(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スライダは前記シートレールの上壁に装着する前記モールの上板部の上面と隙間をあけて移動するように取り付けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドシート用のワイヤハーネス配索構造。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートには電動リクライニング装置やシートヒータなど種々の電装品が装備されており、これらの電装品に給電するために、車体フロアからシートに給電用のワイヤハーネスが配索されている。スライドシートの場合には、ワイヤハーネスをシートのスライド動作に追従させる必要があり、そのためワイヤハーネスに余長部を持たせて配索している。
【0003】
この種の車体フロアとスライドシートとの間に配索するハーネス配索装置として、特開2006−205872号公報(特許文献1)には、
図12に示すように、スライドシートの下面に取り付けられるシート脚部100をスライド自在に保持するシートレール105と平行にハーネス用スライドレール120を車体フロア150に設けている。該ハーネス用スライドレール120はワイヤハーネス110をU形状に屈曲させながらスライドさせる余長吸収構造をもたせている。
【0004】
しかし、前記
図12に示す構造では、シートレール105と同程度の重量を有するハーネス用スライドレール120を車体フロア150に設けなければならず、コストが増大すると共に車両重量も増加し、その結果、燃費向上の妨げとなる。さらに、1個のスライドシートに対して左右一対の2本のシートレールと1本のハーネス用スライドレールの3本のレールが車体フロア150に設けられることとなり、見栄えが悪くなる問題もある。
【0005】
また、WO/2010/070970(特許文献2)で
図13(A)(B)に示す装置が提案されている。該ハーネス配索装置は、スライドシートのシート脚部に取り付けた支持体101を車体フロアに固定された支持レール(シートレール)105にスライド自在に取り付けている。詳しくは、
図13(A)に示すように、支持レール105の長手方向の前端開口からコルゲートチューブ108で電線群を外装したワイヤハーネス110を、支持レール105の内部に引き込んでいる。該ワイヤハーネス110の他端を支持体101に取り付けたスライダ111で保持して支持レール105外に引き出している。支持レール105の前端開口から引き出されたワイヤハーネス110は
図13(B)に示すように、支持レール105の側方に設けたハーネス余長部分の収容部130内を通して外部へ引き出されている。
【0006】
前記支持レール105の内部に引き込んで配索するワイヤハーネスは、
図13(A)に示す形態では、上面開口の中央部105aを挟んだ左右両側の側部空間105b、105cの一方の側部空間105bの内部に挿通している。他の形態では、2本に分割したコルゲートチューブで外装したワイヤハーネスを両側の側部空間105bと105cに挿通している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の配索構造では、特許文献1のハーネス用スライドレールが不要となる利点があるが、支持レール105の内部にワイヤハーネス110を挿通させる作業が必要で、該挿通作業に手数がかかる問題がある。かつ、支持レール105内に充填されている潤滑用グリスでワイヤハーネスが汚れる恐れがある。さらに、スライドシートの移動時にワイヤハーネスが支持レール105の開口等に食い込む懸念がある。
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、スライドシート用のワイヤハーネス配索構造において、特許文献2のように支持レールの内部にワイヤハーネスを挿通させず、かつ、特許文献1のように、シートレールに沿って設ける別のハーネス用スライドレールを不要とし、シートレールに従来から付設されている部品を利用してワイヤハーネス挿通部を設け、ワイヤハーネス挿通装置を支持レールに沿って簡単かつ大型化することなく設けることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、車体フロア側の固定位置とスライドシート側の固定位置との間で余長部を持たせて配索しているスライドシート用のワイヤハーネスの配索構造であって、
