【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係るクラッチ装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るクラッチ装置の構成を模式的に示した断面図である。
図4は、本発明の実施例1に係るクラッチ装置における(A)ダイヤフラムスプリング、(B)第1アシストスプリング、(C)第2アシストスプリングの荷重特性を模式的に示した図である。
【0025】
クラッチ装置1は、エンジン(図示せず)のクランクシャフト10から変速機入力軸41への回転動力を断接可能に伝達する装置である(
図1参照)。クラッチ装置1は、レリーズベアリング23を軸方向のエンジン側(
図1の右側)へ移動させてクラッチを断状態とすることでクランクシャフト10から変速機入力軸41への回転動力を遮断するクラッチレリーズ装置(図示せず)によって操作可能な構成となっている。クラッチ装置1は、マニュアル用の変速機に適用するだけでなく、AMT(Automated Manual Transmission;自動マニュアルトランスミッション)に適用してもよい。また、クラッチ装置1は、ハイブリッド車がモータ走行する際のエンジン切離し用クラッチに適用してもよい。クラッチ装置1は、クラッチカバー13の内側において、クラッチ操作力をクラッチの断側にアシストするアシスト機構(
図1では、アシストスプリング19、32を用いたもの)を有する。クラッチ装置1は、クラッチ操作荷重(レリーズベアリング23がダイヤフラムスプリング15を押付ける力)が一定(所定の幅に入るように範囲で一定)となるように、クラッチカバー13内にアシストスプリング19、32が設定されている。
【0026】
クラッチ装置1は、クラッチレリーズ装置(図示せず)によるクラッチ操作荷重がないときに係合状態となるノーマルクローズ型である。クラッチ装置1は、主な構成部として、フライホイール11と、ボルト12と、クラッチカバー13と、ボルト14と、ダイヤフラムスプリング15と、支点部材16と、プレッシャプレート17と、支持部材18と、第2アシストスプリング19と、筒状部材21と、スリーブ22と、レリーズベアリング23と、クラッチディスク30と、を有する。
【0027】
フライホイール11は、環状の回転部材(慣性体)である(
図1参照)。フライホイール11は、内周部分にて複数のボルト12によってクランクシャフト10に取付固定されており、クランクシャフト10と一体に回転する。フライホイール11は、外周部分にて複数のボルト14によってクラッチカバー13が取付固定されており、クラッチカバー13と一体に回転する。フライホイール11は、クラッチディスク30の摩擦材31bと摩擦係合可能な摩擦面を有する。
【0028】
クラッチカバー13は、クラッチディスク30の外周部分をカバーするように形成された環状の部材である(
図1参照)。クラッチカバー13は、外周部分にてボルト14によってフライホイール11に取付固定されている。クラッチカバー13は、内周部分にてフライホイール11から離間しており、クラッチディスク30の外周部分、及びプレッシャプレート17をカバーしている。クラッチカバー13は、内周端部にて、ダイヤフラムスプリング15の中間部の軸方向両側を挟むように配された2つの支点部材16を支持している。クラッチカバー13は、ダイヤフラムスプリング15のレバー部分間における複数の空所にて2つの支点部材16をかしめて支持している。クラッチカバー13は、支点部材16を支点にダイヤフラムスプリング15を揺動可能に支持する。クラッチカバー13は、内側の面にて、第2アシストスプリング19を支持するための支持部材18が固定されている。
【0029】
ダイヤフラムスプリング15は、プレッシャプレート17をフライホイール11側に付勢する弾性部材である(
図1参照)。ダイヤフラムスプリング15は、環状の皿ばね部分から径方向内側に複数のレバー部分が延在した構成となっている。ダイヤフラムスプリング15は、中間部分(支点)にて、クラッチカバー13に支持された2つの支点部材16の間に揺動可能に挟持(支持)されている。ダイヤフラムスプリング15は、外周部分のエンジン側(
図1の右側)の面(作用点)にて、プレッシャプレート17の複数の突起部17aと接離可能に当接(付勢)している。ダイヤフラムスプリング15は、内周部分の変速機側(
