特許第5915384号(P5915384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000002
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000003
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000004
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000005
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000006
  • 特許5915384-電動圧縮機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5915384
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月11日
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20160422BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   F04B39/00 106A
   F04B39/12 H
   F04B39/00 104Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-123269(P2012-123269)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-249740(P2013-249740A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】深作 博史
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−082220(JP,A)
【文献】 実開昭63−138485(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料製のハウジング内に圧縮部及び電動モータが収容されるとともに、前記ハウジング、及び当該ハウジングに取り付けられる金属材料製のカバーによって区画された収容空間に前記電動モータを駆動させるためのモータ駆動回路が収容され、前記ハウジングと前記カバーとの間に弾性を有するシール部材が介在される電動圧縮機であって、
前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方には、他方に向けて延びるとともに前記シール部材の内側に配置される延設部が設けられており、
前記シール部材は環状をなしており、前記シール部材が弾性変形する前の状態の内径は前記延設部の外径よりも小さくなっており、前記シール部材が前記延設部の外周面に沿って密着配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記延設部は、少なくとも前記シール部材の内周面を覆う位置まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記延設部は、前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方と一体形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記延設部は、前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方とは別体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記延設部は、前記シール部材の内周面全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記収容空間に面している前記ハウジングの底壁には、当該底壁の外周縁全周から前記カバーに向かって環状の鍔部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮部と、圧縮部を駆動させる電動モータとを収容する金属材料製のハウジングを有するとともに、ハウジングには、電動モータを駆動させるためのモータ駆動回路を収容する収容空間を区画形成する金属材料製のカバーが取り付けられている。ハウジングとカバーとの間にはシール部材が介在されている。このシール部材により、ハウジングとカバーとの間を介してごみや水が収容空間内に侵入してしまうことが防止されている。
【0003】
ところで、ハウジングとカバーとの間のシール性を確保するためには、シール部材が収容空間の周縁に沿う形状に保持されている必要がある。そこで、例えば、特許文献1では、芯金を収容空間の周縁に沿う形状をなすように成形し、芯金に弾性を有するゴム材料を一体的に設けることでシール部を形成してなる密閉部材を、ハウジングとカバーとの間に介在させている。これによれば、芯金によってシール部が収容空間の周縁に沿う形状に保持されるため、シール部によってハウジングとカバーとの間のシール性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−224902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、密閉部材は、芯金を収容空間の周縁に沿う形状をなすように成形し、芯金にゴム材料を一体的に設けることでシール部を形成してなるため、製造コストが嵩んでしまい好ましくない。