(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
図1は、本発明の積層シート製造装置の実施形態を示す概略断面側面図、
図2は、
図1中のA−A線断面図、
図3は、
図1中のB−B線断面図、
図4は、
図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大図、
図5および
図6は、それぞれ、
図1中のD−D線断面図、
図7は、本発明の積層シートを示す断面図、
図8は、
図7に示す積層シートを用いて製造された基板を示す断面図、
図9は、
図8に示す基板を用いて製造された半導体装置を示す断面図である。なお、以下の説明では、
図1〜
図9中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」として説明する。また、
図7〜
図9は、厚さ方向(図中の上下方向)に大きく誇張して示してある。
【0014】
図1に示す積層シート製造装置30は、
図7に示す構成の積層シート40を製造する装置である。
【0015】
<積層シート>
まず、積層シート40について、
図7を参照しつつ説明する。なお、積層シート40をその長手方向の途中で所定の寸法に切断すると、プリプレグ1が得られる。
【0016】
図7に示す積層シート40は、その全体形状が帯状(長尺)をなし、薄板状(平板状)の繊維基材(基材)2と、繊維基材2の一方の面(上面)側に位置し、固形または半固形の第1の樹脂組成物で構成される第1の樹脂層(樹脂層)3と、繊維基材2の他方の面(下面)側に位置し、固形または半固形の第2の樹脂組成物で構成される第2の樹脂層(樹脂層)4とを有する。この積層シート40は、所定の寸法に切断されて使用される。
なお、各樹脂層3,4はBステージ状態である。
【0017】
繊維基材2は、積層シート40の機械的強度を向上する機能を有する。
この繊維基材2としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維や全芳香族ポリアミド樹脂繊維等を含むアラミド繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙繊維基材等の有機繊維基材等の繊維基材等が挙げられる。
なお、繊維基材は、上述した繊維のいずれか1種を使用してもよいし、2種以上を使用したものであってもよい。
【0018】
これらの中でも、繊維基材2は、ガラス繊維基材であるのが好ましい。かかるガラス繊維基材を用いることにより、積層シート40を切断して得られたプリプレグ1の機械的強度をより向上することができる。また、プリプレグ1の熱膨張係数を小さくすることもできるという効果もある。
【0019】
このようなガラス繊維基材を構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス、石英ガラス等が挙げられる。これらの中でも、ガラスは、Sガラス、、石英ガラスまたは、Tガラスであるのが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の熱膨張係数を比較的小さくすることができ、このため、積層シート40をその熱膨張係数ができる限り小さいものとすることができる。
【0020】
繊維基材2の平均厚さTは、特に限定されないが、150μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、10〜25μm程度であるのがさらに好ましい。かかる厚さの繊維基材2を用いることにより、プリプレグ1(積層シート40)の機械的強度を確保しつつ、その薄型化を図ることができる。さらには、プリプレグ1の加工性を向上することもできる。
【0021】
この繊維基材2の一方の面側には、第1の樹脂層3が設けられ、また、他方の面側には、第2の樹脂層4が設けられている。また、第1の樹脂層3は、第1の樹脂組成物で構成され、一方、第2の樹脂層4は、第2の樹脂組成物で構成されている。第1の樹脂組成物と第2樹脂組成物とは同じ組成物であってもよく、異なるものであってもよい。本実施形態では同じ組成物とする。
【0022】
図7に示すように、本実施形態では、繊維基材2の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物(第1の樹脂層3)が含浸され(以下この部分を「第1の含浸部31」と言う)、繊維基材2の第1の樹脂組成物が含浸されていない残り部分に、第2の樹脂組成物(第2の樹脂層4)が含浸されている(以下この部分を「第2の含浸部41」と言う)。これにより、第1の樹脂層3の一部である第1の含浸部31と第2の樹脂層4の一部である第2の含浸部41とが繊維基材2内に位置する。そして、繊維基材2内において、第1の含浸部31(第1の樹脂層3の下面)と第2の含浸部41(第2の樹脂層4の上面)とが接触している。換言すれば、第1の樹脂組成物が、繊維基材2の上面側から、繊維基材2に含浸され、第2の樹脂組成物が、繊維基材2の下面側から、繊維基材2に含浸され、これらの樹脂組成物で繊維基材2内の空隙が充填されている。
本実施形態では、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは等しい。
【0023】
さらに、第1の樹脂層3の第1の含浸部31を除く部分(第1の非含浸部32)の厚みと、第2の樹脂層4の第2の含浸部41を除く部分(第2の非含浸部42)の厚みとは等しい。第1の非含浸部32の厚み、第2の非含浸部42の厚みは、たとえば、2〜20μmである。なお、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは異なっていてもよく、また、第1の非含浸部32の厚みと、第2の非含浸部42の厚みとが異なっていてもよい。なお、符号20は、含浸部31、32間の境界を模式的に示すものである。
【0024】
図1に示すように、第1の樹脂層3は、薄板状の第1の支持体(シート)5aとして、積層シート製造装置30に供給される。このシート5aは、第1の樹脂層3と、この樹脂層3を支持する図示しない支持基材と、第1の樹脂層3を保護する保護シート51とを備える。支持基材は、第1の樹脂層3を挟んで保護シート51とは反対側に設けられている。したがって、
図1では、図示しないが第二のローラ72aには、支持基材を介して第1の樹脂層3が接触している。
同様に、第2の樹脂層4は、薄板状の第2の支持体(シート)5bとして、積層シート製造装置30に供給される。このシート5bは、第2の樹脂層4と、この樹脂層4を支持する図示しない支持基材と、第2の樹脂層4を保護する保護シート51とを備える。支持基材は、第2の樹脂層4を挟んで保護シート51とは反対側に設けられている。したがって、
図1では、図示しないが第二のローラ72bには、支持基材を介して第2の樹脂層4が接触している。
【0025】
保護シート51としては、例えば、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン等が挙げられる。そして、樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、これらの中でも、耐熱性に優れ、安価であることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂フィルムは、その樹脂フィルムの樹脂層側の面に剥離可能な処理が施されたものであることが好ましい。これにより、後述するように保護シート51と樹脂層とを容易に分離することができる。
支持基材としては、保護シート51と同様のものを使用することができる。
【0026】
保護シート51や支持基材の平均厚さは、特に限定されないが、8〜70μm程度であるのが好ましく、12〜40μm程度であるのがより好ましい。
【0027】
第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、次のような組成とするのが好ましい。
【0028】
各樹脂組成物は、例えば、硬化性樹脂を含み、必要に応じて、硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)および無機充填材のうちの少なくとも1種を含んで構成される。
【0029】
硬化性樹脂には、例えば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂は、ガラス転移温度が200℃以上になる組合せが好ましい。例えば、スピロ環含有、複素環式、トリメチロール型、ビフェニル型、ナフタレン型、アントラセン型、ノボラック型の2または3官能以上のエポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いるのが好ましい。
【0030】
前記硬化性樹脂の中でも、熱硬化性樹脂を用いることにより、さらに、後述する基板10(
図8参照)を作製した後において、硬化後の樹脂層3、4中において架橋密度が増加するので、硬化後の樹脂層3、4(得られる基板)の耐熱性の向上を図ることができる。
【0031】
特に、前記熱硬化性樹脂と充填材を併用することにより、プリプレグ1の熱膨張係数を小さくすること(以下、「低熱膨張化」と言うこともある)ができる。さらに、プリプレグ1の電気特性(低誘電率、低誘電正接)等の向上を図ることもできる。
