特許第5915311号(P5915311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915311
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20160422BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M10/48 301
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-72227(P2012-72227)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-206619(P2013-206619A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加悦 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】吉川 哲弘
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−006165(JP,U)
【文献】 特開昭48−013840(JP,A)
【文献】 実開平01−159359(JP,U)
【文献】 特開2002−362261(JP,A)
【文献】 特開平11−139167(JP,A)
【文献】 特開2002−050411(JP,A)
【文献】 特開平01−143160(JP,A)
【文献】 特開2009−076265(JP,A)
【文献】 特開昭63−194460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/02
B60K 1/04
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池を着脱可能に収容する筐体と、
前記筐体に搭載され、外部から供給される電圧に基づいて前記蓄電池を充電する機能及び前記蓄電池の電圧に基づいて所望の電圧を出力する機能を有する充放電制御装置と、
前記蓄電池の温度を測定するための温度センサと、
前記筐体側に取り付けられ、前記温度センサを保持し、前記筐体内の所定位置に装着された前記蓄電池に対し、所定方向への弾発力をもって前記温度センサの感熱部を押し当てるよう付勢する保持装置と
を備え
前記保持装置は、前記温度センサが取り付けられる保持板と、当該保持板を前記所定方向へ付勢する弾性体とを有し、
付勢された方向と平行に前記保持板が移動するように案内するガイド棒が、前記保持板に設けられていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記保持板は、前記温度センサを、当該保持板上で位置決めする部位を有する請求項記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電池は、複数のバッテリの集合体であり、
前記温度センサ及び前記保持装置は、前記バッテリの各々に対応して複数箇所に設けられている請求項1記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電池の着脱時に前記蓄電池を載せたまま移動できるスライダを備え、
前記温度センサ及び前記保持装置は、前記スライダの移動方向における奥側と手前側とにそれぞれ設けられている請求項記載の蓄電装置。
【請求項5】
蓄電池と、
前記蓄電池を着脱可能に収容する筐体と、
前記筐体に搭載され、外部から供給される電圧に基づいて前記蓄電池を充電する機能及び前記蓄電池の電圧に基づいて所望の電圧を出力する機能を有する充放電制御装置と、
前記蓄電池の温度を測定するための温度センサと、
前記筐体側に取り付けられ、前記温度センサを保持し、前記筐体内の所定位置に装着された前記蓄電池に対し、所定方向への弾発力をもって前記温度センサの感熱部を押し当てるよう付勢する保持装置と
を備え、
前記蓄電池は、複数のバッテリの集合体であり、
前記温度センサ及び前記保持装置は、前記バッテリの各々に対応して複数箇所に設けられており、
前記蓄電池の着脱時に前記蓄電池を載せたまま移動できるスライダを備え、
前記温度センサ及び前記保持装置は、前記スライダの移動方向における奥側と手前側とにそれぞれ設けられており、