図1の左側)の面(力点)にて、レリーズベアリング23の回転輪と当接しており、クラッチ操作荷重を受ける。ダイヤフラムスプリング15は、支点部材16を支点に傾くことで、ダイヤフラムスプリング15の外周部分がプレッシャプレート17をフライホイール11側に付勢するとともに、ダイヤフラムスプリング15の内周部分がレリーズベアリング23を変速機側(
図1の左側)に付勢する。ダイヤフラムスプリング15は、プレッシャプレート17を付勢することで、クラッチディスク30の摩擦材31a、31bの部分をフライホイール11に圧接させる。ダイヤフラムスプリング15は、内周部分をレリーズベアリング23によってフライホイール11側に押付けることで、外周部分がフライホイール11から離れるように変位し、プレッシャプレート17のフライホイール11側への付勢を解除する。
【0030】
ダイヤフラムスプリング15は、支点部材16と当接している部分よりも径方向外側の部分(
図1では突起部17aと当接する部分よりも径方向外側)のエンジン側(
図1の右側)の面にて、第2アシストスプリング19によって変速機側(
図1の左側)に直接付勢されている。ダイヤフラムスプリング15は、摩擦材31a及びプレッシャプレート17を介して第1アシストスプリング32によって変速機側(
図1の左側)に間接的に付勢されている。
【0031】
なお、ダイヤフラムスプリング15の荷重特性は、一般的に、
図4(A)のように3次特性となっており、極小値付近でクラッチの係合状態とし、かつ、極大値付近でクラッチの切れ点となるようにダイヤフラムスプリング15が設定される。ここで、クラッチの係合状態とは、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17に圧接して、クラッチが滑らない状態(摩擦材31a、31bがプレッシャプレート17及びフライホイール11に対して滑らない状態)になっていることをいう。また、クラッチの切れ点とは、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17に圧力をかけずに当接しているだけで、クラッチが滑る状態(摩擦材31a、31bがプレッシャプレート17及びフライホイール11に対して滑る状態)になっていることをいう。
【0032】
支点部材16は、ダイヤフラムスプリング15の揺動の支点となる環状の部材である(
図1参照)。支点部材16は、ダイヤフラムスプリング15の中間部分の両側に2つ配され、ダイヤフラムスプリング15のレバー部分間の複数の空所にてクラッチカバー13によってかしめられて支持されている。
【0033】
プレッシャプレート17は、クラッチディスク30の摩擦摺動部分をフライホイール11に押付ける環状のプレートである(
図1参照)。プレッシャプレート17は、エンジン側(
図1の右側)の面がクラッチディスク30の摩擦材31aと摩擦係合する摩擦面となっている。プレッシャプレート17は、変速機側(
図1の左側)の面(背面;摩擦面に対する反対面)において変速機側(
図1の左側)に突出した複数の突起部17aを有する。突起部17aは、ダイヤフラムスプリング15の作用点に当接させる部分であり、ダイヤフラムスプリング15の付勢力を受ける。
【0034】
支持部材18は、第2アシストスプリング19の一端を支持する部材である。支持部材18は、クラッチカバー13の内側の面に固定されている。なお、支持部材18は、
図1では、クラッチカバー13と別体となっているが、クラッチカバー13の一部であってもよい。
【0035】
第2アシストスプリング19は、クラッチ操作荷重をクラッチの断側にアシストする弾性部材である。第2アシストスプリング19は、クラッチカバー13の内側に配され、一端が支持部材18によって支持され、他端がダイヤフラムスプリング15の外周部を変速機側(
図1の左側)に付勢する。つまり、第2アシストスプリング19は、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17を押付ける方向に対する反対方向にダイヤフラムスプリング15を付勢する。第2アシストスプリング19は、圧縮した状態から解放した状態になる過程で、押付荷重が極大値まで大きくなり当該極大値から小さくなる荷重特性のスプリングが用いられる。例えば、第2アシストスプリング19の荷重特性が
図4(C)のような3次特性の場合、極小値付近でクラッチの係合状態とし、かつ、極大値付近でクラッチの切れ点となるように第2アシストスプリング19を設定する。第2アシストスプリング19には、例えば、皿ばねを用いることができる。
