特許第5915340号(P5915340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5915340エアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915340
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】エアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20160422BHJP
   B60R 21/206 20110101ALN20160422BHJP
【FI】
   B60R21/215
   !B60R21/206
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-85250(P2012-85250)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-212816(P2013-212816A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230111796
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 忠敬
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】川村 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西元 啓二
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−058510(JP,A)
【文献】 特開2007−331655(JP,A)
【文献】 特開2005−096698(JP,A)
【文献】 特開2005−247301(JP,A)
【文献】 特開2004−098870(JP,A)
【文献】 特開平09−123863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/215
B60R 21/206
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグユニットのエアバッグの展開側を蔽うエアバッグリッドと当該エアバッグリッドが組付けられる隣接部材との嵌合構造であって、
前記エアバッグリッドは、前記隣接部材側に湾曲する湾曲部とスリット状に形成される摺動溝と前記湾曲部であって前記摺動溝の端部に形成される前記摺動溝の幅より大きい挿入孔とを有する嵌合部とを備えて成り、
前記隣接部材は、前記摺動溝と係合して摺動可能な首部と当該首部の先端に形成され前記摺動溝の幅よりも大きくかつ前記挿入孔よりも小さい幅の頭部とを有する嵌合突起を備えて成る
ことを特徴とするエアバッグリッドと隣接部材との嵌合構造。
【請求項2】
前記エアバッグリッドと前記隣接部材とを結合した状態で、前記嵌合部の先端が前記隣接部材に当接することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグリッドと隣接部材との嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、乗員の安全を確保するためにシートベルトが装備され、シートベルトの役割を補助する補助保護装置としてエアバッグが装備される。エアバッグはシートベルトと共に乗員である人体を拘束することで、自動車の事故等の衝撃による人体への損傷を軽減させるためにあり、人体の様々な箇所に対応する様々な種類のエアバッグがある。
【0003】
例えば、乗員の膝部を事故等の衝撃から守るためのエアバッグとしては、ニーエアバッグユニット(Knee Air Bag Unit;以下、KABユニットと呼ぶ)がある。KABユニットは点火装置、ガス発生剤およびニーエアバッグ(Knee Air Bag;以下、KABと呼ぶ)から成る。
【0004】
KABユニットは運転席におけるコラムカバー下部や助手席におけるグローブボックス下部に設置され、KABユニットの車両後方側(乗員側)にはKABユニットと車室内とを隔てるカバーとしてニーエアバッグリッド(Knee Air Bag Lid;以下、KABリッドと呼ぶ)が取付けられる。KABリッドはコラムカバー、コンソールパネルおよびアンダーカバーなどの隣接部材と機械的締結によって組付けられる。
【0005】
KABユニットの動作は以下の通りである。
衝撃感知センサーが車両の事故等による大きな衝撃を感知すると、点火装置によって点火剤が点火する。発火した点火剤によってガス発生剤が加熱し、大量のガスが発生する。発生したガスは袋状のKABの中へ注入され、KABは急速に膨らむ。KABは膨らむことでKABの展開側を蔽うKABリッドを押し割り、乗員の膝部を拘束するように車両後方側(乗員側)へ展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−98870号公報
【特許文献2】特開平9−123863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
