(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。図中のX印を付けた矩形は、外部端子を示している。外部端子は、半導体集積回路チップが収納されるパッケージのリード、あるいは、半導体集積回路チップ上のパッドである。外部端子を介して供給される信号には、端子名と同じ符号を使用する。
【0012】
図1は、保護回路の一実施形態を示している。例えば、保護回路ESD1は、信号端子PADに接続された内部回路とともに、半導体集積回路に搭載される。保護回路ESD1は、pMOSトランジスタP1、P2、抵抗素子RA、RB、RC、RD、R1、R2およびダイオードD1、D2を有している。pMOSトランジスタP1、P2は、接続ノードCNを介して、端子VDE、PAD間に直列に接続されている。例えば、端子VDEは、電源端子であり、端子PADは信号端子である。信号端子PADは、信号(または電圧)を受ける入力端子、信号(または電圧)を出力する出力端子、あるいは信号(または電圧)を入力し、出力する入出力端子である。
【0013】
この実施形態では、pMOSトランジスタP1、P2の耐圧は、電源電圧VDEより低く、信号端子PADに伝達される信号の最大電圧は、電源電圧VDEより高い。例えば、電源電圧VDEは3.3Vであり、0Vから5.0Vの範囲の信号が信号端子PADに伝達される。例えば、pMOSトランジスタP1、P2の閾値電圧は、−0.4Vまたは−0.5Vに設計されている。例えば、pMOSトランジスタP1、P2の耐圧は、1.8Vに設計されており、半導体集積回路の内部回路に形成されるトランジスタの耐圧と同じである。
【0014】
pMOSトランジスタP1のゲートおよびバックゲート(基板)は、抵抗素子R1を介して電源端子VDEに接続されている。pMOSトランジスタP1のソースは、電源端子VDEに接続されている。pMOSトランジスタP1のドレインは、接続ノードCNを介してノードNDBおよびpMOSトランジスタP2のソースに接続されている。
【0015】
pMOSトランジスタP2のゲートおよびバックゲート(基板)は、抵抗素子R2を介して信号端子PADに接続されている。pMOSトランジスタP1のソースは、接続ノードCNを介してノードNDBおよびpMOSトランジスタP1のドレインに接続されている。pMOSトランジスタP2のドレインは、信号端子PADに接続されている。
【0016】
なお、上述した説明では、各pMOSトランジスタP1、P2の上側の電極をソースと称し、各pMOSトランジスタP1、P2の下側の電極をドレインと称している。実際には、各pMOSトランジスタP1、P2において、相対的に電圧が高い電極がソースになる。このため、信号端子PADの電圧が電源電圧VDEより高いとき、ソースとドレインは入れ替わる。
【0017】
抵抗素子RA、RB、RC、RDは、電源端子VDEと信号端子PADの間に、ノードNDA、NDB、NDCを介して直列に接続されている。例えば、抵抗素子RA、RB、RC、RDの抵抗比は、この順で4:2:3:3に設計されており、抵抗素子RA、RB、RC、RDは、ノードNDA、NDB、NDCに分圧された電圧を生成する分圧回路として機能する。ダイオードD1のアノードは、ノードNDCに接続され、ダイオードD1のカソードは、pMOSトランジスタP1のゲートおよびバックゲートに接続されている。ダイオードD2のアノードは、ノードNDAに接続され、ダイオードD2のカソードは、pMOSトランジスタP2のゲートおよびバックゲートに接続されている。
【0018】
ノードNDBの電圧は、抵抗素子RA、RBおよび抵抗素子RC、RDの抵抗比(4+2:3+3=1:1)に基づいて、電源電圧VDEと信号端子PADの電圧との中間値に設定される。
【0019】
図2は、
図1に示した保護回路ESD1の断面構造の例を示している。各pMOSトランジスタP1、P2は、n型ウエル領域NWの表面にチャネル領域を挟んで形成される一対のp型拡散領域P+(ソース、ドレイン)と、チャネル領域上にゲート絶縁膜を介して形成されるゲートGTとを有している。n型ウエル領域NWは、各pMOSトランジスタP1、P2のバックゲート(基板)である。各pMOSトランジスタP1、P2において、互いに隣接するp型拡散領域P+とn型拡散領域N+とは、素子分離領域STI(Shallow Trench Isolation)等により電気的に分離されている。また、各pMOSトランジスタP1、P2において、ソースおよびドレインを形成するp型拡散領域P+と、n型ウエル領域NWとにより、pnp型の寄生バイポーラトランジスタが形成されている。
【0020】
各ダイオードD1、D2は、n型ウエル領域NW(カソード)と、n型ウエル領域NWの表面に形成されたp型拡散領域P+(アノード)により形成されている。ダイオードD1のカソードは、n型ウエル領域NWの表面に形成されたn型拡散領域N+を介して、pMOSトランジスタP1のゲート、バックゲートおよび抵抗素子R1に接続されている。ダイオードD2のカソードは、n型ウエル領域NWの表面に形成されたn型拡散領域N+を介して、pMOSトランジスタP2のゲート、バックゲートおよび抵抗素子R2に接続されている。各pMOSトランジスタP1、P2および各ダイオードD1、D2のn型ウエル領域NWは、電気的に互いに独立に形成されている。
【0021】
図1および
図2に示した保護回路ESD1では、電源端子VDEを基準として、信号端子PADに正のサージ電圧が印加されるとき、pMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、電源端子VDEから放電される。信号端子PADを基準として、電源端子VDEに負のサージ電圧が印加されるときも、pMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、電源端子VDEから放電される。
【0022】
また、電源端子VDEを基準として、信号端子PADに負のサージ電圧が印加されるとき、pMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、信号端子PADから放電される。信号端子PADを基準として、電源端子VDEに正のサージ電圧が印加されるときも、pMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、信号端子PADから放電される。
【0023】
この種のサージ電圧の印加は、保護回路ESD1が搭載される半導体集積回路チップをパッケージに収納するパッケージング工程や、パッケージされた半導体集積回路をシステム基板等に搭載する組立工程で発生する。すなわち、サージ電圧は、保護回路ESD1に電源や信号が供給されていないときに印加される。
【0024】
図3は、
図1に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとpMOSトランジスタP1に印加される電圧との関係を示している。
図3は、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに伝達されるときの状態を示している。例えば、電源電圧VDEは3.3Vに設定され、信号の電圧VPADは0Vから5.0Vの範囲で変化する。なお、
図3では、動作マージンを考慮して、信号の電圧VPADの最大値を6.0Vにしている。
【0025】
ノードNDBの電圧は、電源電圧VDEと信号端子PADの電圧VPADとの中央の値((VDE+VPAD)/2)に設定され、電圧VPADの上昇とともに上昇する。例えば、ノードNDBの電圧は、電圧VPADが0Vのときに1.65Vであり、電圧VPADが3.3Vのときに3.3Vであり、電圧VPADが6Vのときに4.65Vである。
【0026】
ノードNDCの電圧は、電圧VPADに、(VDE−VPAD)の3/4倍を加えた値に設定され、電圧VPADの上昇とともに上昇する。例えば、ノードNDCの電圧は、電圧VPADが0Vのときに0.825Vであり、電圧VPADが3.3Vのときに3.3Vであり、電圧VPADが6Vのときに5.325Vである。
