の酸素吸収性樹脂組成物を用いる場合、例えば、酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30の一部のみを、当業界で公知の他の酸素吸収性樹脂組成物を用いて構成してもよく、また、これらのすべてを当業界で公知の他の酸素吸収性樹脂組成物を用いて構成してもよい。さらに、酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30は、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物とともに当業界で公知の他の酸素吸収性樹脂組成物を用いて二色成形或いは多色成形した構成としてもよい。
【0046】
さて、上記のように構成された噴射ノズル包装体100においては、ケース本体60及び蓋体70によって画成された気密空間(封止空間)内に、噴射ノズル40が収容(封入)されているため、外部からの酸素、水分、異物の流入が防止される。しかも、噴射ノズル包装体100内には、噴射ノズル40とともに酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)が収容(封入)されているため、酸素吸収性樹脂成形体の酸素吸収作用により酸素が除去されて噴射ノズル包装体100内が低酸素環境となる。以上のことから、かかる酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)を用いることにより、噴射ノズル包装体100内の噴射ノズル40の腐食及びこれにともなう性能劣化が長期間にわたって抑制され、その上さらに、上記従来の防錆油を使用する場合に比して、噴射ノズル包装体100の作業性、取扱性、生産性、及び経済性が殊に高められる。したがって、本実施形態の噴射ノズル包装体100によれば、上記従来のように防錆油中で噴射ノズルを保管する際に求められる種々の不都合から解放される。
【0047】
その上さらに、本実施形態においては、噴射ノズル包装体100内において、噴射ノズル40は、酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材20及びリング状ストッパー30)により、軸方向(スラスト方向)及び周方向(ラジアル方向)への揺動(変位)が規制されている。そのため、外部からの衝撃や応力が印加されても、ノズルニードル42及びノズルヘッド43が酸素吸収キャップ部材10の凹部開口の壁面から離間して(非接触で)配置されるように、噴射ノズル40のノズルニードル42及びノズルヘッド43(第一筒部41a)の揺動が制限される。したがって、外部からの衝撃や応力からノズルニードル42及びノズルヘッド43が確実に保護され、これにより、ノズルニードル42及びノズルヘッド43の変形や故障が確実に抑制される。また、ノズルニードル42及びノズルヘッド43は、酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)から離間して配置されているので、これらの接触によるノズルニードル42及びノズルヘッド43への異物の混入が確実に防止される。
【0048】
しかも、本実施形態においては、ゴム状弾性を有する易酸化性熱可塑性樹脂を配合した酸素吸収性樹脂成形体を用いているので、そのゴム状弾性によって、噴射ノズル40及びケース本体60の保護作用が格別に高められる。
【0049】
また、乾燥剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物を用いて酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30)を構成すると、噴射ノズル包装体100内を低酸素且つ低湿度環境にすることができる。したがって、このように構成することにより、噴射ノズル包装体100内の噴射ノズル40の腐食及びこれにともなう性能劣化が長期間にわたって抑制される作用効果が、より一層高められる。
【0050】
さらに、防錆油が必須とされない包装形態を採用しているので、上記従来とは異なり、ケース本体60や蓋体70等において耐油性が必要とされなくなり、これにより、使用材料の選定裕度が高められる。したがって、透明或いは半透明のケース本体60を採用することができ、さらには、様々に着色された構成部品を選定することもできるので、視認性やデザイン性が高められる。
【0051】
また、ノズルヘッド43及びノズルニードル42の近傍に乾燥剤15,25が配設されているので、噴射ノズル40の作動部を構成するノズルヘッド43及びノズルニードル42近傍の雰囲気の水分濃度が低減され、上記の酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材20及びリング状ストッパー30)の作用効果と相まって、噴射ノズル包装体100内が乾燥窒素雰囲気となり、その結果、これらの腐食の発生がより一層確実に抑制される。
【0052】
(第2実施形態)
図8は、本実施形態の噴射ノズル包装体200及び酸素吸収キャップ部材80,90を概略的に示す分解斜視図であり、図9は、噴射ノズル包装体200及び酸素吸収キャップ部材80,90及び噴射ノズル包装体100を概略的に示す断面図である。
【0053】