【0036】
筒状部材21は、変速機入力軸41の外周に配された筒状の部材である。筒状部材21は、変速機ハウジング(図示せず)に支持されている。筒状部材21は、内周面にて、変速機入力軸41と離間している。筒状部材21は、外周面にて、スリーブ22が軸方向にスライド可能に配されている。
【0037】
スリーブ22は、筒状の部材であり、筒状部材21の外周面上でスライド可能に配されている。スリーブ22は、レリーズベアリング23の固定輪が固定されている。スリーブ22は、アクチュエータ(図示せず)からクラッチレリーズ装置(図示せず)を介して操作力(クラッチ操作荷重)を受けて軸方向にスライド可能である。スリーブ22で受けたクラッチ操作荷重は、レリーズベアリング23を介してダイヤフラムスプリング15に伝達される。
【0038】
レリーズベアリング23は、回転するダイヤフラムスプリング15の内周部分を押付けてクラッチ装置1を断状態にするためのボールベアリングである。レリーズベアリング23は、ダイヤフラムスプリング15と当接する回転輪が複数のボールを介して固定輪に支持された構成となっている。レリーズベアリング23の固定輪は、スリーブ22に固定されている。レリーズベアリング23は、スリーブ22と一体にスライド可能である。
【0039】
クラッチディスク30は、フライホイール11とプレッシャプレート17との間に配された円形でディスク状の組立体である。クラッチディスク30は、外周部分にて第1アシストスプリング32の両面に摩擦材31a、31bがリベット33a、33bによって取付固定された摩擦摺動部分を有し、当該摩擦摺動部分にてフライホイール11とプレッシャプレート17との間に挟み込まれている。クラッチディスク30は、第1アシストスプリング32の内周部分にて連結部材43によってサイドプレート34、35に取付固定されており、サイドプレート34、35間にハブ部材36が配されており、サイドプレート34、35とハブ部材36との間の捩れ(トルク変動)を弾性部材37の弾性力により緩衝(吸収)する機能を有する。クラッチディスク30は、サイドプレート34とハブ部材36の間にスラスト部材38が配されており、サイドプレート35とハブ部材36の間にスラスト部材39及び皿ばね40が配されており、サイドプレート34、35とハブ部材36との捩れ(トルク変動)を、スラスト部材38、39とハブ部材36との間の摩擦力により緩衝(吸収)する機能を有する。クラッチディスク30は、ハブ部材36の内周にて変速機入力軸41に対して回転不能かつ軸方向移動可能にスプライン係合している。なお、変速機入力軸41は、ベアリング(図示せず)を介して回動可能に変速機ハウジング(図示せず)に支持されており、クラッチディスク30からの回転動力を変速機(図示せず)に伝達する。
【0040】
第1アシストスプリング32は、クラッチの係合状態から切れ点までの間でクラッチ操作荷重をクラッチの断側にアシストする弾性部材である。第1アシストスプリング32は、摩擦材31a、31b間に配されている。第1アシストスプリング32には、例えば、シートスプリング(ディスクスプリング)を用いることができる。第1アシストスプリング32は、摩擦材31aを介してプレッシャプレート17をフライホイール11から離れる方向に付勢する。第1アシストスプリング32は、圧縮した状態から解放した状態になる過程で押付荷重が小さくなり、かつ、係合状態から切れ点までの間でのみ作用するように設定されている。例えば、第1アシストスプリング32の荷重特性が
図4(B)のような3次特性の場合、極大値付近でクラッチの係合状態とし、かつ、荷重0のところ(荷重が発生しなくなるところ)でクラッチの切れ点となるように第1アシストスプリング32を設定する。
【0041】
次に、本発明の実施例1に係るクラッチ装置について図面を用いて説明する。
図2は、本発明の実施例1に係るクラッチ装置の動作を模式的に示した図であり、(A)係合状態の図、(B)切れ点の時の図、(C)切り上げ時の図である。
図3は、本発明の実施例1に係るクラッチ装置におけるプレッシャプレートのダイヤフラムスプリングと当接する部分に係る荷重特性を模式的に示した図である。
【0042】
図2(A)の係合状態では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17をフライホイール11側(