手前側の前記温度センサ及び前記保持装置は、前記蓄電池の端面を覆う中扉に設けられる
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
前記保持板は、プリント基板である請求項記載の蓄電装置。
【請求項7】
蓄電池と、
前記蓄電池を着脱可能に収容する筐体と、
前記筐体に搭載され、外部から供給される電圧に基づいて前記蓄電池を充電する機能及び前記蓄電池の電圧に基づいて所望の電圧を出力する機能を有する充放電制御装置と、
前記蓄電池の温度を測定するための温度センサと、
前記筐体側に取り付けられ、前記温度センサを保持し、前記筐体内の所定位置に装着された前記蓄電池に対し、所定方向への弾発力をもって前記温度センサの感熱部を押し当てるよう付勢する保持装置と
を備え、
前記保持装置は、前記温度センサが取り付けられる保持板と、当該保持板を前記所定方向へ付勢する弾性体とを有し、
前記温度センサは、フレキシブルプリント基板に設けられ、当該フレキシブルプリント基板が前記保持板に固着されている
ことを特徴とする蓄電装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に蓄電池を収容した蓄電装置に関し、例えば、可搬型の筐体に収容した蓄電池を充電しておき、必要な時に、所望の電圧を供給する非常用電源となる蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能なバッテリ(例えば鉛蓄電池)を筐体内に収容した蓄電装置は、負荷への電力供給により放電し、また、電力供給しなくても、自然放電する。従って、放電状況を見ながら適時に充電を行う必要がある。充電中は、過充電になると温度が上昇するので、温度センサを設けて、温度が上限値以下となるように充電を制御する。また放電により、連続的に大電流を供出する場合にも温度が上昇するので、温度が上限値以下になるように放電を制御する。
【0003】
バッテリの温度を測定するには、例えば、バッテリのケースに設けた穴に温度センサを差し込む構成が知られている(例えば特許文献1,2参照。)。また、ケースの表面に貼り付けたり、ねじで固定したりする温度センサも、市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−50411号公報(図2
【特許文献2】特開平11−195436号公報(図2図5図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケースに設けられた穴に温度センサを収容するには、特殊なケース構造が必要となる。また、このような特殊なケース構造に用いる温度センサは、汎用品では不適で、特殊品が必要となる場合が多い。従って、このような温度センサ付きのバッテリは、汎用のバッテリに比べると、高価なものとなる。当然に、このようなバッテリを複数個搭載する蓄電装置はさらに高価になる。
【0006】
また、バッテリは経年劣化するため、定期的に交換が必要となるが、バッテリ交換時に温度センサの接続をやり直すのは面倒である。特に、ユーザーサイドで、バッテリ交換に慣れていない作業者がこれを行うと、誤接続や、接続のし忘れを招く可能性もある。
【0007】
一方、バッテリに温度センサを貼り付ける方式でも、貼り付け不良で正確な温度測定ができなくなる可能性がある。また、バッテリを装着する際に温度センサのリード線が邪魔になり、誤ってリード線を損傷させる可能性もある。
【0008】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、脱着される蓄電池に対する温度センサの取り付けが容易な蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の蓄電装置は、蓄電池と、前記蓄電池を着脱可能に収容する筐体と、前記筐体に搭載され、外部から供給される電圧に基づいて前記蓄電池を充電する機能及び前記蓄電池の電圧に基づいて所望の電圧を出力する機能を有する充放電制御装置と、前記蓄電池の温度を測定するための温度センサと、前記筐体側に取り付けられ、前記温度センサを保持し、前記筐体内の所定位置に装着された前記蓄電池に対し、所定方向への弾発力をもって前記温度センサの感熱部を押し当てるよう付勢する保持装置とを備えたものである。
【0010】