本実施形態の噴射ノズル包装体200は、酸素吸収キャップ部材10,20に代えて酸素吸収キャップ部材80,90を、噴射ノズル40に代えて噴射ノズル50を、乾燥剤15に代えて気化性防錆剤85をそれぞれ用い、さらに、ケース本体60のリブ状段差60c及びリング状ストッパー30並びに乾燥剤25を省略したこと以外は、上述した第1実施形態の噴射ノズル包装体100と略同等の構成となっており、ここでの重複する説明は省略する。
【0054】
ケース本体60内には、ケース本体60の底部に配置された酸素吸収キャップ部材80と、ケース本体60の上部開口側に配置された酸素吸収キャップ部材90と、これら酸素吸収キャップ部材80,90によってケース本体60内の所定位置に規制配置された噴射ノズル50とが収容されている。本実施形態で用いている尖頭状の噴射ノズル50は、所謂ディーゼルエンジンに用いられる燃料噴射ノズルである。この噴射ノズル50は、第一筒部51a及び第二筒部51bを有する金属製の中空ノズルボディ51と、この中空ノズルボディ51内に装着されたノズルニードル52とを備えている。この中空ノズルボディ51において、第一筒部51a及び第二筒部51bは、この順に外径が拡径したものとなっており、そのため、中空ノズルボディ51は、多段筒状の外形を有している。また、第一筒部51aの先端には、流体を噴射する噴孔(図示せず)を有するノズルヘッド53が形成されている。さらに、中空ノズルボディ51内に装着されたノズルニードル52は、その一端が第二筒部51bから外方へ突出するように装着されている。そのため、本実施形態においては、噴射ノズル50の軸方向の一端ではノズルヘッド53が、噴射ノズル50の軸方向の他端ではノズルニードル52が、それぞれ第一筒部51a及び第二筒部51bから外方へ突出した構成となっている。
【0055】
酸素吸収キャップ部材80は、酸素吸収性樹脂組成物を外形略円柱状に成形した、酸素吸収性樹脂成形体からなる。酸素吸収キャップ部材80の外径は、ケース本体60の内径と略同寸とされており(図9参照)、ケース本体60の上部開口側から挿入された酸素吸収キャップ部材80は、ケース本体60の底部に配置されるようになっている。また、酸素吸収キャップ部材80の上面には、噴射ノズル50の第一筒部51aの下側形状(雄形状)に対応した雌形状の凹部81が形成されている。さらに、この凹部81の略中央には、酸素吸収キャップ部材80の下面まで貫通する貫通孔81aが設けられており、これら凹部81及び貫通孔81aの連通により、酸素吸収キャップ部材80は、多段略円筒状の凹部開口を有するものとなっている。一方、酸素吸収キャップ部材80の下面には、貫通孔81aと連通する凹部82が形成されており、この凹部82内には、気化性防錆剤85が収容されている。そして、貫通孔81aの内径はノズルヘッド53の外径よりも大きく設定されており、噴射ノズル50の第一筒部51aが凹部51に収容された際には、ノズルヘッド53が貫通孔81aの壁面から離間して収容されるようになっている。
【0056】
酸素吸収キャップ部材90は、酸素吸収性樹脂組成物を外形略円柱状に成形した、酸素吸収性樹脂成形体からなる。酸素吸収キャップ部材90の外径は、ケース本体60の内径と略同寸とされている(図9参照)。また、酸素吸収キャップ部材90の下面には、噴射ノズル50の第二筒部51bの上側形状(雄形状)に対応した雌形状の凹部91が形成されている。さらに、この凹部91の略中央には、酸素吸収キャップ部材90の上面まで貫通する貫通孔91aが設けられており、これら凹部91及び貫通孔91aの連通により、酸素吸収キャップ部材90は、多段略円筒状の凹部開口を有するものとなっている。そして、貫通孔91aの内径はノズルニードル52の外径よりも大きく設定されており、噴射ノズル50の第二筒部51bが凹部91に収容された際には、ノズルニードル52が貫通孔91aの壁面から離間して収容されるようになっている。
【0057】
そして、本実施形態の噴射ノズル包装体200においては、噴射ノズル50が配置された際に、噴射ノズル50の第一筒部51aの下面が酸素吸収キャップ部材80の上面と接触するとともに、噴射ノズル50の第二筒部51bの上面が酸素吸収キャップ部材90の下面と接触して、噴射ノズル50がケース本体60の所定位置に規制配置されるようになっている。
【0058】
なお、貫通孔81a内に収容される気化性防錆剤85は、常温で気化性を有し、噴射ノズル50の表面に化学的・物理的に吸着して又は反応して或いは腐食を防止する雰囲気を形成する等して、噴射ノズル50の金属腐食を防止するものである。かかる気化性防錆剤としては、防錆の対象となる種々の金属(合金、メッキ膜を含む)に適した種々のものが知られており、例えば、アミン類の亜硝酸塩類、アミン類のカルボン酸塩類、アミン類のクロム酸塩類、カルボン酸のエステル類、複素環状化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、及びこれらの混合物、並びにこれらにさらに各種の添加剤を配合したもの等、公知のものを適宜選択して用いることができる。気化性防錆剤85の具体例としては、例えば、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト(DICHAN)やジイソプロピルアンモニウムナイトライト(DIPAN)の他、気化性防錆フィルム(例えば、ボーセロン(商品名)、アイセロ化学株式会社製)等が挙げられる。また、気化性防錆剤85の形態も特に限定されず、例えば、スポンジ、不織布や紙等にこれらの化合物や混合物を内包させたものや、粉末状、タブレット状やフィルム状のもの、或いはこれらを小袋状に製袋したもの等、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0059】