KABユニットの周辺構造については様々な研究がなされており、例えば、特許文献1および特許文献2がある。
【0008】
特許文献1は、KABリッドとその隣接部材であるニーパネルとの締結位置をコラムカバーの開口部領域内に設定することで、良好な見栄えを確保し、部品点数を削減することができる技術に関する。
【0009】
特許文献2は、屈曲部材を介してKABユニットをフレームに固定し、屈曲部材においても事故等によって受ける衝撃を吸収することで、乗員の人体への損傷を軽減させることができる技術に関する。
【0010】
KABユニット周辺の構造として特許文献1および特許文献2に係る構造を含む従来の車両においては、KABが車両後方側へ展開する際にKABリッドと隣接部材との機械的締結が外れないようにするため、KABリッドと隣接部材との締結力を強くする必要があった。その詳細は以下の通りである。
【0011】
KABの膨張によってKABリッドが割れると、KABはKABリッドの割れ目から車両後方側へ展開する。KABはKABリッドの車両後方側で更に膨張するため、KABリッドの表面(乗員側)に接触し、KABリッドを車両前方側へ押す。KABリッドが隣接部材よりも車両後方側に位置して締結されている場合には、KABリッドが車両前方側へ押されてもKABリッドと隣接部材との締結が外れることはない。
【0012】
逆に、KABリッドが隣接部材よりも車両前方側に位置して締結されている場合には、KABリッドが車両前方側へ押されると、KABリッドと隣接部材とが離れる方向に力が掛かるので、KABリッドと隣接部材との締結が外れる原因となり得る。KABリッドと隣接部材との機械的締結が外れると、KABリッドと隣接部材との間には隙間が生じる。KABが展開時に生じた隙間へ入り込み、車両前方側へも展開する可能性がある。
【0013】
そこで、KABリッドと隣接部材との締結が外れないように、クリップ等の締結用部材の強度を高くして締結力を強くすることが考えられる。しかし、単純に締結用部材の強度を高くしたのでは、KABリッドと隣接部材との締結が外れ難くなるのと同時に、KABリッドと隣接部材とを締結し難くなり、組付け作業に手間を要することになる。
【0014】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、エアバッグの展開時にエアバッグリッドとその隣接部材との締結が外れないように、KABリッドと隣接部材との締結力を強くし、かつ組付け作業を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の問題を解決するための第一の発明に係るエアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造は、エアバッグユニットのエアバッグの展開側を蔽うエアバッグリッドと当該エアバッグリッドが組付けられる隣接部材との嵌合構造であって、前記エアバッグリッドは、前記隣接部材側に湾曲する湾曲部とスリット状に形成される摺動溝と前記湾曲部であって前記摺動溝の端部に形成される前記摺動溝の幅より大きい挿入孔とを有する嵌合部とを備えて成り、前記隣接部材は、前記摺動溝と係合して摺動可能な首部と当該首部の先端に形成され前記摺動溝の幅よりも大きくかつ前記挿入孔よりも小さい幅の頭部とを有する嵌合突起を備えて成ることを特徴とする。
【0016】
上記の問題を解決するための第二の発明に係るエアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造は、前記エアバッグリッドと前記隣接部材とを結合した状態で、前記嵌合部の先端が前記隣接部材に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第一の発明に係るエアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造によれば、エアバッグの展開時にエアバッグリッドと隣接部材との締結において離れる方向に力が掛かる場合でも、隣接部材に設けた嵌合突起の頭部がエアバッグリッドに設けた嵌合部に引っ掛かるので、エアバッグリッドと隣接部材との嵌合が外れない。また、エアバッグリッドと隣接部材との嵌合を強くするために隣接部材に設けた嵌合突起の頭部を大きくした場合、エアバッグリッドに設けた嵌合部における嵌合孔の挿入部を共に大きくすることで、隣接部材に設けた嵌合突起の頭部をエアバッグリッドに設けた嵌合部における嵌合孔の挿入部に干渉なく挿入することができるので、組付け作業に手間を要することにはならない。もちろん、隣接部材に設けた嵌合突起およびエアバッグリッドに設けた嵌合部の強度を高くした場合でも、隣接部材に設けた嵌合突起の頭部をエアバッグリッドに設けた嵌合部における嵌合孔の挿入部に干渉なく挿入することができるので、組付け作業に手間を要することにはならない。
また、エアバッグリッドに設けた嵌合部に湾曲部を形成し、エアバッグリッドに設けた嵌合部における嵌合孔の挿入孔を湾曲部に形成することで、隣接部材をエアバッグリッドに嵌合させる際に、エアバッグリッドに対して隣接部材を傾けて嵌合突起を挿入孔に挿入するので、組付けスペースの縮小化を図ることができる。また、隣接部材に設けた嵌合突起の首部をエアバッグリッドに設けた嵌合部における嵌合孔の摺動溝に従って摺動させる際に、エアバッグリッドに設けた嵌合部の湾曲部における湾曲に沿って円滑に行うことができるので、組付け作業性が向上する。