上記のように構成された蓄電装置において、温度センサは、蓄電池側ではなく、筐体側にあって、保持装置により、所定位置に装着された蓄電池に押し当てられる。これにより、蓄電池の温度測定を行うことができる。このような構成では、蓄電池と温度センサとをセットにする必要が無いので、蓄電池を交換する際は、温度センサを気にせずとも、単に蓄電池のみを取り替えればよい。すなわち、このような保持装置が設けられていることによって、蓄電池を交換するたびに新しい蓄電池に温度センサを取り付ける(あるいは取り付け直す)作業が不要となる。また、蓄電池自体に温度センサを付属させないことにより、汎用の蓄電池を使用することができる。
【0011】
(2)また、上記(1)の蓄電装置において、保持装置は、温度センサが取り付けられる保持板と、当該保持板を所定方向へ付勢する弾性体とを有するものであってもよい。
そもそも、温度センサ自体は機械的強度が十分とは言えず、動くことや押されることには適さない。しかし、このように、十分な機械的強度を確保し得る保持板に温度センサを取り付けることによって、いわば一構造部材化すれば、動きやすく、かつ、弾性体の弾発力を受け止めるに適する。
【0012】
(3)また、上記(2)の蓄電装置において、付勢された方向と平行に保持板が移動するように案内するガイド棒が、当該保持板に設けられていてもよい。
この場合、保持板は、弾性体により付勢された方向と平行に移動する。すなわち、所望の方向への保持板の移動を、このガイド棒によって担保することができる。
【0013】
(4)また、上記(2)又は(3)の蓄電装置において、保持板は、温度センサを、当該保持板上で位置決めする部位を有することが好ましい。
この場合、温度センサの位置が安定することにより、位置ずれを防止できるとともに、ずれ動きによる温度センサのリード線の断線等を防止することができる。
【0014】
(5)また、上記(1)の蓄電装置において、蓄電池は、複数のバッテリの集合体であり、温度センサ及び保持装置は、バッテリの各々に対応して複数箇所に設けられている、という構成であってもよい。
この場合、全てのバッテリの温度を個々に測定することができる。
【0015】
(6)また、上記(5)の蓄電装置において、蓄電池の着脱時に蓄電池を載せたまま移動できるスライダを備え、温度センサ及び保持装置は、スライダの移動方向における奥側と手前側とにそれぞれ設けられている、という構成であってもよい。
この場合、特に奥側の保持装置の弾発力は、筐体内に装着された蓄電池が所定位置で止まる時の衝撃吸収にも寄与する。また、この場合、蓄電池の装着時に、スライド中の蓄電池に対して温度センサの感熱部を押し当てることはなく、スライド完了して初めて蓄電池に対して温度センサの感熱部を押し当てることになるので、温度センサを破損させる可能性がほとんど無い。
【0016】
(7)また、上記(6)の蓄電装置において、手前側の温度センサ及び保持装置は、蓄電池の端面を覆う中扉に設けられていてもよい。
この場合、筐体を完全に閉鎖する前に、温度センサの感熱部を押し当てたことを、確認することができる。
【0017】
(8)また、上記(2)の蓄電装置において、保持板は、プリント基板であってもよい。
この場合、温度センサに付属する素子やコネクタを搭載するプリント基板を、機械的な部品である保持板として利用することができる。
【0018】
(9)また、上記(2)の蓄電装置において、温度センサは、フレキシブルプリント基板に設けられ、当該フレキシブルプリント基板が保持板に固着されていてもよい。
この場合、柔軟性に富むフレキシブルプリント基板上で、温度センサとその周辺の電子回路素子との接続を実現することができるので、リード線不要となり、断線を防止することができる。また、コネクタも不要であるので、便利である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蓄電装置によれば、脱着される蓄電池に対する温度センサの取り付けが容易である。また、かかる蓄電装置は、汎用の蓄電池を使用することができ、至便であり、かつ、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図2】一方の側面パネルを取り外した状態での蓄電装置の斜視図である。
図3】他方の側面パネルを取り外した状態での蓄電装置の斜視図である。
図4】左右の側面パネルを外し、正面パネルの図示を省略した状態での蓄電装置の内部正面図である。