図2の下側)に付勢しており、第1アシストスプリング32が圧縮されて摩擦材31a及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢しており、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢している。
図2(A)の係合状態でダイヤフラムスプリング15の内周部分(
図2の右側の端部付近)を押付けてゆくと
図2(B)の切れ点となる。
【0043】
図2(B)の切れ点では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17に圧力をかけずに当接しており、第1アシストスプリング32が完全に解放(荷重0)されて摩擦材31a及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢しておらず、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢している。
図2(B)の切れ点でダイヤフラムスプリング15の内周部分(
図2の右側の端部付近)をさらに押付けてゆくと
図2(C)の切り上がり状態となる。
【0044】
図2(C)の切り上げ時では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17と完全に離れており、第1アシストスプリング32が完全に解放(荷重0)されて摩擦材31a及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢しておらず、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図2の上側)に付勢している。なお、クラッチカバー13等に固定される板バネ(図示せず)を設け、プレッシャプレート17に対しその板バネが変速機側(
図2の上側)に付勢力を与える構成としてもよい。そのような構成では、
図2(C)に対応する状態において、プレッシャプレート17が、ダイヤフラムスプリング15の移動に追従して摩擦材31aから離れるように作動する。
【0045】
図2(A)の係合状態から
図2(B)の切れ点までの間のダイヤフラムスプリング15及び第1アシストスプリング32並びに第2アシストスプリング19の荷重バランスは、『(ダイヤフラムスプリング荷重)=(第1アシストスプリング荷重)+(第2アシストスプリング荷重)』となっており、第1アシストスプリング32が完全に解放(荷重0)されるまで、この荷重バランスが維持される(
図3参照)。この範囲では、摩擦材31aと摩擦材31bとの間の間隔が変動し、摩擦材31a及びプレッシャプレート17が一体となって軸方向に変動する。
【0046】
図2(B)の切れ点以降のダイヤフラムスプリング15及び第1アシストスプリング32並びに第2アシストスプリング19の荷重バランスは、『(ダイヤフラムスプリング荷重)=(第2アシストスプリング荷重)』となっており、第1アシストスプリング32が完全に解放(荷重0)したままなので、第2アシストスプリング19の荷重のみでアシストする(
図3参照)。この範囲では、摩擦材31aと摩擦材31bとの間の間隔が変動せず、プレッシャプレート17が軸方向に変動可能である。
【0047】
実施例1によれば、クラッチ装置を制御するアクチュエータの仕事量を低減させることができる。つまり、クラッチカバー13内に、クラッチ操作荷重が一定となるようにダイヤフラムスプリングに対して作用するアシストスプリング19、32を設けることで、従来技術のアシストスプリングをクラッチハウジング外(特許文献2ではアクチュエータ内)に設置する構造において生じていた、アシスト特性とクラッチカバー反力の特性とのズレ(クラッチ操作荷重を伝達する経路に配された部材(クラッチレリーズ装置のレバー等)の撓み損失及び伝達効率損失の分のズレ)がなくなり、アクチュエータがする仕事量が大きくなることがない。
【0048】
また、実施例1によれば、アクチュエータとダイヤフラムスプリング15との間のクラッチ操作荷重の伝達経路内の構成部品のコスト及び体格(大きさ・体積)を低減させることができる。つまり、クラッチカバー13内に、クラッチ操作荷重が一定となるようにダイヤフラムスプリングに対して作用するアシストスプリング19、32を設けることで、ダイヤフラムスプリング15からアクチュエータまでの間の荷重伝達経路でクラッチ操作荷重が小さくできるので、クラッチ操作荷重の伝達経路内の構成部品のコスト及び体格(大きさ・体積)を低減させることができる。
【実施例2】
【0049】