【0027】
pMOSトランジスタP1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電源電圧VDEと、ノードNDCの電圧からダイオードD1の順方向電圧降下の値を引いた電圧のうち高いほうに設定される。これにより、pMOSトランジスタP1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが0Vから4.0Vの範囲にあるときに電源電圧VDEに設定される。また、pMOSトランジスタP1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが4.0Vから6.0Vの範囲にあるときにノードNDCの電圧から0.5Vを引いた値に設定される。
【0028】
電圧VPADが電源電圧VDEより低いとき、電源電圧VDEがpMOSトランジスタP1のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP1のドレイン電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDEより高いとき、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP1のソース電圧になり、電源電圧VDEがpMOSトランジスタP1のドレイン電圧になる。
【0029】
電圧VPADが3.3Vから5.3Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP1の基板電圧VBは、ソース電圧(NDB)以下になる。しかし、基板電圧VBとソース電圧(NDB)との差の最大値(0.33V、電圧VPAD=3.97V)は、pMOSトランジスタP1のp型拡散領域P+(ソース)とn型ウエル領域NWによるpn接合の順方向電圧降下(例えば、0.5V)より小さい。電圧VPADが0Vから3.3Vおよび5.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP1の基板電圧VBは、ソース電圧(VDEまたはNDB)以上になる。
【0030】
電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP1の基板電圧VBは、常にドレイン電圧(NDBまたはVDE)以上になる。以上より、電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるときに、pMOSトランジスタP1のバックゲートとドレイン間またはバックゲートとソース間にリーク電流(pn接合の順方向電流)が流れることはない。
【0031】
pMOSトランジスタP1のゲート電圧と、ソース電圧またはドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。pMOSトランジスタP1のソース電圧とドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。pMOSトランジスタP1のゲート、バックゲート間の電圧は、常に0Vである。以上より、pMOSトランジスタP1のゲート、ソース、ドレイン、バックゲート間に、耐圧(1.8V)を超える電圧が印加されることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作するときに、0Vから5.0Vの信号が信号端子PADに印加されても、pMOSトランジスタP1は破壊されない。
【0032】
図4は、
図1に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとpMOSトランジスタP2に印加される電圧との関係を示している。
図4も、
図3と同様に、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに伝達されるときの状態を示している。例えば、電源電圧VDEは3.3Vに設定され、信号の電圧VPADは0Vから5.0Vの範囲で変化する。なお、
図4では、
図3と同様に、動作マージンを考慮して、信号の電圧VPADの最大値を6.0Vにしている。
【0033】
ノードNDBの電圧は、
図3と同じであり、電源電圧VDEと信号端子PADの電圧VPADとの中央の値((VDE+VPAD)/2)に設定される。ノードNDAの電圧は、電圧VPADに、(VDE−VPAD)の2/3倍を加えた値に設定され、電圧VPADの上昇とともに上昇する。例えば、ノードNDAの電圧は、電圧VPADが0Vのときに2.2Vであり、電圧VPADが3.3Vのときに3.3Vであり、電圧VPADが6Vのときに4.2Vである。
【0034】
pMOSトランジスタP2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADと、ノードNDCの電圧からダイオードD2の順方向電圧降下の値を引いた電圧のうち高いほうに設定される。これにより、pMOSトランジスタP2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが2.55V以下のとき、ノードNDAの電圧からダイオードD2の順方向電圧降下の値(0.5V)を引いた値に設定される。また、pMOSトランジスタP2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが2.55Vより高いとき、電圧VPADと同じ値になる。
【0035】
電圧VPADが電源電圧VDEより低いとき、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP2のソース電圧になり、電圧VPADがpMOSトランジスタP2のドレイン電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDEより高いとき、電圧VPADがpMOSトランジスタP2のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP2のドレイン電圧になる。
【0036】
電圧VPADが0.3Vから3.3Vの範囲にあるときに、pMOSトランジスタP2の基板電圧VBは、ソース電圧(NDB)以下になる。しかし、基板電圧VBとソース電圧(NDB)との差の最大値(0.375V、電圧VPAD=2.55V)は、pMOSトランジスタP2のp型拡散領域P+(ソース)とn型ウエル領域NWによるpn接合の順方向電圧降下(例えば、0.5V)より小さい。電圧VPADが0Vから0.3Vおよび3.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP2の基板電圧VBは、ソース電圧(NDBまたはVPAD)以上になる。
【0037】
電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP2の基板電圧VBは、常にドレイン電圧(VPADまたはNDB)以上になる。以上より、電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるときに、pMOSトランジスタP2のバックゲートとドレイン間またはバックゲートとソース間にリーク電流(pn接合の順方向電流)が流れることはない。
【0038】
pMOSトランジスタP2のゲート電圧と、ソース電圧またはドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.7V)になる。pMOSトランジスタP2のソース電圧とドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。pMOSトランジスタP2のゲート、バックゲート間の電圧は、常に0Vである。以上より、pMOSトランジスタP2のゲート、ソース、ドレイン、バックゲート間に、耐圧(1.8V)を超える電圧が印加されることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作するときに、0Vから5.0Vの信号が信号端子PADに印加されても、pMOSトランジスタP2は破壊されない。