図5図4における右側の点線の丸印で示す部位P3の部分拡大図である。
図6】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、温度センサの取付構造に関する正面図、側面図、背面図である。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ、温度センサの取付構造に関する正面側からの斜視図及び背面側からの斜視図である。
図8図4における左側の点線の丸印で示す部位P1,P2の部分拡大図である。
図9】(a)及び(b)はそれぞれ、側面パネルを外して、中扉を開いている途中の状態における、蓄電装置の側面図及び正面図である。
図10】中扉を開いた状態から、蓄電池を載せたスライダを引き出す途中の状態を示す内部正面図である。
図11】奥側にある温度センサ及び保持装置の状態を、図10から抜き出して示す部分拡大図である。
図12】手前側の、中扉に取り付けられている温度センサ及び保持装置の状態を、図10から抜き出して示す部分拡大図である。
図13】温度センサ及び保持板等に関する第2実施例を示す斜視図であり、(a)はチップタイプの温度センサが実装される表面側を示し、(b)はコネクタが実装される裏面側を示している。
図14】温度センサ及び保持板等に関する第3実施例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図15図11におけるばね、ガイド棒、ストッパ及びねじを、ゴムやスポンジのような弾性材に置き換えた一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
《蓄電装置の全体構造》
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。この蓄電装置1は、主として非常用電源として使用される可搬型の装置である。蓄電装置1の筐体2は、正面上部が斜め傾斜している以外は概ね直方体の箱状である。筐体2は、通気孔等がある他は、概ね閉鎖されている。正面上部には、グリップ3が取り付けられている。底面にはキャスタ4が取り付けられており、グリップ3を握って蓄電装置1を移動させることができる。なお、(a)における内側の2つのキャスタ4は、後述するスライダに付属するキャスタである。また、正面下部のレバー5を足で操作することにより、所望の位置で蓄電装置1を移動ロック状態にすることができる。
【0022】
筐体2の正面パネル2fには、例えばAC100V出力用のアウトレット6が二箇所に設けられている。また、その少し上に、操作・モニタ部7が設けられている。
筐体2の背面側には、商用交流電源のコンセントに差し込むプラグ8a及び被覆電線8bが付属して設けられており、外部から例えばAC100Vを供給することができる。
筐体2の側面パネル2sは、バッテリ交換や保守の際に、着脱が比較的容易なように、取り付けられている。
【0023】
図2は、一方の側面パネル2sを取り外した状態での蓄電装置1の斜視図であり、また、図3は、他方の側面パネル2sを取り外した状態での蓄電装置1の斜視図である。図2図3において、筐体2の内部は、上下2段構造となっている。筐体2の上段には、充放電制御装置(電力変換装置)9が収容され、下段には、蓄電池10が収容されている。蓄電池10は、本例では、汎用性のある鉛蓄電池(以下、バッテリという。)10bを、2行2列に合計4個並べたものである。バッテリ10bは、例えば、定格電圧が12Vで、2直列(DC24V)の2並列回路を構成するように接続される。
【0024】
充放電制御装置9は、外部から供給される商用交流の電圧(AC100V)を、降圧、整流、平滑して、所定の直流電圧により、蓄電池10(4個のバッテリ10bを2直列2並列に接続したもの)を充電することができる。また、充放電制御装置9は、昇圧及びインバータ機能を有しており、蓄電池10の電圧(DC24V)から商用交流と同等の電圧(AC100V)を生成し、アウトレット6に供給することができる。
【0025】
蓄電池10は、スライダ11に載せた状態で、ベルト12(図3)により固定されている。蓄電池10を載せたスライダ11は、図2の矢印方向に、移動可能である。このスライダ11により、蓄電池10は、筐体2に対して容易に着脱可能となっている。図示の状態では、蓄電池10を載せたスライダ11は、筐体2内の所定位置に収容されている。すなわち、蓄電池10は、所定位置に装着された状態である。また、この状態で、スライダ11は、ねじ13により、底板14に固定されている。