本発明の実施例2に係るクラッチ装置について図面を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例2に係るクラッチ装置の構成を模式的に示した断面図である。
【0050】
実施例2は、実施例1の変形例であり、第1アシストスプリングをクラッチディスク30の摩擦材31a、31b間に設けるのをやめ、フライホイール51に対して回転不能かつ軸方向移動可能な摩擦プレート52を設け、フライホイール51と摩擦プレート52との間に第1アシストスプリング53を設けたものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0051】
ライニングプレート42は、環状かつディスク状の部材である。ライニングプレート42は、外周部分の両面に、リベット33a、33bによって摩擦材31a、31bが取り付けられている。ライニングプレート42は、内周部分にて、サイドプレート35とともに複数の連結部材43の一端部にかしめ固定されている。ライニングプレート42は、サイドプレート35、36と一体に回転する。なお、ライニングプレート42は、バネ機能がないが、ライニングプレート42の代わりに実施例1(
図1参照)のようなバネ機能を有する第1アシストスプリング32(シートスプリング)を用いてもよい。
【0052】
フライホイール51は、環状の回転部材(慣性体)である。フライホイール51は、内周部分にて複数のボルト12によってクランクシャフト10に取付固定されており、クランクシャフト10と一体に回転する。フライホイール51は、外周部分にて複数のボルト14によってクラッチカバー13が取付固定されており、クラッチカバー13と一体に回転する。フライホイール51は、ボルト14よりも径方向内側の変速機側(
図5の左側)の面において、エンジン側(
図5の右側)に凹んだ段差部51bを有する。段差部51bは、摩擦プレート52及び第1アシストスプリング53を収容する部分となる。フライホイール51は、段差部51bの側壁面に、摩擦プレート52の外スプライン52aと回転不能かつ軸方向移動可能に係合する内スプライン51aを有する。フライホイール51は、第1アシストスプリング53を支持する。
【0053】
摩擦プレート52は、クラッチディスク30の摩擦材31bと摩擦係合可能なプレートである。摩擦プレート52は、フライホイール51の段差部51bにおいて収容されている。摩擦プレート52は、フライホイール51の内スプライン51aと回転不能かつ軸方向移動可能に係合する外スプライン52aを有する。摩擦プレート52は、第1アシストスプリング53によって摩擦材31b側に付勢されている。摩擦プレート52は、クラッチカバー13に当接することで軸方向の移動が規制される。
【0054】
第1アシストスプリング53は、クラッチ操作荷重をクラッチの断側にアシストする弾性部材である。第1アシストスプリング53は、フライホイール51と摩擦プレート52との間に配されている。第1アシストスプリング53には、例えば、シートスプリング(ディスクスプリング)、ウェーブスプリング、コイルスプリング、皿ばね等を用いることができる。第1アシストスプリング53は、摩擦材31b、ライニングプレート42、及び摩擦材31aを介してプレッシャプレート17をフライホイール11から離れる方向に付勢する。第1アシストスプリング53は、圧縮した状態から解放した状態になる過程で押付荷重が小さくなり、かつ、係合状態から切れ点までの間でのみ作用するように設定されている。第1アシストスプリング53の荷重特性は、実施例1の第1アシストスプリング(
図1の32)の荷重特性(
図4(B)参照)と同様にすることができる。
【0055】
次に、本発明の実施例2に係るクラッチ装置について図面を用いて説明する。
図6は、本発明の実施例2に係るクラッチ装置の動作を模式的に示した図であり、(A)係合時の図、(B)切れ点の時の図、(C)切り上げ時の図である。
【0056】
実施例2に係るクラッチ装置の動作は、第1アシストスプリング53に関する動作を除いて、実施例1に係るクラッチ装置の動作(
図2参照)と同様である。
【0057】
図6(A)の係合状態では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17をフライホイール51側(