前記スライドシートのシート脚部の車輪を回転自在に嵌合するシートレールの上面にカバーとして装着されている樹脂製のモール
と一体であると共に前記シートレールの側壁外面に沿って延在するワイヤハーネス挿通用のボックス部
と、
前記スライドシートのシート脚部に連結
されていると共に前記ボックス部にスライド自在に嵌合
されているスライダを備え、
前記ボックス部の中空からなるワイヤハーネス挿通路に一端開口から通す前記ワイヤハーネスを前記スライダの内部を通して前記スライドシート
へ引き出して配索しているスライドシート用のワイヤハーネス配索構造を提供している。
【0011】
前記のように、本発明はスライドシート用のシートレールの上面に従来より装着されている樹脂成形品のモールにボックス部を一体成形で付設し、該ボックス部の中空をワイヤハーネス挿通路としている。
前記モールは、シートレールの上面中央に全長に沿って設けられる車輪支持部挿通用の開口をできるだけ少なくして、シートレール内部への塵や埃等の異物侵入を防止すると共に、シートレールをフロア表面に露出させないために従来よりシートレールに装着されているものである。従来例の前記
図13に示すように、従来のモールMはシートレール105の上壁を覆うように装着する水平材からなり、車体のフロアパネルの上面に敷設され、フロアパネル上面に装着するフロアカーペットとモールとで平坦面を形成している。
本発明では、従来からシートレールに取り付けられているモールを改良して、ワイヤハーネス挿通路を設けることにより部品点数および取付手数の削減を図り、しかも、シートレールの側壁に沿ってボックス部が延在するためにワイヤハーネス挿通路をスペースを取ることなく設けることができる。
【0012】
前記モールはシートレールの中央開口を挟む左右両側に分割して設置されており、左右いずれかの分割されたモールに前記ボックス部を一体成形で設けてもよい。
通常、1つのスライドシートは左右2カ所に車輪を取り付けており、これら左右の車輪をスライド自在に嵌合するシートレールを左右2カ所に設置している。前記ワイヤハーネスは左右のシートレールのいずれか一方に沿って配索すればよく、かつ、左右いずれか一方のシートレールの上面に装着する前記モールの分割体の一方に前記ワイヤハーネス挿通路を設けるボックス部を一体成形している。
なお、モールと一体成形するワイヤハーネス挿通路を形成するボックス部はモールの全長、すなわち、シートレールの全長に設けてもよいし、全長に設けずに、前半側等の部分的に設けてもよい。
【0013】
前記モールのボックス部のワイヤハーネス挿通路の一端開口から引き出される前記ワイヤハーネス
は、左右のシートレールに挟まれた領域に配置したUターン式の余長収容ボックス
を通して車体フロア側の固定位置
に引き出
されており、
前記余長収容ボックスは楕円形状の浅底の本体と
、前記ワイヤハーネスを収容した
前記本体に被せる蓋とからなり、前記本体
は前端側の円弧部にクロスする引込路と出入路を
備え、かつ、前記蓋の前端側に近接した内部中央位置に円弧状凹部からなるストッパー部を
備え、
スライドシート移動時に前記引込路から引き出されるワイヤハーネスを
前記余長収容ボックス内で円弧形状に保持した状態で前記ストッパー部で停止できる構成としていることが好ましい。
【0014】
また、前記余長収容ボックスは車体のフロアパネルに設けた凹部に収容し、本体を凹部底面に固定しており、該余長収容ボックスを浅底の偏平な楕円状容器としているため、フロアパネルに設ける前記凹部を深くする必要はない。
【0015】
前記ボックス部を設けるモールは、シートレールの上壁に装着する上板部の外端にボックス部を連続して設け、該ボックス部にワイヤハーネス挿通路と、該ワイヤハーネス挿通路に連続するスライダ挿通空間を設け、該スライダ挿通空間に前記スライダをスライド自在に嵌合している。
前記スライダは前記シートレールの上壁に装着する前記モールの上板部の上面と隙間をあけて移動するように取り付けている。
【0016】
前記モールに設けたボックス部のワイヤハーネス挿通路および前記スライダ内部に挿通するワイヤハーネスにはプロテクタを外装しており、
前記プロテクタは組立式四角筒状のキャタピラ型とし、帯状の平板に長さ方向に延在する4本の折曲ラインを幅方向の中間部に間隔をあけて
備え、かつ、該幅方向の両側縁の一方側に
突設している係止突片
と、他方側に前記係止突片を挿入係止する係止穴を
備え、