【0026】
また、中扉15(図2)は、例えば透明な樹脂製であり、上段の棚板16に左右一対の蝶番17を用いて取り付けられている。また、中扉15の下部は、底板14に、左右一対のねじ18で、固定されている。このねじ18を外せば、中扉15を上方へ回動させて開くことができる。また、その状態で、スライダ11固定用のねじ13を外し、スライダ11を手前に引くと、スライダ11と共に蓄電池10を引き出すことができる。
【0027】
上記のように構成された蓄電装置1においては、蓄電池10における各バッテリ10bの温度を測定するための温度センサが設けられている。温度センサによって測定されたいずれかのバッテリ10bの温度が上限値を超えると、充放電制御装置9は、充電又は放電を停止させる。
【0028】
《温度センサの取り付けに関する構造:第1実施例》
次に、かかる温度センサを取り付ける構造に関して詳細に説明する。
温度センサは、4個のバッテリ10bのためにそれぞれ(計4個)用意されており、各バッテリ10bの温度を個々に測定することができる。温度センサは、図2における中扉15の裏面(内側)上部(点線の丸印で囲んでいる部位P1,P2)にそれぞれ1個取り付けられる。これらの温度センサは、スライダ11によるスライド方向の手前側にある2個のバッテリ10b用である。
【0029】
また、残りの2個の温度センサは、図3に示すセンサ取付板19の裏面(内側)に、水平方向へ2つ並べて取り付けられている(点線の丸印で囲んでいる部位P3)。センサ取付板19の上端部は棚板16に固定され、下端部は底板14に固定されている。当該2つの温度センサは、スライド方向の奥側にある2個のバッテリ10b用であり、各バッテリ10bの隣り合う端部近辺に押しつけられるように、取り付けられている。なお、このようなセンサ取付板19は一例に過ぎず、2個のバッテリ10bにそれぞれ別個独立にセンサ取付板を設けてもよいことは言うまでもない。
【0030】
図4は、左右の側面パネル2sを外し、正面パネル2fの図示を省略した状態での蓄電装置1の内部正面図である。なお、実際には、蓄電池10を構成する各バッテリ10bから充放電制御装置9への接続ケーブルが存在するが、これらの図示は省略している。
図4において、点線の丸印で示す部位P1,P2は、図2のP1,P2にそれぞれ相当する。また、点線の丸印で示す部位P3は、図3のP3に相当する。温度センサ20は、これらの部位に設けられている。温度センサ20は、蓄電池10側に設けられているのではなく、筐体2側に設けられている。
【0031】
図5は、図4における右側の点線の丸印で示す部位P3の部分拡大図である。また、図6の(a)、(b)、(c)はそれぞれ、温度センサ20の取付構造に関する正面図、側面図、背面図である。図7の(a)及び(b)はそれぞれ、温度センサ20の取付構造に関する正面側からの斜視図及び背面側からの斜視図である。
【0032】
まず、図6において、温度センサ20は、例えばサーミスタである感熱部20aと、付属のリード線20bとを備えている。感熱部20aの形状については種々のものが市販されているが、ここで用いるのは例えば図示のような形状で、若干扁平である。扁平であることは、バッテリ10bに対して、なるべく広い面積で押し当てることができる点で好ましい。
【0033】
次に、この温度センサ20を保持している保持装置200の一例について、図6又は図7を参照して説明する。保持装置200は、樹脂又は金属製の保持板21、圧縮コイル型のばね22、保持板21に立設されたガイド棒23、環状のストッパ24、ストッパ24をガイド棒23の端部に螺着するねじ25、及び、リード線20bを縛り付けるロックバンド26を備えている。ばね22は、ガイド棒23に外挿され、かつ、ばね22の内径はガイド棒23の外径より大きい。
保持板21の一端側には、切り欠き21eと、孔21fとが形成されており、これらを通してロックバンド26を巻き、リード線20bを保持板21に縛り付けることができる。
【0034】