図6の下側)に付勢しており、第1アシストスプリング53が圧縮されて摩擦プレート52、摩擦材31b、ライニングプレート42、摩擦材31a、及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢しており、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢している。
図6(A)の係合状態でダイヤフラムスプリング15の内周部分(
図6の右側の端部付近)を押付けてゆくと
図6(B)の切れ点となる。
【0058】
図6(B)の切れ点では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17に圧力をかけずに当接しており、第1アシストスプリング53は摩擦プレート52を変速機側(
図6の上側)に付勢しているが摩擦プレート52がクラッチカバー13に当接して摩擦プレート52から摩擦材31b、ライニングプレート42、摩擦材31a、及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢しておらず(第1アシストスプリング53が完全に解放(荷重0)されていてもよい)、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢している。
図6(B)の切れ点でダイヤフラムスプリング15の内周部分(
図6の右側の端部付近)をさらに押付けてゆくと
図6(C)の切り上がり状態となる。
【0059】
図6(C)の切り上げ時では、ダイヤフラムスプリング15がプレッシャプレート17と完全に離れており、第1アシストスプリング53は摩擦プレート52を変速機側(
図6の上側)に付勢しているが摩擦プレート52がクラッチカバー13に当接して摩擦プレート52から摩擦材31b、ライニングプレート42、摩擦材31a、及びプレッシャプレート17を介してダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢しておらず(第1アシストスプリング53が完全に解放(荷重0)されていてもよい)、第2アシストスプリング19がダイヤフラムスプリング15を変速機側(
図6の上側)に付勢している。
【0060】
図6(A)の係合状態から
図6(B)の切れ点までの間のダイヤフラムスプリング15及び第1アシストスプリング53並びに第2アシストスプリング19の荷重バランスは、『(ダイヤフラムスプリング荷重)=(第1アシストスプリング荷重)+(第2アシストスプリング荷重)』となっており、第1アシストスプリング53がクラッチカバー13に当接する(又は、第1アシストスプリング53が完全に解放(荷重0)される)まで、この荷重バランスが維持される。この範囲では、フライホイール51と摩擦プレート52との間の間隔が変動し、摩擦材31a、31b、ライニングプレート42、及びプレッシャプレート17が一体となって軸方向に変動する。
【0061】
図6(B)の切れ点以降のダイヤフラムスプリング15及び第1アシストスプリング53並びに第2アシストスプリング19の荷重バランスは、『(ダイヤフラムスプリング荷重)=(第2アシストスプリング荷重)』となっており、第1アシストスプリング53がクラッチカバー13に当接したまま(又は、第1アシストスプリング53が完全に解放(荷重0)されたまま)なので、第2アシストスプリング19の荷重のみでアシストする。この範囲では、フライホイール51と摩擦プレート52との間の間隔が変動せず、プレッシャプレート17が軸方向に変動可能である。
【0062】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏する。
【0063】
なお、第1アシストスプリング(
図1の32、
図5の53)はプレッシャプレート17をフライホイール(
図1の11、
図5の51)から離れる方向に付勢すればよいので、実施例1、2のようにクラッチディスク30の摩擦材(
図1の31a、31b)間やフライホイール(
図5の51)と摩擦プレート(
図5の52)との間に限らず、プレッシャプレート(
図1、
図5の17に相当)に回転不能かつ軸方向移動可能な摩擦プレート(図示せず;
図5の52と同様なもの)を設け、プレッシャプレート(
図1、
図5の17に相当)と摩擦プレート(図示せず)との間に第1アシストスプリング(
図5の53と同様なもの)を配置した構成としてもよく、さらに、当該構成を実施例1、2の一方又は両方と併用するようにしてもよい。
【0064】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。