【0039】
図5は、
図1に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとトランジスタP1、P2のゲート・ソース間電圧VGSとの関係を示している。電圧VPADが電源電圧VDE(3.3V)より低いとき、電源電圧VDEがpMOSトランジスタP1のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP2のソース電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDE(3.3V)より高いとき、ノードNDBの電圧がpMOSトランジスタP1のソース電圧になり、電圧VPADがpMOSトランジスタP2のソース電圧になる。
【0040】
pMOSトランジスタP1のゲート電圧VGは、電圧VPADが3.3Vから5.3Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP1のソース電圧であるノードNDBの電圧より低くなる。そして、pMOSトランジスタP1のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADが3.97Vのときに最小(−0.33V)になる。pMOSトランジスタP1のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADが0Vから3.3Vおよび5.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、0V以上になる。
【0041】
一方、pMOSトランジスタP2のゲート電圧VGは、電圧VPADが0.3Vから3.3Vの範囲にあるとき、pMOSトランジスタP2のソース電圧であるノードNDBの電圧より低くなり、電圧VPADが2.55Vのときに最小(−0.375V)になる。pMOSトランジスタP2のゲート電圧VGは、電圧VPADが0Vから0.3Vおよび3.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、0V以上になる。
【0042】
上述したように、pMOSトランジスタP1、P2の閾値電圧は、−0.4Vまたは−0.5Vに設計されている。pMOSトランジスタP1、P2のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADの全ての範囲において、閾値電圧より低くなることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに供給され、電圧VPADが変化するときに、pMOSトランジスタP1、P2がオンすることを防止できる。この結果、信号端子PADから保護回路ESD1にリーク電流が流れることを防止でき、保護回路ESD1がシステムの動作に影響を与えることを防止できる。
【0043】
なお、
図1に示した抵抗素子RA、RBの抵抗比は、pMOSトランジスタP1のゲート・ソース間電圧VGSがpMOSトランジスタP1の閾値電圧より低くならないように設計されている。すなわち、pMOSトランジスタP1のゲート・ソース間電圧VGSの絶対値は、pMOSトランジスタP1の閾値電圧の絶対値を超えないように設定されている。
【0044】
同様に、抵抗素子RC、RDの抵抗比は、pMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧VGSがpMOSトランジスタP2の閾値電圧より低くならないように設計されている。すなわち、pMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧VGSの絶対値は、pMOSトランジスタP2の閾値電圧の絶対値を超えないように設定されている。
【0045】
pMOSトランジスタP1、P2のゲート・ソース間電圧VGSが閾値電圧より低くならないという条件を満たせば、抵抗素子RA、RB、RC、RDの抵抗比は、比率4:2:3:3に限定されるものではない。上記条件を満たせば、ノードNDAの電圧は、電源電圧VDEとノードNDBの電圧との間の値に設定可能である。ノードNDCの電圧は、ノードNDBの電圧と電圧VPADとの間の値に設定可能である。pMOSトランジスタP1、P2のゲート電圧VGを、ノードNDBの電圧に追従して変化するノードNDC、NDAの電圧を利用してそれぞれ生成することで、各pMOSトランジスタP1、P2のゲート・ソース間電圧VGSが閾値電圧より低くなることが防止される。
【0046】
以上、この実施形態では、ノードNDBは、電源電圧VDEと電圧VPADの中間の電圧に設定される。pMOSトランジスタP1のゲートおよびバックゲートに接続されるダイオードD1は、ノードNDBの電圧より電圧VPAD側の電圧でありノードNDBの電圧に追従する電圧を受ける。pMOSトランジスタP2のゲートおよびバックゲートに接続されるダイオードD2は、ノードNDBの電圧より電源電圧VDE側の電圧でありノードNDBの電圧に追従する電圧を受ける。
【0047】
これにより、電圧VPADが電源電圧VDEより高いときに、pMOSトランジスタP1のゲート・ソース間電圧の絶対値をpMOSトランジスタP1の閾値電圧の絶対値より小さくできる。pMOSトランジスタP1のソースまたはドレインとバックゲートとの間に、pn接合の順方向電圧が流れることを防止できる。同様に、電圧VPADが電源電圧VDEより低いときに、pMOSトランジスタP2のゲート・ソース間電圧の絶対値をpMOSトランジスタP1の閾値電圧の絶対値より小さくできる。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号端子PADに信号が伝達されるときに、pMOSトランジスタP1、P2がオンすることを防止でき、信号端子PADから保護回路ESD1にリーク電流が流れることを防止できる。また、pMOSトランジスタP2のソースまたはドレインとバックゲートとの間に、pn接合の順方向電圧が流れることを防止できる。
【0048】
さらに、電圧VPADが電源電圧VDEより高いときにも、各pMOSトランジスタP1、P2のゲート、ソース、ドレイン間に耐圧を超える電圧が印加されることを防止できる。換言すれば、信号端子PADに電源電圧VDEより電圧VPADが供給される仕様の半導体集積回路において、サージ電圧を逃がすための保護回路ESD1を、耐圧が電源電圧VDEより低いpMOSトランジスタP1、P2を用いて形成できる。
【0049】
以上より、電源電圧VDEより高い電圧の信号が供給される信号端子PADに接続される保護回路ESD1を、耐圧が電源電圧VDEより低いpMOSトランジスタP1、P2を用いて形成できる。この結果、保護回路ESD1が搭載される半導体集積回路の製造コストを削減できる。
【0050】
図6は、
図1に示した保護回路ESD1が搭載される半導体集積回路SEMの一実施形態を示している。例えば、半導体集積回路SEMは、
図1に示した保護回路ESD1と、保護回路ESD2、ESD3と、信号端子PADを介して供給される信号(または電圧)を処理する内部回路INTを有している。
【0051】
保護回路ESD2は、電源端子VDEと接地端子VSSとの間に直列に配置されたnMOSトランジスタN3、N4と、電源端子VDEと接地端子VSSとの間に配置されたダイオードD3とを有している。nMOSトランジスタN3は、ドレインを電源端子VDEに接続し、ゲート、ソースおよびバックゲート(基板)をnMOSトランジスタN4のドレインに接続している。nMOSトランジスタN4は、ゲート、ソースおよびバックゲート(基板)を接地端子VSSに接続している。ダイオードD3は、アノードを接地端子VSSに接続し、カソードを電源端子VDEに接続している。