【0032】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、エポキシ樹脂は、ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂であるのが好ましい。ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂を用いることにより、硬化後の樹脂層3、4(得られる基板)において、吸湿半田耐熱性(吸湿後の半田耐熱性)および難燃性を向上させることができる。ナフタレン型エポキシとしては、DIC(株)製のHP−4700、HP−4770、HP−4032D、HP−5000、HP-6000、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられ、アリールアルキレン型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製のNC−3000、NC−3000L、NC−3000−FH、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に芳香族基とメチレン等のアルキレン基の組合せが一つ以上含むエポキシ樹脂のことをいい、耐熱性、難燃性、および機械的強度が優れる。また、ハロゲンフリーの配線板に対応する上では、実質的にハロゲンを含まないエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
前記シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0035】
前記シアネート樹脂は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。
【0036】
また、前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型等の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネート樹脂が架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0037】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0038】
これらシアネート樹脂を用いることにより、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。
【0039】
また、前記硬化性樹脂は、2種以上を併用して用いることもできる。例えば、硬化性樹脂として前記エポキシ樹脂を用いる場合、より難燃性を向上させる上で、前記シアネート樹脂を併用することができ、また、より耐熱性を向上させる上で、前記マレイミド化合物を併用することができる。さらに、硬化性樹脂として、前記シアネート樹脂を用いる場合は、より耐熱性や難燃性などを向上させる上で、前記エポキシ樹脂を併用することができる。
【0040】
硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、硬化性樹脂の種類等によっては、樹脂組成物のワニスの粘度が低くなりすぎ、プリプレグ1を形成するのが困難となる場合がある。一方、硬化性樹脂の含有量が前記上限値を超えると、他の成分の量が少なくなり過ぎるため、硬化性樹脂の種類等によっては、プリプレグ1の機械的強度が低下する場合がある。
【0041】
また、樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。これにより、プリプレグ1を薄型化(例えば、厚さ35μm以下)にしても、機械的強度に優れる基板10を得ることができる。さらに、基板10の低熱膨張化を向上することもできる。
【0042】
無機充填材としては、例えば、タルク、アルミナ、ガラス、溶融シリカのようなシリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、無機充填材の使用目的に応じて、破砕状、球状のものが適宜選択される。これらの中でも、低熱膨張性に優れる観点からは、無機充填材は、シリカであるのが好ましく、溶融シリカ(特に球状溶融シリカ)であるのがより好ましい。
【0043】
また、樹脂組成物は、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック、アントラキノン類等の着色剤等を挙げることができる。
【0044】
<第一実施形態>
<積層シート製造装置(積層シートの製造方法)>
次に、積層シート40の製造に用いる積層シート製造装置30について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。
【0045】
はじめに、本実施形態の積層シート製造装置30の概要について説明する。
積層シート製造装置30は、
シートである支持体5a,5bと繊維基材2とが供給され、減圧手段8により減圧される減圧室(空間)70と、減圧室70内の支持体5a,5bと繊維基材2とを圧着して積層体40'を構成する圧着手段(ローラ72a,72b)と、減圧室70から送出された積層体40'を、挟む2枚のシート材91a、91bとを備える。
2枚のシート材91a、91b間に積層体40'を挟んだ状態において、該シート材91a、91b間の空間913(
図5参照)が、前記減圧室70に連通している。前記減圧手段8の作動により、減圧室70を介して前記空間913が減圧され、前記空間913が減圧されることにより、前記積層体40'を前記2枚のシート材91a、91bにより、押し潰して、支持体5a,5bと繊維基材2とを圧着し、積層シート40を得る。
ここで、繊維基材2、支持体5a,5bは長尺状であり、その長手方向に沿って連続的に搬送される。
【0046】
次に、積層シート製造装置30について詳細に説明する。
図1に示すように、積層シート製造装置30は、ハウジング6と、ハウジング6内に収納された第1のローラ(送り出しローラ)71a、71b、第2のローラ72a、72bおよび第3のローラ73a、73bと、第2のローラ72a、72bに従動する従動ローラ77a、77bと、第2のローラ72aと従動ローラ77aとに架け回されたシート材91aと、第2のローラ72bと従動ローラ77bとに架け回されたシート材91bと、多数組の補助ローラ78a、78bと、シート材91a、91bを加熱する加熱手段92と、シート材91a、91bを冷却する冷却手段93と、ハウジング6内を減圧する減圧手段8とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0047】
図2に示すように、ハウジング6は、間隔をおいて互いに対向配置された一対の壁部61を有する、例えば箱状をなすものである。壁部61の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属、またはこれらを含む合金が挙げられる。また、このような金属材料の他に、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のような樹脂材料も壁部61の構成材料として用いることができる。
ここで、壁部61は、平板状のものであることが好ましいが、これに限られるものではない。第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで、シート搬送方向に沿った両端面が開口した筒状体が構成される。壁部61は、この筒状体の前記開口を閉鎖するものであればよい。なお、一対の壁部61は、各ローラ71a、71b、72a、72b、73a、73bが架け渡されるものであることが特に好ましい。
【0048】
ハウジング6の2つの壁部61間には、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bと、従動ローラ77a、77bとがそれぞれ架設されている。これらのローラは、回転軸が互いに平行となっている。そして、これらのローラは、例えば、多数の歯車が配置された歯車機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)と連結されている。そして、このモータが作動すると、その動力が歯車機構を介して伝達され、各ローラがそれぞれ回転することとなる。なお、これらのローラは、太さが異なること以外は同一の構成である。以下、第1のローラ71aの構成について代表的に説明するが、他のローラも同様の構造である。
【0049】
図2に示すように、第1のローラ71aは、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の
中間部に位置する本体部74と、本体部74の両端側にそれぞれ位置する軸75とで構成
されている。各軸75は、それぞれ、その外径が本体部74の外径よりも縮径している。
【0050】
この第1のローラ71aは、各軸75がそれぞれ壁部61に設置された軸受け(ベアリ
ング)76に挿入されており、当該軸受け76により回転可能に壁部61に支持されている。
【0051】
なお、第1のローラ71aは、
図1、
図2に示す構成では中実体のものであるが、これ
に限定されず、例えば、中空体のものであってもよい。
【0052】
また、第1のローラ71aの構成材料としては、特に限定されず、例えば、壁部61の
構成材料で挙げたような材料を用いることができる。この場合、第1のローラ71aの本