【0019】
第二の発明に係るエアバッグリッドとその隣接部材との嵌合構造によれば、エアバッグリッドに設けた嵌合部の先端が隣接部材と当接することで、エアバッグリッドとその隣接部材との接点が増えるので、エアバッグリッドとその隣接部材との嵌合は安定する。また、エアバッグリッドおよび隣接部材の表面における段差が製作誤差の生じ難い部材の板厚によって決まることになるので、エアバッグリッドおよび隣接部材の表面における段差の設定および調整をすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係るKABリッドおよびアンダーカバーを示す斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係るKABリッドおよびアンダーカバーを組付けた運転席前方の構成例を示す正面図である。
図3A】本発明の実施例1に係るKABリッドとアンダーカバーとの組付け手順1を示す説明図である。
図3B】本発明の実施例1に係るKABリッドとアンダーカバーとの組付け手順2を示す説明図である。
図3C】本発明の実施例1に係るKABリッドとアンダーカバーとの組付け手順3を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明の嵌合構造を、運転席の前方に設置されるKABユニットにおけるKABリッドと当該KABリッドの隣接部材であるアンダーカバーとの締結に採用したものである。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1について、図1図2および図3A乃至図3Cを参照して説明する。
【0024】
図2に示すように、車両の運転席前方において、運転席側と面するようにコラムカバー1、コンソールパネル2、ロアパネル3、KABリッド4およびアンダーカバー5が取り付けられる。コラムカバー1は、ハンドル6の図示しないハンドル軸を覆うように設置され、図示しないクロスメンバー等に機械的締結によって組付けられる。コンソールパネル2は、コラムカバー1に隣接して設置され、コラムカバー1および図示しないフロントピラー等に機械的締結によって組付けられる。ロアパネル3は、コンソールパネル2に隣接して設置され、コンソールパネル2および図示しないフロアパネル等に機械的締結によって組付けられる。KABリッド4は、コラムカバー1、コンソールパネル2およびロアパネル3に隣接して設置され、コラムカバー1、コンソールパネル2およびロアパネル3に機械的締結によって組付けられる。アンダーカバー5はコラムカバー1、ロアパネル3およびKABリッド4に隣接して設置され、コラムカバー1、ロアパネル3、KABリッド4および図示しないインストルメントパネル等に機械的締結によって組付けられる。
【0025】
KABリッド4の車両前方側(図2においては紙面に対して奥側)には、KABユニット7が図示しないクロスメンバーに機械的締結によって組付けられる。KABユニット7は点火装置、ガス発生剤およびKABから成る補助保護装置である。車両が事故等によって衝撃を受けると、図示しない衝撃感知センサーが衝撃を感知し、KABユニット7の点火装置によって点火剤が点火する。発火した点火剤によって加熱されたガス発生剤がガスを発生し、発生したガスによってKABが膨らむ。KABの膨張によってKABリッド4が押し割られ、割れ目からKABが車両後方側(乗員側;図2においては紙面に対して手前側)へ展開する。
【0026】
KABの膨張によってKABリッド4が割れ、KABが車両後方側へ展開すると、KABリッド4における車両後方側の面が膨張するKABと接触し、KABリッド4は車両前方側へ押される。本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5との締結においては、KABリッド4がアンダーカバー5よりも車両前方側に位置している。KABリッド4が車両前方側へ押されると、KABリッド4とアンダーカバー5とが離れる方向に力が掛かり、KABリッド4とアンダーカバー5との締結が外れる虞となる。よって、本実施例では、KABリッド4とアンダーカバー5との締結に本発明の嵌合構造を採用している。
【0027】
KABリッド4は車両の運転席前方に取付けた際に運転席側に面し、KABユニット7のKABの展開側を蔽うように設置されている。図1に示すように、KABリッド4のアンダーカバー5を組付ける側(図1中左端側)には、KABリッド4に対し車両前方側へ略直角に延びる接続部10を介して、組付け後のアンダーカバー5と車両前後方向で重なるように、接続部10に対し車両幅方向へ略直角に延びる嵌合部20が設けられる。
【0028】
嵌合部20は、接続部10の車両前方側の一端側から接続部10に対し車両幅方向へ略直角に延びる直線部21と、組付け後のアンダーカバー5に先端部23が接触するようにアンダーカバー5へ向かって(車両後方側)湾曲する湾曲部22とから成る。
【0029】
嵌合部20には、アンダーカバー5と嵌合するための二つの嵌合孔30a、30bが上下に設けられている。嵌合孔30a、30bは、直線部21から湾曲部22まで延びるスリット状の摺動溝31a、31bと、摺動溝31a、31bの一端側である湾曲部22に形成される、摺動溝31a、31bのスリット幅よりも大きい幅の挿入孔32a、32bとから成る。