さらに、前記4本の折曲ラインを結ぶ幅方向の切込ラインを長さ方向に間隔をあけて
備え、該切込ラインで四角筒の3辺を分離して折り曲げ自在に連結された形状としていることが好ましい。
【0017】
キャタピラ型プロテクタの外形をモールに設けたワイヤハーネス挿通路およびスライダに設けたワイヤハーネス挿通路の断面矩形状に対応させることにより、該ワイヤハーネスをモールおよびスライダのワイヤハーネス挿通路内を安定した姿勢でスライドさせることができる。
かつ、平板を打抜加工して形成し、これを折り曲げて組み立てるだけであるため、本発明で用いる組立式四角筒状のキャタピラ型プロテクタは従来のコルゲートチューブより安価であり、かつ、運搬時は平板形状のままであるため嵩ばらない。しかも、閉鎖された筒状でないため、ワイヤハーネスに容易に外装することができる。
【発明の効果】
【0018】
前記のように、本発明のスライドシート用のワイヤハーネス配索構造は、シートレールの上面に装着するモールにボックス部を一体
に設け、該ボックス部の中空をワイヤハーネス挿通路として用いるため、シートレールに沿って別体のワイヤハーネス挿通装置を付設する必要がないと共に、シートレール内にワイヤハーネスを挿通する場合に発生するグリスによる汚れ発生やワイヤハーネスの食い込み発生を防止することができる。
かつ、既存のモールにワイヤハーネス挿通路を構成するボックス部を一体
に設けて、シートレールの側壁外面に沿って配置するため、スペースをとらず、簡単かつ安価に実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至
図10に本発明の第1実施形態を示す。
図1に示すように、自動車に搭載するスライドシート1に装着した電装品(図示せず)に給電するために、車体フロアからスライドシート1へワイヤハーネス5を配索している。スライドシート1の下面には
図2に示すように、シート脚部3を左右一対設け、各シート脚部3をフロアパネル2の凹部21に設けた左右一対のシートレール6にスライド自在に取り付けている。
【0021】
各シートレール6は
図2に示すように、長さ方向に連続する左右一対の側部空間6a、6aと、その間に位置する上面開口空間6bを備えている。スライドシート1の座面下方に突出したシート脚部3の軸部3aを前記上面開口空間6bの上面開口6cを通してシートレール6内にスライド自在に挿入している。該シート脚部3の軸部3aから断面U字形状の腕部3bを左右に延在させ、左右の腕部3bの外面に車輪3cを軸支し、該車輪3cを側部空間6aに回動自在に嵌合させている。これにより、シート脚部3をシートレール6にスライド自在としている。
【0022】
前記シートレール6の上面開口6cを挟む左右の側部空間6aの上壁6fには、その上面をカバーする樹脂成形品からなる左右一対のモール10、11を
図4に示すように装着している。図中左側の一方のモール11は従来のモールと同様に前記上壁6fの上面に搭載してフロアパネル2の表面に架け渡す上板部11aと、該上板部11aの中央下面から側部空間6aの側壁6dの外面に当接するように突設した側板部11bからなる。
【0023】
他方のモール10にワイヤハーネス挿通路を設けるためにボックス部12を一体成形で付設している。該モール10は
図3〜5に示すように、前記モール11と同様に、シートレールの上壁6fの上面をカバーする上板部10aと、該上板部10aの中央下面から側部空間6aの側壁6dの外面に当接するように突設した側板部10bを備えている。さらに、前記上板部10aの外縁にボックス部12を連続して設けている。
【0024】
前記ボックス部12は上板部10aの外縁から内側壁12aが下向きに突出し、該内側壁12aの下端から底壁12bが外方へ突出し、該底壁12bの外端から外側壁12cが上向きに突出し、該外側壁12cから上壁12dが前記底壁12bの上方に突出している。該上壁12dは前記上板部10aと同一高さとしている。該上壁12dの先端と前記内側壁12aの上端との間に長さ方向に連続する上面開口12eを設け、該上面開口12eを後述するスライダ14の突出口としている。
【0025】
さらに、前記上壁12dの先端に下向き屈曲部12fを設けると共に、前記底壁12bの前記上面開口12eと対向する部分に厚肉段差部12gを設けている。前記厚肉段差部12gと下向き屈曲部12fとの間にワイヤハーネス引出用開口12hを設けている。該ワイヤハーネス引出用開口12hを挟んで外側に位置する断面矩形状の中空をワイヤハーネス挿通路12iとし、内側に位置する断面矩形状の中空をスライダ挿通空間12kとしている。前記ワイヤハーネス挿通路12iおよびスライダ挿通空間12kはシートレール6の長さ方向全長に延在し、かつ、シートレール6と平行に設けている。