【0052】
各nMOSトランジスタN3、N4は、バックゲートであるp型ウエル領域と、p型ウエル領域の表面に形成され、ソースまたはドレインとして機能する一対のn型拡散領域を有している。このため、各nMOSトランジスタN3、N4において、n型拡散領域とp型ウエル領域とにより、npn型の寄生バイポーラトランジスタが形成されている。
【0053】
図6に示した保護回路ESD2では、接地端子VSS側の接続ノードNVSSを基準にして、電源端子VDE側の接続ノードNVDEに正のサージ電圧が印加されるとき、nMOSトランジスタN3、N4の寄生バイポーラトランジスタがオンする。サージ電圧による電荷は、接地端子VSSへの接続ノードNVSSから放電される。接続ノードNVDEを基準にして、接続ノードNVSSに負のサージ電圧が印加されるときも、nMOSトランジスタN3、N4の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、接続ノードNVSSから放電される。
【0054】
一方、接続ノードNVDEを基準にして、接続ノードNVSSに正のサージ電圧が印加されるとき、ダイオードD3に順方向電流が流れ、サージ電圧による電荷は、接続ノードNVDEから放電される。接続ノードNVSSを基準にして、接続ノードNVDEに負のサージ電圧が印加されるときも、ダイオードD3に順方向電流が流れ、サージ電圧による電荷は、接続ノードNVDEから放電される。
【0055】
保護回路ESD3は、アノードを接地端子VSSに接続し、カソードを信号端子PADに接続したダイオードD4を有している。保護回路ESD3は、接続ノードNVSSを基準にして、信号端子PAD側の接続ノードNPADに負のサージ電圧が印加されるとき、ダイオードD4に順方向電流を流し、電荷を放電する。
【0056】
内部回路INTは、信号端子PADと接地端子VSSとの間に直列に配置された抵抗素子R3、R4と、抵抗素子R3、R4の接続ノードに入力が接続されたインバータIVとを有している。例えば、インバータIVを形成するトランジスタの耐圧は、1.8Vである。抵抗素子R3、R4により、信号端子PADに供給される電圧VPADは分圧され、電圧VPADより低い値がインバータIVの入力に供給される。電圧VPADが最大値(例えば、6.0V)のとき、1.8VがインバータIVの入力に供給される。これにより、トランジスタの耐圧を超える電圧VPADが供給される半導体集積回路SEMにおいても、耐圧が1.8Vのトランジスタを用いて内部回路INTを形成できる。すなわち、内部回路INTは、入力トレラント回路を有している。
【0057】
なお、内部回路INTは、信号端子PADに信号を出力する機能を有していてもよい。信号端子PADが出力端子として機能する場合、例えば、内部回路INTは、内部処理により生成される0Vから1.8Vの振幅の信号を、0Vから5Vに変換し、信号端子PADに出力する出力トレラント回路を有している。あるいは、内部回路INTは、信号端子PADを介して信号を受ける機能と、信号端子PADに信号を出力する機能との両方を有していてもよい。
【0058】
図7は、
図6に示した半導体集積回路SEMの信号端子PADにサージ電圧が印加されるときの動作の例を示している。サージ電圧は、半導体集積回路SEMのパッケージング工程や組立工程等において、半導体集積回路SEMに電源や信号が供給されていないときに印加される。
【0059】
電源端子VDEを基準にして、信号端子PADに正のサージ電圧が印加されるとき、上述したように、保護回路ESD1のpMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、電源端子VDEから放電される。信号端子PADを基準として、電源端子VDEに負のサージ電圧が印加されるときも、pMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、サージ電圧による電荷は、電源端子VDEから放電される。
【0060】
電源端子VDEを基準にして、信号端子PADに負のサージ電圧が印加されるとき、保護回路ESD2のnMOSトランジスタN3、N4の寄生バイポーラトランジスタがオンし、保護回路ESD3のダイオードD3に順方向電流が流れる。これにより、サージ電圧による電荷は、信号端子PADから放電される。
【0061】
なお、上述した保護回路ESD1の実施形態で説明したように、電源端子VDEを基準にして、信号端子PADに負のサージ電圧が印加される場合、
図7に破線の矢印で示すように、保護回路ESD1によってもサージ電圧を逃がすことが可能である。
【0062】
接地端子VSSを基準にして、信号端子PADに正のサージ電圧が印加されるとき、保護回路ESD1のpMOSトランジスタP1、P2の寄生バイポーラトランジスタがオンし、保護回路ESD2のnMOSトランジスタN3、N4の寄生バイポーラトランジスタがオンする。これにより、サージ電圧による電荷は、接地端子VSSから放電される。接地端子VSSを基準にして、信号端子PADに負のサージ電圧が印加されるとき、保護回路ESD3のダイオードD3に順方向電流が流れ、サージ電圧による電荷は、信号端子PADから放電される。
【0063】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、正または負のサージ電圧が半導体集積回路SEMに印加されるときに、内部回路INTに高い電圧が印加されることを防止でき、半導体集積回路SEMが破壊することを防止できる。
【0064】
図8は、保護回路の別の実施形態を示している。この実施形態の保護回路ESD1は、複数のpMOSトランジスタP11、P12、P13、P14および複数のpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24を有している。すなわち、
図1に示したpMOSトランジスタP1が、複数のサブpMOSトランジスタP11、P12、P13、P14に置き換えられている。
図1に示したpMOSトランジスタP2が、複数のサブpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24に置き換えられている。
【0065】
例えば、この種のpMOSトランジスタP11、P12、P13、P14あるいはpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24は、素子を効率的にレイアウトするために、櫛状のゲートを用いることで形成される。抵抗素子R1、R2、RA、RB、RC、RDおよびダイオードD1、D2は、
図1と同じ素子である。なお、pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14の数およびpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24の数は、櫛状のゲートの分岐数により可変である。
【0066】
各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14のソースは、各抵抗素子R51、R52、R53、R54を介して電源端子VDEに接続されている。各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14のドレインは、ノードNDBに共通に接続されている。各pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のソースは、各抵抗素子R61、R62、R63、R64を介してノードNDBに接続されている。各pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のドレインは、信号端子PADに共通に接続されている。
【0067】