以上のように構成された本実施形態の噴射ノズル包装体200においても、上述したのと同様の理由により、上記第1実施形態の噴射ノズル包装体100と同様の作用効果が奏される。
【0060】
また、本実施形態においては、噴射ノズル50は、酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材80,90)により、軸方向(スラスト方向)及び周方向(ラジアル方向)への揺動(変位)が規制されている。より具体的には、外部からの衝撃や応力が印加されても、ノズルニードル52及びノズルヘッド53が酸素吸収キャップ部材80,90の凹部開口の壁面から離間して(非接触で)配置されるように、噴射ノズル50のノズルニードル52及びノズルヘッド53の揺動が制限されている。そのため、外部からの衝撃や応力からノズルニードル52及びノズルヘッド53が確実に保護され、これにより、ノズルニードル52及びノズルヘッド53の変形や故障が確実に抑制され、さらには酸素吸収キャップ部材80,90からノズルニードル52及びノズルヘッド53への異物の混入が確実に防止される。
【0061】
さらに、ノズルヘッド53の近傍に気化性防錆剤85が配設されているので、上記の酸素吸収性樹脂成形体(酸素吸収キャップ部材80,90)の作用効果と相まって、噴射ノズル50の作動部を構成するノズルヘッド83の防錆が確実に行われる。
【0062】
(変形例)
なお、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。例えば、ケース本体60の内形形状を角柱状(例えば、四角柱状、六角柱状、八角柱状等)などの任意の形状とし、酸素吸収キャップ部材10,20及びリング状ストッパー30並びに酸素吸収キャップ部材80,90の外形形状をケース本体60の内形形状に対応した任意の形状としてもよい。
【0063】
また、第1実施形態において説明したリブ状段差60cは、ケース本体60の内壁の全周にわたって同厚に形成されているが、例えば、ケース本体60の内壁に形成された2以上の突起部(係止部)からリブ状段差60cを構成することもできる。
【0064】
さらに、上記第1実施形態においては、凹部12,22内にのみ乾燥剤15,25が配置されているが、乾燥剤15,25は、貫通孔11a,21a及び凹部11,21に配置されていてもよい。同様に、上記第2実施形態においては、凹部82内にのみ気化性防錆剤85が配置されているが、気化性防錆剤85は、貫通孔81a及び凹部82に配置されていてもよい。
【0065】
一方、第1実施形態及び第2実施形態において説明した蓋体70は、トップシールフィルム73とケース本体60の上部開口60aとを熱溶着して気密空間を画成する構成を採用しているが、ケース本体60と蓋体70の接合構成は、ケース本体60内の気密性が維持できる限り、この態様に特に限定されるものではない。例えば、ケース本体60と蓋体70とが螺合する態様であっても、ケース本体60に蓋体70が圧入(圧着)する態様であっても、ケース本体60と蓋体70とが直接或いはトップシールフィルム73を介して超音波溶着又は超音波溶着した態様であってもよい。また、蓋体70の嵌合部71を設けずに、蓋体70の頭部72の下面とケース本体60の上部開口60aとが熱溶着又は超音波溶着された態様であってもよい。さらに、蓋体70に、気化性防錆剤や乾燥剤などを収容させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したとおり、本発明は、保管時における噴射ノズルの腐食を抑制可能であるとともに噴射ノズルを外部から確実に保護可能であるので、車両用ノズルや高圧洗浄用ノズル等、流体を噴射する噴射ノズル一般において、広く且つ有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…酸素吸収キャップ部材、11…凹部、11a…貫通孔、12…凹部、15…乾燥剤、20…酸素吸収キャップ部材、21…凹部、21a…貫通孔、22…凹部、25…乾燥剤、30…リング状ストッパー、30a…孔、40…噴射ノズル、41…中空ノズルボディ、41a…第一筒部、41b…第二筒部、41c…第三筒部、42…ノズルニードル、43…ノズルヘッド、50…噴射ノズル、51…中空ノズルボディ、51a…第一筒部、51b…第二筒部、52…ノズルニードル、53…ノズルヘッド、60…ケース本体、60a…上部開口、60b…内周、60c…リブ状段差、70…蓋体、71…嵌合部、72…頭部、73…トップシールフィルム、80…酸素吸収キャップ部材、81…凹部、81a…貫通孔、82…凹部、85…気化性防錆剤、90…酸素吸収キャップ部材、91…凹部、91a…貫通孔、100…噴射ノズル包装体、200…噴射ノズル包装体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9