【0026】
前記スライダ14は樹脂成形品からなり、
図6(A)〜(C)に示す形状とし、前記ワイヤハーネス挿通路12iにスライド自在に嵌合する矩形枠状のワイヤハーネス挿入部14aを外端に設けている。該ワイヤハーネス挿入部14aの内側面に中空部を連続させて上向きに突出する縦枠部14bを設けている。該縦枠部14bの上部内面に連続してシートレール6の上面開口6c側に突出した後に上壁6fの上方に隙間をあけて延在するように後方へと屈曲させたL形状の横枠部14cを設けている。該横枠部14cの突出側の上面にワイヤハーネス引出用の開口14dを設けている。前記縦枠部14bおよび横枠部14cの中空は前記ワイヤハーネス挿入部14aから引き出すワイヤハーネス5の挿通路14rとし、該挿通路14rを通したワイヤハーネス5を前記開口14dを通して上方へ引き出すようにしている。引き出したワイヤハーネス5をスライドシート1内の電装品(図示せず)とコネクタ接続している。
【0027】
さらに、前記横枠部14cの先端側の両側壁にボルト穴14gを穿設している。該ボルト穴14gを前記シート脚部3の前端に固定した支持部材9のボルト穴9hと一致させ、ボルトBを挿入して締結固定している。これにより、スライドシート1の移動に追従してシート脚部3に連結固定したスライダ14がスライドするようにしている。
【0028】
前記スライダ14はワイヤハーネス挿入部14aがモール10のワイヤハーネス挿通路12iにスライド自在に嵌合し、前記縦枠部14bが前記スライダ挿通空間12kにスライド自在に嵌合すると共に前記上面開口12eから上方に突出し、横枠部14cがシートレール6の上壁6fの上面の上板部10aと隙間をあけて移動するものとしている。
【0029】
前記モール10に設けたボックス部12の側方に、
図1、2、8に示す余長収容ボックス20を配置している。余長収容ボックス20は本体15と蓋16とからなる浅底の略楕円形状としている。ワイヤハーネス5の車体接続側は本体15に設けた引込口15a付近のフロアパネル2にクランプ27で固定し、固定したワイヤハーネス5の先端側をインストルメントパネル内の電装品(図示せず)とコネクタ接続している。余長収容ボックス20では、引込口15aより引き込まれたワイヤハーネス5の余長部を水平方向でU形状に屈曲させて収容し、本体15の出入口15bから余長部の出し入れを行っている。該出入口15bより引き出したワイヤハーネス5を前記モール10に設けたボックス12のワイヤハーネス挿通路12iに挿入している。
【0030】
余長収容ボックス20は
図8に示すように、本体15の前端側に設けた前記出入口15bに連続する出入路15cを設け、該出入路15cをU形状の収容部15iの一側部に連通し、他側部に引込口15aと連通する引込路15eを設け、該引込路15eと前記出入路15cを上下にクロスして設けている。
【0031】
さらに、余長収容ボックス20の蓋16には、前端近傍の中央位置で前記引込路15eと前記出入路15cに挟まれた部分と対応する半円形状に突設したストッパー部16aを設け、本体15にストッパー部16aと対応する切欠15kを設けている。該ストッパー部16aは
図9(A)に示すように、スライドシート1が移動し、出入口15bからワイヤハーネス5が引き出された時に、ワイヤハーネス5が円弧形状を保持した状態でストッパー部16aに当接してワイヤハーネス5の引き出しを停止するものである。
【0032】
さらに、余長収容ボックス20の本体15の長さ方向の一側面には、フロアパネル固定用のブラケット15gを突設すると共に、蓋16にもブラケット16bを突設し、該ブラケット15g、16bに設けたボルト穴15h、16hにボルトを通してフロアパネル2に固定するものとしている。
【0033】
前記モール10に付設したボックス部12および該ボックス部12の側方に配置する前記余長収容ボックス20は
図2に示すように、フロアパネル2に設けた凹部21内に収容配置している。ボックス部12の上壁および余長収容ボックス20の蓋16の上面にフロアカーペット17を敷設するものとしている。
【0034】
前記モール10に設けたスライダ挿通空間12k内にスライド自在に嵌合するスライダ14のワイヤハーネス挿入部14aからモール10のワイヤハーネス挿通路12iを通り、さらに余長収容ボックス20内に出入口15bから挿入して引込口15aを通して引き出されワイヤハーネス5は、