なお、ここでは、各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24の上側の電極をソースと称し、各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24の下側の電極をドレインと称している。
【0068】
この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24の耐圧は、電源電圧VDEより低く、信号端子PADに伝達される信号の最大電圧は、電源電圧VDEより高い。例えば、電源電圧VDEは3.3Vであり、0Vから5.0Vの範囲の信号が信号端子PADに伝達される。例えば、pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24の閾値電圧は、−0.4Vまたは−0.5Vである。例えば、pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24の耐圧は、1.8Vである。
【0069】
この実施形態の保護回路ESD1は、
図7の動作と同様に、電源端子VDEを基準として、信号端子PADに正のサージ電圧が印加されるときに機能する。このため、抵抗素子R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64は、n型ウエル領域とp型拡散領域(ソース)によるpn接合のブレークダウンが起こる各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24のソース側に設けられる。
【0070】
抵抗素子R51、R52、R53、R54を設けることにより、サージ電圧の印加時に、pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14の寄生バイポーラトランジスタを連続的にオンさせることができる。また、抵抗素子R61、R62、R63、R64を設けることにより、サージ電圧の印加時に、pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24の寄生バイポーラトランジスタを連続的にオンさせることができる。
【0071】
すなわち、櫛状の共通のゲートを有する複数のトランジスタの寄生バイポーラトランジスタが順にオンするMFT(Multi Finger Turn on)を実現できる。この結果、pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のいずれか、またはpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のいずれかにサージ電圧による電流が集中することを防止でき、保護回路ESD1が破壊されることを防止できる。
【0072】
なお、pMOSトランジスタP11、P21は、電源電圧VDEと信号端子PADの電圧との中間の値に設定されるノードNDBを介して互いに接続されている。pMOSトランジスタP11、P21はノードNDBにより分離されているため、独立に動作し、pMOSトランジスタP11、P21の寄生バイポーラトランジスタは独立にオンする。このため、pMOSトランジスタP11、P21のソース側に抵抗素子R51、R61をそれぞれ設ける必要がある。他のpMOSトランジスタP12、P22等も同様に、ソース側に抵抗素子をそれぞれ設ける必要がある。
【0073】
ダイオードD1のカソードは、各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14のゲートおよびバックゲートに共通に接続されている。ダイオードD2のカソードは、各pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のゲートおよびバックゲートに共通に接続されている。保護回路ESD1のその他の構成は、
図1と同じである。
【0074】
例えば、各抵抗素子R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64は、各pMOSトランジスタP11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24のソースであるp型拡散領域に設けられたシリサイドブロックにより形成される。シリサイドブロックによる抵抗素子は、pMOSトランジスタのp型拡散領域の表面に一部の領域を除いてシリサイドを設け、シリサイドが形成されない部分により形成される。
【0075】
この実施形態の保護回路ESD1の特性は、
図3から
図5と同じである。また、この実施形態の保護回路ESD1は、
図6と同様に、内部回路INT、保護回路ESD2、ESD3を有する半導体集積回路SEMに形成され、
図7(破線の矢印を除く)と同じ動作をする。
【0076】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、保護回路ESD1が複数のpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24および複数のpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24で形成される場合にも、これらトランジスタの耐圧を電源電圧VDEより低くでき、半導体集積回路SEMの製造コストを削減できる。また、サージ電圧が半導体集積回路SEMに印加されるときに、pMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のいずれか、またはpMOSトランジスタP21、P22、P23、P24のいずれかに電流が集中することを防止でき、保護回路ESD1が破壊されることを防止できる。
【0077】
図9は、保護回路の別の実施形態を示している。この実施形態の保護回路ESD1は、
図1に示した保護回路ESD1のpMOSトランジスタP1、P2の代わりにnMOSトランジスタN1、N2を有している。また、この実施形態の保護回路ESD1は、ダイオードN1、N2の向きが
図1と逆である。さらに、この実施形態の保護回路ESD1では、抵抗素子RA、RB、RC、RDの抵抗比は、この順で3:3:2:4に設計されている。保護回路ESD1のその他の構成は、
図1と同様である。この実施形態の保護回路ESD1は、
図6と同様に、内部回路INT、保護回路ESD2、ESD3を有する半導体集積回路SEMに形成される。
【0078】
この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、nMOSトランジスタN1、N2の耐圧は、電源電圧VDEより低く、信号端子PADに伝達される信号の最大電圧は、電源電圧VDEより高い。例えば、電源電圧VDEは3.3Vであり、0Vから5.0Vの範囲の信号が信号端子PADに伝達される。例えば、nMOSトランジスタN1、N2の閾値電圧は、0.4Vまたは0.5Vに設計され、nMOSトランジスタN1、N2の耐圧は、1.8Vである。
【0079】
図10は、
図9に示した保護回路ESD1の断面構造の例を示している。
図2と同じ要素については、詳細な説明は省略する。各nMOSトランジスタN1、N2は、p型ウエル領域PWの表面にチャネル領域を挟んで形成される一対のn型拡散領域N+(ソース、ドレイン)と、チャネル領域上にゲート絶縁膜を介して形成されるゲートGTとを有している。p型ウエル領域PWは、n型ウエル領域NWを介して半導体基板と電気的に分離されている。すなわち、nMOSトランジスタN1、N2は、いわゆるトリプルウエル構造を用いて形成されている。p型ウエル領域PWは、各nMOSトランジスタN1、N2のバックゲート(基板)である。各nMOSトランジスタN1、N2において、ソースおよびドレインを形成するn型拡散領域N+と、p型ウエル領域PWとにより、npn型の寄生バイポーラトランジスタが形成されている。