また、外部からのノイズがシール部を介して収容空間内に侵入してモータ駆動回路に流れてしまったり、モータ駆動回路からのノイズがシール部を介して外部に漏れてしまったりする虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストを抑えつつも、ハウジングとカバーとの間のシール性を確保することができ、さらには、シール部材を介したノイズ漏洩を抑制することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属材料製のハウジング内に圧縮部及び電動モータが収容されるとともに、前記ハウジング、及び当該ハウジングに取り付けられる金属材料製のカバーによって区画された収容空間に前記電動モータを駆動させるためのモータ駆動回路が収容され、前記ハウジングと前記カバーとの間に弾性を有するシール部材が介在される電動圧縮機であって、前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方には、他方に向けて延びるとともに前記シール部材の内側に配置される延設部が設けられており、前記シール部材は環状をなしており、前記シール部材が弾性変形する前の状態の内径は前記延設部の外径よりも小さくなっており、前記シール部材が前記延設部の外周面に沿って密着配置されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、シール部材が延設部の外周面に沿って密着配置されることによって、シール部材が延設部の外周面に沿う形状に保持されるため、シール部材によってハウジングとカバーとの間のシール性を確保することができる。よって、従来技術のような密閉部材を用いる必要が無く、製造コストを抑えることができる。さらに、延設部が、シール部材の内側に配置されている。このため、延設部をシール部材の内側に配置しない場合に比べると、シール部材を介した外部からのノイズは延設部により遮断され易くなるとともに、モータ駆動回路からシール部材に向かうノイズも延設部により遮断され易くなるため、シール部材を介したノイズ漏洩を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記延設部は、少なくとも前記シール部材の内周面を覆う位置まで延びていることを要旨とする。
この発明によれば、延設部が、少なくともシール部材の内周面を覆う位置まで延びているため、シール部材を介したノイズ漏洩を一層抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記延設部は、前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方と一体形成されていることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、ハウジング又はカバーを製造すると同時に延設部を形成することができるため、延設部をハウジング及びカバーの少なくとも一方に容易に設けることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記延設部は、前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一方とは別体であることを要旨とする。
この発明によれば、ハウジング又はカバーの形状が複雑であり、延設部を、ハウジング及びカバーの少なくとも一方と一体形成し難い場合、ハウジング又はカバーとは別体で形成することで、延設部を容易に形成することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記延設部は、前記シール部材の内周面全周に亘って設けられていることを要旨とする。
この発明によれば、延設部が、シール部材の内周面の一部に設けられている場合に比べると、シール部材を介したノイズ漏洩を抑制し易くすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記収容空間に面している前記ハウジングの底壁には、当該底壁の外周縁全周から前記カバーに向かって環状の鍔部が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、製造コストを抑えつつも、ハウジングとカバーとの間のシール性を確保することができ、さらには、シール部材を介したノイズ漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は第1の実施形態における電動圧縮機を示す部分破断断面図、(b)はカバー周辺を一部分拡大した断面図。
図2図1(b)における1−1線断面図。
図3】第2の実施形態におけるカバー周辺を一部分拡大した断面図。
図4】別の実施形態におけるカバー周辺を一部分拡大した断面図。
図5】別の実施形態におけるカバー周辺を一部分拡大した断面図。
図6】別の実施形態におけるカバー周辺を一部分拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、電動圧縮機10のハウジングHは、有蓋筒状をなすアルミニウム製(金属材料製)の吐出ハウジング11に、有底筒状をなすアルミニウム製(金属材料製)の吸入ハウジング12を接合して形成されている。吸入ハウジング12の周壁には、図示しない吸入ポートが形成されるとともに、吸入ポートは図示しない外部冷媒回路に接続されている。吐出ハウジング11には吐出ポート14が形成されるとともに、吐出ポート14は外部冷媒回路に接続されている。吸入ハウジング12内には、冷媒を圧縮するための圧縮部15(図1(a)において破線で示す)と、圧縮部15を駆動するための電動モータ16とが収容されている。なお、本実施形態では、特に図示は省略するが、圧縮部15は、吸入ハウジング12内に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置された可動スクロールとで構成されている。