保持板21の表面側(温度センサ20側)には、感熱部20aを位置決めするとともに、接着剤を流し込んで温度センサ20を接着固定するための凹部21dが形成されている。凹部21dの深さは、温度センサ20が埋没するほどではなく、図6の(b)又は図7の(a)に示すように、少しだけ入り込む程度である。従って、温度センサ20は保持板21の表面から突出している。凹部21dを設けることで、温度センサ20の位置決めが容易にでき、その位置が安定する。その結果、温度センサ20の位置ずれを防止できるとともに、ずれ動きによるリード線20bの断線等を防止することができる。
【0035】
なお、凹部21dを設けるのは一例に過ぎない。他にも例えば、温度センサ20のまわりに若しくはまわりの一部に、土手のような低い突起を設けてもよい。さらにまた、凹部も突起も設けずに、平面に温度センサ20を接着してもよい。但し、この場合は、万一接着が取れると、温度センサ20がずれ動いたり、リード線20bの断線を招いたりする可能性がある。
【0036】
一方、保持板21の裏面は、上記の凹部21dを設けるために若干厚肉とされた中央部21aと、中央部に比べて薄肉の端部21b,21cとによって構成されている。ガイド棒23は、端部21b,21cの表面に対して垂直に立設されている。2つのガイド棒23が、保持板21に対して斜めに(対角線的に)配置されているのは、実質的に最小数(=2)のガイド棒23でバランス良く、保持板21を支持するためである。
【0037】
ここで、図5に戻る。図5は、上記のように構成された保持装置200を、センサ取付板19に取り付けた状態を示している。取り付け要領は、まず、1個の保持装置200につき、2つのガイド棒23を通す孔(図示せず。)をセンサ取付板19に設けておく。そして、ストッパ24とねじ25とを外した状態でガイド棒23のみを当該孔に通し、その後、図5に示すように、ガイド棒23の端面にストッパ24とねじ25とを取り付ける。バッテリ10bが所定位置に収容されている状態では、温度センサ20(感熱部20a)がバッテリ10bに押しつけられ、ばね22が若干圧縮された状態となる。なお、ガイド棒23は、ばね22により付勢された方向と平行に保持板21が移動するように案内する役目を有している。
【0038】
図8は、図4における左側の点線の丸印で示す部位P1,P2の部分拡大図である。ここにも上記の保持装置200が使用されている。図8において、中扉15には、ねじ28により、保持装置200取り付け用の金具27が取り付けられている。保持装置200は、この金具27に、図5と同様の要領で、但し左右逆に、取り付けられている。バッテリ10bが所定位置に収容され、かつ、中扉15が図2に示すように閉められた状態では、温度センサ20(感熱部20a)がバッテリ10bに押しつけられ、ばね22が若干圧縮された状態となる。
【0039】
図9の(a)及び(b)はそれぞれ、側面パネル2s(図1)を外して、中扉15を開いている途中の状態における、蓄電装置1の側面図及び正面図である。この場合、中扉15に取り付けられている温度センサ20は保持装置200や金具27と共に上方へ回動し、バッテリ10bから離れる。さらに中扉15を回動させると、筐体2に中扉15を仮止めできる構造となっている。
【0040】
図10は、中扉15を開いた状態から、蓄電池10を載せたスライダ11を引き出す途中の状態を示す内部正面図である。この状態では、スライド方向の奥側(図10の右側)にある温度センサ20(2組)も、バッテリ10bから離れる。
図11は、奥側にある温度センサ20及び保持装置200の状態を、図10から抜き出して示す部分拡大図である。この場合、ばね22は伸び、温度センサ20はセンサ取付板19に対して左方へ移動するが、ストッパ24がセンサ取付板19に当接することによりそれ以上は移動しない。すなわち、ストッパ24が、温度センサ20の移動規制をしている。
【0041】
図12は、手前側の、中扉15に取り付けられている温度センサ20及び保持装置200の状態を、図10から抜き出して示す部分拡大図である。この場合も、ばね22は伸び、温度センサ20は中扉15から離れる方向へ移動するが、ストッパ24がセンサ取付板19に当接することによりそれ以上は移動しない。すなわち、ストッパ24が、温度センサ20の移動規制をしている。
【0042】