【0080】
各ダイオードD1、D2は、n型ウエル領域NW(カソード)と、n型ウエル領域NWの表面に形成されたp型拡散領域P+(アノード)により形成されている。ダイオードD1のカソードは、n型ウエル領域NWの表面に形成されたn型拡散領域N+を介して、ノードNDCに接続されている。ダイオードD2のカソードは、n型ウエル領域NWの表面に形成されたn型拡散領域N+を介して、ノードNDAに接続されている。各nMOSトランジスタN1、N2および各ダイオードD1、D2のp型ウエル領域PWは、電気的に互いに独立に形成されている。
【0081】
図11は、
図9に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとnMOSトランジスタN1に印加される電圧との関係を示している。
図3と同じ動作については、詳細な説明は省略する。
図11は、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに伝達されるときの状態を示している。例えば、電源電圧VDEは3.3Vに設定され、信号の電圧VPADは0Vから5.0Vの範囲で変化する。なお、
図11では、動作マージンを考慮して、信号の電圧VPADの最大値を6.0Vにしている。
【0082】
ノードNDBの電圧は、
図3と同じであり、(VDE+VPAD)/2に設定される。ノードNDCの電圧は、電圧VPADに、(VDE−VPAD)の1/3倍を加えた値に設定され、電圧VPADの上昇とともに上昇する。例えば、ノードNDCの電圧は、電圧VPADが0Vのときに1.1Vであり、電圧VPADが3.3Vのときに3.3Vであり、電圧VPADが6Vのときに5.1Vである。
【0083】
nMOSトランジスタN1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電源電圧VDEと、ノードNDCの電圧にダイオードD1の順方向電圧降下の値を加えた電圧のうち低いほうに設定される。これにより、nMOSトランジスタN1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが0Vから2.55Vの範囲にあるときにノードNDCの電圧に0.5Vを加えた値に設定される。また、nMOSトランジスタN1のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが2.55Vから6.0Vの範囲にあるときに電源電圧VDEに設定される。
【0084】
電圧VPADが電源電圧VDEより低いとき、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN1のソース電圧になり、電源電圧VDEがnMOSトランジスタN1のドレイン電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDEより高いとき、電源電圧VDEがnMOSトランジスタN1のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN1のドレイン電圧になる。
【0085】
電圧VPADが0.3Vから3.3Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN1の基板電圧VBは、ソース電圧(NDB)以上になる。しかし、基板電圧VBとソース電圧(NDB)との差の最大値(0.375V、電圧VPAD=2.55V)は、pn接合の順方向電圧降下(例えば、0.5V)より小さい。電圧VPADが0Vから0.3Vおよび3.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN1の基板電圧VBは、ソース電圧(NDBまたはVDE)以上になる。
【0086】
電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN1の基板電圧VBは、常にドレイン電圧(NDBまたはVDE)以下になる。以上より、電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるときに、nMOSトランジスタN1のバックゲートとドレイン間またはバックゲートとソース間にリーク電流(pn接合の順方向電流)が流れることはない。
【0087】
nMOSトランジスタN1のゲート電圧と、ソース電圧またはドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.7V)になる。nMOSトランジスタN1のソース電圧とドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。nMOSトランジスタN1のゲート、基板間電圧は、常に0Vである。以上より、nMOSトランジスタN1のゲート、ソース、ドレイン、基板間に、耐圧(1.8V)を超える電圧が印加されることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作するときに、0Vから5.0Vの信号が信号端子PADに印加されても、nMOSトランジスタN1は破壊されない。
【0088】
図12は、
図9に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとnMOSトランジスタN2に印加される電圧との関係を示している。
図4と同じ動作については、詳細な説明は省略する。
図12も、
図11と同様に、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに伝達されるときの状態を示している。例えば、電源電圧VDEは3.3Vに設定され、信号の電圧VPADは0Vから5.0Vの範囲で変化する。なお、
図12では、
図11と同様に、動作マージンを考慮して、信号の電圧VPADの最大値を6.0Vにしている。
【0089】
ノードNDBの電圧は、
図3と同じである。ノードNDAの電圧は、電圧VPADに、(VDE−VPAD)の3/4倍を加えた値に設定され、電圧VPADの上昇とともに上昇する。例えば、ノードNDAの電圧は、電圧VPADが0Vのときに2.475Vであり、電圧VPADが3.3Vのときに3.3Vであり、電圧VPADが6Vのときに3.975Vである。
【0090】
nMOSトランジスタN2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADと、ノードNDCの電圧にダイオードD2の順方向電圧降下の値を加えた電圧のうち低いほうに設定される。これにより、nMOSトランジスタN2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが0Vから4.0Vの範囲にあるときに電圧VPADに設定される。また、nMOSトランジスタN2のゲート電圧VGおよび基板電圧VBは、電圧VPADが4.0Vから6.0Vの範囲にあるときにノードNDAの電圧に0.5Vを加えた値に設定される。
【0091】
電圧VPADが電源電圧VDEより低いとき、電圧VPADがnMOSトランジスタN2のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN2のドレイン電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDEより高いとき、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN2のソース電圧になり、電圧VPADがnMOSトランジスタN2のドレイン電圧になる。
【0092】
電圧VPADが3.3Vから5.3Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN2の基板電圧VBは、ソース電圧(NDB)以上になる。しかし、基板電圧VBとソース電圧(NDB)との差の最大値(0.33V、電圧VPAD=3.97V)は、pn接合の順方向電圧降下(例えば、0.5V)より小さい。電圧VPADが0Vから3.3Vおよび5.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN2の基板電圧VBは、ソース電圧(VDEまたはNDB)以上になる。