体部74の外周面741には、外周面741が摩耗するのを防止する処理が施されていて
もよい。この処理としては、例えば、外周面741にDLC(Diamond Like Carbon)の
被膜を形成する方法が挙げられる。また、第1のローラ71aの構成材料としては、壁部
61の構成材料で挙げたような材料の他に、例えば、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタ
ンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料も用いることができる。
【0053】
第1のローラ71aと第1のローラ71bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本
体部74の外周面741同士が繊維基材2を介して、互いに当接し(圧接し)合っている(
図2参照)。そして、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらの間で繊維基材2を
図1中の左側から右側へ搬送する、すなわち、シート材91a、91b間に向かって送り出すことができる。これにより、シート状の繊維基材2が後述する空間70内部に搬送されることとなる。
【0054】
第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、第1のローラ71a、71bと異なる
位置、すなわち、第1のローラ71a、71bに対し繊維基材2の搬送方向前方(下流側)に配置されている。また、第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本体部74の外周面741同士が繊維基材2、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4を介して、互いに当接し(圧接し)合っている。そして、第2のローラ72aと第2のローラ72bとが回転すると、これらの間で繊維基材2に第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とが重ね合わせられる。第2のローラ72aと第2のローラ72bとで、繊維基材2、樹脂層3、4の積層体が厚さ方向に加圧されることとなるが、このとき、樹脂層3,4は、繊維基材2に含浸することが好ましい。ただし、繊維基材2内部が完全に樹脂層3,4で埋まってしまうことはない。第2のローラ72aと第2のローラ72bからは、繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の積層体(未接合体)40'が送出される。
また、第2のローラ72a、72bを加熱ローラとすることで、繊維基材2に対して第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とを含浸させやすくすることができる。
第2のローラ72a、72bにより、積層体40'は後述する空間70外部に送り出される。
【0055】
第3のローラ73a、73bは、繊維基材2を挟んで離間配置されている。第3のローラ73aは、繊維基材2の一方の面側(表面側)に配置された第1のローラ71aの繊維基材2の搬送方向下流側であり、繊維基材2の一方の面側(表面側)に配置された第2のローラ72aの積層体40'の搬送方向上流側に配置されている。
第3のローラ73bは、繊維基材2の他方の面側(裏面側)に配置された第1のローラ71bの繊維基材2の搬送方向下流側であり、繊維基材2の他方の面側(裏面側)に配置された第2のローラ72bの積層体40'の搬送方向上流側に配置されている。
第3のローラ73aと第3のローラ73bとは、互いに上下方向(鉛直方向)に離間し、水平方向には平行に対向配置されている。そして、第3のローラ73aが回転すると、第1の支持体5aの第1の樹脂層3から保護シート51を剥離する(巻き取る)ことができる(
図1参照)。これと同様に、第3のローラ73bが回転すると、第2の支持体5bの第2の樹脂層4から保護シート51を剥離することができる(
図1参照)。
【0056】
さらに、第3のローラ73aは、その本体部74の外周面741が、第1のローラ71aの本体部74の外周面741と、第2のローラ72aの本体部74の外周面741とにそれぞれ当接している。一方、第3のローラ73bは、その本体部74の外周面741が、第1のローラ71bの本体部74の外周面741と、第2のローラ72bの本体部74の外周面741とにそれぞれ当接している。このような配置により、積層シート製造装置30では、ハウジング6の各壁部61と、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間(小空間、減圧室)70が形成される。空間70は、減圧手段8の作動により減圧される(
図3参照)。
【0057】
図2に示すように、第1のローラ71aおよび71b(第2のローラ72aおよび72b、第3のローラ73aおよび73bについても同様)のそれぞれの本体部74の両端と、各壁部61との間には、シール材62が介在している。各シール材62は、それぞれ、リング状の弾性体で構成され、壁部61に形成されたリング状の凹部612に圧縮状態で挿入されている。これにより、空間70の気密性が確実に維持され、よって、減圧手段8で空間70を減圧した際、その減圧が迅速かつ確実に行なわれる。
【0058】
シール材62の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
図1に示すように、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとは、互いに本体部74の外径(大きさ)が異なっている。本実施形態では、その大小関係は、(第3のローラ)<(第1のローラ)<(第2のローラ)となっている。また、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとの各ローラの大きさは任意であるが、例えばローラに可撓性を有するシート材を沿わせたときに当該シート材に皺が生じない程度に、できる限り小さいのが好ましい。具体的には、直径が75〜300mmであるのが好ましく、100〜200mmであるのがより好ましい。
【0060】
また、第1のローラ71aと第2のローラ72aと第3のローラ73aとの中心同士を結んで形成された三角形を想定したとき、当該三角形の第3のローラ73aの中心を頂点とする角度は、60°を超え、180°未満であるのが好ましい。これについては、第1のローラ71bと第2のローラ72bと第3のローラ73bとの中心同士を結んで形成された三角形についても同様である。
【0061】
図1に示すように、第2のローラ72aの図中の右側(積層体40'の搬送方向下流側)には、従動ローラ77aが第2のローラ72aに対して離間して配置されている。また、第2のローラ72bの図中の右側(積層体40'の搬送方向下流側)には、従動ローラ77bが第2のローラ72bに対して離間して配置されている。従動ローラ77a、77bも、ハウジング6の2つの壁部61間に架け渡されている。そして、これらの従動ローラ77a、77bは、回転軸が第2のローラ72a、72bの回転軸に対して、平行となるように、配置されている。従動ローラ77a、77bは、それぞれ、その本体部74の外径が第2のローラ72a、72bと同じものである。
【0062】
そして、第2のローラ72aと従動ローラ77aとには、可撓性を有するシート材91aが無端状態で、すなわち、ループ状に架け回されている。これにより、第2のローラ72aが回転すると、その回転力がシート材91aを介して従動ローラ77aに伝達され、当該従動ローラ77aも回転することとなる。また、その際、シート材91aがローラ回転方向に沿って、すなわち、
図1中の反時計回りに搬送される。
【0063】
これと同様に、第2のローラ72bと従動ローラ77bとには、可撓性を有するシート材91bが無端状態で架け回されている。これにより、第2のローラ72bが回転すると、その回転力がシート材91bを介して従動ローラ77bに伝達され、当該従動ローラ77bも回転することとなる。また、その際、シート材91bがローラ回転方向に沿って、すなわち、
図1中の時計回りに搬送される。
シート材91aとシート材91bとは、大気圧以上の雰囲気下(本実施形態では大気圧下)に配置されている。
【0064】
図1、
図5、
図6に示すように、シート材91aとシート材91bとは、同方向に搬送され、その際に互いに重なり合う重なり部911を有し、当該重なり部911で積層体40'を挟むことができる。すなわち、第2のローラ72a、72b間から送出された積層体40'は、シート材91aとシート材91b間に挿入されることとなる。
【0065】
シート材91a、91bの構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属箔、高分子フィルム、弾性体等が挙げられる。金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。高分子フィルム、弾性体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、シリコーンゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド等の高分子フィルムをシート材に用いることにより、ラミネート性、平坦性、および剥離性、およびシート材同士の接着性に優れると言う利点がある。