【0017】
吸入ハウジング12の内周面にはステータ17(固定子)が固定されるとともに、ステータ17は、吸入ハウジング12の内周面に固定されたステータコア17aのティース(図示せず)にコイル17bが巻回されて構成されている。また、吸入ハウジング12内には、回転軸19がステータ17内に挿通された状態で回転可能に支持されるとともに、この回転軸19には、ロータ18(回転子)が止着されている。
【0018】
図1(b)に示すように、吸入ハウジング12の底壁12aには、底壁12aの外周縁全周から回転軸19の軸線Lの延びる方向(軸方向)に沿って外方(図1(b)の右側)へ延びる環状の鍔部12fが形成されている。鍔部12fの開口端側には、有蓋筒状をなすアルミニウム製(金属材料製)のカバー41が取り付けられている。そして、底壁12a、鍔部12f及びカバー41によって収容空間41aが区画されている。収容空間41a内には、電動モータ16を駆動させるためのモータ駆動回路40が収容されている。モータ駆動回路40は、収容空間41aにおける底壁12aに取り付けられている。よって、本実施形態では、回転軸19の軸方向に沿って、圧縮部15、電動モータ16及びモータ駆動回路40がこの順序で並設されている。
【0019】
カバー41は、回転軸19の軸方向に沿って延びる環状の外周部形成筒部42と、外周部形成筒部42に連なるとともに外周部形成筒部42の延設方向に対して直交する方向に沿って延びる蓋形成部43と、蓋形成部43に連なるとともに回転軸19の軸方向に沿って延びる環状のコネクタ形成部44とから形成されている。コネクタ形成部44の内側には、樹脂材料製の保持部45がコネクタ形成部44に一体化された状態で設けられている。保持部45には、図示しない外部電源に電気的に接続される金属端子46が保持されている。金属端子46はモータ駆動回路40と電気的に接続されている。
【0020】
鍔部12fの開口端と外周部形成筒部42の開口端との間には、弾性を有するゴム材料製のシール部材51が介在されている。シール部材51は環状をなしている。また、外周部形成筒部42の開口端側の内周面には、外周部形成筒部42から底壁12a(吸入ハウジング12)に向けて延びるとともにシール部材51の内側に配置される環状で金属材料製の延設部47が形成されている。延設部47は外周部形成筒部42と一体形成されており、回転軸19の軸方向に沿って直線状に延びている。延設部47の先端47aは、シール部材51における鍔部12f側の端面511よりも底壁12a側へ突出している。すなわち、延設部47は、少なくともシール部材51の内周面51aを覆う位置まで延びている。
【0021】
図2に示すように、延設部47は、シール部材51の内周面51a全周に亘って設けられている。そして、延設部47の外周面47bは、シール部材51の内周面51aに接触している。シール部材51は、径方向外側に弾性変形することで延設部47周りに装着されるようになっている。この延設部47の外周面47bとシール部材51の内周面51aとの接触により、シール部材51が延設部47の外周面47bに沿って密着配置され、シール部材51が延設部47の外周面47b(収容空間41aの周縁)に沿う形状に保持されている。すなわち、延設部47の外周面47bとシール部材51の内周面51aとは、少なくともシール部材51が延設部47の外周面47bに沿う形状に保持できるように、密着配置されている。シール部材51において、弾性変形する前の状態の内径は、延設部47の外径よりも小さくなっている。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
シール部材51が延設部47の外周面47bに沿って密着配置されることによって、シール部材51が延設部47の外周面47bに沿う形状に保持されているため、シール部材51によって鍔部12fの開口端と外周部形成筒部42の開口端との間のシール性が確保されている。その結果として、鍔部12fの開口端と外周部形成筒部42との間を介してごみや水が収容空間41a内に侵入してしまうことが防止される。さらに、延設部47がシール部材51の内側に配置されており、延設部47の先端47aが、シール部材51における鍔部12f側の端面511よりも底壁12a側へ突出している。これにより、シール部材51を介した外部からのノイズ(電磁ノイズ)が延設部47により遮断されるとともに、モータ駆動回路40からシール部材51に向かうノイズも延設部47により遮断されるため、シール部材51を介したノイズ漏洩が抑制される。
【0023】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)外周部形成筒部42の開口端側の内周面に、外周部形成筒部42から底壁12aに向けて延びるとともにシール部材51の内側に配置される環状の延設部47を形成し、シール部材51を、延設部47の外周面47bに沿って密着配置した。よって、シール部材51が延設部47の外周面47bに沿う形状に保持されるため、シール部材51によって鍔部12fの開口端と外周部形成筒部42の開口端との間のシール性を確保することができる。したがって、従来技術のような密閉部材を用いる必要が無く、製造コストを抑えることができる。なお、延設部47の外周面47bとシール部材51の内周面51aとは、少なくともシール部材51が延設部47の外周面47bに沿う形状に保持できるように、密着配置されていればよい。また、延設部47の外周面47bとシール部材51の内周面51aとが全周に亘って接触した場合、シール部材51の形状を最も保持し易くすることができる。さらに、延設部47を、シール部材51の内側に配置した。これにより、延設部47をシール部材51の内側に配置しない場合に比べると、シール部材51を介した外部からのノイズが延設部47により遮断され易くなるとともに、モータ駆動回路40からシール部材51に向かうノイズも延設部47により遮断され易くなるため、シール部材51を介したノイズ漏洩を抑制することができる。