【0093】
電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN2の基板電圧VBは、常にドレイン電圧(NDBまたはVPAD)以上になる。以上より、電圧VPADが0Vから6.0Vの範囲にあるときに、nMOSトランジスタN2のバックゲートとドレイン間またはバックゲートとソース間にリーク電流(pn接合の順方向電流)が流れることはない。
【0094】
nMOSトランジスタN2のゲート電圧と、ソース電圧またはドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。nMOSトランジスタN2のソース電圧とドレイン電圧との差は、電圧VPADが0Vのときに最大(1.65V)になる。nMOSトランジスタN2のゲート、基板間電圧は、常に0Vである。以上より、nMOSトランジスタN2のゲート、ソース、ドレイン、基板間に、耐圧(1.8V)を超える電圧が印加されることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作するときに、0Vから5.0Vの信号が信号端子PADに印加されても、nMOSトランジスタN2は破壊されない。
【0095】
図13は、
図9に示した保護回路ESD1において、信号端子PADの電圧VPADとnMOSトランジスタN1、N2のゲート・ソース間電圧VGSとの関係を示している。
図5と同じ動作については、詳細な説明は省略する。
【0096】
電圧VPADが電源電圧VDE(3.3V)より低いとき、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN1のソース電圧になり、電圧VPADがnMOSトランジスタN2のソース電圧になる。電圧VPADが電源電圧VDE(3.3V)より高いとき、電源電圧VDEがnMOSトランジスタN1のソース電圧になり、ノードNDBの電圧がnMOSトランジスタN2のソース電圧になる。
【0097】
nMOSトランジスタN1のゲート電圧VGは、電圧VPADが0.3Vから3.3Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN1のソース電圧であるノードNDBの電圧より高くなる。そして、nMOSトランジスタN1のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADが2.55Vのときに最大(0.375V)になる。nMOSトランジスタN1のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADが0Vから0.3Vおよび3.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、0V以下になる。
【0098】
一方、nMOSトランジスタN2のゲート電圧VGは、電圧VPADが3.3Vから5.3Vの範囲にあるとき、nMOSトランジスタN2のソース電圧であるノードNDBの電圧より高くなり、電圧VPADが3.97Vのときに最大(0.33V)になる。nMOSトランジスタN2のゲート電圧VGは、電圧VPADが0Vから3.3Vおよび5.3Vから6.0Vの範囲にあるとき、0V以下になる。
【0099】
上述したように、nMOSトランジスタN1、N2の閾値電圧は、0.4Vまたは0.5Vに設計されている。nMOSトランジスタN1、N2のゲート・ソース間電圧VGSは、電圧VPADの全ての範囲において、閾値電圧より高くなることはない。したがって、保護回路ESD1を搭載する半導体集積回路がシステム上で動作し、信号が信号端子PADに供給され、電圧VPADが変化するときに、nMOSトランジスタN1、N2がオンすることを防止できる。この結果、信号端子PADから保護回路ESD1にリーク電流が流れることを防止でき、保護回路ESD1がシステムの動作に影響を与えることを防止できる。
【0100】
なお、
図9に示した抵抗素子RA、RB、RC、RDの抵抗比は、各nMOSトランジスタN1、N2のゲート・ソース間電圧VGSが各nMOSトランジスタN1、N2の閾値電圧より高くならないように設計される。nMOSトランジスタN1、N2のゲート・ソース間電圧VGSが閾値電圧より低くならないという条件を満たせば、抵抗素子RA、RB、RC、RDの抵抗比は、上述した比率3:3:2:4に限定されるものではない。上記条件を満たせば、ノードNDAの電圧は、電源電圧VDEとノードNDBの電圧との間の値に設定可能である。ノードNDCの電圧は、ノードNDBの電圧と電圧VPADとの間の値に設定可能である。
【0101】
そして、nMOSトランジスタN1、N2のゲート電圧VGを、ノードNDBの電圧に追従して電圧が上昇するノードNDC、NDAを利用してそれぞれ生成することで、各nMOSトランジスタN1、N2のゲート・ソース間電圧VGSが閾値電圧より低くなることが防止される。以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
図14は、保護回路の別の実施形態を示している。
図9と同じ要素については、詳細な説明は省略する。この実施形態の保護回路ESD1は、複数のnMOSトランジスタN11、N12、N13、N14および複数のnMOSトランジスタN21、N22、N23、N24を有している。すなわち、
図9に示したnMOSトランジスタN1が、複数のサブnMOSトランジスタN11、N12、N13、N14に置き換えられ、
図9に示したnMOSトランジスタN2が、複数のサブnMOSトランジスタN21、N22、N23、N24に置き換えられている。なお、nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14の数およびnMOSトランジスタN21、N22、N23、N24の数は、櫛状のゲートの分岐数により可変である。抵抗素子R1、R2、RA、RB、RC、RDおよびダイオードD1、D2は、
図9と同じ素子である。
【0103】
各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14のソースは、各抵抗素子R51、R52、R53、R54を介してノードNDBに接続されている。各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14のドレインは、電源端子VDEに共通に接続されている。各nMOSトランジスタN21、N22、N23、N24のソースは、各抵抗素子R61、R62、R63、R64を介して信号端子PADに接続されている。各nMOSトランジスタN21、N22、N23、N24のドレインは、ノードNDBに共通に接続されている。
【0104】
なお、ここでは、各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24の下側の電極をソースと称し、各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24の上側の電極をドレインと称している。
【0105】
この実施形態においても、上述した実施形態と同様に、nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24の耐圧は、電源電圧VDEより低く、信号端子PADに伝達される信号の最大電圧は、電源電圧VDEより高い。例えば、電源電圧VDEは3.3Vであり、0Vから6.0Vの範囲の信号が信号端子PADに伝達される。例えば、nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24の閾値電圧は、0.4Vまたは0.5Vである。例えば、nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24の耐圧は、1.8Vである。