図2、4、9、10に示すように、組立式四角筒状のキャタピラ型プロテクタ30(以下、プロテクタ30と略す)からなる外装材で外装している。
【0035】
前記プロテクタ30は、
図10(B)に示す帯状の連続した長尺材からなる平板40を折り曲げて組み立てている。平板40には、長さ方向Xに延在する4本の折曲ライン41、42、43、44を幅方向Yの中間部に間隔をあけて設け、平板40を幅方向に5個の辺S1〜S5に区画し、折曲ライン41〜44を直角に折り曲げ、幅方向の両側辺S1とS5を重ねることで
図10(A)に示すように、四角筒状に組み立てられるようにしている。
【0036】
また、平板40の幅方向の両側の一方側の辺S1の側縁に係止突片45を長さ方向Xに間隔をあけて突設している。該係止突片45は円弧状の突出部の根元両側に切込45aを設け、両側に係止辺45bが突出する形状としている。平板40の他方側の辺S5に係止突片45を挿入係止する細長い係止穴46を設けている。該係止穴46の長さ方向両端に切込46aを設け、その先端に小径穴46cを設けている。前記切込46aに係止辺45bがかかるようにし、かつ、小径穴46cで切込46aの先端から亀裂が生じないようにしている。平板40を折曲ライン41〜44に沿って折り曲げ、辺S1とS5を重ねた状態で係止突片45を係止穴46に挿入係止することで、四角筒形状を保持できるようにしている。
【0037】
平板40には前記4本の折曲ライン41〜44を結ぶ幅方向Yの切込ライン48を長さ方向Xに間隔をあけて設け、辺S2、S3、S4を分離している。該切込ライン48の両端、すなわち、折曲ライン41および44と接する位置には小径穴48aを連続して設け、先端からの亀裂発生を防止している。さらに、切込ライン48の中央部で辺S3の中央位置に直線を湾曲させた円弧状の切込49を設け、長さ方向に隣接する一方側を円弧状に突出させ、他方を円弧状に窪ませ、凹凸嵌合部を設けている。
【0038】
平板40に設ける折曲ライン41〜44は、
図10(C)に示すように、板厚の1/3程度を切削して断面円弧状のラインとしている。前記切込ライン48、係止穴46、係止突片45はすべて平板を打抜いて形成している。よって、平板40を成形した後に、打抜加工、切削加工で形成している。
【0039】
前記プロテクタ30は予め折曲ライン41〜44を折り曲げる一方、係止突片45は係止穴46に挿入せず、開いた状態でワイヤハーネス5の電線群を折り曲げたプロテクタ30の両側辺S1とS5の間の開口から挿入する。この電線群の挿入後に辺S1とS5を重ね、係止突片45を係止穴46に挿入係止し、電線群を四角筒の中に挿入した状態で外装する。
【0040】
前記プロテクタ30は四角筒の3辺S2、S3、S4が切込ライン48で長さ方向で分離され、重ねて係止した辺S1とS5が長さ方向で屈曲自在に連結された構成となり、かつ、分離された辺S3は、隣接する辺S3同士が円弧状切込で凹凸嵌合する状態となる。即ち、短尺な四角筒が屈曲自在に長さ方向に順次連結し、かつ、隣接する四角筒同士を凹凸嵌合させているため幅方向にずれない、キャタピラ状のプロテクタとなる。
【0041】
前記スライダ14、モール10のボックス部12のワイヤハーネス挿通路12i内および余長収容ボックス20を通して車体側へと引き出すワイヤハーネス5は屈曲しながらスライドする。よって、ワイヤハーネス5の外装材は従来汎用されているコルゲートチューブのように屈曲性を有する必要があり、前記キャタピラ型のプロテクタは屈曲性を有するため、ワイヤハーネス5の外装材として用いることができる。
【0042】
また、前記キャタピラ型のプロテクタ30を用いると、スライダ14の矩形状枠からなるワイヤハーネス挿入部14aにぴったりと内嵌できると共に、モール10の矩形状中空のワイヤハーネス挿通路12iにもガタつきなくスライド自在に内嵌できる。さらに、余長収容ボックス20の本体15の底面と蓋16の上面にプロテクタ30の上下面がスライド自在に摺動し、安定した姿勢で余長収容ボックス20内を移動させることができる。
【0043】
次に、スライドシート1のスライド動作に追従するワイヤハーネス5の動きについて説明する。
図9(A)はスライドシート1が最も後方位置にある場合を示し、