【0066】
さらに、
図1に示すように、ハウジング6の2つの壁部61間には、複数組の補助ローラ78a、78bが架設されている。補助ローラ78a、78bは、それぞれ、壁部61に軸受け(図示せず)を介して回転可能に支持されている。補助ローラ78a、78bは、シート材91a、91bが、第2のローラ72a、72bと従動ローラ77a、77bとの回転により搬送される際に、その搬送を補助する機能を有するものである。
【0067】
複数の補助ローラ78aは、それぞれ、第2のローラ72aと従動ローラ77aとの間に積層体40'の搬送方向に沿って一列に配置されている。複数の補助ローラ78bも、それぞれ、第2のローラ72bと従動ローラ77bとの間に積層体40'の搬送方向に沿って一列に配置されている。
【0068】
補助ローラ78a、78bは、それぞれ、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の両端部にそれぞれ外径が拡径した拡径部781を有している。各補助ローラ78aの拡径部781は、それぞれ、シート材91aの内側からその重なり部911の搬送方向と平行な縁部912に当接している。各補助ローラ78bの拡径部781は、それぞれ、シート材91bの内側からその重なり部911の搬送方向と平行な縁部912に当接している。このような拡径部781により、シート材91a、91bの縁部912同士が気密的に密着する(
図5、
図6参照)。より詳細に説明すると、シート材91aの一方の縁部912と、シート材91bの一方の縁部912とを挟んで、補助ローラ78aの拡径部781と、補助ローラ78bの拡径部781とが対向し、縁部912同士を密着させる。また、シート材91aの一方の縁部912と、シート材91bの一方の縁部912とを挟んで、補助ローラ78aの拡径部781と、補助ローラ78bの拡径部781とが対向し、縁部912同士を密着させる。これにより、シート材91aとシート材91bとで袋状体が構成されることとなり、その内部に、すなわち、シート材91aとシート材91bとの間に空間913が形成される(
図5参照)。この空間913内に積層体40'が一時的に(一旦)収納される。なお、空間913は、空間70と連通している。
【0069】
なお、補助ローラ78a、78bは、
図1、
図5、
図6に示す構成では中実体のものであるが、これに限定されず、例えば、中空体のものであってもよい。
【0070】
また、補助ローラ78a、78bの構成材料としては、特に限定されず、例えば、第1のローラ71aの構成材料で挙げたような材料を用いることができる。
【0071】
図3に示すように、減圧手段8は、ポンプ81と、ポンプ81と各壁部61にそれぞれ形成された開口部611とを接続する接続管82とを有している。
ポンプ81は、ハウジング6の外側に設置され、例えば真空ポンプが適用される。
ローラ71a、71b、ローラ72a、72b、ローラ73a、73bで囲まれた空間70内部を、減圧する減圧手段8を駆動することで、第1のローラ71a、71bの繊維基材2搬送方向上流側の領域よりも、空間70内の気圧が低くなり、負圧となる。さらに、第2のローラ72a、72bよりも積層体40´搬送方向下流側の領域であって、シート材91a,91bではさまれた空間の外側の領域よりも、空間70の気圧は低くなる。
【0072】
各接続管82は、それぞれ、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成された硬質
管である。
【0073】
各開口部611は、それぞれ、空間70に向かって開口し、空間70に連通している。なお、
図3に示す構成では双方の壁部61にそれぞれ開口部611が形成されているが、これに限定されず、例えば、一方の壁部61にのみ開口部611が形成されていてもよい。
【0074】
そして、ポンプ81を作動させることにより、各開口部611から空間70内の気体(空気G)を吸引することができ、よって、空間70を減圧することができる。また、これにより、隣接するローラ同士が互いに近づこうとする力が生じてさらに圧接し合い、よって、空間70の気密性がより確実に維持される。
【0075】
さらに、減圧手段8の作動により空間70が減圧されると、当該空間70と連通する空間913もその内部の気体(空気)が吸引されて減圧される。このとき、積層体40'が空間913内に収納されている、すなわち、積層体40'がシート材91a、91b間に挟まれた状態であるならば、このシート材91a、91bごと積層体40'を押し潰すことができる(
図6参照)。これにより、積層体40'は、その全面(全体)にわたってシート材91a、91bによる均一な力F3で加圧されて、繊維基材2に第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とが確実に圧着、接合される(
図5、
図6参照)。これにより、繊維基材2内部に、第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とがさらに含浸することとなる。そして、積層体40'が積層シート40となる。
【0076】
図1に示すように、加熱手段92は、例えばニクロム線等の電熱線で構成され、補助ローラ78a、78bの直近に設置されている。加熱手段92により、その熱は、各補助ローラ78aを伝わってシート材91aの縁部912を加熱し、各補助ローラ78bを伝わってシート材91bの縁部912を加熱する。これにより、シート材91aの縁部912とシート材91bの縁部912とがそれぞれ軟化することとなり、両者の縁部912同士の密着が確実に行なわれる。このように縁部912同士が確実に密着したシート材91a、91bは、不本意な箇所、すなわち、縁部912からの空気の漏れが防止され、よって、減圧手段8の作動により確実に減圧される。
さらに、加熱手段92は、補助ローラ78a、78bを介して、積層体40'を、その幅方向に沿って加熱することができる。積層体40'が加熱されることで、繊維基材2に第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とがさらに含浸しやすくなる。すなわち、加熱手段92と、補助ローラ78a、78bとで含浸手段が構成されることとなる。
【0077】
また、冷却手段93は、例えばペルチェ素子で構成され、シート材91aの重なり部911と反対側の部分近傍と、シート材91bの重なり部911と反対側の部分近傍とに設置されている。加熱手段92により軟化した縁部912は、搬送されて冷却手段93に臨みつつ冷却手段93を通過する。これにより、密着後の前記軟化した縁部912を一旦冷却することができ、よって、当該縁部912が加熱手段92で過剰に加熱されてしまうのを確実に防止することができる。
【0078】
次に、積層シート製造装置30により積層シート40が製造される状態(過程)について、
図1、
図4、
図5を参照しつつ説明する。
【0079】
積層シート製造装置30では、第1のローラ71a、71bと、第2のローラ72a、72bと、第3のローラ73a、73bとが回転するのに先立ち、減圧手段8を作動させ、空間70内の気体を吸引して、空間70内を減圧しておく。
空間70内の気圧は、負圧となり、たとえば、800Pa以下、100Pa以上である。
【0080】
図1に示すように、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらのローラ間から繊維基材2が空間70内に送り出される(連続的に供給される)。
繊維基材2はたとえば、図示しない供給ローラに巻回されており、供給ローラから、第1のローラ71aおよび第1のローラ71bを介して、空間S内に供給される。
【0081】
また、第2のローラ72aと第3のローラ73aとが回転すると、これらのローラ間から第1の支持体5aが空間70内に送り出される(連続的に供給される)。この第1の支持体5aの保護シート51が第3のローラ73aの外周面に沿って巻き取られ(引っ張られ)、これにより、支持基材付きの第1の樹脂層3から保護シート51が剥離される。保護シート51が剥離した支持基材付きの第1の樹脂層3は、第2のローラ72aに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された保護シート51は、第1のローラ71aと第3のローラ73aとにより、第2のローラ72a、72bとは異なる方向に送出される。具体的には、第1のローラ71aと第3のローラ73aとの間から外側(空間70外)に向かって送り出される。また、第1の樹脂層3は、Bステージの状態であり、固形、半固形、あるいは液体の状態である。
【0082】
また、第2のローラ72bと第3のローラ73bとが回転すると、これらのローラ間から第2の支持体5bが空間70内に送り出される(連続的に供給される)。この第2の支持体5bの保護シート51が第3のローラ73bに巻き取られ、これにより、支持基材付きの第2の樹脂層4から保護シート51が剥離される。保護シート51が剥離した支持基材付きの第2の樹脂層4は、第2のローラ72bに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された保護シート51は、第1のローラ71bと第3のローラ73bとにより、第2のローラ72a、72bとは異なる方向に送出される。具体的には、第1のローラ71bと第3のローラ73bとの間から外側に向かって送り出される。
