【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1について、
図1、
図2および
図3A乃至
図3Cを参照して説明する。
【0024】
図2に示すように、車両の運転席前方において、運転席側と面するようにコラムカバー1、コンソールパネル2、ロアパネル3、KABリッド4およびアンダーカバー5が取り付けられる。コラムカバー1は、ハンドル6の図示しないハンドル軸を覆うように設置され、図示しないクロスメンバー等に機械的締結によって組付けられる。コンソールパネル2は、コラムカバー1に隣接して設置され、コラムカバー1および図示しないフロントピラー等に機械的締結によって組付けられる。ロアパネル3は、コンソールパネル2に隣接して設置され、コンソールパネル2および図示しないフロアパネル等に機械的締結によって組付けられる。KABリッド4は、コラムカバー1、コンソールパネル2およびロアパネル3に隣接して設置され、コラムカバー1、コンソールパネル2およびロアパネル3に機械的締結によって組付けられる。アンダーカバー5はコラムカバー1、ロアパネル3およびKABリッド4に隣接して設置され、コラムカバー1、ロアパネル3、KABリッド4および図示しないインストルメントパネル等に機械的締結によって組付けられる。
【0025】
KABリッド4の車両前方側(
図2においては紙面に対して奥側)には、KABユニット7が図示しないクロスメンバーに機械的締結によって組付けられる。KABユニット7は点火装置、ガス発生剤およびKABから成る補助保護装置である。車両が事故等によって衝撃を受けると、図示しない衝撃感知センサーが衝撃を感知し、KABユニット7の点火装置によって点火剤が点火する。発火した点火剤によって加熱されたガス発生剤がガスを発生し、発生したガスによってKABが膨らむ。KABの膨張によってKABリッド4が押し割られ、割れ目からKABが車両後方側(乗員側;
図2においては紙面に対して手前側)へ展開する。
【0026】
KABの膨張によってKABリッド4が割れ、KABが車両後方側へ展開すると、KABリッド4における車両後方側の面が膨張するKABと接触し、KABリッド4は車両前方側へ押される。本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5との締結においては、KABリッド4がアンダーカバー5よりも車両前方側に位置している。KABリッド4が車両前方側へ押されると、KABリッド4とアンダーカバー5とが離れる方向に力が掛かり、KABリッド4とアンダーカバー5との締結が外れる虞となる。よって、本実施例では、KABリッド4とアンダーカバー5との締結に本発明の嵌合構造を採用している。
【0027】
KABリッド4は車両の運転席前方に取付けた際に運転席側に面し、KABユニット7のKABの展開側を蔽うように設置されている。
図1に示すように、KABリッド4のアンダーカバー5を組付ける側(
図1中左端側)には、KABリッド4に対し車両前方側へ略直角に延びる接続部10を介して、組付け後のアンダーカバー5と車両前後方向で重なるように、接続部10に対し車両幅方向へ略直角に延びる嵌合部20が設けられる。
【0028】
嵌合部20は、接続部10の車両前方側の一端側から接続部10に対し車両幅方向へ略直角に延びる直線部21と、組付け後のアンダーカバー5に先端部23が接触するようにアンダーカバー5へ向かって(車両後方側)湾曲する湾曲部22とから成る。
【0029】
嵌合部20には、アンダーカバー5と嵌合するための二つの嵌合孔30a、30bが上下に設けられている。嵌合孔30a、30bは、直線部21から湾曲部22まで延びるスリット状の摺動溝31a、31bと、摺動溝31a、31bの一端側である湾曲部22に形成される、摺動溝31a、31bのスリット幅よりも大きい幅の挿入孔32a、32bとから成る。
【0030】
接続部10および嵌合部20は、上述の形状および構造に限定されない。例えば、接続部10をKABリッド4におけるアンダーカバー5を組付ける一端側から滑らかに湾曲させて形成する、嵌合部20を湾曲部22から先端部23までアンダーカバー5へ向かって直線的に延びる第二の直線部を設けて形成する、湾曲部22を設けずに直線部21と第二の直線部を略直角に折曲して設けて嵌合部20を形成するなど種々の形状および構造が考えられる。ただし、KABリッド4とアンダーカバー5との組付け作業性を考慮すれば、嵌合部20に湾曲部22を設けることが好ましい。
【0031】
嵌合孔30a、30bについても上述の形状および構造に限定されない。例えば、摺動溝31a、31bの中間に挿入孔32a、32bを形成した十字形の嵌合孔30a、30bとしても良く、摺動溝31a、31bおよび挿入孔32a、32bを共に直線部21に形成した嵌合孔32a、32bとしても良い。また、前述した変更例の嵌合部20に第二の直線部を設けた場合には、摺動溝31a、31bを直線部21から第二の直線部まで延びるスリット状に形成し、挿入孔32a、32bを摺動溝31a、31bの一端側である第二の直線部に形成するなど種々の形状および構造が考えられる。
【0032】
KABリッド4は、その裏面40にH字形の分割溝50が形成されている。KABユニット7(
図2)が作動すると、KABの膨張によってKABリッド4は分割溝50に沿って割れ、KABは車両後方側へ展開する。
【0033】
一方、
図1に示すように、KABリッド4の隣接部材であるアンダーカバー5には、KABリッド4と組付ける一端側(
図1中右端側)に二つの嵌合突起60a、60bが上下に設けられている。嵌合突起60a、60bは、アンダーカバー5の裏面70から車両前方側に突出した首部61a、61bと、首部61a、61bの先端に形成されかつ首部61a、61bよりも大きい傘状の頭部62a、62bとから成る。
【0034】
上述したKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bとアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bとは、互いに嵌合可能なように以下の関係で形成される。
【0035】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bに対応している。よって、嵌合突起60aと60bとの間隔は、嵌合孔30aと30bとの間隔と同じである。嵌合突起60a、60bおよび嵌合孔30a、30bの数量は本実施例に限定されず、互いに同数でそれぞれ一つ以上あれば良い。