図9(B)はスライドシート1が最も前方位置にある場合を示す。スライドシート1のシート脚部3を前方から後方へとスライドさせていくと、余長収容ボックス20内に収容されていたワイヤハーネス5が出入口15bから引き出され、モール10のワイヤハーネス挿通路12iに挿通されていくと共に、余長収容ボックス20内のワイヤハーネス5のU形状の屈曲部が余長収容ボックス20の前方側へ移動し、最終的にストッパー部16aに接触して停止する。
【0044】
一方、スライドシート1のシート脚部3が後方から前方へスライドすると、余長収容ボックス20内のU形状の屈曲部が余長収容ボックス20の後方側へ移動すると共に、モール10のワイヤハーネス挿通路12iに挿通されていたワイヤハーネス5が出入口15bから余長収容ボックス20内へと引き込まれ余長部として収容される。
【0045】
このように、ワイヤハーネス5はシートレール6の上壁6fに装着するモール10の外縁に連続して一体成形したワイヤハーネス挿通路12iをスライドし、該モール10のボックス部12の側方に隣接配置した余長収容ボックス20で余長部を屈曲させながら移動する。よって、ハーネス用スライドレールを新たに車体フロアに設けなくても、また、シートレール6の内部にワイヤハーネス5を挿通させることなく、シート脚部3のスライド動作にワイヤハーネス5を滑らかに追従させることができる。
【0046】
特に、既存のモール10を改良して、スライドシート1の移動に追従してワイヤハーネス5を移動できるワイヤハーネス挿通路12iを設けているため、部品点数の増加はなく、かつ、取付作業の増加もなく、さらに、シートレール6の側壁外面に沿ったスペースを利用してコンパクトにワイヤハーネス挿通路を形成することができる。
かつ、モール10に設けるワイヤハーネス挿通路12iを断面矩形状としているため、挿通されるワイヤハーネス5を四角筒状のキャタピラ型のプロテクタ30で外装すると、安定した姿勢でスライド自在に挿通させることができる。かつ、スライドシート1の作動時等にワイヤハーネス5がシートレール6の上面開口から外側に飛び出して噛み込みが発生するのを防止できる。
【0047】
前記実施形態では、ワイヤハーネス挿通路を設けるモールを余長収容ボックスの配置側に設けて隣接配置しているが、該余長収容ボックスの配置側と反対側のモールにワイヤハーネス挿通路を設けるボックス部を付設してもよい。この場合、モールに設けるワイヤハーネス挿通路は余長収容ボックスとシートレールを挟んで位置し、余長収容ボックスと距離があくことになり、ワイヤハーネスの急激な屈曲を抑制することができる。
【0048】
図11(A)(B)に第2実施形態を示す。
第2実施形態ではモール10に一体成形で付設するボックス部50の形状を変更している。ボックス部50はシートレール6の上壁に被覆する上板部10aの外端に連続して下向き内側壁50a、底壁50b、外側壁50c、上壁50dを順次90度屈曲して設け、断面矩形状の中空からなるワイヤハーネス挿通路50iを設けている。
前記外側壁50cは上板部10aより上方へ突出させ、前記上壁50dは上板部10aの外側上方まで突出させ、ワイヤハーネス挿通路50iは内側が開口として上壁50dの内側薄肉部50fと上板部10aの間にスライダ挿通空間50hを設けている。
【0049】
前記スライダ挿通空間50hにスライダ60をスライド自在に嵌合している。
前記ワイヤハーネス挿通路50iに四角筒状のキャタピラ型のプロテクタ30で外装したワイヤハーネス5をスライド自在に内嵌し、該ワイヤハーネス5の先端を前記スライダ60の外端に設けたワイヤハーネス挿入筒部60aに内嵌固定している。該ワイヤハーネス挿入筒部60aの先端に内側に突出した後に後方へ突出したL字状の横枠部60bを設け、ワイヤハーネス挿入筒部60aから引き出したワイヤハーネス5を挿通している。該横枠部60bは上板部10aの上面と隙間をあけて位置する。
該スライダ60の横枠部60bは第1実施形態のスライダと同様に、先端側の上面にワイヤハーネス引き出し開口を備えている。かつ、シート脚部3と固定した支持部材とボルトで連結固定し、スライドシート1に連動してスライダ60が移動するものとしている。
【0050】
また、前記上壁50dの高さと他方のモール11の上板部の高さを一致させるために、モール11の上板部を高くしている。
【0051】
前記第2実施形態では、スライダ用の上面開口がないため、該開口からの異物混入を防止でき、外観を向上できる。他の作用効果は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。