また、第2の樹脂層4は、Bステージの状態であり、固形、半固形、あるいは液体の状態である。
【0083】
このように第1の樹脂層3および第2の樹脂層4がそれぞれ繊維基材2と圧着される直
前(以前)に空間70内で保護シート51が剥離することができることにより、当該保護シート51が各樹脂層の圧着の邪魔になるのを防止することができるとともに、圧着直前まで保護シート51で各樹脂層を保護することができる。
【0084】
そして、繊維基材2と支持基材付きの第1の樹脂層3と支持基材付きの第2の樹脂層4とは、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間を一括して通過することとなる。
このとき、第1の樹脂層3に設けられた支持基材が、第2のローラ72aに接触し、第1の樹脂層3に設けられた支持基材が、第2のローラ72bに接触する。第1の樹脂層3および第2の樹脂層4は繊維基材2に直接接触する。
図4に示すように、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間の圧接力(当接力)F1により、第1の樹脂層3が上側から繊維基材2に押圧される(押し付けられる)とともに、第2の樹脂層4が下側から繊維基材2に押圧される。これにより、積層体40'が得られる。積層体40'は、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間から連続的に排出されて、一対のシート材91a、91b間に供給されることとなる。
なお、ここで、繊維基材2等が連続的に供給される、あるいは排出されるとは、枚葉式のように、繊維基材等が間欠的に供給、あるいは排出されるものを除く趣旨である。たとえば、空間70内に繊維基材2等が存在する状態と、存在しない状態とが短期間で交互にいれかわるものを除く趣旨である。ただし、必要に応じて、繊維基材2等の搬送を停止してもよい。
【0085】
また、前述したように、空間70は、減圧手段8の作動により減圧されている。これにより、
図4に示すように、空間70内に生じた減圧力F2が、第1の樹脂層3の繊維基材2への押圧と、第2の樹脂層4の繊維基材2への押圧とを補助することができる。
【0086】
このような圧接力F1による押圧と減圧力F2による押圧とが相まって、樹脂層3,4を繊維基材2に強く圧着することができる。これにより、繊維基材2内部に樹脂層3,4を含浸させることができる。これに加え、第2のローラ72aと第2のローラ72bを加熱ローラとすることで、樹脂層3,4を繊維基材2内部に含浸させやすくすることができる。
さらに、空間70内を減圧することで、繊維基材2内部の気体が吸引されることとなり、繊維基材2内部に含浸した樹脂層中にボイドが発生しにくくなる。
なお、第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、樹脂層3,4の一部が繊維基材2内部に含浸するものの、完全に含浸することはない。この工程において、樹脂層3,4は、繊維基材2に含浸するものの、第2のローラ72a、72bから送り出された積層体40'の繊維基材2内部は、空間70内に位置する繊維基材2内部と連通している。
【0087】
そして、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間を通過する際に、積層体40'は、一対のシート材91a、91bで挟まれることとなる。その後、積層体40'は、一対のシート材91a、91bで挟まれた状態で、一定区間搬送されることとなる。
ここで、一対のシート材91a、91b間の空間913は、空間70に連通していることから、空間70内部が減圧手段8により減圧されると、空間70を介して空間913内部の気体が減圧手段8に吸引されて空間913内も減圧されることとなる。これにより、負圧が発生し、シート材91a、91bを互いに近づけようとする力が発生して、一対のシート材91a、91bにより、積層体40'がその厚み方向から押圧されることとなる。これにより、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸がさらに進行することとなり、樹脂層3,4と繊維基材2とが強固に固定されることとなる。
【0088】
また、繊維基材2は、搬送方向に連通するとともに、表裏面側に連通する孔が形成された、多孔質材である。一対のシート材91a、91b間に位置する繊維基材2の内部の孔は、他の孔を介して空間70内に位置する繊維基材2の内部の孔に連通している。そのため、空間70内を減圧することで、空間70内に位置する繊維基材2を介して、一対のシート材91a、91b間に位置する繊維基材2内部が減圧されることとなる。これにより、一対のシート材91a、91bで挟まれた積層体40'において、樹脂層3,4が繊維基材2内部へ含浸する際に、繊維基材2内部に気体が残存してしまうことを抑制できて、繊維基材2内でボイドが発生することを抑制できる。
これに加え、繊維基材2の搬送方向側の端面は、樹脂層3,4に被覆されておらず、露出している。繊維基材2内の孔は、搬送方向側の端面にも連通していることから、搬送方向側の端面から、空間913、さらには、空間70を介して、気体が吸引されて、繊維基材2内部も減圧されることとなる。これによっても、一対のシート材91a、91b間で樹脂層3,4が繊維基材2内部へ含浸する際に、繊維基材2内部に気体が残存してしまうことを抑制できる。
【0089】
さらには、一対のシート材91a、91b間の積層体40'は、補助ローラ78a、78bを介して、加熱されるため、樹脂層3,4が繊維基材2内部へ含浸しやすくなる。
さらには、一対のシート材91a、91b間に位置する繊維基材2内部が減圧されるので、これにより、樹脂層3,4が繊維基材2内部側に引っ張られて、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸がさらに進行することとなる。
一対のシート材91a、91b間に位置する繊維基材2内部が減圧される状態は樹脂層3,4が繊維基材2内部にほぼ完全に含浸するまで続くこととなる。したがって、積層体40'が搬送されている状態で、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸が進行する。積層体40'が一対のシート材91a、91bにより、搬送されている間中、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸が進行してもよく、また、搬送途中で、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸が終了してもよい。
【0090】
積層体40'を挟んだ一対のシート材91a、91bの端部は、補助ローラ78a、78bにより、加熱および加圧されて、密着する。
また、対向するシート材91a、91bの内側領域は、減圧されるものの、一対のシート材91a、91bの外側の領域は、大気圧以上(本実施形態では、大気圧下)の雰囲気である。これにより、一対のシート材91a、91bおよび、一対のシート材91a、91b内部の積層体40'には、外部から大気圧以上の力がかかる。これによっても、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸を促進させることができる。
【0091】
以上により、例えば第1の樹脂層3や第2の樹脂層4の厚さや組成によらず、当該各樹脂層が繊維基材2に確実かつ強固に接合された積層シート40を製造することができる。
【0092】
以上のようにして、得られた積層シート40は、
図1中の左側に押し出される。その際に、シート材91aが従動ローラ77aに巻き取られて積層シート40から剥離し、シート材91bが従動ローラ77bに巻き取られて積層シート40から剥離する。
【0093】
また、積層シート製造装置30では、積層体40'をシート材91a、91b間で押し潰す時間が、例えば単に一対のローラ間で押し潰す時間よりも長く確保することができる。これにより、第1の樹脂層3や第2の樹脂層4を繊維基材2により確実かつ強固に接合する、すなわち、含浸させることができる。
【0094】
また、積層シート製造装置30では、減圧すべき空間を、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間70として、できる限り小さくすることができる。これにより、積層シート製造装置30が小型のものとなる。また、減圧手段8を作動させた際、その減圧を迅速に行なうことができる。また、高真空化も可能である。
【0095】
また、繊維基材2と第1の樹脂層3とが接合する際、これらの間に空気が溜まっていたとしても圧接力F1によりその空気を押し出すことができ、よって、空気が溜まったまま接合がなされてしまうのを確実に防止することができる(繊維基材2と第2の樹脂層4との接合時についても同様)。
【0096】
<基板>
次に、プリプレグ1を用いた基板10について、
図8を参照しつつ説明する。この
図8に示す基板10は、積層体11と、この積層体11の両面に設けられた金属層12とを有している。
【0097】
積層体11は、第2の樹脂層4同士を内側にして配置された2つのプリプレグ1と、第2の樹脂層4同士間で挟持された繊維基材13とを備える。
【0098】