【0036】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの首部61a、61bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bと係合し、摺動溝31a、31bのスリット長手方向において摺動可能な大きさとなっている。
【0037】
アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bは、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの挿入孔32a、32bに挿入可能な大きさとなっている。また、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bは、KABリッド4とアンダーカバー5との嵌合後に、KABリッド4に設けた嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bから抜けない程度に十分な大きさとなっている。
【0038】
次に、KABリッド4に対してアンダーカバー5を組付ける嵌合手順について
図3A乃至
図3Cを参照して説明する。
【0039】
まず、
図3Aに示すように、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bをKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの挿入孔32a、32bに挿入可能なように、アンダーカバー5をKABリッド4に対して傾ける。アンダーカバー5の嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bをKABリッド4の嵌合部20における嵌合孔30a、30bに通す(図中の矢印a方向)。
【0040】
次いで、
図3Bに示すように、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの首部61a、61bを、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに係合させ、アンダーカバー5をKABリッド4に対して摺動させる(図中の矢印b方向)。アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bがKABリッド4に設けた嵌合孔30a、30bにおける挿入孔32a、32bを設けていない他端側に達するまでアンダーカバー5をKABリッド4に対して摺動させ、
図3Cに示すように、アンダーカバー5の裏面70をKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当接させる。以上で、KABリッド4とアンダーカバー5との締結は完了する。
【0041】
次いで、アンダーカバー5の図示しない他端側を図示しないインストルメントパネル等の隣接部材に機械的締結によって固定する。
【0042】
アンダーカバー5の裏面70をKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当て付けることで、アンダーカバー5とKABリッド4との接点が増えるので、アンダーカバー5とKABリッド4との嵌合は安定する。
【0043】
また、アンダーカバー5の裏面70がKABリッド4の嵌合部20の先端部23に当たることにより、KABリッド4の表面41に対するアンダーカバー5の表面71の位置は決められる。よって、KABリッド4の嵌合部20の先端部23の位置およびアンダーカバー5の板厚Tを適宜設定することにより、アンダーカバー5の表面71とKABリッド4の表面41との段差Dを調整することができる。
【0044】
KAB展開時における、本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5の挙動について説明する。
【0045】
車両が事故等によって衝撃を受けると、KABユニット7(
図2)が作動する。図示しない衝撃感知センサーが衝撃を感知し、KABユニット7の点火装置が点火し、ガス発生剤が反応してガスを発生し、発生したガスがKABの中へ注入され、KABが膨らむ。KABユニット7のKABの展開側を蔽うように設置されているKABリッド4は、KABが膨らむ力によって分割溝50で押し割られ、割れ目からKABが車両後方側(乗員側;
図2においては紙面に対して手前側)へ展開する。
【0046】
KABはKABリッド4の車両後方側で膨張するため、KABはKABリッド4の表面41に接触し、KABリッド4を車両前方側(車体側;
図2においては紙面に対して奥側)へ押す。KABリッド4がその隣接部材であるアンダーカバー5よりも車両前方に位置しているので、KABリッド4とアンダーカバー5とが離れる方向に力が掛かる。
【0047】
図3Cに示すように、KABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに対して、アンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bを大きく形成しているので、頭部62a、62bが摺動溝31a、31b近傍の嵌合部20に引っ掛かり、KABリッド4とアンダーカバー5との嵌合が外れることはない。
【0048】
また、嵌合部20および嵌合突起60a、60bを十分な強度としているので、嵌合部20および嵌合突起60a、60bが変形または損傷することでKABリッド4とアンダーカバー5との嵌合が外れることもない。
【0049】
よって、KABリッド4とアンダーカバー5との間に隙間が生じることはなく、KABが車両前方側へ展開することもない。
【0050】
なお、KABリッド4に設けた嵌合部20およびアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの強度を更に高くした場合、またはアンダーカバー5に設けた嵌合突起60a、60bの頭部62a、62bをKABリッド4に設けた嵌合部20における嵌合孔30a、30bの摺動溝31a、31bに対して更に大きくした場合でも、嵌合部20の挿入孔32a、32bをアンダーカバー5側の嵌合突起60a、60bの頭部62a、62b対して十分な大きさで形成することで、頭部62a、62bの挿入孔32a、32bへの挿入を干渉なく行うことができるので、組付け作業に手間を要することにはならない。
【0051】
本発明に係るエアバッグリッドの嵌合構造は、エアバッグ等の強い力によって外れる可能性のある部材に対する改善構造であるので、本実施例のKABリッド4とアンダーカバー5との締結に限定されない。たとえば、KABリッド4とコンソールパネル2などの他の隣接部材との締結に採用しても良く、他のエアバッグユニットにおけるエアバッグリッドとその隣接部材との締結に採用しても良い。