バッテリ交換あるいは点検等を行った後、蓄電池10を載せたスライダ11は、図10に示す要領で筐体2に挿入され、所定位置に収容される。このとき、まず、図5に示すように、奥側のバッテリ10bが温度センサ20を押すことによって、逆に言えば、温度センサ20は、バッテリ10bに押し当てられる。このとき、ばね22を圧縮することによる弾発力をもって、温度センサ20がバッテリ10bに押し当てられる。すなわち、保持装置200は、温度センサ20を保持するだけでなく、筐体2内の所定位置に装着されたバッテリ10bに対し、ばね22が伸びようとする所定方向への弾発力をもって、温度センサ20の感熱部20aを押し当てるよう付勢する装置である。
【0043】
その後、中扉15を閉めることにより、図8に示すように、中扉15に取り付けられている温度センサ20は、手前側のバッテリ10bに押し当てられる。このときも、ばね22を圧縮することによる弾発力をもって、温度センサ20がバッテリ10bに押し当てられる。
【0044】
以上、詳述したように、この蓄電装置1においては、温度センサ20は、蓄電池10側ではなく、筐体2側にあって、保持装置200により、所定位置に装着された蓄電池10(バッテリ10b)に押し当てられる。これにより、蓄電池10(バッテリ10b)の温度測定を行うことができる。このような構成では、蓄電池10(バッテリ10b)と温度センサ20とをセットにする必要が無いので、蓄電池10を交換する際は、温度センサ20を気にせずとも、単に蓄電池10のみを取り替えればよい。
【0045】
すなわち、このような保持装置200が設けられていることによって、蓄電池10を交換するたびに新しい蓄電池10に温度センサを取り付ける(あるいは取り付け直す)作業が不要となる。かかる蓄電装置1によれば、脱着される蓄電池10に対する温度センサ20の取り付けが容易である。
【0046】
また、蓄電池10自体に温度センサを付属させないことにより、汎用のバッテリを使用することができ、至便であり、かつ、低コストである。さらに、ばね22の弾発力が、装着された蓄電池10(バッテリ10b)の微小な位置ずれを吸収する。従って、着脱作業の習熟度等の不安定要因に影響されることなく、確実に温度測定を行える状態とすることができる。
【0047】
また、上記の温度センサ20に関する構造は、温度センサ20のみをバッテリ10bに押し当てるのではなく、温度センサ20が取り付けられている保持板21を所定方向に付勢する構造である。そもそも、温度センサ20自体は小さな部品であり、機械的強度が十分とは言えず、動くことや押されることには適さない。しかし、このように、十分な機械的強度を確保し得る保持板21に温度センサ20を取り付けることによって、いわば一構造部材化すれば、動きやすく、かつ、ばね22の弾発力を受け止めるに適する。
【0048】
また、上記の蓄電装置1において、温度センサ20及び保持装置200は、スライダ11の移動方向における奥側と手前側とにそれぞれ設けられている。この場合、特に奥側の保持装置200の弾発力は、筐体2内に装着された蓄電池10が所定位置で止まる時の衝撃吸収にも寄与する。また、この場合、蓄電池10の装着時に、スライド中の蓄電池10に対して温度センサ20の感熱部20aを押し当てることはなく、スライド完了して初めて蓄電池10に対して温度センサ20の感熱部20aを押し当てることになるので、スライド中に温度センサ20を破損させる可能性がほとんど無い。
【0049】
また、スライド方向の手前側の温度センサ20及び保持装置200は、蓄電池10の端面を覆う中扉15に設けられるので、側面パネル2sを取り付けて筐体2を完全に閉鎖する前に、温度センサ20の感熱部20aを押し当てたことを、作業者が確認できる。なお、中扉15は前述のように透明であるため、この確認は容易である。
【0050】
《温度センサ及び保持板等に関する第2実施例》
図13は、温度センサ及び保持板等に関する第2実施例を示す斜視図であり、(a)はチップタイプの温度センサ30が実装される表面側を示し、(b)はコネクタ32が実装される裏面側を示している。この保持板31は、温度センサ30用のプリント基板(例えばエポキシ樹脂又はガラスエポキシ樹脂)であり、当該基板を、図7における保持板21と同様に、機械的な部品として利用したものである。温度センサ30とコネクタ32とは互いに、プリント基板である保持板31に設けられたパターンにより接続されている。なお、図示は省略しているが、これ以外にも裏面に若干の電子回路素子が搭載される場合がある。
【0051】