繊維基材13には、前述した繊維基材2と同様のものを用いることができる。また、本実施形態では、第2の樹脂層4は、前述したような特性(可撓性)を有するため、繊維基材13の少なくとも一部は、第2の樹脂層4に確実に埋め込まれる(埋設される)。
【0099】
金属層12は、配線部に加工される部分であり、例えば、銅箔、アルミ箔等の金属箔を積層体11に接合すること、銅、アルミニウムを積層体11の表面にメッキすること等により形成される。また、本実施形態では、第1の樹脂層3は、前述したような特性を有するため、高い密着性で金属層12を保持することができるとともに、高い加工精度で金属層12を配線部に形成することができるようになっている。
【0100】
金属層12と第1の樹脂層3とのピール強度は、0.5kN/m以上であるのが好ましく、0.6kN/m以上であるのがより好ましい。これにより、金属層12を配線部に加工し、得られる半導体装置100(
図9参照)における接続信頼性をより向上させることができる。
【0101】
このような基板10は、第1の樹脂層3上に金属層12を形成したプリプレグ1を2つ用意し、これらのプリプレグ1で繊維基材13を挟持した状態で、例えば、真空ラミネート法等を用いて製造することができる。
【0102】
なお、基板10は、繊維基材13が省略され、2つのプリプレグ1が第2の樹脂層4同士を直接接合してなる積層体を含むものであってもよく、金属層12が省略されたものであってもよい。
【0103】
<半導体装置>
次に、基板10を用いた半導体装置100について、
図9を参照しつつ説明する。なお、
図9中では、繊維基材2、13を省略して示し、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4を一体として示してある。
【0104】
図9に示す半導体装置100は、多層基板(多層プリント配線板(回路基板))200と、多層基板200の上面に設けられたパッド部300と、多層基板200の下面に設けられた配線部400と、パッド部300にバンプ501を接続することにより、多層基板200上に搭載された半導体素子500とを有している。
【0105】
多層基板200は、コア基板として設けられた基板10と、この基板10の上側に設けられた3つのプリプレグ1a、1b、1cと、基板10の下側に設けられた3つのプリプレグ1d、1e、1fとを備えている。プリプレグ1a〜1cをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番と、プリプレグ1d〜1fをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番とは、同じとなっている。すなわち、プリプレグ1a〜1cとプリプレグ1d〜1fとは、互いに上下反転したもの同士となっている。
【0106】
また、多層基板200は、プリプレグ1aとプリプレグ1bとの間に設けられた回路部201aと、プリプレグ1bとプリプレグ1cとの間に設けられた回路部201bと、プリプレグ1dとプリプレグ1eとの間に設けられた回路部201dと、プリプレグ1eとプリプレグ1fとの間に設けられた回路部201eとを有している。
【0107】
さらに、多層基板200は、各プリプレグ1a〜1fをそれぞれ貫通して設けられ、隣接する回路部同士や、回路部とパッド部とを電気的に接続する導体部202とを備えている。
【0108】
基板10の各金属層12は、それぞれ、所定のパターンに加工され、当該加工された金属層12同士は、基板10を貫通して設けられた導体部203により電気的に接続されている。
【0109】
なお、半導体装置100(多層基板200)は、基板10の片面側に、4つ以上のプリプレグ1を設けるようにしてもよい。さらに、半導体装置100は、プリプレグ1以外のプリプレグを含んでいてもよい。
【0110】
<第二実施形態>
次に、
図10〜
図11を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
本実施形態の製造装置30Aについて詳細に説明する。
製造装置30Aは、製造装置30から、一対のシート材91a、91bを削除するとともに、製造装置30の補助ローラ78a、78bを、補助ローラ78c、78dに置換したものである。また、製造装置30の従動ローラ77a、77bを、ローラ77c、77dに置換したものである。さらに、製造装置30Aは、冷却手段93を有しない。他の点は、製造装置30と同様である。
補助ローラ78c、78dは、円柱形状のローラであり、前記実施形態の補助ローラ78a、78bとは異なり、拡径部781を有していない。
図11にも示すように、補助ローラ78c、78dの外周面が積層体40A'の搬送方向と直交する幅方向全体にわたって当接する。
この補助ローラ78c、78dは加熱ローラであり、加熱手段92によって加熱されている。すなわち、加熱手段92と、補助ローラ78c、78dとで含浸手段が構成されることとなる。
ローラ77c、77dは、積層シート40Aを搬送する搬送ローラであり、一対の壁部61間に架け渡されている。ローラ77c、77dの回転軸は、ローラ72a、72bと平行である。
ローラ77c、77dは回転軸がモータに接続されており、モータが作動すると、その動力が歯車機構を介して伝達され、回転することとなる。
【0111】
このような製造装置30Aを使用した積層シート40Aの製造方法について説明する。
はじめに、前記実施形態と同様、空間70内部をあらかじめ減圧しておく。
次に、前記実施形態と同様、空間70内に繊維基材2を連続的に供給する。
さらに、第2のローラ72aと第3のローラ73aとが回転すると、これらのローラ間からシート5cが空間70内に送り出される(連続的に供給される)。
ここで、シート5cについて説明する。このシート5cは、保護シート51と、樹脂層3と、シート材52とを備える。保護シート51とシート材52とは、樹脂層3を挟んで対向配置される。
シート材52としては、特に限定されないが、高分子フィルムがあげられ、PET等があげられる。
シート5cは、前記実施形態と同様、保護シート51が第3のローラ73aの外周面に沿って巻き取られ(引張られ)、これにより、第1の樹脂層3から保護シート51が剥離される。
【0112】
一方で、第2のローラ72bと第3のローラ73bとが回転すると、これらのローラ間からシート5dが空間70内に送り出される(連続的に供給される)。
ここで、シート5dについて説明する。このシート5dは、保護シート51と、樹脂層4と、シート材52とを備える。保護シート51とシート材52とは、樹脂層4を挟んで対向配置される。
このシート5dは、保護シート51が第3のローラ73bに巻き取られ、これにより、第2の樹脂層4から保護シート51が剥離される。
繊維基材2とシート材52付き第1の樹脂層3とシート材52付き第2の樹脂層4とは、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間を一括して通過することとなる。
このとき、前記実施形態と同様に、繊維基材2内部に樹脂層3,4が含浸し、積層体40A'が得られる。そして、前記実施形態と同様、第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、樹脂層3,4の一部が繊維基材2内部に含浸するものの、完全に含浸することはない。この工程において、樹脂層3,4は、繊維基材2に含浸するものの、第2のローラ72a、72bから送り出された積層体40A'の繊維基材2内部は、空間70内に位置する繊維基材2内部と連通している。
【0113】
ここで、
図11に
図10のE-E方向の繊維基材2、樹脂層3,4の断面図を示す。繊維基材2の搬送方向と直交する方向の幅寸法は、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4の搬送方向と直交する方向の幅寸法よりも小さい。
一対の第2のローラ72a、72bにより、繊維基材2、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4が圧着される。このとき、第1の樹脂層3の幅方向の一方の端部(搬送方向に沿った一方の端部)と、第2の樹脂層4の幅方向の一方の端部(搬送方向に沿った一方の端部)とが圧着(熱圧着)されるとともに、第1の樹脂層3の幅方向の他方の端部と、第2の樹脂層4の幅方向の他方の端部とが圧着(熱圧着)される。樹脂層3,4の幅方向の端部同士が溶融接合されて、接合部を形成し、繊維基材2が第1の樹脂層3および第2の樹脂層4内に内包される形となる。すなわち、積層体40A'の幅方向の両端部は密閉された状態となる。なお、シート材52の幅方向の寸法は、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4と等しくてもよく、また、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4の幅寸法よりも長くてもよい。
【0114】
積層体40A'は、第2のローラ72a、72bにより空間70から連続的に送出されて、補助ローラ78c、78d、およびローラ77c、77dにより、搬送される。
ここで、繊維基材2は、複数の孔が形成された多孔質材である。繊維基材2に形成された孔は、他の孔を介して、積層体搬送方向に連通し、さらに、繊維基材2表裏面に連通する。そのため、空間70外部に位置する繊維基材2であっても、その内部は、空間70に連通することとなる。換言すると、一対のシート材52の内部の空間が、空間70に連通しているといえる。