【0024】
(2)本実施形態によれば、延設部47が、少なくともシール部材51の内周面51aを覆う位置まで延びているため、シール部材51を介したノイズ漏洩を一層抑制することができる。
【0025】
(3)延設部47は外周部形成筒部42と一体形成されている。よって、延設部47を、外周部形成筒部42と同時に形成することができるため、外周部形成筒部42に延設部47を容易に設けることができる。
【0026】
(4)延設部47を、シール部材51の内周面51a全周に亘って設けた。よって、延設部47が、シール部材51の内周面51aの一部に設けられている場合に比べると、シール部材51を介したノイズ漏洩を抑制し易くすることができる。
【0027】
(5)延設部47をシール部材51の内側に配置した。よって、延設部47をシール部材51の外側に配置した場合に比べると、シール部材51が内側にずれてしまうことを防止し易くすることができる。
【0028】
(6)延設部47をシール部材51の内側に配置した。よって、シール部材51の外側に延設部が配置されていないため、電動圧縮機10において、ハウジングHの外周側及びカバー41の外周側の形状が複雑なものとなってしまうことがない。
【0029】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図3にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0030】
図3に示すように、カバー81は、有蓋筒状をなすとともにカバー81の本体を構成する樹脂部82と、薄板状をなすアルミニウム製(金属材料製)の金属部83とからなる。カバー81は、金属部83を芯金として樹脂材料により型成形されてなる。金属部83は樹脂部82の内側に配置されている。
【0031】
樹脂部82は、回転軸19の軸方向に沿って延びる環状の外周部形成筒部82aと、外周部形成筒部82aに連なるとともに外周部形成筒部82aの延設方向に対して直交する方向に沿って延びる蓋形成部82bと、蓋形成部82bに連なるとともに回転軸19の軸方向に沿って延びる環状のコネクタ形成部82cとから形成されている。
【0032】
金属部83は、回転軸19の軸方向に沿って延びる環状の筒部83aと、筒部83aに連なるとともに筒部83aの延設方向に対して直交する方向に沿って延びる蓋部83bと、蓋部83bに連なるとともに回転軸19の軸方向に沿って延びる環状のコネクタ部83cとから形成されている。筒部83aは、樹脂部82の外周部形成筒部82aの内周面に沿って延びている。蓋部83bは、樹脂部82の蓋形成部82bの内底面に沿って延びている。コネクタ部83cは、樹脂部82のコネクタ形成部82cの内周面に沿って延びている。よって、金属部83は、樹脂部82の内側全体に亘って配置されており、樹脂部82を介したノイズ(電磁ノイズ)を遮断(シールド)している。
【0033】
鍔部12fの開口端と外周部形成筒部82aの開口端との間にはシール部材51が介在されている。また、金属部83の筒部83aは、底壁12a(吸入ハウジング12)に向けて延びるとともにシール部材51の内側に配置されている。よって、本実施形態では、筒部83aは、シール部材51の内側に配置される延設部に相当し、延設部は金属部83に設けられている。筒部83aの先端831aは、シール部材51における鍔部12f側の端面511よりも底壁12a側へ突出している。すなわち、筒部83aは、少なくともシール部材51の内周面51aを覆う位置まで延びている。そして、筒部83aの外周面832aにおける先端831a側は、鍔部12fの内周面に接触している。
【0034】
筒部83aは、シール部材51の内周面51a全周に亘って設けられている。そして、筒部83aの外周面832aは、シール部材51の内周面51aに接触している。シール部材51は、径方向外側に弾性変形することで筒部83a周りに装着されるようになっている。この筒部83aの外周面832aとシール部材51の内周面51aとの接触により、シール部材51が筒部83aの外周面832aに沿って密着配置され、シール部材51が収容空間41aの周縁に沿う形状に保持されている。
【0035】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(6)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(7)カバー81の一部を樹脂材料製にしたため、金属材料製のカバーに比べると、カバー81自体を軽量化させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図4に示すように、延設部に相当する円筒部材61が、吸入ハウジング12及びカバー41とは別体に形成されていてもよい。そして、円筒部材61は、カバー41の外周部形成筒部42の内側に圧入されることで、外周部形成筒部42に組み付けられている。なお、円筒部材61が鍔部12fの内側に圧入されることで、鍔部12fに組み付けられていてもよい。例えば、吸入ハウジング12又はカバー41の形状が複雑であり、延設部を吸入ハウジング12又はカバー41と一体形成することが困難な場合がある。このような場合、円筒部材61を、吸入ハウジング12又はカバー41とは別体で形成することで、延設部に相当する円筒部材61を容易に形成することができる。
【0037】