【0030】
接続部10および嵌合部20は、上述の形状および構造に限定されない。例えば、接続部10をKABリッド4におけるアンダーカバー5を組付ける一端側から滑らかに湾曲させて形成する、嵌合部20を湾曲部22から先端部23までアンダーカバー5へ向かって直線的に延びる第二の直線部を設けて形成する、湾曲部22を設けずに直線部21と第二の直線部を略直角に折曲して設けて嵌合部20を形成するなど種々の形状および構造が考えられる。ただし、KABリッド4とアンダーカバー5との組付け作業性を考慮すれば、嵌合部20に湾曲部22を設けることが好ましい。
【0031】
嵌合孔30a、30bについても上述の形状および構造に限定されない。例えば、摺動溝31a、31bの中間に挿入孔32a、32bを形成した十字形の嵌合孔30a、30bとしても良く、摺動溝31a、31bおよび挿入孔32a、32bを共に直線部21に形成した嵌合孔32a、32bとしても良い。また、前述した変更例の嵌合部20に第二の直線部を設けた場合には、摺動溝31a、31bを直線部21から第二の直線部まで延びるスリット状に形成し、挿入孔32a、32bを摺動溝31a、31bの一端側である第二の直線部に形成するなど種々の形状および構造が考えられる。
【0032】
KABリッド4は、その裏面40にH字形の分割溝50が形成されている。KABユニット7(図2)が作動すると、KABの膨張によってKABリッド4は分割溝50に沿って割れ、KABは車両後方側へ展開する。
【0033】
一方、図1に示すように、KABリッド4の隣接部材であるアンダーカバー5には、KABリッド4と組付ける一端側(図1中右端側)に二つの嵌合突起60a、60bが上下に設けられている。嵌合突起60a、60bは、アンダーカバー5の裏面70から車両前方側に突出した首部61a、61bと、首部61a、61bの先端に形成されかつ首部61a、61bよりも大きい傘状の頭部62a、62bとから成る。
【0034】
上述したKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bとアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bとは、互いに嵌合可能なように以下の関係で形成される。
【0035】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bに対応している。よって、嵌合突起60aと60bとの間隔は、嵌合孔30aと30bとの間隔と同じである。嵌合突起60a、60bおよび嵌合孔30a、30bの数量は本実施例に限定されず、互いに同数でそれぞれ一つ以上あれば良い。
【0036】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの首部61a、61bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bと係合し、摺動溝31a、31bのスリット長手方向において摺動可能な大きさとなっている。
【0037】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの挿入孔32a、32bに挿入可能な大きさとなっている。また、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bは、KABリッド4とアンダーカバー5との嵌合後に、KABリッド4に設けた嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bから抜けない程度に十分な大きさとなっている。
【0038】
次に、KABリッド4に対してアンダーカバー5を組付ける嵌合手順について図3A乃至図3Cを参照して説明する。
【0039】
まず、図3Aに示すように、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bをKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの挿入孔32a、32bに挿入可能なように、アンダーカバー5をKABリッド4に対して傾ける。アンダーカバー5の嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bをKABリッド4の嵌合部20における嵌合孔30a、30bに通す(図中の矢印a方向)。
【0040】
次いで、図3Bに示すように、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの首部61a、61bを、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに係合させ、アンダーカバー5をKABリッド4に対して摺動させる(図中の矢印b方向)。アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bがKABリッド4に設けた嵌合孔30a、30bにおける挿入孔32a、32bを設けていない他端側に達するまでアンダーカバー5をKABリッド4に対して摺動させ、図3Cに示すように、アンダーカバー5の裏面70をKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当接させる。以上で、KABリッド4とアンダーカバー5との締結は完了する。