【0115】
空間70外部に位置する繊維基材2内部の気体は、繊維基材2内部の孔および空間70を介して、減圧手段8により吸引され、繊維基材2内部は負圧となる。特に、積層体40A'の幅方向の両端部は密閉された状態であるため、繊維基材2内部の気体を確実に吸引することができる。繊維基材2内部が減圧されることで、樹脂層3,4が繊維基材2に強固に密着する。
補助ローラ78c、78dにより、積層体40A'は搬送されるとともに、加熱されるため、空間70から送り出された積層体40A'においても、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸は進行する。樹脂層3,4の繊維基材2への含浸は、積層体40A'が搬送されながら、進行することとなる。
【0116】
空間70外部に位置する繊維基材2内部の気体は、繊維基材2内部の孔および空間70を介して、減圧手段8により吸引されることとなるが、この吸引は、樹脂層3,4が繊維基材2内部に一定程度、含浸するまで続くこととなる。すなわち、繊維基材2内部の気体が減圧手段8に吸引されている間に、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸が進行することとなる。これにより、樹脂層3,4が繊維基材2により含浸しやすくなるとともに、繊維基材2内部にボイドが発生してしまうことが防止される。
また、積層体40A'の幅方向の両端部には、樹脂層3,4の端部同士が溶融接合した接合部が形成されているため、補助ローラ78c、78dで搬送されている間に、繊維基材2の端面側から気体が繊維基材2内部に流入してしまうことを防止できる。したがって、空間70外部に位置する積層シート40の繊維基材2内部の気体を確実に吸引することができる。
なお、製造装置30Aにおいて、空間70から送出された積層体40A'が搬送されている状態で、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸が進行していくが、積層体40A'が搬送されている途中で、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸が終了してもよく、積層体40A'が搬送されている間中、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸が進行していてもよい。
【0117】
本実施形態では、第2のローラ72aと第2のローラ72bよりも積層体40A'の搬送方向下流側は、大気圧以上の雰囲気(本実施形態では大気圧)である。第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、積層体40A'は、大気圧以上の雰囲気下に送出されることとなる。これにより、積層体40A'は、大気圧以上の力で外側から加圧されることとなり、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸を促進させることができる。
【0118】
以上のようにして、得られた積層シート40Aは、ローラ77c、77dにより、
図10中の左側に押し出される。
このような本実施形態によれば、前述した効果に加えて、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0119】
以上、本発明の積層シート製造装置および積層シートを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、積層シート製造装置および積層シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0120】
また、積層シート製造装置は、
図1に示す構成では一対の第3のローラが1組設置されているが、これに限定されず、例えば、3組以上の奇数組設置されていてもよい。
【0121】
また、各第1のローラと各第2のローラと各第3のローラとは、
図1に示す構成では互いに本体部の外径が異なっているが、これに限定されず、例えば、互いに本体部の外径が
同一であってもよい。
【0122】
また、積層シート製造装置は、2枚のシート材間から送り出された積層シートを乾燥するよう構成されていてもよい。
【0123】
また、積層シートは、
図7に示す構成では繊維基材の両面にそれぞれ樹脂層が接合されたものであるが、これに限定されず、繊維基材の片面にのみ樹脂層が接合されたものであってもよい。このような構成の積層シートも積層シート製造装置で製造することができる。
【0124】
また、積層シートは、
図7に示す構成では繊維基材に第1の樹脂組成物および第2の樹
脂組成物がそれぞれ含浸したものであるが、これに限定されず、例えば次のようなもので
あってもよい。1つ目の例は、繊維基材の厚さ方向全体にわたって第1の樹脂組成物が含浸し、第2の樹脂組成物は含浸していない積層シート。2つ目の例は、繊維基材の厚さ方向全体にわたって第2の樹脂組成物が含浸し、第1の樹脂組成物は含浸していない積層シート。3つ目の例は、繊維基材の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物が含浸し、第2の樹脂組成物は含浸していない積層シート。4つ目の例は、繊維基材の厚さ方向の一部に第2の樹脂組成物が含浸し、第1の樹脂組成物は含浸していない積層シート。以上4つの例の積層シートでも、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とは、互いに組成が異なるものでもよく、また、互いに組成が同一のものでもよい。そして、このような構成の積層シートも積層シート製造装置で製造することができる。
【0125】
また、積層シートは、
図7に示す構成では含浸部31,41の厚みが等しく、また、非含浸部32,42の厚みも等しかったが、含浸部31,41の厚みが異なっていてもよく、非含浸部32,42の厚みが異なっていても良い。このような構成の積層シートも積層シート製造装
置で製造することができる。
【0126】
また、積層シートは、
図7に示す構成では繊維基材を有するものであるが、これに限定されず、例えば、繊維基材に代えて、プリント配線板等の基材を有するものであってもよい。
【0127】
また、第一実施形態では、繊維基材2の表裏面に樹脂層を配置したが、繊維基材2の一方の面にのみ樹脂層を設けてもよい。
さらに、前記各実施形態では、ローラ72a,72bにより、樹脂層3,4を繊維基材2内部に含浸させるとしたが、これに限らず、ローラ72a、72bにより、樹脂層3,4を繊維基材2内部に含浸させなくてもよい。このような場合において、たとえば、第一実施形態において、一対のシート材91a,91bの長手方向の距離が非常に長くすることで、一対のシート材91a,91bにより積層体40'を搬送しながら、樹脂層3,4を繊維基材2内部に完全含浸させることができる。
【0128】
以上のような発明は、以下のような構成に基づくものである。
(1)固形または半固形の樹脂組成物で構成された樹脂層を有する支持体の前記樹脂層を、薄板状の基材の片面または両面に接合して積層シートを製造する積層シート製造装置であって、前記樹脂層と前記基材とを重ね合わせ、未だ接合されていない状態の未接合体を挟む2枚のシート材と、前記未接合体が前記2枚のシート材間に挟まれた状態で該シート材間の空間を減圧する減圧手段とを備え、前記減圧手段の作動により前記空間が減圧された際、前記未接合体を前記シート材ごと押し潰して、前記樹脂層と前記基材とを圧着し、前記積層シートを得るよう構成されていることを特徴とする積層シート製造装置。
(2)前記樹脂層と前記基材との圧着後、前記積層シートからは、前記2枚のシート材がそれぞれ剥離される上記(1)に記載の積層シート製造装置。
(3)前記2枚のシート材がそれぞれ無端状態で架け回され、該シート材を搬送する一対のローラを備える上記(1)または(2)に記載の積層シート製造装置。
(4)前記2枚のシート材を同方向に搬送しつつ、前記空間を減圧する上記(1)な
いし(3)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
(5)前記一対のローラ間には、前記2枚のシート材を搬送しつつ、該2枚のシート材の搬送方向と平行な縁部同士を気密的に密着させる複数の補助ローラを備える上記(3)または(4)に記載の積層シート製造装置。
(6) 前記2枚のシート材の前記縁部同士を密着させる際に該縁部を加熱して軟化させる加熱手段を備える上記(5)に記載の積層シート製造装置。
(7)前記縁部同士の密着後、前記軟化した縁部を冷却する冷却手段を備える上記(6)に記載の積層シート製造装置。
(8)互いに対向配置された一対の壁部を有し、該一対の壁部のうちの少なくとも一方に開口部が形成されたハウジングと、前記一対のローラのうちの一方のローラ側で前記一対の壁部間に架設され、前記2枚のシート材の間に向かって前記基材を送り出す一対の送り出しローラを備え、前記空間は、前記各一方のローラと前記一対の壁部と前記一対の送り出しローラとで囲まれ、前記開口部が開口する小空間と連通し、前記減圧手段の作動により、前記開口部から前記小空間を介して前記空間内の空気を吸引して該空間が減圧される上記(3)ないし(7)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