○ 第1の実施形態において、図5に示すように、鍔部12fの開口端側の内周面に、底壁12aからカバー41に向けて延びるとともにシール部材51の内側に配置される環状の延設部71が形成されていてもよい。延設部71は鍔部12fと一体形成されている。延設部71の先端71aは、シール部材51における外周部形成筒部42側の端面512よりもカバー41の蓋形成部43側へ突出している。なお、延設部71の先端71aが、シール部材51における外周部形成筒部42側の端面512と同じ位置まで延びていてもよい。
【0038】
○ 第2の実施形態において、図6に示すように、鍔部12fの開口端側の内周面に、底壁12aからカバー81に向けて延びるとともにシール部材51の内側に配置される環状の延設部91が形成されていてもよい。延設部91は鍔部12fと一体形成されている。そして、延設部91の延設方向の先端91aは、シール部材51における外周部形成筒部82a側の端面512と同じ位置まで延びている。なお、延設部91の延設方向の先端91aが、シール部材51における外周部形成筒部82a側の端面512よりも蓋形成部82bへ突出していてもよい。
【0039】
○ 上記各実施形態において、外周部形成筒部42又は筒部83aの開口端側の一部に延設部を形成するとともに、鍔部12fの開口端側において、外周部形成筒部42又は筒部83aの開口端側の一部に形成された延設部と重ならない位置に、延設部を形成してもよい。すなわち、吸入ハウジング12及びカバー41,81に延設部を形成してもよい。
【0040】
○ 上記各実施形態において、延設部47の先端47a又は筒部83aの先端831aが、シール部材51における鍔部12f側の端面511と同じ位置まで延びていてもよい。
【0041】
○ 上記各実施形態において、延設部47の先端47a又は筒部83aの先端831aが、シール部材51における鍔部12f側の端面511と同じ位置まで延びていなくてもよい。
【0042】
図4に示す実施形態において、円筒部材61の先端が、シール部材51における鍔部12f側の端面511と同じ位置まで延びていなくてもよい。
図5及び図6に示す実施形態において、延設部71,91の先端71a,91aが、シール部材51における外周部形成筒部42,82a側の端面512と同じ位置まで延びていなくてもよい。
【0043】
○ 上記各実施形態において、延設部47又は筒部83aが回転軸19の軸方向に沿って直線状に延びていなくてもよく、例えば、延設部47又は筒部83aの一部分が屈曲していてもよい。
【0044】
○ 上記各実施形態において、延設部47又は筒部83aがシール部材51の内周面51aの一部に設けられていてもよい。この場合、延設部47又は筒部83aは、シール部材51の内周面51aにおいて、シール部材51が収容空間41aの周縁に沿う形状に保持できる箇所であって、且つノイズの影響がある箇所に設けられていればよい。
【0045】
○ 上記各実施形態において、モータ駆動回路40が、収容空間41aにおけるカバー41,81に取り付けられていてもよい。
○ 上記各実施形態において、カバー41,81が、例えば、吸入ハウジング12の外周面に取り付けられていてもよい。
【0046】
○ 第2の実施形態において、金属部83は、例えば、鉄や銅等の導電性材料であってもよい。
○ 上記各実施形態において、ハウジングH及びカバー41,81の形状は、特に限定されるものではない。例えば、第1の実施形態において、カバー41に外周部形成筒部42を設けずに蓋形成部43による略蓋状とし、蓋形成部43に直接延設部47を設けてもよい。また、例えば、図5に示す実施形態において、吸入ハウジング12に鍔部12fを設けずに、底壁12aに直接延設部71を設けてもよい。
【0047】
○ 上記各実施形態において、圧縮部15、電動モータ16及びモータ駆動回路40がこの順序で回転軸19の軸方向に沿って並んで配置されていたが、配置の順序はこれに限定されない。例えば、モータ駆動回路、圧縮部及び電動モータがこの順序で回転軸19の軸方向に沿って並んで配置されていてもよい。
【0048】
○ 上記各実施形態において、圧縮部15は、例えば、ピストンタイプやベーンタイプ等であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0049】
(イ)前記電動モータを構成するロータと一体的に回転する回転軸が前記ハウジング内に収容されており、前記圧縮部、前記電動モータ及び前記モータ駆動回路がこの順序で前記回転軸の軸方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【0050】
(ロ)金属材料製のハウジング内に圧縮部及び電動モータが収容されるとともに、前記ハウジング、及び当該ハウジングに取り付けられるカバーによって区画された収容空間に前記電動モータを駆動させるためのモータ駆動回路が収容され、前記カバーは、樹脂部と、電磁ノイズをシールドする金属部とから構成されており、前記ハウジングと前記カバーとの間に弾性を有するシール部材が介在される電動圧縮機であって、前記ハウジング及び前記金属部の少なくとも一方には、他方に向けて延びるとともに前記シール部材の内側に配置される延設部が設けられており、前記シール部材が前記延設部の外周面に沿って密着配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【符号の説明】
【0051】
H…ハウジング、10…電動圧縮機、15…圧縮部、16…電動モータ、18…ロータ、19…回転軸、40…モータ駆動回路、41,81…カバー、41a…収容空間、47,71,91…延設部、47b…外周面、51…シール部材、51a…内周面、61…延設部に相当する円筒部材、83a…延設部に相当する筒部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6