【0041】
次いで、アンダーカバー5の図示しない他端側を図示しないインストルメントパネル等の隣接部材に機械的締結によって固定する。
【0042】
アンダーカバー5の裏面70をKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当て付けることで、アンダーカバー5とKABリッド4との接点が増えるので、アンダーカバー5とKABリッド4との嵌合は安定する。
【0043】
また、アンダーカバー5の裏面70がKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当たることにより、KABリッド4の表面41に対するアンダーカバー5の表面71の位置は決められる。よって、KABリッド4の嵌合部20の先端部23の位置およびアンダーカバー5の板厚Tを適宜設定することにより、アンダーカバー5の表面71とKABリッド4の表面41との段差Dを調整することができる。
【0044】
KAB展開時における、本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5の挙動について説明する。
【0045】
車両が事故等によって衝撃を受けると、KABユニット7(図2)が作動する。図示しない衝撃感知センサーが衝撃を感知し、KABユニット7の点火装置が点火し、ガス発生剤が反応してガスを発生し、発生したガスがKABの中へ注入され、KABが膨らむ。KABユニット7のKABの展開側を蔽うように設置されているKABリッド4は、KABが膨らむ力によって分割溝50で押し割られ、割れ目からKABが車両後方側(乗員側;図2においては紙面に対して手前側)へ展開する。
【0046】
KABはKABリッド4の車両後方側で膨張するため、KABはKABリッド4の表面41に接触し、KABリッド4を車両前方側(車体側;図2においては紙面に対して奥側)へ押す。KABリッド4がその隣接部材であるアンダーカバー5よりも車両前方に位置しているので、KABリッド4とアンダーカバー5とが離れる方向に力が掛かる。
【0047】
図3Cに示すように、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに対して、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bを大きく形成しているので、頭部62a、62bが摺動溝31a、31b近傍の嵌合部20に引っ掛かり、KABリッド4とアンダーカバー5との嵌合が外れることはない。
【0048】
また、嵌合部20および嵌合突起60a、60bを十分な強度としているので、嵌合部20および嵌合突起60a、60bが変形または損傷することでKABリッド4とアンダーカバー5との嵌合が外れることもない。
【0049】
よって、KABリッド4とアンダーカバー5との間に隙間が生じることはなく、KABが車両前方側へ展開することもない。
【0050】
なお、KABリッド4に設けた嵌合部20およびアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの強度を更に高くした場合、またはアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bをKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに対して更に大きくした場合でも、嵌合部20の挿入孔32a、32bをアンダーカバー5側の嵌合突起60a、60bの頭部62a、62b対して十分な大きさで形成することで、頭部62a、62bの挿入孔32a、32bへの挿入を干渉なく行うことができるので、組付け作業に手間を要することにはならない。
【0051】
本発明に係るエアバッグリッドの嵌合構造は、エアバッグ等の強い力によって外れる可能性のある部材に対する改善構造であるので、本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5との締結に限定されない。たとえば、KABリッド4とコンソールパネル2などの他の隣接部材との締結に採用しても良く、他のエアバッグユニットにおけるエアバッグリッドとその隣接部材との締結に採用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 コラムカバー
2 コンソールパネル
3 ロアパネル
4 KABリッド(ニーエアバッグリッド)
5 アンダーカバー
6 ハンドル
7 KABユニット(ニーエアバッグユニット)
10 接続部
20 嵌合部
21 嵌合部の直線部
22 嵌合部の湾曲部
23 嵌合部の先端部
30 嵌合孔
31 嵌合孔の摺動溝
32 嵌合孔の挿入孔
40 KABリッドの裏面
41 KABリッドの表面
50 分割溝
60 嵌合突起
61 嵌合突起の首部
62 嵌合突起の頭部
70 アンダーカバーの裏面
71 アンダーカバーの表面
T アンダーカバーの板厚
D アンダーカバー表面とKABリッド表面との段差
図1
図2
図3A
図3B
図3C