(9)前記減圧手段は、ポンプと、該ポンプと前記開口部と接続する接続管とを有する上記(8)に記載の積層シート製造装置。
(10)前記2枚のシート材は、それぞれ、高分子フィルムで構成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
この出願は、2011年3月30日に出願された日本特許出願2011−076664を基礎とする優先権を主張し、その開示をすべてここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
<付記>
(付記1)
樹脂層を有するシートの前記樹脂層を、長尺の薄板状の基材の片面または両面に接合して積層シートを製造する積層シートの製造方法において、
前記基材は、搬送方向に連通するとともに、表裏面に連通する孔が形成された繊維基材であり、
減圧手段により減圧された減圧室内に、前記シートと前記基材と搬送し、減圧状態で、前記シートの樹脂層と前記基材とを当接させて、積層体を構成する工程と、
前記減圧室から前記積層体を送り出す工程と、
前記積層体を一対のシート材により挟む工程と、
前記減圧室外部に位置し、前記積層体を挟んだ前記一対のシート材の内側の空間が、前記減圧室に連通しており、前記減圧手段により、前記一対のシート材の内側の空間を減圧する工程とを含む積層シートの製造方法。
(付記2)
付記1に記載の積層シートの製造方法において、
前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、前記積層体を加熱する積層シートの製造方法。
(付記3)
付記1または2に記載の積層シートの製造方法において、
前記減圧室には、前記基材が連続的に供給されるとともに、前記減圧室から前記基材が連続的に送出され、
前記減圧手段により、前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、
前記減圧室内に位置する前記基材内部の気体を前記減圧手段で吸引することで、前記一対のシート材の内側の前記基材内部の空間の気体が吸引される積層シートの製造方法。
(付記4)
付記3に記載の積層シートの製造方法において、
前記減圧手段により、前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、
前記樹脂層を前記基材内部に含浸させる積層シートの製造方法。
(付記5)
付記4に記載の積層シートの製造方法において、
積層体を構成する前記工程では、前記基材と前記シートとを圧着し、前記シートの前記樹脂層を前記基材に含浸させる積層シートの製造方法。
(付記6)
付記3乃至5のいずれかに記載の積層シートの製造方法において、
積層体を構成する前記工程では、
前記基材の表裏面に前記シートの前記樹脂層を重ね合わせるとともに、前記各樹脂層の搬送方向に沿った端部同士を圧着して、前記樹脂層間に前記基材を内包させる積層シートの製造方法。
(付記7)
付記6に記載の積層シートの製造方法において、
前記シート材は、前記シートの樹脂層の前記基材に当接する面と反対側の面に設けられ、前記樹脂層を支持する支持体であり、
前記シート材付きの前記シートを前記減圧室に供給し、前記シート材付きの前記シートの前記樹脂層を前記基材に当接させることで、積層体を構成する前記工程と、前記一対のシート材により前記積層体を挟む前記工程とを実施する積層シートの製造方法。
(付記8)
付記1乃至5のいずれかに記載の積層シートの製造方法において、
前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、
前記一対のシート材の対向する内面間に空隙が形成され、前記空隙内を減圧することで、前記一対のシート材により前記シートと前記基材とを圧着する積層シートの製造方法。
(付記9)
付記8に記載の積層シートの製造方法において、
前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程後、前記一対のシート材は、前記積層体から剥離される積層シートの製造方法。
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の積層シートの製造方法において、
前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、
前記積層体を挟んだ前記一対のシート材が大気圧以上の雰囲気下に位置する状態で、前記減圧手段により、前記一対のシート材の内側の空間を減圧する積層シートの製造方法。
(付記11)
付記1乃至10のいずれかに記載の積層シートの製造方法において、
前記一対のシート材の内側の空間を減圧する前記工程では、
前記積層体を搬送しながら、前記一対のシート材の内側の空間を減圧する積層シートの製造方法。
(付記12)
樹脂層を有するシートの前記樹脂層を、薄板状の基材の片面または両面に接合して積層シートを製造する積層シート製造装置であって、
前記シートと前記基材とが供給され、減圧手段により減圧される減圧室と、
前記減圧室内の前記シートと前記基材とを圧着して積層体を構成する圧着手段と、
前記減圧室から送出された積層体を、挟む2枚のシート材とを備え、
前記積層体を前記2枚のシート材間に挟んだ状態において、該シート材間の空間が、前記減圧室に連通し、
前記減圧手段の作動により、前記減圧室を介して前記空間が減圧され、前記空間が減圧されることにより、前記積層体を前記2枚のシート材により、押し潰して、前記シートと前記基材とを圧着し、前記積層シートを得るよう構成されていることを特徴とする積層シート製造装置。
(付記13)
付記12に記載の積層シート製造装置において、
前記各シート材は、一対のローラ間に無端状態で架け回されている積層シート製造装置。
(付記14)
付記13に記載の積層シート製造装置において、
前記一対のローラ間に配置され、前記シート材を搬送しつつ、該2枚のシート材の搬送方向と平行な縁部同士を密着させる複数の補助ローラを備える積層シート製造装置。
(付記15)
付記14に記載の積層シート製造装置において、
前記2枚のシート材の前記縁部同士を密着させる際に該縁部を加熱して軟化させる加熱手段を備える積層シート製造装置。
(付記16)
付記15に記載の積層シート製造装置において、
前記縁部同士の密着後、前記軟化した縁部を冷却する冷却手段を備える積層シート製造装置。
(付記17)
付記12乃至16のいずれかに記載の積層シートの製造装置において、
前記基材を送出する一対の第1のローラと、
前記第1のローラから送出された前記基材が供給される一対の第2のローラと、
前記第1のローラの基材搬送方向下流側に配置されるとともに、前記第2のローラの基材搬送方向上流側に配置され、前記一対の第1のローラから送出された前記基材の表面側および裏面側にそれぞれ配置された第3のローラとを備え、
前記一対の第2のローラのうち一方は、前記シート材が無端状態で架け渡された前記一対のローラのうちの一方のローラであり、
前記一対の第2のローラのうち他方は、前記シート材が無端状態で架け渡された他の前記一対のローラのうちの一方のローラであり、
前記減圧手段は、
前記一対の第1のローラ、前記一対の第2のローラ、前記第3のローラとで囲まれた第二の空間内を減圧するものであり、
前記一対の第1のローラは、前記第二の空間内に前記基材を送出するローラであり、
前記基材の表面側または裏面側において、一方の前記第3のローラと一方の前記第2のローラとの間から、前記第二の空間内にむけて前記シートが送出され、
前記第2のローラは、前記基材と前記シートの前記樹脂層とを圧着するとともに、前記基材および前記シートを含む積層体を前記2枚のシート材間へ送り出すローラであり、
前記シート材間の前記空間は、前記第二の空間と連通している積層シートの製造装置。
(付記18)
付記12乃至17のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
前記2枚のシート材は、それぞれ、高分子フィルムで構成されている積層シート製造装置。
(付記19)
搬送方向に連通するとともに表裏面に連通する孔が形成された多孔質基材と、樹脂層とが連続的に供給される減圧室と、
前記減圧室内を減圧する減圧手段と、
前記減圧室内に供給された前記多孔質基材と前記樹脂層とを圧着して、積層体を構成する圧着手段と、
前記減圧室から連続的に送り出される前記積層体を加熱し、前記樹脂層を前記多孔質基材に含浸させる含浸手段とを備える積層シートの製造装置。
(付記20)
付記19に記載の積層シートの製造装置において、
前記圧着手段は、前記樹脂層を圧着した後の前記多孔質基材内部の孔が、前記減圧室内に位置し前記樹脂層が圧着される前の前記多孔質基材の孔に連通する程度に前記樹脂層と前記多孔質基材とを圧着するように構成されており、
当該製造装置は、前記減圧室内を前記減圧手段により減圧状態としながら、前記圧着手段によって得られた前記積層体を、前記含浸手段にて加熱するように構成された積層シートの製造装置。
(付記21)
付記20に記載の積層シートの製造装置において、
前記減圧室内には、前記多孔質基材と一対の樹脂層とが供給され、
前記圧着手段は、前記多孔質基材と、この多孔質基材を挟んで配置された前記一対の樹脂層とを圧着し、
前記多孔質基材の搬送方向と直交する方向の幅寸法は、前記各樹脂層の搬送方向と直交する方向の幅寸法よりも小さく、
前記圧着手段は、前記一対の前記樹脂層の幅方向の端部同士を圧着して、前記樹脂層間に前記基材を内包させる手段である積層シートの製造装置。