保持板31には、金属製で機械的強度を確保したスリーブ31hが設けられている。そして、その孔31gに、図6図7と同様の、ガイド棒23を固着し、ばね22、ストッパ24、ねじ25を取り付ければ、第1実施例の温度センサ及び保持装置と同様に使用できる。筐体2への取付構造は、第1実施例と同様であるので、ここでは省略する。
このような第2実施例の温度センサ30及び保持板31において、温度センサ30は、保持板31の表面より突出しており、保持板31に弾発力を付与すれば、第1実施例と同様に、バッテリ10bに押し当てることができる。
【0052】
《温度センサ及び保持板等に関する第3実施例》
図14は、温度センサ及び保持板等に関する第3実施例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。本例の保持板41は、第1実施例と同様に、樹脂又は金属製である。但し、単純な平板である。また、ばね22、ガイド棒23、ストッパ24、及び、ねじ25については、第1実施例と同様である。主に第1実施例と異なるのは、フレキシブルプリント基板42を使用した点である。このフレキシブルプリント基板42を保持板41に固着して、表面に、第2実施例と同様のチップタイプの温度センサ30を実装する。この場合、コネクタは不要である。周辺の電子回路素子は、保持板41から外れたところに実装すればよい。筐体2への取付構造は、第1実施例と同様である。
【0053】
上記第3実施例では、柔軟性に富むフレキシブルプリント基板42上で、温度センサ30とその周辺の電子回路素子との接続を実現することができるので、リード線不要となり、断線を防止することができる。また、コネクタも不要であるので、便利である。
【0054】
《その他の補足》
なお、上記実施形態の温度センサ及び保持板等に関する各実施例では、ばね22を弾性体として用いているが、代わりに軟質のゴム(天然ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム)やスポンジを使用して、その弾発力を保持板に付与することもできる。
例えば、図15は、図11におけるばね22、ガイド棒23、ストッパ24及びねじ25を、ゴムやスポンジのような弾性材50に置き換えた一例を示す図である。この場合は、弾性材50の伸縮方向の両面を確実にセンサ取付板19と保持板21とに固着しておけば、同様の弾発力をもって温度センサ20をバッテリ10bに押し当てることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、インバータ機能を含む充放電制御装置9を用いて蓄電池10からAC100Vを出力できる蓄電装置1について説明したが、非常用に直流電源を供給する場合は、充放電制御装置9にDC/AC変換機能は不要である。
また、上記実施形態では、可搬型の蓄電装置について説明したが、据え置き型の蓄電装置であっても、何らかの筐体に蓄電池を出し入れする構造であれば、同様な温度センサ及びその保持装置を適用することができる。
【0056】
また、上記実施形態の蓄電池は、例えば鉛蓄電池であるとしたが、その他の二次電池についても、昇温による充放電制御等が必要な場合には、上記と同様の、温度センサ及びその保持装置を適用することができる。
【0057】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0058】
なお、特許請求の範囲に記載される本発明とは別に、あるいは併用的に、温度センサをヒータに置き換えた加熱構造も実現可能である。例えば冬季の気温が非常に低い寒冷地では鉛蓄電池の能力が低下する。そのため、ヒータで暖めることが必要である。このような場合に、上記実施形態の如く、筐体側に設けられたヒータをバッテリに押し当てる構成とすれば、バッテリを交換しても、簡単にヒータを押し当てることができる。但し、これは、ヒータ用の別電源が必要となるので、例えば太陽電池パネルと併用される蓄電装置の場合や、非常用電源としてではなく主として常用的に直流電源として使用される蓄電装置の場合に実用性が生じる構成である。
【符号の説明】
【0059】
1 蓄電装置
2 筐体
9 充放電制御装置
10 蓄電池
10b バッテリ
11 スライダ
15 中扉
20 温度センサ
21 保持板
21d 凹部
22 ばね
23 ガイド棒
31 保持板(プリント基板)
41 保持板(フレキシブルプリント基板)
200 保持装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15