【0106】
この実施形態の保護回路ESD1は、
図7の説明と同様に、電源端子VDEを基準として、信号端子PADに正のサージ電圧が印加されるときに機能する。このため、抵抗素子R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64は、n型ウエル領域とp型拡散領域(ソース)によるpn接合のブレークダウンが起こる各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24のソース側に設けられる。これにより、サージ電圧が印加されるときに、nMOSトランジスタN21、N22、N23、N24の寄生バイポーラトランジスタを連続的にオンさせ、MOSトランジスタN21、N22、N23、N24の寄生バイポーラトランジスタを連続的にオンさせることができる。この結果、nMOSトランジスタN21、N22、N23、N24のいずれか、またはnMOSトランジスタN21、N22、N23、N24のいずれかに電流が集中することを防止でき、保護回路ESD1が破壊されることを防止できる。
【0107】
なお、nMOSトランジスタN11、N21は、電源電圧VDEと信号端子PADの電圧との中間の値に設定されるノードNDBを介して互いに接続されている。nMOSトランジスタN11、N21はノードNDBにより分離されているため、独立に動作し、nMOSトランジスタN11、N21の寄生バイポーラトランジスタは独立にオンする。このため、nMOSトランジスタN11、N21の各々に抵抗素子R51、R61を設ける必要がある。他のnMOSトランジスタN12、N22等も同様に、抵抗素子をそれぞれ設ける必要がある。
【0108】
例えば、各抵抗素子R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64は、各nMOSトランジスタN11、N12、N13、N14、N21、N22、N23、N24のソースであるp型拡散領域に設けられたシリサイドブロックにより形成される。
【0109】
この実施形態の保護回路ESD1の特性は、
図11から
図13と同じである。また、この実施形態の保護回路ESD1は、
図6と同様に、内部回路INT、保護回路ESD2、ESD3を有する半導体集積回路SEMに形成され、
図7(破線の矢印を除く)と同じ動作をする。以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
以上の実施形態において説明した発明を整理して、付記として開示する。
(付記1)
電源電圧を受ける電源端子と信号が入力または出力される信号端子との間に第1ノードを介して直列に接続された第1トランジスタおよび第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのゲートおよびバックゲートと、前記電源端子との間に配置される第1抵抗素子と、
前記第2トランジスタのゲートおよびバックゲートと、前記信号端子との間に配置される第2抵抗素子と、
前記電源端子と前記信号端子との間に直列に接続された第3抵抗素子、第4抵抗素子、第5抵抗素子および第6抵抗素子とを含み、前記第4抵抗素子および前記第5抵抗素子を互いに接続する第2ノードに前記電源電圧と前記信号端子の電圧との中間の電圧を生成し、前記第2ノードが前記第1ノードに接続された分圧回路と、
前記第1トランジスタのゲートおよびバックゲートと、前記第5抵抗素子および前記第6抵抗素子を互いに接続する第3ノードとの間に配置される第1ダイオードと、
前記第2トランジスタのゲートおよびバックゲートと、前記第3抵抗素子および前記第4抵抗素子を互いに接続する第4ノードとの間に配置される第2ダイオードと
を備えていることを特徴とする保護回路。
(付記2)
前記第3抵抗素子と前記第4抵抗素子の抵抗比は、前記信号端子に信号が入力または出力されるときに、前記第2トランジスタのゲート・ソース間電圧の絶対値が前記第2トランジスタの閾値電圧の絶対値を超えないように設定され、
前記第5抵抗素子と前記第6抵抗素子の抵抗比は、前記信号端子に信号が入力または出力されるときに、前記第1トランジスタのゲート・ソース間電圧の絶対値が前記第1トランジスタの閾値電圧の絶対値を超えないように設定されていること
を特徴とする付記1に記載の保護回路。
(付記3)
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタは、pMOSトランジスタであり、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第3ノードに接続され、カソードが前記第1トランジスタのゲートおよびバックゲートに接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第4ノードに接続され、カソードが前記第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに接続されていること
を特徴とする付記1または付記2に記載の保護回路。
(付記4)
前記第1トランジスタは、複数の第1サブトランジスタにより形成され、
前記第2トランジスタは、複数の第2サブトランジスタにより形成され、
前記保護回路は、
前記電源端子と前記各第1サブトランジスタとの間に配置される第7抵抗素子と、
前記第2ノードと前記各第2サブトランジスタとの間に配置される第8抵抗素子と
を備えていることを特徴とする付記3に記載の保護回路。
(付記5)
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタは、nMOSトランジスタであり、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第1トランジスタのゲートおよびバックゲート接続され、カソードが前記第3ノードに接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第2トランジスタのゲートおよびバックゲートに接続され、カソードが前記第4ノードに接続されていること
を特徴とする付記1または付記2に記載の保護回路。
(付記6)
前記第1トランジスタは、複数の第1サブトランジスタにより形成され、
前記第2トランジスタは、複数の第2サブトランジスタにより形成され、
前記保護回路は、
前記各第1サブトランジスタと前記第2ノードとの間に配置される第7抵抗素子と、
前記各第2サブトランジスタと前記信号端子との間に配置される第8抵抗素子と
を備えていることを特徴とする付記5に記載の保護回路。
(付記7)
付記1ないし付記6のいずれか1項に記載の保護回路を含み、前記電源端子を基準として前記信号端子に印加される正のサージ電圧による電荷を前記電源端子に放電する第1保護回路と、
前記信号端子に伝達される信号に応じて動作し、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタと同じ耐圧のトランジスタを有する内部回路と、
前記電源端子と接地端子との間に配置され、前記接地端子を基準として前記電源端子に印加される正のサージ電圧による電荷を前記接地端子に放電するとともに、前記電源端子を基準として前記接地端子に印加される正のサージ電圧による電荷を前記電源端子に放電する第2保護回路と、
前記接地端子と前記信号端子との間に配置され、前記接地端子を基準として前記信号端子に印加される負のサージ電圧による電荷を前記信号端子に放電するための第3保護回路と
を備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【0111】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。